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2001/06/15

MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993)

結局、ファーストアルバムは1位にはならず(全英13位)、外野は「ああ、どっ ちみち解散するのね!?」とマニックスのことをせせら笑った。しかし、'93年に入りバンドはあろうことか、セカンドアルバムの制作に着手したのであった。このことに対して、当時リッチー・エドワーズは解散撤回声明文をプレスに発表している。当時「rockin'on」等にも載ったので、ご覧になった方も多いだろうが、最近の彼らしか知らない人には是非ここでその対訳を目にしてもらいたい。これを「言い訳」と取るか、「無様に生き続けることを選んだバンドの意志の強さ」と取るかで、このアルバムに対する評価が分かれるだろうから‥‥

さて、世間の風当たりは更に強くなる中、5月には先行シングル"From Despair To Where"を発表し、これまで以上にヒットさせることに成功。そのまま6月には約1年4ヶ月振りとなるセカンドアルバム「GOLD AGAINST THE SOUL」を発表する。前作から1年ちょっとしか経っていない上、これまでも連発するシングルのカップリングに沢山の未発表曲をリリースしてきているのに、この多作振り‥‥頭が下がる思いだ。しかも本当にクオリティーが高い。アルバムは初のトップ10入りを果たし、その後リカットされたシングル3枚("La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)", "Roses In The Hospital", "Life Becoming A Landslide")はどれもヒットを記録し、前作以上の成功を手にすることになる。

全10曲という、現在までの彼らの作品の中では一番収録曲数が少ないアルバムではあるが、その分アルバムとしてのまとまりやメリハリがしっかりしていて、すんなり聴けてしまう1枚かもしれない。何故か初期のファンには不評なようだが、楽曲のクオリティーは前作以上だ。

ファーストでも見え隠れしていたハードロック色を前面に打ち出し、これでもか!?って位に「泣き」や「哀愁」を色濃く表し、「BURRN!」辺りのリスナーにも好評だったようだ(実際、初来日時には同雑誌からインタビューを受けているし、このアルバムまでは好意的に紹介されていた)。

泣きのハードロック"Sleepflower"からアルバムはスタートする。まず一聴して気づくのは、リズムパートの強化だろう。ベースが前作以上にブリブリいっていて、更にドラムはファーストのアメリカ盤のように生ドラムになっている(一部打ち込みの曲もあり)。音も生々しさを増し、「俺達はバンドなんだよ」という主張が所々に漲っている。続くシングル曲"From Despair To Where"、これはどうだろう? 早くもマニックスはここで新境地に達している。続く"La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)"もそうなのだが、ここら辺の曲からはモータウンの影響を伺わせる。パンク一辺倒かと思わせておいて、この懐の深さ。いや、単純にこのバンドは「良い曲」を書くことに命を懸けているのかもしれない。

その後もハードさを増した"Yourself"、QUEENやTHIN LIZZY辺りからの影響が見え隠れするバラード"Life Becoming A Landslide"、WiLDHEARTSのジンジャーが当時「今年出た中で最高のレコードだ」と大絶賛した"Roses In The Hospital"(これを受けてジェームズは「自分達のレコードを除いて、って意味だろ?」と返している)など、流れとしては非常に統一感のある、ある意味前作とは対極にある作りとなっている。

ラスト3曲("Nostalgic Pushead", "Symphony Of Tourette", "Gold Against The Soul")はポップな中にもヘヴィさを強調した作りになっていて、ある種異色作ともいえる。特に最後の2曲はヘヴィなリフもさることながら、前作で提示したヘヴィさとは違う次元の「閉鎖的でヘヴィな空気感」を持った、ある意味次作への予告編と受け取ることができる(とはいっても、音楽的スタイルはまた違うのだが)。

そういえば、このアルバムの時期はHR系バンドとのツアーも幾つかあったようだ。特に有名なところでは、あのBON JOVIが「KEEP THE FAITH」に伴う英国ツアーの際に行ったスタジアム公演で、このマニックスを起用したことだろう。あれは誰のアイディアだったのだろうか? そして、それを受けてマニックスは何を思って出演したのだろうか? 「お前ら、俺達のこと好きだろ?("You Love Us")」と皮肉混じりに唄い、世間から憎まれ嫌われてナンボと思ってきたマニックスが、ここにきて何万もの大衆の前で演奏する機会を得る。多くの人間に支持されるようになりながらも、反面それを拒絶しようとするバンド。このバランス感が次作への起爆剤へと繋がったのは、間違いないだろう。

それまであったロックンロール色をよりメタリックな方向へと転化し、1曲1曲により整合感を持たせ、暴れるよりも合唱するタイプの曲が多いことから、実はこの作品は4作目「EVERYTHING MUST GO」と共通する面が多々ある。アンセム・タイプの楽曲が多いにも関わらず、現在このアルバムからライヴで披露される曲は数少ない。ファンの支持率も意外と低いようだし‥‥とにかく、純粋に名曲目白押しな1枚なので、是非手にとって欲しい。



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投稿: 2001 06 15 09:57 午後 [1993年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク