MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』(2001)
何時からメタルと疎遠になったのだろう。何時メタルという音楽に見切りをつけたのだろう。ふと考えてみたが、ハッキリと覚えていない。何時何時から、とかその日を境に聴かなくなったというわけではなく、徐々にだったのだろう。が、その決定打となった1枚は今でもハッキリ覚えている。RAGE AGAINST THE MACHINE「EVIL EMPIRE」。これを聴いたことで、それまでの価値観が変わってしまったのだった。その頃からだろうか、それまで創刊号から毎月買っていた「BURRN!」が立ち読みで済ます月が出てきたり、CDラックにあった山程のメタル系CDを売り払ってしまったのは‥‥
今でもこの手のジャンルはよく聴くし、たまに思い出したかのように中古で買い戻しているアルバムもある。決して‥‥嫌いになったわけではないのだ。ただ‥‥『NO FUTURE』‥‥メタルを聴いていると、こういう言葉が頭を過ぎるのだ。メタル好きやメタル肯定派を否定するつもりは毛頭ない。じゃなければ「猿メタル」なんてコーナーを作ったりしないし、ロブ・ハルフォードやJUDAS PRIESTの新譜に期待したりもしないだろう。
ただ‥‥以前この「猿メタル」コーナーに対して「メタル復権の為に頑張って下さいね!」という励ましのメールをいただいたことがあった。正直、どう返答していいのか困ってしまい、結局返事を書かず終いにしてしまった(殆どのメールに対して、例えそれが誹謗中傷であれ、俺はキッチリと返事を書くのだが、このメールのみ返事を書くことができなかった)。だって‥‥俺はメタルがメインストリームに立ったことなんてないと今でも思っているし、今後もそんなことはないと確信している。15年程前、確かに全米を巻き込んだムーブメントがあったが、あれはバブルのようなものだったと、今では思っている。「ブリットポップ」と同じようなもんだと俺は捉えている。
当然、その恩恵を受けてデビューしたバンドの中には素晴らしいものも幾つかいたが、その殆どは‥‥判ってるだろ?
さて、そんな俺ではあるが、たまにメタルと全く関係ないジャンルのアルバムを衝動的に購入した時に、そこから「メタル臭」や影響を発見してしまうと、無条件でニヤリとしてしまう。別にメタルが好きだったとかではなく、そのルーツとなるバンドが同じだったというケースが殆どなのだろうけど、なかなか興味深いものがある。
さぁ、やっとここからが本題だ。何故イギリスのトリオバンド‥‥雑誌や メディアでは「UKロック期待の新星」等と呼ばれているこのMUSEの新作「ORIGIN OF SYMMETRY」レビューに際し、こういうことを書いたのか‥‥聴いた人、判るでしょ?(ニヤリ)
1曲目 "New Born" を聴いた時の俺の感想‥‥「うわっ、これってメタルじゃんか!しかも北欧辺りの!!」ヤられた。ぶっ飛んだよ、マジで。俺はそれまでMUSEに対してそれ程いい印象を持っていなかったし、ちょっとしか聴いたことのないファーストアルバムに対しても、それ程いいとは思わなかった。昨年のサマーソニックでのステージも、環境が悪かったせいもあってか(朝イチで、しかも炎天下の中)その良さに気づくことなく終わった。
そんな俺が何故、このアルバムを買ったのか‥‥今となっては「血迷った」としか言いようがないが、とにかく今年に入って「何の期待もせずに衝動的に買ったアルバム」の中ではダントツの1位だ。
前に‥‥REEFの「GETAWAY」レビューの時だったと思うが‥‥「逆猿メタル」という表現を使ったことがある。本来の「猿メタル」が「メタルに疎い・毛嫌いしてる人にも受け付けられる可能性がある、メタル寄り/メタルとカテゴライズされるアーティスト」をオススメする枠なのに対し、この「逆猿メタル」というのはその言葉通り‥‥「普段メタル以外の音楽と接する機会があまりない方々に対して、他ジャンルにもそれに匹敵する素晴らしい作品があるんだよ」という意味合いで語っている。REEFがMR.BIG辺りの土着的ルーツロック好きにアピールするように、このMUSEも‥‥ドラマチックな展開が盛りだくさんのメタルに匹敵する内容だと思っている。
前作を手掛けたジョン・レッキー(STONE ROSESやRADIOHEAD等を手掛けたことで有名だが、その昔はXTCといったバンドも手掛けている)だけでなく、TOOLやKING CRIMSON、ピーター・ガブリエルといったプログレ・チックなアーティストを手掛けるデヴィッド・ボトリルにもプロデュースを依頼したことによって、前作から一皮も二皮も剥けた‥‥いや、化けた内容となっている。「MUSEってこんなに凄かったっけ!?」アルバムを聴き終えた時、誰もがそう思うに違いない。
キーボード類を効果的に多様している点、トリオの利点を上手く機能させたバンドアンサンブル等から、カナダのRUSHを彷彿とさせるイメージもあるが、むしろあっちよりも攻撃的であり、同時に耽美性も十分すぎる程にある。ボーカル&ギターのマシュー・ベラミーの、ファルセットを多用した歌唱法から前作では「トム・ヨークのフォロワー」、あるいは「RADIOHEADフォロワー」と呼ばれることが多かった(実際俺も最初はそう思ってたし)が、ここでは既にオリジナルとして、独特な存在感を醸し出している。ファルセットと同様に、独特なブレス(息継ぎ)も印象的だ(これがダメって人もいるだろうけど)。むしろそれらの要素が、こういう耽美性を更に高めているように感じる。メタルだ、プログレだ、という割には「弱さ」「儚さ」が強すぎるのだ。もしこの演奏に対してボーカルがジェームズ・ラブリエ(DREAM THEATERのVo)やジェフ・テイト(QUEENSRYCHEのVo)だったら、正しく正統派メタルとして機能するはずだ。
1曲1曲の作りがしっかり作り込まれているにもかからず、非常に自由度が高いアンサンブル。この辺に'70年代辺りのブリティッシュ・ロックとの共通点を見出せるような気がするのだが、如何だろうか? その観点からすれば、タイプは全く違うが初期のマニックスやMANSUN辺りとも共通するものを持っているバンドだと、今回このアルバムを聴いて実感した。
とにかく、起承転結がしっかりしてるのだ。1曲目 "New Born" や3曲目 "Spece Dementia"、6曲目 "Citizen Erazed" 辺りは、その代表的楽曲だろう。同時に、シーケンサーを多用したパワーソング "Bliss" や、ストレートな "Plug In Baby"、オペラチックな "Micro Cuts" のような曲もある。アルバムの流れとしても非常に振り幅の大きい構成となっている前半と、一聴して地味な印象を受けるものの非常に味わい深い後半というように、飽きさせない作りとなっている。
以前、マシューのギターワークについて「KING CRIMSONのロバート・フリップやRATMのトム・モレロからの影響が大きいのでは?」と書いたことある。その時はリズム隊について特に触れなかったが、このセカンドではそのリズム隊の存在感が非常に大きい。特にベース。トリオってこともあって、CREAM時代のジャック・ブルースとイメージが重なった。ギターよりもベースがメインリフを刻む曲が多く見られるが、それもこのバンドの特徴だろう。ギター2人ではなく、敢えてトリオという形態を取ったのも、実はこの辺からの影響が強いのかもしれない(って実は友達がこの3人だけだったとか!?)。こうなると、当然ライヴが観たくなってくる。当初はフジロックへの出演が決まっていたが、アルバムリリースの遅れやプロモーション計画の変更で流れてしまった。単独来日は年末辺りだろうか? 久し振りに「本気で観たい」と思わせてくれたアルバムだ。このアルバムの曲をどうステージで再現するのか? 或いはぶち壊すのか? 非常に興味深い。
最近「ギターロックがつまらない」「UKロックが面白くない」と言い続けてきた俺だが、これには本当に「やられた!」感が大きい。ある意味、今年前半にリリースされたイギリスのアーティストの作品の中ではダントツかもしれない。大穴、マジで。俺の中ではWEEZERよりもASHよりも面白かった。これはマジでいいアルバムだ。メタルファンもUKロックファンもプログレファンもそうでない人も‥‥とにかく聴いて欲しい1枚である。
« 頭脳警察『頭脳警察1』(1972) | トップページ | EMINEM『THE MARSHALL MATHERS LP』(2000) »
「Muse」カテゴリの記事
- 2003年4月〜2004年3月発売の洋楽アルバム20選(2024.01.08)
- MUSE『WILL OF THE PEOPLE』(2022)(2022.10.13)
- MATT BELLAMY『CRYOSLEEP』(2021)(2022.03.28)
- MUSE『THE 2ND LAW』(2012)(2022.01.22)
- 祝ご成人(2001年4月〜2002年3月発売の洋楽アルバム20選)(2022.01.10)
「2001年の作品」カテゴリの記事
- KISSのベストアルバムを総括する(2022年版)(2022.12.04)
- HARDCORE SUPERSTAR『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001)(2022.05.04)
- AEROSMITHのベストアルバムを総括する(2024年改訂版)(2022.04.12)
- DAVID BOWIE『TOY (TOY:BOX)』(2022)(2022.01.30)
- CONVERGE『JANE DOE』(2001)(2022.02.16)
