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2001/11/24

KISS『REVENGE』(1992)

KISSというバンドは過去、何度かの転機を迎え、その度に新たな魅力を我々に提示してきた。そもそもがBEATLESのようなバンドを目指していた彼らがメイクを施した時点で、その最初の転機を迎えているのだ。その後も初のライヴアルバムだったり、メンバー4人同時ソロアルバムリリースだったり、エースやピーターの脱退だったり、そのメイクさえも落としてしまったり‥‥その度に彼らはそれを話題として用い、再び表舞台へと飛び出していったのだ。しかし、それらの転機の中には予め用意されていた作為的なものもあれば、本人達もが予期できなかった予想外の出来事もあった。そして、それがバンド史上にとって最悪な出来事だったことも‥‥

このスタジオ作品としては16作目に当たる「REVENGE」というアルバムは1992年5月にリリースされている。このアルバムから新たにドラマーとして、先頃のフェアウェルツアーにもピーターの代役として一緒に回ったエリック・シンガーが加わっている。アルバムは時代に呼応したかのようなヘヴィな作風で、新しい試み(ジーンがボーカルの曲からスタートしたり、10数年振りにポールとジーンの掛け合いがあったり、「DESTROYER」期のようなサイケな作風の曲があったり等)が幾つかみられる中、久し振りの全米アルバムチャートトップ10入り(6位)を果たした。

しかし、そうした大成功の裏には悲劇があったことを、最近のファンには意外と知られていないようだ。このアルバムは1991年11月24日に癌の為に亡くなった2代目ドラマー、エリック・カーに捧げられている。いわば追悼盤と呼べる1枚であり、或いは弔い合戦の1枚とも言えるのだ。

KISSは'80年代中盤から人気が下降傾向にあった。同時期に活躍したAEROSIMITHやCHEAP TRICK、ALICE COOPERといったアーティストがチャート上で再び成功を収め、新たなファンを獲得していく中、KISSだけが伸び悩んでいた。そして'90年代に入り、時代はよりハードコアなものを求めた。METALLICAやPANTERAの台頭、BLACK SABBATHに影響を受けたであろうシアトル勢の登場。ここでKISSは先のエアロやチートリには出来ないであろう手段を取る。そういったヘヴィな要素を取り入れ、これまでのきらびやかな要素‥‥所謂'80年代LA的要素を排除し、肉体性や暴力性を強調した音作りに移行していったのだ。勿論そこはKISSのこと、そうはいっても歌メロやコーラスはポップで親しみやすいものなのだが。所謂シアトル勢がBLACK SABBATHだけでなく、KISSやCHEP TRICKといったポップ勢にも影響を受けている事をご存じだろう。KISSはそういった事を全て逆手に取り、相手の領域に入り込んで自らの個性を際立たせたのだ。

KISSの新作が「REVENGE」というタイトルになるという話は、エリック・カーが亡くなる1年も前から噂に上っていたので、何もエリック・カーの弔いの為に付けられたタイトルという訳ではないのだが、やはり劇的な何かを感じずにはいられない。結局は『復讐』なんてタイトルは、当時の音楽シーンだったり、若手バンドに対してだったり、KISSを「時代遅れ」と笑った評論家やリスナーに対して向けたものだったのだ。そして最終的には『己』に向けた言葉でもあるのだ。

このアルバムを機にバンドは再び上昇気流に乗り、やはり10数年振りにライヴアルバム「ALIVE」の第3弾を発表したり、自らが制作に携わるトリビュート盤やらアンプラグド盤等、企画盤目白押し、更にはオリジナルメンバーでの再結成等々、話題を欠くことなく現在に至っている。しかし、その転機の大本となっているのが、低迷期をずっと支え続けたエリック・カーというドラマーによるものだったという事実、これだけは忘れないで欲しい。

早いもので、あれから10年経った。あの頃20歳だった自分も、気付けば30歳。これを機に、自分の気持ちにケリを付ける為にこのレビューを書いた。決して忘れるためにではなく、ずっと忘れない為に。



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投稿: 2001 11 24 04:15 午前 [1992年の作品, KISS] | 固定リンク