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2001/08/22

GRAPEVINE『CIRCULATOR』(2001)

  たまたま買った1枚が大当たりだったって経験、時々あると思う。視聴機が大量に置かれている都会なら聴いてから手に取るなんてことも可能だが、こと田舎に住んでいるとそうもいかない。視聴機がある店もあるにはあるが、大体が売れ線ばかりだ。ジャケット買いやインスピレーションだけで購入を決めてしまったことなんて昔はよくあったが、最近はCD屋に行っても漁るのは旧譜や中古盤ばかり。

  そんな中、たまたま手にしてしまったのが、このGRAPEVINEの4作目となる「CIRCULATOR」だった。先行シングルとなっていた"discord"や"風待ち"はTVのヒットチャート番組でチラッと聴いた程度だったが、かなり好印象だった。そこへこのアルバムと偶然CD屋で出会う。決してイチ押しされていたわけでもなく、店頭にたまたま1枚、置かれていただけ。けど、何故か手にしてレジまで行ってしまった。

  前作「HERE」は未聴だった。今考えてみると、何故なのか思い出せない。きっと金がない時とリリースタイミングが合ってしまったのと、中古盤をあまり見かけなかったことが原因だろう。それまでのアルバムはちゃんと聴いていたし、個人的にはセカンド「LIFETIME」は気に入っていて、今でもたまに聴いている。その後に出ていたシングル曲もちょっと耳にする程度。だから、俺の中では一昨年の春以来‥‥約2年振りにちゃんと聴く新譜ということになる。

  はっきり言って、これは地味な作品だ。しかし、2度、3度と聴きたくなる作品集である。基本的にはミディアム~スロウテンポの曲がメイン。よく「OASIS以降」なんて形容詞が使われることがあるが、このバンドは正しくその形容詞が相応しいバンドだ。勿論、ただの「OASIS以降」では終わっていないが。

  マーヴィン・ゲイの曲名から取ったと言われるそのバンド名から想像できる、非常に黒っぽい、グルーヴィーで腰の据わったサウンドを聴かせるバンド。曲は決して派手ではなく、ブルーズを基調としながらも、そこに現代的な彩りを重ねることにより、自分達らしさを追求してきたバンドだ。メンバー全員がソングライターとして確立した個性を持っていて、プレイヤー/シンガーとしてのアビリティーも高い。一歩間違えば「玄人受け」止まりなのだが、この数年、契約を切られることもなく地道なヒットを飛ばしてきて、現在は中堅に届きそうなポジションといえる。

  そんなこのバンドの決定打となるであろう作品。これは間違いなくその「一手」となるはずだ。軽いショックを受けたよ‥‥「GRAPEVINEって、こんなにすげぇバンドだったっけ?」と。常々、このバンドは渋いけどカッコイイ、男受けするバンドでは‥‥なんてことを話したりしていたが、このアルバムがそれを全て証明してくれている。濃くて渋くて、それでいてカッコよくて、男の心を惹くバンド。海外にもいたよ、そんなバンドが‥‥OCEAN COLOUR SCENEっていうんだけどね。決して派手ではないけれど、誰もが認める庶民派バンドだけど、気づけばいつもそこにいる。両者に共通する点ではないだろうか?

  とにかく、今回のアルバムは各楽曲がこれまで以上に際立っている。シングルとして発表されていた上記以外の2曲("ふれていたい"、"Our Song")の完成度もさることながら、それ以外の新曲も激渋でありながら、男の色気を感じさせるファンキーな曲満載だ。アルバムのトップを飾る"Buster Bluster"、従来の彼らの魅力を存分に発揮する"lamb"、CMソングにもなっている"(All the young) Yellow"、既に昨年からライヴで披露されていた"B.D.S."等はその最もたる例だろう。勿論、先の"discord"もしかり。

  更にそれだけではない。およそ20代のバンドが出す音とは考えにくい、濃すぎるくらいに濃いヘヴィブルーズ"壁の星"、THE POLICE的レゲエからサビで一転するメロウな"フィギュア"、サイケデリックに響くブルーズ"アルカイック"、夏の終わりをイメージさせる"波音"、BEATLES的コーラスが印象的なロッカバラード"I found the girl"‥‥って全曲挙げてしまったが、とにかく捨て曲なし。この手のギターロックから離れつつあった自分だったが、これは購入後3週間経った今でも、ヘヴィローテーションだ。

  これだからロックって面白い。嗚呼、もうOASISも前みたいに売れてないし、他のバンドも消えてるのが多いし、ヘヴィロックは苦手でヒップホップはもってのほか、テクノに手を出す程勇気もないしなぁ‥‥と最近元気がない、そんなあなたにこそ手にしてもらいたい1枚。日本にだっていいバンドは沢山いる。切っ掛けがないだけで、出会えてない素敵なバンドがまだまだいる。ここまで書いてきたことにピンときた人、是非これからCD屋に出かけて、このアルバムを手にして欲しい。気に入るはずだ。そしたら旧譜も聴いてみるといい。「何故もっと早く出会わなかったんだろう」と思うはずだから。

  最後に‥‥男性諸君、もっとこのバンドを応援しようじゃないか? ボーカル・田中のルックス等からどうしても女性ファンが多い彼らではあるが、こいつらは間違いなく「男の為の」バンドなのだから。既に"風待ち"は俺の今年(29~30歳)の夏のテーマソングに決定。毎回聴く度に目をウルウルさせている。ちょっと汗ばむ夏の夜、このアルバムを聴きながら酒飲んでると、好きな人が恋しくてたまらなくなる。ギュッと胸が苦しくなる‥‥30男をも唸らせる、これはそんなアルバムだ。



▼GRAPEVINE『CIRCULATOR』
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投稿: 2001 08 22 01:55 午前 [2001年の作品, Grapevine] | 固定リンク