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2001/06/05

MANIC STREET PREACHERS『EVERYTHING MUST GO』(1996)

1995年2月1日、リッチー・エドワーズはウエスト・ロンドンにある滞在先のホテルから突然姿を消した。それによって残されたジェームズ、ニッキー、ショーンの3人は、マニックスとしての活動を休止せざるを得なかった。3人は捜索にも協力するものの、「バンドのメンバー」としてではなく、「ひとりの友人」としてリッチーを待ち続けた。しかし、結果はご存じの通り。3人は再びMANIC STREET PREACHERSの活動を再開させることを迫られる。バンドはまずチャリティーアルバム「HELP」に、バート・バカラックの名曲"Raindrops Keep Falling On My Head"を提供。3人マニックスとしての、正真正銘の初レコーディング曲は、意外なことにカヴァー曲であった。そして1995年暮れと1996年春に、彼らはSTONE ROSESとOASISのオープニングアクトとして再び観衆の前に姿を現した。そこには「THE HOLY BIBLE」の頃のような尖った印象はなく、極力感情を排除し、ひたすら演奏に集中する3人の男の姿があるのみだった。

そして程なくリリースされたのが、この通算4作目、3人となってからは初めてのアルバムとなる、「EVERYTHING MUST GO」である。象徴的なタイトルからも判る通り、彼らは前進することを選んだのだ。アルバムからの先行シングルとして発表された"A Design For Life"は大歓迎され、全英チャート第2位を記録、(当時の時点で)過去最高のヒット曲となり、その後のマニックスの代表曲として認識されるだけにとどまらず、この年のイギリスを代表するヒット曲となったのだ。当然のようにアルバムは1位を記録し(勿論、彼らにとって初のトップだ)、その後"Everything Must Go", "Kevin Carter", "Australia"と次々にトップ20ヒットを連発する。「ブリットポップ以後」を象徴する1枚といっていいだろう。

叙情的なハープとアコギの音に導かれてスタートする"Elvis Impersonator : Blackpool Pier"。途中から力強いサウンドを聴かせるものの、やはりメインになるのは叙情性。続くシングル"A Design For Life"にしろ"Kevin Carter"にしろ、そこには必要以上に盛り上げようとする「意図」を感じる。何故「意図」的に、リッチーを欠いた後の1枚目にこういう装飾が必要だったのだろうか? 今でも時々疑問に思う。これはプロデューサーに起用したマイク・ヘッジスが得意とする手法だったから、単純にそれだけの理由かもしれないが。勿論、楽曲はファーストやセカンド辺りにあったメロディアスな曲を、更に一歩押し進めたようなものなのだが‥‥当時はどうしても違和感を感じざるを得なかった。

今でこそこのアルバムは楽しんで聴けるが、実は当時何度も聴いたという記憶がない。つまらないアルバムではなかったが、前作までのイメージとかけ離れていたのも原因だろうし、「リッチーがいないのに、果たしてこれをマニックスの純然たる新譜と呼べるのか?」なんて疑問があったのも確かだ。今思えば馬鹿馬鹿しい話だが、当時はポップになった(いや、彼らは初めからポップだったのだ)"A Design For Life" のシングルを買った時点で不安が高まり、「アルバム、大丈夫か?」とドキドキする毎日を送っていた程だ。

1年程経ち、俺も成長したのか、偶然耳にした"Everythig Must Go" を聴いて「おぉ、いい曲だねぇ。マニックスの新曲か?」なんて言ってたら、友人に「アホ!アルバムに入っとるやんけ!」と突っ込みを入れられた。その位、ちゃんと聴いてなかったのだ。当然家に帰ってすぐにアルバム聴き返した‥‥いい曲が沢山詰まった、純粋にいいアルバムだなぁ、というのがその時の感想。以後、数ヶ月においてへヴィ・ローテーションになったのは言うまでもない。その位、初期からマニックスを追っている人間にとって、このアルバムは衝撃的であり、ある種「踏み絵」のような存在だったのだ。

しかし、このアルバム以降しか知らないような方々にとっては、これも間違いなくマニックスなのだ。しかも現在では、こういう音こそがマニックスの本流というような捉え方さえもされている。勿論、こういうメロディアスでポップな音楽性はマニックスが本来持っているものなので、決して間違ってはいないのだが‥‥

後々になってメンバーが語ったところによると、「EVERYTHING MUST GO」という前向きなタイトルをつけてはいるものの、当時のメンバーはやはりどこか消極的な、それでいて周りに対しての猜疑心が強かったようだ。それまでの「4人vs世界」という立ち位置はリッチーという「象徴」を失うことによって変化し、それ以前と対局にある「国民的バンド」という歓迎を受ける。その違和感は常に残り、更に残された3人を疑心暗鬼にさせたという。大ヒットしたものの、やはりその代償は大きかったといえるだろう。

が、そういう不信感とは別に、やはりこのアルバムは優れている。アルバムの流れも素晴らしいし、それまでシングルのカップリングでは披露してきたジェームズの弾き語り的ナンバーもあるし、初期を思わせるパワフルなロックチューンもあるし、そして最後の最後に登場する感動的名曲"No Surface All Feeling"。この曲なくして「EVERYTHING MUST GO」は語れないだろう。比較的シングルナンバーに代表曲が偏りつつあるが、現在でもライヴで演奏されていることからも、この曲に対してバンドが自信を持っていることが伺えるのではないだろうか? 楽曲単体の完成度も素晴らしいが、アルバムとしても素晴らしい。多少の疑問は確かにあるが、それをも超越する普遍性を持った、正に'90年代後半を代表するロックアルバムだと断言できる。



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投稿: 2001 06 05 10:04 午後 [1996年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク