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2001/06/15

MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE』(1994)

前作「GOLD AGAINST THE SOUL」が予想以上にヒットしたマニックス。ツアーも大盛況に終わり、前作からのシングルから間髪入れず、'94年5月に"Faster"と"P.C.P"の両A面シングルを発表、16位と大健闘する。これはちょっと衝撃的シングルだった。何せ初期のパンク路線を更に進化させたかのような攻撃性、そしてサウンドは更に生々しく響き、全ての音が機能的に鳴っているのである。今現在までも、このシングルがマニックス史上最強だという意見は非常に多い(俺も全く同感である)。

続けて8月にシングル"Revol"(22位)を発表。これもまた面白い曲で、まるでテクノを思わせるような反復リフが登場する、カッチリと作り込まれたパンクソング(タイトルはリッチーの造語で、逆から読むと「LOVER」ということではないだろうか? 次作でも"Enola/Alone"という曲があったし)。

そしてそのすぐ後に3作目となるアルバム「THE HOLY BIBLE」をリリース。前作からまたまた1年2ヶ月という短期間で発表されていることから、本当にリッチー在籍時のマニックスは多作で、尚かつ良質な曲を連発していたなぁと実感する。その後もシングル"She Is Suffering"(25位)を10月にリリースしている。

前作からのラストシングルとなった"Life Becoming A Landslide"のカップリング曲(日本盤はシングル「FASTER」に収録)で既にその兆候は見せていたが、この「THE HOLY BIBLE」はファーストともセカンドとも違った、ある種脅迫じみた凄みがある。時代が時代だっただけに('94年というとカート・コバーンが亡くなった年)こういう「閉所恐怖症」的サウンドになったとも考えられるが、やはりここで考えるべきは当時のリッチーの精神状態だろう。歌詞からもそれは感じ取ることができるし、何より当時を知っている人間なら、その頃の彼の奇行を覚えているだろう。ベロンベロンになり何も覚えてないくらいまで酔っぱらい、薬に手を出し、何度か自殺をも試み強制入院させられたことを。家族同然だったバンドのメンバーは本気で心配し、ニッキーは毎日リッチーを見舞ったという。一端中止したツアーもリッチーの快復を待ち、翌'95年初頭には頭を坊主にし、一見快復したかのように見えたリッチー。この年の春には来日も決まっていたのだが‥‥2月1日、滞在していたホテルから、リッチー・エドワーズは忽然と姿を消すこととなる。その後、自殺説や誘拐説などいろいろ憶測で語られているが、現在に至るまで彼の消息はつかめていない。これによってバンドは活動休止、彼の所在/生存が判るまでバンドとして動かないことに‥‥

何がリッチーを苦しめ、何に駆られてこのアルバムを作ったのかは確か当時のインタビューで語られていたはずだが‥‥ここでは純粋に作品についてのみ語っていこうと思う。

とにかくそれまでの作品と違い、非感情的なメロディー、機能的なリズム、生々しいサウンド、曲を盛り上げるというより単なる装飾のひとつに過ぎないギターソロ等、どれをとっても前2作とは異なる作りとなっている。勿論、これまでの片鱗は所々に見え隠れするし(当時はそう思えなかったが、今聴くと非常にポップなメロディーをしていて、どこをとってもマニックスらしい楽曲ばかりなのだ)、"This Is YesterDay"のようなその後の彼らの雛形ともいうべきメロウな曲もあるにはある。しかし大半を占めるのは、グランジともパンクとも言い難い、ある種独特なヘヴィサウンド。ヘヴィといっても、昨今のヘヴィロックのようなサウンド的なものではなく、もっと本質に迫るようなヘヴィさ‥‥人間の内面をナイフでえぐり取るような鋭さや重さを持った音。そして更に深く、更に重みを増した歌詞。作曲はジェームズとショーンが中心に行っているが、このアルバムに関してはリッチーのディレクションが影響しているようだ。

変拍子が意外だった"Yes"から5曲目"Archives Of Pain"までの流れは正に圧巻で、正直初めてこのアルバムを手にした時は、最後まで通して聴けずにここら辺で1度止めてしまっている。音楽的変化よりも、その重さに耐えられなくなったのだ。これは決して気楽に聴けるアルバムなんかではない。しかし、一度その世界にハマってしまうと、二度と戻ってこれなくなる。これはそういうアルバムだ。

パンクバンドとしてスタートしたマニックスが、ここで一度原点を見つめ直したという考え方もできるかもしれない。しかしこれはそんな生易しいもんじゃない。ファーストでの失敗、セカンドの予想以上の好評価を経て、ここに辿りついたのだ。いや、ここまで追いつめられたのだ。その後、リッチーを失ったマニックスはこれ以上重く攻撃的な作品を発表してはいない。作品の質感や一部のパンクソングに対して、最新作「KNOW YOUR ENEMY」をこのアルバムと比較する人も多いが、やはり全く違うものだと言わざるを得ない。振り幅としては最も「負」にある1枚なのだが、これを最高傑作と呼ぶファンは多い。しかし、リリース当初の英国メディアの評価は全く逆だったことも付け加えておく。トップ10には入ったものの、セールス的には前作程ヒットしなかったという事実も(尚、アップ後の情報として'94年の英国・NMEかメロディメーカーのどちらかで「年間ベストアルバム」のトップ10内にランクインしていたという話がある。これは俺も何となく記憶してるので間違いないだろう。つまり、最も賛否両論が激しかった作品ということになるのだろう)。

このアルバムに対しては、1曲1曲を取り上げるのではなく、作品1枚を通して聴いて欲しい。俺はこのアルバムからどれがオススメの曲か?と問われると、正直答えに困る。何故なら自分にとって、この13曲で1曲というようにカウントしているからだ。「THE HOLY BIBLE」というひとつの組曲だと考えている。

何度かいろんなところで書いたが、自分の人生にとって非常に重要な1枚である。



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投稿: 2001 06 15 10:00 午後 [1994年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク