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2001/06/12

MANIC STREET PREACHERS『STAY BEAUTIFUL (Japan Only Mini Album)』(1991)

ウェールズの片田舎。テレビで放送された1970年代のパンク・ムーブメントを追ったドキュメント番組を観て、触発された4人の少年‥‥ジェームズ・ディーン・ブラッドフィールド、リッチー・エドワーズ、ニッキー・ワイア、ショーン・ムーア。THE CLASHに憧れ、同じような4人編成のパンクバンドを結成する‥‥それがMANIC STREET PREACHERSだ。1988年に結成し、インディーズのオムニバス盤に"Suicide Alley"を提供した後に、1990年「NEW ART RIOT EP」をリリース。ここではまだ話題になることはなかった彼ら。しかし、1991年3月、彼らは"Motown Junk"1曲でその名を世間に知らしめることとなる。


「ジョン・レノンが死んだ時は笑っちまったぜ
 だって21年生きてきた俺には
 何の意味もなさなかったんだからさ」


Richyという歌詞が印象的且つ衝撃的だった為に、「時代錯誤の勘違いパンクス」扱いされる。それだけではなく、彼らは常に話題を作り続けた。ライヴをやれば暴動を起こし、雑誌のインタビューで「お前ら、ハッタリだろ!?」と聞かれれば、本物だと証明する為に記者の目前で腕を切る(有名な「4 REAL」事件。左の写真がそのインタビュー時のもの。カラー写真もあるが、それは生々しいので、あえてブックレット内の白黒写真を採用した)。そして何より有名なのが、「30曲入りの2枚組アルバムを1枚だけ作って、世界中でナンバー1になって解散する。上手くいかなかったらその時も解散」という、無謀な発言である。これら一連の発言及び行動は、全てリッチー・エドワーズという男の仕業なのだ。この男こそが初期マニックスの原動力であり、支柱であった。彼は楽器もろくに弾けないが、見とれる程のルックスと、ある種文学的とさえいえる歌詞を担当していた。彼こそがマニックスのブレインであったのだ。

インディーズでもう1枚("You Love Us (Heavenly)")出した後に、いよいよ彼らはメジャーと契約し、シングルを連発する。"Stay Beautiful"、"Love's Sweet Exile"と続き、そして1992年に入り再録音した"You Love Us"をリリースした後に、2月14日にいよいよファーストアルバム「GENERATION TERRORISTS」がリリースされるのであった‥‥

以上、マニックスが歴史的意味合いを持つファーストをリリースするまでの、大まかな流れだ。さて、ここで紹介するのはそのファーストではなく、それよりも数ヶ月前に日本のみでリリースされた、ファースト・ミニアルバム「STAY BEAUTIFUL」だ。このアルバムによって彼らは日本デビューするわけだが‥‥これにはマニックスを語る上で、非常に重要な曲が収録されているので、あえて取り上げることにした。

日本編集盤ということだが、内容は先に紹介した"Motown Junk"以降の3枚のシングルから、それぞれ2曲ずつ選曲し、1枚にまとめたものだ。インディーズからの"Motown Junk"と"You Love Us (Heavenly)"、そしてメジャー移籍後の"Stay Beautiful"という、ちょっと強引さを感じる選曲となっている。何故強引か? それはインディーズ時代とメジャー移籍後とでは、音楽性やプロダクションが全く違うからである。いや、全く違うというわけではない‥‥化けの皮を脱いだというか、本性を現したという方が正しいかもしれない。インディーズ時代の4曲は、いかにもといった荒いサウンドプロダクション、そこに乗る楽曲はパンク以外の何ものでもないストレートなロックだ。しかし、"Stay Beautiful"‥‥これはどうだろう? サウンドプロダクションはメジャー級‥‥というより、まるでハードロックバンドのそれみたいなのだ。音楽的には既にパンク一色から脱皮し、非常にカラフルな色合いを見せつつある。ドラムは打ち込み(より正確さを表すためにそうしたらしい。というより、ショーンが下手だったということなのだろう)、ギターの音もより厚みを増し、ソロは泣き、シンセを被せた‥‥これはいろんな意味で衝撃だ。「時代錯誤のバカパンク」呼ばわりした評論家や音楽ファンは焦ったに違いない。「何なんだ、こいつらは!?」と。更にそのカップリング "R.P.McMurphy"なんて、アコースティックテイストの小楽曲だ。インディーズではバカを演じ、メジャーに上がった途端に本性を現したかのようなその変貌。強引な流れのアルバムではあるが、短期間の間に遂げたバンドの変貌を知るためには、格好の材料だ。

Band先に書いたように、このアルバムにはマニックスの歴史を語る上で欠かせない曲が収録されている。それはインディーズ時代の2曲、"Motown Junk"と"You Love Us (Heavenly)"なのである。確かに現在再発されているファーストにこの2曲は収録されている。しかし、"Motown Junk"はあくまでボーナストラックであり、英国盤には未収録。現在英国では入手が困難になっている1曲でありながら、ライヴでは必ず毎回演奏される、重要な曲だ。なぜ重要なのかは最初に書いた通り。

そしてもう1曲の"You Love Us (Heavenly)"だが、ファーストアルバムにも同名曲が収録されているが、アレンジが異なる。この曲のメジャーバージョンはエンディングがガンズの"Paradise City"のようにテンポアップして、如何にもライヴラストを想定してアレンジし直しました、というような作りに変えられているが、このインディーズバージョンの方は‥‥映画「トレインスポッティング」でもお馴染み、イギー・ポップの名曲"Lust For Life"まんまなのだ(笑)。CLASHときて、イギー‥‥判りやすい連中だ(笑)。しかも、ここ最近のライヴではこっちのバージョンで演奏される機会が多い(でも、大体はエンディング部分はカットされて、たまに気が向いた時にやってるような感じだ)。ファーストを聴いて「何だよ、何がそんなに凄いのか判らないよ!」とお嘆きのあなた。そんなあなたにこそ、このミニアルバムを聴いていただきたい。1991年という時代性を改めて考えて欲しい。時代はレイヴやハウス‥‥ダンスミュージック主流だったのだ。STONE ROSESやHAPPY MONDAYSといったマッドチェスター勢、EMF, JESUS JONESといった似非ダンス勢、更にORBITAL, THE KLFといったハウス/テクノ勢。その一方で、ギターのディストーションサウンドで「音の壁」を作る、サイケ且つガレージっぽいシューゲイザー勢‥‥RIDE等‥‥がいた1991年。そんな時代にこんな直球で勝負を挑んだマニックスは、ある意味バカだと思う。それは当時も感じていた‥‥しかし、そんなバカっぽさが、支持された理由であり、だからこそ信用できたのかもしれない。節操がないといってしまえば、それまでだが‥‥

このミニアルバム。俺はファーストを手に入れた後に後追いで買ったのだが、実は彼らを最初に知ったのは、何を隠そう、このアルバム収録の"You Love Us (Heavenly)"だったのだ。TVKで夕方やってた音楽番組に大貫憲章が出演し、今一番オススメのバンドといって紹介したのが、この曲のPVだった。しかし、その時聴いたこの曲に対して、何の感情も抱かなかった、特に記憶に残らなかったこともちゃんと付け加えておく。確かに映像は衝撃的だったが‥‥そんな俺が彼らの魅力に気づくには、あともう数ヶ月必要になるのだった。



▼MANIC STREET PREACHERS『STAY BEAUTIFUL』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 06 12 09:42 午後 [1991年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク