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2001/06/17

RADIOHEAD『PABLO HONEY』(1993)

今やギターロック・バンドなんて軽々しく呼べなくなってしまったRADIOHEAD。テクノやヒップホップなど、それまで他ジャンルとされてきた音楽の要素を貪欲に吸収し、RADIOHEADにしか作れない音楽を世に発表し続ける「ロック」バンドである彼らにも、未熟な頃があった。そう、どんな大物バンドにもデビュー時は存在するのだ。

今回ここで紹介するのは、そのRADIOHEADが'93年に発表したデビューアルバム「PABLO HONEY」である。

1991年夏、イギリスはオックスフォードでバンドは結成される。メンバーは不動の5人‥‥トム・ヨーク(Vo & Gt, etc.)、ジョニー・グリーンウッド(Gt & Key)、エド・オブライエン(Gt & Backing Vo)、フィル・セルウェイ(Dr)、コリン・グリーンウッド(Ba)。名字から判る通り、ジョニーとコリンは兄弟である(コリンが兄)。幼馴染みともいえるような5人で結成されたRADIOHEAD(当初は「ON A FRIDAY」という名前だったそうだ)はインディーズからのリリースもなくいきなり英EMIと契約、'92年5月にはファーストEP「DRILL EP」(アルバムにも収録されている"Prove Yourself"他)をリリース。同年9月にはその後の彼らの「代表曲」であり、ある意味「トラウマ」でもあるシングル"Creep"を発表。当時はトップ40に入るヒットにとどまった。翌'93年2月にはサードシングル"Anyone Can Play Guitar"を発表した後に、このファーストアルバムがリリースされることとなる。

当時は大ヒットには到らず、アルバム発表後にリリースされたファースト未収録新曲"Pop Is Dead"もヒットには結びつかなかった(ちなみに現在はこの曲、日本盤ファーストにボーナストラックとして追加収録されている)。

しかし、この後彼らをある「大事件」が襲う。誰も予想していなかった出来事‥‥それはアメリカでのブレイクだった。MTVでの"Creep"ヘヴィーローテーションに後押しされる形で、この曲はビルボードシングルチャートで36位まで上り詰める。更にアルバムも32位まで上昇し、50万枚近いヒットを記録するのだ。

このヒットの煽りを受け、イギリスでも"Creep"再リリース。歌詞に入る「fucking」のお陰でラジオですらかけてもらえなかったこの曲が、とうとうトップ10入りするのである。雑誌ではこの曲をNIRVANAと比較したり、あろうことかTHE POLICE "Every Breath You Take"("見つめていたい")と比較するものまで現れる。メディアだけではなく、ミュージシャンからも絶賛される。SUEDEやBLURのメンバー、R.E.M.のマイケル・スタイプまで‥‥この1曲によって全てが変わったのだった。

さて、そんなこのアルバムだが、「OK COMPUTER」以降の彼らしか知らない人にとってはかなり意外な音楽性なのではないか? RIDE辺りからの影響とも受け取れる「WALL OF DISTORTION-GUITAR SOUNDS」、NIRVANA以降多くのアーティストが参考にした「4つのコードを延々繰り返す曲」「強弱法」(Aメロでは静にに、Bメロになると途端に爆発したかのような轟音をならす、"Smells Like Teen Spirit"にみられるあの曲調)等、まだRADIOHEAD特有のオリジナリティーというものはあまり見られない。強いて挙げれば、ジャズからの影響が伺える"Blow Out"や、'80年代後半あたりのU2のような"Stop Whispering"などはとても印象深い。

しかし、このアルバムの目玉といえるのはやはり"Creep"であり、それと同系統といえる"Prove Yourself"、"Vegetable"のような「自己嫌悪ソング」なのではないだろうか? 「グランジ以降」や「グランジに対するイギリスからの回答」とかいろんな解釈ができるだろうが、やはりそこはイギリス。アメリカのグランジに比べると、繊細すぎるのだ。逆に、俺はそこに惹かれたわけだが。

勿論、上に挙げた以外にも「ジム・モリソンになぁれ」な歌詞が印象的な"Anyone Can Play Guitar"や"You"、"How Do You?"、"Ripcord"といった印象的な曲は多い。しかし、どうしても"Creep"という「踏み絵」的存在がある限り、このアルバムは今後も違った見方をされる可能性が高い。純粋に1枚のギターロック・アルバムと考えれば、平均点以上の出来だと思うのだが。

その後、セカンドアルバム以降で開花する「RADIOHEADらしさ」を考える上でも、このファーストアルバムはその後の彼らにとっての「習作」とも呼べる貴重な1枚なのかもしれない。或いは、U2がファーストから「WAR」というアルバムまでの3枚を通過してから「THE UNFORGETTABLE FIRE」という新たな地平へ辿り着いたのを、RADIOHEADというバンドはこの「PABLO HONEY」1枚でそれを成し遂げてしまったのかもしれない。当然「THE BENDS」という作品の音楽性とU2のそれとは全くの別物だが、バンドの成長の度合い/過程というのを考える上でも、これはちょっと興味深いものがあると思うのだが(更にRADIOHEADの場合は、「PABLO HONEY」と「THE BENDS」の間に「1.5枚目のアルバム」を制作し、それを半ばボツにしている過去がある。これも後々触れていきたいと思う)。

まぁインディーズでのリリース経験のない彼らがいきなりメジャーデビューしたことも大いに関係しているのだろうが、やはりこのアルバムはその後のRADIOHEADと比べると最も「らしさ」が薄いのは否めない。それでも、この時期が一番好きという人も多い(特に「OK COMPUTER」以降が苦手という人)。これはこれで素晴らしい作品だと思うので、是非ライヴでもここからもっと披露して欲しいと思うのだが‥‥



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投稿: 2001 06 17 04:56 午前 [1993年の作品, Radiohead] | 固定リンク