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2001年8月13日 (月)

SOUL FLOWER UNION『SCREWBALL COMEDY』(2001)

魂の歌をうたう 魂の番長に乾杯! ・・・石野卓球


サヴァイヴァーズ・バンケット、夏到来、NOと言える男!!
こんな曲待ってました。
別に僕がここまで吠えなくても大傑作でしょうが、最高のR&R!
SFUは、大傑作しか出しませんよ。
   ・・・岸田繁(くるり)


おぉ!ロックってのはこれだ!いちいちカラダに鳥肌がたつ種類の感動だ。
それはぼくがこのところ忘れていた感覚だ。
聴いた後に生活の風景が違って見えるマジック。
あぁ、とてつもなく濃厚な意志とイメージの爆撃が今夜も始まってしまった。
   ・・・曽我部恵一


夏の匂いがする
炎天下に揺れる夏草にドッと倒れ込んだ時の匂い(午後1時25分)
昼なお薄暗い森の中のクヌギの樹液の匂い(午後2時45分)
あるいは白っぽい街の雑踏のなかに一瞬
シンと立ち上る陽炎のゆらめき(午後3時5分)
ワクワクするような夏の朝にキッパリとみずみずしい棘のある朝顔

そんなアルバムだ
   ・・・真島昌利(ザ・ハイロウズ)


背中にリュックをしょって方方をバックパッキングしていると、
なぜかひょんな所で出喰わす顔見知りがいる。
言葉をかわさずとも、
 お互いのよごれたシャツや適度に焼けた顔を見ては何だかうれしくなる---。
僕にとってソウル・フラワーはそんな存在である。
なぜ旅の途中でばったり会うのか?
もしかすると僕らは同じものをさがし求めているのかもしれない。
   ・・・宮沢和史(THE BOOM)


‥‥つうかさ、もうこれらの言葉だけで十分過ぎないかい?(苦笑)俺がこれ以上何かを加えることによって、このアルバムへの賛辞を台無しにしてしまうのも何だよなぁ‥‥

  まぁ気分を取り直して。これ、マジで傑作。昨年、今年のフジロックへの参加、そしてそのライヴの素晴らしさ、各種イベントへの出演、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットとしての活動等、ここ1年程で彼らのこれまでの活動が広く認められたような気がする。

  モノノケに対してのメディアの消極的な声、前作「WINDS FAIRGROUND」や前々作「ELECTRO ASYL-BOP」に対する過小評価。ニューエスト・モデル/メスカリン・ドライヴ時代を絶賛したメディアはことごとく彼らを酷評し、「イロモノ」を見るような目でその動向を遠くから傍観していた。そして、メジャーレーベル(ソニー)との契約終了‥‥メディアだけではなくレコード会社からも見捨てられたバンド。そして前後するように、ボーカルの内海洋子とドラムの高木太郎の脱退‥‥バンドとして、初の大きな危機に直面したソウル・フラワー・ユニオンだったが、彼らが選んだ道は、ひたすらライヴを繰り返すことだった。その結果は、インディーズからリリースされたライヴアルバム「HIGH TIDE & MOONLIGHT BASH」に色濃く表れ、そしてその延長上にあるのがこの新作「SCREWBALL COMEDY」だ、という風に俺は捉えている。

  ライヴ盤のレビューでも書いた通り、これまでのSFUのアルバムからは「ライヴ感」というものが100%活かされていなかったように思う。スタジオワークとしての実験的作風の前2作はもとより、それ以前の2枚に関しても、サウンドとしては抜群なのだけど、一度彼らのライヴを観てしまうと、やはり完全には満足しきれなくなる。

  しかし、この新作にはライヴアルバムにもあった「ライヴ感」「疾走感」が十分すぎるくらい溢れている。楽曲のタイプにストレートなものが多いのも関係しているだろうが、個人的にはレコーディング前に何度もライヴで披露されて、その中から成長していった曲が多く収録されているから、この「生」「動」といった躍動感をこれまで以上に強く感じるのだろう。まぁ、インディー落ちした彼らの怒りや逆ギレ感といった「負のパワー」も少なからず影響しているだろう。まぁ結果として、それら負の力は正の力に変換されていったようだが‥‥正直、SFUに「負」なんて言葉、似合わないしな?

  楽曲がライヴを意識して作られたかのような、ストレートな作風ということもあって、これまでで最もニューエスト・モデル色が強いのも、今作の特徴だろう。ここまでワイルドにロックンロールする "サヴァイヴァーズ・バンケット" のような楽曲は、過去のSFUにはなかったし、アイリッシュテイストを盛り込んではいるものの、アッパーで攻撃的な "殺人狂ルーレット"、某都知事へ向けて唄われている "NOと言える男" といったある種単純明快なロックアンセムも、少なからずSFUに移行してからはなかっただろう。どことなくニューエスト時代の初期を思わせる作風に唸ってしまった(この内、後者2曲は先の野音でも先行披露されていたので、ずっと耳に残っていた)。

  また、バラードナンバーもこれまで以上に直球勝負なものが多く、特に‥‥既に名曲の仲間入りを果たしただろう "荒れ地にて" は、"満月の夕" に並んで涙腺を刺激するし、"夏到来" も今の彼らじゃなきゃ書けなかっただろう素直な曲だ。

  当然、これまでのような雑種的要素を盛り込んだ曲もある。"オーマガトキ"(「逢魔が時」の意)なんてタンゴからスタートして、最後はサンバだ。ただ、本当にそういう実験的楽曲というのはこれ1曲のみといった感じで(いや、普通の観点からすればかなり実験的作風の楽曲があるのだが、ことSFUに関してとなってしまえばごく普通という印象となってしまうから凄い)、それがアルバムの中で浮いているのかというと、全くそんなことはなく、他の楽曲群がアクの強いストレートなナンバーばかりなので、かえって印象が薄いような気も‥‥

  原点回帰とかいろいろ言われているが、本人達にはそういうつもりは全くなく、ライヴ栄えする曲を書いているうちに、そういう楽曲ばかりができあがった‥‥そういったところだろう。インディーで予算も少なかったので実験的要素が減った、という声もあるが、それだけでもないだろう。逆に過去2作で押し進めてきた要素は、個人的には前作で完成したと思っていたし、総決算&次への一手を提示する意味も込めてあのライヴ盤を出したのだろう、という風にも解釈している。現在の状況が作り出した、ミラクルな作品とも言えるだろうが、結局全てが巡り巡ってたどり着いて地点。それが「SCREWBALL COMEDY」なのだ。

  このアルバムは、これまでSFUが苦手だと思ってた方にこそ聴いて欲しい1枚だ。ベスト盤的要素の強いライヴ盤と共に合わせて聴けば、今のSFUの勢いを感じ取ることができるはずだ。マジでオススメの1枚。既に今年のベストアルバムに決定!



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(amazon:国内盤CD

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