2017/08/26

RADIOHEAD『AMNESIAC』(2001)

2000年9月にリリースされたRADIOHEADの4thアルバム『KID A』は、傑作であると同時に当時の“ロック”リスナーおよび『OK COMPUTER』(1997年)を求めるファンには賛否を呼ぶ問題作でした。だって、音そのものはロックであることを放棄しているにも関わらず、聴けばやっぱりそれがRADIOHEADそのものだと理解できる不思議な作品だったんですから。僕もリリース当時、「ここにギターマジックはないけど、概念としては立派な“ロック”だ」というようなことを書きました。今改めて読み返しても、その考えは1ミリもブレていません。

しかし、この『KID A』発売から約8ヶ月後に早くも次のアルバム『AMNESIAC』がリリースされると聞いたとき、しかもそのアルバムで再びギターロックに回帰するという噂を耳にしたときは、ちょっと興奮したことを覚えています。いやいや、お前言ってることブレブレだろ?と突っ込まれようが、あのとき感じた正直な気持ちに嘘はつけません。『KID A』を通過したRADIOHEADが今、ギターロックで何を、どう鳴らすのか。気にならないわけがないじゃないですか。

しかし、実際に完成したアルバムを聴くとギターロック的楽曲はほんの数曲。ぶっちゃけ、「I Might Be Wrong」と「Knives Out」ぐらいじゃないですか。オープニングの「Packt Like Sardines In A Crushed Tin Box」は『KID A』の流れを汲みつつよりミニマル化してるし、続く「Pyramid Song」はピアノとストリングスを軸にしたスローナンバーだし。そもそも頭2曲にギター入ってないし。

本作自体、『KID A』と同タイミングに制作されたものですし、そりゃあ作風的に似ても仕方ないわな。ただ、あえてギターロック的楽曲は『KID A』からは外して『AMNESIAC』に回したのは、なんとなく理解できる気がします。完全に感覚的な話になるけど、『OK COMPUTER』の後に続くのは『AMNESIAC』ではなく『KID A』じゃなくちゃいけなかったんだと。逆じゃダメだったんですよね。まぁリスナー的には逆のほうが入りやすいんだけど。

正直『KID A』ほどの衝撃は受けなかったし、当時ナップスターに新曲がバンバン流出してたので先にそっちで聴いてしまっていたのもあったけど、確かに入り込みやすさは今作のほうが数段上だと思います。あと、いくら概念的に『KID A』がロックだと力説しても、もはや『AMNESIAC』はロックに括らなくてもいいんじゃないか、そういう気さえしてきます。

そう考えると、『KID A』リリース時のインタビューでトム・ヨークが発した「ロックなんか退屈だ。僕は退屈だと思う。だってホントに、ゴミ音楽じゃないか!」という言葉の重みが、本作ではより増すんですよね。面白いことに。

『KID A』リリースからあまり間隔が空いてないせいか、本作に対する評価ってそこまで高くない気がするのですが、実は『KID A』を語る上では欠かせない重要な存在だと感じています。



▼RADIOHEAD『AMNESIAC』
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投稿: 2017 08 26 12:00 午前 [2001年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2017/06/01

MR. BIG『ACTUAL SIZE』(2001)

2001年夏に発表された、MR. BIG通算6枚目のスタジオアルバム。プロデューサーには、リッチー・コッツェン(G, Vo)が連れてきたリッチー・ズィート(リッチーが参加したPOISON『NATIVE TONGUE』(1993年)やリッチーの『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)などを手がけたプロデューサー)が迎えられ、ほぼリッチー・コッツェン主導のもと制作された1枚と言っていいでしょう。

事実、ソングライティングの面ではバンドの創始者であるビリー・シーン(B)が1曲(「How Did I Give Myself Away」)のみクレジットされているだけで、大半がリッチー、そしてエリック・マーティン(Vo)、さらにはパット・トーピー(Dr)がそれぞれメインで書かれた楽曲が中心。ビリーのプレイもオープニングの「Lost In America」や「Suffocation」でこそテクニカルなフレーズが登場するものの、全体的には地味の一言。完全に存在感を消されているような印象すら受けます。

だって、アルバムからのリードシングル「Shine」(リッチー・コッツェンとリッチー・ズィートで書かれたポップチューン)の地味さといったら、前作『GET OVER IT』(1999年)以上ですから。途中、ギターとベースのユニゾンフレーズも登場しますが、決してテクニカルなものではないし。ボーカルにしても、コーラスをとるリッチーの存在感が前作以上で、エリックが歌っているからMR. BIGのアルバムであることを思い出すくらい。リッチーの声に気を取られてたら、確実に彼のアルバムと勘違いしちゃうんじゃないでしょうか。

確かに、リッチーの持ち味を生かした「Suffocation」(しかもこの曲、パットがチャック・ライトらと書いた楽曲なのだから驚き)をはじめカッコいい曲も複数存在します。しかし、それらは別に「MR. BIGである必要のないもの」ばかり。エリックやリッチーがソロでやればまったく問題のない楽曲ばかりなんです。

そういえば、先の「Suffocation」しかり、本作ではパットが今まで以上に大活躍しています。意外にもフックになってくるのは「Crawl Over Me」「Cheap Little Thrill」など、パットが書いた曲ばかりですし。それも、どこかポール・ギルバート時代に通ずる不思議な魅力があるんですから……もしかしたらMR. BIGがこの時点でもMR. BIGらしさを保てていたのは「エリックの声」という対外的な要素と、パットのソングライターとしての才能だったのかもしれませんね。

そんなパットの頑張りがあったものの、ビリーからしたらそりゃあ不満たらたらですよね。実際、リリース前のインタビューでビリー、かなり本音を漏らしていたはず。その結果、リリースを待たずしてビリーがバンドから解雇されるという青天の霹靂。その直後にバンドは本作とそのツアーをもって解散することを発表し、そのツアーにもビリーが参加することを改めてアナウンスするのです。要はビリー、サポートメンバー扱いですよ。

2002年春にはここ日本でもフェアウェルツアーを行いましたが、僕は行ってません。そんなギスギスしたバンド、見たくないもの。

そんなネガティブな思い出が多い作品だけに、個人的にはどうしても正当な評価を下しにくいのですが……バンドが無事再結成した今聴くと、そこまで悪くない作品だなと思いました。ただ、「これをMR. BIGがやるべきか?」と問われたら「NO」と即答しますけどね。



▼MR. BIG『ACTUAL SIZE』
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投稿: 2017 06 01 12:00 午前 [2001年の作品, Mr. Big, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/01/29

SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』(2001)

「脳を犯す」

日本盤の帯に記されたこのキャッチコピーだけで十分に伝わるんじゃないでしょうか。そんなSYSTEM OF A DOWN(以下、SOAD)通算2枚目のスタジオアルバム『TOXICITY』は2001年晩夏にリリースされました。

1stアルバム『SYSTEM OF A DOWN』発売から約3年。この『TOXICITY』発売までの間に、SOADは1999年4月、2001年7月の二度来日公演を実施しています。このうち後者は『FUJI ROCK FESTIVAL '01』での来日で、3日目のGREEN STAGEでヘッドライナーのエミネム、準トリのTOOLに続く3番手というポジション。『TOXICITY』発売直前という絶妙なタイミングで、同作から早くも8曲も披露してくれました。僕もフルではないものの、途中から観てショックを受けたのを覚えています。

プロデューサーは前作から引き続きのリック・ルービンと、メンバーのダロン・マラキアン(G, Vo)。サージ・タンキアン(Vo, Key)もコ・プロデューサーとしてクレジットされています。内容は前作をより押し進めたもので、変態度、ハードコア度、そしてエモ度それぞれがメーターを振り切れんばかり。ただ、音が分厚くて暴力的な前作(デイヴ・サーディがミックス)より今作(アンディ・ウォレスがミックス)のほうがより洗練された印象があります。逆に洗練されたことにより、バンドの変態性がより際立ってきたという見方もできるので、これはこれでアリではないでしょうか。

オープニングの「Prison Song」の間を生かしたアンサンブル、激しさとエモさが同居したメロディに、冒頭から心を奪われます。そこから「Needles」を起点に始まるハードコアな流れも抜群だし、その合間に「Chop Suey!」や「ATWA」などの楽曲が挿入されることで、それぞれの魅力をより増幅させることに成功しています。アコースティックギターを導入することでより哀愁味が増した「Chop Suey!」、スローバラードの要素が強い「ATWA」はもちろんですが、ラストの「Aerials」が持つ壮大さも前作以上の広がりを見せていると思います。

本作最大のポイントは、ダロンがプロデューサーとして、そしてボーカリストとして実力を発揮し始めたことではないでしょうか。シンガーとしても活躍場所が前作から格段に増えてますし、今作の(よい意味での)整理された内容は彼の手腕によるものが大きいのではないかと。そして、その才能は2005年発売の二部作へと引き継がれることになります。



▼SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』
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投稿: 2017 01 29 12:00 午前 [2001年の作品, System of a Down] | 固定リンク

2015/10/05

MEGADETH『THE WORLD HEED A HERO』(2001)

ムステイン、エルフソン、アル・ピトレリ、ジミー・デグラッソという新体制で制作されたMEGADETHの9thアルバム。インディーズのSanctuary(流通はメジャーのBGM系列)からのリリースで、チャート的には前作と同じ16位だったもののセールス的には落ちる結果に。

音楽的には5th『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1992年)以降で目指した作風に再チャレンジしつつも若干初期のひんやりした“らしさ”が復活し、ポップさが減退したことで硬派な印象を与える。タイトルとは関係ないように思えるえげつないアルバムジャケットからも、「尖ったMEGADETHよ、再び」といった姿勢が見え隠れする。

アルバムタイトル曲をはじめ「1000 Times Goodbye」「Return To Hangar」、前年発売のベストアルバム『CAPITOL PUNISHMENT: THE MEGADETH YEARS』にも収録された「Dread & The Fugitive Mind」など今聴くとなかなかな楽曲も含まれている。「MEGADETHであってMEGADETHではない」から「尖ったMEGADETHよ、再び」の姿勢は評価するがどこか守りすぎという印象もあり、アルバム全体のインパクトは過去8作品ほどではない。

本作リリース後の2002年、ムステインが腕の故障を理由に音楽活動休止を発表し、バンドは解散。結果としてなんともいえない結末を迎えるのであった。



▼MEGADETH『THE WORLD HEED A HERO』
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投稿: 2015 10 05 12:30 午前 [2001年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2005/07/08

寝る前にこれ聴け!(1)

 新コーナー。昔懐かしい(といっても、'80年代半ば〜'90年代前半を中心とした)HM/HRのアルバムを毎回3枚取り上げるというコーナー。単純に、俺が寝る前にこの3枚をCD棚から引っ張り出して聴くだけ、という話。何の役にも立たないかと思いますが‥‥

まず1枚目。


・SKID ROW「SLAVE TO THE GRIND」('91)
 久し振りに引っ張り出して聴いてみたら、スゲーかっこ良かった。全米初登場1位とか、当時GUNS N'ROSESやMETALLICAといったバンドのオープニングアクトをやってたとか、前座にFAITH NO MOREやSOUNDGARDEN、PANTERA等を使ってたとか、そういった情報はどうでもよく、とにかくひたすらカッコいい。そして泣ける曲多し。


▼SKID ROW「SLAVE TO THE GRIND」(amazon


・WINGER「IN THE HEART OF THE YOUNG」('90)
 RATTのプロデューサー(ボー・ヒル)が手掛けてることから、RATTフォロワー的に思われてたデビュー当時。何となくサウンドと声がそれっぽかったからね。けど、メンバーは全員スタジオミュージシャンなり誰かのバックなりで鍛え上げられた名手ばかり。テクニカルHRの極み。
 けどこのアルバムではDEF LEPPARD的な楽曲指向を強めてるんだよね。曲によっては打ち込みベースを使ってたり、あるいはプログレ並みのテクニカル路線だったり。バランス的に一番好き。中途半端っていう人もいるみたいだけどね。


▼WINGER「IN THE HEART OF THE YOUNG」(amazon


・SADS「THE ROSE GOD GAVE ME」('01)
 唯一色の違う、しかも邦楽、そして2001年の作品。けどこれがメチャメチャ良い。
 ほぼ全編英語(日本語曲は数曲のみ)、MOTLEY CRUEやMARILYN MANSONなんかを彷彿させるヘヴィロック路線。SADSは「BABYLON」までしか聴いてなくて、その後の清春ソロは聴いてたんだけど、良いねこのアルバム。普通にハードロック/ヘヴィロックじゃんか。ギターとドラムが現在THE DUST'N'BONEZにいるせいか、空気感が似てるよね。ま、プレイとかはまんまだけど。
 ボーカルのせいで好き嫌いハッキリするだろうけど、意外と洋楽HRファンにもアピールするんじゃねーの? 俺は肯定派。


▼SADS「THE ROSE GOD GAVE ME」(amazon

投稿: 2005 07 08 01:30 午前 [1990年の作品, 1991年の作品, 2001年の作品, Sads, Skid Row, Winger] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/05/07

カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『初めてのハッピーバースディ!』(2001)

 石川梨華がモーニング娘。に加入したのが、5年前の4月。そしてこの曲がリリースされたのが、4年前の4月‥‥もうそんなに時間が経ったんだねぇ。当の石川も気づいたら二十歳になり、今日を以てモーニング娘。を卒業。時の流れの早さ、そして残酷さに一喜一憂する今日この頃ですよ。

 俺が最初に石川を意識し出したのは‥‥いや、単に意識したってだけのレベルですが‥‥実はタンポポでもなく "ザ☆ピ〜ス!" でもなく、この曲だったんだよね。だってさ、それまでの他のハロプロ・ユニットと比較しても、明らかに異色でしょ。だってさ、「カントリー娘。」というユニットがメジャーデビューするに際して、そこに「に石川梨華(モーニング娘。)」を付け足しちゃうわけですよ。個人名+モー娘。ですよ。モー娘。の当時のネームバリュー(ベスト盤が200万枚を記録した後)を上手く利用し、尚かつこれから前面に押し出そうとしている石川をまるでセンターに配置したかのようなユニット。完全に過去のカントリー娘。とは別物の、だけどちょっとだけそれまでのカントリー娘。を意識させるようなサウンドアレンジも併せ持った‥‥なんじゃこりゃ?なユニット。

 この曲には "初めてのハッピーバースディ!" が2テイク収録されています。E.L.O.の "Last Train To London" を味付けに使ったアレンジのトラック1と、カントリー・ミュージックを意識したゆったりしたアレンジのトラック2。この2曲を聴くと微妙な関係が見え隠れしたりして‥‥テレビやライヴ等で歌われるトラック1に対する別バージョンとしてのトラック2、というのが普通の考え方なんでしょうけど、トラック2でしか聴けない「声ネタ」が幾つも存在することから、実は最初にトラック2の方から制作(レコーディング)されたものの、やはりちょっとシングルには‥‥ということでアッパー気味でメジャー感の強い別アレンジ(トラック1)が作られたのかな、と。

 この曲には "初めてのハッピーバースディ!" が2テイク収録されています。E.L.O.の "Last Train To London" を味付けに使ったアレンジのトラック1と、カントリー・ミュージックを意識したゆったりしたアレンジのトラック2。この2曲を聴くと微妙な関係が見え隠れしたりして‥‥テレビやライヴ等で歌われるトラック1に対する別バージョンとしてのトラック2、というのが普通の考え方なんでしょうけど、トラック2でしか聴けない「声ネタ」が幾つも存在することから、実は最初にトラック2の方から制作(レコーディング)されたものの、やはりちょっとシングルには‥‥ということでアッパー気味でメジャー感の強い別アレンジ(トラック1)が作られたのかな、と。

 あと、あれですよね。何だかんだ言って、この曲って第二期タンポポの延長線上にある楽曲ですよね。アレンジをそれに近づけてる(E.L.O.等の、永井ルイ・テイスト)ってのが一番大きいんでしょうけど、まぁ要するに‥‥第二期タンポポを結果的にモー娘。第4期メンバー‥‥特に石川寄りに近づけたかった、と。カントリーをメジャーで売り出そうという思惑と、石川を今年(2001年)は大々的に売り出そうという思惑が見事に一致した‥‥というのが言い過ぎか。単なる後付けですけど。

 個人的には "ザ☆ピ〜ス!" 以上に石川梨華らしい1曲かなぁ、と。まだ当時は『ネガティヴ石川』を若干引きずりつつも、彼女をより前向きにさせたのがこの曲であって、そこから完全に抜け出せたのが "ザ☆ピ〜ス!" だったのかな、と。

 とは言いつつも、この曲は石川ひとりで成り立ってるとは思いませんよ。あさみの存在も必要でしょうし、何よりもりんねの存在も忘れてはいけません。ここ1〜2年の間にモーヲタになった人には印象が薄いでしょうけど(ていうかそんな特異な人いるのか?)、りんねがここまでずっとカントリーを守ってきたからこそ、石川も、そしてりんねもあさみもこの曲に出会えたんだよなぁ‥‥うん。

 さ、あと数時間したらこの曲を聴きに出かけますか‥‥



▼カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)「初めてのハッピーバースディ!」(amazon

投稿: 2005 05 07 03:04 午前 [2001年の作品, カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/02/28

AMERICAN HEAD CHARGE『THE WAR OF ART』(2001)

AMERICAN HEAD CHARGE Frontman Says Producer RICK RUBIN Gave Band 'No Direction'(BLABBERMOUTH.NET)

 その存在すら忘れてたんですが、いましたねぇ、そういうバンド。日本には確か2002年3月のSLIPKNOT来日公演のオープニングアクトとして1回やってきてますよね。俺、観たもん。NKホールで。SLIPKNOTばりに人数が多くて(7人だったかな)だけどSLIPKNOT程の「多人数の必要性」が全然感じられないところがね‥‥うん。音がただのヘヴィロックってわけじゃなくて、そこにゴスの要素とか視覚面でもシアトリカルな要素が入ってたりで、個人的には「化けたら面白い存在になるんじゃない?」って思ってたんだけど‥‥全然話題になりませんでしたね。

 記事は、1st「THE WAR OF ART」をリリースした『AMERICAN RECORDINGS』を離れた件について、そして如何に(1stのプロデューサーである)リック・ルービンがバンドをコントロールしていたか、について等。この人、確かに評判は良くないですよね。SLAYERも「ただスタジオにいるだけで、特に何かをやっているわけじゃない」みたいな不満を漏らしてたしね。

 けどこの人が過去に手掛けた名盤の数々を考えると‥‥相性もあるだろうし、あとはスタッフ(エンジニア等)に恵まれてるってのも大きいかな。レッチリのルービン・プロデュース作でエンジニア/ミキサーをしてた人って、その後大ブレイクしてるんだよね。ブレンダン・オブライエン然り、デイヴ・サーディ然り。そういう人選というか人を見る目はあるのかも。

 んで話をAHCに戻して‥‥俺、こいつらのアルバム、買ってたわ。しかも日本盤で。



▼AMERICAN HEAD CHARGE『THE WAR OF ART』
amazon


 今、久し振りに引っ張り出して聴いてるんだけど‥‥



 悪くはないけど、曲が多過ぎて(米盤は16曲、日本盤は17曲入り)散漫に感じられちゃうんだよね。ボーカルもスクリームがメインで単調だし、例えばこのアルバムリリース後(リリースは2001年夏。日本では2002年1月)にアメリカやイギリスでスクリーモが台頭し出して、そっちがどんどん主流になってったでしょ。それを聴いた後となるよ、余計に単調なんだよね。バックトラックはシンセとかサンプリングとかを効果的に使って、普通のハードコア/ラウドロックで終らないように工夫してるんだけど‥‥惜しいよなぁ。もっとメロウな要素があるとまた違ったんだろうけど。あるいはバックトラックで完全にシンセを全面に押し出しちゃうとか。シンフォニック寄りにするとかさ。

 そんな彼等、上記の通りメジャーの『AMERICAN RECORDINGS』を離れ、先日インディーから2ndアルバム「THE FEEDING」をリリースしたようです。まだ未聴ですが‥‥正直買おうか買うまいか迷ってます。だって、このジャケットだもんなぁ‥‥まぁジャケット通り、シアトリカルでゴスな面をもっと前に打ち出してるのなら、かなり興味をそそりますけどね。



▼AMERICAN HEAD CHARGE『THE FEEDING』
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投稿: 2005 02 28 12:57 午前 [2001年の作品, American Head Charge] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/12/24

プッチモニ『ぴったりしたいX'mas!』(2001)

 クリスマスイヴ。折角休みを貰えたというのに、誰かと過ごすという予定もなく、日中は外をぶらついて時間を潰す。別に365日あるうちの、他の364日と何ら変わらない1日だっていうのに、自分以外の周りは浮き足立ってる。ま、仕方ないか‥‥俺も誰か「大切な人」でもいれば、きっと浮き足立って気が気じゃないんだろうけど。

 過去はどうだったかって? 思い返してみよう‥‥ゴメン、浮き足立ってたわ。浮き足立ちまくってたわ。うん、否定しませんよ。正しいです。みんな正しい。俺が間違ってるんだよ、多分。

 とある店先から、いろいろJ-POPモノのクリスマスソングが聴こえてきたんだけど、その中に個人的に聞き覚えのある曲が。今は亡き(と言った方が正しいのかな)プッチモニの "ぴったりしたいX'mas!"。12月に入って二度目か、この曲を聴くのは。1回目はメロン記念日のライヴで、柴田と大谷が歌ってたんだっけ。そして今日耳にしたのは、当然オリジナルの方。懐かしい‥‥まだ3年しか経ってないのに、遥か彼方‥‥もう10年も前のヒット曲のように感じられてしまうのは、今の日本の音楽シーンの移り変わりの早さと、ハロプロ自体の新陳代謝の急激さを象徴してるのかもしれないね。

 「あの頃は良かった」とか言うつもりは全然ないんだけどね。いろいとキツイ1年だったけど、去年より今年の方が断然楽しい1年だったと思うし、そして今年よりも来年の方が更にもっと楽しい1年になるはずだし。過去の良かった思い出、楽しかった思い出を切り貼りして、それだけを眺めて殻に隠るよりも、どうなるか判らないけど何か得体の知れない楽しみが待っているであろう未来に目を向けた方が、俺は全然幸せだと思うけどね。今より悪くなるこたぁねぇだろう、的な考えね。そのくらいの気楽さで今年も残り1週間、全力で突っ走っていきたいな、と。今よりもまだ幼さが残る後藤真希の歌声を聴きながら、ふとそんなことを考えた1日なのでした。

 そう、何にも変わらないのよ、他の364日と。

 けどさ‥‥この曲聴くと最初に思い浮かべるのは‥‥この曲がヒットした後の正月に、キャバクラで金髪ヅラ+ナース服のコスプレさせられて、この曲をキャバ嬢と一緒に歌った、という悲しい思い出かな‥‥


 ‥‥うん。まだ生きていける。つーかまだ生きてるよ、俺!(涙目)



▼プッチモニ「ぜんぶ!プッチモニ」("ぴったりしたいX'mas!" 収録)(amazon

投稿: 2004 12 24 08:30 午後 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, プッチモニ] | 固定リンク

2004/05/23

OZZY OSBOURNE『DOWN TO EARTH』(2001)

6年待ってこれかよ‥‥リリース当時の偽らざる気持ちが、これ。いや、リリース前にラジオで聴いたアルバム1曲目 "Gets Me Through" を聴いた時は、確かな手応えを感じたんだけど‥‥

世間的にラウドロック/ヘヴィロックと呼ばれるジャンルが盛り上がっていったのが、'90年代末。そんな中実現したBLACK SABBATHの(一時的な)再結成。新曲2曲を含むライヴアルバムもリリースされたものの、オリジナルアルバムは'95年の「OZZMOSIS」以降6年以上に渡ってリリースがなかったオジー・オズボーン。今や「ヘヴィメタル界の帝王」なんて形容詞もいらない程に「HM/HRの象徴」と化した彼が、こんなに「オイシイ」時期に過去の楽曲を再録音したものを出してお茶を濁すなんて‥‥いや、それを時代が求めていたことも重々承知してるよ。けどさ‥‥やっぱり俺達は「新しいオジーの曲」「カッコいい最新型のオジー」が聴きたかったわけじゃない、違う?

メンバーが流動的で固定されないまま突入したレコーディングは長期に渡ったようですが(というか、ソングライティングに関してもかなりいろんな外部ライターと作業をしたようですね)、最終的に21世紀に入った2001年10月に、ようやくリリースされたのがこの「DOWN TO EARTH」。そしてリリースされたアルバムを手にして感じたのが、最初の行。

プロデューサーにメタル畑以外からの人選(U2、THE CURE、デヴィッド・ボウイのTIN MACHINE等を手掛けるティム・パーマー)という時点で、個人的には嫌な予感がしてたんだけど‥‥うん、正直に書くね。俺にとっては、オジーがリリースしたソロ・アルバムの中で、一番印象が薄い、一番つまらないアルバムがこれ。勿論、その辺の2流バンドのアルバムと比べれば雲泥の差なんだけど(クオリティー的には非常に高いとは思いますよ、このアルバム)、けどさ‥‥誰が今のオジーにカッチリ作り込まれた品の良いアルバムを期待する?

まずさ、このアルバム最大の失敗点って、アルバム制作前までにバンドを固定しなかったことだと思う。「OZZMOSIS」の時もいろんなソングライターと共同作業で制作してるけど、基本的にはすぐ側にザック・ワイルドという最高のギタリスト/ソングライターがいたし、更には気心知れたギーザー・バトラーというベーシスト/ソングライターもいて、新顔だけどアホみたいに叩きまくるディーン・カストロノヴォもいた。こういったメンバーがしっかり自己主張してたんだよね、アルバム内で。

ところが今回の場合、リズム隊はマイク・ボーディン(元FAITH NO MORE)とロバート・トゥルージロ(元SUICIDAL TENDENCIES、現METALLICA)を固定しながらも、ギタリストに関しては曲作りの時点ではジョー・ホームズが参加、しかしこれといったケミストリーがみられず脱退、レコーディングではバッキングをプロデューサーのティムがこなし、ソロパートと一部のバッキングをまたザックに依頼するという形。つまり、ザックは自分が書いていない曲(ギターリフ)を弾かされたり、ただソロを弾くために呼び戻された、と‥‥こんな作業にケミストリーが生まれると思う?

そりゃね、確かにザックのプレイは凄いですよ。彼が参加したスタジオ盤過去3作と比べれば暴れ度は相当低いですが、それでも彼のプレイに突入した途端に場の空気が一変し、緊張感が高まるし。何だろうねぇ、これ。

何度も書くけど、曲は決して悪いとは思わないのよ。そりゃさ、一流のソングライターが山ほど参加してるんだもん。スコット・ハンフリー(MOTLEY CRUEやROB ZOMBIE等のプロデューサー)、ジェフ・ニコルズ(BLACK SABBATHのキーボード等)、マーティ・フレデリクセン(AEROSMITH等で有名)、ミック・ジョーンズ(FOREIGNER)、アンディ・スターマー(元JELLY FISH。現在は日本のPuffyのプロデュース/ソングライターで有名)、ダニー・セイバー(元BLACK GRAPE。UKロック/ダンス系プロデュース/リミックスで有名)といった名前が共作者として並び、更に今回アルバムに収録されなかった曲ではデイヴ・グロール(元NIRVANA、現FOO FIGHTERS)、マイク・マクレディ(PEARL JAM)、そしてザック・ワイルドの名前もあったそうで‥‥勿体ない。それ全部ザックのギターを全面的に導入して再録音してさ、今から出そうよ、ねぇ‥‥

まぁそういった錚々たるメンツによる楽曲だけど、最終的にどれも「オジー印」の楽曲に仕上がっているのは、もはや「オジーが歌えば全部オジーの曲に聞こえる」という事実の象徴というかなんと言うか‥‥言い方悪いけど、全部同じに聞こえてくるというのも事実でして。なんて言うかねぇ‥‥バリエーションが狭い、というか、過去の焼き直し、というか、新境地らしい新境地なしの安全パイ、といったイメージが非常に強い作品でして。冒険が少ないんですよね‥‥新しい発見も少ないし。で、それをダメ押しするかのような、没個性的なバックトラック‥‥リズム隊さ、もっと華があるはずなのに、全然普通。ベースももっとバキバキいったプレイをするはずのロバートが、完全に地味に徹してるし。そしてギターな。恐らく半分以上ティムが弾いてると思うんだけど‥‥本当につまらない。やっぱりこの人、ヘヴィメタルの人じゃないしさ、メチャメチャ普通に刻んでるだけ、という真面目なプレイが基本なのね。だからさ、ザックのプレイと思われるギターが登場すると、完全に食われる。音圧も全然違う。曲のイントロでザックが特徴あるチョーキング&ハーモニクス等で盛り上げてから歌に突入すると‥‥急にバッキングの音圧が低くなる。で、またザックのギターが入ってくると分厚くなる。プロデューサーとして、これはアリなの??

少なくともファンはオジーのアルバムに、こんな品の良い作品集は求めてないはず。もっとギトギトしたリズム隊に、ザラザラしてささくれ立ったギターが被さって、そこにダブルボーカルのオジーの声が乗る‥‥それだけで「おおっ!」ってなるのにさ。結局、オジーのことを理解してない奴、オジーに対して敬意を払えない奴と仕事するとこういう結果に終わるという、悪いお手本ですよね。ホント、これなら「THE ULTIMATE SIN」の方が100万倍も優れてると思うよ。

ミドルテンポ中心でもフックが沢山仕込まれていた前作。楽曲のバリエーションが一気に広がった結果、ソロとしては過去最高のセールスを記録した「NO MORE TEARS」。'90年代はこの2枚しかオリジナルアルバムをリリースしてないわけだけど、ホントこれらと比べるのが申し訳ない程の内容。いや、何度も書くけど曲は悪くないのよ、うん。だからね、アレンジだったりさ、制作側の熱意だったりさ、そういった要素に欠ける‥‥そう、決定的な「売り」がないんだよね。「オジーが今回も歌ってます!」ってのじゃあねぇ‥‥オジーのアルバムなんだから当たり前だし。これ聴いちゃうとさ、本気でオジーは「オジー+バックバンド」という構図で、ソロ・シンガーとしての道を歩みたいのかなぁ‥‥と心配になってきちゃうよね。まぁザックは今あの調子だし、本気で再び一緒にやる気があるのかどうか(いや、ちゃんと声さえかかれば、彼も本腰入れて仕事すると思うけどね)‥‥そしてリズム隊‥‥その後、ベースが元METALLICAのジェイソン・ニューステッドに変わったり、またまたギーザー・バトラーが出戻りしたり、かなり流動的。本気で「ケミストリー云々」とか口にしてるのか正直疑問(ま、この場合はオジーというよりも、マネージャーであり妻であるシャロンの意見が強いんだろうけど)。

あんまりさ‥‥オジーのことで悪いこと書きたくないんだけどねぇ‥‥やっぱりほら、自分にとっても「スーパースター」だからさ、どうしても常に最高でいて欲しいわけじゃない? そんな人が6年振りにアルバム出したら期待以下だったらねぇ‥‥で、ここから更に現時点で3年近く経ってるわけじゃない? その後当然のように新譜が出る気配はないし、で昨年末のあの大事故だし。今年の夏はソロとしてなのか、あるいはBLACK SABBATHとしての活動なのか現時点では不明ですが、とにかくね‥‥まだまだ現役でやる気があるなら、本当に「凄い」アルバムを期待してます。もう「良い」アルバムは今回ので十分ですから。



▼OZZY OSBOURNE『DOWN TO EARTH』
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投稿: 2004 05 23 04:29 午前 [2001年の作品, Ozzy Osbourne, Zakk Wylde] | 固定リンク

2004/05/17

モーニング娘。『ザ☆ピ~ス!』(2001)

  今やモーニング娘。のライヴでは欠かせない代表曲のひとつとなった "ザ☆ピ~ス!" も、リリース当時は「またダンス☆マンがアレンジかよ‥‥」とか「マンネリだよね、この路線も‥‥」なんて声が一部のファンの間で囁かれたみたいでして‥‥その後この曲がどんな運命を辿ったかは、ファンじゃなくてもご存知でしょう。テレビの歌番組での特番等で、新曲以外を歌う機会があった場合、"LOVEマシーン" の次に歌われる頻度が高いのがこの曲なんですよね。ある意味、ここ数年のモーニングの路線を決定づけた1枚だったのかもしれませんね(勿論、それまでの積み重ねあってこそ、ですが)。

  モーニング娘。にとって通算12枚目、2001年最初のシングル(前作 "恋愛レボリューション21" から約7ヶ月振りという、彼女達にとって最も長いブランクを経験した時期)というだけでなく、中澤裕子卒業(2001年4月)後、最初のシングルであり、また同年8月末には第5期メンバーが決定するという微妙な時期での、9人編成による最初で最後のシングルとなったのが、"ザ☆ピ~ス!" と "でっかい宇宙に愛がある" という名曲2曲から成る1枚。前者は前述したようにダンス☆マンのアレンジによる、歌謡ファンク路線をなぞった1曲で、後者は鈴木俊介アレンジによる、"I WISH" 路線を更に押し進めた歌謡ゴスペル路線といった1曲。共にその後もライヴで歌われる機会が多い楽曲で、2004年3月にリリースされたベストアルバム第2弾「ベスト!モーニング娘。2」にも2曲共収録される程。

  "ザ☆ピ~ス!" はダンス☆マンがアレンジに携わっていることから "LOVEマシーン" の括りで語られることが多いみたいですが、前作 "恋愛レボリューション21" の延長線上にある構成を持つ1曲で、似て非なるタイプの曲といえるかもしれません。"LOVEマシーン" が'70年代のファンクへのリスペクト&オマージュから始まり、そこにつんく♂の持ち味を振りかけた『歌謡ファンク』路線を決定づけた1曲だとすると、"恋愛レボリューション21" はそこから更に飛躍し、1曲の中にいろんな要素、いろんなタイプのメロディを詰め込んだ(あるいはコピー&ペーストした)『ヒップホップ要素を持った歌謡ファンク』路線と呼ぶことができると思います。この "ザ☆ピ~ス!" は正しくその路線を更に押し進めた作品で、次々といろんな要素が飛び出します。イントロでの歪んだドラムにラジオボイスでのアジテーション、続くチャールストン風メロディーを持った軽やかなポップ感覚、歌に突入すると急に従来の歌謡ファンク路線(ここではEARTH, WIND & FIREの "Boogie Wonderland" を元ネタにしてるのかな?)へと流れ、サビで再びメジャー感溢れるポップなメロディへと変化‥‥といったような感じで、イントロから1コーラス目だけでもこれだけの展開を持つんですね。しかもイントロで登場する「HO~ほら行こうぜ」というアジテーション風フレーズは所々に、いろんなアレンジを加えて登場するから、聴く人が聴けば「せわしない」とか「継ぎ接ぎだらけで、曲として成り立ってない」と酷評するかもしれません。しかし、この曲の凄みってやっぱりファンキーなバンドサウンドと豪華な生ブラスによって表現される、そういった継ぎ接ぎ感だと思うんですよね‥‥

  この曲でメインを取るのは、いつもの安倍なつみと後藤真希というツートップ、そして初のセンターとなる石川梨華の3人。歌う比重的には安倍・後藤のウエイトが高いんですが、何故か『石川のための歌』という印象が強いのは、彼女のフォトジェニック的要素の強さと、何よりも常に真ん中にいる時間が長いからでしょうね。そういったビジュアル面での強調と、歌中盤に登場するあのセリフ‥‥このインパクトが全てを決定づけているように感じます(逆にこのセリフ部分があるからダメ!って人もいるんでしょうね。初めてこの曲を聴いた頃の俺みたいに)。見方を変えれば、石川がいるからこそ成立する楽曲とも言えるでしょう。安倍・後藤だけじゃここまでの完成度(完成度?)に達しなかったんじゃないか‥‥そう思える程、石川の存在感が光る1曲。タイミング的にもバッチリだったんですよね、うん。

  一方、カップリング(というよりも既に両A面と呼べる) "でっかい宇宙に愛がある" は先にも書いたように、全員が終始ユニゾンで歌う歌謡ゴスペル調ナンバー。イントロのフェードインしてくるハモンドオルガンといい、ピアノが目立つバンドアレンジといい、曲中に挿入される手拍子といい、正しくゴスペルのそれをなぞっていると思われます。実際、"I WISH" にもその要素は十分感じられたんですが、あそこではその後のモーニングを担っていく若いメンバー(3期の後藤+4期の4人)を中心に据えて、各パート毎に代わる代わるソロを取っていく構成でした。しかし、ここでは常に全員(パートによっては半分に分けたり等してるが、常に大人数)でユニゾンを取る‥‥そこにこの曲の魅力があるんだと個人的には思っています。全員がユニゾンで歌うという意味では、"LOVEマシーン" のカップリング曲だった "21世紀" という楽曲がありますが、それともまた違った魅力がここには存在します(あれもある意味ゴスペルチックでしたしね)。歌の力、「歌う」ことの魅力、歌で何かを伝えるということ‥‥所謂「歌の原点」に立ち返った1曲であり、その歌詞の内容共々、当時のモーニングの全てを凝縮した1曲に仕上がっていると思います。単なるパーティーチューンでもなく、かといって説教じみてもいない。まぁ「24時間テレビ」という巨大な番組に起用されることで、またその意味合いも若干変わってしまったような気もしますが‥‥ぶっちゃけ、アイドル云々とか抜きにして泣ける曲だと思います。いや、俺は素で泣けるんだけどね、"I WISH" とかこの曲とか聴くと‥‥

  9人編成での唯一のシングルということで(=新メンバー加入前ということで)いろんなことが危惧されたと思うんですが、リリースから3年近く経った今でもファンから愛されているという事実を見れば、ここに収められた2曲は間違ってなかったということになるんでしょうね。そして、恐らくファン以外の層にとっても、この曲("ザ☆ピ~ス!")までが一般的に認知されている楽曲、モーニング娘。が国民的アイドルとして君臨していた時期最後の楽曲だったのかな、と‥‥。



▼モーニング娘。『ザ☆ピ~ス!』
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投稿: 2004 05 17 12:00 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2004/05/15

モーニング娘。『Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~』(2001)

  シンプルにカッコいい‥‥まさかアイドルグループの楽曲で、こんなに背筋がゾクッとする程のカッコよさを感じてしまうなんて思いもしなかった。最初チラッと聴いた時は「あちゃー、つんく♂迷走し過ぎだよ。モーニング娘。ヤバいんじゃないの!?」って感じたのに、いざCDを購入してちゃんと聴いてみると、これが‥‥本当、土下座して謝りたくなったもの。

  ‥‥これがリリース当時、2001年秋に俺が感じたこと。そう、このちょっと前に俺はモーニング娘。の世界にドップリ浸かり出しちゃったんだよね。で、この "Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~" はそんな俺が所謂「モーヲタ」の世界に足を踏み入れてから最初にリリースされたシングル。それだけでも思い出深いのに、更にこのシングルにはいろんな意味合いがあって‥‥例えば同年8月に加入した第5期メンバーの4人(高橋愛、紺野あさ美、小川麻琴、新垣里沙)を迎えての13人編成最初のシングルにして、通算13作目(!)のシングルでもある1枚。にも関わらず、その5期メンバーが一切ソロを取らない(コーラスのみで、実際にソロを取っているのは安倍なつみ、後藤真希、吉澤ひとみの3人のみ。他の10人は全てコーラスのみ)という異例の体制で臨んだ楽曲 "Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~"、それとは相反して13人が代わる代わるソロを取っていくポップでファンキーな "ポップコーンラブ!" の2曲から成るシングル。非常に面白い、且つ印象深い1枚です。

  鈴木俊介をアレンジに迎えた "Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~" は、ビッグバンドを迎えたロカビリーかスウィングジャズといった印象で、まぁぶっちゃけブライアン・セッツァーのイメージなんですよね。実際、そこを狙ってアレンジしたと思うんですが、これがかなり完成度が高い。当然リズム隊も生楽器だし(AIRのリズム隊をそのまま起用)ブラス隊も本物で、これがかなりゴージャス。ギターは鈴木本人によるものだけど、これがかなりブライアン・セッツァーを意識したプレイやフレーズの応酬で、聴いてて飽きさせない、というか単純にカッコ良い。うわー、って思ったもん。特にインスト・バージョン(CDシングルに入ってる、所謂カラオケ・バージョン)だけ聴いたら、何も知らなかったら絶対にモーニングの曲だと気づかなかっただろうなぁ(ま、今となってはそんなの不可能ですけど)。

  センターを安倍、後藤という安全パイの他に吉澤を起用したというのも面白い。歌唱力的にはふたりよりも相当劣る吉澤だけど、この楽曲のもうひとつのコンセプトである「宝塚チックなレビューショー」というビジュアル的要素を満足させるためには、どうしても必要だったパズルのピースが吉澤。この3人を男役にしてリードボーカルを取らせ、残りの10人に舞踏会で着るようなドレスを着せて、完全にコーラスとダンスに徹底させる。まぁコーラスとはいってもライヴ等ではリップシンクが殆どなんですけどね。

  ロカビリーやスウィングジャズ、ビッグバンドといった男性的な音楽アプローチと、宝塚を彷彿させるレビューショーと男役等といった女性的なビジュアルアプローチ。こういった徹底的なコンセプト重視の楽曲というのは、恐らくそれまでのモーニングのシングル曲では初めてだったと思いますが、個人的には大当たりだと思いますよ。まぁこの頃から世のモーニング離れがスタートしていったと言っても過言ではありませんが(5期メンバーに否定的な一部のファン、ネタ重視の楽曲、中澤裕子卒業後のアク抜きされたグループ、等々)、個人的にはこの曲から始まっているし(いや、正確にはこの直前のシングル "ザ☆ピ~ス!" から始まっているんですけどね)、所謂「"LOVEマシーン" 以降」あるいは「後藤加入以降(=第2期)」における、音楽的なピークへと達する一歩前なんですよね(そのピークとは、言うまでもなく名曲 "そうだ!We're ALIVE" のこと)。ま、勿論この曲も非常に完成度が高い、素晴らしい名曲のひとつなんですけどね。所謂コーラスグループとして成立していた「後藤加入前(=第1期)」、数々の初期メンバー脱退により主要コーラス要員を欠き、と同時に後藤という逸材を手に入れ、またキャラ重視の4期メンバーを得てビジュアル/コンセプチュアルな方向へとシフトチェンジしていった第2期は、この辺りでひとつの完成型にたどり着くのでした。と同時に、だからこそ初期の音楽的に優れていた、とよく言われる初期モーニング(例えばアルバム「セカンドモーニング」が最高と声高に叫ぶ輩等)を愛するファン達はこの前後からどんどん引いて行ってしまったのでしょうね。それも理解できますけどね。

  カップリング曲にも触れておきましょう。名アレンジャー・河野伸を迎えた意欲作 "ポップコーンラブ!" も生バンドに生ブラスを取り入れた、ファンキーな色合いを持つポップロック。実はこの曲、聞くところによると既に2000年末にはテレビで披露されていたようですね。2000年というと、まだ中澤在籍時。所謂「10人時代」ですが、何故当時の編成でこの曲をリリースすることがなかったのかが気になりますが‥‥まぁあれでしょう、中澤の卒業とか、ベスト盤(「ベスト!モーニング娘。1」)の記録的ヒット等でリリース自体が流れてしまったのか、単純に満足いく内容に達しなかったのでお蔵入りになったのか‥‥真実は闇の中ですが、最終的には1年の時を経て、13人編成で新たにボーカルを録音し直して世に出されたことを素直に喜ぶべきでしょうね。

  この曲での5期メンバーのボーカルを聴いてしまうと、何故今回シングルのタイトルトラックで彼女達がソロを取ることがなかったのか、そしてそういう曲を起用しなかったのかが何となく伺えます。思えば4期メンバーだって一番最初は "ハッピーサマーウェディング" で、同じようにコーラスだけでしたからね。加入決定からリリースまでほぼ2ヶ月、実質レコーディングに臨んだのは加入後1ヶ月辺りでしょうからね‥‥そりゃねぇ。まぁそんな裏事情は普通の人には計り知れませんし、文句のひとつも出るでしょう‥‥ま、だからこそ続く "そうだ!We're ALIVE" に狂喜し、感涙したわけですが。

  最近でこそ打ち込み主体の楽曲がシングル曲として起用され続けてますが、実はカップリング曲含めて「生バンドによるバックトラック」を起用したシングルって、"恋愛レボリューション21" から "そうだ!We're ALIVE" までの4作連続だったんですよね。勿論、その直前のシングル "I WISH" が2曲共打ち込みだったからダメかというと全然そんなことなく、むしろ先の4作に匹敵する名曲度なわけでして。個人的には "LOVEマシーン" がピークなのではなくて、むしろあれはひとつの起爆剤であり、本当の快進撃はこの "I WISH" からスタートしたんだと解釈しています。

  というわけで、未だに聴く機会が多いのも、この辺りのシングルや、それらを収録したアルバムばかり。どうしてもこの頃のインパクトが強いから、未だに「ソレ」を今の彼女達に求めちゃうんですよね‥‥酷だとは思うんですが。



▼モーニング娘。『Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~』
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投稿: 2004 05 15 12:00 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2004/03/27

MY LITTLE LOVER『singles』(2001)

  MY LITTLE LOVERが'01年末にリリースしたシングルコレクション・アルバム。彼らがデビュー('95年)からの6年半の間に発表してきた14枚('01年12月当時)の中から13枚14曲(両A面シングルが1枚)と、このベスト盤の為に録音された "あいのうた ~Swallowtail Butterfly~" の(小林武史にとっての)セルフカバーを含む15曲、約74分に及ぶ長編アルバムになっています。が、これだけの容量にも関わらずすんなり聴けてしまうのは、やはり彼らの魅力によるものなのか、それとも策士・小林武史の力量によるものなのか‥‥

  決して上手とは言えないAKKOのボーカル、過去の手掛けたアーティストでの仕事振りを彷彿さえせる小林の作曲&アレンジによるフレーバー、そして藤井謙二('02年7月に脱退)による時にダイナミック、時に繊細なギター‥‥この組み合わせがMY LITTLE LOVERの個性‥‥とは決して言い難い、少なくともこのベスト盤に収録された楽曲に関しては「小林主導」による作品が大半を占めるのではないでしょうか。いや、それが悪いというわけではなく、元々そういうコンセプトの下にスタートしたプロジェクトなので、全然構わないんですよ。

  でも、こうやって時系列に沿ってシングル曲を順々に聴いていると、最初の数枚は明らかに「MY LITTLE LOVER featuring 小林武史」といった公式が成り立っているものの、曲が進むに連れそれが少しずつ崩壊していき、ヘタウマなりに独自の個性を身につけたAKKOのボーカルと、ミュージシャンとしても幅を広げた藤井の「個」が占める割合がどんどん大きくなっているように感じられます。どの辺りだろう‥‥やはり "空の下で" 辺りからかな? セカンドアルバム「PRESENTS」('98年)制作時期から、いや、勿論それ以前から少しずつ表出してはいたんですが、それが完全に開花したのがこのセカンドの頃なのではないでしょうか? だからなのか、それまでは豪快なサウンドの上でもどこか頼りなさげだったふたりも、この "空の下で" 以降の楽曲では説得力を伴った力強さすら感じさせるんですよね。例えば "DESTINY" ひとつをとっても、初期に演奏してたらただ繊細さだけが目立っただろうけど、ここでは確固とした何かを感じることができます。丁度この頃って、セカンドと同時にサードアルバム「NEW ADVENTURE」('98年)も作ってただろうから、長期の製作期間の中で確かな「何か」を手に入れたのかもしれませんね。

  小林武史はMY LITTLE LOVERのファーストアルバムに「evergreen」というタイトルをつけました。正しくこの「エヴァーグリーン」こそ、このユニットのテーマ。色褪せないメロディーや歌詞達と、小林がこれまでの音楽人生の中で培ってきたノウハウを上手く活かし、誰かのためではなく「自分のため」に始めたユニット。時が経つに連れ、音楽におけるパートナーがプライベートでのパートナーにもなり、2人が3人になり、そして再び2人になった。いろんな変化はあったものの、一貫しているのが上記のポイントでしょう。だから最初に書いたように、74分もあるアルバムでもすんなり聴けてしまう。自分が好きでよく聴いていたというのもあるけど、全部口ずさめるというのも大きいポイントかな。シングル曲ということで上手く消費されつつも、決して廃れるなく、9年も前にリリースされた "Man & Woman" や "Hello, Again ~昔からある場所~" は色褪せることなく、今聴いても新鮮さを失っていない。数歩先に行っていたとか当時から新し過ぎたとかそういったことではなく、どこにも属さなかったからこその普遍性なのかな、と‥‥っていうのは言い過ぎでしょうか?

  このアルバムで唯一残念なのが "Private eyes" が入ってないことかな。俺、この似非テクノポップが凄く好きなんですけどねぇ。6分以上もあるこの曲をカットして、YEN TOWN BANDでCHARAが歌った "あいのうた ~Swallowtail Butterfly~" のカバーを入れたのは、ある意味正解であり、ある意味では失敗だったかな、という気も。原曲のインパクト/イメージが巨大なため、ある種の人にとっては違和感を強く感じさせてしまう大胆なアレンジ。俺も最初は「う~ん‥‥」と唸ってしまった程でして。これをカットして先の曲を収録した「コンプリート・シングルズ」を売りにしてもよかったんじゃ‥‥ま、既出曲だけじゃさすがに厳しいってのも判りますけどね、売る側としては。

  シングル曲をお手軽に楽しむという意味で、そしてこれからMY LITTLE LOVERを知ろうという人にとっては恰好の教科書となるであろう1枚。勿論これを聴いた後にオリジナルアルバムを聴くのも忘れずに。間もなくメンバー選出のベスト盤(このシングルコレクションとは1曲も重複なし。件の "Private eyes" もこちらに収録)も出るので、このシングルコレクションを「表ベスト」、今度のメンバー選出編を「裏ベスト」として楽しむもよし。とにかくこれだけじゃ「本当の魅力」が100%伝わるのかどうか‥‥もっと素晴らしい曲、沢山ありますんで。



▼MY LITTLE LOVER『singles』
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投稿: 2004 03 27 12:00 午前 [2001年の作品, My Little Lover] | 固定リンク

2004/03/18

THE CULT『BEYOND GOOD AND EVIL』(2001)

'80年代初頭にSOUTHERN DEATH CULTという名前でデビューし、何度か名前変更の後にTHE CULTとシンプルになり、'80年代中盤以降には「LOVE」、「ELECTRIC」、そして「SONIC TEMPLE」といった作品を連発、当初のゴス/ポジパン色が強いスタイルから徐々にタフでハードな路線へと移行していったこのバンド。'90年代に入ってからも「CEREMONY」、「THE CULT」と作品をリリースし続けたものの'80年代程の成功を得ることができず、残念ながら'90年代半ばに解散。各メンバーはその後それぞれソロ活動や新しいバンド/プロジェクトに専念するのでした。

しかし2000年。状況は一転します。いきなり再結成してしまうのです。ボーカルのイアン・アストベリーとギターのビリー・ダフィといったオリジナルメンバーの他に、レコーディングには参加したことがなかったものの、「SONIC TEMPLE」ツアーに参加した縁から声をかけられたドラムのマット・ソーラム(この時のツアーにGUNS N'ROSESが参加したことから、後にマットがGN'Rに加入することになるのです)という3人で(ベースは流動的だったようです)。まず彼らは同年夏に映画「60セカンズ」のサントラに "Painted On My Heart" という曲で参加します。これは彼らのオリジナルではなく、本来はAEROSMITHが歌う予定だった楽曲。オリジナルではないのですが、ちょっとノスタルジックなイメージが強い曲調が'80年代中盤以降の彼らを彷彿させ、まぁ復活の狼煙が上がるとまではいかなかったものの、ちょっとは話題になったように記憶してます。

そして翌'01年6月、解散前のラスト作となった'94年の「THE CULT」以来約7年振りの新作となる「BEYOND GOOD AND EVIL」を発表するのでした。同年8月には本当に久し振り、それこそ10数年振りとなる来日が「SUMMERSONIC」で実現、オールドファンを喜ばせ、新たなファンも(多少は?)開拓することになったのでした。

が、その後が続かなかった。アルバムはアメリカでもそこそこのヒットを記録、ビルボードのアルバムチャートでトップ40位入りする程で、ツアーも盛況だったようなのですが‥‥結局、再びバンドは分裂。現在イアンは元THE DOORSのメンバーらと共にTHE DOORS 21ST CENTURYというようなTHE DOORSのコピーバンド(だよな、これは)をやっていて、日本にも'03年夏の「SUMMERSONIC」で来日しています。ビリーは何やってるのかな‥‥ちょっと判りません。マットはご存じの通り(?)、古巣であるGN'Rの元メンバーらと元STONE TEMPLE PILOTSのシンガー、スコット・ウェイランドと共にVELVET REVOLVERというバンドを結成、昨年夏に映画サントラに "Set Me Free" という曲を提供、いよいよ'04年5月には待望のファーストアルバムをリリースするようです。各メンバーの活動が活発なのを知るに連れ、THE CULTはまた本当に終わっちゃったんだなぁ‥‥と寂しい気持ちになるのですが‥‥

さて、この「BEYOND GOOD AND EVIL」というアルバム。プロデュースを手掛けたのがかのボブ・ロックということもあり、大ヒット作「SONIC TEMPLE」以降の流れにある作品と呼ぶことができるでしょう。このアルバム以前/以降でバンドのスタイルもポジションも、かなり変わってしまいましたからねぇ。要するに『ビッグサウンドを伴うアメリカン・ハードロック』を基調とし、そこに本来の持ち味であるゴシックテイストを散りばめた、ある意味「やっと時代がTHE CULTに追いついた」かのようなアルバムに仕上がっています。と同時に、リリース当時は失敗作と呼ばれたラスト作「THE CULT」で実践した試みも登場し、そういう意味では『'80年代中盤‥‥「THE CULT」と改名して以降の集大成』と呼ぶこともできるでしょう。ビッグなドラムサウンドはバブリーな'80年代末~グランジ勃発前のHM/HR全盛期を彷彿させ、ザクザクしててダークな曲の上をのたうち回るギターは聴いてて気持ちいいし、そしてイアンのボーカルはこれまで以上に深みを増し、当時はまだ参加していなかったTHE DOORS‥‥そう、ジム・モリスンを彷彿させる歌唱で聴き手を驚かせます。時にVELVET UNDERGROUND、時にTHE DOORS、そして時に'80年代初頭のニューウェーブ/ゴスの流れを彷彿させながらも、基本にあるのはストレートなハードロック。ダークだけど昨今の流れとは一線を画するのは彼ら特有の個性であり、結局これを誰も真似できてないという事実。「THE CULTみたいな」バンドは沢山いるものの、「THE CULTの後継者」「ポストTHE CULT」は結局存在しない。やはりここがこのバンドの凄さといいましょうか。だからこそ再結成してこのアルバムで底力を見せつけられた時には、思わず唸ってしまったんじゃないでしょうか、世に腐るほどいる「なんちゃってTHE CULT」達は。

そう、だからこそさ‥‥この「続き」が観たかったし、聴きたかったんだよね‥‥世の中の流れが再びTHE CULTのようなバンドに対して好意的になってきてる気がするだけにさ。リリース当時は過小評価されていた'90年代の「CEREMONY」や「THE CULT」だって、2004年の今リリースしたら‥‥いや、「もし~なら」話はやめよう。とにかく。何時だって俺はウェルカムなので。何の将来性もないコピーバンドに早いところ見切りをつけて、またビリーと手を組んでくださいよ、イアンさんとかよぉ(マットはこの際いいや。GN'R組と仲良くやってください!)。



▼THE CULT『BEYOND GOOD AND EVIL』
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投稿: 2004 03 18 12:00 午前 [2001年の作品, Cult, The] | 固定リンク

2004/03/06

ASH『FREE ALL ANGELS』(2001)

前作『NU-CLEAR SOUNDS』から約3年振り、2001年春にリリースされたASH通算3枚目のオリジナル・フルアルバム『FREE ALL ANGELS』。「とみぃの宮殿」にて行われたアンケート企画「BEST OF 2001」の「ALBUM OF 2001」で1位を獲得しただけでなく、この年の各音楽雑誌でも大絶賛、そしてそういった年間企画の上位に入賞した大ヒット作であります。

元々は俺、ASHというバンドにそこまで熱心ではなくて。それは今現在においてもそうなんだけど‥‥それは見た目のインパクトだったり(ごく普通の少年達が楽器を持ちました、といった風貌)、曲のインパクトだったり、そういったものが自分に訴えてくるには弱かったのね。98年にトリオから4人組に変わり、紅一点であるシャーロット嬢が加入したことで多少華が増えた感はあるんだけど‥‥特にデビュー当時のイギリスのロックシーンがそういう流れだったからかもしれないけど‥‥普通のアンチャン達がバンド始めちゃいました的な雰囲気は常につきまとい、結局俺がこのバンドに夢中になるってことな過去一度もなくて。ライヴは一度観てみたいって思ってて、それは99年のフジロックで実現したわけだけど。実際に観ても、その印象は変わらなくてね。逆に一層そういったイメージが強くなった感じがして。

人によって「ロックはビジュアルが命!」っていう要素を大切にすると思うし、俺もそれは「バンド/アーティストによりけり」とは判っていながらも、「折角こんなにカッコいいサウンドや曲を聴かせてくれるのに‥‥勿体ない」とどこか割り切れない気持ちがあって。だから世間で絶賛されたこの『FREE ALL ANGELS』に対しても「いいアルバムだよね。でも‥‥」っていう感じで、イマイチのめり込めなくてさ。

一昨年、彼らの10年に渡る歴史を総括するベスト盤がリリースされ、俺の中でASHに対する再評価があって。あここまでいい曲を連発できた奇跡、そして俺が如何に彼らに対して偏見を持っていたかという事実に気づかされて‥‥凹んだ、というか‥‥反省しました。

さすがに最近は大人になったこともあり、見せ方も以前より上手になってきたこのバンド。もうすぐ4作目となる『MELTDOWN』がリリースされるわけですが、その前にこの3作目を再評価しておこうと思いまして。

大ヒットしたシングル曲「Shining Light」や名パワーポップナンバー「Burn Baby Burn」を含むこのアルバム。結局それ以外にも3曲シングルカットされ、計5曲がイギリスのシングルチャートのトップ20入りしたという事実が全てを物語っていると思います(当然アルバムも1位を記録)。そういったシングルヒットといった事実からも判るように、このアルバムに収録されている楽曲の大半が「シングル向け」とも取れるようなメロウでポップなロックチューンで占められています。セカンド『NU-CLEAR SOUNDS』が気負った印象の強い硬派なサウンドだったのに対し、このサードではもっと軽やかで、且つしなやかなポップチューンで埋め尽くされていて、耳障りは非常によい作風となっています。適度にノイジーなサウンドも含みつつ、メロウなバラードではストリングスを導入したりして、そういう意味ではファースと『1977』に近いイメージがありますが、やはりそこは「大人」としての成長や余裕が感じられて、初期衝動性重視のファーストとの大きな違いが見られます。ま、当たり前か。とにかくよく出来た「ギターポップ/ギターロック」アルバムである、と。

ただ‥‥だからこそ、印象に残らない‥‥という言い方もできるんですね。いろんな意味で「優等生的」なんですよ、このバンドは。そこが鼻につくのがASH最大の欠点ではないかと。凄く頑張ってるんだけど、全部我々がイメージする「ASHらしさ」の枠からはみ出していない。だからこそ聴いていて安心でき、特に大好きなわけでもないけど「まぁいいアルバムだよね‥‥」とかいって、年間ベストの数枚の中に入れてしまう。結果、気づいたら1位になってました‥‥みたいな。まぁこの考えこそ偏見以外のなにものでもないわけですが、俺にとってのASHって常にそういうイメージがつきまとっているわけですよ。

けど、楽曲の良さには嘘はないですよ。1曲1曲を取り出せば本当に素晴らしい楽曲ばかりだし、特に前述の「Burn Baby Burn」は超名曲だと思いますし。俺内では「A Life Less Ordinary」を超えましたからね。実際当時、DJやるときによくかけましたし。

どうしてもこのバンドには「あと一歩!」という気持ちがあるんですが、その「一歩」を踏み越えた時、本当の意味で怖い存在になると思いますよ‥‥だからこそ、バンド史上最高にヘヴィな作品という噂のニューアルバム『MELTDOWN』に過剰な期待をしているわけです。

‥‥意外とさ、こういった『FREE ALL ANGELS』みたいなアルバムが、10年後も普通に聴かれていて、「本当にいいアルバムだよね!」とか言われてるのかもしれませんね。毒はないけど普遍性を持った楽曲が沢山詰まっているという意味では、TEENAGE FANCLUBの『BANDWAGONESQUE』や『GRAND PRIX』に近い位置にある作品なのかも。



▼ASH『FREE ALL ANGELS』
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投稿: 2004 03 06 12:00 午前 [2001年の作品, Ash] | 固定リンク

2004/02/08

宇多田ヒカル『Distance』(2001)

前作「First Love」から2年振りに発表された、宇多田ヒカル通算2作目のオリジナルアルバム「Distance」。ファーストがそのタイトルの通り、初期衝動的な内容(サウンド/歌詞共に)だったのに比べ、このセカンドはジャネット・ジャクソン等で有名なジャム&ルイスをプロデューサーに迎えた楽曲、宇多田自らがアレンジに関わった曲、GLAYのTAKUROとの共作曲等、いろんなことに手を広げ、それが見事に上手く機能した「R&B」に限定されない、非常に挑戦的な1枚に仕上がっています。

ファースト以後にリリースされたシングルのタイトルナンバー("Addicted To You"、Wait & See ~リスク~"、"For You"、"タイム・リミット"、"Can You Keep A Secret?")を全て収録したという意味では、ファースト以上に豪華さがあり、ある種ベスト盤的な色合いさえ感じられますが、このアルバムの本当の凄さはそういったシングル曲ではなく、アルバム用に制作された新曲群の幅広さにあると思います。後にリアレンジされてシングルカットされることとなるアルバムタイトル曲 "DISTANCE" のR&Bからはみ出したポップさ、"サングラス" で味わうことのできる本格的なR&B路線、"ドラマ" はGLAYのTAKUROとの共作で派手なディストーションギターが全編を覆うスタジアムロック調、"First Love" にも通ずる、それでいて2年の成長を感じさせる名バラード "Eternally"、軽快なポップロック調 "蹴っ飛ばせ!"、ツアーバンドとのセッションから生まれたという、ジャズやレゲエ等スティング辺りからの影響を感じさせる "Parody"、アルバムラストを飾るR&B調バラード "言葉にならない気持ち"。前作以上に「R&Bに限定されない個性」を強調し、それが全て自然に鳴らされていること、その上で宇多田が歌うことで全部が「宇多田ヒカルの歌」として成立する事実‥‥何度も書くけど、これが他の「自称・ディーヴァ」系女性シンガーとの大きな違いではないでしょうか?

ファーストからの流れにある "Addicted To You" という曲でジャム&ルイスと初めて仕事をして、ここで一旦それまでの流れに区切りをつける。その後にリリースされたのが Wait & See ~リスク~" というポップス色の強いナンバーだったこと(けどこの曲もジャム&ルイスが手掛けてるんですよね)、更に続く "タイム・リミット" では初めて他のアーティストとの共作(TAKURO)、等々。アーティストとしての欲が出てきたのが丁度この頃だったのかも‥‥ただ作れば良かった、自分の中から出てきた言葉やメロディをそのまま具体化したファーストから数段の進歩が感じられるのは、こういった向上心がもたらしたものなのでしょう。そういう意味ではファーストのすぐ後にこのアルバムを制作しないで正解だったと思います。2年というインターバルがあったお陰で、その間にシングルを単発で発表、そこでいろいろ実験できたからこその結果でしょう。

個人的にはこのアルバムが一番好きだったりするんですよね。最も熱心に宇多田の歌を聴いていたのがこの頃ってのもありますけど、後は‥‥プライベートでいろいろあった時期に聴いた1枚だけに、いろんな意味で思い出に残ってるってのもありますが。思えば宇多田ってこのアルバムをリリースした後、ちゃんとしたライヴってやってないんですよね? そういう意味では今後‥‥もしここに収録されているシングル以外の楽曲をライヴで演奏する機会があったとしたら‥‥ライヴツアーを経験した後に制作された作品なだけに、非常に興味深いものになると思うんですけどね。



▼宇多田ヒカル『Distance』
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投稿: 2004 02 08 12:00 午前 [2001年の作品, 宇多田ヒカル] | 固定リンク

2004/01/29

THE HIVES『YOUR NEW FAVOURITE BAND』(2001)

「ロックンロール・リバイバル」だとか「リフロック」だとか「ネオ・ガレージ」だとか、とにかくいろんな呼び名が蔓延る昨今のロックンロール・シーン。個人的には「暴走ロック」とか「リフロック」という言い方がしっくりきてるだけに、どうにも「ロックンロール・リバイバル」という言い方には抵抗あるんだよね。だってさ、別にリバイバルされる程、ロックは長きに渡って死んでたわけじゃないでしょ? ただ単にお前等(そういう呼称で呼んで大騒ぎしてるバカ共)が今まで見向きもしなかっただけだろ!?、と。ま、そうやってブームとか流行りってのは生まれるんでしょうけどね。

今回紹介するTHE HIVESも、そういったブームとか流行りに振り回されたバンドのひとつといっていいでしょう。このスウェーデン出身の5人組は'93年から地元で活動開始、'96年には初音源をリリース、翌'97年のパンクやガレージで有名なインディーレーベル「Burning Heart Records」からファースト・フルアルバム「BARELY LEGAL」をリリース、'00年にはセカンド「VENI VIDI VICIOUS」を本国やここ日本でもリリースしています。俺が彼らの音に触れたのは、多分この頃かな? コンピ盤とか友人に焼いて貰ったCD-Rに彼らの曲が入っていたのが切っ掛け。けどこの頃はまだ「数ある北欧の暴走ロケンローバンドのひとつ」程度の認識。アルバムをちゃんと聴いてみようとは思わなくて。それよりも、同郷の先輩格・THE HELLACOPTERSの方が大好きでね(それは現時点においても逆転することなく)。特に来日するって話もないし、そんな熱心に注目してこなくてさ。

ところが'01年に入って、話が急展開に進んでいってね‥‥かの「Creation Records」の社長だったアラン・マッギーが新たに立ち上げたレーベル「Poptones」から、彼らのコンピ盤が出るということになって。しかもそのアルバムがイギリスでトップ10に入り、結果ここ日本でも改めて注目の的となり、最終的にはアメリカでもそこそこの成功を収めることになったんだから、あら大変。やっぱり「アラン・マッギーがイチ押しする新世代バンド!」みたいな触れ込みがあったんだろうね。どういうわけかこの「Poptones」、この手のガレージ系バンドを多く扱ってたんだよね‥‥OASISやPRIMAL SCREAM、TEENAGE FANCLUBのようなバンドには飽きたってこと? ま、ビジネスマンとしてはホントに頭の回転が早く、しかも感性豊かな男だなと思いますよ。

つうわけで、その大ヒットしたコンピ盤こそが、ここに取り上げた「YOUR NEW FAVOURITE BAND」という、まんまなタイトルのアルバムなわけ。全12曲で30分にも満たない、あっという間に終わってしまう1枚なんだけど、これがね、何度聴いても飽きないわけ。勿論、曲が良いというのは大前提としてあるんだけど、選曲・配置の妙技にも助けられてるよなぁ、と。当時の最新作だったセカンドからの曲が頭4曲で固められ、ファーストからも3曲、他はシングル・オンリーの楽曲を集めたもので、レコーディング時期の違いからか、多少のバラツキはあるものの、そこはこの手のバンド特有の「勢い」と「熱」でフォローされてるので問題なし。テンポ良くスタートして、途中で急激にスピードアップして、その勢いのまま終了するのかと思いきや、最後は肩の力が抜けたインスト曲で終わらせる辺りに、選曲者のこだわりを感じちゃったりしてね。アラン・マッギー、やるな?、と。

所謂「リフロック」と呼ばれる最近のバンド群の中でも最も異色とされるのは、全員が同じユニフォームという点かな。日本だとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやギターウルフなんかにも通じる要素かな。勿論、そういったビジュアル要素以外も魅力的で、フル回転したパブロックというか、スマートなガレージ・パンクというか‥‥明らかに他のバンド達とは違う流れにいるバンドじゃないかな、と。それは北欧(スウェーデン)出身というのも大きく関係してると思うんだけど(そして北欧にはまだまだ、これに匹敵する魅力的なバンドが腐る程いるという現実に、みんな早く気づいてください!)、だからこそUKやUSでも面白がられたのかな? 日本には既にそういう土壌があるし、あと雑誌がいち早く騒いだってのも大きいのかな。で、このコンピ盤リリース後すぐに「SUMMER SONIC」で初来日を果たしたしね(けど、ライヴは個人的には思った程じゃなかったな、と。つうかアリーナ向きのバンドじゃないし。野外のメインステージは失敗だと思います)。

ま、俺が今更こんなところで声を大にして「必聴盤!」って叫ばなくても、既にみんな聴いてると思うけどね‥‥まだ聴いたことがないという「モグリ」がいたら、悪いことは言わないからまずはこのアルバムから聴いてみてください‥‥そしてそのままHELLACOPTERS等の北欧バンドにも手を伸ばしてみては如何でしょうか?



▼THE HIVES『YOUR NEW FAVOURITE BAND』
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投稿: 2004 01 29 04:36 午前 [2001年の作品, Hives, The] | 固定リンク

2003/12/24

SLIPKNOT『IOWA』(2001)

やぁみんな。こんなクリスマスイブの晩にこれを読んでくれてありがとう! 今日は意図的に更新を遅らせました。そう‥‥こんなイブの晩に誰とも会う予定もなく、ひとりしょぼくれてるあなたのために‥‥特別だぜ?

さて、そんなイブの日に紹介する作品‥‥そう、名盤中の名盤ですね! 世界一ポップなグループによる、世界一ポップなアルバム。それがこのSLIPKNOTが2001年にリリースしたセカンドアルバム「IOWA」です。実はリリース当時('01年9月)、このアルバムのレビューに取りかかり、アップ直前までいったんですよ‥‥そう、アップ予定だったある日(9/11)の晩に、あの事件さえなければ‥‥あんな悲惨な事件があった日に、こんなにポップで心弾むアルバム、みんな聴きたくないだろうし、そんなアルバムを全面的に肯定し、大絶賛するアルバム評なんて読みたくなかったでしょ? だからね、消去したのよ。自分の中では、それはもう最高の紹介文だったんだけどね‥‥タイミングが合わなかったな、と。当時の自分の精神状態と求めていた音が見事一致した瞬間だったのに。

もうね、このアルバムの何が凄いって、ルックス的にも世界一ポップなバンドであるSLIPKNOTが、前作以上にポップなアルバムを作ってしまった点、そしてそれが世界的に受け入れられてしまった点でしょう。全米初登場4位でしたっけ? 彼らの所属する「ROADRUNNER RECORDS」って一応インディーズですよね? ファーストだってここまでバカ売れしたわけじゃないでしょ? 完全にライヴと口コミだけで彼らの人気が広まったわけですよね‥‥それでこの結果。まぁ世界一ポップなんだもん、売れなきゃ嘘ですよねっ!

いきなりトップからフルスロットルですよ、エンジン全開ですよ! "People=Shit" という素晴らしいタイトルのポップソングで胸を鷲掴みにされ、そのままの勢いでひたすら突っ走り、途中 "Gently" といった穏やかな曲もありつつも、全体的にはワクワクするようなポップソングで占められている約60分‥‥凄いですよねっ! あ、後半に行くにつれてミドルテンポの曲が増えていって、最後がタイトルトラックで終わるという構成も凄くいいですよねっ! 何か、これぞ理想的なポップアルバムといった感じで、とても好感が持てます。

きっとポップミュージックが大好きなあなたなら、もう既に散々聴き込んだ作品でしょうけど、こんな聖なる夜だからこそ、改めてその良さを再確認したい1枚ですよね。もうなんていうか‥‥聴いてると隣にいる人に殴りか‥‥じゃなくて、抱きしめたくなる作品。こんな素敵なアルバム、年に1枚あるかないかじゃないですか? 最近だとMETALLICAが「St.Anger」といったアルバム、KORNが「TAKE A LOOKIN IN THE MIRROR」なんていう限りなく素敵なポップアルバムをリリースしたばかりですが、やはりいろんな意味でここ数年、これを超えるような「メジャー感に溢れたポップな」アルバム、出てないですよね? そんな時代だからこそ、彼ら自身にこの壁を乗り越えてもらいたいな‥‥サードアルバムで。そう思うんですよ。いや、もしかしたらSLIPKNOTのことだから、壁を乗り越えないでそのままぶち破っちゃう可能性大ですけどねっ!

いやぁ‥‥それにしても愉快なアルバムだ。何度聴いても素晴らしい。今夜は俺と一緒にこのアルバムを大音量で聴きながら、聖なる夜を祝おうではないですか‥‥











ちゃんとネタだって気づいてくださいね?(号泣)



▼SLIPKNOT『IOWA』
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投稿: 2003 12 24 01:09 午後 [2001年の作品, Slipknot] | 固定リンク

2003/11/21

Björk『VESPERTINE』(2001)

ビョークが2001年8月にリリースした、通算4作目のオリジナルアルバム(映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』サントラである『SELMA SONGS』は除く)『VESPERTINE』。常に音楽シーンの最先端にいるアーティスト/DJとのコラボレートで作品を生みだしてきた彼女、今回のアルバムでも非常に現代的で先鋭的作風にも関わらず、彼女らしい癒し要素も十分に収めたアルバムになっています。

今回のアルバム、一言で表現すればエレクトロニカでしょう。時代背景的に考えると、ロックシーンからRADIOHEADが2000年秋に『KID A』という異形作品が誕生し、彼等がメディア上でAUTECHRE等といったエレクトロニカ系アーティストの名前を挙げ、シーンの中でもどんどんとその名前が知られるようになっていったジャンル。RADIOHEADの成功から、後続達は段々とそういった新しい音を自身のサウンドに取り込もうと試行錯誤しますが、上手くいった例はあまり見受けられませんでした。完全に借り物か、あるいは別の何か‥‥アンタがそんなことしなくてもいいじゃない?というような代物ばかり。そういった中登場したのがこのアルバムでした。

ただエレクトロニカを導入するのではなく、彼女なりのオリジナリティを存分に味わうことができるという意味で、このアルバムは特別なのではないでしょうか。神経症を引き出しそうな電子的なノイズと共に鳴らされる、温かみを持つストリングス等の生音。内へ、内へと向かっていく、夢か現実か判断がつかなくなる世界観。そういった相反する世界を繋ぐのが、ビョークの歌声。見事に「ひとつの世界」として成立しているのはさすがとしか言いようがありません。勿論それらの成功の影には、新たに彼女を支えるMATOMOSやOPIATEといった新鋭アーティスト達の存在や、これまでも彼女を支えてきたガイ・シグスワークやマーク・スパイク・ステントといった人達の支えがあるわけですが。決して前作の焼き直しにならず、それでいて「流行モノを真似てみました」的なイタイ作品でも終わらず、時代を象徴するような作品を提示できるのは、彼女にもの凄い才能があるか、バックを支える人達に先見の明があるか、そのどちらかでしょうね(そして恐らく、その両方を持ち合わせているのが「Björk」というプロジェクト・チームなのかもしれませんね)。

けどね。正直に白状しておくと俺、このアルバムを最初に聴いた時、ピンとこなかったのね。もっと言えば「あぁ、これまでみたいに愛聴すること、出来ないかも」って、1回聴いて暫く放ったらかしにしてたんですわ。だからアルバムリリース後に彼女が来日した際(1万近くものチケット料金で、どこかの教会みたいな会場でライヴやったんでしたっけ?)にも全然行きたいと思えなくて。何というか、これまでの彼女から感じられたエナジーみたいなもの(例えば『SELMA SONGS』で聴けたような「心の叫び」のような歌声)が殆ど感じられず、終始抑え気味‥‥ぬるま湯のような世界観が約1時間も続くことに、当時の自分は何故か耐えられなかったんですよ。今聴くと「何でそう思った/感じたんだろう?」って思うんですけどねぇ。サウンドとかメッチャ好みなんですけどね。多分聴いた時の自身の精神状態とか体調とか、そういったものも影響してたんでしょうけど、当時の自分には「痛すぎる」作品だったんでしょうね、いろんな意味で。『KID A』っていうのもいろんな意味で「目を背けたくなる」アルバムでしたが、この「VESPERTINE」はもっと違った意味で「痛く」響いたんでしょうね‥‥ま、ここから先は当時自分に何があったかといったような独白モードになってしまいそうなので、その辺は省きますが。

今年のフジロックにて、彼女はようやくこのアルバムを引っ提げた本格的なライヴを披露しました(本来ならアルバムリリース翌年の2002年夏のフジロックに出演予定だったのですが、同年春に妊娠が発覚、出演をキャンセルした経緯があります)。当然俺も最初はビョークを観るつもりでいました。が、改めてこのアルバムを何度か聴いているうちに‥‥これは数万人もの「他者」とは共有したくないサウンドだな、と感じるようになり、結局当日は数曲確認した後に別のライヴを観に行ってしまったのでした。

つまりは、そういうアルバムなんです、俺にとって。非常に表現し難いですが‥‥静かな夜中に、そんなに大きくない音で鳴らされ、部屋でひとりで聴く。それが俺にとっての『VESPERTINE』かな、と。勿論「絶対にそんなことはない!」という人がいるのも判ってますし、誰に同意を求めようとは思いませんが、個人的にはそういう風に響くアルバムです。そして、そんなふうに「人によっていろんな響き方をする」アルバムだからこそ、ビョークは凄いなと改めて思うのです。



Björk『VESPERTINE』
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投稿: 2003 11 21 12:00 午前 [2001年の作品, Björk] | 固定リンク

2003/11/17

浜崎あゆみ『A BEST』(2001)

  「何故『浜崎あゆみ』はつまらなくなってしまったのか?」

  いきなりファンに怒られそうな書き出しでアレですが、本心です。「じゃあ以前は面白いと思ってたのかよ!?」と突っ込まれそうですが、ええ、面白いと思ってましたよ。少なくともこのベスト盤の頃までは。正確に言えば前年(2000年)リリースしたサードアルバム「Duty」まではね。いや、俺がちゃんと彼女に興味を持ったのが「Duty」からなので、期間としては半年くらいになっちゃいますが。

  このアルバムは彼女がデビューしてからの約3年の間にリリースされたシングル曲を中心に、一応「彼女自身が選曲した」というような触れ込みで2001年3月末にリリースされています。確かリリース同日に宇多田ヒカルが待望のセカンドアルバム「Distance」をリリースし、共に400万枚を上回る売上げを記録して話題になったりしました(で、同日に2枚両方買ったバカがここにもひとりいるわけですが‥‥)。初期(デビュー~ファーストアルバムリリース時)の楽曲(ここでは"A Song for XX"、"Trust"、"Depend on you" の3曲)に関してはボーカルを再録音し、ミックスもやり直す等して最近の楽曲との均等化を図っています(どうせだったらそれ以外の曲も録り直せばよかったのに‥‥なんていうのは贅沢でしょうか)。全16曲中、シングル曲が14曲というのも非常に判りやすい選出ですし、アルバム曲が "A Song for XX"(ファーストアルバムより)と "Who..."(セカンドアルバムより)というのも理解できるんですが‥‥これ、本当に浜崎自身の選曲なんですかね? 単なるシングルコレクションじゃないですか、これじゃ。俺は彼女のライヴとか行ったこともないしライヴビデオなんてのも観たことないような門外漢なわけですが、それでもアルバムはリリースされれば聴いてきた口なんですね。そんな俺でも「‥‥へっ!?」と思うような選曲なんですね。曲順にしても頭3曲の再録音とラストの "Who..." は除くとして、それ以外の曲がただリリース順に並べられてるだけ。しかも比較的最近(このアルバムの半年前)リリースされたばかりのサードアルバムから4曲も選んでいたり‥‥

  ま、そうはいっても、どの曲も非常によく練られたメロディとそれを盛り上げる煌びやかなアレンジを持つ、高品質なポップソングなんですよ。だから選曲や曲順の違和感は感じつつも、それなりに聴けてしまう。そこはさすがと言わざるを得ないでしょうね。集大成的なベスト盤として十分な役割を果たしてるんではないでしょうか?

  と同時に、このアルバムが浜崎あゆみと『浜崎あゆみ』との分岐点であるようにも感じています。

  何故、浜崎あゆみと『浜崎あゆみ』という風に区別したのか‥‥前者(『』なし)がそれまでの浜崎であり、後者(『』あり)がシングル "M" 以降の浜崎なのでは‥‥という区別を、俺の中ではしています。例えばジョン・オズボーンというアル中男と『オジー・オズボーン』というマッドマン、ブライアン・ワーナーという繊細で知的な青年と『マリリン・マンソン』という邪悪なキャラクター‥‥今の浜崎を見ていると、どうしてもこういったアーティスト達と同じ「キャラクターとしての『浜崎あゆみ』」を強く感じるんですね。判りにくいので「浜崎」と「ayu」という風に書き分けますか(最初からそうしろよ俺)。

  "M" というのは浜崎が初めて「CREA」というペンネームで作曲に関わったシングル曲。それまでのシングル曲が所謂職業作家や他のミュージシャンによって作られたものであったわけで、当然それなりのクオリティーを保っていたわけです。ところがこの "M" という曲‥‥ミリオンに達する程売れたのは知ってるんですが‥‥俺、全然面白いと思わなかったのね。メロディに抑揚もないし、非常に彼女が歌いやすいメロや節回しを多用(悪い言い方すれば使い回し)してるし‥‥浜崎自身が他者から見た自分のイメージに忠実に、自らセルフパロディを演じてるような‥‥そんな印象を受けたのよ。で、その後連発されるシングル曲‥‥これがね‥‥ドンドンつまらなくなってくんですわ。個人的に引っ掛かる曲もあるにはあったんですが、これがアルバムとしてまとまると‥‥4作目「I am...」のことなんですけどね‥‥非常に平面的なイメージなわけですよ。上に書いたようなオジーやマンソンみたいに、浜崎がまるで『ayu』というキャラクターを演じてるかのような(そういえば、かの「rockin'on JAPAN」に取材を逆オファーしたのもこのベスト盤リリース時期でしたよね。その辺も関係あるのかしら?)‥‥このベスト盤のリリースから既に2年半以上経っていますが、その傾向は現在更に強まっているんではないでしょうか? 先日、ある歌番組でこの秋行われたツアーの映像が少しだけ流されたんですが、これが完全に「エンターテイメント・ショー」なわけですよ。つまり、それまで「コギャルの教祖」だの時代の代弁者だのと言われ続けた浜崎が、完全に割り切って『ayu』をエンターテイメントとして演じている‥‥と。最近の楽曲も完全に彼女のイメージの範疇内のものでしかなく、逆にそこにこちらは窮屈さを感じてしまうんですよね‥‥だから俺は「何故『浜崎あゆみ』はつまらなくなってしまったのか?」と最初に書いたわけです。少なくともこのベスト盤までは楽しめたはずなのに、と‥‥

  別にキャラクターを演じることは悪いことだと思わないし、それが上記のアーティスト達のように成功していれば尚更彼女にとっては良いことなんじゃないかと思うんですが、残念ながら今の浜崎を見ていると「窮屈さ」しか感じられないんですね。勿論常にシングル曲が「CREA」名義じゃないことも知ってますし、アルバムでは他のソングライターが参加していることも知ってます。けど‥‥もうひとつ何かが足りないんですよ。その欠けたパズルのピースが何なのか‥‥その答えは、もしかしたらこのベスト盤の中にあるのかもしれませんね?

  個人的に好きな部類の歌声に入りますし、あの賛否両論ある歌詞もそんなに嫌いではないんです。けど‥‥いや、だからこそもっと凄いものを期待しちゃうんですけどね。贅沢ですかね?



▼浜崎あゆみ『A BEST』
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投稿: 2003 11 17 01:47 午前 [2001年の作品, 浜崎あゆみ] | 固定リンク

2003/10/19

THE STROKES『IS THIS IT』(2001)

既に覚えてる人も少ないと思うけど、俺はこのTHE STROKESってバンドがデビュー当時とても苦手だったのね。今から2年前に彼等がアルバムデビューして、雑誌メディアがこぞって大絶賛して。そんなこと、当時その手の音楽雑誌を全く目にしていなかった俺は全然知らなくて。逆にうちを訪れるビジターさんから「最近のオススメはSTROKESです」と教えてもらったりして。しかも複数人から。「絶対にとみぃさんなら気に入りますよ!」という太鼓判付きで。

でね、実際買って聴いてみたんですよ。CDショップでもイチオシされる程だし、本当にいいんだろうと思って。ルックス的にも、あの微妙な小汚さがツボだったし。試聴もせずにレジまでCD片手に走って。CD屋からの帰り道、我慢しきれずにカーステのCDプレイヤーにディスクを挿入して‥‥

たった3曲でディスクを排出して、他のCDを聴き始めたんだよね。何故か気に入らなかった。期待が大きすぎたのか、それとも想像してた音と違ったのか、今となっては思い出せないんだけど、とにかく周りが大絶賛する程、そんなにいいとは思えなかったのね。その後、何度か聴き返してはみるものの、やっぱり大好きとまではいかず、まぁ悪くはないけど‥‥止まり。勿論その旨をサイトの方にも当時書きましたよ。ボロクソに貶す程ではないものの、大騒ぎする程のバンドじゃねぇだろ!?とも。

多分今の10代の子達にとってSTROKESっていうバンドは「僕等世代のSTONE ROSES」であり「僕等世代のNIRVANA」であり「僕等世代の、デビュー当時のOASIS」なのかもな‥‥と考えたんですよ。そう思えるようになったら、意外と許せたんですよね、このバンドの存在を。けど、それでも雑誌の騒ぎ方は異常だと思ってたし、まぁ俺が改めて大騒ぎして取り上げるようなバンドじゃねぇだろ、とも思ってて。だからその後はあんまり進んで聴いてこなかったのね。時々、自分でDJやるときに流れで「あぁ、STROKESのあの曲を使ってみようかな?」ってことで久し振りに聴き返したりとか、その程度。多分この2年間で10数回程度しか通して聴いてないはず。その程度の存在だったわけですよ。

ところがここ数ヶ月の間に、俺はその10数回を上回る回数、この「IS THIS IT」というアルバムを聴き返すことになるんです。何故か。いや、そこにも明確な理由はないんですよ。もうホント気まぐれで。今回改めて取り上げてみようって思ったのもセカンドアルバムリリース直前ということもあったし、まぁそれ以前に「最近のお気に入り」ってことで、好きなアルバムとして取り上げてるわけですが。

人間の感情とか感覚ってね、とっても曖昧なもんですよ。数年前まではあんなに毛嫌いしてたバンド/アーティストが、時間が経つと共に気になり出したり、あるいは熱狂的なファンになってたり。みんなにもそういうことってないですか? 俺はね、沢山あるよ。勿論、その逆も沢山あるけどね(ここで書く必然・必要性が感じられないので書きませんが)。

このアルバムを俺が何故あんなに毛嫌いしたか、あるいは気に入れなかったか‥‥それはもうね、1曲目にあるんですよ。あのユルユルな "Is This It" に。オマエラ何様だ、ロックンロールバンドだろ!? 何でガツーンと行かないんだよ! 新人だろ!? ファーストアルバムだろ!? 何気取って1球目から変化球なんだよ!!、と。どこぞのサイトで「ロック界の癒し系」とか書いてたアホがいたけど、バカかと。ロックンロールバンドが聴き手を癒してどうすんだよ! 熱くさせろよ、この俺を!!‥‥とか思っちゃうわけですよ。そういった類のものをこの手のロックバンドに求めてしまうわけですよ、20年以上もロックンロールに振り回されてきたこのオッサンは。

勿論、そういう感情を持ってしまったわけで、ある意味彼等の術中にハマッてしまってるともいえるわけですが、とにかく一度悪い印象を持ってしまうと、何聴いても全部良く聞こえなくなるのね。アルバムの構成としては2曲目 "The Modern Age" から徐々に、徐々にとエンジンがかかっていく、盛り上がっていく流れを作っていて、中盤以降‥‥名曲 "Last Nite" や "Hard To Explain"、丁度リリース時期が「9・11」(ニューヨークの同時多発テロ)と重なってしまった為にアメリカ盤では急遽収録取り止めになってしまった "New York City Cops" (日本盤とEU/UK盤には問題なく入ってます)‥‥こっちから聴いてたら、問題なく気に入ってたよな、とかさ。いろいろ思うわけよ。

あとね、もうひとつ。これはもう完全に個人的な趣味の問題なんだけど、ギターの歪み方が弱いよな、と。俺が好きなタイプって結局はハードなギターなわけね。THE HIVESがアルバム気に入ってもライヴがショボいなと感じるのは、やはりそのサウンドが原因だったりするんですよ(たまたま自分が聴いた音源がそうだっただけかもしれないけど)。それと一緒で、STROKESの歪みも俺的には全然弱い。元々パンク~HM/HRの人なんで、俺。ま、今聴いてるとその辺は特に気にならないですけどね。これはこれでアリだなと思えるようになったんで。

そんなわけでいろいろ不満に感じてた部分を書いてきましたが、多分多くのSTROKESファンって、俺が疑問に、不満に感じてる部分を好きなポイントとして挙げて、気に入ってるのかなぁ‥‥って今になって思ったりして。ま、そういう風に感覚がズレてる俺ですが、セカンドアルバムは真っ先に買って聴いてみようかと思ってます。けど、また好意的に受け入れられるようになるまでに2年近くかかったりしてね‥‥



▼THE STROKES『IS THIS IT』
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投稿: 2003 10 19 04:45 午後 [2001年の作品, Strokes, The] | 固定リンク

2003/09/01

Cocco『ベスト+裏ベスト+未発表曲集』(2001)

  2000年10月6日、日本武道館でのステージを最後に彼女はステージを降り、そして翌2001年4月20日の「ミュージックステーション」出演を最後に彼女は完全に我々の前から姿を消しました。「音楽活動中止」という、ちょっと考えられないようなショッキングな出来事。それが現実に起きてしまったのです。Coccoというアーティストの特異性を考えると、それは至極当たり前のことなのかもしれないな‥‥当時は残念だという思いと同時に、そうも考えてみて自分を納得させてみたものです。

  しかし、あれから2年半近くが経ち、彼女は二度我々の前に姿を現した。一度目は沖縄で、そして二度目は昨日(8/31)神戸(野外イベント「RUSHBALL」)で。彼女は自らギターを弾き、新しい歌を2曲披露した‥‥これがどういった意味を持つのか現時点では判りません。完全復活の序章なのか、それとも単なる気まぐれなのか。そういえば音楽活動中止後すぐに大阪で深夜弾き語りをした、といった話もありましたが‥‥

  J-POPと呼ばれる日本の音楽界の中で今現在、所謂「情念系」(なんて呼び名、ホントにあるのか!?)とカテゴライズされる女性シンガーにとって、そのお手本のひとりとなっているのは間違いなくCoccoでしょう。'90年代末、椎名林檎と双璧を成すかのように語られることの多かったCocco。林檎も長い沈黙の末、ようやく今年完全復活しました。ま、Coccoの場合とは状況が全く違いますからホントは比べるのもアレなんですが。

  このベストアルバムは、彼女が完全に人前から姿をくらました後にリリースされた2枚組。選曲自体は彼女が行っていて、そのタイトル通りシングルコレクション的側面もあり(とりあえず公式リリースされたシングルタイトル曲は全部収録)、そのカップリング曲やアルバム収録曲で彼女が気に入っている曲を「裏ベスト」と呼び、更には完全未発表の新曲を5曲(初回盤には更に2曲入りCDシングルが収録されていたので、未発表曲は都合6曲ということになりますが)収録。全26曲(初回盤は28曲)というボリュームもさることながら、やはり改めて思うのはその楽曲の素晴らしさ、そして時に優しく、時に刺さるような表現(歌詞や歌唱)の素晴らしさ。既発曲については以前自分が書いたレビューを読んでもらえばいいし、未発表曲に関してはこちらで当時の担当ディレクター氏が解説してくれてるので、それを読んでみてください。

  ‥‥ってそれじゃこのレビューも終わっちゃうじゃん。いや、とにかく一度この2枚組をじっくり腰を据えて聴いてもらいたいし、何度か聴き終えた後に俺の書いた全作品レビューと上の寺田氏の解説を読んでくれればいいと思います。特に「まだ一度もCoccoの歌に触れたことのない人」や「シングル曲は何曲か知ってるけどアルバムまでは手を出したことがない人」には、こんな駄文を読む前にまず一度聴いて欲しいな。まぁこれを読んで興味を持って、それから聴いてくれるのもアリだけどさ。

  個人的なこのアルバムのハイライト、それはディスク2ですかね。名曲"焼け野が原"でいきなり目頭が熱くなるし、続けざまに"ポロメリア"、"あなたへの月"、"星に願いを"、"けもの道"って流れ、反則過ぎ。更に後半‥‥超名曲"遠く儚い者たち"、未発表曲にして名曲の仲間入りを果たした"もくまおう"、初期の隠れた名曲である"星の生まれる日。"ときて、最後の最後に‥‥ラストツアーとなった2000年秋のツアー、そして先の武道館公演でも歌われ、その日歌われた未発表強の中では一番印象に残った"荊"で終わる流れ‥‥何故こういう曲順になったのか、それは本人に聞いてみないと判りませんが(上の解説によると、この曲をアルバムラストに選んだのはCocco本人だとのこと)‥‥もの凄くCoccoらしい終わり方だな、と。このベストを聴いて、彼女の音楽活動中止を妙に納得できたんですよね‥‥ああ、ホントに一度完結したんだ、って。

  そして彼女は再び人前に立った。今後のことは判らないけど‥‥期待しちゃってもいいんですよね? まだ「おかえりなさい」は言わないでおくよ。けど、いつ帰ってきてもいいように、みんなもこのベスト盤やオリジナルアルバムを聴いてちゃんと予習・復習しておこうよ。そして本当の復活の日には‥‥みんなで声を大にして言ってあげようよ。「おかえりなさい」って。



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投稿: 2003 09 01 12:00 午前 [2001年の作品, Cocco] | 固定リンク

2003/08/04

岡村靖幸『OH!ベスト』(2001)

 いやー参った参った。本当に出てくるんだもん、岡村ちゃんったら(ってそれが当たり前の話だろ!?ってツッコミを戴きそうですが、この数年間、何度も人前に出るチャンスを作りながらも全てそれらがポシャッってたんですよ!?「本当に」の意味はあなた方が思ってる以上に重いものなんですよ、我々'80年代から彼を知る者としては)。20分とも30分とも言われるそのライヴですが、スポーツ新聞には「25分」と書かれてましたね。決して長い時間ではないし、7年以上も待った(あるいは10年以上待ってる人もいるんですよ、「禁じられた生きがい」での武道館公演を観てない人にとっては)、あの場に居た俺らと同じ時間・空間を共有した人達の多くにとっては、たったの25分で9,500円だとしても、決して高い値段ではないんですよ。

  そんな岡村靖幸を、今回の騒動で初めて知ったという10代の人達、決して少なくないと思うんですね。だってさ、最後のオリジナルアルバムが数日前にも取り上げた「禁じられた生きがい」で、これだって'95年12月のアルバムだよ‥‥その後もコンスタントにシングルだけはリリースしてたんですよね、人前に出ることはなくても。'96年にはシングル"ハレンチ"を、間が空いて'99年には"セックス"、'00年には"真夜中のサイクリング"、そして'01年には"マシュマロ ハネムーン"をリリースしてるんですね。その間ににも川本真琴のプロデュースとかやってたりするんですが、まぁこの程度しか世に楽曲を発表してないわけですよ。当然アルバムなんて‥‥

  そして、その岡村ちゃんの凄さを理解するには‥‥一番いいのは、ライヴDVDを観てもらうか、オリジナルアルバムを全て聴くことをオススメするんですが、それはさすがに‥‥ってことになると、やはりお手軽なベスト盤ってことになるのでしょう。ということで、今回紹介する2枚組のベストアルバム「OH!ベスト」の登場となるわけです。エピック在籍時にリリースされた全てのシングル、しかも「禁じられた生きがい」以降にリリースされた、上に挙げた4枚のシングルも収められた、正しく『コンプリート・シングル・コレクション』になっています。このベストと同時発売だった"マシュマロ ハネムーン"を1曲目に持ってきて、以降はリリース順に収録されているので、これから聴いてみようって人にはうってつけの1枚(セット)になってます。

  勿論、これが全てだと思わないでくださいね? ここに収められてない曲の中にも、シングル曲を軽く超えるような名曲は沢山あるわけですから。これで自分の肌に合う/合わないを確認後、オリジナルアルバムを聴けばいいと思います。うん、そういう意味では本当にお手軽なアルバムだよね、これ。

  個人的にはファーストアルバム「yellow」の楽曲も素晴らしいと思うけど、やはり"イケナイコトカイ"以降‥‥アルバムでいうとセカンド「DATE」以降の充実振り・爆裂振りが強烈に印象深いんだよね。というのも、その"イケナイコトカイ"を当時の音楽番組(「eZ」か「JUST POP UP」のどちらかだと思う)で初めて聴いて、岡村ちゃんに衝撃を受け、彼にハマッたクチですしね、俺。そして名曲"聖書(バイブル)"で更なる衝撃を受け、超名曲"だいすき"が自分の中での大きな決定打となったわけで。この曲で岡村ちゃんを聴くようになったって人、自分の周りにも多かったしね。

  昨今のファンク歌謡、モーニング娘。やメロン記念日辺りに見られるファンク路線、そういった今のJ-POPシーンにおける「ファンク・ポップ」は全て岡村ちゃんを発端にしてるんじゃなかろうか、なんて思える程、彼は'80年代~'90年代初頭において先駆者だったわけ。今では当たり前過ぎて何も感じないかもしれないけど‥‥やっぱ一度はライヴ観て欲しいなぁ、「デブ」云々は抜きにして(ま、ファン以外が彼のこと「デブ」呼ばわりしたら、笑顔で殴りますけどね、そいつを)。



▼岡村靖幸『OH!ベスト』
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投稿: 2003 08 04 12:00 午前 [2001年の作品, 岡村靖幸] | 固定リンク

2003/07/21

カントリー娘。『カントリー娘。大全集①』(2001)

  カントリー娘。が2001年12月にリリースした、現時点で唯一のアルバム。当時のメンバーはりんね(オリジナルメンバー。'02年10月に卒業)とあさみ。この頃は丁度「カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)」としてメジャーデビューして半年以上経った頃で、当然このアルバムもその絡み‥‥というか便乗でリリースされたような感じ。

  収録曲の殆どが既発曲で、カントリー娘。単体のシングル曲が"二人の北海道"(1st。'99年7月リリース)、"雪景色"(2nd。'99年11月リリース)、"雪だより"(c/w曲)、"北海道シャララ"(3rd。'00年4月リリース)、"恋がステキな季節"(4th。'00年7月リリース)、"あぁ 恋しくて"(c/w曲)の6曲、カン梨華のシングル曲が"初めてのハッピーバースディ!"('01年4月リリース)と"恋人は心の応援団"('01年10月リリース)の2曲。収録曲全11曲中8曲が既発曲という、ある意味「やっつけ仕事」に近い内容なのですが、今となっては「リリースされたこと自体が奇跡」とも言えるし、何よりその1年後に卒業してしまうりんねの事を考えると、タイミング的にもとてもいい時期に集大成的な作品集を発表することができたんじゃないですかね?

  まず、純粋なカントリー娘。時代(デビュー時~あさみ加入)の楽曲について。デビュー曲"二人の北海道"は事務所の大先輩、森高千里が作詞、つんく♂が作曲という恵まれた内容。曲調も(音楽スタイルの)カントリーというよりも、森高自身の楽曲みたいなアレンジがなされたロックンロール調。これはアレンジャーやプレイヤーに森高を支えてきた職人達が参加してることが大きいでしょうね。"雪景色"と"雪だより"も森高&つんく♂の作品で、アレンジにはお馴染みの高橋諭一が参加。この辺りから「カン娘。+高橋諭一」というコンビネーションが暫く続きます。カン娘。の良き時代を支えた素晴らしいアレンジャーでしたね、高橋氏は。"北海道シャララ"の作詞はつんく♂と盟友であるまこと(シャ乱Q)の共作。このアルバムではこの「まこと&つんく」という連名での作詞が結構見受けられます。個人的にはこの"北海道シャララ"は、カントリー娘。の全ての楽曲の中でも一番好きな曲。自分が初めて聴いたカン娘。の曲というのもあるかもしれないけど、こういう世界観が好きなんスよね。そしてあさみが加入して発表された"恋がステキな季節"と"あぁ 恋しくて"は、その前の"北海道シャララ"から押し進めてきた「脱・カントリー色」が更に強くなり、純粋なポップスとして楽しめる佳曲となってます。初々しいあさみの歌唱が、今となっては懐かしいですね。

  カン梨華の2曲については‥‥各シングルレビューを参照してください。ここでは割愛。

  そして、このアルバムの為に用意された新曲3曲。りんねのソロ曲"どっちが綺麗ですが・・・"、あさみのソロ曲"片想いはホットミルク"、石川梨華がゲスト参加した‥‥早い話が「石川メインじゃないカン梨華」形体の"女の子の取り調べタイム♡"。どれもそれぞれのキャラクターを活かした、非常に「らしい」曲に仕上がってます。りんねの"どっちが綺麗ですが・・・"は"北海道シャララ"の流れを組むマイナーチューン。アコースティック色が強いのも、いつも通り。安心して聴ける1曲。あさみの"片想いはホットミルク"はこれまでのカン娘。にはなかったタイプ‥‥かな? ペダルスチールっぽいギターが入る辺りには「らしさ」を感じます。新境地まではいかないものの、ちょっとだけ意外性を感じるなかなかの1曲では。そして最後の"女の子の取り調べタイム♡"はモータウン調のリズムアレンジを持った、このアルバムのハイライトといえる1曲。カン梨華程弾け切っておらず、かといってカン娘。程地味で穏やかでもない、石川参加時とりんね&あさみ時それぞれの良い部分を見事に融合したポップなナンバーとなっていて、完成度もかなり高いと思います。アルバムの中でも人気が高い曲のようで、その後「カントリー・バージョン」が新たに作られ"色っぽい女 ~SEXY BABY~"('02年4月リリース)のc/w曲として収録された程。納得の1曲でしょう。それぞれのボーカルパフォーマンスもなかなかのもんですしね。

  というわけで、既発曲が大半で多少継ぎ接ぎ感が強い気がする内容ですが、どの曲も聴いていてホッとするナンバーばかりですし、意外とリピートする機会が多い1枚なんですよね。今となってはこういう音楽性のカン娘。を期待できないだけに、そして既にオリジナルメンバーすら残っていないカン娘。なだけに‥‥切ないですね、本当に。



▼カントリー娘。『カントリー娘。大全集①』
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投稿: 2003 07 21 12:00 午前 [2001年の作品, カントリー娘。, カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2003/07/14

JUDAS PRIEST『DEMOLITION』(2001)

先日前任ボーカリスト、ロブ・ハルフォードの復帰が発表されたばかりのヘヴィメタル界のゴッド的存在、JUDAS PRIEST。来年2004年でバンドのデビュー30周年なんだそうで。そういうこともあっての『全盛期メンバーでの復活』ということになったんでしょうね。ただ、ここでいう全盛期ってのは'80年代の黄金期メンバーではなくて、あくまで'90年の名盤「PAINKILLER」発表時のメンバーってことなんですよね。ま、今更ドラマーをスコット・トラヴィス以外の人に戻すのもどうかと思うし、メンバー的には何にも問題ない、はずなんですが‥‥どうにも釈然としないわけで。何故なら、ロブと入れ替わるように脱退した二代目シンガー、ティム・リッパー・オーウェンズの存在が気になるからですよ。

今回紹介するアルバムは、現時点での最新オリジナルアルバムで、そのティムが加入して2作目となる2001年夏の作品「DEMOLITION」。実はリリース当時、よく聴き込まなかったんですよね‥‥アルバムリリース前後に丁度今の家に引っ越したので、そのドタバタで買ったはいいけど聴く暇ないまま忘れ去られてしまったという。尚かつ、そのままフジロックに行っちゃったりロッキンジャパンフェスに行っちゃったりしたもんだから‥‥そういう『メタルを聴き込むモード』になれなかったんですよね。

んで、今日このロブ復帰劇を知り、改めて聴いているんですが‥‥全然悪くないじゃん。むしろ前作「JUGULATOR」('97年)の数倍素晴らしい内容じゃないですか? メタルファンからすれば「‥‥今更何言ってんの!?」って憤慨するかもしれませんが、これが偽らざる正直な感想なんだから仕方ないです。ゴメンナサイ。

基本的に俺、プリーストは'80年代普通に聴いてきて、そこまで入れ込む程に思い入れがあるかと問われれば「‥‥別に」と答えちゃうような、そんな接し方だったわけですよ。ところが、'90年秋にリリースされた「PAINKILLER」。これで全てが変わっちゃうのね、俺の中で。とにかく聴き込んださ。んで、来日決まれば浪人生なのにも関わらず、青山チケットエージェンシーに予約整理券を貰う為に始発で行って並んだりして。そのくらい、当時19才だった俺に衝撃を与えた1枚だったわけですよ。

勿論、その頃には彼等の全作品は網羅していたし、「PAINKILLER」が全てだとは思わなかったんだけど、どうしてもこのアルバムがひとつの基準になってしまってたのは確か。仕方ないか。

だからね、その後の彼等‥‥ロブのFIGHTやTWOといったソロ・バンド、そしてティムが加入したプリーストに対して、どうしても本気ではのめり込めなかったのね。そりゃいいアルバムだとは思ったけどさ‥‥

そういう視点で見るとこの「DEMOLITION」というアルバムは、「PAINKILLER」とは全く異なる内容で、ああいうレベルには達していないと思う。でもね、プリーストという『息の長い、歴史のあるバンド』という観点から見ると、非常に安定した『2001年のプリースト』を見事に表現したアルバムだな、と思えるわけ。この違い、判っていただけるでしょうか?

確実に現代的な要素を取り入れつつ、その骨格を形成してるのは'74年にデビューして、'80年代にヘヴィメタルという音楽を普及させ、'90年に「PAINKILLER」という素晴らしいアルバムを作りだしたJUDAS PRIESTというバンドなわけ。つまり、現代的なサウンド・アレンジを取り入れつつも、その根底にあるものは何ら変わっていない、むしろ曲そのものは非常にプリースト的なんですよね。勿論、全てのサウンドが現代的というわけではなくて、所々に'80年代的‥‥「TURBO」('86年)や「RAM IT DOWN」('88年)といったアルバムの要素を感じさせるし、当然「PAINKILLER」で魅せた要素もあれば前作「JUGULATOR」的な要素もある。これって結局、前作をリリースしてツアーに次ぐツアーを重ね、過去の楽曲と新曲を同じように演奏し続けた結果なんじゃないかな、なんて思うんですけど‥‥ま、門外漢の意見なんですけどね。

個人的には速い曲がメインになっていない点(=ミドルヘヴィチューンが大半)、しかもそのミドルチューンが前作みたいに退屈じゃないこと、更に泣きのバラードが数曲収録されている点が大きいですね。これだけで評価がググンと上がってますし。そして、それらの楽曲を時には前任者をイメージさせる歌い方で、そしてその殆どで彼自身以外の何者でもないという歌唱を聴かせてくれるティムの表現力。このアルバム一番の肝はそこだと思うんですよね。

これに続くアルバムがどういう感じになるのか‥‥ロブのHALFORDもいい感じで成功してただけに、その融合となるような凄まじい内容になるのか‥‥リリースはまだまだ先の話ですが、これはちょっと注目に値する作品になるのだけは間違いないですね。



▼JUDAS PRIEST『DEMOLITION』
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投稿: 2003 07 14 03:31 午前 [2001年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2003/06/19

中澤裕子『二人暮し』(2001)

  2001年4月にモーニング娘。を卒業、完全なソロとなって最初にリリースしたのがこのシングル。いろんな意味で冒険していて、非常に興味深い作品となっています。

  表題曲のアレンジには、ハロプロ初登場となる明石昌夫の名が。ビーイング系のアレンジャーとして'90年代に活躍、B'zやZARD、WANDS等といった一連のアーティストを手掛けてきた人なのですが、この曲でも上記の、特にZARDにも匹敵するようなロック色強めのアレンジになっています。メロディ的には申し分なし、そこにこのアレンジですから、ある意味最強といってもいいでしょう。更に、それらの要素に引き出されたかのような中澤の力強い歌唱も印象的です。肩の力を抜いた緩いイメージがあった彼女の歌唱が、ここでは熱唱と呼んでも間違いではない歌い方をしています。恐らくソロになって「好きなように歌ってみ?」とつんく♂から指導されたのでしょう。常に力み気味なため、多少平坦な印象を受けなくもないですが、これはこれで興味深い内容となっています。

  また、カップリング曲"公園通りの喫茶店"も今までにないタイプの楽曲になっています。アレンジは米光亮で、その後の「中澤=アコースティック」という図式への第一歩といった作風で、バックトラック自体は打ち込み主体なのですが、音数は極力抑えられ、アコースティックギターが多用されています。後の「FOLK SONGS」シリーズへの伏線として考えても、非常に興味深いんじゃないでしょうか? こういう曲がやっぱり彼女の声にはぴったりだ、と最初に気づかせた、モーニング娘。卒業後の彼女にとっても非常に重要な1曲ではないでしょうか?



▼中澤裕子『二人暮し』
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投稿: 2003 06 19 11:53 午後 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, 中澤裕子] | 固定リンク

中澤ゆうこ『悔し涙 ぽろり』(2001)

  モーニング娘。卒業発表直前にリリースされた、在籍中最後のソロシングル。卒業を念頭に置きつつ制作~レコーディングされたこの2曲は、ある意味「モーニング娘。の中澤裕子(当時は「中澤ゆうこ」名義)」の集大成といえる出来になっています。

  タイトル曲のアレンジは小西貴雄。「(ボサノバ+R&B)÷歌謡曲」といったタイプのアレンジで、やはりメロディには目を見張るものがあるんですが、いかんせんアレンジが安っぽすぎるんですね。ブラス系シンセの安っぽさが気になって、どうしても評価を低くしてしまってるように感じるのですが、中澤の歌はいい感じなんですよね。本当に勿体ない1曲。昔の歌謡曲風に全部生音だったら、きっと名曲と呼ばれていたんでしょうね。小西アレンジ曲にはそういった類の曲が本当に多いように思います。勿体ないなぁ。

  カップリング曲"恋の記憶"は、作詞でつんく♂と中澤本人が共作、作曲をつんく♂が手掛け、アレンジは樫原伸彦が担当。これこそ「別れ/卒業」をテーマに、彼女から残されたモーニング娘。のメンバーへのメッセージを「恋人との別れ」の裏に隠した、非常によい歌詞に仕上がっています。恐らく多くの人が、中澤卒業のラスト公演で歌われたこの曲を思い出すと思うんですが‥‥確か昨年行われたソロツアーでも歌われてなかったですよね? こんなにいい曲なんだから、ある時期が来たらちゃんと歌って欲しいなぁ‥‥今の彼女なら見事に歌いこなすだけの実力が備わっているはずだしね。

  アレンジ的には不遇なシングルとなってしまいましたが、やはり"恋の記憶"への思い入れからか、シングルとしての評価はそんなに低くないと思います。実際、共にメロディは非常によく出来た楽曲ですしね。



▼中澤ゆうこ『悔し涙 ぽろり』
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投稿: 2003 06 19 11:48 午後 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, 中澤裕子] | 固定リンク

2003/05/25

KENZI & THE TRIPS『青春BABY』(2001)

  '80年代中盤に青春時代を過ごしたロック/パンクキッズ(だった、現在30才前後の元少年少女達w)ならご存じでしょう、KENZI & THE TRIPS。一端解散し、後('90年代半ば)に再結成(というか、ボーカルのKENZI以外は新しいメンバーでの復活)し、地道に活動してきた彼等が、2001年夏に発表したカバーアルバムがこれ。「僕の♡した日本のロックンロール」のコンセプトの下、'80年代に活躍した日本のロックバンド14組、全16曲を収録。メンツ的にもう完全にツボなのよ、これ。以下にザッとカバーした曲名&原曲アーティスト名を記しておきますね。


・LET'S ROCK / THE ROOSTERS
・人にやさしく / ブルーハーツ
・トランジスタ・ラジオ / RCサクセション
・GERONIMO / GASTUNK
・Blow The Night! / THE STREET SLIDERS
・INSTANT LOVE / ボウイ
・ゴキゲンRADIO / THE MODS
・ピンナップ・ベイビー・ブルース / SHEENA & THE ROKKETS
・あの娘にひとめぼれ / THE STAR CLUB
・のら猫 / 子供ばんど
・ダディーズ・シューズ / ARB
・ロマンチスト / THE STALIN
・THE UNKNOWN SOLDIER / THE STAR CLUB
・Tokyo Cityは風だらけ / ARB
・団地のオバサン / アナーキー
・GET THE GLORY / LAUGHIN' NOSE


どうよ、これ? 中学~高校の頃に聴いたバンド/曲ばかりなのね。つうかさ、KENZIとほぼ同時期に活動し始めたようなバンドやもっと後に登場したバンドまで含まれてるんだけど、単純にKENZIのルーツを辿るというよりは、バンドとして(メンバー全員)のルーツをそのまま詰め込んだらこうなった、といった感じなのでしょうか。それとも「単純にカッコイイ日本のロックンロールをカバーしよう」っていう簡単な理由なのでしょうか。インタビュー等での発言を目にしていないので真相は判りませんが、個人的には全然アリだと思いますよ、こういう選曲。

  明らかにルーツ的存在といえるだろうRCやMODS、ARBやシナロケといった大御所ロックンロールバンド。ビートパンクなんてものが世に出る前の、真の意味でのリアルパンクだったSTALINやSTAR CLUB、アナーキー。同時代にシーンを盛り上げたラフィン。そんな彼等やKENZI達に影響を受けたであろうブルーハーツ。そしてちょっと異色なGASTUNKやボウイ、子供ばんど等々‥‥基本的にはこんな感じで分別できると思うんですが、正直そんな分別も必要ない程どの曲も「ケントリの音」になってるんですよね。つうかKENZIがあのクセのある巻き舌で歌えば、どの曲もケントリっぽくなっちゃうんだから驚きというか。

  所謂バンドブーム以前のバンドばかりで、今の若い人達には正直縁がないバンド名も数あることかと思います。RCやブルーハーツはいろんな意味でリスペクトされているので聴いたことある人も多いでしょうけど、果たしてARBやシナロケ、MODSやスライダーズを好んで聴いてますっていう10代の若い子がどれだけいるのか‥‥いや、逆にこのアルバムを聴いてちょっとでもそれらのバンドに興味を持ってくれたら、きっとKENZIも嬉しいと思いますよ。っていうか、俺が嬉しいんだけど。

  そんな俺も、この中では通過してないバンドもあるんだよね‥‥STAR CLUB。何か今まで敬遠しえたところがあって。変な取っつきにくさみたいなのがあるんだよね、イメージ的に。けど、こうやって聴くとやっぱりポップなんだよね、楽曲が。勿論、ここに入ってる2曲でしか判断してないので実際にはどうだか判りませんが、少なくともこれ聴いて興味を持ったのは確か。こんな三十路に突入した俺をも10代の頃に引き戻してくれる、そんな素晴らしい作品だと思います。

  あと、改めて初期のボウイはカッコよかったってのと、GASTUNKはこの中では異色だけど俺は本当にこの曲が好きでそらで歌えるなぁとか、ラフィンも好きだったんだよなぁ‥‥とか、いろいろ思うことはありましたね。

  ちなみにKENZI & TRIPSは先日、「青春BABY II」というカバーアルバム第二弾をリリースしたばかり。今度はどんなアーティストを‥‥と思ったら、何とビックリ、セルフカバー集ですよ! '80年代のオリジナルアルバムが全て廃盤の今(オールタイム・ベスト盤でのみ古い曲は聴けます)、これは非常に有り難い企画盤ですね。しかも「今のメンバーで、今の音で」再構築されてるわけですから、悪いわけがない。だって曲が元々いいんだからさ。

  さて、そんなKENZIに明日、10数年振りに会いに行ってきます‥‥非常に楽しみだなぁ。正しく「FOREVER YOUNG!」ですよ。



▼KENZI & THE TRIPS『青春BABY』
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投稿: 2003 05 25 12:00 午前 [2001年の作品, KENZI & THE TRIPS] | 固定リンク

2003/05/10

MOUSE ON MARS『IDIOLOGY』(2001)

ドイツのエレクトロ・ユニット、MOUSE ON MARSが2001年初頭に発表した通算7枚目のアルバム。俺が彼等の音に触れたのは、同年末にリリースされた「エレクトログライド」のコンピレーション盤に収録された "Actionist Extension"(今回取り上げた「IDIOLOGY」1曲目の"Actionist Respoke"のリミックス)が最初で、それまでは名前こそ知ってるものの聴く機会がなかったんですね。で、その後のエレグラに行ったものの、一番ラストだったMOUSE ON MARSまで体力が保たず、結局観ないまま帰っちゃったんですよ。

で、帰宅後数日経ってから改めてそのコンピ盤を聴いて、観なかったことを後悔し‥‥要するに、それ1曲で俺は気に入ってしまったわけですよ。って観る前にちゃんと全部聴いておけ!って話ですが。そういうわけで、もう完全に後追いでこのアルバムに手を出したわけです。ホント、我ながら何やってんだよって感じ。

そんな感じで、このアルバム。当然何の知識もないまま聴いたわけですが‥‥歌モノもやってるんですね、そういうイメージがなかったもんでビックリ(それもそのはず、彼等が歌モノに積極的になったのはこのアルバムからなようで、過去のアルバムは基本的に歌ナシの方向らしいです。って未だに旧譜聴いてない俺。いい加減に他のアルバムも聴いてみようよ)。その歌も、いきなりヒップホップの要素を取り入れたエレクトロニカ風な"Actionist Respoke"ではエフェクトしまくりで、歌モノというより既に歌が楽器のひとつとして機能してるんですね。これは面白い。リミックスの方も良かったけど、完全に別物ですね。エレクトロニカっていうと気難しさや踊れないってイメージが強いと思うんですが(ダンスよりもリスニング重視って印象が強いし)、これはなんつーか‥‥踊る、っていうよりも暴れたくなる音ですよね。ちょっと毛色は違いますが、APHEX TWINに通ずるものがあるというか‥‥ま、この手の音楽に精通してる人から言わせれば「何言ってんの!?」な意見でしょうけど。

全てに歌が入っているというわけではなく、続く"Subsequence"は(恐らく)従来通りのインストもの。エレクトロ・ユニットとはいいながらも、生楽器‥‥ここではピアノやストリングス等‥‥が要所要所に登場し、聴いてるこっちがハッとすることが多いです。つうか単純に気持ちいい。サンプリングして挿入してるのではなくて、恐らく実際に演奏したものをそのまま要所要所に仕様してるんだと思いますが(ピアノのフレーズは判らないけど)、こういうのは新鮮ですよね。楽曲のノリは前曲のノリをそのまま受け継いでいるんだけど、高揚感を保ちつつもどこか安らぎを覚えるのは、やはりフルートやストリングスの音色によるものなんでしょうか。他にもスカのリズムを取り入れたナンバー("Do It")や爆裂しまくりなエレクトロニカ・ナンバー("First:break")等、とにかく多彩なサウンドが次から次へと飛び出します。

全体的に「ボーカルを取り入れたナンバー」数曲、「神経を苛立たせるようなエレクトロニカ・サウンド」、「跳ねるようなヒップホップ的要素」、「映画のサウンドトラックを思わせるようなストリングスや生楽器」(特に"The Illking"の美しさといったら)といったイメージが強いこのアルバム、他のエレクトロニカ/エレクトロ・ポップ勢とは明らかに異色な存在だと思います。最も俺もそんなに数を聴いてる方ではないですが、何故彼等が支持されるのかがよく判る1枚だと思いますよ。リリースから既に2年以上経ってしまったわけですが、未だに新鮮さ・斬新さを保っているのが面白い。テクノロジーの進歩によってどんどん新しいものが誕生するこの手のジャンルの中でも、これは珍しいことだと思うし、言い方を変えればそれだけこのユニットの音楽が独自性を持ったものであり、そして新しかったか、ということの表れだと思います。

これを機に、俺も古い作品にも目を向けてみたいと思います。まだ彼等の音を聴いたことがない人は、とりあえずこのアルバムから聴いてみるといいんじゃないでしょうか。きっと俺と同じように「何でもっと早く聴いてこなかったの?」って思うはずだし、そして同じように旧譜にも手を伸ばしてみようって気になると思うから。



▼MOUSE ON MARS『IDIOLOGY』
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投稿: 2003 05 10 02:40 午前 [2001年の作品, Mouse On Mars] | 固定リンク

2003/04/19

BRAHMAN『A FORLORN HOPE』(2001)

  BRAHMANが'01年6月にリリースしたセカンドアルバム。ファーストアルバム「A MAN OF THE WORLD」が'98年秋のリリースだから、まる3年振りのアルバムってことになるんだよね。しかもその間の3年間にリリースされた音源といえば、このアルバムにも再録音され収録されたシングル「DEEP / ARRIVAL TIME」1枚のみ。しかもそれがリリースされたのが'99年秋‥‥如何にこのバンドの創作ペースがゆっくりかが伺えると思います。実際、このアルバムリリースから約2年経った今現在も、新しい音源がリリースされる情報が入ってこない程ですから。だからといって何もしていないわけではなく、地道にツアーにツアーを重ねてるんですよね。自分達がメインのツアーだけでなく、いろんなイベント‥‥それこそフジロックのようなバカでかいステージから、数百人しか入らないクラブクラスまで‥‥に出演したり、海外にも足を伸ばしたり。活動の規模は更に大きくなってるんですよ。一時は「メロコア系の新星」だの「AIR JAM系」だのといった括りで語られることの多かった彼等。Hi-STANDARD等の周辺バンドといったイメージがあった彼等も、今では以前のレビューで書いたように、本当に「日本を代表する」バンドになってしまったなぁ‥‥という気が。もはや「AIR JAM系」なんて括りすら必要ない存在の彼等、毎年少なくとも1回はライヴ観る機会があるんですが、意外とムラのあるステージングなんですよね。最高に素晴らしい時と、惜しいなぁ‥‥と感じる時と‥‥これだけ年間何十本、何百本とやってれば、そりゃ調子悪い時もあるかなぁと。ただ‥‥これは俺が彼等に慣れてきたのも関係あるのかもしれないけど、観る回数を重ねる毎に‥‥観てるこっちが地団駄踏みたくなるような内容だったりするんですよね、どういうわけか。ま、その辺は最後にもう一回述べるとして‥‥

  前作の延長線上にある内容。ただ、いい意味で「硬質感」が増して、ストロングスタイルの楽曲はより力強く、歌を聴かせる楽曲ではより歌を引き立てるような演奏をしてたりと、ファーストアルバムのリリース後3年間の成長を改めて感じさせる出来となってます。ただ、正直に書くと‥‥初めてこのアルバムを聴いた2年前は、ファーストよりもいいとは思わなかったのね。なんつうか、期待が大きかったんでしょうね。ファーストアルバムのレビューを改めて読んでみて、当時の自分がどれくらいBRAHMANに期待してたか再確認できた程だからさ。けど、その後に観たフジロックのステージの出来が酷かったから、彼等に対する興味が急速下降してっちゃって。翌年のフジロックの時も正直、彼等を観るつもりなかった程で。けど、去年のステージは悪くなかったと思います。期待してなかった分、良く思えたのかもしれないけど。

  こうやって今改めてこのアルバムを聴いてみると、当時の彼等が「AIR JAM系」に括られていたことに対して俺が感じていた「違和感」の意味が何となく判った気がしました。やっぱりね‥‥当時もよく例えとして言ったかもしれないけど‥‥パンクというよりも、ヘヴィメタルのメロなんだよね。メロコアってのは、要するに「メロディック・ハードコア」の略でしょ。メロディアスなハードコアパンク‥‥昨今、'80年代の洋楽ポップスをメロコア風にカバーするバンドが多いですが、そういう安っぽさはBRAHMANには感じられないのね。もっとさ‥‥'80年代、そのパンクの対極にあったようなIRON MAIDENみたいなヘヴィメタル・バンドみたいな硬質サウンド、そしてメロウさを強く感じるんだよね。表現方法自体は昨今のパンク的なものなのかもしれないけど、その根底にあるのは間違いなくそういったメタル的。メロの判り易さ、親しみ易さは日本人が最も親しみ易い‥‥語弊があるかもしれないけど‥‥歌謡曲的なものに近く、そういう点からもメタル的といえるかも(要するに「泣き」の要素としての例えですね)。その辺が所謂「メロコア」との大きな違いではないか、と。

  初めて"DEEP"を聴いた時、その流れるようなメロディに惹かれたのと同時に、ギターソロの様式美性に強く感心したのを今でもよく覚えています。そしてその要素を更に強調~拡散していった先が、この「A FORLORN HOPE」だったのではないか、と今思うわけです。ファーストではその要素がいい意味で中途半端だったお陰で、何か新しいバンドが登場した、メロディアスでパンキッシュだから「メロコア」でいいや、ってことになったんでしょうけど、完全にこのセカンドアルバムで個性を確立したといっていいでしょう。

  となると、今度はこの確立してしまった個性をどういう方向に進めていくか、ですよね。このスタイルに固執して、時代時代に合った装飾を被せていくのか‥‥いや、それはこのバンドに最も似合わない手段だな。つうことは、やはり‥‥更なる「進化」あるいは「深化」のどちらかでしょうね。更にディープになっていくのか、それともここから新しい地平へと向かっていくのか‥‥個人的には「深化」よりも「進化」して欲しい気がします。昨年のフジロックで披露された唯一の新曲は、メジャーキーを多用した、確かにこれまでのBRAHMANとはちょっと違う毛色の楽曲でした。勿論、聴けばそれがBRAHMANの曲だとは判る1曲なんですが‥‥まだまだ未完成といった感もありつつ、手探りで新しい地点を見つけている最中なんでしょうね。恐らく、最近俺が彼等に対して地団駄踏みたくなる程感じていたのは、そういう変化に対する物足りなさだったのかもしれませんね。

  所謂「AIR JAM系」がもてはやされたのは、既に数年も前の話。今の中高生はメロコアよりもヒップホップ的なものに肩入れしだし、しかもそれすらも今や風化しつつあり、更に新しい「何か」を探しているように感じられます。そしてそんな「AIR JAM系」と括られたバンド群の中で、今でも大きな成功を収めているのはこのBRAHMANとHUSKING BEEくらいじゃないでしょうか。共に新しいスタイルを模索しつつ、新しいファンを開拓していった「オリジナル」な存在。この2組はある意味「勝ち組」なのかもしれないけど、BRAHMANの場合の本当の勝負は、間違いなく近い将来リリースされるであろう新曲‥‥ニューアルバムでしょうね。未だに彼等を毛嫌いするロックファンは多いと思うんですが、そういったファンをも振り向かせるようなアルバムを期待してます。そう、俺がこれまで全く興味がなかったのに、新作「the steady-state theory」で完全にハマってしまったHUSKING BEEのように‥‥



▼BRAHMAN『A FORLORN HOPE』
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投稿: 2003 04 19 12:00 午前 [2001年の作品, BRAHMAN] | 固定リンク

2003/04/09

THE MAD CAPSULE MARKETS『010』(2001)

  2年前の丁度今頃、俺は「OSC-DIS」のレビューを書いたんだけど‥‥あの頃、まさかこんなことになるなんて正直この俺ですら考えてもみなかった‥‥そう、THE MAD CAPSULE MARKETSの2002年欧米諸国での大活躍のこと。2001年夏に今回紹介する「010」をリリース後、『SUMMER SONIC』等の夏フェスに出演し、秋からは全国ツアー。と同じ頃にヨーロッパにて前作「OSC-DIS」が『PALM PICTURES』という新興メジャー・レーベルからリリースされ、同時に何枚かのシングルも切られ、「ケラング!」等ではかなり高い評価を得たよう。そうこうしてる内に2002年5月‥‥忘れられない出来事が起こるわけですよ。そう、あの『OZZ FEST』イギリス公演に出演が決まるんです。しかもメインステージに。OZZY OSBOURNEは勿論、SLAYERやSYSTEM OF A DOWN、TOOLといった米英を代表するヘヴィ/ラウド・ロック勢と肩を並べてライヴを行ったんですよ。しかもそのライヴが好意的に受け入れられてしまう。更に彼等はヨーロッパ諸国にてクラブサーキットを行い、これも各地で大成功。その後、アメリカでも「OSC-DIS」がリリースされ、ショートツアーも行ったそうです。そして2003年春。オリジナル新作リリースの予定もないまま、再び彼等はヨーロッパへと旅立っていき、夏には6年振りに『FUJI ROCK FESTIVAL』に帰ってくる(予定。現時点では公式発表はまだですが)‥‥マッドのようなバンドなら海外で受け入れられるのも時間の問題だろうと思う好意的な気持ちと同時に、日本のバンドが海外で成功を収めるなんて夢また夢というネガな気持ちもあったわけで、そういう意味ではマッドはまず第一ラウンド完全勝利と言っていいのではないでしょうか?

  というわけで、現時点では日本のみでのリリースとなっている、彼等にとって10作目となるオリジナルアルバム「010」。これが既に2年前のアルバムだというんだから、時が経つのは早いよなぁ‥‥ってことは、「OSC-DIS」なんて既に4年前ってことか‥‥だよな。シングル「MIDI SURF」がリリースされたのが、このサイトがスタートした頃だったんだから。確か初期の掲示板でチョロQ付き限定盤を話題にしたこと、あったし。そんな2年前のアルバムなんですが、こうやって改めて今聴いても全然古さを感じさせない(当たり前か)。いやむしろ、2001年には早過ぎたアルバムだったんじゃないか!?なんて思えるくらい。だって俺、当時はこのアルバムをそんなに高く評価してなかったんですよ。さすがに超名盤「OSC-DIS」の後となるアルバム、しかも先行シングル"CHAOS STEP"と"GAGA LIFE."は共にマッドらしい、優れた名曲だったこともあり、期待が高すぎたってのもあったんですね。で、いざ手にしたこのアルバムを聴いて‥‥ちょっとだけ肩透かしを食らったのを今でも覚えてます。なんつーか、常にアッパーというアルバムではないんですね、前作と比べると。それを「変化」「進化」と取るか「煮詰まり」「歩止まり」と取るかでまた評価も変わってくるわけで‥‥シングル2曲が前作を更に押し進めた作風だっただけに、延長線上にある作品だというのは判るんですが、どうしても馴染めなかったんですよ。

  既に2000年夏の『SUMMER SONIC』にて演奏されていたオープニングナンバー"INTRODUCTION 010"(ライヴでも1曲目に演奏されていた)や、新境地と呼べるであろうサイケな"雲 -kumo-"と"CHAOS STEP"、"GAGA LIFE."の4曲でイメージしたアルバム内容とはちょっと異なった作風で、例えば前作のような勢いで押すようなフットワークの軽さはここにはなく、どちらかというともっと絡みつくような、一音一音が重い印象を受けるんですね。アップテンポのシングル2曲にしろ、パンキッシュな"xxx can of this."にしろ、ポップな"FLY HIGH"にしろ。それよりももっとヘヴィなナンバー‥‥"COME."や"BIT CRUSHERRRR"、ヒップホップ色の強い"JAM!"、先にも挙げた"雲 -kumo-"、レゲエ+沖縄風リズム&メロを取り入れた"GOOD DAY"、イントロだけ聴くとYMOやKRAFTWERKみたいな"NO FOOD, DRINK, OR SMOKING"等、とにかくミドルテンポを基本とした、一音一音が重いビートが印象的な曲が多いんですよ。速い曲といっても前作での高速チューンとは違った、非常に人間的なテンポが中心で、そういった面を期待していた人にとっては確かに「物足りない」と言わせてしまう作風なのかもしれません(2年前の俺のように)。

  ところが、時間が経って改めてこのアルバムを聴いてみると‥‥全然悪くないわけですよ。「OSC-DIS」から4年も経ったというのがいい意味で関係してるのかもしれないし(逆に言えば、それだけ「OSC-DIS」のインパクトが強かった、2年経っても新鮮だったと言えるでしょう)、現在の音楽シーンがマッドに追いついたとも言えるかもしれない‥‥確かにこの2年でヘヴィ/ラウド・ロックの流れもだいぶ変わりました。あの当時でも異端な存在だったマッドは、現時点においても異端であり、尚かつその異端児が海外でも受け入れられつつある。そして2003年という現在において、果たしてこの「010」というアルバムを海外でリリースしたら受け入れられるのか‥‥非常に興味深いですよね。

  そういえば、珍しくカバー曲を収録してるのも海外を意識してのことなんでしょうか? 何故21世紀にKILLING JOKEの"WARDANCE"をカバーしたのか‥‥この点も非常に興味深い。更に、海外を意識しながらも、何故か日本語詞を含む曲が多い点(インストを除く12曲中6曲‥‥半数に日本語詞が含まれているんですね。ちなみに「OSC-DIS」は全12曲中5曲。比率的には殆ど変わりません。つうか、それだけ日本語が含まれたアルバムが欧米で好意的に受け入れられているってのが面白いですね)‥‥完全に「世界標準」ならオール英詞にするはずなんですよ。ところが彼等はこれまでのスタイルを変えずに海外で受け入れられている。もはや歌詞は関係ない、サウンドの格好良さが全てってことなんでしょうかね‥‥その辺を是非、欧米の方々に伺ってみたいものです。

  というわけで、長々とこのアルバムについて書いてみたわけですが‥‥確かに「OSC-DIS」は素晴らしかったし、今でも素晴らしいアルバムだと思っています。が、ここ数日この「010」を何度か聴いてるうちに‥‥こっちにまんまとハマってしまって‥‥もしかしたら、こっちの方が好きかも‥‥って思えるようになってきまして。即効性は確かに「OSC-DIS」なんですが、味わい深さとかスルメ度はもしかしたら「010」の方が高いのかも‥‥ま、要するに日本のMAD CAPSULE MARKETSは無敵だ、と。そういうことです。

  夏フェスで、更に成長したマッドに会えることを楽しみにしてます。何せ個人的にはまる3年振りの生マッドですからね! そして‥‥この「010」に続く新作を早く聴きたいな、と。2002年の経験を上手く活かしたアルバム、超期待してます。



▼THE MAD CAPSULE MARKETS『010』
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投稿: 2003 04 09 12:00 午前 [2001年の作品, Mad Capsule Markets, The] | 固定リンク

2003/03/31

頭脳警察『1973.10.20.日比谷野音“聖ロック祭”』(2001)

  頭脳警察が'70年代に活動してきた中で、正式な記録として残されたライヴ盤がファーストアルバムのみだというのは、ちょっとしたファンならご存じでしょう。そのファーストアルバムもギターとパーカッションのみという変則形態での録音だったので、実は「ロックバンド」としての頭脳警察の凄さを余すところなく収めたライヴ盤は、初期に関しては正式には発表されていませんでした。'90年代の再結成時、唯一「LIVE IN CAMP DRAKE」というライヴ盤を残しているけど、それ以外にリリースされた‥‥今回紹介するアルバムも含めて‥‥ライヴ盤は、そもそもリリースを目的として収録されたものではないので、録音状態は酷いものが殆どで、正直「公式ブートレグ」と呼んだ方が正しいように思える内容だったりするんだけど‥‥ただ、それでもないよりはマシで、あの当時の空気を多少なりとも感じ取ることができるなら、やっぱり手を出してしまうんだよねぇ。

  今回紹介するライヴ盤も、頭脳警察の再々結成に合わせて'01年に‥‥18年もの歳月を経て発表された代物なのだけど、これがただの極悪ライヴ盤ではないんだな。この日のライヴというのはファンの間では結構有名なライヴで、実はバックを務めるのがかの四人囃子だというのです。四人囃子も何度か再結成をしていて、昨年はフジロックにも出演したり、当の頭脳警察とジョイントライヴを行ったり等、記憶に新しいと思うんだけど、このライヴ盤では四人囃子のメンバーがドラム・ベース・ギター・キーボードを務め、パンタがボーカル&ギター、トシがパーカッションという6人編成でのライヴを収めています。アルバムには18曲が収録されているけど、実際にはもっと演奏されていたようで、アコースティックセット等も含まれていたようです。

  さてさて、その内容なのだけど‥‥'73年というと、5枚目のアルバム「仮面劇のヒーローを告訴しろ」をリリースした年ということで、同アルバムからの曲が中心になっています。録音状態はとにかく酷く、テープのヒスノイズも結構酷いし、音の歪みも激しいし、各楽器やボーカルのバランスも悪い。作品としてリリースするにはちと厳しい内容なんだけど、やはり貴重な音源ということでどうしてもその辺は目を瞑ってしまいたくなるんだよねぇ‥‥しかも、この演奏がまた凄いの何のって。リハ不足は否めないんだけど、テンションだけは異常に高い。特に初期の曲‥‥"ふざけるんじゃねえよ" や "歴史からとびだせ" 等はもの凄い勢いとテンションで演奏されているし、パンタのボーカルも荒々しいものの、風格のようなものさえ感じられる程。また、本来頭脳警察の楽曲ってキーボードレスなんだけど、各楽曲にオルガンやピアノが加わることで、楽曲としての完成度も更に一段上のレベルに到達したように感じられるし、所々で聴けるギターとオルガンとの即興的な掛け合いなんて、ライヴならではの緊張感を味わえるから面白い。原曲よりもシャッフル気味で心地よい "コミック雑誌なんかいらない" なんて、正直こっちの方がカッコイイんじゃないの?とさえ思えるし。

  政治的発言ばかりが取り沙汰され、音楽的には評価されることの少なかった頭脳警察だけど、実はかなりハードロック色の強いバンドで、色は違うものの、プログレやブリティッシュハードロック等の影響を感じさせる四人囃子との合体は、どういう経緯でそうなったのかは知らないけど、実は必然だったのではないかと、この音源を聴くとそう思えてならないんですよね。これまでのトリオなり4ピースなりの頭脳警察はもっとゴツゴツとした岩石みたいな音をしていたんだけど、この編成での音はもっと柔軟性のある音を出すんですよ。ガッチガチのハードロックナンバーではメチャメチャ重い音を出すし、胸を締めつけるようなバラードナンバーではオルガンがいい味を出し、しなやかさすら感じさせるし。両方とも元来頭脳警察が持っていた要素なんだけど、四人囃子が合体したことで、更にそれぞれの要素が際立ったように感じられます。どうせなら、この日演奏された音源の完全版を、できれば映像付きで観て/聴いてみたいんだけど‥‥それは無理な相談か。

  万人にお勧めできる作品ではないですが、頭脳警察の作品に触れたことのある人、頭脳警察や四人囃子といった'70年代の「日本語ロック」のルーツに触れてみたい人、そして荒々しいハードロックが好きな人。カセット録音並みの音質に我慢ができるなら、是非聴いてみてください。とにかくラストの"銃をとれ"だけのために聴いても損はしないと思いますよ。全盛期のDEEP PURPLEにも匹敵するハードロックサウンドが堪能できます。洋楽ロックのルーツばかり追ってないで、こういうのもたまにはどうですか?



▼頭脳警察『1973.10.20.日比谷野音“聖ロック祭”』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 03 31 12:26 午前 [2001年の作品, 頭脳警察] | 固定リンク

2003/03/11

メロン記念日『電話待っています』(2001)

  2000年2月に「甘いあなたの味」でデビューし、同年6月にセカンドシングル「告白記念日」を発表したメロン記念日。その後、サードシングルである今作「電話待っています」まで約9ヶ月(2001年3月リリース)もの空白の期間ができてしまうのですが、何も彼女達は干されていたわけではありません(当たり前だ、何も悪いことしてないんだから)。その間もキャンペーンや夏と正月のハロコン、モーニング娘。のツアーに同行したりと、リリースといった派手な活動もなく、地味ながらも地道な活動をしていたのでした。

  そうした中、ようやく発表されたこのシングルなんですが‥‥これがまたしても「??」なシングルでして‥‥タイトルチューンの"電話待っています"はつんく作詞作曲は勿論なんですが、アレンジが‥‥船山基紀という方でして、この人、'70~'80年代のアイドル歌謡・ニューミュージック・演歌歌謡等を手掛けてきた、所謂大御所な方なんですね。何でそんな人にアレンジを依頼したのかも謎なんですが、出来上がってきた楽曲は更に謎めいていて‥‥イントロのオーケストレーションを聴いてみんな、絶対に素で引くはず。だって「火曜サスペンス劇場」かと聴き間違いそうなイントロなんだもん。一体何が始まるんだ!?と我々を不安にさせておいて、次に柴田のボーカルが入ってきて更に不安に(苦笑)。ちょっとロックテイストが入った、昔ながらの歌謡曲といったイメージで、曲間に入るストリングス(バイオリン等)の音色が古めかしさを演出しています(悪い方向に)。いや、歌メロとかは良いと思うし、柴田をメインに据えたボーカル構成も現在への布石を垣間見ることができて面白いんですけどね。が、このアレンジだけは‥‥でも俺の中ではこの曲、好きな部類の上位に入るんですよね。ま、クセがかなり強い分、免疫のない人が聴いたら先のように引くと思いますけどね。

  タイトルチューンに呼応するかのようなタイトルのカップリング曲"もう待てませ~ん!"は馴染みの高橋諭一がアレンジ。如何にも彼らしい‥‥とは言いがたい、ちょっと怪しい雰囲気を持った歌謡曲チックなマイナーチューン。悪い曲だとは思わないけど、恐らくメロンのカップリング曲の中でも最も印象が薄い曲じゃないでしょうか‥‥少なくとも俺にとってはそうなんですけどね。2002年12月のファーストツアーでは歌われていましたが、今(2003年3月)行われている全国ツアーではこの曲、外されてますからね。ま、「電話待っています」と言ってた女の子の、もう一方の気持ちとして「もう待てませ~ん!」というのがある、と。そういうコンセプトなんでしょうかね?

  全体的なイメージとして、どうも「レトロ」という印象が付きまといますね。しかも、いい意味ではなくて。同じ事務所の大先輩である、WINK辺りを彷彿させるアレンジの楽曲群。つんく♂や事務所は当時、本気でメロンを売り出す気があったのでしょうか!? 実際に数字となって結果が出たわけですからね(チャート最高位53位、セールスは7万枚が欠ける程度。明らかにセールス落としてますからね)。

  2001年春というと、ハロプロ的には "ミニモニ。ジャンケンぴょん!"(ミニモニ。)や "恋をしちゃいました!"(タンポポ)、"BABY!恋にKNOCK OUT!"(プッチモニ)といった、ハロプロ全体的にも革新的且つ普遍的な楽曲が続々と誕生していた時期なんですが、何でこうもメロン記念日に関してはコンセプトがぼやけたままだったのでしょうか‥‥デビューから1年、彼女達が現在のような確たる地位を築くには更に半年以上の歳月を要するのでした。



▼メロン記念日『電話待っています』
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投稿: 2003 03 11 07:29 午後 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

2003/02/05

Theピーズ『ブッチーメリー Theピーズ 1989-1997 SELECTION SIDE B』(2001)

  '97年8月の東北ツアーを最後に事実上の解散状態としての「活動停止」を発表したピーズ。その後はるは音楽界から退き、自動車免許や調理師免許を取ったらしく、そのままカタギの人になってしまうのか‥‥と多くのファンを心配させました。とはいっても、年に1度はステージに立っていたらしく、それまでの商業的な音楽(アルバムを作り、メディアでプロモーションし、ツアーを重ねる。そしてその繰り返しを延々と行う日々)とは違い、親しい友人と共にステージに立ち、純粋に音楽を楽しむという行為‥‥だったんでしょうね。

  そんなはるですが、2001年1月に旧友の真心ブラザーズのバンドメンバーとして、ステージに立つことになります。当初は単なる企画モノとして結成されたライヴハウス用のバンドだったわけですが、気づけばそのままツアーに出たり、ROCK IN JAPAN FESTIVALのステージに立ったりで、結局同年12月の真心ブラザーズとしてのラストステージである武道館公演まで、同じくサポートメンバーとして参加していたドラムのシンイチロウ(the pillows。はるとも旧知の仲で、アルバム「どこへも帰らない」にも参加しています)と共に参加しました。

  真心の活動休止後、はるとシンイチロウはそのままYO-KINGのソロ活動にも参加することになります。アルバム制作のみならず、2002年のツアーにも参加します。そして‥‥これが切っ掛けのひとつとなり、同年7月‥‥約5年振りにピーズは活動再開を果たすのです。その後のことは皆さんご存じの通り。今更書くまでもないでしょう。

  この2枚のベストアルバムは、レーベルの枠を超え、丁度はるが真心のバンドメンバーとして表舞台に復帰を果たすのとほぼ同時期‥‥'01年1月に急遽リリースされました。恐らくこのベスト盤が企画された頃、まだスタッフははるの表舞台復帰を知らなかったはずなのですが‥‥偶然とは本当に恐ろしいものですね?

  ビクター時代の5枚、そしてキングからの2枚のオリジナルアルバムからの人気曲・代表曲と、シングル"やりっぱなしでサイナラだBye Bye"と"底なし"にそれぞれ収録されていたアルバム未収録曲、そして新たにリミックスされた曲や未発表のスタジオ・セッション、ライヴ音源を存分に収めた2枚で全44曲。勿論、ここに選出されなかった曲にも人気曲・隠れた名曲は沢山あります。ま、基本的にピーズには捨て曲は1曲もないので本来ならオリジナルアルバムから聴くことをオススメするのですが、お手軽に彼等の代表曲を楽しみたい人、まずはどんなバンドなのか知りたいという初心者には便利なカタログかもしれませんね。値段的にも1枚2,400円とお手頃ですし。

  各アルバム収録曲を1曲ずつ説明することはここでは省き、オリジナルアルバム未収録の、ここでしか聴けない音源についてアルバム毎に書いていきたいと思います。

『ブッチーメリー Theピーズ 1989-1997 SELECTION SIDE B』解説

  全21曲入り。個人的にはこっちの方が聴く頻度、高いかな? アルバム未収録曲/バージョンはその内4曲。シングル"やりっぱなしでサイナラだBye Bye"のカップリング曲"恋は水色"は、ご存じの通りポール・モーリアの超有名曲の日本語カバー。ピーズらしいダルな演奏に、バックで叫ぶアビさんの声、そしてそれに相反する美しいメロディと歌詞。このアンバランスさこそがピーズの醍醐味。いいですね、単純に。いいカバーだと思います。

  ファースト録音時の未発表セッションから"肉のうた"。アルバムテイクよりも更に荒々しく、生々しい。マスヒロのドラムってアルバムだとカッチリしすぎてる印象が強いんだけど、このテイクはライヴっぽくて好き。そう考えると、あの音ってのはやっぱりそういう「時代」だったのかなぁ、と。どっちにしても、あのアンバランスさがデビュー時のピーズの個性だったことには違いないですが。

  '92年のライヴ音源から"どっかにいこー"。ヒストリービデオや常磐座のビデオでライヴを目にすることはできますが、CD音源としてはライヴ音源ってここでしか聴けないんですよね‥‥ピーズみたいなバンドは映像よりもむしろ、音源として記録を残して欲しいなぁと個人的には思うんですけど、如何でしょうか?

  最後に、"何様ランド"のリミックスバージョン。あれっ、「どこへも帰らない」に収録の際は"じゃますんなボケ(何様ランド)"というタイトルだったのですが、何故か短くなってます‥‥何か理由があるのでしょうか??

  俺自身、このアルバムを購入した当時というのは、ピーズなんて全然「終わった」存在だったわけで、まさかその後復活するなんて思いもしなかったし、実際当時はベスト以外は「グレイテスト・ヒッツVOL.1 & 2」しか持ってないような状態だったわけですよ。で、このベスト買ってもすぐに封を切るわけでもなく、そのまま半年以上放ったらかしのままで。周りが少しずつピーズの魅力に惹かれていき、少しずつまたその名前をネット上で見かけるようになり、で、「ああ、そういえば買ったよな‥‥」って思い出して、改めて聴いてみたら‥‥単純にカッコ良かった、と。もうね、理由なんかいらないんですよ正直。こんなレビューなんて邪道で蛇足だってこと、書いてる本人が一番よく判ってますから。それでも、未だに聴かず嫌いで避けて通ってる人や、名前しか知らなくて躊躇してる人に対して、何かの参考になればと思って書いてるわけで‥‥ま、それ以上に自分の気持ちを再確認する為の作業なんですけどね。

  どれを聴いてもハズレはないですが、やはり心配な人はこのベストを2枚同時に買うことをオススメします。どっちか1枚しか買う余裕がなかったら、とりあえず「~SIDE A」から買ってみるのもいいでしょう。で、ノックアウトされたら迷わず「~SIDE B」も買えばいいだけの話ですからね。そうやってピーズの魔術にまんまとはまっていった人、俺は何人か見てきてますからね!

  何で21世紀にピーズだったのか‥‥その答えは簡単。「必要とされていた」からですよ。僕らに足りなかったのは、ピーズだったんだ、と。それだけの理由ですよ、ええ。



▼Theピーズ『ブッチーメリー Theピーズ 1989-1997 SELECTION SIDE B』
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投稿: 2003 02 05 03:55 午前 [2001年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

Theピーズ『ブッチーメリー Theピーズ 1989-1997 SELECTION SIDE A』(2001)

  '97年8月の東北ツアーを最後に事実上の解散状態としての「活動停止」を発表したピーズ。その後はるは音楽界から退き、自動車免許や調理師免許を取ったらしく、そのままカタギの人になってしまうのか‥‥と多くのファンを心配させました。とはいっても、年に1度はステージに立っていたらしく、それまでの商業的な音楽(アルバムを作り、メディアでプロモーションし、ツアーを重ねる。そしてその繰り返しを延々と行う日々)とは違い、親しい友人と共にステージに立ち、純粋に音楽を楽しむという行為‥‥だったんでしょうね。

  そんなはるですが、2001年1月に旧友の真心ブラザーズのバンドメンバーとして、ステージに立つことになります。当初は単なる企画モノとして結成されたライヴハウス用のバンドだったわけですが、気づけばそのままツアーに出たり、ROCK IN JAPAN FESTIVALのステージに立ったりで、結局同年12月の真心ブラザーズとしてのラストステージである武道館公演まで、同じくサポートメンバーとして参加していたドラムのシンイチロウ(the pillows。はるとも旧知の仲で、アルバム「どこへも帰らない」にも参加しています)と共に参加しました。

  真心の活動休止後、はるとシンイチロウはそのままYO-KINGのソロ活動にも参加することになります。アルバム制作のみならず、2002年のツアーにも参加します。そして‥‥これが切っ掛けのひとつとなり、同年7月‥‥約5年振りにピーズは活動再開を果たすのです。その後のことは皆さんご存じの通り。今更書くまでもないでしょう。

  この2枚のベストアルバムは、レーベルの枠を超え、丁度はるが真心のバンドメンバーとして表舞台に復帰を果たすのとほぼ同時期‥‥'01年1月に急遽リリースされました。恐らくこのベスト盤が企画された頃、まだスタッフははるの表舞台復帰を知らなかったはずなのですが‥‥偶然とは本当に恐ろしいものですね?

  ビクター時代の5枚、そしてキングからの2枚のオリジナルアルバムからの人気曲・代表曲と、シングル"やりっぱなしでサイナラだBye Bye"と"底なし"にそれぞれ収録されていたアルバム未収録曲、そして新たにリミックスされた曲や未発表のスタジオ・セッション、ライヴ音源を存分に収めた2枚で全44曲。勿論、ここに選出されなかった曲にも人気曲・隠れた名曲は沢山あります。ま、基本的にピーズには捨て曲は1曲もないので本来ならオリジナルアルバムから聴くことをオススメするのですが、お手軽に彼等の代表曲を楽しみたい人、まずはどんなバンドなのか知りたいという初心者には便利なカタログかもしれませんね。値段的にも1枚2,400円とお手頃ですし。

  各アルバム収録曲を1曲ずつ説明することはここでは省き、オリジナルアルバム未収録の、ここでしか聴けない音源についてアルバム毎に書いていきたいと思います。

『ブッチーメリー Theピーズ 1989-1997 SELECTION SIDE A』解説

  全23曲入り。アルバム未収録曲/バージョンはその内4曲。まずはシングル"底なし"カップリング曲の"Yeah(江戸川橋セッション)"。「リハビリ中断」のレビューでも書きましたが、この曲は「はる・アビさん・吉田武彦」というメンツで唯一レコーディングされた1曲。「グレイテスト・ヒッツVOL.2」収録の"Yeah"の再録音なわけですが、「どこへも帰らない」のノリをそのまま引き継いだ、ルーズで且つ勢い一発のセリフカバーとなっています。元のバージョンがメタリックなアレンジだったので、こっちの方がより自然体な印象を受けますね。アルバムに入ってないのが勿体ないよね。シングルが廃盤となっている今、ここでこうやって聴けるのは非常に有り難いことです。

  同じく「どこへも帰らない」収録の名曲"やっとハッピー"は新たにリミックスをされて収録。元のミックスがアルバム全体の空気感を引き継いだ、ちょっとガリガリしたような音だったのに対し、リミックスは音の厚みや温かみが感じられる音になっています。今、このままシングルとして切っても、全然通用するんじゃないですかね、これ? そのくらい古さを全く感じさせない、普遍的名曲。

  '93年のライヴ音源から、やはり名曲と名高い"日が暮れても彼女と歩いてた"も初収録。ピーズをリアルタイムで知らない世代にとって、こういうライヴ音源は興味深い一品になるのではないでしょうか。しかも、このバンドが勢いで通すだけのバンドじゃないことを端的に表すこの名曲をライヴテイクで収めることで、更にバンドとしての深みを我々に示してくれます。

  それに続くかのように、初期の未発表スタジオ・セッションから"バカになったのに"も入ってます。マスヒロ在籍時の、本当に貴重なテイクなわけですが‥‥やっぱりピーズはその登場からして異端だったのかもしれないな‥‥と再確認できるかも。明らかに当時のバンドブームとか一線を画した「音」を鳴らしていますしね。



▼Theピーズ『ブッチーメリー Theピーズ 1989-1997 SELECTION SIDE A』
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投稿: 2003 02 05 03:52 午前 [2001年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

2003/01/19

カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『恋人は心の応援団』(2001)

  2001年4月にメジャーデビューしたカン梨華。デビュー曲はいきなりチャート4位を記録、当時の石川梨華の知名度、そしてカントリー娘。という一般的には無名の存在が出した結果としては上出来でした。そして約半年後にリリースされたのが、セカンドシングルであるこの"恋人は心の応援団"なのですが‥‥

  それまで、石川はカントリー娘。を手助けする為に「助っ人」として参加していることになってました。そして、あくまで石川にとってメインはモーニング娘。であり、タンポポであるはずでした。ところが、このちょっと前から石川梨華を全面に押し出そうとする計画が見え隠れするようになります。ひとつは、カン梨華としてデビュー後、ソロ写真集を発表。当時の時点ではソロ写真集は安倍なつみしか発表していません。今でこそメンバー全員がソロ写真集を発表していますが、当時の状況を考えるとこれがどういう意味なのか、ちょっと考えれば判ることでしょう。更に同年7月にリリースされたモーニング娘。の新曲 "ザ☆ピ~ス!" のセンターポジションに、安倍や後藤真希と共に石川の姿が。しかも石川は中盤、セリフまでありかなりの割合でフィーチャーされています。その他、24時間テレビでの特別ドラマ「最後の夏休み」に安倍や保田圭と共に出演。「棒読みの石川」がここぞとばかりに手腕発揮してくれました。

  それまで娘。の中でもなかなか前に出ることが出来なかった石川が、カン梨華で世間に出る機会を得て、更にそれを後押しする事務所‥‥本体でのセンターも務め、メディアへの露出も増えていった中でのカン梨華新曲。ファーストシングルとの決定的な違いはそういった状況の変化だけではなく、楽曲そのものにもあからさまに表れています。あくまで「カントリー娘。」というブランドに石川が便乗していた感のあるデビュー曲 "初めてのハッピーバースディ!" とは違い、この"恋人は心の応援団"は完全に「石川梨華のための楽曲」になっているのです。確かに前作同様、石川がメインを務めながらも基本的には3人でパートを分け合っているのですが、この「王道アイドルポップ」的なアレンジといい、歌詞の内容といい、衣装や振り付けといい、全てが「アイドル・石川梨華」をイメージして作られたのでは‥‥と思わせるに十分な楽曲なのです。

  前作ではまだ「カントリー」路線なのか、それとも「ポップ」路線なのかの狭間で揺れていた感があったのですが、ここでは完全に吹っ切れていて、アレンジの高橋諭一は如何にも彼らしい「王道アイドルポップ」な味付けで仕上げています。しかも、それは'90年代のそれではなく、完全に'70年代や'80年代前半の、レトロな王道アイドルポップ‥‥こういうのをつんく♂が好きなのは知ってますが、まさかカントリーの名の下でやるとは、誰が想像したでしょうか? 前作でチラチラと顔を見せていた「ブリティッシュポップ」色は、ここでは皆無。前作が完全に「ポップス」として機能していたのに、今作では割り切った「アイドルポップ」に‥‥この変化は大きいと思います。それが良い・悪いの問題なのではなく、「カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)」としての売り出し方が完全に見えた、といったところなのでしょう。

  いえ、曲は決して悪くないですよ。俺が初めて買ったカン梨華のシングルってのもあるんですが、やっぱり思い入れは一番ありますし。この曲の頃からよく意識してテレビの歌番組を観るようになったし‥‥そういう意味では、俺をカン梨華ワールドへと導いてくれば記念すべき1曲なわけですが‥‥やっぱりどこか違和感が残るんですよね‥‥それは「梨華ちゃんだいすっき♡」という反面、カントリー娘。というユニットにも惹かれるものがあるから余計に違和感を感じてしまうんですよ。

  更にもうひとつ、その違和感を増長させるかのようなカップリング曲。"恋人は心の応援団"の「Hyper Dance Version」というダンスミックスが収録されているんですが‥‥要するに、これで時代遅れなパラパラを踊れ、ってことなのでしょうか‥‥ちょっとトランシーでもあるんですが(アレンジャーの川名卓馬という人はその後、ミニモニ。の "アイ~ン!ダンスの唄" のトランスミックスなんかも手掛けてるので、元々こういう感じのリミックスを得意としてる人なんでしょう)‥‥なんか、この曲に合ってないような気がするんですよね。実際、俺このリミックス、殆ど聴かないし。原曲の良さを完全に生かし切れてないと思うんですよね。最近、ハロプロでは特にシングルのカップリングにこの手のリミックスものが増えてますが、それらと比べてもイマふたつくらい劣るような‥‥

  石川梨華という素材から見た場合、もうこれ以上に完璧な曲はあるか!?って位にピッタリでいい曲なんですけど、カントリー娘。側から見ればかなりズレが生じてるよな‥‥という違和感を感じずにはいられない。その辺の溝みたいなものを埋める為に、もしかしたら続くサードシングルとして"新しい恋の初デート"が用意されたんだけど、急につんく♂が方向転換を提案。そうして実際のサードシングルとなったのが"色っぽい女~SEXY BABY~"だったのだ、と。事実、つんく♂はアレンジャーの鈴木Daichi秀行氏に「過去のカントリーを気にしないで、ココナッツ娘。みたいな感じのラテンなアレンジで」とこの曲のアレンジについて事細かに指示していたそうですし。もうカントリー娘。は、石川梨華を売り出す為の「道具」でしかないのか‥‥そういう意味では、途中離脱したりんねさんはまだ幸せだったのかもしれませんね。

  ‥‥まっ、そういうネガな要素はあるものの、俺はやっぱり好きですわ、この曲。マジで張り切っちゃうし、梨華っちにそう言われれば♡



▼カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『恋人は心の応援団』
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投稿: 2003 01 19 01:00 午前 [2001年の作品, カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『初めてのハッピーバースディ!』(2001)

  2000年4月に第4期メンバーとしてモーニング娘。に加わった石川梨華。当時15歳だった彼女も、今日で18歳になりました。ということで、これまで取り上げていなかったカン梨華(公式には「カン石」なんですけど、とみ宮では今後も「カン梨華」で通します)のファースト&セカンドシングルをレビューしつつ、お祝いの言葉に代えさせていただこうかと思います‥‥梨華ちゃん、18歳のお誕生日、おめでとうございます!

  ‥‥では気を取り直して。娘。加入から1年後、タンポポでの活躍はあったものの、正統派ルックスの割りにいまいちパッとしなかった彼女が、自らの名前をユニット名に用いた「カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)」を機に、少しずつ世間に浸透していくことになります。自信さえ持てば間違いなくブレイクする子。そしてそれを後押しするかのような事務所やつんく♂のプッシュアップ。と同時に、これまで同様にパッとしなかったカントリー娘。にもテコ入れをしようという試み。このメジャーデビュー曲(カントリー娘。はこれまで、インディーズからのリリースでした)を聴く限りでは、まだこの時点では石川・カントリーの双方を売り出そうというしてたはず。

  肝心の"初めてのハッピーバースディ!"は、つんく♂作、高橋諭一アレンジという黄金コンビによる楽曲。音楽ジャンルの「カントリー」とは程遠い、どちらかというとその石川が参加していた第2期タンポポでの「ブリティッシュ」路線に近い印象を受けます。実際、所々にE.L.O.辺りのブリティッシュポップの影響を匂わせるフレーズが出てくるし、特にサビ前のクラビネットのフレーズとかBメロのベースラインなんてそのE.L.O.のアルバム「DISCOVERY」収録の "Last Train To London" を彷彿させるし。ま、ここでは永井ルイは絡んでないものの、つんく♂はこのアルバムが好きなんですかね?(タンポポ "王子様と雪の夜" のイントロなんてモロに "Confusion" だしね)

  どことなく王道ブリティッシュポップを匂わせ、それでいて'70年代ソウルの香りもする。つんく♂ワークスのオイシイとこ取りで、極上のポップソングに出来上がってます。リリース当時、まだヲタではなかった俺はこの曲をテレビで初めて聴いた時、曲の良さ以前に石川の歌に‥‥もうね、あれはないよマジで、って思いましたもん。そう考えると、それから1年後にミュージカル「モーニングタウン」の中で歌われた同曲は、雲泥の差だったわけで‥‥この1年の成長ってのはホント凄いと思いますよ。トレーニング云々よりも、現場で鍛え上げられた感が強いですよね。声だって全然出てなかった、音程外しまくりだった人が、今では堂々と歌ってるわけですから(ま、音程はまだ時々ヤバめですけどね)。

  カップリングには同曲のカントリーバージョンというアレンジ違いが収録されていますが‥‥2曲を聴き比べる限りでは、どうやらこのカントリーバージョンの方が先に録音され、そこからボーカルトラックのみを抜き出してシングルバージョンに乗せた印象を受けます。というのも、カントリーバージョンにはあって、シングルバージョンには存在しないコーラスは声ネタがあるからです。1コーラス目から2コーラス目に移る時の間奏でのコーラスとか、エンディングでのセリフ(各メンバーの「おめでとう」等)とか、シングルバージョンにはないですからね。他のボーカルトラック自体は殆ど同じですし(2コーラス目のサビ後に若干笑ってるメンバーがいますが‥‥これはカントリーバージョンだけですね)。そう考えると、まだこの頃は別バージョン作るにしろ、ただのリミックスで済ませずに、手の込んだバージョン違いのトラックを作っていたってことですよね?(もしかしたら、別々のアレンジャーにこの曲を渡して、それぞれ思うようにアレンジさせたものの中から、つんく♂が気に入ったものを起用してるのかな。昔はアレンジ・コンペとかやってたっていうしね?)つんく♂自身やスタッフも、まだ今よりは余裕があったってことなのでしょうか?

  とにかく、楽曲がしっかりしてる分、アレンジが変わっても全然曲として違和感がないし、両方とも十分に楽しめる作りになってます。人によっては「この頃までが、つんく♂黄金期だった‥‥」なんて悲観的にはるかもしれませんが‥‥2003年1月時点のカン梨華を考えると、明らかにこの曲は異質に感じられるんですよね‥‥それは続くセカンドシングルの所で書きますけど‥‥

  それにしても、プロデューサーとして名前が記されている田中義剛って、一体どんな仕事をしてるんですかね、カン梨華のレコーディングで‥‥もし「ハロプロ七不思議」ってのがあったら、間違いなくそのひとつに入りますよね??



▼カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『初めてのハッピーバースディ!』
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投稿: 2003 01 19 12:00 午前 [2001年の作品, カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2002/07/07

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『REPORT FORM IRON MOUNTAIN(アイアンマウンテン報告)』(2001)

  とみ宮的にはテクノ以外でインストアルバムを取り上げるのは多分初めてのことだと思うし、こういったカテゴライズし難い内容の作品をオススメ盤に選ぶことも初めての試みだ。今年の初めから「とみ宮は今後、ロックに拘らずに、いろんなジャンルの面白い作品を取り上げていく」と発言していたが、ここにきてようやくその第一歩が踏み出せた気がする。

  さて、今回オススメするのは2002年のフジロックにも出演が決まったDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)が2001年8月にリリースしたファーストアルバム「REPORT FROM IRON MOUNTAIN」(邦題「アイアンマウンテン報告」)だ。メンバー構成は、以下の通り。

  ・菊地成孔(Vox-Jagar, CD-J, Keybord)
  ・大友良英(Guitar)
  ・高井康生(Guitar, Filter)
  ・芳垣安洋(Drums)
  ・藤井信夫(Drums)
  ・栗原正巳(Bass)
  ・津上研太(S.Sax)
  ・後関好宏(T.Sax)
  ・坪口昌恭(Shynthesizers, Electric Piano, Clavinett)
  ・大儀見元(Parcussion)
  ・吉見征樹(Tabla)

基本構成は上記の11人。当然ながら、毎回全員が揃うとは限らない(その為のツインドラム、ツインギターという噂もあるが、それは冗談だろう)し、11人以上の時もあるので、その時々でライヴの構成だったり曲の長さだったり、そういった決まり事がどんどん変わっていく。というよりも、決まり事なんて存在しないのではないだろうか? それくらいに自由度の高い、ある意味「ジャムバンド」だと思う。

  結成は1999年、菊地成孔が中心となって結成。'70年代のマイルス・デイヴィス的アプローチで、ロック、ポップ、ジャズ、ファンク、ソウル、クラブミュージック等を融合させたビッグバンドとして、ライヴを中心に活動。2001年夏にROVOとのスプリットシングル(とはいいながら、両バンド1曲ずつ、各曲が30分を越える、とてもシングルとは言い難い濃い内容となっている)リリース後、発表されたのが今回のアルバム。当時、外資系CDショップでもイチオシされていたので、覚えている人もいることだろう。

  ツインドラム構成ということで、ポリリズム(ふたつ以上の異なるリズムを同時に使うこと。それぞれのリズムは異なる拍子でプレイされることが多い)を駆使した楽曲が多く、何だか難解なイメージを受けるかもしれないが、いざ聴いてみると、これが意外とポップだったりする。それはギターや管楽器、シンセ等のキーボード類が多用されていることが大きな要因として挙げられる。また、パーカッションやタブラといった打楽器類が、複雑に絡み合う2つのリズムの隙間を縫うように自己主張する。こういった個性的な上モノ楽器が主メロディーを奏でたり、またリズムを引き立てたりしている。

  モロにポリリズムを取り入れた"CATCH 22"はまるでダブルトリオ編成時代のKING CRIMSONみたいだし(あそこまでドロドロしてなくて、こっちの方が聴きやすいが)、アフロチックな"PLAY MATE AT HANOI"、フュージョン的心地よさがある"S"、ジミヘンで有名なあの曲を独自の解釈でプレイしたヘヴィナンバー"HEY JOE"等、それぞれの曲が10分を軽く越えるのに、どれも飽きさせないだけの緊張感を持った魅力的なプレイを味わうことができる。

  時に狂おしい程にファンキー、そして時にアブストラクト。メロウなポップさを持ち、ロック的な重さも持ち、ジャズやフュージョンの要素も持ち、アフロチックなファンキーさも持ち、テクノに代表されるような現代クラブミュージック的要素も兼ね備えた、ある意味これこそが「ミクスチャー」といえるだろう。こういったバンドの生演奏を聴きながら気持ちよく踊ることは、この上なき幸せだろう。そして、それをフジロックのような大自然の中で体験することができる。または、武尊山でのレイヴイベントで体験することができる。日本人として生まれたことを誇りに思いたくなる程だ。

  ジャズやフュージョン、インストバンドというイメージに偏見がある人も多いと思うが、先鋭的なクラブミュージックに興味がある人は、聴いて損はしないはず。是非大音量で、身体を揺すりながら(踊りながら)聴いて欲しい1枚だ。



▼DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『REPORT FORM IRON MOUNTAIN(アイアンマウンテン報告)』
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投稿: 2002 07 07 12:00 午前 [2001年の作品, DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN, 菊地成孔] | 固定リンク

2002/07/01

10人祭『ダンシング!夏祭り』(2001)

  モーニング娘。から安倍なつみ、飯田圭織、保田圭、吉澤ひとみ、辻希美、カントリー娘。からりんね、ココナッツ娘。からミカ、メロン記念日から大谷雅恵、村田めぐみ、斉藤瞳という3組中最も大所帯の10人から成る「10人祭」。3組中一番「祭り」という今回のシャッフルのテーマを具体化しているのが、この10人祭といっていいだろう。まぁその内容は別として‥‥。

  非ヲタだった当時の俺が聴いても、「これは‥‥ないんじゃないの!?」と溜息をついてしまったのがここ。だって、「お祭りマンボ」(あるいは、忍者がカバーした「お祭り忍者」)や「チャンチキおけさ」「東京音頭」へのオマージュ‥‥というよりも、それぞれのフレーズを少しずつ拝借してひとつにまとめて、それらしくアレンジしました、というような安直さが嫌というほど感じられるからだ。アレンジはこういうチープな曲を作らせたらハロプロ一の、小西貴雄。彼に罪はないだろう‥‥これはもう、作曲者のつんく♂の責任なのだから(ある意味、確信犯だと言えなくもないが‥‥)

  飯田や保田の鬱な表情、なっちのヤケクソ気味な発言、健気に頑張る辻やミカ、「いきなり負け組かよ‥‥」なメロンから柴田を抜いた3人‥‥なんて面が伺えそうなこの曲。そういうドラマ性すら感じさせてしまう「負のパワー」満載の1曲(その似非ポジティブチックな曲調とは相反して)。ネタとしては十分楽しめるものの、やはり‥‥。

  しかし、バックトラックに参加してる面々(尺八や笛、三味線等)は邦楽界では有名な方々だと聞く。これはある意味、2002年の「おどる♥11」への伏線、プロトタイプと言えなくもないだろう。そういう意味では2年越しの実験だった‥‥ってことはないだろうな、実際(苦笑)。

  やっぱりこの曲を聴くと‥‥なっちのう●ちヘアと、焼きそば+のの=涙、を思い出してしまうのだが‥‥(笑)

●総評

  シャッフルユニット自体に今後の推しメンバー披露という政治的な目的が影にあったとしても、やはり受け手側(ファンやヲタ)にとっては文字通り「夏祭り」に他ならない。夏休みに行われるハロープロジェクトの夏コンサートに必要なお祭り要素だと言っていいだろう。だから曲が中途半端でもいい‥‥なんて言い訳は言語道断だが、正直これらの3曲は最初の「色シャッフル」と比べてもクオリティーが落ちているし、それはセールスにも顕著に表れている(ここ最近の音楽業界売り上げの底冷えも影響してるだろうが)。

  しかし、そういったクオリティーや売り上げの低下とは相反するように、各ユニットのインパクトだけは「色ユニット」よりも強くなっている。前回が春という中途半端な時期だったこともあり、今回の方が明確なコンセプト作りが実現したということだろう。夏だし、夏休みだし、みんな開放的だし、お祭りだし‥‥楽しけりゃ何でもアリ!ということなんだろう、実際。勿論、それによって駄曲振りをご破算に出来るとは思ってないが‥‥

  娘。周辺の忙しさがどんどん加速していく中、2002年もシャッフルユニットは行われる。娘。本体以外の楽曲クオリティーがシャッフル曲並みに落ちていく中、果たして2002年の夏はどうなるのだろうか?



▼10人祭『ダンシング!夏祭り』
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投稿: 2002 07 01 12:49 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

7人祭『サマーれげぇ!レインボー』(2001)

  モーニング娘。から矢口真里と後藤真希、前回「黄色5」に参加した平家みちよ、シャッフル初参加であるメロン記念日から柴田あゆみ、これまた初参加のカントリー娘。からあさみ、そしてココナッツ娘。からアヤカとレファという7人から成るのが「7人祭」。ロリータポップ色の「三人祭」、和の心というべき(!?)「10人祭」という具合に3組それぞれが全く違った色と個性を持ったユニットなのだが、この「7人祭」のテーマは曲名通り、レゲエである。アレンジにはこの曲でハロプロ関係初参加のhasie。バックトラックもこれまでに何度かハロプロ関係に参加してきた有名ミュージシャンばかり。生ブラスやターンテーブルまで加わり、豪華さやクオリティーでは3組中文句なしで一番だ。実際、曲も一番よく練られているのではないだろうか。

  レゲエ=ジャマイカという安直な考えを具体化した衣装(ラスタカラーを基本にした色合いやドレッドっぽい付け毛等)はどうかと思うが(どうせなら全員がラッツ&スター並みに肌を黒or茶色に塗りたくる位のアナーキーさが欲しかったと思うのは俺だけ?)、忙しないテンポの曲が多いハロプロナンバーの中で、とても和んでしまう曲調とテンポは、個人的には聴いていてとても心地よく、安心して聴ける1曲だと思う。他2組が互いに違った意味での「狂気」を具体化したような内容なだけに、これは本当に和んでしまう。実際、ここでのごっちんは普段のクールさよりも、和み要素が強いし、柴田やあさみといった和み系キャラもいる。ハワイアンのアヤカやレフアがジャマイカン・テイストってのもどうなの?とか思うけど、まぁそれは忘れることにしよう。

  ただ、曲調とテンポが心地よいとはいうものの、それはあくまでも「ハロプロ内限定」でという意味。やはり「レゲエテイストのポップソング」でしかない。もっとネットリしてて、もっとテンポを落とした方が‥‥とも思うが、まぁ日本のヒットチャートを考えるとこれくらいで丁度いいのかもしれない。

  他にもっと誉めるべき点、特筆すべき点はあるんだろうけど、やはり三人祭と10人祭のインパクトが相当強いために、ここだけエアポケットに入ってしまったような気がする。メンバー的にもひとつスパイスが足らないような気もするし‥‥勿論、周りが「祭シャッフル、糞だったね?」と嘆く程、俺は酷いとも思っていないのだが。



▼7人祭『サマーれげぇ!レインボー』
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投稿: 2002 07 01 12:46 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2002/06/30

三人祭『チュッ!夏パ~ティ』(2001)

  2001年7月4日に3枚同時発売された「祭シャッフル」企画。今回は6ユニット総勢20人による大所帯。太陽とシスコムーン(後のT&Cボンバー)が前年に解散した為、今年はモーニング娘。、平家みちよ、ココナッツ娘。に加え、新たにメロン記念日、カントリー娘。、そして松浦亜弥が加わることとなる。同年4月に娘。を卒業した中澤裕子は今回から未参加。前回の「色シャッフル」の時は平家やココナッツは別として、娘。も太シスもチャート上でそれなりの成功を収めていたので、比較的知名度があるグループによる企画という認識があっただろうが、今回は娘。以外はほぼ未知の領域といっていいだろう。現在では有無を言わせぬ存在感の松浦でさえ、この当時はまだ認知度は低かった(実際彼女はこのシャッフルを通して、"LOVE涙色"で完全にブレイクするわけだが)。そういう意味では「祭シャッフル」、ヲタ以外にはアピールしないのではないか!?と当時は思ったものだ。

  更に、その曲調や衣装、メンバーの組み合わせから、明らかに「勝ち組」「負け組」を認識する事が出来るのも、今回のシャッフル。では、その辺も含めて私感を綴っていきたいと思う。

  モーニング娘。から加護亜依と石川梨華、そしてデビュー数ヶ月しか経っていない松浦亜弥から成るのが、この「三人祭」。ハッキリ言って、反則だ。ミニモニ。でお子ちゃまに大人気の加護ちゃん、なかなかブレイク出来ずにいた石川(しかもこれが試金石となり後に大ブレイク)、事務所の力の入れようがハンパじゃない松浦という三枚看板‥‥というか手持ちのカードを全部集めてもここまで豪華にはならないだろうって程の、ある意味狂った組み合わせによる、最狂のナンバーがこの"チュッ!夏パ~ティ"。アレンジはお馴染み高橋諭一。高橋アレンジ作品にしてはチープなバックトラックだが(それだけ時間がなかったとも取れる)、このジャケットみたいな狂ったビジュアルイメージにはある意味ピッタリかもしれない。

  往年の名曲"Vacation"を彷彿させるサビメロ、そしてその直前の「勝負×4 パーティ!× Yeah!」掛け声に続くパンツ見せ‥‥当時非ヲタだった俺が、ゴールデンタイムのお茶の間でこれを観た時‥‥皆まで言わなくても判るだろう。チャンネルを他の番組に変えたのは言うまでもない(苦笑)何だか、それくらい「家族と一緒に観てはいけません。ひとりでミ・テ・ネッ♪」と言われたかのような気まずさを感じたのだった。いや、頑張ってピンクのヅラつけてパンツ見せてる加護ちゃんや梨華ちゃん、あややには罪はない。むしろUFAやつんく♂を小一時間(略

  曲自体、3分もあれば書けるような陳腐でありがちなメロを持った凡作だが、何故か何度も聴き返してしまう中毒性を持ってるのも事実。決して大の大人のカーステから大音量で流れてくるような代物ではないが(‥‥間違いなく俺の車からは今年の夏も大音量で流れてますが何か?/涙)、2001年夏に、加護亜依と石川梨華と松浦亜弥が、あのタイミングで唄ったからこそ奇跡となりえた1曲だったのだと、1年経った今だからそう思える。逆に今同じメンバー、あるいは他のメンバーでやられても‥‥。

  セールス的にも、そして一般的な知名度という点でも(そして一度観たら忘れられないという衝撃性からも)3組中一番だった‥‥そりゃそうだろうよ。



▼三人祭『チュッ!夏パ~ティ』
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投稿: 2002 06 30 12:42 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2002/06/23

メロン記念日『This is 運命』(2001)

  2000年2月に「モーニング娘。の妹分」としてデビューしながらも、メディアへの露出は殆ど娘。関係の番組のみ。「誰、メロンって!?」というのが大半の感想であり、下手したらその辺のB級アイドル以下の存在。それが2001年半ば時点でのメロン記念日の立ち位置だった。シングルも"告白記念日"から"電話待っています"のリリース間は9ヶ月以上空き、唯一彼女達に逢えるのはモーニング娘。のコンサート。しかもその娘。ライヴでさえも休憩タイムになりかねないメロンの歌‥‥そんな彼女達に、起死回生のチャンスが訪れる。

  2001年7月。例の「祭シャッフル」ユニットにて、柴田は「7人祭」に、村田・大谷・斉藤は「10人祭」に抜擢される。まぁ10人祭は『抜擢』という表現は間違っているかもしれないが、ここではやはり柴田が後藤真希や矢口真里といった人気者や平家みちよという実力者と共に抜擢された点だろう。実際、"サマーれげぇレインボー"ではその唄い出しを柴田が務めるという大役を果たした。が‥‥シャッフルユニット自体が、石川・加護・松浦という最強の布陣からなる「三人祭」以外が(表面的に)惨敗したことから、メロン記念日の知名度が一般層の中で高まったということはなかった(実際、セールス的には3組共大成功には程遠かったことから、購入層はほぼモーヲタだけだったといっていいのかもしれないし)。

  しかし、メロンはそこでは終わらなかった。約7ヶ月振りとなる4作目のシングルが同年10月にリリースされたのだ。このシングル"This is 運命"こそが、その後のメロン記念日の大躍進への布石となったことは、モーヲタの皆さんならご存じだろう。それだけ素晴らしい、完成度の高い名曲なのだ、これは。

  このシングルのリリース時期にモーヲタへと変わりつつあった俺は、他サイトや雑誌等で大絶賛されるこの曲を一度も聴いたことがなかった。唯一得ていた情報は「アイドルmeetsメロコア」「クラブでかかるとモッシュの嵐」といった程度だった。そんな情報耳にしたら気になるじゃないか、普通‥‥で、早速買って聴いたわけだが(つうか近所にちゃんと売っていた時点でかなり驚いたが)‥‥すげぇ‥‥やられた‥‥初めて"LOVEマシーン"を、初めて"ちょこっとLOVE"を、初めて"ミニモニ。ジャンケンぴょん!"を聴いた時の衝撃。あれに近いものを感じたのだ。

  それまでのメロンの楽曲には「B級アイドルが持つ哀愁感」が(いい意味でも悪い意味でも)漂いまくっていた。ところが、この曲はどうだろう? ロック、グラム、パンク‥‥俺的に言わせてもらえば、「SWEETの曲をGREEN DAYが演奏して、APHEX TWINがいじってみました」的名曲なわけで。RADIOHEAD的神経症エフェクトがかかったボーカルや語り。半ば狂気じみた「ジャジャジャ~ン、ジャジャジャ~ン、ジャジャジャジャ~ン」という「運命」繋がりなだけのコーラス。キレのよい楽器隊の演奏(しかもドラムはかの「そうる透」氏)‥‥もし、これが居酒屋の有線でかかったら、ちょっと時間が止まるね。耳がいっちゃうもん。こりゃヤベェよ。かっけー((C)よっすぃー)よ、マジで。

  で、この曲は今までのハロプロ関連の楽曲と違い、作詞作曲をつんく♂以外の人(作詞はつんく♂との共作)が手掛けてる点が大きい。新堂敦士という人がカップリング曲を含めて作ってるのだが、ゲームメーカー「コナミ」専属ライターのようで、有名音ゲー「ポップンミュージック」等の音楽も手掛けている。その辺はオフィシャルサイトにいろいろ出てるので、ご参考に。元々、つんくとは古いつき合いの友人らしく、これまでもハロプロ関係ではカントリー娘。のレコーディングにも参加した経緯がある。つんく♂のソロライヴにもギタリストとして参加していたし、今年(2002年)にデビューしたつんく♂の新バンド「つんくビ♂ト」にもギター&ボーカルで参加している。

  つんく♂以外の人間が曲を作った点からみても、タイトルトラックやカップリングの"Wa!かっちょEなッ!"はかなり新鮮な印象を受ける。これまでのハロプロ関係楽曲にはなかったバンド演奏のロックナンバーというのもあるが、メロディーからつんく♂の手癖的B級歌謡曲臭が全く感じられないのだ。元々新堂氏は岡村靖幸やプリンスといったアーティストに影響を受けたこともあり(実際、彼の唄い方はかなり岡村チックだし)、特にカップリング曲でのファンキー度はかなり岡村靖幸の影響を伺わせるアレンジとなっている。

  リリースから既に9ヶ月近く経っているわけだが、今現在聴いても全く飽きのこない、本当にいい出来の楽曲だと思う。ルックス面で抜きん出た柴田と、歌唱面で抜きん出た大谷とのツートップにしたことも大きいだろうし、衣装をこれまでのお揃いから各人バラバラにして、それぞれの個性をより強めるような「キャラ立ち」(メルヘン大谷、ボーイッシュ大谷、ナチュラル柴田、セクシー斉藤というように)させたこともファン拡大へと繋がったに違いない。チャート的にも過去3枚のシングルがオリコン50位前後だったのに反して、この曲は初登場28位というまずまずの成功を収める。

  メロン記念日の歴史はデビュー曲"甘いあなたの味"から始まった。しかし、本当の意味でのスタートはこの"This is 運命"から始まったと言っても過言ではないだろう。それくらい彼女達にとっても、我々ヲタにとっても影響力の強い1曲となったのだ。

  ロックファンにこそ聴いて欲しいこの曲。俺はDJをやる度にほぼ毎回、この曲を回している。先日、メロンヲタの方に「ロックファンにメロンヲタは多い」というような話を聞いたが、本当にそれが頷ける、自信の1曲。それが"This is 運命"なのである。



▼メロン記念日『This is 運命』
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投稿: 2002 06 23 12:00 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

2002/05/08

Mr.Children『youthful days』(2001)

  2001年8月末にリリースされた「優しい歌」に続く、同年11月リリースの通算21枚目のシングル。c/wには同じくドラマ内でも使用された"Drawing"を収録。

  とにかくね‥‥最初にこの曲をテレビのCMで(サビのみだけど)聴いた時の衝撃といったら‥‥これがミスチルかよ!?っていう驚きの方が大きかった。いや、そんなに意外性のある曲ってわけでもないんだけど、とにかくこれまでにないようなメロディの持ってき方にまずヤラれたわけ。そうね‥‥ラルクが"winter fall"をリリースした時みたいなインパクト? あんなパンチを食らったわけですよ(そういえば、互いに曲のタイプが何となく似てない?)

  で、いざフルコーラスで聴いた時‥‥多くの人が「ミスチル完全復活!」と叫んだと思うんだけど(いや、俺も最初はそう感じたんだけど)‥‥それ以上に「更に高いとこへ行っちまったな、こいつら‥‥」っていう気持ちの方が強かった。演奏のテンションの高さはある意味、前作「Q」に匹敵する、あるいはそれ以上にも関わらず、メロディやボーカルパフォーマンスのいい意味での肩の力の抜け具合がかなり絶妙。確かに、多くの人がイメージする「KIND OF LOVE」や「Atomic Heart」の頃の質感が戻ってきてるように感じられるが、実はもっと先へ行ってるという。計算なのか、本気で自然体なのか判らないけど、「Q」では「聴き手が求めるイメージを敢えて与える」的空気が感じられたけど、ここではそれが皆無だということ。この辺りが今のミスチルの強みなんじゃないだろうか?

  それは同じc/w曲"Drawing"にも感じられることで、この曲こそ「KIND OF LOVE」に入ってたとしてもおかしくなさそうなイメージなのに、実はかなり復活後のミスチ ル的構造を持った楽曲と捉えることもできる。作為性を感じさせない、本当に生き生きとした楽曲。これは前作では少しズレが生じてきていた「ソングライターとしての桜井」と「バンドとしてのミスチル」がようやくここにきて再び混じり合ったということなのかもしれない。バンドは1年間に二度のツアーを経験することで、またその勢いのまま休みなくスタジオ入りしたことで、更に一体感を掴むことが出来たのだと思う。そういう意味では、「優しい歌」以降の楽曲というのは全て、アマチュアバンドに戻ったかの心境で作り出された歌なのかもしれない。ここ数作の楽曲が桜井というソングライターが生み出したものに肉付けしていく手法で作られたのと違い、今回は桜井が持ってきたラフなアイディアに対し、全員が一丸となってまとめあげるという形‥‥いや、これはあくまで俺の想像でしかないんだけど。そんな印象があるな、この一連の作品には。

  歌詞に目を向けても「表通りには花もないくせに/トゲが多いから/油断していると刺さるや」とかいろいろ深読みできる箇所があるんだけど‥‥今回はそういう読みはやめてみた。つうか、この曲はそのタイトルにも表れているように


「I got back youthful days」


ここに最後は終着すると思うんだな。けど、俺的には「I got back~」というよりは


「I finaly got youthful days」


な気がする。だって、これまでのミスチルって(初期も含めて)いい意味でも悪い意味でも全てが「意識的に/作為的に」っていう面が感じられたんだもん。けど、今回は本当に「natural」なものを手に入れた。それが上のようなアマチュアバンド的なものなのかも‥‥って俺は思うわけです。

  正直な話、"優しい歌"と"youthful days"と"Drawing"、この3曲だけで「今度のアルバムは久々の超名作になる!」って確信した。まだ去年の11月の時点でさ。



▼Mr.Children『youthful days』
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投稿: 2002 05 08 12:00 午前 [2001年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2002/05/07

J『Perfect World』(2001)

  2000年12月末のLUNA SEA「終幕」から約1ヶ月後にはもうライヴ活動を再開させたJ。その後定期的に自身が開催するイベントライヴを経て2001年夏にリリースされたのが、この「終幕」後初のシングル。タイトルトラック"Perfect World"と"Route 666"の2曲を収録。ノンタイアップ、何の宣伝もない状態でチャートトップ20入り(19位)を果たす。録音に参加したのはJとドラムのスコット・ギャレット(元THE CULT)のみ。ドラム以外の楽器は全てJが弾き、唄っているということだ。

  さて、その内容だが‥‥タイトルトラックは、昨今のヘヴィロック風の跳ね気味リズムのミドルヘヴィナンバー‥‥って何もJが流行に乗ったわけではなくて、元々この人にはこういう要素があったわけだし。LUNA SEA時代の客入れSEにフジロック前でまだ日本では名の知れていなかったRAGE AGAINST THE MACHINEやKORNを使ったのも彼の趣味だというし、LUNA SEAのラストアルバムとなった「LUNACY」にも収録され、映画007の日本用テーマ曲となった"Sweetest Coma Again"もこの人が作曲だしね。そういう意味では、LUNA SEA末期から地続きで始まった感じがする(INORANが"gravity"~"Won't leave my mind"という流れだったように)。冒頭の英語セリフ部分、そこに被さるギターのハーモニクス音から、なんか映画のサウンドトラックのような印象を受ける。それだけ欧米のラウドロック/ハードロック的な演奏・アレンジを味わうことが出来る‥‥そう、歌が入るまでは(笑)。いや、それでも4年前よりは遙かに成長してるのよ、歌唱力。ただ荒いだけでなく、丁寧に、相手に歌を伝えようっていう意志が見え隠れするし。その辺は'97年のソロ~バンド復帰を経て周りのメンバーから学んだことなのかもしれないけど。でもマジで、これが英語詞だったらそんなに「日本人が演奏するロック」っていう印象ないんだけどなぁ。

  一方、カップリングの"Route 666"は、これまでのJのイメージから想像できるストレートなパンクナンバー。あの5人で演奏すれば間違いなく「LUNA SEAの曲」として通用する(ってJが書いてるんだから当たり前だけど)。取り立てて新しい要素は感じられないんだけど、安心する1曲だね、ファンにとっては。ブリッジ部の泣きメロにはメロディーメイカーとしてのJの特色を感じられるんじゃないかな。ライヴで盛り上がるだろうなぁ‥‥ってこれらの曲って、既にライヴで演奏されてきた楽曲なんだろうね。だから余計に生き生きしてるのかもしれない。

  '97年のソロ作との違いをいろいろ感じる人も多いでしょう。俺も最初聴いた時に「随分きめ細やかな、丁寧な音だなぁ」と思ったもんです。前作「PYROMANIA」にはもっと荒々しい、勢いだけで作ったような印象があったんだけど(音像的に、って意味で)、今回の曲はライヴで披露してきた曲にも関わらず、凄く丁寧なんだよね、いろんな意味で。何となく以前のソロの時は「バンド=大衆へ意志を伝えようとする手段、ソロ=好き放題破天荒」って感じだったのかなぁ、と。で、LUNA SEAがなくなった今、Jはそのふたつを同時にソロ活動の中でこなそうとしてるのかもしれないね。



▼J『Perfect World』
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投稿: 2002 05 07 11:26 午後 [2001年の作品, J, LUNA SEA] | 固定リンク

2002/03/07

SNAKE HIP SHAKES『NEVER SAY DIE』(2001)

  ZIGGYの変名バンドといえるSNAKE HIP SHAKESのオリジナルアルバムとしては通算3作目(ZIGGYセルフカバー集を含めれば4枚目)、ZIGGY時代のフルアルバムから数えると13作目となる新作。SHSとしてのファーストアルバムが'00年7月で、この新作が'01年12月だから‥‥1年5ヶ月でアルバム4枚という計算になる‥‥今時こんなに多産多作ロケンロールバンド、どこにいるよ? しかも既にベテランの域に達しているというのに、小さいライヴハウスを年間数十本も回ってるし(単に売れてないからとか言うなそこ)。

  で、このアルバムはそういったライヴハウスで改めて叩き上げられた経験と、過去のアリーナクラスでの経験とが融合した、今の若手バンド以上に「若々しい」要素と年相応の「渋さ」が同居する優れモノである。各楽曲がバラエティーに富んでるのは勿論、ボーカル森重のパフォーマンスの凄さ、ギター松尾の味わい深いスライドプレイ、ゴリゴリに歪みまくった津谷のランニングベース、そして最近ここまで叩きまくりドラム(しかもツーバス暴れまくり)をどこで聴ける?って程の超絶プレイを披露するJOE(更にサポートキーボーティストとしてRED WARRIORSやTHE YELLOW MONKEYでのサポートでお馴染みの三国義貴が参加している)。これが40目前のメンバーが半分以上を占めるバンドの音か?って程に熱く躍動感に満ちている。そういう点(楽曲のバラエティー、ノリまくった演奏)から、俺はこのアルバムをZIGGY史上における「GET A GRIP」的ポジションの1枚と呼びたい。当然、「GET A GRIP」はAEROSMITHが'93年に放った名盤のこと。エアロがあのアルバムをデビュー20年後に放ったという意味では、ZIGGYデビュー15周年を間近に控えた今、こういう作品をリリースしてしまう辺りに共通点が見え隠れする。

  このアルバム最大のポイントはズバリ、ギターの松尾が10曲中4曲も提供しているという点だろう。ZIGGY時代は "HOT LIPS"(同名セカンドアルバムに収録)に共作者としてクレジットされたのと、復帰後の「GOLIATH BIRDEATER」収録 "迷走" の2曲のみ。SHSに移行してからはアルバムに各2~3曲ずつ、しかもそれぞれが森重や戸城のものと引けを取らないだけの曲を提供してきた。そして今回は新作のキーポイントとなる曲を提供しているのだ。例えばタイトルトラックの "NEVER SAY DIE" でのエアロばりの熱さと渋さを兼ね備えたロケンロールナンバーだし、シングルとして先行リリースもされた "RAIN" はこれまでになかったような壮大な雰囲気を持ったバラードナンバー。"地図にない道" は大陸的なノリを持った疾走チューン、そしてアルバムラストを飾る "時は誰も" はボサノバテイストのしっとりとしたアコースティックバラード。正直、これだけバランスよくいろんなタイプの曲が書ける人だとは思ってもみなかった。勿論バンドとしてのアレンジ能力の賜物でもあるんだろうけど、その根本にあるメロディーの潤いは森重が書いた他の曲に負けていない。

  そしてその森重作曲の楽曲も相変わらず素晴らしい。イントロでの絶叫に鳥肌すら立つエアロっぽい "R&Rミュージックに首ったけ"、如何にもZIGGYな疾走メロディアスナンバー "MELANCHOLIA"(これは名曲!イントロはhide with Spread Beaverかと思う程にヘヴィ)、中期ZIGGYのポップさが全面に出た "BRAND-NEW KICKS"、「既成概念を取っ払え」との唄い出しにハッとさせられる疾走ロックチューン "STRONG WILL"、エレキとアコギの絡みがカッコいいミディアムチューン "翳りゆく夏に"、初期の名曲 "EASTSIDE WESTSIDE" をメロコア調にしたイメージの "Inside, Outside"。まさに捨て曲なし。

  正直に言う。甘くみていた、彼等のことを。確かにZIGGY時代は大好きだったし、一昨年出たZIGGYセルフカバー集も聴きまくった。しかし、オリジナルアルバムに手を出すには至らなかった。「どうせZIGGY時代を薄めたようなヌルいロックやってんだろ?」くらいに思ってたのかもしれない。が、実際はどうだろう。このアルバムに手を出してしまったがために、気付けば他のアルバムも全て買い揃えてしまった程、改めて彼等の魅力にハマりつつある。いや、既にドップリ浸かっていると言っていいだろう。明後日には12年振りに彼等のライヴを見に行く。ZIGGY時代の名曲達にも期待してるが、やはりこの新作からの曲を生で聴ける事の方が今は楽しみだ。

  セルフカバー集の時も書いたが、改めてもう一度書く。彼等を終わったとか古くさいとかいった理由で敬遠してる人。エアロやMOTLEY CRUEといった海外のハードドライヴィングR&Rバンドを愛聴してる人。そして10代の頃にZIGGYの名曲達に心を奪われた俺と同世代の人。悪い事は言わないから、偏見なしでこのアルバムに接して欲しい。

  奇しくも彼等はこの4月から、再びZIGGY名義で、森重・松尾・津谷・JOEの4人で活動再開する。まぁ再開も何も、SHSはZIGGYそのものであったのだから、変わるのは暖簾だけと言っていいだろう。そして、我々の彼等に向ける視線も、か。とにかくZIGGYに戻る前に、予習の意味も込めてこのアルバムをオススメ盤として大プッシュする。見逃されるには勿体ない出来なんだから。



▼SNAKE HIP SHAKES『NEVER SAY DIE』
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投稿: 2002 03 07 12:46 午前 [2001年の作品, SNAKE HIP SHAKES, ZIGGY] | 固定リンク

2002/03/06

CO-FUSION『CO-FU2』(2001)

  DJ WADAとHEIGO TANIという2人の日本人から成るエレクトロニック・ビート・ユニット、CO-FUSIONの3年振りとなるセカンドアルバム。実はこのアルバムで初めて彼等に接することになったのだが、意外とニアミスしていたようで‥‥フジロックとかも出てたんですね、改めて調べてみると。いや、確かに名前だけはずっと聞き覚えあるなぁとか思ってたんだけど、どこで最初に目にしたのかなんて覚えてるはずもなく。てっきり雑誌とかクラブ関係のサイトでだと思ってた。

  昨年('01年)末にリリースされて以来、ずっと気になってたんだけど、手にしたのは1月程前で。ネット上でもよく名前を見かけていたし、大体どういう「音」を鳴らすユニットなのかも把握してたつもりだったけど‥‥やはり「文字」と実際の「音」、人によって誤差が生じるのは当たり前であって‥‥とにかく1曲目"Material To Digital"を聴いてブッ飛んだ。これ、懐かしの「VIDEO GAME MUSIC」じゃねぇかよ、と。

  ご存じの方もいるかもしれないが、「VIDEO GAME MUSIC」とは'84年頃にYMOを活動停止させたばかりの細野晴臣が監修だか編集(だったかな?実家にレコード置きっぱなしなんで記憶がうろ覚えだな)をした作品集で、当時のゲーセンにあったテレビゲーム‥‥「ゼビウス」や「パックマン」、「ギャラガ」等といった『ナムコ』のゲームのBGMをうまくミックスした、無機質なサウンドトラック的内容となっている。考えてみればYMOのファーストでもゲームサウンドを取り入れたりしてたし、元々こういうサウンドに興味を惹かれていたのだろう、細野氏は。当時YMO好きでゲーマーだった俺は、迷わず買って聴き込んだものだ。

  話が脱線してしまったが、このCO-FUSIONの1曲目を聴いてその、往年の「VIDEO GAME MUSIC」を思い出してしまったのだ、俺は。かといって、このアルバムはそういったサウンドのみで構成されているわけではなく、アルバムが進むにつれていろんな「音」「ビート」が飛び出す。「テクノ」と一括りには出来ない、いろんな要素を持ったサウンドが1枚のディスクに詰め込まれている。単純に「ビートが力強い」ナンバーから、先の「ゲームのBGMみたいな無機質音」で構築された曲まで。しかし、どの曲にも言えるのは、それぞれの曲が独特なビートと独立した魅力を持っていて、にも関わらず、隙なく立て続けにプレイすると、どこからどこまでが1曲なのか判らなくなることもある。1曲1曲を取り上げればフロアで流れても気持ちよく踊れるナンバーだったりするのに、アルバムを通しで聴くと、まるで'70年代のプログレ作品のような連続性を感じてしまったりもする。かといって、同じエレクトニック・ミュージックの先駆者であるUNDERWORLD程、起承転結があるわけでもない。どちらかといえば、無機質な電子音のみで構築された、感情を排除した「音の塊」。しかし、そこには確実に力強いビートが存在する。単調、単一的なビートではないのに、全12曲約70分間に渡る連続性。そこに気持ちよさを感じられるか、見出せるかで評価は分かれるのかもしれない。とにかく家でヘッドフォンで聴く音楽でないのだけは確かだ。それもいいだろうが、きっと爆音で聴いてると自然と身体が動き出すことだろう。できるだけ大音量、爆音で聴きたい音。電子音だからこその爆音、そしてこの力強いビートを持ったサウンドだからこその爆音。これはそうやって消費されるべきアルバムではないだろうか?

  何となく、彼等が海外で人気がある理由が判る気がする。結局、気持ちいいビートって世界共通なのだから。



▼CO-FUSION『CO-FU2』
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投稿: 2002 03 06 12:00 午前 [2001年の作品, CO-FUSION] | 固定リンク

2002/03/01

THE CHEMICAL BROTHERS『COME WITH US』(2001)

THE CHEMICAL BROTHERSの2年半振り、4作目となるニューアルバムは新年いきなりの傑作となっている。2001年秋に急遽リリースされたシングル「It Began In Afrika」はアフロビートを取り入れた新境地といえるだろう名曲となっていたので、このニューアルバムに寄せる期待はかなりのものだったのではないだろうか? そしてアルバムに先駆けて先行シングル「Star Guitar」がリリースされるのだが、これも名曲以外の何ものでもない。個人的には早くも本年度の「SONG OF 2002」の候補に挙げたいくらいの、ホント気持ちいいトリップチューン。この2曲だけでも十分過ぎる程だ。

そして我々の前に姿を現したニューアルバム。前作『SURRENDER』(1999)はゲストの数だけでも相当数だったが、今作ではお馴染みのベス・オートンが唄うダウナーな「The State We're In」と、ラストを飾る元THE VERVEのリチャード・アシュクロフトが唄うアッパーな「The Test」のみ。ノエル・ギャラガーも今回はいない。そういう意味ではファーストの頃に戻ったような印象を受けるが、そもそも「Setting Sun」が売れて以降が特殊だったわけで、これが本来の姿なのではないだろうか?(勿論あれはあれで否定しない。だって楽しかったし)

それにしても、何故にこの人達はこんなにも「人を高揚させる/踊りたくなる」曲を連発出来るのだろうか? そしてただアッパーに踊らせるだけではなく、「Star Guitar」や「Pioneer Skies」のような甘くドリーミーな曲もあれば、「Hoops」や「Denmark」みたいなロックチューンと呼んでも差し支えない曲もある。6分以上もある曲が大半を占めるのだが、特別その長尺さは感じないし、むしろコンパクトとさえ思える曲もある。歌が入らない曲で、しかもシンセとサンプリングのみでここまで聴き手の耳を惹き付ける。いや、聴き手をダンスフロアへと導く曲達。お見事としか言いようがない(って当たり前か、現場で現役の人間が作ってるわけだから)。

一時期、THE CHEMICAL BROTHERSに対して「オリジナル曲よりも他アーティストのリミックス曲の方が面白い」という意見が多く聞かれた。当然彼等はDJなわけだから、そういう能力に長けているわけだ。ぶっちゃけて言えば、サンプリングを駆使して、いろんな既成の曲のパーツや自ら作ったフレーズをブッたぎったり無理矢理くっつけたりすることで、彼等は曲を成り立たせていき、そこから所謂「Chemical Beat」を完成させていったわけだ。このアルバムで聴かれる「音」は既に完全なるオリジナルで、THE CHEMICAL BROTHERS以外の何者でもない音を鳴らしている。そう、彼等は「ミュージシャン」なのだ。

それにしても、本当に大音量で聴いてると気持ちいい音だ。家で聴いてると、外へ出たくなる音。クラブで聴くよりは、大自然、野外で大音量で鳴らしたい音。きっと「Star Guitar」をフジロック@苗場の大自然の中で聴いたら、涙が出るほど美しく気持ちいいんだろうな……そう、3年前の、苗場の大自然の中、流れ星に祝福されながら聴いた「Sunshine Underground」みたいに。

基本的にはノン・ドラッグの人なので知ったかぶりはしたくないけど……きっと気持ちいいんだろうね?(笑)代わりに俺は酒ガンガンに呑みながら、大音量でこの音を鳴らすよ。みんなもそうでしょ?



▼THE CHEMICAL BROTHERS『COME WITH US』
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投稿: 2002 03 01 12:00 午前 [2001年の作品, Chemical Brothers, The] | 固定リンク

2002/01/03

永井ルイ『OOPARTS』(2001)

  この人をご存じだと言う人はかなりの宅録マニアか、かなりビートルズ~QUEEN周辺のブリティッシュ・ポップに精通してる人か、かなりのアニメヲタクか、はたまた重度のモーヲタではないでしょうか?
  この初のソロアルバムの帯にはこう書いてあります。「日本のジェフ・リンが放つ驚異のポップ・アルバム」これだけでどういう人か想像がつくでしょう。そういう音像で作られた、'70年代のブリティッシュ・ポップ/ロックを彷彿させる音が詰まった、「ポップ玉手箱」がこのアルバムなのです。

  永井ルイという人を初めて意識したのは、ローリー寺西が「すかんち」解散後に取り組んだソロプロジェクト、ROCKROLLYのアルバムを聴いた時でしょうか。確か当時ベーシスト兼共同プロデューサーとして参加していたのが、この人だったのです。キーボードの小川文明氏といい、ローリーが選んだ人なのだから、きっとローリーのルーツを共通するものを持った人なんだろうなぁ‥‥当時はこの程度の認識でした。

  それが2000年夏、我が目を疑う衝撃の事実に直面します。同年7月に発表されたモーニング娘。内のユニット、新生タンポポ(加護と石川加入後)初のシングル"乙女 パスタに感動"を初めてテレビの歌番組で聴いた時‥‥「QUEEN‥‥しかも"Killer Queen"じゃねぇか、これ! しかもギターの音、もろブライアン・メイだよ!!」と驚いたのを今でも覚えてます。で、気になって別の番組でクレジットを探したら‥‥「編曲:永井ルイ」の名前が‥‥ここで初めて、ローリーと永井氏の間にある「共通項」を理解したのです。

  その後も永井氏は時々娘。関係の楽曲編曲に携わっていて、2001年1月のミニモニ。"春夏秋冬だいすっき!"、同年11月のタンポポ"王子様と雪の夜"の各アレンジを手掛けています。アレンジだけに止まらず、全楽器のプレイ及びコーラスもほぼ全部吹き込む程の力の入れようなのです。更に使用楽器や録音方法にも拘り、やはりあのギターはブライアン・メイ・モデルを使用して、ベースにはポール・マッカートニーでお馴染みのホフナー・ベース(バイオリン型ベース)を、'60~70年代っぽい音をシュミレートして吹き込む程。コーラスもQUEENやELO、トッド・ラングレンみたいな何重にも重なったオペラコーラス。きっと多くのロックファンが、テレビの前で「なんでモーニング娘。がこんな曲やるの!?」と思ったはずです。

  一番最初に書いたように、永井氏はつんく♂との仕事以前は、アニメのサントラを手掛けたり(勿論全曲作編曲及び全楽器演奏&全コーラス担当)、先のローリーと共に東京パフォーマンスドールというアイドルユニット(篠原涼子が在籍していたユニット、と言えばお判りでしょうか?)出身の八木田麻衣のユニットに参加したり、同じくアイドルグループribbonやQlair等への楽曲提供及びバックバンドへの参加等の仕事をしてきた人です。つまり、ブリティッシュ・ポップに精通してると同時に、アイドル・ポップにもそれなりに精通してる人なのです(俺自身は、アイドル・ポップの中にもかなり高度で優れた楽曲/アレンジが存在するのを知ってるので、かなり高く評価してます)。

  永井氏はこのソロアルバム以前にも、1999年末にRUI'S HIPSLIPSという名義でアルバムを1枚発表しています(これも近々取り上げる予定)。そして約2年後の2001年9月に発表されたのが、このソロ名義としては初のアルバムです(7曲で30分少々という内容から、ミニアルバムとも言えますが)。うちのサイトをご覧の方の中にはQUEENやCHEAP TRICKが好きという人が多いようですが、このアルバムはそういった人にアピールするだけではなく、モー娘。経由でこういうポップ路線に目覚めた方にも、そしてポール・マッカートニー、トッド・ラングレン、ジェフ・リンといった「ポップ職人」にもアピールする、正真正銘のポップ・アルバムなのです。正直な話、俺はこのアルバムを2001年の10枚に選ぼうかどうか最後まで悩んだ程ですから。

  QUEENの"We Will Rock You"や"Fat Bottomed Girls"を彷彿させる1曲目"WE ARE "ROCK AND ROLL""からスタートし、そのままELOやブライアン・メイの書く曲の空気感を持つ"Lookin' for sweet love"へと流れ、ポール・マッカートニーのソロ期一番おいしい頃を思い出させる"World Turning"やフレディ・マーキュリーの力強さを持ったキラーチューン"Confusion"等々‥‥最後まで気が抜けません。この節回しは誰々の影響だな、このフレーズは誰のだ、とか深読みすればいくらでも出来る完成度。マニアックに語ろうとすれば、いくらでも語れますよ、このアルバムは。けどね、そんな気難しい心配しなくても楽しめるのが、このアルバムのいいところでもあります。単純に、ポップで綺麗なメロディが詰まったアルバムとして楽しめばいいのです。JELLYFISH程幅広くはないけど、彼らが好きだったパワポファンにも十分楽しめる内容だと思いますよ。

  そういえばこの人の歌声って、力強いロックチューンではブライアン・メイに、ソフトなバラードではポール・マッカートニーに似てるんですよね‥‥意識してやってるんだろうけど、そういう面も非常に好みです。モー娘。関係を含め、以上に挙がったバンドやアーティスト名に興味がある人は必聴盤です。インディー盤なので、大型店とかに行かないと手に入らないかもしれませんが(ネット通販でなら手軽に手に入れられるでしょう)、騙されたと思って聴いてみて下さい。


Ooparts
▼永井ルイ『OOPARTS』
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投稿: 2002 01 03 12:00 午前 [2001年の作品, 永井ルイ] | 固定リンク

2001/12/11

市井紗耶香 with 中澤裕子『FOLK SONGS』(2001)

  企画盤とはいえ、「モーニング娘。」関係のアルバムでシングル・コンピレーション以外のフルアルバムがこうやって世に出るのは、もしかしたら2000年3月の娘。サードアルバム以来じゃなかろうか? とにかくそれくらい「久し振りにフルで聴く、初めて耳にする楽曲群」が沢山詰まった1枚。しかもそれを2000年5月に娘。を脱退した市井紗耶香と同じく2001年4月に脱退した中澤裕子のふたりで作っているのだから、非常に興味深い。

  2001年10月に市井の歌手活動再開及び11月にこのフォークカヴァー集をリリースする事、そして12月にはそのアルバムを引っ提げた初ソロライヴ(しかもライヴハウスで!)を行う事、更には来春には今回のプロデューサーでもあるシャ乱Qのたいせーと共にユニットとして本格的にデビューする事等が発表された。

  というわけで、今回発表された市井紗耶香復帰作は、あくまで「プレデビュー」作、今後彼女がどういう方向に進んでいくか、そしてたいせーが彼女にはどういった曲・メロディー・キーが合っているのかを確認する為の「はじめの一歩」に過ぎない。そういう意味では、我々リスナーはその「実験」、あるいは「リハビリ」にお金を払ってつき合わされているようなものか‥‥とはいうものの、収穫が多いのもまた事実。それは、市井の再出発の門出を祝う形で参加した中澤にも言えることだ。

  まず、アルバムを持っていない人の為に、カヴァーされた全収録曲とそのオリジナルを唄った人を明記しておく。


01. この広い野原いっぱい (森山良子)
02. 恋人もいないのに (シモンズ)
03. 秋でもないのに (本田路津子)
04. あの日にかえりたい (荒井由美)
05. 待つわ (あみん)
06. 花と小父さん (伊藤きよ子)
07. ふるさと (モーニング娘。)
08. かもめはかもめ (中島みゆき/研ナオコ)
09. 或る日突然 (トワ・エ・モワ)
10. 秋止符 (アリス/横山みゆき)
11. なごり雪 (伊勢正三/イルカ)
12. 時には母のない子のように (カルメン・マキ)
13. あ~よかった (花*花)
14. 白い色は恋人の色 (ベッツィ&クリス)
15. サルビアの花 (早川義夫/もとまろ)
16. 翼をください (赤い鳥)


見ての通り、'60~'70年代のフォークソングがメインとなっていて、その中に最近のヒット曲M-13やふたりの古巣のセルフカヴァー(とはいっても本家では安倍なつみがリードボーカルを取っていたので、ふたりがリードを取るのは実質初めて)といった曲も含まれている。大半の曲‥‥特にM-1やM-16等は学校の教科書にも載ってるような名曲だし、現在も第一線で活躍するユーミンや中島みゆきの初期の名曲‥‥は、若い子達にも判りやすいものではないだろうか? 思いっきり全曲口ずさめる自分もどうかと思うが(笑)とにかくそれくらい親しみやすい名曲を詰め込んだものだ。「FOLK SONGS」というタイトルに相応しいかどうか悩む選曲もあるが、そこは若い子達にアピールする為の戦略なのだろう。

  ゲストも豪華で、M-1とM-16ではモーニング娘。から安倍、飯田、保田、矢口、後藤の5人がコーラスで参加している。初期の娘。のコーラスワークには目を見張るものがあるので、ここでも当時を彷彿とさせるコーラスを堪能することができる。また、M-6にはフォークシンガーの杉田二郎、M-9にはばんばひろふみ、M-10には堀内孝雄がそれぞれデュエット(堀内はコーラス)で参加している。そういうこともあってか、このアルバムは我々若いモーニング娘。ファンだけに留まらず、「フォークソングが青春時代だった」年輩の方々にも好評だと聞く。うちの母親もこれらの曲の大半(M-7とM13以外ね/苦笑)を知っていたので、非常に親しみやすいと言っていた。音楽面で娘。関係がこれだけ広い層に影響を与えたのは、恐らく初めてのことではないだろうか?

  さて、肝心の内容の方だが‥‥フォークとはいうものの、我々がイメージする「アコースティック色が強い、弾き語り風」な曲というのは少なく、ディストーションギターを導入したバンド形態のロックアレンジあり、フレンチポップ風あり、打ち込みリズムにシンセを被せた雰囲気ものポップスあり‥‥といった感じで、厳密に言えば「フォークソングの名曲を2001年アレンジでカヴァーしてみました」といったところだろうか。まぁどの曲にも必ずアコースティックギターは入っているので、とりあえず聴いた感じの印象は「フォークっぽく」もあるのだが。

  曲によって市井がリード、中澤がリード、ふたりでハモりながら等の形態があるのだが、とりあえず市井メインとなってる曲が大半で、中澤が完全にリードを取るのは3曲。一応、市井の復帰作という名目にも関わらず3曲も入っていたのは、ちょっとした驚きだった。そして、この3曲がまたいいカヴァーだったりする。特にM-8"かもめはかもめ"が出色の出来だ。確かに中澤の歌は原曲の中島みゆきや研ナオコと比べれば、足下にも及ばない。が、これまで彼女がリリースしてきたどのソロシングルよりも「彼女らしさ」が出ているように思う。以前他のレビューで今後の中澤の活動に対し「他のライター/プロデューサーと仕事して、もっとアコースティック色の強いアレンジに挑戦して欲しい」と書いた。そしてそれがここで初めて現実のものとなったのだ。今回リードを取る曲は中澤が選んだのか、たいせーが選んだのかは判らないが、もしこれがたいせーの仕事だとしたら、いやいや、大したもんである。正直、たいせーという男がどこまでの仕事をする人間なのか、俺にとっては「未知の存在」なのだ。確かにシャ乱Q時代も曲を書いているとは思うのだが、どうしてもつんくやはたけ、まことといったブレインとなる人間の影に隠れ、キャラで勝負するといったイメージが強かった。プロデューサーとしては彼、意外といい仕事するかもしれないな?

  さて、肝心の主役、市井の方はというと‥‥これが、微妙なのである。市井は決して歌が上手い人ではない。それに加えて、声域も決して広いとは言えない。低音は厳しいし、中澤のようにファルセットが上手いわけでもない。中音域~ちょっと高めが最も「市井らしさ」を表現できる音域となるわけだが、それは卒業から1年半経った今もあまり変わっていないようだ。このアルバムでは、たいせーは彼女にいろんなキーの曲をぶつけている。"あの日にかえりたい"のような低音域メインの曲から、"ふるさと"みたいな唄うのに相当な技術を要する曲まで。それらはあくまで「実験」の名の下にレコーディングされ、作品としてリリースされてしまった‥‥正直なところ、市井は自分の歌を聴いてどう思っただろうか? と同時に、自分にはどういう曲調、キー、メロディー回しが向いているがが理解できただろうか? これはたいせーにとっての「確認作業」なだけでなく、市井紗耶香という今後「シンガーソングライター」を目指すアーティストにとっても大切な「確認作業」のはずなのだ。そこに気付かずに、ただ与えられた歌をこなしていっただけ、素通りしてしまっただけなら‥‥ちょっと厳しいな。

  勿論、悪い出来の曲ばかりではない。逆に彼女にピッタリな曲も沢山あるわけで。個人的には市井がソロで唄うものよりも、バックアップとして中澤がハーモニーを重ねる曲の方がより魅力的だった。"恋人もいないのに"や"待つわ"がその代表例といえるだろう。市井、ソロデビューじゃなくて、市井&中澤+たいせーでやればいいのに。これまで娘。関係でデュオってのはあまりいなかったから、そこにたいせーを加えて「女2+男1」という新しい形のグループが出来て、見た目的にも花があるし、話題性も十分だと思うのだけど(まぁ事務所的にはそうはいかないんだろうけど/苦笑)

  個人的にはこのアルバム、疲れた時によく聴く。決して市井のファンだからというわけではなく、彼女のクセのない歌声が心地よかったりするからだ。曲も気付けば口ずさんでしまうようなものばかりだし、いろんな意味で「癒し」のアルバムとして重宝させてもらっている。

  「ロックを扱う音楽サイトの管理人」の立場から言わせてもらえば、これはうちが扱うような内容の作品ではない。娘。本体には「ロック」は感じても、ここには「ロック」は感じられない(フォークだから、という理由ではない)。けどまぁ‥‥いちファンとしてこのアルバムをこのサイトで取り上げる事が、実は最もロックなのかなぁ‥‥なんて思いながら、今回のレビューを終えたいと思う。

  とにかく、これは「答え」ではない。全てはこらから始まっていくのだから。



▼市井紗耶香 with 中澤裕子『FOLK SONGS』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 12 11 12:00 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, 中澤裕子, 市井紗耶香] | 固定リンク

2001/11/26

タンポポ・プッチモニ・ミニモニ。・中澤裕子『TOGETHER -タンポポ・プッチ・ミニ・ゆうこ-』(2001)

  この1月末にリリースされ200万枚以上を売り上げた、今年出たアルバムの中でも間違いなく5本の指に入ったであろうモーニング娘。のベストアルバム、「ベスト!モーニング娘。1」。あゆやヒッキーは別格として、対抗馬はCHEMISTRYくらいじゃなかろうか? そう考えると、ベスト盤とはいえこの売れ方はちょっと異常かなと思えてくる。
  そんな「ベストでボロ儲け」してる中、二匹目のドジョウを狙うべく4月にリリースされたのが、娘。の課外授業といえる各ソロユニットの最新ヒット曲を集めた企画盤、「TOGETHER -タンポポ・プッチ・ミニ・ゆうこ-」である。収録されたのは話題の「ミニモニ。」、ユニットとしては最も古株の「タンポポ」、市井脱退後は路線変更で生き延びた「プッチモニ」、そしてこのアルバム発表前後に脱退した中澤裕子(当時は「~ゆうこ」と表記)の4組。案の定アルバムは1位を記録し、ミリオンには達しなかったものの、それに近いセールスを記録。これも勢いだろうか?

  さて‥‥娘。の課外授業だが‥‥個人的には母体よりも音楽センスが高い楽曲があったり、趣味に近いアレンジの曲があったりで、なかなか侮れない存在なのだ。市井在籍時のプッチモニがそうだったように、母体の娘。では試せないような遊び心やおふざけ感が高く、それは現在にも受け継がれているように思う。では、各ユニット毎にそれぞれの特徴を分析してみたいと思う。


●ミニモニ。

  言うまでもなく、"ミニモニ。ジャンケンぴょん!"がアホみたいに売れまくった、幼稚園児~小学生にとってのスーパースター。正直、あの曲を聴いた時は「バカにするのもいい加減にしろ!」と思ったものの、毎朝寝起きに「おはスタ」つけると流れてくるあのメロディーに‥‥やられました(苦笑)。ついでにミニモニダンスだって踊れます(涙)
  徹底的にエンターテイメントに固執した姿勢は、市井在籍時のプッチモニと同様のものを感じるが、ミニモニ。の方がもっと低年齢層向け。楽曲アレンジもどこか間の抜けた、チープなシンセサウンドを用いて「それっぽさ」を醸し出している。が、実際にヘッドフォンで楽曲を聴くと、意外なほどに緻密なアレンジが施されていることに気付くし、カップリング曲"春夏秋冬だいすっき!"にも同様の拘りを感じる。各楽曲アレンジャーが違うのだが("~ジャンケンぴょん!"はハロプロ御用達の小西貴雄、"~だいすっき!"はローリー寺西との活動経験もある「日本のジェフ・リン」こと永井ルイ)、特に後者の方は永井氏特有の'70年代ブリティッシュ・グラムや職人ポップのような味付けや演奏を楽しむ事ができる。

  何となくだが、ミニモニ。は‥‥短命に終わるような気がする。そりゃ、今後新メンバーを加えて若さと身長(笑)を保てばいいのかもしれないが‥‥逆に長続きされると、見てるこっちがしらけるような。子供の飽きは早い。活動期間が短いのなら、せめてその最後まで大人を舐めきった姿勢と楽曲で、我々をむかつかせて欲しい(笑)。


●タンポポ

  ソロユニットの中では一番最初に誕生(1998年秋)し、初期メンバーの石黒脱退後は飯田、矢口に加え4期メンバーの加護、石川を加えた4人編成で活動している。ユニットのコンセプトも当初「モーニング娘。よりも大人っぽい、コーラスワークを駆使したグループ」でファン層も10代をターゲットにした娘。よりも上の、20代のOL辺りを狙ったものだったそうだ。が、加護や石川といった10代前半の娘達が加入したことによって、そのコンセプトは変えざるをえなかった。結局、前述の永井ルイ氏に発注した4人編成初のシングル"乙女 パスタに感動"のアレンジが完成した時にそのコンセプトが「ロンドン」に変わったそうだ‥‥何だ、ロンドンって!?(笑)まぁ何となく理解できる‥‥この楽曲、思いっきりQUEENやBAY CITY ROLLERSしてるのだ。そういえば、この曲での彼女らの衣装もタータンチェックだったし。
  個人的な趣味で言わせてもらえば、この新生タンポポの音楽性が最も自分の趣味にフィットしている。つうか滅茶苦茶好みだ。新生タンポポ第2弾の"恋をしちゃいました!"もガールズ・ポップの王道中の王道、ど真ん中という名曲。俺内「2001年名曲ランキング」ベスト3入りしてるもん。そしてこのアルバムには入っていないが、先日(2001年11月)リリースされた新曲"王子様と雪の夜"もそれに匹敵する程の名曲だし(こっちの曲もアレンジは永井ルイ氏。つうかこの人のセンスはずば抜けて凄い。QUEENだとかELOを彷彿とさせるギタープレイやシンセのフレーズに、頬の筋肉が緩みっぱなしだもの/笑)。

  この甘ったるいアレンジが、加護と石川の声質にマッチしてる点がまた最強。出来上がった感のある矢口、飯田と比べ、発展途上の加護&明らかに歌唱力が低い石川の幼さ&危うさが、逆に切なさを増してるような気が‥‥って明らかに俺だけだろうけど、そう思ってるの(苦笑)。とにかくこの路線で行く限り、応援し続けようと思ってる。願わくば、永井ルイがオール・プロデュースしたタンポポのアルバムを聴いてみたいのだが‥‥


●プッチモニ

  ソロユニットとしてはタンポポに続いて登場したのが、このプッチモニ。当初は保田と市井、そして当時加入したての後藤という3人で、"LOVEマシーン"成功の煽りを受けてデビュー曲"ちょこっとLOVE"はミリオンヒットを記録。恐らくソロユニットとしては最も売れた楽曲なのではないだろうか? 市井時代のプッチには「バカっぽくて元気、それでいて女の子らしい可愛さ」があったように思うのだが、市井が抜けた後、4期メンバーの吉澤が加入した後のプッチは、吉澤のクールさを取り入れた「カッコいいプッチモニ」をコンセプトに"青春時代1.2.3!"をリリースし、再び成功を手にする。が、両A面曲である"バイセコー大成功!"‥‥これが曲者だ。市井時代以上にバカ‥‥いや、バカを通り越して「狂って」いるのだ(笑)。こりゃ最初聴いた時、笑った笑った。"ちょこっと~"はコミカル以前にまず楽曲の完成度の高さがあったわけだが、"バイセコー~"はまず実験ありき、といった姿勢を感じずにはいられない。一瞬、「へっ、プッチもQUEENを!?」とか錯覚したが、それは俺の間違いだった(苦笑)。"青春時代~"を聴いて「ああ‥‥」と嘆いた俺にとってこの曲は正しく救世主だったと言っていいだろう(笑)。何となく、"~ジャンケンぴょん!"のアイデアの原型がここにあるような気がするのだが、どうだろう?

  思うに、つんくはまだこの頃、キャラの確立されていない吉澤をどう売り出そうか迷っていたのではないだろうか? この振り幅の大きい2曲が同居するシングルを聴くと、そう思えてならない。そして「男らしいよっすぃー」というキャラ(笑)がある程度確立された2001年、"BABY! 恋にKNOCK OUT!"でダサカッコいい路線へと移行し、最新曲"ぴったりしたいX'max!"ではいよいよ初期のバカっぽさが完全復活している(そして楽曲アレンジも、初期のかわいらしさが復活している)。後藤のソロがクール路線を選んだこともあり、今後のプッチが再びこの路線で行くのなら、まだまだ楽しませてくれるのではないだろうか?


●中澤裕子

  娘。がまだデビューしたての頃に、いきなり演歌歌手「中澤ゆうこ」としてソロデビューさせられた(という表現が正しいのだろう)中澤姐さん。しっかりアルバムまで出し、演歌歌手活動に一区切りをつけた2000年夏に、歌謡ポップス"上海の風"で路線変更。これはハロプロ・シャッフルユニット「あか組4」での成功も大いに関係しているような気がする。また、前年末からの"LOVEマシーン"効果によって、中澤のソロでもある程度のセールスが期待出来るのでは?という事務所側の思惑も見え隠れする。結果、それ以後のソロシングルは全てトップ20入り(演歌時代はせいぜい演歌チャート1位が関の山だった)を果たす。

  既に脱退してしまった彼女の今後についてとやかく言うつもりはないが、どうせならつんくの元を離れて、これまで娘。が交わることはないだろうと思われてきた作家・プロデューサーと一緒に仕事をしてはどうだろうか? 最近ではメロン記念日の新曲が作詞作曲をつんく以外の作家が手掛け(つんくはプロデュースのみ)、話題となっている。まぁこの人の場合は別に唄わなくても食っていけるモノを持っているので、そんな心配は無用かもしれないが‥‥個人的には、線の細い声をしてるので、アコースティック系の楽曲で勝負してみては?なんて思う。ファンクラブ向けソロシングルでは、野村義男アレンジでピアノメインのバラードを披露したが、つんく作の人工的なサウンドではなくああいう「生っぽさ」を全面に出した柔らかい曲の方が、姐さんの声を活かせると思うし、普段のキャラとは別の側面を魅せることも出来ると思うのだが‥‥だったら俺がプロデュースしてみるか?(爆)


  ということで、多少妄想が入り交じった各ユニットに対する俺の分析を書いてみたが、結局アルバムのレビューとは少し違った方向に進んでしまった気が‥‥まぁいずれこういう文は他の項目で書いていただろうから、丁度いい機会だったのかもしれない。後はこの分析を読んで、興味のあるユニットの音源に手を出してみればいい。そのサンプラーとして、このアルバムが役立つだろうから(って書いて、どれくらいの人が反応するのかね?/苦笑)



▼タンポポ・プッチモニ・ミニモニ。・中澤裕子『TOGETHER -タンポポ・プッチ・ミニ・ゆうこ-』
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投稿: 2001 11 26 12:00 午前 [2001年の作品, タンポポ, ハロー!プロジェクト, プッチモニ, ミニモニ。, 中澤裕子] | 固定リンク

2001/11/12

GiNGER『I'M A LOVER NOT A FIGHTER EP』(2001)

THE WiLDHEARTSを本当に、しかも全盛期のメンバーで復活させてしまったジンジャー。今後もSILVER GINGER 5と平行して活動していき、両者とも作品をリリースしていく予定だという。どういう線引きで作品を作り分けるのかが非常に興味深いところに、更にソロ名義で12ヶ月連続で、毎月3曲の新曲入りシングルをリリースし続けるという馬鹿馬鹿しさを越えて「おいおい、大丈夫かよ!?」と心配さえしたくなる企画を発表した。3月末にオフィシャルサイトで公式発表し、何とか6月にはこの1枚目のシングル「I'M A LOVER NOT A FIGHTER」が手元に届いたわけだが‥‥いきなり何ですが、これを書いてる2001年11月上旬の時点で、未だに2枚目のシングルが手元に届いていないのですが‥‥(苦笑/とりあえず現時点で、11月中にはリリースされる予定となっているのだが‥‥)

楽曲は勿論このシングル・プロジェクトの為に書き貯められた、純粋な未発表新曲。プロデュースにはジンジャー自身が当たり、ミックスは何故かメタル界の大御所エンジニアであるクリス・タンガリーディスが担当。だからといってその音がメタリックというわけではなく、どちらかというと生々しい感じ‥‥SG5の『Well-Produced』とも、ワイハーのゴリゴリとも違う、ガレージポップっぽい感触。楽曲のタイプがそれっぽいこともあって、非常にマッチしてると思う。

レコーディングメンバーには、ベースにSG5のジョン・プール、ドラムにはワイハーのスティデイ、コーラスに同じくワイハーのCJが参加している(タイトル曲のサビで如何にもなコーラスがそれっぽい)。しかも次のシングルにはCJはギタリストとしても参加しているそうだ‥‥ってそれって、単にダニー抜きのワイハーじゃないか!? ダニーはいろいろと「個人的な」事情で参加できないだけなのか??‥‥嗚呼(涙)

タイトル曲はどことなくPOSIES辺りを彷彿とさせる、ジンジャーにしては珍しい直球パワーポップ。サビにくると如何にもジンジャーなメロディーをかましてくれるのだが‥‥イマイチ地味な印象が強い。ベースラインを追えば、確かにSG5のアルバムにも共通する、あのウネウネ動き回るベースだし、ドラムもスティディらしい力強いビートを刻んでいる。2曲目"Don't Let Me Die Lonely"はビートルズ・チックなバラードで、サビや間奏ではツェッペリンを彷彿とさせるリフが登場したり、3曲目"Thailand Uber Alles"はモロにジンジャーといったポップロックなのだけど‥‥どうも盛り上がりに欠ける。早い話が「地味」なのだ。では「地味」の原因は何か‥‥間違いなく、ジンジャーの書くメロディーラインそのものだろう。決して駄曲ではない。けど名曲とも呼べない。平均点以上なのだが、ここにはSG5や、CLAM ABUSEにもあったあのきらびやかなポップ感が希薄だ。勿論、これはこれでいい味を出してるし、俺的にはありかな、とも思える。しかし、何故に無理してまでソロ名義で、しかも自身にムチ打つように12ヶ月連続、計36曲もの完全新曲を発表しようと考えたのだろうか?

これは憶測でしかないが‥‥もしかしたらジンジャー自身が今現在、スランプに陥っているのかもしれない。SG5以降、ジンジャー自身がそれに気付いてしまったのかもしれない。ということは、ワイハー復活は「過去の偉業を辿る」作業であり(実際復活ワイハーとしてはまだ新曲は1曲もないようだし)、12ヶ月連続シングル発表は「リハビリ」なのか‥‥おいおい、一体天才ジンジャー様はどこへいっちまったんだ!?勿論、ここに収録された3曲は、並のロックバンドの曲と比べれば平均点以上の出来だろう。けど、我々ジンジャーのファンは彼に「平均点以上」程度のものは望んでいない。常に最高、その1点しか見えていないはずなのだ。

既に世に出回ってしまった以上、この現実を受け入れるしかない。このシングル以降、公式な新曲はまだ1曲もリリースされていない。もしかしたら第2弾シングルのリリースが遅れているのは、スタジオが取れないとかワイハーが忙しいといった理由ではなく、単に納得がいくモノが出来ていないだけなのでは‥‥なんて勘ぐりたくなってしまう自分が、ちょっと嫌だったりする(苦笑)。けど、ファンという生き物は悲しいもので、「並だ、平均点だ」と言ってるこれらの3曲でもずっと聴き続けていると愛着が湧いて、しまいには「‥‥意外といい曲じゃん?」と思えてくるのだから、たちが悪い(苦笑)。いや、マジな話、パワーポップ好きを自称する方でまだワイハーに手を出していないって人に、このシングルを聴いて欲しいかも‥‥意外とハマッたりして。

とにかく、続く第2弾、第3弾‥‥何なら第12弾まで猶予を持って期待してみようじゃないか?(苦笑)



▼GiNGER『A BREAK IN THE WEATHER』(同シングル収録曲をすべて収録)
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投稿: 2001 11 12 07:55 午後 [2001年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2001/11/03

JESUS JONES『LONDON』(2001)

この現実を受け入れるまでに、一体どれだけの日数を要したのだろう? まさか、本当にあのJESUS JONESが戻ってくるとは、この2001年に‥‥!! 2年前、何げにオフィシャルサイトを覗いていたら、どうやら「BREAK UP」したようだとの話で‥‥ああやっぱり、と妙に納得したもんだった。まぁマイク・エドワーズは元々ソロ気質の人みたいだから、今後はいろんなとこに顔突っ込んで活躍してくれるに違いない。そう思い込んでいた‥‥

しかし、実際にはどうだろう?

YOSHIというバンドを結成(マイクはギターのみで、ボーカルには女性が当たっているという話)だとか、MANCHILDというテクノユニットのプロデュースを手掛けたとか、「ツール・ド・フランス」のテーマ曲をマイク・エドワーズ名義でネット上で発表したりだとか‥‥そういう話だけは伝わってくるものの、正式な音源はここ日本でひとつも発表されていなかった。MANCHILDは日本盤が出たものの、帯にもマイクの名前はなく、ゲスト参加したSTEREOPHONICSやTHERAPY?のメンバーがプッシュされているだけだ。考えてみりゃ、JESUS JONESとして最後に来日したのは‥‥いつだっけ? ああ、布袋寅泰と武道館で一緒にやったやつが最後か‥‥6~7年以上来てないってことになるのかな? そりゃ忘れられるわな、普通。しかも4作目「ALREADY」の時もここ日本では殆ど取り上げられること、なかったし。

'90年前後のUKロック、とりわけ「マッドチェスター」やら「シューゲーザー」「ハウス/レイヴ・シーン」をリアルタイムで通過してきた方ならご存じの通り、JESUS JONESやEMFといったバンドは上のどのシーンにも属さない、いわば「時代の徒花」的存在だったと言っていいだろう。そして、そういった「徒花」達がアメリカで最も成功を収めてしまったのだ。STONE ROSESやHAPPY MONDAYSが成し得なかった全米チャートのトップ3入りを、JESUS JONESとEMFは成し遂げたのだ(特にEMFは全米第1位を記録)。

そして時代は流れ、2001年。我々の記憶に残っているのはどのバンドだろうか? 歴史的にも重要だと言われているSTONE ROSESだったりRIDEといったバンドは、最近編集盤もリリースされたばかりだ。が、ここ1~2年の間に、地下で「徒花」達は復活の準備をしていたのだった。

映画「コヨーテ・アグリ」のサントラにEMFの全米ナンバー1ヒット "Unbelievable" が起用され、今更ベスト盤がリリースされたり、そのEMFのプロデューサーだったラルフ・ジェザードが元THE WiLDHEARTSのリッチと結成したバンド、GRAND THEFT AUDIOがイギリスよりも先にアメリカでデビューを飾ったり、その音がモロにEMFやJESUS JONESを彷彿とさせるものだったりと‥‥周辺では少しずつだが、賑やかになり始めていた。

そこにきて、満を持してのJESUS JONES復活である。残念ながらオリジナルメンバーではないものの、あくまで「5人のロックバンド」として、マイク・エドワーズは我々の前に戻ってきたのだ。勿論、YOSHIはまだ諦めていない。ソロとしての活動もあるようだ。JESUS JONESはアメリカのインディーレーベル「MI-5 RECORDS」と契約、アメリカインディーでも比較的大手の「KOCH」から配給されることとなった(ここからは最近、STABBING WESTWARDも新作をリリースしていて、全米チャートのトップ50入りを果たした)。何故イギリスからではなくアメリカのレーベルから? しかもアルバムタイトルが「LONDON」って‥‥皮肉か?

アメリカでも大ヒットを記録したセカンドアルバム「DOUBT」から既に10年経っている。まさかマイクが「アメリカでの成功よ、もう一度‥‥!」と願ってこういう契約を結んだわけではあるまい。「PERVERSE」はアメリカでコケたわけだし、続く「ALREADY」だって日本やイギリスよりも1年以上遅れて発表している。どう考えたってニーズがあるとは思えない。しかし、マイクは何かを思ってアメリカから再出発をした。当然、ここ最近はイギリス国内でもツアーをしている。日本でも本国でもなく、何故アメリカ‥‥正直なところ、俺には判らない。上のような憶測ならいくらでも浮かぶ。日本でのリリース予定がないので、雑誌等で取り上げられることも今のところないし。けど、来春EMIからリリースされるというグレイテスト・ヒッツアルバムに伴って、何かしらのプロモーション活動があるはずだ。その時に、真実が我々に告げられることだろう。

この「LONDON」というアルバムは「ALREADY」から4年以上も経っている。「PERVERSE」~「ALREADY」という流れは納得いく流れだ。しかし、「ALREADY」~「LONDON」という自然な流れはあまり感じられない。むしろこの新作は「第2のスタート」として受け取った方がいいようだ。勿論、ここには良くも悪くも「あのJESUS JONES」が詰め込まれている。いきなり「BON JOVIかよっ!?」と思わせるマイナーロックチューン "Message" に多少度肝を抜かれるものの、続く "Stranger" はネット上でもMP3音源が配布されていたので安心する(けどこの曲、ちょっとHOTEI色が強くない? COMPLEX辺りの)。その後も過去のマイクの小技が飛び出したり、中には「何でこれを2001年に‥‥??」というような曲も登場する。そして、我々が想像する「JESUS JONESの売り」ともいえるサンプリングや打ち込み/テクノ色を取り入れた『人工着色』されたサウンドが、ここでは思った以上に希薄だという事実。そう、新生JESUS JONESはこれまでよりも‥‥ファーストアルバム「LIQUIDIZER」以上にロック然としているのだ。確かに楽曲やちょっとした味付けは「マイク・エドワーズ率いるJESUS JONES」そのものなのだが、何かが違うのだ。

まさかこれがマイクからの「ロックバンド宣言!」ではなかろう、今更。'80年代のアイドルのロック宣言じゃあるまいし。マイクというとどうしてもクラブシーンの人というイメージがあるのだが(ライヴもアルバムを再現するといった感じで、そこまでラフなロックンロールという感じでもなかったし)、ここには「早すぎたビッグビート」とか「時代の徒花」と呼ばれていた頃のマイクはいない。改めて、マイクは「第2章」に突入したのだな、と。いや、もしかしたらそれぞれのユニット(YOSHIやソロ)とは別の色を強調したものを、この新生JESUS JONESで作りだそうとしているのかもしれない。だって、これまでみたいな「テクノ/ダンスにロックの味付け」から明らかに逆の「ロックにテクノ/ダンスの味付け」にシフトチェンジしているのだから。



▼JESUS JONES『LONDON』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2001 11 03 03:11 午前 [2001年の作品, Jesus Jones] | 固定リンク

2001/10/29

BOØWY『LAST GIGS』(2001/完全版:2008)

まさか、こんな鮮明な映像が観れる日が来るなんて、思ってもみなかった。しかも、13年半も経ってから‥‥既にブートで何世代目、何十世代目が出回っているBOØWYのラストライヴとなった東京ドーム2DAYSの映像が正式な製品として、結成20周年を記念する2001年にリリースされた。当時(88年)ライヴ終了1ヶ月後にはライヴアルバムとして12曲が発表され、それに続いて映像作品もリリースされる予定だった。が、どこでどう変わったのか知らないが、結局この映像化企画は没となってしまう。それが何故、それもここにきて急にリリースされることになったのだろうか? 確か98年2月にリマスター音源を使用したベスト盤『THIS BOØWY』がリリースされる際にも、この『LAST GIGS』映像版発表の噂はあった。しかし、メンバー(この時は氷室京介だと言われていた)がOKを出さなかった為、再び没となったようだ。確かに今年はBOØWY結成20周年、来年2002年はファーストアルバム『MORAL』が発表された年でもある。けどそれって、如何にもこじつけましたっていう空気を感じるのだけど‥‥。

そうは言っても、あの「飯島愛の裏ビデオ」以下の映像でしか観れなかった(笑)ラストライヴを、こうやってクリアな画像・音声で目に/耳にできるというのは、心底喜ばしいことだと思っている。正直な話、この話題を「めざましテレビ」で知った時、朝から発狂しそうになったもん。

で、リリースが発表になってから発売までの1ヶ月に間に、結構ガッカリすることもあって。メインになってるのは1988年4月4日と5日の2公演の内、ラストの5日の方なのだけど、この日は確か20曲以上演奏され、しかもダブルアンコールで一番最後に再び「NO. NEW YORK」が演奏されるというサービス振りだったはずなのだ。ところが、製品としてリリースされるビデオ/DVDは12曲‥‥曲目・曲順共にCD版『LAST GIGS』と全く一緒だったのだ。これにはさすがの俺も「ちょっと待て!何考えてるんだ!?(怒)」と憤りを感じ、買うのはよそうか‥‥と思うようになっていた。

けどね‥‥勝てなかったよ、あの日の、高校時代の自分に(苦笑)。

CD版との違いを幾つか挙げておく。まずCDは収録時間50分、それに対し映像版は57分。7分余計なわけだが、その分何が増えたのかというと‥‥オープニング! 最初のライヴアルバム『GIGS』(86年)を聴いたことがある人にはお馴染みの、あのイントロダクションが収録されている。イントロダクションに導かれ、メンバーがひとり、またひとりと登場するステージ後方からの映像(後ろ姿)には、正直鳥肌が立った。更に「WORKING MAN」演奏前にMCが収録されている。そう、ブートを観た人、実際のライヴに行った人ならご存じの「最後がおまえらでよかったと思うよ」っていう、あの名セリフはちゃんと収録されているのだ! これだけで、学生時代ヒムロックに魅せられた元少年少女は買いでしょう!(笑)そして最後の「Dreamin'」終了後、アンコールを求めるオーディエンスをバックにエンドロールが流れ、最後の最後にダブルアンコールも終了した後の、メンバー4人がステージ前方に肩寄せ合って集まった姿が、そして4人からの「ありがとう」の言葉とステージを去る氷室、布袋、松井、高橋の姿をちゃんと収めている。CDでは実況中継盤というよりは、ひとつの「作品」として編集されたイメージがあったが、こういう映像を付け加えることで、更に感慨深いものになった‥‥けど全曲、キレイな映像で観たかったなぁ‥‥(涙)。

このDVDを握り拳で、興奮しながら観てたら、ちと面白いことに気付いた。客のノリが現在(2001年)と違うのね、当たり前だけど。みんな右手の拳を握りしめ上に挙げ、ビートに合わせて振ってるのね。なんか懐かしかった(笑)。そうそう、あの頃はみんなこんなノリだったんだよな、これが当たり前だったんだよなって。今みたいにオーディエンスそれぞれが自由な楽しみ方をするようになるには、もうちょっと時間がかかったわけだけど、やっぱり今のアリーナバンドを思い浮かべると、あの「みんな同じ振り/手扇」が当たり前のように行われているわけで‥‥さすがにBOØWYのライヴで手扇は想像できないし(苦笑)‥‥何か新鮮だったよ。

それと、映像は2日分満遍なく使ってる感じがあって、たまに違和感を感じる場面がある。メインは5日だと思うのだけど、同じ1曲の中に「1コーラス目は4日の映像~ギターソロ以降は5日の映像~エンディングは再び4日」っていうちぐはぐさを感じちゃうのよ。判りやすいのが、布袋の衣装。4日は黒のジャケットなんだけど、メインとなる5日は黒地に白のストライプ?みたいなのが入ったジャケットを着てるのね。しかも、2日間で若干化粧のノリも違うようで(笑)かなり微妙な温度差を感じさせてる。途中でギターが変わってる曲もあったもんな、さすがにあれには閉口したけど(苦笑)。まぁ丁度いい映像がなかったからああいう風につぎはぎしたんだろうけど‥‥やっぱりどうにもならなかったのかね?

更にもうひとつ。これはむしろ凄みっていうか‥‥ドームでのライヴっていう事実を全く意識させない撮影・編集になってる気がする。だって、これ観てる約1時間の間、「あ、ここドームなんだ、デッカイなぁ‥‥」なんて思わせる瞬間、あんまりなかったもん。ステージセットが今のバンドよりも地味ってのもあるし、オーディエンスよりもメンバー中心に編集されてる点も多いに関係してるんだろうけど、やはり何よりも大きいのは、暴威というバンドが常にライヴ会場を(それが武道館だろうが東京ドームだろうが)「ライヴハウス」みたいな『密』な空間へと変えてしまうパワーを持ってたんだろうね。初武道館での「ライヴハウス武道館へようこそ!」っていうセリフからも判るように、BOØWYにとっては会場の大小は関係なかった、と。そう考えると、BOØWYってのは本当に特殊な、特別な存在だったんだな‥‥と感慨深いものがある。

やっぱりね、カッコイイのよ、ヒムロックにしろ布袋にしろ。俺はソロになってからの氷室には全く興味がないんだけど、やっぱりBOØWY時代のヒムロックには憧れに近い感情を持っていたわけで、布袋のように自由自在にギターが弾きまくれたらって何度思ったことか。特に布袋のギターワークは本当に凄いものがあるよ。スタジオテイクでは歌の裏では刻み系バッキングが殆どなんだけど、ことライヴになると全く新しいアレンジになってるから。1コーラス目と2コーラス目で全く違うフレーズ(バッキング)弾いてたり、特に上手いと思うのは、歌メロに絡みつくようなメロディーを所々でかましてて、ホントそれが気持ちいいのよ。ライヴ盤聴いた時にも既にそれは感じてたけど、改めて数年振りに映像観たら(ブートビデオ持ってたけど、ここ数年観てなかった)布袋はあの変なアクションをかましながら、右へ左へと動きながらリフ弾いたりソロ弾いたりしてるのね。ソロになってからの彼のアクションもカッコイイとは思うけど、やっぱりBOØWY時代は別物で、歌がなくてギターに専念してる分、ホントにアクションのひとつひとつがビシバシ決まってカッコイイのよ。そしてリズム隊はタイトだし。表情ひとつ変えずに、延々ダウンピッキングの松井、クールで、時に激しく、時ににこやかに唄いながらビートを刻む高橋。このレベルに達したフォロワーが一体どれだけいることやら‥‥

一時期、BOØWYを聴くことが恥ずかしいと思えた頃があった。洋楽にハマればハマる程、邦楽‥‥特に80年代のロック黎明期のバンドを聴くことに一種抵抗があった。けど、時代は一回りしたのかもしれない。やっぱりいいものはいい、カッコイイものは何年経ってもカッコイイのよ!



▼BOØWY『LAST GIGS COMPLETE』
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投稿: 2001 10 29 12:00 午前 [2001年の作品, 2008年の作品, BOØWY] | 固定リンク

2001/10/01

HEATWAVE『LONG LONG WAY -1990-2001-』(2001)

  今年(2001年)の3月に22年に渡るその歴史に幕を降ろしたHEATWAVEの、1990年のデビューから解散時までの歴史を総括した2枚組ベストアルバム。彼らは1995年までエピックに在籍し、その後ポリドールへ移籍している。このベスト盤はレーベルの枠を越え、ディスク1がエピック時代、ディスク2がポリドール時代という風に編集されている。レコード会社別にディスク分けした意味合いがあるのか?と問われれば、大いにあると言った方がいいだろう。

  HEATWAVEは元々トリオバンドとしてスタートしている。ボーカル/ギターの山口洋、ベースの渡辺圭一(最近再び山口と共に、加えてSOUL FLOWER UNIONの中川とサポートドラマーのコーキの4人で「ヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーション」という新バンドを結成した)、ドラムの藤原慶彦の3人でデビューするわけだが、セカンドアルバムリリース後にドラムの藤原が脱退。その後5th「1995」まで山口と渡辺の2人にサポートメンバーを加える形で活動を続けるものの、エピックとの契約切れと共に渡辺が脱退する。続く移籍後1作目「TOKYO CITY MAN」リリースまでの2年間、山口はあくまでバンドに拘り、その後再び3人組バンドとして(或いはそこにキーボーディストとして元MOTT THE HOOPLEで、最近はTHE BOOM等のサポートで活躍するモーガン・フィッシャーを加えた4人編成で)2001年3月まで不動のメンバーで活動を続ける。山口が全楽曲を手掛けてきたし、ある意味「山口さえいればHEATWAVE」とも言えるのだが、当の本人には「いちバンドのメンバー」という拘りが最後の最後まであったようだ。

  まぁバンドの説明はこんなもんでいいだろう。

  10月のオススメ盤として、実は昨日まで別の作品を取り上げようと思っていた。9月末に若くて活きのいい日本のバンド達が、素晴らしいアルバムをリリースしている。In the SoupだったりMO'SOME TONEBENDERだったり‥‥そういった「NEW GENERATION」に脚光を当てよう思っていたのだが、本日帰宅すると、土曜にネットで注文したこのベスト盤が届いていたのだ。実はHEATWAVEをちゃんと聴くのは今日が初めて。6年前の「1995」というアルバムは、ずっと気になっていて聴きたいとは思っていた。佐野元春プロデュース曲("BRAND NEW DAY/WAY" や "オリオンへの道")があったり、ソウルフラワーとの共作 "満月の夕" が入っていたりで、最近もずっと探していた(現在、エピック時代の全5作は廃盤のようだ)。そして先週の金曜(9/28)にソウルフラワーのライヴで初めて聴いた "トーキョー シティー ヒエラルキー" と "ガーディアンエンジェル" という2曲、そして山口のぶっきらぼうで男臭いボーカルに感銘を受け、ちゃんと聴いてみたいと思ってすぐに注文したのだった。

  全32曲、トータルで約160分にも及ぶ長丁場だが‥‥ディスク2枚、すんなり聴けてしまった。いや、すんなりって表現はどうかな‥‥歌詞に目をやりながらじっくり聴いていたのだが‥‥胸が熱くなってきた。何ていうか‥‥最近、こういうロックと出会ってなかったんじゃないかな?と。

  ズバリ言う。これは「30代以上の、男の希望と哀愁と苦悩の日常を唄ったロックンロール作品集」だ。フォークの世界にはこういった作品はいくらでもある。けど、ことロックの世界になると‥‥せいぜい浜田省吾くらいだろうか? しかし、それ以降に登場したアーティスト‥‥少なくとも'90年代にこの手のアーティストはいただろうか? 佐野元春は近年、確かに歳相応の歌を唄い始めた。けど、30代後半に突入する頃(つまり約10年前)、彼は「SWEET 16」と唄った(それがその言葉以上の意味合いを持つ事は重々承知しているが、あえてこう書かせてもらう)。エレファントカシマシのような表現もあるだろう。優等生的だがMR.CHILDRENのような表現もあるだろう。けど、それらが足下に及ばない程の「リアルさ」をこのHEATWAVEの楽曲/歌詞から見出した。

  山口の声質は低音域がどことなく浜田省吾に似ていて、熱くなりすぎない唄い方や節回しが佐野元春を彷彿とさせる。いや、というよりもボブ・ディラン的というべきか。歌を聴いているというよりは、むしろポップな詩の朗読を聴いてるような錯覚に陥る瞬間が何度かあった。音楽的には伝統的なアメリカンロックを彷彿させるものが多く、それも大いに影響してるのだろう。ところが、1995年の "満月の夕" で何かが変わる。ご存じの通り、この曲はソウルフラワーの中川との共作なのだが、HEATWAVEバージョンにもソウルフラワーから中川と伊丹が三線とお囃子で参加している。その後、"ガーディアンエンジェル" 等にも彼らは参加していて、更にはソウルフラワーファンにはお馴染みのアイリッシュ・ミュージシャン、ドーナル・ラニー・バンドが全面的に参加している。アメリカン・ルーツ・ロックからアイリッシュ・ルーツ‥‥この辺はニューエスト・モデルがソウルフラワーへと進化していく流れに何となく似ている。更にはソウルフラワーもモノノケ・サミットでカヴァーしている "竹田の子守歌" をも取り上げ始める。元々バンド指向でありながらも「歌」を中心にしてきた山口洋の中で、この辺りで何かが「弾けた」のかもしれない。これが「バンドへの拘り」に変化をもたらし、バンド解体へと繋がった‥‥というのは、考えすぎだろうか?

  年齢的には俺よりも5~6歳上の山口だが、彼が30歳を過ぎた頃に書いた楽曲には、その年齢に達した人間にしか書けない「リアルな言葉」が多い。ロックミュージシャンの視点から書かれた歌であるが、ロック的な生き方をしている30代の「すべての野郎ども」に当てはまる/共感できる言葉ばかりではないだろうか。

  リアルなバンドは確かにここ日本にも幾つか存在する。そしてリアルな歌を唄うアーティストも。しかし、山口洋の「リアルさ」は他のどのアーティストとも違う。何故彼が、HEATWAVEというバンドが、多くの現役アーティスト(佐野元春やソウルフラワーの面々、THE BOOMの宮沢、ミスチルの桜井、PEALOUTの近藤等)から支持されているのかが、この2枚組を聴く事によって理解できた気がする。10代~20代前半の若い方々には完全に伝わるのか判らないが、是非俺と同世代~30代のサラリーマン諸君にこそ聴いて欲しい、そんな「歌」が沢山詰まった作品集だ。



▼HEATWAVE『LONG LONG WAY -1990-2001-』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 10 01 01:38 午前 [2001年の作品, HEATWAVE] | 固定リンク

2001/09/03

SLAYER『GOD HATES US ALL』(2001)

SLAYERオリジナルアルバムとしては通算8作目、前作「DIABOLUS IN MUSICA」から約3年振りとなる快心の1枚。当初、今年の前半に出るのでは?と噂されていたが、最後まで曲順を決めかねたというし、アートワークの遅れ、更には配給元の変更(ソニー→ユニバーサル)等もあり、8月末にここ日本で行われた本邦初のヘヴィロック・フェス『BEAST FEAST』から遅れること数日後にやっとリリースされたわけだ。

さて、まず最初に‥‥ここ1年、俺の中ではヘヴィロックというものが盛り下がっている。理由のひとつとしてPAPA ROACHやLINKIN PARKといった亜流の出現が大きい。勿論、それらのバンドにはいい曲があるし、嫌いではないのだが‥‥単純に「材料」としてヘヴィな音像を利用しているだけで、心の底から「重さ」や「狂気」といったものが感じられないのだ。人間、本当に恐怖や狂気を感じると、そしてそれが度を超したものだと‥‥笑ってしまうと思う。よくイっちゃった人が笑いながら人を刺す、なんて話を耳にすると思うが(なんちゅう例えだよ/苦笑)、俺が心底響いたヘヴィロックを聴いた時って、必ず笑ってしまうのだ。それもニヤニヤではなく、腹の底から。ここ1年を振り返ってみても、そんなアルバムなんて昨年後半ではSOULFLYの「PRIMITIVE」だけだったし、今年に入ってからはSLIPKONTの「IOWA」までなかった。そして、このSLAYERの新作もそれに値する、馬鹿馬鹿しいまでに狂った音を奏でているのだ。

一般的にSLAYERは'86年リリースのサードアルバム「REIGN IN BLOOD」にてそのスラッシュメタルバンドとしてのスタイルを確立させたと言われている。確かにこれは頂点に値する名盤だと今でも思う。馬鹿馬鹿しいまでにスピードに拘り、全10曲で30分にも満たないその構成に、当時は衝撃を受けたものだ。その後のSLAYERはより重さを強調した「SOUTH OF HEAVEN」('88年当時は「全然速くない」と酷評されたが、今聴くとそうは感じない)を経て、集大成的な5作目「SEASONS IN THE ABYSS」でセールス的にも成功を収める。またこのアルバムを引っ提げて'90年12月には初来日。俺もこの時足を運んでいるが、METALLICA初来日に匹敵するだけの衝撃を受けた。

2枚組ライヴ盤「DECADE OF AGGRESSION」発表後に超凄腕ドラマーのデイヴ・ロンバードが脱退し、現在のポール・ボスタフ(元FORBIDDEN)が加入。'94年に通算6作目「DIVINE INTERVENTION」を発表、初の全米アルバムチャート・トップ10入り(8位)を果たす。翌年末にはGREEN DAYやOFFSPRINGといった「ライト・パンク」勢に対して「あんなのパンクじゃねぇ。これが本当のパンクってもんだ!」という姿勢を打ち出したパンク/ハードコアのカバー集「UNDISPUTED ATTITUDE」を発表。この頃から、メタル的イメージで語られる事の多かったSLAYERに、ハードコア的要素が更に加わるようになる(それは前作から表出していたが)。そして'98年夏には7作目「DIABOLUS IN MUSICA」を発表し、アルバム発売記念として日本のハードコアバンド幾つかと一緒にイベントを行ったりして、メタルだけでなくハードコアやヘヴィロック勢にもアピールする存在として、現在まで突き進んできた。

そう考えると、SLAYERというバンドは常に「攻め」続けてきたというイメージがあり、これまで一度たりとも「守り」に入っていないのである。既に結成20年を越え、来年辺りにはボックスセットのリリース予定もあるのだが、例えば登場当初「スラッシュ四天王」と呼ばれたMETALLICA、ANTHRAX、MEGADETHと比べると、その違いに気付くことだろう。METALLICAみたいな音楽的変化はこれまで1度もないし、ANTHRAX程多彩な音楽要素もなく、MEGADETHのようにクスリで潰れるようなこともなかった。職人的イメージ、ミュージシャンズ・ミュージシャン的存在として多くの若手から支持されているのかもしれない。METALLICAを除けば唯一メジャーレーベルに残っているのが彼らで、毎回安定したセールスを記録している。というか、ここまでブルータルでエクストリームな音楽をやっているにも関わらず、何故ドロップされないのかが不思議だ。サードアルバムなんて当初「ソニー」配給でリリースされる予定だったのが、歌詞の問題で拒否され、急遽ゲフィンからリリースされた、なんて話も今となっては懐かしい限りだ。

その「攻め」の姿勢は、今なお健在だ。アルバム1曲目"Darkness Of Christ"からいきなり高速チューン炸裂‥‥なのだが、この曲、ラジオから聞こえてくるような音像処理をしていて、どうしてももどかしさを感じてしまう。もっと爆音を‥‥もっと激しい音を‥‥と思っていると、すぐさま2曲目"Discipleに突入。2バスのブラストビートに唸る。前半は重さにポイントを置いたヘヴィロック的展開だが、途中から高速化し、ギターソロではお馴染みのアーミングに「いつものSLAYERが戻ってきた!」と大興奮。そう、全15曲(国内盤は13曲+ボーナストラック2曲)どこから聴いてもSLAYER以外の何者でもない音なのだ。勿論、新しい要素は毎回少しずつ注入されているのだが、別にMETALLICAみたいに鞍替えしたかのような印象なんてなく、「あ、そういえばあったっけ、そんな要素」くらいのもんなのだ。このアルバムにも昨今のヘヴィロックからの影響を匂わせる要素があるが、別にどうってことはない。前作以上にハードコア色が強くなり、メロディーも印象に残らない程(笑)ないに等しい。けど、SLAYERにそんなもん、端から求めてないって。どれだけ聴き手を興奮させるか、どれだけ俺を笑わせるか‥‥そうさせたもん勝ちなのだ。

確かに新作は名盤「REIGN IN BLOOD」を越えていない。けど、そんな問題じゃない。あれと同じ事を続けていたら、きっと彼らだってここまで存続しなかっただろう。年相応の深みがちゃんとこのアルバムにはある‥‥けど、他の30代後半~40代の方々と比べると、その表現方法がちょっと‥‥いや、かなり過激なだけだ(笑)。普段メタルしか聴いてないような人だけでなく、いつもはSLIPKNOTや日本の若手ハードコアなんかを聴いてるような10代の子達にこそ聴いて欲しい。今更スラッシュメタルなんて言葉を持ち出して彼らは凄かったなんて言いたいわけじゃない。今でも凄いのだ。これで十分だろ!?



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投稿: 2001 09 03 04:31 午後 [2001年の作品, Slayer] | 固定リンク

2001/08/22

GRAPEVINE『CIRCULATOR』(2001)

  たまたま買った1枚が大当たりだったって経験、時々あると思う。視聴機が大量に置かれている都会なら聴いてから手に取るなんてことも可能だが、こと田舎に住んでいるとそうもいかない。視聴機がある店もあるにはあるが、大体が売れ線ばかりだ。ジャケット買いやインスピレーションだけで購入を決めてしまったことなんて昔はよくあったが、最近はCD屋に行っても漁るのは旧譜や中古盤ばかり。

  そんな中、たまたま手にしてしまったのが、このGRAPEVINEの4作目となる「CIRCULATOR」だった。先行シングルとなっていた"discord"や"風待ち"はTVのヒットチャート番組でチラッと聴いた程度だったが、かなり好印象だった。そこへこのアルバムと偶然CD屋で出会う。決してイチ押しされていたわけでもなく、店頭にたまたま1枚、置かれていただけ。けど、何故か手にしてレジまで行ってしまった。

  前作「HERE」は未聴だった。今考えてみると、何故なのか思い出せない。きっと金がない時とリリースタイミングが合ってしまったのと、中古盤をあまり見かけなかったことが原因だろう。それまでのアルバムはちゃんと聴いていたし、個人的にはセカンド「LIFETIME」は気に入っていて、今でもたまに聴いている。その後に出ていたシングル曲もちょっと耳にする程度。だから、俺の中では一昨年の春以来‥‥約2年振りにちゃんと聴く新譜ということになる。

  はっきり言って、これは地味な作品だ。しかし、2度、3度と聴きたくなる作品集である。基本的にはミディアム~スロウテンポの曲がメイン。よく「OASIS以降」なんて形容詞が使われることがあるが、このバンドは正しくその形容詞が相応しいバンドだ。勿論、ただの「OASIS以降」では終わっていないが。

  マーヴィン・ゲイの曲名から取ったと言われるそのバンド名から想像できる、非常に黒っぽい、グルーヴィーで腰の据わったサウンドを聴かせるバンド。曲は決して派手ではなく、ブルーズを基調としながらも、そこに現代的な彩りを重ねることにより、自分達らしさを追求してきたバンドだ。メンバー全員がソングライターとして確立した個性を持っていて、プレイヤー/シンガーとしてのアビリティーも高い。一歩間違えば「玄人受け」止まりなのだが、この数年、契約を切られることもなく地道なヒットを飛ばしてきて、現在は中堅に届きそうなポジションといえる。

  そんなこのバンドの決定打となるであろう作品。これは間違いなくその「一手」となるはずだ。軽いショックを受けたよ‥‥「GRAPEVINEって、こんなにすげぇバンドだったっけ?」と。常々、このバンドは渋いけどカッコイイ、男受けするバンドでは‥‥なんてことを話したりしていたが、このアルバムがそれを全て証明してくれている。濃くて渋くて、それでいてカッコよくて、男の心を惹くバンド。海外にもいたよ、そんなバンドが‥‥OCEAN COLOUR SCENEっていうんだけどね。決して派手ではないけれど、誰もが認める庶民派バンドだけど、気づけばいつもそこにいる。両者に共通する点ではないだろうか?

  とにかく、今回のアルバムは各楽曲がこれまで以上に際立っている。シングルとして発表されていた上記以外の2曲("ふれていたい"、"Our Song")の完成度もさることながら、それ以外の新曲も激渋でありながら、男の色気を感じさせるファンキーな曲満載だ。アルバムのトップを飾る"Buster Bluster"、従来の彼らの魅力を存分に発揮する"lamb"、CMソングにもなっている"(All the young) Yellow"、既に昨年からライヴで披露されていた"B.D.S."等はその最もたる例だろう。勿論、先の"discord"もしかり。

  更にそれだけではない。およそ20代のバンドが出す音とは考えにくい、濃すぎるくらいに濃いヘヴィブルーズ"壁の星"、THE POLICE的レゲエからサビで一転するメロウな"フィギュア"、サイケデリックに響くブルーズ"アルカイック"、夏の終わりをイメージさせる"波音"、BEATLES的コーラスが印象的なロッカバラード"I found the girl"‥‥って全曲挙げてしまったが、とにかく捨て曲なし。この手のギターロックから離れつつあった自分だったが、これは購入後3週間経った今でも、ヘヴィローテーションだ。

  これだからロックって面白い。嗚呼、もうOASISも前みたいに売れてないし、他のバンドも消えてるのが多いし、ヘヴィロックは苦手でヒップホップはもってのほか、テクノに手を出す程勇気もないしなぁ‥‥と最近元気がない、そんなあなたにこそ手にしてもらいたい1枚。日本にだっていいバンドは沢山いる。切っ掛けがないだけで、出会えてない素敵なバンドがまだまだいる。ここまで書いてきたことにピンときた人、是非これからCD屋に出かけて、このアルバムを手にして欲しい。気に入るはずだ。そしたら旧譜も聴いてみるといい。「何故もっと早く出会わなかったんだろう」と思うはずだから。

  最後に‥‥男性諸君、もっとこのバンドを応援しようじゃないか? ボーカル・田中のルックス等からどうしても女性ファンが多い彼らではあるが、こいつらは間違いなく「男の為の」バンドなのだから。既に"風待ち"は俺の今年(29~30歳)の夏のテーマソングに決定。毎回聴く度に目をウルウルさせている。ちょっと汗ばむ夏の夜、このアルバムを聴きながら酒飲んでると、好きな人が恋しくてたまらなくなる。ギュッと胸が苦しくなる‥‥30男をも唸らせる、これはそんなアルバムだ。



▼GRAPEVINE『CIRCULATOR』
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投稿: 2001 08 22 01:55 午前 [2001年の作品, Grapevine] | 固定リンク

Mr.Children『優しい歌』(2001)

  ミスチル1年振りの新曲は、3分半程度のシンプルなロックナンバー。そしてそのカップリングは、過去のヒット曲のニューアレンジ。これだけを目にすれば「うわぁ、夏の野外ツアーのために無理矢理ひねり出したのか?」なんて疑いを持ってしまう。が、これはMR.CHILDRENというバンドの今後を考える上で、非常に重要なシングルとなるのではないだろうか?

  リリースの1ヶ月前にラジオで聴いた時、とてもシンプルで何のひねりもない曲だなぁ、そういう方向にまた向かってるのかなぁ、なんて思ったのだが、次の瞬間‥‥耳に飛び込んできた歌詞に耳を疑った。


後悔の歌 甘えていた 鏡の中の男に今 復讐を誓う


この歌詞が何を意味するか判るだろうか?

  彼らの過去の楽曲に、下記のような歌詞がある。


窓に反射する(うつる) 哀れな自分(おとこ)が
愛しくもある この頃では


そう、彼らを大ブレイクへと導いた名曲"innocent world"の一節だ。この曲は後に「僕は僕のままで/ゆずれぬ夢を抱えて/どこまでも歩き続けて行くよ/いいだろ?」と続く。「窓」と「鏡」という違いはあるものの、この歌詞には繋がりがあるように思えてならない。

  この"innocent world"という楽曲を発表した後のインタビューで「CMにフィットするような15秒、30秒に収まるサビを持った、キャッチーな曲を何曲もプールしている」と彼は語っていた。ヒットチャート上での成功を「国盗りゲーム」に例え、にこやかに受け答えしていた男がそこにはいた。しかしそれから数年後、彼は「その男」を恨むようになる。そして彼はもがき続け、苦悩の日々を送ることとなる。更に数年後、それらの「ネガ」も「ポジ」も全てありのまま受け入れられるように成長した彼がそこにはいた。

  勿論、その「彼」とは桜井のことであり、また「その男」も彼自身のことである。売れた後に彼が見たもの、それを表現したのが「深海」や「BOLERO」であったことは今更説明の必要もないだろう。そして1年の活動休止の後、彼らは再び前進することを選び、成長し、進化し、そして平穏な生活やポジティヴな心を再び手に入れた。それをまるごと表現したのが「Q」であった。

  気づけば来年でデビュー10周年。「Q」で人間としても、またミュージシャンとしてもひと回りもふた回りも大きく成長した4人(特に桜井)にとって、ここで一旦これまでの作品にケリをつける必要があった。ツアー「Q」では現在進行形の彼らの魅力を余すことなく表現した。だからこそ、今一度過去を精算する必要があったのだ、と。それが2枚同時発売のベスト盤であり、活動休止前、復活後、そして現在進行形のそれぞれのツアー映像を収めた作品群であり、そうした過去と現在を結ぶための新しいマテリアルとしてのこのシングルだったのだと、憶測ながらそう感じている。

  この"優しい歌"中のサビ3回で、桜井は「魂の歌」「後悔の歌」「優しい歌」と唄っている。「魂の歌」の後には「くすぶってた/照れ隠しの裏に忍ばせた/確信犯の声」と続く。何となく先の「15秒で収まる~」云々のエピソードを彷彿させるし、「後悔の歌」については先に書いた通り。

  しかし、最後のサビ前に桜井はこう唄う。


群衆の中に立って 空を見れば 大切な物に気付いて 狂おしくなる


そして「優しい歌/忘れていた/誰かの為に/小さな火をくべるよな/愛する喜びに/満ちあふれた歌」という風にこの歌は締められる。

  当然、これらの歌詞の抜粋だけで語るのが危険なのは承知している。しかし、俺にはどうしてもこの曲が何かの決意表明のように受け取れるのだ。最後の行を読むと、何となくアルバム「DISCOVERY」を経た後に発表された"口笛"を思い出させる。過去を清算する上で再確認した、以前の自分達の魅力。それは決して恨むべきものではなかった。彼は悟ったのではないだろうか? 「憎むべきは楽曲ではない、あの日の『自分』だったのだ」と‥‥

  そういうことを踏まえた上で改めてこの曲の歌詞を読むと、また違った風に受け取れる。勿論、こんなのいちファンの単なる深読みに過ぎない。けど、俺は思うのだ。その「愛する喜びに満ちあふれた歌」に対して、自分の第一子の名前をもじったタイトルを付けるということは、何を意味するのだろうか?と(桜井には別れた前夫人との間に「優歌」という名の娘がいる)。

  改めて自分達の魅力に気付いたからこそ、更に自由度が増す。昔の曲を、今の現在進行形の俺達が表現するとこうなる、という自信の表れがカップリング曲の"花"ニューアレンジだろう。ライヴで聴いたものよりもアコースティック色が強いことが驚きだ。アコギの音もよく聞こえるし、サックスも入っている。更に女性コーラス(小林武史夫人でMY LITTLE LOVERのボーカル、AKKOによるもの)もよいスパイスとなっている。オリジナルバージョンよりも多少ゴージャスになり、演奏にもパンチが増し、より一層歌の世界観に広がりが感じられる。ライヴで聴いた時は「オリジナルの方が好きかなぁ」と思ったものの、こうやってスタジオテイクで聴き比べると、いやはや、甲乙付けがたい。

  このレビューのタイトル通り、このシングルは「復讐と再生の記録」である。復讐することは決してネガな気持ちからではない。再生も単なる焼き直しではない。このシングルからは何か新しいことが始まろうとしている、そんな高揚感を感じ取ることができる。そしてこれら2つの収録曲は、その一瞬を捉えたポートレートのようなものなのだ。現在行われている野外ツアーでは、デビュー曲"君がいた夏"に始まり、ベスト盤に含まれていない初期の名曲と一緒に、「深海」からも4曲、4年半振りに披露されている。更にライヴ本編は"花"から始まり、"花"で終わり、アンコールの一番最後にこの"優しい歌"が登場する。惜しげもなく連発されるメガヒット曲群の影に隠れてしまいがちだが、この「事実」が今のミスチル、今の桜井の勢いを物語っているとは思えないだろうか?

  大丈夫だ。ROCK IN JAPAN FES.でも感じた、あのアンコール時の笑顔。そしてこのシングルから鳴らされる、祝福の鐘。夏のツアー終了後、桜井と田原は10/9の「レノン祭り@さいたまスーパーアリーナ」に挑むものの、バンドは間髪入れずにレコーディングに入るようだ。次の作品は10周年を祝う年にリリースされることになる。間違いなく、次のミスチルは更に面白いことになるだろう。「ATOMIC HEART」とも、「深海」とも、そして「Q」とも違う、何か新しい極みを表現してくれるはずだから。



▼Mr.Children『優しい歌』
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投稿: 2001 08 22 12:00 午前 [2001年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2001/08/20

INORAN『Fragment』(2001)

ご存じの通り、INORANは昨年「終幕」したバンドLUNA SEAのギタリストだった男だ。彼はバンドが活動休止中の1997年にも1枚、『想』というソロアルバムを発表している。そこでの彼はあくまで自分はプロデューサー/コンポーザー/ギタリストとして、インスト曲以外の歌モノは1曲を除いて全て女性ボーカリストに唄わせている。楽曲的にも如何にもLUNA SEAを彷彿とさせる"想"(この曲のみ、自身が唄っている)以外は、共同プロデューサーであるDJ KRUSHと共に作り上げた、昨今のクラブシーンに目を向けた実験的作風となっている。勿論、LUNA SEAのコンポーザーのひとりなのだから、どの曲にもそれらしき「匂い」を感じ取ることができたが、他のメンバー(SUGIZOやJといったコンポーザー)と比べれば、最もその色が薄かったと言っていいだろう。

そんな彼が、バンド「終幕」後、一体どういう「音」に向かっていくのかが、実はメンバー5人の中で一番興味深かった。RYUICHI(河村隆一)は完全に読めるし、実際一番リリースが早かった。SUGIZOはまだ音源をリリースしていないものの、大体想像がつく。Jは最も早くライヴ活動に移り、そして先日発表されたシングルも想像通りの作風だった。真矢は‥‥頑張れ、このまま(苦笑)。

ところが、「バンド一寡黙な男」がここにきて一気に作品を発表してきた。シングル「Won't leave my mind」を6月に発表し、そして早くも7月にはセカンドソロアルバムとなるこの『Fragment』を発表した。

まず、その作風に驚く。作詞・作曲・アレンジ・ギター・歌‥‥全て「INORAN」本人なのだ。そしてバンドサウンドに拘り、サポート陣には湊雅史(元DEAD END)と奈良敏博(元サンハウス。ご存じの方もいると思うが、彼は後期LUNA SEAにおいて、ベースサウンド・アドバイザーもしていた)という、豪華なリズム隊を迎えている(その他にもスクラッチで活躍するDJ HUSH、真矢とSUGIZOもゲスト参加している)。

これだけ豪華なメンツで作られたアルバム。これが‥‥もう、LUNA SEAなのだ。いや、語弊があるかもしれない。ドンズバLUNA SEAではない。アルバムタイトル通り、「Fragment(断片、欠落等の意)」を感じさせるLUNA SEAなのだ。その欠落しているモノが他の4人のカラーであり、逆にINORAN自身の断片を継ぎ合わせてできたのが、このアルバムと言っていいだろう。だから、正確にはLUNA SEAであってLUNA SEAではないのだ。そんなの当たり前の話だが。

しかし、楽曲のスタイルやメロディーを聴けば、誰もが安心する「あのメロディー」がここにはある。INORANがバンド時代に書いてきた楽曲は、一癖あるけど判りやすい曲が多かった。シングルとなった「gravity」がその最もたる例だと思うが、ここにはあの世界観がある。ラストアルバム『LUNACY』での彼の曲が好きな人なら、絶対に気に入る1枚だろう。

ボーカルは4年前と比べれば向上が見られ、まぁ決して上手い方ではないが、この音には合っているのではないだろうか? 雰囲気モノだね、この人の歌は。そこで好き嫌いが分かれるかもしれないけど。

リズム隊の主張も凄いもんがあるけど(特にドラムの湊、久し振りに彼のハードロック的プレイが聴けて大満足)、INORANのギタープレイも非常に味わい深い。彼のリズムプレイは、特にLUNA SEA時代後期には非常に複雑なリフやアルペジオ等で定評がある。ここでもサウンド・メイキングを含め、バンド時代以上に幅広い、味わい深いプレイを聴かせてくれている。ただ、面白いことに、このアルバムにはギターソロがどこにも見当たらないのだ。「一ギタリスト」としてではなく、「ひとりのミュージシャン」としてINORANはここに存在しているように見える。

「引きの美学」を追求した結果が、このアルバムなのだ。いや、これはまだ結果ではなく、ほんの第一歩なのかもしれない。「引き」もここまで徹底すれば、立派な攻めとなる。それを証明したのが、このアルバムだ。さぁ、SUGIZOやJがこのアルバムを聴いてどう評価するのか、そしてどんなアルバムを生み出すのかが非常に興味深い。全く、LUNA SEAっていう「集合体」は、バンドがなくなった後も目が離せないメンバーばかりである。



▼INORAN『Fragment』
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投稿: 2001 08 20 12:00 午前 [2001年の作品, INORAN, LUNA SEA] | 固定リンク

2001/08/13

SOUL FLOWER UNION『SCREWBALL COMEDY』(2001)

魂の歌をうたう 魂の番長に乾杯! ・・・石野卓球


サヴァイヴァーズ・バンケット、夏到来、NOと言える男!!
こんな曲待ってました。
別に僕がここまで吠えなくても大傑作でしょうが、最高のR&R!
SFUは、大傑作しか出しませんよ。
   ・・・岸田繁(くるり)


おぉ!ロックってのはこれだ!いちいちカラダに鳥肌がたつ種類の感動だ。
それはぼくがこのところ忘れていた感覚だ。
聴いた後に生活の風景が違って見えるマジック。
あぁ、とてつもなく濃厚な意志とイメージの爆撃が今夜も始まってしまった。
   ・・・曽我部恵一


夏の匂いがする
炎天下に揺れる夏草にドッと倒れ込んだ時の匂い(午後1時25分)
昼なお薄暗い森の中のクヌギの樹液の匂い(午後2時45分)
あるいは白っぽい街の雑踏のなかに一瞬
シンと立ち上る陽炎のゆらめき(午後3時5分)
ワクワクするような夏の朝にキッパリとみずみずしい棘のある朝顔

そんなアルバムだ
   ・・・真島昌利(ザ・ハイロウズ)


背中にリュックをしょって方方をバックパッキングしていると、
なぜかひょんな所で出喰わす顔見知りがいる。
言葉をかわさずとも、
 お互いのよごれたシャツや適度に焼けた顔を見ては何だかうれしくなる---。
僕にとってソウル・フラワーはそんな存在である。
なぜ旅の途中でばったり会うのか?
もしかすると僕らは同じものをさがし求めているのかもしれない。
   ・・・宮沢和史(THE BOOM)


‥‥つうかさ、もうこれらの言葉だけで十分過ぎないかい?(苦笑)俺がこれ以上何かを加えることによって、このアルバムへの賛辞を台無しにしてしまうのも何だよなぁ‥‥

  まぁ気分を取り直して。これ、マジで傑作。昨年、今年のフジロックへの参加、そしてそのライヴの素晴らしさ、各種イベントへの出演、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットとしての活動等、ここ1年程で彼らのこれまでの活動が広く認められたような気がする。

  モノノケに対してのメディアの消極的な声、前作「WINDS FAIRGROUND」や前々作「ELECTRO ASYL-BOP」に対する過小評価。ニューエスト・モデル/メスカリン・ドライヴ時代を絶賛したメディアはことごとく彼らを酷評し、「イロモノ」を見るような目でその動向を遠くから傍観していた。そして、メジャーレーベル(ソニー)との契約終了‥‥メディアだけではなくレコード会社からも見捨てられたバンド。そして前後するように、ボーカルの内海洋子とドラムの高木太郎の脱退‥‥バンドとして、初の大きな危機に直面したソウル・フラワー・ユニオンだったが、彼らが選んだ道は、ひたすらライヴを繰り返すことだった。その結果は、インディーズからリリースされたライヴアルバム「HIGH TIDE & MOONLIGHT BASH」に色濃く表れ、そしてその延長上にあるのがこの新作「SCREWBALL COMEDY」だ、という風に俺は捉えている。

  ライヴ盤のレビューでも書いた通り、これまでのSFUのアルバムからは「ライヴ感」というものが100%活かされていなかったように思う。スタジオワークとしての実験的作風の前2作はもとより、それ以前の2枚に関しても、サウンドとしては抜群なのだけど、一度彼らのライヴを観てしまうと、やはり完全には満足しきれなくなる。

  しかし、この新作にはライヴアルバムにもあった「ライヴ感」「疾走感」が十分すぎるくらい溢れている。楽曲のタイプにストレートなものが多いのも関係しているだろうが、個人的にはレコーディング前に何度もライヴで披露されて、その中から成長していった曲が多く収録されているから、この「生」「動」といった躍動感をこれまで以上に強く感じるのだろう。まぁ、インディー落ちした彼らの怒りや逆ギレ感といった「負のパワー」も少なからず影響しているだろう。まぁ結果として、それら負の力は正の力に変換されていったようだが‥‥正直、SFUに「負」なんて言葉、似合わないしな?

  楽曲がライヴを意識して作られたかのような、ストレートな作風ということもあって、これまでで最もニューエスト・モデル色が強いのも、今作の特徴だろう。ここまでワイルドにロックンロールする "サヴァイヴァーズ・バンケット" のような楽曲は、過去のSFUにはなかったし、アイリッシュテイストを盛り込んではいるものの、アッパーで攻撃的な "殺人狂ルーレット"、某都知事へ向けて唄われている "NOと言える男" といったある種単純明快なロックアンセムも、少なからずSFUに移行してからはなかっただろう。どことなくニューエスト時代の初期を思わせる作風に唸ってしまった(この内、後者2曲は先の野音でも先行披露されていたので、ずっと耳に残っていた)。

  また、バラードナンバーもこれまで以上に直球勝負なものが多く、特に‥‥既に名曲の仲間入りを果たしただろう "荒れ地にて" は、"満月の夕" に並んで涙腺を刺激するし、"夏到来" も今の彼らじゃなきゃ書けなかっただろう素直な曲だ。

  当然、これまでのような雑種的要素を盛り込んだ曲もある。"オーマガトキ"(「逢魔が時」の意)なんてタンゴからスタートして、最後はサンバだ。ただ、本当にそういう実験的楽曲というのはこれ1曲のみといった感じで(いや、普通の観点からすればかなり実験的作風の楽曲があるのだが、ことSFUに関してとなってしまえばごく普通という印象となってしまうから凄い)、それがアルバムの中で浮いているのかというと、全くそんなことはなく、他の楽曲群がアクの強いストレートなナンバーばかりなので、かえって印象が薄いような気も‥‥

  原点回帰とかいろいろ言われているが、本人達にはそういうつもりは全くなく、ライヴ栄えする曲を書いているうちに、そういう楽曲ばかりができあがった‥‥そういったところだろう。インディーで予算も少なかったので実験的要素が減った、という声もあるが、それだけでもないだろう。逆に過去2作で押し進めてきた要素は、個人的には前作で完成したと思っていたし、総決算&次への一手を提示する意味も込めてあのライヴ盤を出したのだろう、という風にも解釈している。現在の状況が作り出した、ミラクルな作品とも言えるだろうが、結局全てが巡り巡ってたどり着いて地点。それが「SCREWBALL COMEDY」なのだ。

  このアルバムは、これまでSFUが苦手だと思ってた方にこそ聴いて欲しい1枚だ。ベスト盤的要素の強いライヴ盤と共に合わせて聴けば、今のSFUの勢いを感じ取ることができるはずだ。マジでオススメの1枚。既に今年のベストアルバムに決定!



▼SOUL FLOWER UNION『SCREWBALL COMEDY』
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投稿: 2001 08 13 12:00 午前 [2001年の作品, Soul Flower Union] | 固定リンク

2001/07/07

MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』(2001)

何時からメタルと疎遠になったのだろう。何時メタルという音楽に見切りをつけたのだろう。ふと考えてみたが、ハッキリと覚えていない。何時何時から、とかその日を境に聴かなくなったというわけではなく、徐々にだったのだろう。が、その決定打となった1枚は今でもハッキリ覚えている。RAGE AGAINST THE MACHINE「EVIL EMPIRE」。これを聴いたことで、それまでの価値観が変わってしまったのだった。その頃からだろうか、それまで創刊号から毎月買っていた「BURRN!」が立ち読みで済ます月が出てきたり、CDラックにあった山程のメタル系CDを売り払ってしまったのは‥‥

今でもこの手のジャンルはよく聴くし、たまに思い出したかのように中古で買い戻しているアルバムもある。決して‥‥嫌いになったわけではないのだ。ただ‥‥『NO FUTURE』‥‥メタルを聴いていると、こういう言葉が頭を過ぎるのだ。メタル好きやメタル肯定派を否定するつもりは毛頭ない。じゃなければ「猿メタル」なんてコーナーを作ったりしないし、ロブ・ハルフォードやJUDAS PRIESTの新譜に期待したりもしないだろう。

ただ‥‥以前この「猿メタル」コーナーに対して「メタル復権の為に頑張って下さいね!」という励ましのメールをいただいたことがあった。正直、どう返答していいのか困ってしまい、結局返事を書かず終いにしてしまった(殆どのメールに対して、例えそれが誹謗中傷であれ、俺はキッチリと返事を書くのだが、このメールのみ返事を書くことができなかった)。だって‥‥俺はメタルがメインストリームに立ったことなんてないと今でも思っているし、今後もそんなことはないと確信している。15年程前、確かに全米を巻き込んだムーブメントがあったが、あれはバブルのようなものだったと、今では思っている。「ブリットポップ」と同じようなもんだと俺は捉えている。

当然、その恩恵を受けてデビューしたバンドの中には素晴らしいものも幾つかいたが、その殆どは‥‥判ってるだろ?

さて、そんな俺ではあるが、たまにメタルと全く関係ないジャンルのアルバムを衝動的に購入した時に、そこから「メタル臭」や影響を発見してしまうと、無条件でニヤリとしてしまう。別にメタルが好きだったとかではなく、そのルーツとなるバンドが同じだったというケースが殆どなのだろうけど、なかなか興味深いものがある。

さぁ、やっとここからが本題だ。何故イギリスのトリオバンド‥‥雑誌や メディアでは「UKロック期待の新星」等と呼ばれているこのMUSEの新作「ORIGIN OF SYMMETRY」レビューに際し、こういうことを書いたのか‥‥聴いた人、判るでしょ?(ニヤリ)

1曲目 "New Born" を聴いた時の俺の感想‥‥「うわっ、これってメタルじゃんか!しかも北欧辺りの!!」ヤられた。ぶっ飛んだよ、マジで。俺はそれまでMUSEに対してそれ程いい印象を持っていなかったし、ちょっとしか聴いたことのないファーストアルバムに対しても、それ程いいとは思わなかった。昨年のサマーソニックでのステージも、環境が悪かったせいもあってか(朝イチで、しかも炎天下の中)その良さに気づくことなく終わった。

そんな俺が何故、このアルバムを買ったのか‥‥今となっては「血迷った」としか言いようがないが、とにかく今年に入って「何の期待もせずに衝動的に買ったアルバム」の中ではダントツの1位だ。

前に‥‥REEFの「GETAWAY」レビューの時だったと思うが‥‥「逆猿メタル」という表現を使ったことがある。本来の「猿メタル」が「メタルに疎い・毛嫌いしてる人にも受け付けられる可能性がある、メタル寄り/メタルとカテゴライズされるアーティスト」をオススメする枠なのに対し、この「逆猿メタル」というのはその言葉通り‥‥「普段メタル以外の音楽と接する機会があまりない方々に対して、他ジャンルにもそれに匹敵する素晴らしい作品があるんだよ」という意味合いで語っている。REEFがMR.BIG辺りの土着的ルーツロック好きにアピールするように、このMUSEも‥‥ドラマチックな展開が盛りだくさんのメタルに匹敵する内容だと思っている。

前作を手掛けたジョン・レッキー(STONE ROSESやRADIOHEAD等を手掛けたことで有名だが、その昔はXTCといったバンドも手掛けている)だけでなく、TOOLやKING CRIMSON、ピーター・ガブリエルといったプログレ・チックなアーティストを手掛けるデヴィッド・ボトリルにもプロデュースを依頼したことによって、前作から一皮も二皮も剥けた‥‥いや、化けた内容となっている。「MUSEってこんなに凄かったっけ!?」アルバムを聴き終えた時、誰もがそう思うに違いない。

キーボード類を効果的に多様している点、トリオの利点を上手く機能させたバンドアンサンブル等から、カナダのRUSHを彷彿とさせるイメージもあるが、むしろあっちよりも攻撃的であり、同時に耽美性も十分すぎる程にある。ボーカル&ギターのマシュー・ベラミーの、ファルセットを多用した歌唱法から前作では「トム・ヨークのフォロワー」、あるいは「RADIOHEADフォロワー」と呼ばれることが多かった(実際俺も最初はそう思ってたし)が、ここでは既にオリジナルとして、独特な存在感を醸し出している。ファルセットと同様に、独特なブレス(息継ぎ)も印象的だ(これがダメって人もいるだろうけど)。むしろそれらの要素が、こういう耽美性を更に高めているように感じる。メタルだ、プログレだ、という割には「弱さ」「儚さ」が強すぎるのだ。もしこの演奏に対してボーカルがジェームズ・ラブリエ(DREAM THEATERのVo)やジェフ・テイト(QUEENSRYCHEのVo)だったら、正しく正統派メタルとして機能するはずだ。

1曲1曲の作りがしっかり作り込まれているにもかからず、非常に自由度が高いアンサンブル。この辺に'70年代辺りのブリティッシュ・ロックとの共通点を見出せるような気がするのだが、如何だろうか? その観点からすれば、タイプは全く違うが初期のマニックスやMANSUN辺りとも共通するものを持っているバンドだと、今回このアルバムを聴いて実感した。

とにかく、起承転結がしっかりしてるのだ。1曲目 "New Born" や3曲目 "Spece Dementia"、6曲目 "Citizen Erazed" 辺りは、その代表的楽曲だろう。同時に、シーケンサーを多用したパワーソング "Bliss" や、ストレートな "Plug In Baby"、オペラチックな "Micro Cuts" のような曲もある。アルバムの流れとしても非常に振り幅の大きい構成となっている前半と、一聴して地味な印象を受けるものの非常に味わい深い後半というように、飽きさせない作りとなっている。

以前、マシューのギターワークについて「KING CRIMSONのロバート・フリップやRATMのトム・モレロからの影響が大きいのでは?」と書いたことある。その時はリズム隊について特に触れなかったが、このセカンドではそのリズム隊の存在感が非常に大きい。特にベース。トリオってこともあって、CREAM時代のジャック・ブルースとイメージが重なった。ギターよりもベースがメインリフを刻む曲が多く見られるが、それもこのバンドの特徴だろう。ギター2人ではなく、敢えてトリオという形態を取ったのも、実はこの辺からの影響が強いのかもしれない(って実は友達がこの3人だけだったとか!?)。こうなると、当然ライヴが観たくなってくる。当初はフジロックへの出演が決まっていたが、アルバムリリースの遅れやプロモーション計画の変更で流れてしまった。単独来日は年末辺りだろうか? 久し振りに「本気で観たい」と思わせてくれたアルバムだ。このアルバムの曲をどうステージで再現するのか? 或いはぶち壊すのか? 非常に興味深い。

最近「ギターロックがつまらない」「UKロックが面白くない」と言い続けてきた俺だが、これには本当に「やられた!」感が大きい。ある意味、今年前半にリリースされたイギリスのアーティストの作品の中ではダントツかもしれない。大穴、マジで。俺の中ではWEEZERよりもASHよりも面白かった。これはマジでいいアルバムだ。メタルファンもUKロックファンもプログレファンもそうでない人も‥‥とにかく聴いて欲しい1枚である。



▼MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』
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投稿: 2001 07 07 02:31 午前 [2001年の作品, Muse] | 固定リンク

2001/07/03

遠藤ミチロウ『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。』(2001)

  何も毎月毎月の「オススメ」モノはアルバムやシングルといった「音源」に限ったコーナーではない。「アルバムに拘らず、楽曲だったりビデオだったりライヴだったり本だったり‥‥「音楽」に関係するものなら何でも気軽に紹介していきたい」と目次で語ってる通り、今回はこのコーナーというよりも、「とみ宮」として初めて書籍を取り上げる。

  とはいうものの、これは純粋な「書籍」というわけではなく、「本+CD」という形の「CD BOOK」と呼ばれる形態の作品なのだ。これまでも書籍の内容に沿ったCDや、内容を具体化したCDが付属した作品はあったが、これはちょっとそれらとは違うかもしれない。何せ、まず肝心の書籍が、あのパンクロックの雄、遠藤ミチロウの全歌詞集‥‥これまでスターリン時代から現在までに発表してきた楽曲の全歌詞を収めたものであること。そしてCDの方は、その全作品の中からスターリン時代に限定して、現在のスタイル(アコースティックギターでの弾き語り)でセルフカバーした作品集だということ。そのふたつをひとつにまとめたものが、この「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。」なのである(ご存じの方も多いと思うが、このタイトルも彼の代表曲名から取られている)。

  「遠藤ミチロウ全歌詞集」というタイトルが付いているものの、実は完全版というわけではない、残念ながら。メジャー後の歌詞に関しては問題ないのだが、やはりというか‥‥インディーズ時代の「TRASH*」収録の何曲かの歌詞が不完全だったり("サル"の「天皇陛下万歳!」以降の「~がセンズリ覚えた」や"アーティスト"の聞き取り難い箇所がそのまま「‥‥」表記となっている)、その後メジャー盤で"ロマンチスト"として発表されることとなる"主義者(イスト)"に関しては完全に無視されている(歌詞が殆ど変わらないからだろうか)。けど不思議なことに、全く同じ歌詞の"メシ食わせろ"と"ワルシャワの幻想"は両方ちゃんと収録されていたりする。また"アーティスト"に関しては、ミチロウ自身も既に覚えてないという話もあるし、特にごく初期の曲に関してはそういうものが多いようだ。

  こうやって歌詞を読んでみると、所謂「パンク」のイメージに囚われない、非常にシュールで尚かつ知的なイメージを受ける。昨今の「パンク」と呼ばれるジャンルの若手のそれと比べるとよく判ると思うが、全くの別物なのだ。また、言葉遊びのレベルもかなり高い。初期の作品は自主制作ということもあって、言葉選びに何の制限もないのでかなりきわどい表現が多用されているが(事実、メジャー盤で再録音した際には規制がかかり、似た音の言葉を選び直している)、その再選択された言葉でさえも何かセンスのようなものを感じる。パンクの人というよりは元々はフォークの人だったミチロウだからこそ、成せた技なのかもしれない。

  さて、おまけの方についても何か語っておこう。人によってはこっちがメインになるかもしれない、おまけCDの「トリビュート・スターリン・バイ・ミチロウ」。全部で9曲、約40分近くものボリュームだ。単品で買ったとしても2000円以上はするだろうから、これはお得だ。
  気になる収録曲だが‥‥

     1.玉ネギ畑
     2.マイザー
     3.おまえの犬になる
     4.Hello! I love You
     5.NO FUN
     6.溺愛
     7.天ぷら
     8.先天性労働者
     9.仰げば尊し

全てスターリン時代に発表された楽曲(カバー曲含む)を、現在のミチロウのスタイル‥‥弾き語り形式でリアレンジしたものだ。曲名を見ても判ると思うが、4曲目はDOORS、5曲目はイギー・ポップ率いるSTOOGES(というよりは、SEX PISTOLSのカバーバージョンで有名)の、それぞれミチロウオリジナルの日本語詞を乗せたカバー。9曲目は卒業式でお馴染みの、あの曲。

  比較的原曲に近いイメージのものもあれば、新しい楽曲として生まれ変わっているものもある。特にオススメは3曲目"おまえの犬になる"と8曲目"先天性労働者"だろう。前者はミチロウの絶叫に近い叫び、そして声にならない声によるスクリームに鳥肌が立つ。もはやパンクロッカーとは呼べないのかもしれないが、俺はこれこそが「真のパンク」なのではないだろうか?と思えてきた。それくらいもの凄い歌なのだ。そして後者は唯一パーカッションが入ったアレンジ。誰が叩いているのかは不明だが、最近のアルバム等では頭脳警察のトシが叩く機会もあるそうなので、もしかしたらもしかして、かもしれない(まぁ違うとは思うが)。この曲も決して歌と呼べる代物ではないのだが、いろんな意味で衝撃を受けた。ある種、頭脳警察における"世界革命戦争宣言"のような存在なのかもしれない。この2曲の緊張感がハンパじゃなく凄い。目元にナイフを突きつけられたかのような凄みと緊張感を感じる。スタイルは20年前と全く違うものの、根底にあるものは何も変わってない、そんな印象を受けた。

  さて、こうやって初めてCDやビデオ以外の音楽作品(歌詞集)を紹介したわけだが、歌詞よりもそのパフォーマンスの方に注目されることの多かったスターリン時代のミチロウも、こうやって改めて冷静に歌詞を読んでみて、高校生の頃には感じなかったものを見出したような気がする。さて、久し振りに「STOP JAP」でも引っ張り出して聴き込むかぁ‥‥



▼遠藤ミチロウ『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。』
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投稿: 2001 07 03 12:00 午前 [2001年の作品, STALIN, THE, 遠藤ミチロウ] | 固定リンク

2001/06/19

BACKYARD BABIES『MAKING ENEMIES IS GOOD』(2001)

BACKYARD BABIES(以下BYBと略)通算3枚目、まる3年振りと「3ずくめ」な ニューアルバム。プロデュースは前作同様、「爆走ロケンロー界にこの人あり」なプロデューサー、トーマス・スコグスバーグ(初期THE HELLACOPTERSのプロデュースやSUPER$HiT666のベース&プロデュースで有名)。今回からレーベルを「BMG」に移したことによって、よりワールドワイドな展開を図ろうと考えているらしく、レコーディングもストックホルムの他にアメリカ(あのYOSHIKI所有のスタジオだとか)やイギリス等で行われた。更にミックスには有名どころのランディ・ストーブ(ボブ・ロックの愛弟子でMETALLICAやBON JOVIのミックスを手掛ける)とジョー・バレッシを起用。プロモーションにもかなり力を入れているようで、既に母国スウェーデンでは初登場ナンバー1を記録し、これからイギリスやアメリカでも売り出そうと気合い十分。

さて、このアルバムを最初聴き始めた時‥‥「あちゃ~」と正直思った。BYBの良さが十分活かされていないと思ったのだ。BYBといえば、あの活きのいい爆走ぶりと湿り気のある哀愁のメロディー。それがいきなり1曲目「I Love To Roll」‥‥ミディアムテンポの、カラッとした音作り。めちゃくちゃアメリカンな空気感なのだ。しかも続く2曲目「Payback」も同じテンポ。聴く前から「今回はどんな暴れっぷりなんだろう?」と期待してたので、肩すかしを食らう。3曲目「Brand New Hate」になってようやく「らしさ」を感じられるようになるのだが、これってジンジャー(THE WiLDHEARTS)が作曲に絡んでるんだ? 聴きようによってはWiLDHEARTSっぽいなぁ‥‥その後もアルバムはミディアム中心に進んでいく。「うわぁ~かったるいかも」なんて思ってしまったが、いざ15曲(本編13曲、ボーナストラック2曲)を聴き終えた時はなんと‥‥充実感でいっぱいだったりした。「ああ、これでいいのか」って。

実は俺、BYBって好きだけど‥‥これまでは、そこまでのめり込む程ではなかった。前作『TOTAL 13』はいいアルバムだと思うし、実際よくできた曲が多くて今でも聴くことが多いのだけど‥‥アルバムとして考えると、ちょっと辛いなぁって思うことが多々あって。本来の持ち味である「疾走感のある爆走ロケンロー」は好きなんだけど、ずっと攻めてばっかりというイメージが強くて、ボーナストラックを除く13曲を聴き終えた時点で、止めてしまうことも多かった。「何だよこいつ、結局BYBの良さを何も判ってないんじゃないの!?」と思われるかもしれない。いや、実際そうかもしれない。そこまで爆走ロケンローに強い思い入れがあるわけでもないし(そういえば俺、初期HELLACOPTERSに対しても、多くの人が特徴として挙げる点が好きではなかったしなぁ)、単純に曲がよくてカッコイイから好きなわけで。そういう意味では昨今のメロコアとかと同じ扱いかもしれないな、俺にとって。

そういう点からすると、実は今回のアルバムって「俺好み」な作りだったんだわ。最初は先入観があったから面食らったけど、トータルとして今までの彼らのアルバムで一番楽しめるものとなった。

曲に関しては、文句つけようがないだろう。ミディアム~スロウが大半を占めるが、やはりそこはBYB。重いし、それなりに殺傷力がある(他の爆走バンドとはタイプが違うが)。メロディーは文句なしにポップだし、ドレゲンのギターも相変わらずいい味出してる。特に今作はニッケ・ボルグのボーカルが非常にいい感じだ。掠れ具合やブレスがマイケル・モンローっぽくて、俺的には大絶賛。しかも今回、特に実感したのは‥‥楽曲がかなりHANOI ROCKS的だということ。このアルバムからボーカルだけ消してマイケルに歌入れ直させたら、完全にマイケルのソロとして成立すると思う(けどハノイにはならないと思う、残念ながら)。特に12曲目「Painkiller」や4曲目「Colours」みたいなバラードタイプの曲、ぴったりだと思うのだが。

音の質感は今までで一番ビッグプロダクション‥‥というか、メジャーのそれなのだ、今回。ミックスもかなりアメリカンなカラッとした印象で、それが湿り気のあるメロディーに相反して浮いてるのかというと、意外とそうでもない。メロコアのそれ、とまでは言わないが、意外と共通するものはあると思う。そういえば、初回特典として封入されていたイラストステッカーだが、これ恐らくOFFSPRINGなんかのジャケットを描いてる人の作品だと思うのだが‥‥そうか、きっとそういう売り出し方をしたいんだな?

俺は「売れよう」「売れたい」と思うことはごく自然なことだと思うので、否定しない。まぁ前作までのような音で大成功してくれたら、それはそれで痛快だとは思うが‥‥これは売れる音だと思うし、売れなきゃいけないと思う。いや、レコード会社は売らなきゃいけないと思うよ、マジで。そこまでの思いを込めて作られたアルバムだと思うし。だってレコーディングに1年費やしてるんだからさ。

そうそう、このアルバムの話題のひとつとして挙げられるのが、SUPER$HIT666でお馴染みの「Star War Jr」のカヴァー。BYBバージョンはシンプルに「Star War」ってタイトルに変わってるが、アレンジなどはそのまんま。ボーカルもこの曲のみドレゲンだし。ただ、やっぱりS$666バージョンを先に聴いてることと、あの爆走ぶりが素晴らしすぎたので、どうもBYBバージョンの方は「ごく普通の仕上がり」という印象を受ける。とはいっても、これも高水準なんだけど。

さて、タイトルにも書いたように‥‥ドレゲンはこのアルバムのことを「21世紀の『APPETITE FOR DESTRUCTION』だ!」は言ってるらしい。『APPETITE FOR DESTRUCTION』とはご存じの通り、GUNS N'ROSESが1987年にリリースしたデビューアルバムのこと。確かドレゲンは前作の時も同様の発言をしていたような気がするが‥‥このアルバムが内容的に『APPETITE FOR DESTRUCTION』に匹敵するとは正直思えないが(それだけ思い入れも強いアルバムだし、時代背景も違うからね、比べようがないってのが正直な気持ちなんだけど)、それに匹敵するだけのセールスをアメリカで記録できる‥‥その可能性だけは十分に秘めた1枚だと思う。まぁロックが売れる時代ではないので、それ相当の覚悟が必要だと思うが(徹底したプロモーションにハードなツアー)。これだけいいアルバムを作ったんだから、何とかして結果を出してもらいたい。折角「天下無敵!」なんて邦題つけてもらったんだからさぁ?

最後に‥‥このアルバムって、やっぱり前作までの疾走パターンの楽曲が好きだって人にはイマイチって映るのかな? 俺はね、この『MAKING ENEMIES IS GOOD』ってそれまでの2枚のアルバムにはないものがあると思う。それこそがこの新作の魅力だと信じている。

「ROCK」はあっても「ROLL」があるのか?


全てはそこだと確信している。



▼BACKYARD BABIES『MAKING ENEMIES IS GOOD』
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投稿: 2001 06 19 12:00 午前 [2001年の作品, Backyard Babies] | 固定リンク

2001/05/28

WEEZER『WEEZER (a/k/a “Green Album”)』(2001)

俺はこのアルバムのレビューに際して、もっと辛口で、昨今のギターロックファンやUKロックファンが見たらむかつくようなものを書くつもりだった。でもそれは、何もWEEZERを悪くいうものではなくて、そういうファンに対しての不信感だったり、警告のつもりで書くはずだった。そう、「だった」のだが‥‥

掲示板にもそのいきさつを書いたが、ここでも改めて簡単に書いておく。前作がそれ程世界的ヒットには繋がらず、結局このアルバムまで4年半もの間が空いているにも関わらず、彼らに対する人気は衰えを知らず、昨年のサマーソニックでのあの熱狂振りには、大ファンとは言えないこの俺までもが涙しそうな程に感動したものだ。ところが、その時点で披露された新曲は特に耳に残るような楽曲ではなく、アルバムもまだ完成には程遠かったそうだ。そこへ今年4月の来日公演。即日ソールドアウトに加え、追加公演まで。あの白熱振り‥‥実は俺、ここでちょっと引いてしまっていた。決してファンをけなすわけではないのだが‥‥「いつからWEEZERって、こんなに日本で大人気になったんだろう?」って。勿論、それに見合った作品を過去に出してきたし、昨年のサマーソニックも大きいだろう。けど、これは4年半も作品をリリースしていないバンドのものではないだろう‥‥と。素直にそう思ったのだ。

結局アルバムも遅れに遅れ、来日公演には間に合わなかった。来日から半月後、いよいよ通算3作目となるアルバムが日本先行で発表された。そしてそれがまたバカ売れしているそうだ。オリコンチャートで初登場15位、翌週も14位と大健闘している。しかも洋楽勢では同時期に発売されたMEGADETHやR.E.Mといった、ここ日本でも人気が安定している大御所を押さえての結果だ。洋楽ではWEEZERより上にランキングされていたのはJANET JACKSONとDESTINY'S CHILDだけ。つまり、ロックでは最も売れているアーティストとなる‥‥うわぁ‥‥これってヤバいんじゃ‥‥そう直感した。

ここで感じた危機感、それは「このままじゃ、WEEZERってMR.BIGになっちゃうんじゃないの?」っていう危機感。つまり、彼らの人気って今でも他の国で、こんなにあるの?っていう疑問が生じたのだ。ご存じの通り、MR.BIGはアメリカでも単発的に成功を収めたものの、日本ではBON JOVIやAEROSMITHに次ぐような人気を持っている(た?)。現在ではアルバムも、本国では日本よりも半年~1年も遅れてリリースされるくらい、レコード会社にとってもシーンにとってもそういうポジションとなってしまっている。メンバーもここ日本では芸能人並の人気を得ていて、特に元メンバーのポール・ギルバートは半帰化してしまっている程だ。

別にWEEZERが「LOVE LOVE あいしてる」に出演してKinKi Kidsのバックを務めるとは思わないし、「笑っていいとも」で鼻に豆詰め込んで飛ばすとも思えない。けど‥‥ちょっと怖かったのだ。だって、アメリカやヨーロッパでの現状がいまいち伝わってこなかったし。小規模ながらツアーをすればお客は入っていたようだが、それがどんなものだか判らなかったし、一時はレコード会社の吸収合併の問題で、契約すら危うい状態だったのだから。2年前、掲示板の方でも「WEEZERの新譜はどうなった?」とか「レコード契約がなくなった」と騒がれていたことを、今ふと思い出した。そういうこともあったから、余計かもしれない。

ところが、ところがだ。先日発表されたアメリカ・Billboard誌の最新アルバムチャートによると‥‥1位はTOOLだったものの、このWEEZERの最新作は堂々の第4位に初登場しているのだ‥‥!!! これは過去最高の順位だそうで、セールスもTOOLの約50万枚には届かないものの、既に22万枚近くの売り上げを記録している。オルタナ・ロック・チャートではシングルの"Hash Pipe"は現在2位を記録しているし、ラジオチャートでも軒並み上位を占めているらしい‥‥

現在ヨーロッパでの結果はまだ手元に入ってないが、恐らくイギリスを始め他のヨーロッパ諸国でもそれなりに成功を収めるだろう。正直、こんなに人気を維持していた、あるいは更に人気をつけていたとは思いもしなかった。だってロックがこれだけ売れない、売れないと世界中から聞こえてくるのに、堂々の4位。R.E.Mよりも、MEGADETHよりも売れているのだ。この結果を知って、正直ホッとした気持ちと、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。ファンの皆様、大変失礼しました。


で、ここからの本格的なレビュー。

とはいうものの、この内容ってそこまで売れるような内容だろうか?というのも、正直な気持ち。過去2作と比べればひねくれ具合が後退し、ストレートで聴きやすい曲が大半を占める。前作のような狂気さも感じられない。前進しようとする、ひたむきさすら感じられる。これはこれで今という時代にフィットしているし、だから両手で大歓迎されるんだろうと思う。けど、メロディの質だけ取ると‥‥これは俺の感じ方だが‥‥明らかに過去2作より劣ると思う。けど、それはレベルの高い次元での話なので、他のパワーポップ勢と比べれば雲泥の差なのだが。

最初アルバムを通して聴いた時、日本でのシングル曲"Photograph"とアメリカでのシングル曲"Hash Pipe"は既に何度も耳にしていたので別として‥‥他の曲に関して、あまり耳に残るようなタイプの楽曲がないように思えた。1曲目"Don't Let Go"はCHEAP TRICKばりのパワーとストレートさに関心したが、後半にいくに従って‥‥1曲1曲をピックアップすればいい曲だと思うのだが、どうも印象が薄い気がする。俺が最近、この手の音に興味を示さなくなっていることも関係するのかもしれないが‥‥

また、アルバムトータルで考えた場合、ボーナストラック2曲があるとないとでは、印象が大きく変わることも付け加えておく。どうも10曲目の"O Girlfriend"(なんてネーミングは、ちょっとCHEAP TRICKぽくて好きだが)で終わると、印象が薄くなるんだな‥‥ところが、ボーナストラックの2曲("The Christmas Song"と"I Do")。これが素晴らしい出来なんだわ。特に2分少々で終わる最終曲"I Do"。確かに曲としてはどうってことないのかもしれないが、これがアルバムにいいスパイスを与えている。そしてこの曲を聴き終えた後に、またアルバムをリピートしたくなるんだな、これが。そうえいば、この曲が先の来日公演での1曲目だったと聞いたが、ラストをしんみりと閉めるというよりは、さしずめ「嵐の前の静けさ」といった感じで、再びアルバムトップへと繋ぐ役割を果たしているように思う。うん、これがボーナストラック(海外ではシングルのカップリングか?)とは勿体ない。何よりも、このボーナストラックを含めた12曲で34分にも満たないという(前作よりも短い!)のは、どうなんだろう‥‥勿論、これなら毎日聴ける長さなので、ありがたいのだが‥‥4年半待たされて、これだけ?という物足りなさがあるのも事実。このアルバムの為にアルバム2枚分の楽曲をレコーディングした、とリバースは最近のインタビューで言っていたが、これならそれら全てを詰め込んでも60分に満たないんじゃないの?と思えてしまう。是非それらを全て、今後のシングルへのカップリングとして発表して欲しいものだ‥‥いや、どうせなら年内にもう1枚アルバム出せってば!

とまぁ、最終的には辛口なレビューになってしまったが、結局は俺もそれだけ期待していたからなんだろう。けど、決してその期待を裏切られたわけじゃない。素晴らしい内容なのだけど‥‥もっと出来る子(笑)だと思ってるから、俺はこれだけじゃ満足できないのよ。ホント、うちの子はもっと出来る子なんざますのよ‥‥ってところか。前向きモードに入ってるのは作品からも伺えるから、是非このペースで頑張ってくれ、リバースよっ!



▼WEEZER『WEEZER (a/k/a “Green Album”)』
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投稿: 2001 05 28 05:56 午後 [2001年の作品, Weezer] | 固定リンク

BON JOVI『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』(2001)

BON JOVI初のライヴアルバム。一応、売り文句はこうらしいです。で、レコード会社のサイトにはこう書かれています‥‥

今までに世界中のファンから絶大な要望がありながら、実現しなかったボン・ジョヴィのフル・ライヴ・アルバムがついに初リリース!もちろん、史上初めての公式のフル・ライヴ・アルバム!
ライヴ曲目14曲全て、CDとしては、過去の作品のエクストラとして発表されてきたものともダブらない初発表音源!

これ、大嘘です! 騙されちゃいけません。はっきり言って、殆どがCDシングルのカップリングに入っていた音源をリミックスしたもので、それ以外はビデオからだったり、テレビ放送された音源だったり‥‥ぶっちゃけた話、1曲目の「It's My Life」と12曲目「Just Older」(共に2000年11月@トロント)、5曲目「Someday I'll Be Saturday Night」と13曲目「Something For The Pain」(共に1995年11月@メルボルン)を除く10曲は、全て何らかの形で発表されてきたものです(と記憶してますが、間違っていたらご指摘お願いします)。

確かにミックスは若干違います。例えばギターの音をデカくしてたり、WOWOWで生中継された7曲目「Something To Believe In」(1996年5月@横浜スタジアム)なんかも改めてリミックスされてるはずです。また、1985年4月の来日公演の音源2曲分(「Runaway」「In And Out Of Love」)は以前、セルビデオとして発売されていた音源を元にしているし、それ以外は『THESE DAYS』や『CRUSH』からのシングルのカップリングに収録されていた音源ばかりです。

正直、こういう安易な発想で「BON JOVI初のライヴアルバム」を作られちゃあ、ファンとしては泣くに泣けません。国内盤が出なくてよかったとさえ思ってますよ‥‥

バンドがライヴアルバムを出すのには、幾つか理由があると思いますが、内容的には大体2つに大別できると思うんですよ。

①最も脂が乗り切った時期の、1本のライヴを丸ごと収めた実況中継盤
 (KISS『ALIVE!』、CHEAP TRICK『AT BUDOKAN』等がその代表)

②それまで録音されてきた数え切れないライヴの中から、より選られたテイクを集めたベスト盤的内容
 (AEROSMITH『LIVE BOOTLEG』、GUNS N'ROSES『LIVE ERA』等)

今回のBON JOVIの場合は、明らかに②。けど、エアロやガンズが実際の擬似ライヴのように曲を並べていたのに対し、このアルバムは(a)選曲的にダメ(ロックに拘りすぎた結果、持ち味のひとつであるバラードが1曲もなし)、(b)曲順も実際のライヴとかけ離れた流れの悪いもの、(c)しかも1曲1曲ブツ切りで(フェイドアウトしていて)ライヴ感ゼロに等しい、と「何故にこんな作りにしたのさ!?」という疑問しか残らない構成となっているのです。

いや、確かにこうやってまとまった形で彼らのライヴ音源を聴けるというのは、ファンのみならず興味があると思うし、嬉しいはずなんですよ。けど‥‥俺は嬉しくない。1600円払って買ってしまったけど、はっきり言ってこれからBON JOVIのアルバムに手を出そうとする初心者にはお勧めしません。マニアだったらここに入ってる殆どの音源を、既にシングル等で持っているはずなので、気が向いたら買う。これでいいと思います。

それにしても、2曲目の「Livin' On A Prayer」。昨年末に発売されたチューリッヒでのライヴビデオ&DVDと同じ音源なのだけど‥‥なんかエンディングのサビの繰り返し部分、変じゃねぇか? これ、エディットされてるわけ? 曲ぶち壊しじゃねぇか!? そうえいばこの日のライヴってWOWOWでも放送されたけど、そっちもちょっと変だったしな、エンディング部分。上手く録音出来てなくて苦肉の策としてのエディットだったとしたら‥‥もっと調子のいい日の音源、あったんじゃないの!? 何も2000年に拘らなくてもさぁ‥‥はぁ~‥‥。

この数ヶ月の間に、日本では『TOKYO ROAD』というベスト盤、海外ではこのライヴ盤がリリースされたわけですが、正直両方とも中途半端。あの完璧主義者のジョン・ボン・ジョヴィらしからぬ仕事振りですな。本気でやる気あんの?(怒) まさかBON JOVIのレビューで、こんなに批判的なものを書く日がこようとは思ってもみなかった‥‥ガッカリです。もし今後、日本盤が出る予定ができたら、悪い事はいいません。「特別仕様で2枚組、日本独自選曲(ロックに偏らず、ちゃんとバラードも入れること!)、曲順構成は実際のライヴに沿った流れ、フェイドアウトは一切なし」な作品にしてください。じゃなきゃファンは買いませんよ。不買運動起こされますよ!? 既発テイク使っても構わないんで、ちゃんとした「ライヴ盤」にしてくださいね!!!(怒)

けど、いいところもひとつくらい書いておかなきゃって思って。改めて追記しております(苦笑)。


で、このライヴ盤最大の売りは、ズバリ‥‥

・リッチーのギター&コーラス

・ティコのドラム

‥‥以上っ!



▼BON JOVI『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』
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投稿: 2001 05 28 12:01 午前 [2001年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

BON JOVI『TOKYO ROAD』(2001)

日本オンリーでリリースされた、通算2枚目となるベストアルバム。しかし今回は前のベスト『CROSS ROAD』のようなシングルコレクションという趣旨と異なり、サブタイトルにあるとおり(「BEST OF BON JOVI ROCK TRACKS」)、ロックに拘った選曲となっている。選出したのは日本のレコード会社らしく、その選曲を後でジョン達が確認してOKを出したそうだ。

既発曲が殆どの中、唯一の未発表曲(バージョン)となるのは、『CRUSH』収録の「One Wild Night」の2001年リミックスで、これがこのアルバムの「売り」となるわけだ。

まず、この新しいリミックス。新たにルーク・エヴィン(『CRUSH』のプロデューサー)、リッチーとデズモンド・チャイルドがプロデュースに携わっていて(デズモンドはこの曲の共作者でもある)、「ロック」に拘っているためか、ギターが前面に出されていて、新たにダビングもされているようだ。曲の構成も若干変わっていて(「Na,Na,Nana~」がギターソロ後にしか登場しない)、更にブラスも加わっていて、より「黒」っぽさが色濃くなった。個人的にはオリジナルバージョンよりも、こっちの方が普遍的な感じがして好きだ。ちなみにこの曲が『CRUSH』からの第4弾シングルとなっていて、5月に日本以外で発売された初 のライヴ盤『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』にも収録されている。

さて、その他のベスト選曲についてだが、前のベストと重複するのは、日本オンリーの「Tokyo Road」を含めて6曲。各アルバムからの選出は以下の通り。

・1st‥‥‥‥1曲(Runaway)
・2nd‥‥‥‥1曲(Tokyo Road)
・3rd‥‥‥‥3曲(Livin' On~, You Give Love~, Wild In The Streets
・4th‥‥‥‥3曲(Bad Medicine, Born To Be My Baby, Blood On Blood
・5th‥‥‥‥2曲(Keep The Faith, I'll Sleep When I'm Dead
・6th‥‥‥‥2曲(Hey God, Something For The Pain
・7th‥‥‥‥4曲(It's My Live, Next 100 Years, Just Older, One Wild Night

ちなみに太字が今回初選出の曲。

新作『CRUSH』からの4曲はまぁよしとして‥‥問題は、『KEEP THE FAITH』と『THESE DAYS』だろう。ライヴでの定番2曲を選んだ『KEEP~』だが、これじゃあ平凡すぎないか? BON JOVIのダイナミックさは伝わるだろうけど、もっとメロディアスでロックしている曲は他にもあるんじゃないか? 例えば「I Believe」だったり、もっと言えば‥‥何故「In These Arms」が収録されていない!? 日本人が選曲した割には、ちょっと疑問。

そしてもっと問題なのは、『THESE DAYS』だろう。名曲中の名曲、「These Days」を選曲しないとは、どういうことなんだ!?(怒) 確かにロックロックしてないが、あの哀愁の旋律をこのまま埋もれさせてしまうつもりなのか? 最近BON JOVI自体がこのアルバムからの曲をライヴで演奏しなくなっている。たまに1~2曲披露されてはいるが(例えばこのベストにも収録されている2曲や、「Damned」といった曲)、何かないがしろにされているような気がする。勿体ないよ、本当に。


つうか、俺に選曲させろよ、マジで!(かなり怒)


ただ、ちょっとはいい面もある。例えば前のベストからは落とされてしまった「Born To Be My Baby」や、アルバムトラックである「Blood On Blood」のようなライヴ定番曲が初めて選出された点。アルバムを1枚も持っていないファンが彼らのロックな面を知るためにはちょっと役不足な気もしないではないが‥‥つうか、もっとシングルに拘らない選曲にしてもよかったんじゃないの?

結局は来日の為のプロモーション素材として発売されたものなんでしょう。ライヴCDをカップリングした「メガ・エディション」は昨年の来日後に出してしまったから、苦肉の策ともいえるけど。まぁバンドがよくこれを許可したなぁという点では、確かに快挙かもしれない。何せ日本オンリーだから(まぁオンリーじゃなくてもいいんだけど)。

そうそう、初回50万枚には、ライヴシングルCDがおまけでついていて、これが結構いいかもしれない。1985年4月の来日公演の音源「Tokyo Road」や昨年のツアーから「Next 100 Years」、そしてジョンとリッチーのソロツアーから各1曲ずつの計4曲、約20分の代物。まだ新品でも手に入るみたいだから(2001年5月28日現在)、これだけのために買ってもいいかも‥‥但し、コアなファンのみね(苦笑)。



▼BON JOVI『TOKYO ROAD』
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投稿: 2001 05 28 12:00 午前 [2001年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2001/05/27

TOOL『LATERALUS』(2001)

なんてタイトルをつけてしまったけど‥‥うわぁ‥‥しっかし凄いアルバムだわ‥‥言葉を失うね。購入してから既に10日経ってるが、必ず毎日家で1回は聴く。しかも78分通して。1度、通勤の車の中で試しに聴いてみたけど‥‥駄目だ、朝からこれは。沈んでしまう。帰り道でも一緒。疲れてるところに更に凹む。う~ん、なんて素晴らしいアルバムなんだ!?(多少自虐的)

というわけで、前作「AENIMA」から既に4年半以上もの月日が経ってしまっている。決して彼ら自身がこのインターバルを選んだわけではない。そう‥‥STONE ROSESとのケースに最も近いかも。要するに、前作まで所属していたレコード会社との裁判‥‥これが終了するまでは移籍はおろか、音源さえもリリースされることが許されなかったのだ。その間、日本では前のレーベルの日本での配給先が何度か変わったりしたため、ここ数年の間ずっと旧譜が廃盤状態となっている。この文を書いている今現在も、その状態に変わりはない。ただ、喜ばしいことに、この6月末に過去の作品が全て再発されるそうだ。新作が無事リリースされた事、そして初来日が決まったからだろう。

TOOLの凄みってなんだろう? 実は今までそれがちゃんと伝わっていなかったために、これまで「伝説的なカルトバンド」止まりで終わっていたのかもしれない。そう、アメリカでの大成功とは裏腹に(ちなみに前作は全米2位、このアルバムは初登場1位を記録している)。まぁそれも、このアルバムと7月のフジロックで多少は埋められるとは思うのだけど‥‥

このアルバムの楽曲を発売前に、彼らのオフィシャルサイトで視聴した。先行シングルとなる、アルバム5曲目の "Schism" がその曲なのだが‥‥6分48秒もある楽曲にも関わらず全く長さを感じさせないし、曲の盛り上げ方も空気間も独特なモノを持ってるし、聴いていて映像が頭に浮かぶんだな。これって最近の音楽(ロック)にはあまりないタイプなんじゃないだろうか? そう‥‥誤解を恐れずに言うなら‥‥一番近いところで、RADIOHEADの最近の作品に近い世界観を感じる。

レディヘと近い世界観‥‥ということで無理矢理こじつけてるように聞こえるかもしれないが、このTOOLも非常に「プログレ的」スタイルのバンドだと思うのだ。当然、過去の作品(特に前作)からもその空気は伝わってきていたが、このアルバムを聴くと特に「いよいよ」という印象を受ける。そうだな‥‥一番近いところで、KING CRIMSONとの比較が最も説得力があるんじゃないだろうか? レディヘのプログレ感ってクリムゾンというよりも、PINK FLOYD的なイメージの方が(特に最近は)強いように思う。勿論レディヘもクリムゾンからの影響はあると思うけど、ここではちょっと強引にそう区分させてもらう。

クリムゾンとの比較というけれど、そのクリムゾンも時期によって若干スタイルが異なっている。①デビュー当時、②「RED」前後のヘヴィメタリック路線、③'80年代のニューウェーブ路線、④'90年代前半の6人編成時代、そして今のような⑤テクノ的手法を用いた路線。各時代でメンバー構成も楽器構成も違うのだから、当たり前かもしれない。では、TOOLはどの時代と比較すべきか?というと‥‥独断と偏見で選ばせてもらうが、②と③時代に一番近いのではないだろうか? アルバムでいえば‥‥「STARLESS AND BIBLE BLACK」「RED」、そして「DISCIPLINE」等の3部作との比較ができると思う。ちゃんと両者の音に接している人なら理解してくれると思うが、何も音楽的に似ていると言っているのではない。先にも書いたように、「世界観」だったり「精神性」がこの頃のクリムゾンと近いのではないか?と思うのだ。

俺は「AENIMA」を初めて聴いた時、その頃台頭していた他のヘヴィ系バンド‥‥同時期にアルバムをリリースしてヒットさせていたKORN、MARILYN MANSON、NINE INCH NAILSといったバンド達とは、明らかに違う「世界観」を持ったバンドだなと思っていた。勿論、他のどのバンドも独自の「世界観」を持っていて、全く違う音楽をやっているのだが‥‥このTOOLに関しては‥‥なんとも説明できない魅力を持っていた。それは初めて "Stinkfist" のビデオクリップを見た時にも感じていた。だってメンバー出てこないで、モジャモジャした粘土が動き回ってるし。

この独特な「世界観」というのが、もしかしたら「プログレ」というのと関係するのかもしれない。確かにKORNにもその色を感じ取ることができるが、TOOLはまた違うんだな‥‥「押し」と「引き」の具合が絶妙というか。例えば先の "Schism" もそうだし、セカンド収録の "Stinkfist" もそうなのだけど、1曲の中で「起承転結」がはっきりとしている。その構成の上手さが長尺を感じさせない要因なのかもしれない。

それが特にこの新作になると、1~2分程度のインターミッションのような、次の曲への序章的小楽曲が幾つか収録されていて、より楽曲としての構成を際だったものとし、さらにはそれがアルバムの流れをより明確にしているように感じられる。クリムゾンの場合、CDだと1曲としてカウントされてしまっているが、実際には2曲3曲が合体してひとつの「楽曲」として成り立っている曲が数多くある。まぁそれはクリムゾンに限ったことではなくて、多くのプログレバンドに共通するのだか。

「世界観」を構成するもうひとつの要因として、楽器の使い方、アンサンブルも大いに関係してくる。TOOLの場合、特にインストパートが長い曲が多い。下手をしたら歌よりも長いんじゃないか?という曲さえある。自分は楽器をやっているから特にかもしれないが、ドラムひとつとっても、計算されたフレージングやプレイに耳を奪われる。変拍子の曲が多いことからも伺えると思うが、とにかくプレイヤーとしての技術の高さには驚かされる。特にこのアルバムでは、前作以上にもの凄いことをやっていたりする。一聴して今回は地味に聞こえるギターも、実はもの凄く機能的な役割を果たしているし、ドラムもシンバルひとつとってみても、ちゃんと計算されていたりするから、尚驚く。

これだけ書くと、「けっ、プログレとか変拍子とかいって、結局はプレイヤーのオナニーで、頭デッカチで難しいことやってるんじゃねぇの?」と穿った見方をする方もいるだろう。しかし、しかしだ。そこで終わらないのがこのバンド。3つ目の要因‥‥それは「歌メロが非常にポップ」だという点だろう。リスナーとして、これが一番惹かれる魅力じゃないだろうか? とにかくメロウ。先にも書いたが、初めて "Stinkfist" を聴いた時、その世界観や映像にも驚いたが、何よりも歌メロのポップさに驚いたことが大きい。そういえば、クリムゾンも歌メロだけは異常にポップな曲が多かったな‥‥ってのはちょっと強引すぎたか?

まぁ長々と書いてしまったが、これがTOOLの魅力であり、凄みなのだ。結局、この辺がちゃんと伝わっていないからダメだったわけで、そして伝えようにも国内盤が出ていなかったから尚更なのだ。雑誌でも殆どインタビューが載らず、そうなると取り上げられる機会も皆無に近い‥‥昨年、ボーカルのメイナード・キーナンが関わるプロジェクト、A PERFECT CIRCLEがアルバムリリース、そしてフジロックで来日したお陰で、多少TOOLへの認識度も高くなったように思うが、このアルバムとフジロックで更に知名度を上げてもらいたいものだ。

最後に‥‥どうでもいい話をひとつ。このバンド、絶対にジャズやってた人が多いと思う。特にリズム隊ね。そしてベースの方。あなた、IRON MAIDEN好きでしょ? 7曲目の2分33秒あたりのフレーズ、ありゃまさしくメイデンですよ、あんた!‥‥って、結局これが言いたいがために、俺はこんなに長い文を書いてきたのか‥‥いいのか、俺!?(そしてこんなオチでいいのか、俺‥‥)



▼TOOL『LATERALUS』
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投稿: 2001 05 27 02:44 午後 [2001年の作品, Tool] | 固定リンク

2001/05/13

Cocco『焼け野が原』(2001)

  Coccoの、事実上ラストシングルとなってしまったのがこの"焼け野が原"だ。アルバム「サングローズ」と同時発売だったこともあって、リリースされた印象が薄いが、4/20の「ミュージックステーション」を見た方なら、誰もが耳に(そして目に)焼き付いたはずだ。彼女が最後の挨拶に選んだ曲、最後に唄った曲がこれだ。

  収録曲は過去のマキシシングルでの中では最多の曲数で、シークレットトラックを含めて5曲。最後の作業の中でレコーディングされた楽曲は全てアルバムとシングルに詰め込んだのだろう。表題曲の他に"アネモネ"、"バニラ"、最初で最後のカヴァー曲となる"Rainbow"(根岸や長田の在籍するDr.StrangeLoveの曲)、そしてシークレットトラックである"愛の歌"の5曲。

  まずジャケットに目を奪われる。まるで‥‥こんな事を言ってはファンに失礼かもしれないが‥‥まるで自らの葬式をあげているかのような、白い花に包まれたCocco。黒バックに黒いセーターという姿が、更に拍車をかける。彼女自らのコンセプトなのだろうけど‥‥こんなジャケット、初めてだ。

  楽曲の内容について。まずサビの唄い出しからスタートするという試み。これは今までなかったキャッチーなパターンだ。楽曲はここ数年得意としているソフトサイドの集大成的作風で、徐々に盛り上がっていくアレンジ、特に中盤以降の盛り上がりに血液が逆流しそうになる。曲の出来としては、これよりももっといい曲は今までにあっただろう。しかし‥‥どうしてもあの「Mステ」を見てしまった後となっては‥‥特にラストの「もう 歩けないよ。」というフレーズに涙さえ出そうになる。だけど、それ程悲壮感といったものは感じない。どちらかというと‥‥前のアルバムで感じていた前向きさを、ここでも‥‥更に力強く感じ取る事ができる。

  続く"アネモネ"は根岸のギターだけをバックに唄う小楽曲。前曲が盛り上がって終わった後の空気を浄化するような清々しさが漂う。一転して3曲目"バニラ"はヘヴィなリフでスタートするロックチューン。しかし、ここには前作までのような淀んだ空気、混沌としたイメージはない。もっとカラッとしていて、突き抜けているような感じ。「サングローズ」レビューでも書いているが、このヘヴィネスの質をHOLEに例えると‥‥前作までを「LIVE THROUGH THIS」だとすると、「サングローズ」の楽曲は「CELEBRITY SKIN」なのだ。判ってもらえるだろうか?

  そして4曲目。プロデューサーであり、彼女のよき理解者である根岸のバンド、Dr.StrangeLoveのカヴァー"Rainbow"。彼女が他人の歌詞を唄うのはこれが最初で最後か? 一人称が「僕」で唄われるところに違和感というか、新鮮味を感じた。それまで自分の人生を唄うことしかなかった彼女が、初めて他人の人生を、他人の言葉で唄う。もし彼女に5枚目、6枚目のアルバムが存在していたなら、こういう表現の仕方も出来るようになったのかもしれない。

  そして十数秒の空白の後にスタートする5曲目"愛の歌"。当然トラックリストには明記されていない、シークレットトラックだ。レコーディングクレジットには「県人会の集い(全3名本人含)」とだけ明記されている。足踏みと手拍子だけでリズムがとられ、Coccoの他に男性1人、女性1人の声が確認できる。非常にリラックスしたトラックで、途中で彼女の笑みさえこぼれる。そしてCocco笑い声でトラックは終了する。

  もしこの"愛の歌"がなかったら、幾分重い空気で終わっていた。しかし、この曲があるお陰でまた違った‥‥心が温かいままで聴き終えることができる。事実上引退する彼女に対して、今後の彼女の人生を祝福したい気持ちにさえなった。もしあなたが「どうせアルバム買ったし、シングルも入ってたからいいや」と思ってこのシングルを蔑ろにしているなら、それは間違いだ。アルバムとついで語られるべき小作品集なのだ、このマキシシングルは。



▼Cocco『焼け野が原』
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投稿: 2001 05 13 01:39 午前 [2001年の作品, Cocco] | 固定リンク

Cocco『サングローズ』(2001)

  前作「ラプンツェル」からたったの10ヶ月で発表された、Coccoの4作目にして、事実上ラストアルバム。今年に入って「春にはアルバムが」という噂を耳にした時点で「嘘だろ!?」と思っていたが、それがこういう形で発表になるとは思ってもみなかった。昨年10月にツアーを終了した時点で彼女はツアーメンバーと共にスタジオ入りしたようだ。既に「ラプンツェル」の作業終了の時点で「もっと唄いたい」「次に進みたい」という発言をしていた。その意見を踏まえれば、このリリースというのは当然の結果なのかもしれない。しかし‥‥これまでに「溢れ出るものを如何に形にするか」で四苦八苦してきたはずなのに、こんなにハイペースで‥‥燃え尽きてしまわないか!?という不安を感じていた。
  発表された時期が悪かった為か(浜崎あゆみと宇多田ヒカルのリリースの後、しかもモーニング娘。のソロベストと同発)チャート的には5位に甘んじ、セールス的にも過去2作には及んでいない。しかし、彼女を支持する層には確実にフォローされている。それだけではなく、あの「ミュージックステーション」でのラストステージを観た人にも影響を及ぼしたようだ。

  最後の作品において、彼女はブックレットの最後にこの言葉を残した。


この喉が紡いだ全ての歌へ
その歌に差し伸べられた
愛しい音たち全てへ
私を信じていてくれる人へ
私が信じたいと願う人へやさしいハグと
さよならのキスを込めて


  彼女が最後に選んだ言葉。それはファンやスタッフ、そして自分が生み出し唄い続けた楽曲への感謝の気持ちと、お別れの言葉だった。そこには混沌としたものや、淀んだ空気はない。あるのは明るい未来と、明日への希望。彼女は先へ進む事を選んだのだ。

  アルバムはこれまでとは趣が違い、ブラシを使ったドラムが印象的な、なだらかなノリを持つ"珊瑚と花と"からスタートする。彼女の歌声も心なしか明るく感じる。そしてこれまでにもあったようなヘヴィリフを持ったロックチューン"わがままな手"、"Why do I love you"へと流れていくのだが‥‥楽曲の質感がそれまでの3作とは明らかに違うのだ。これまでに存在した「混沌」や「憎悪」の塊‥‥「Love」と「Hate」が相反するものとして存在し、そのふたつは時には一方に傾きつつもバランスを保っていた。しかし、このアルバムでは明らかに「Love」側に振り子が行ったっきり‥‥音のひとつひとつに温かみを感じるのだ。抜けきっているというか、カラッとしてるというか。例えばそれまでの3作をカート・コバーンだとすると、このアルバムは最近のコートニー・ラヴだと表現できないだろうか? いや、そのコートニーのHOLEのアルバム作風で例えると、それまでの3枚をカートがプロデュースした「LIVE THROUGH THIS」、そして今回のアルバムを「CELEBRITY SKIN」というように例える事は出来ないだろうか? かなり強引な例え方だとは思うが、実はその違いにこの1ヶ月、ずっと悩んでいた。的確な表現が見つからないまま‥‥そしてやっと見つけた例えが、これだ。決して言い当て妙な表現だとは思わないが、判ってくれる人には判ってもらえると自負している。
  コートニーがカートの死後、その「穴/空白」を埋める為に4年かけ、出した答えが「CELEBRITY SKIN」だった。そこにはそれまでのような「アングラ女王」「情念の塊」とは違う、前向きさ/ポジティヴさがあった。だからこそ、あのアルバムは支持され、コートニーは再び第一線に戻る事ができた。ここにはそれと同質の前向きさがあると思うのだ。

  要所要所に上手い具合に配置された既発曲も、シングルとして発表された時よりも説得力を感じる。2月にリリースされた"羽根"も今ひとつしっくりきていなかったが、アルバムで、この流れで聴くと納得できる。既に10月のライヴでさわりだけ披露されていた"歌姫"(そう、振り付きで唄われた、あの曲だ)も、"風化風葬"も。けど、どうしても浮いているように感じるのが、"星に願いを"だ。確か3月の時点ではアルバムのトラックリストには入っていなかったはずなのだ。最初、「ああ、完全に新曲で固めるんだ」と妙に納得してしまった。しかし、結果としては収録されることとなった。この曲だけ、やはり「ラプンツェル」の空気を(俺自身が勝手に)感じてしまう。勿論、Coccoはこのポジションに、この曲が必要だと感じたから選曲し直したのだろうけど‥‥

  アルバム自体はラウドなイメージはなく、終始穏やかな空気に包まれて進行していく。これまでで一番英語詞の曲が多いのも目に付く(3曲)。そして歌詞にも「終わり」をイメージさせる内容のものが多い。中でも、「まだ夢を見てる」と唄われる"Still"から続けざまに「夢は夢」と現実に引き戻す"Dream's a dream"へと流れる構成は圧巻だ。

  アルバムは沖縄をイメージさせる「珊瑚」からスタートし、やはり沖縄をイメージさせる"コーラルリーフ"で幕を閉じる。これまでも彼女はアルバムの中で、楽曲の中で、自身の沖縄に対する想いを綴ってきたが、ここまでストレートに表現したのは何故なんだろう? 最後だから? もう沖縄を憎んでないから? いや、違う。彼女は気づいたのだ。「私は、沖縄を憎んでいる。けど、それでも私は沖縄を愛しているのだ。」と。いや、もっと前から気づいていたはずだ。しかし、彼女はここにきてそれをストレートに表現した。彼女は唄いたいと思った。もっと唄いたいと思ったのだ。けど、その事実を認識してしまった以上、これまでのバランスが崩れてしまう。きっと辛い選択だったはずだ。彼女は「それでも歌を唄いたい」と発言しているのだ。が同時に「けど‥‥これ以上は出来ない」とも‥‥矛盾しているようだが、これが正直な気持ちなのだ。それが人間なのだ。そして彼女はひとつの選択をした。それが「音楽活動の中止」だった。

  俺は今、清々しい気持ちで、このアルバムを聴いている。きっと、俺は生まれ育った町の海を眺めながら、この夏の間中、このアルバムを聴き続けることだろう。そして、沖縄のどこかで絵本を綴っているであろうCoccoのことを、ちょっとだけ思い出してみようと思う。もう彼女の新しい歌は聴くことは出来ない。けど、俺は悲しくはない。残念ではあるが、彼女はもっと前を見据えて、もっと前へ進もうとしているのだ。俺も負けてられない。だからこのアルバムを聴こう。そして大好きな海で繋がった沖縄へと「ありがとう」と伝えよう。今はそんな気持ちでいっぱいだ。


愛してる?
例え聞こえないとしても
わたしは ここで
手を振るから

焼き付けて
その足で その瞳で

焼き付けて

"コーラルリーフ"



▼Cocco『サングローズ』
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投稿: 2001 05 13 12:00 午前 [2001年の作品, Cocco] | 固定リンク

2001/04/10

MANIC STREET PREACHERS『KNOW YOUR ENEMY』(2001)

「まさかこんなに(リリースまでに)時間がかかるとは思わなかった」という思いと「もう1枚聴く事ができた」という喜びとが交差する、MANIC STREET PREACHERS通算6枚目、約2年半振りのアルバムである。「己の敵を知れ」というシンプルなタイトルから、何となく内容が攻撃的なものなのでは?と想像できるし、それ以前にリリースされた限定シングル"The Masses Against The Classes"(日本盤にボーナストラックとして追加収録)からも「新作はこれまで以上にパンキッシュ路線になるのでは?」と先読みする事もできた。レコーディング最中から既に「今度のアルバムは初期の(パンク)路線に回帰する」という噂が広まり、前作や前々作にがっかりしていたオールドファンは期待に胸を膨らませ、4人編成時代を知らない新たなファンは初めてリアルタイムで観る/聴くであろうアグレッシヴ・モードのマニックスに興奮していた(とはちょっと大袈裟か!?)。

そして2001年2月にアルバムからの先行シングルを2枚同時リリース("So Why So Sad"と"Found That Soul")という、ここ日本では某ビジュアル系バンド等で知られている手法をイギリスで初めて実施。チャート上位初登場が予想されたが、実際には8位と9位。更に3月にはアルバム。残念ながら3作連続1位ならず(初登場2位)。それでもロックが売れない時代に、こんなにアグレッシヴ且つバラエティー豊かな作品がチャート上位に食い込んだのだから、快挙と言えるだろう。

さて、この新作。ここ2作のソフト路線からファンになったという人には不評のようだ。「メロディーが魅力的ではない」「ニッキー(・ワイヤー/Bass)がリードボーカルの曲が邪魔」「作品としての統一感がない」「曲が多すぎて内容が散漫」等々‥‥あら探しをしようと思えばいくらでも出来るわけだ。しかし‥‥が、しかしである!そんなに酷いアルバムだろうか? そんなに前作や前々作よりも劣る内容だろうか?

「メロディーが魅力的ではない」だって!? 確かに3人として再スタートを切った4作目「EVERYTHING MUST GO」('96年)や、その延長線上にある大ヒット作「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」('98年)の楽曲と比べれば、ここに収録されている楽曲達はそれ程メロウではないかもしれない。その理由として考えられるのは、作曲の方法が前作と新作とでは違うという点だ。簡単に言ってしまえば、前作や前々作は曲を書こうとして生まれたもの、そして新作はバンドとしてジャムセッションしていく中から生まれたもの。これは大きな違いだ。モーニング娘。とストーンズくらいの違いがある。現に前作までは作詞と作曲は分担作業制で、歌詞はニッキー(とリッチー)、メロディーはジェームズとショーンとなっていたが、この新作では全て「ALL SONGS BY MANIC STREET PREACHERS」となっている。ジェームズが歌詞を書いたものもあれば、ニッキーがメロディーを書いたものもあるはずなのだ(特に彼が唄う曲はそうだろう)

ちょっと余談になるが、これまでのマニックスの作風の流れを見てみると、ハードな作品の次にはメロディアスな作品を、甘ったるい作品の後にはその反動からアグレッシヴな作品を、というように常に「押し」と「引き」を交互に出してきた。ただ、マニックス史上最もアグレッシヴな3作目「THE HOLY BIBLE」('94年)から「EVERYTHING MUST GO」への流れはそれまでとは事情が違う。リッチー失踪から活動休止、再び3人で「暫定的」活動再開したものの、やはりそれまでのようなスタイルで続ける事は不可能に近かった。最近のマニックスしか知らない人にとっては判りにくいかもしれないが、如何に初期マニックスの原動力がリッチーという男から生まれていたかが、ここからも何となく判るんじゃないだろうか?

というわけで、前作~前々作というのは「望んで(望まれて)生んだ」作品とは純粋には言えないと俺は考えている。「EVERYTHING MUST GO」にはリッチーが残した詩を元に作った楽曲が存在するし、「THIS IS MY TRUTH~」も前作からの流れや空気を受け継いで作ったものだ(そう、彼らが似たような作風で続けるのはこれが初めてなのだ)。このままマニックスはアート路線へと進むのか‥‥誰もがそう思ったに違いない。相変わらずライヴはアグレッシヴなのに‥‥そしてこの路線で大成功を収めてしまい、4人時代には味わう事のなかったシングル/アルバム1位を獲得し、イギリスを代表する国民的バンドへと祭り立て上げられる。

リッチーの不在から5年。ここで3人は本当の意味で初めて「本気でマニックスの音楽に取り組む」事を決意する。全員が納得できる作品、「世界に憎まれるバンド」を再び演じる事、それら全てを引き受ける覚悟が出来たのだ。リッチー不在の影響はこんなにも長く尾を引いてしまったのか‥‥

こうして彼らは1年近くスタジオに籠もり、ジャムセッションを繰り返す。バンドとしてジャムしながら曲を作り上げていくという作業は随分久し振りの事だったらしい。そういえば4人時代はリッチーとニッキーが書く歌詞が最初に出来てからメロをつけるなんて話も聞いた事があった。もしかしたらメジャーデビュー後初めての試みかもしれない。初期を思わせるパンキッシュな曲もあればディスコ調もある。トラッドフォーク調、大合唱したくなるアンセムソング、フィル・スペクターを彷彿させる「WALL OF SOUND」コーラスのポップソング、サンプリングを駆使した曲、そして勿論前作や前々作にも通ずるようなメロディアスな楽曲も存在する。成功した作品の延長線上にある曲だけではなくて、いろんなタイプの曲が詰まっている。そういう意味で「統一感がない」とか言われるのだろう。確かにファースト以外はどのアルバムも統一感があったし。いや、考え方を変えればファーストは既にこういう作風だったわけだ。パンクあり、メタルあり、ヒップホップあり、トラッドあり、ポップスあり‥‥それがマニックスの「持ち味」だったはずなのだ。つまり‥‥乱暴な言い方になってしまうが、これは再び3人で暴れる為に必要な「手法」だったのだと思う。やりたい事を全て詰め込んだファースト「GENERATION TERRORISTS」('92年)と、再びあの頃の役割を引き受ける事を決意した新作。この新作を最初聴いた時、ファーストがリンクしたのはそういう事だったのかもしれない。だから「曲が多すぎて内容が散漫」と言われても仕方ないのだ。だってそれはマニックスが本来持っていたものなのだから。前作だってボーナストラックを含めて15曲も入っていたのに‥‥

今のマニックスがそれまでのような「必要以上にメロディアス」なものを欲していないのは一聴瞭然だろう。シンプル且つアグレッシヴ。今の彼らが必要としていたのはこれなのかもしれない。だからどの楽曲もコンパクトだし(3分台の楽曲が殆どだ)、アレンジも必要以上に盛り上げようとしていない(そう、"A Design For Life"におけるストリングスのように)。どの曲にもキーボード類は入っているものの、無愛想と言える程目立っていない。バラエティー豊かな曲調なのに、どこかモノトーンなイメージを受けるのは、この為だろう。それに更に拍車をかけるニッキーのリードボーカル&コーラス。殆どジェームズとユニゾンなので、ツインボーカルと言ってもおかしくない曲も幾つかある。ニッキーが唄うという事は、つまりニッキーはその気だ、という事なのだろう。その気になったニッキー。これはちょっと目が離せない。そう、必要だと思ったから唄うのだ。けど、ここでの役割はストーンズやエアロにおけるキース・リチャーズやジョー・ペリーのそれとは意味合いがかなり違う。だって‥‥ニッキーがその気なんだから(どういう意味か判らない人は、きっと今度のライヴを観れば嫌という程判ると思う。俺はそう実感したからそう書いているのだ)。

どの曲が前作までの流れの曲で、どの曲が初期を思わせるパンクナンバーで、というような解説とは違って、かなり抽象的なものになってしまったが、結局俺がマニックスを語るとこうなってしまうのだ。現在ギターロックにそれ程魅力を感じなくなってしまった俺が、それでも信用する事ができるのがこのアルバムであり、マニックスという存在なのだ。新作の歌詞の重みについても書いてみたかったけど、それはまたの機会にでも。とにかく、こんな冒険‥‥というか、馬鹿げたマネをするのは世界中を探してみても彼らだけかもしれない。きっと世界中のどこかでこのアルバムを耳にしたリッチーはニヤニヤしてるんだろうな‥‥あ、いいなぁ、って。で、それを想像してまた俺もニヤニヤしてしまう、そんな事を思わせるアルバムなのだ、これは。「マニックスに捨て作品なし」の格言(?)通り、唯一無二の、無敵な作品なのである。

一番最初に戻って‥‥それにしても前作からここまでたどり着くのに(間にシングルがあったものの)2年半もかかってしまうとは思ってもみなかった。もう半年早く聴けると思ってた。けどタイミング的にはバッチリだった気がするな。そして‥‥確かマニックスはデビュー時、アルバム5枚分の契約をしていると言っていたはず。あるインタビューで「ファーストで解散したら、残り4枚の契約はどうやって消化するの?」という問いに、リッチーだったかジェームズだったか忘れたが「そうだな‥‥KISSみたいに4人同時にソロアルバムを出すのもいいかも」と答えていたっけ(あれ、もしかしたらインタビュアーがそう提案したんだっけ!?)。前作辺りから「次はないかも‥‥」って不安が常につきまとっていたので、正直また新曲が聴けて‥‥しかもこんなに自分が望んだ形の作品がもう1枚聴けて、ホントに嬉しかった。信じられる音楽が少なくなってきた今だからこそ、本当にありがたいし救われる。次はグレイテスト・ヒッツだ、と言われているが‥‥これで終わってしまったとしても、俺は後悔しないだろう。正直ガッカリはするだろうけど。でも、もう1枚聴けるなら‥‥それがどういう作風であろうと‥‥ありがたいに越した事はない。だって「あら探しをして理不尽な理由で」新作をダメだという人と同じように、「無茶苦茶な理由付けで」そのアルバムを大絶賛するだろうから。



▼MANIC STREET PREACHERS『KNOW YOUR ENEMY』
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投稿: 2001 04 10 10:10 午後 [2001年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2001/03/30

AEROSMITH『JUST PUSH PLAY』(2001)

前作『NINE LIVES』(1997)からぴったり4年振りに発売された、AEROSMITHのオリジナル・スタジオ盤としては13作目にあたる作品。初のセルフプロデュース(「THE BONEYARD BOYS」名義で、スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーの他に、これまでも作曲に加わってきたマーティ・フレデリクセンとマーク・ハドソンが共同プロデュース)。シングル「Jaded」は久々のチャート・トップ10入り(「I Don't Want To Miss A Thing」は1位取ったけど、純粋にアルバムからのシングルとなると、トップ10入りは'90年の「What It Takes」以来、まる11年振りとなる)、アルバムは残念ながら3作連続1位とはならなかった(2位)。現在のアメリカでのブラックミュージック/ヒップホップ、アイドル系、そしてリンプ等のヒップホップ・メタルが上位を占める中で、こういうストレートなロックアルバムが発売2~3週で100万枚を越えたのは、快挙と言っていいだろう。決してエアロのパワーが弱くなったわけではなく、消費者の財布の紐が堅くなっただけだ。ここ日本でも過去最高の売り上げを記録しているそうだ(これもひとえにボーナストラック「I Don't Want To Miss A Thing」効果だろう)。

掲示板に以下のように感想を書いた。「個人的にはここ10数年‥‥復活後の 彼らの作品では一番好きかもしれない。完成度って意味では確かに『GET A GRIP』の方が上だしそこまで到達してないけど、「ピンとくる」という意味では一番。 雑誌等で「真の意味でのファースト」とか言われてるけど、そういうもんでもねぇだろ?とも思う。それよりは伊藤政則の「20世紀のロックの集大成」って方が納得いく。けど、集大成に終わってなくて、それをここ数年の手法(エアロの手法ではなくて、流行の手法という意味)でアレンジしてるのがポイント。バラードも「アルマゲドン」やって吹っ切れたのか、メンバーがソングライトに 全く絡んでない曲まで取り入れてるし。ハッキリ言って、「アルマゲドン」よりもイイ、これ。」

確かに『GET A GRIP』は越えていない。それは発売から約1ヶ月経った今、何度聴き返してもそう思う。けど、越える必要もないだろうし、そもそも作品のタッチが微妙に違うし、1993年と2001年とでは全く違うのだから、比べる必要もないだろうという結論に達した。むしろ比較すべきなのは、前作『NINE LIVES』とだろう。ここでは前作でやろうとしていた事が花結んでいる。例えば1曲目「Beyond Beautiful」は前作がなければ完成しなかった曲だろう。それにしても、こんなヘヴィなミドルチューンを1曲目に持ってくるのも初めての試みじゃないだろうか? 気合いを入れてプレイヤーの前で意気込んでただけに、ちょっとだけ肩すかしを食らった。ここ数作は連続してトップチューンはファストナンバーだったしな。

勿論、前作の色だけではない。復活後の『PERMANENT VACATION』(1987)以降の作品の集大成と呼べるだけの、いろいろな要素が詰まっている。どことなく雰囲気が前のヒット曲に似ていたり、メロの節回しがある曲に似ていたり‥‥ってこれじゃあ「ネタ枯れ」とか「マンネリ」って言われそうだな? けど、それが決して嫌味になってるわけじゃなく、一聴して「あ、エアロだ」と判る安心要素として作用しているのだから、良しとしよう。

で、それらの「過去の集大成」的要素を、単に「懐メロ主義」で終わらせない為のセルフプロデュースというか、とにかく音の実験具合/遊び具合が尋常じゃない。ところどころにサンプリング音を多用しているし、「"Walk This Way" meets HIP HOP」と呼べる「Just Push Play」や、「Drop Dead Gorgeous」のような曲もある。そして新境地と言えるシングル「Jaded」の存在も大きい。バラードもこれまでのエアロのイメージを壊さない程度の、カントリータッチのものが多い。メンバーがソングライトに全く絡んでない「Fly Away From Here」も「I Don't Want To Miss A Thing」以上にエアロの曲として作用しているし。つまり、ここには「他人と共作しようが、自分で曲を書こうが書くまいが、俺ら5人でやればどれもエアロの曲になる」という、半ば開き直りに近い強引さを感じさせる。けどその強引さが心地よいのだから始末に負えない。

結局、彼らは来るべき21世紀に向けての第1弾として、「過去の総括」+「これからの俺達」を融合させた、ヤケクソに近い「始末に負えない」アルバムを提供したのだ。もっともそれは端から望んだ形ではなく、結果としてそうなってしまったという。だから始末に負えないんだけど。だって自宅を改造したホームスタジオで、自身の家族をも巻き込んだ、非常にリラックスした状態で制作に臨んだにも関わらず、だ。今思えば、前作というのはその「始末に負えない」パワーが、本当に始末に負えなくて持て余し気味だったのだろう。だから躁的要素が強い、ちょっと聴くのに体力がいる作品になったのだ(それに曲数も多かったし、長かったからね)。

そうそう、このアルバムの非常に良い点。それはボーナストラック2曲を含めて14曲入りにも関わらず、60分にも満たないトータルランニングだという点だ。つまり、オリジナルのアメリカ盤は全12曲入りで約50分ちょっとという事になる。『GET A GRIP』辺りからCDを意識した曲数/収録時間だった。それら全部が本当によい曲で、よい流れを持っていればいいのだが、それが前作みたいだと苦痛になったりする。そういう意味ではこれは適切な曲数/収録時間だと言えるだろう。以前にMOTLEY CRUEのレビューでも書いたが、結局人ひとりが1日に音楽を聴く時間なんてごく限られている。1時間以内というのが適切なのだ。

それにしても、このジャケット‥‥エアロ史上でも下から1、2を争うモノになってるな? これ、日本人アーティストであるソラヤマ・ハジメ氏の作品だそうで、あの「AIBO」のデザインで有名な方だそう‥‥それでこんなメカ/ロボ・テイストなの? 何度も言うけど、最初はASIAかAUTOGRAPHのジャケットかと思ったよ。まぁ、そんなところも含めて「本気でエアロらしい」アルバムだと思う。結成30年、スティーヴンは50歳を迎え、あと何年この精力を維持できるかは誰にも判らない。けど、ちょっとこのアルバムのツアーは気になる。これらの楽曲をどうやってステージで表現するのか、本当に今からライヴが待ち遠しい。こんな風に思ったのも『GET A GRIP』以来の事だ。



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投稿: 2001 03 30 12:00 午前 [2001年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2001/03/04

Cocco『羽根 ~lay down my arms~』(2001)

  2001年2月21日、Coccoはオフィシャルサイト上で「音楽活動中止」宣言を発表した。「活動休止」ではなく、「中止」である。これは事実上の引退ではないだろうか?と推測する人間が多い。実際、俺もそう思っている。やはり昨年10月の武道館公演での彼女のMC(詳しくはライヴレポート参照)を聞いた後では、今回の発表は「やっぱりそうか‥‥」と思わざるを得ないのだ。

  今回の発表と同日に、彼女は2つのアイテムをリリースした。ひとつは、沖縄限定で発売された"風化風葬"、そしてもうひとつが今回紹介する、全国に流通するマキシシングル"羽根 ~lay down my arms~"である。

  昨年の全国ツアーを観た人ならピンときたと思うが、今回リリースされた表題曲2曲は昨年のツアーで既に発表されていたものだ。本当のラストに演奏され、Coccoのバレリーナのような最後の挨拶が印象的だったのがこの曲である。

  あれから半年近くが経ち、ようやくこうしてスタジオテイクを耳にする事が出来たわけだが‥‥ちょっとライヴで聴いた時と印象が違った。確かにイントロのツェッペリン的ギターフレーズはよく覚えているのだが‥‥あれ、こんなに激しかったっけ?というのが今回聴いた第一印象だ。非常に大陸的なスケールの大きさを感じさせる曲だったんだなぁ‥‥しかも唄い出しの「あなたを撃ち落とした/わたしの青い武器は/錆びてしまった」というフレーズにドキリとさせられる。深読みしようと思えばいくらでも出来る内容なのだが‥‥何故に彼女はこうも「終焉」を匂わせる歌詞ばかりを連発したのだろうか?

  かと思えばカップリングの"Drive you crazy"ではポップでありながら破壊力のあるストレートなロックンロールを聴かせてくれる。初期のグランジ的なものとはまた違う、整理させたサウンドがとても印象的だ。そういえば彼女の歌には英語詞のものが幾つかある。この曲もそうなのだが‥‥一度でいいから、全編英語詞のアルバムというのを聴いてみたかったな。初期の彼女はアラニス・モリセットと比較される事が多々あったので(その節回しや歌詞のストレートな内容から)、どれだけCoccoがアラニスとは違ったメンタリティを持ったシンガー/表現者かというのを明確にする機会になっただろうに‥‥

  もうひとつのカップリング曲、"箱舟"。俺は表題曲よりもこの曲の方が好きだ。歌詞が好きなのだ。タイプとしては"羽根 ~lay down my arms~"と近い楽曲なのだが、あちら程激しくもなく、ジワジワと歌・演奏が一体となって盛り上げていく。歌詞も1~2曲目よりも前向きさを感じさせるし、温かさを感じさせる。確かに彼女の初期の楽曲にはギスギスとした攻撃的な面が多かったが、作品を重ねる毎にその色は薄らいでいき、だんだんと聴き手を優しさで包み込むようになっていった。彼女の曲に共感したファンは徐々に、そして彼女と共に癒されていったのだ。

  「立ち上がる時には/許しを乞わないで/もういいんだからね」「やさしい/やさしい橋を架ける/光を散りばめて/あぁ愚かだと笑って/でもここに居て/何も言わないで」という歌詞。と同時に「ああ撫でられていられない/もうすぐ散るよ/灰は燃え尽きて/どこへ行こう?」("羽根 ~lay down my arms~"の一節)という歌詞。どちらもこの1枚のマキシシングルの中に収められている、今の彼女自身の言葉。この先の彼女に何が待ち受けているのか、そして今度のアルバムにはどういう言葉や想いが込められているのか‥‥その答えを我々が知るまで、あと1ヶ月ちょっとだ。



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投稿: 2001 03 04 01:00 午前 [2001年の作品, Cocco] | 固定リンク

Cocco『風化風葬』(2001)

  2001年2月21日、Coccoはオフィシャルサイト上で「音楽活動中止」宣言を発表した。「活動休止」ではなく、「中止」である。これは事実上の引退ではないだろうか?と推測する人間が多い。実際、俺もそう思っている。やはり昨年10月の武道館公演での彼女のMC(詳しくはライヴレポート参照)を聞いた後では、今回の発表は「やっぱりそうか‥‥」と思わざるを得ないのだ。

  今回の発表と同日に、彼女は2つのアイテムをリリースした。ひとつは、全国に流通するマキシシングル"羽根 ~lay down my arms~"、そしてもうひとつが今回紹介する、沖縄限定で発売された"風化風葬"である。

  昨年の全国ツアーを観た人ならピンときたと思うが、今回リリースされた表題曲2曲は昨年のツアーで既に発表されていたものだ。「でも大丈夫、あなたはすぐに、わたしを忘れるから」というフレーズが印象的だったのが、今回の"風化風葬"だ。残念ながらこの曲は現在(2001年3月)、沖縄でしか手に入らない。沖縄に対する想いを唄った内容ではないのだが、彼女なりの故郷に対する想いが今回の沖縄限定リリースという形になったようだ(これについては彼女のオフィシャルサイト内に、このシングル発表に当たって発表された、彼女の直筆メッセージを載せた沖縄の新聞広告がアップされているので、それを参照の事)。これも‥‥何となくだが‥‥終わりを匂わせる行動だ、と最初知った時に思った。

  このシングルは普通のシングルではない。1曲のみ収録された8センチシングルと、先の10月6日の武道館公演でのこの曲のライヴ映像を収録した7分程度のビデオがセットになった代物なのだ。そう、これまでCoccoの映像作品が正式にリリースされた事は今までなかった。プロモーションビデオ撮影にも積極的だし、これまで何度か行われてきたライヴも撮影されているはずだ。だがそれらは我々一般のファンの手に入る事はなかった。せいぜいPVを放送する番組で流される彼女のPVを録画したり、奇跡的にTV出演した時のものを録画する‥‥その程度だったのだ。そういう意味ではこの作品はとても貴重で、尚かつファンならマストなアイテムなのだ。

  この楽曲自体は4月にリリースされる最後のアルバム(と噂される)「サングローズ」にも収録されるそうなので、楽曲にのみ興味がある人間はあと1ヶ月少々待てばいいわけだ。だが、ライヴビデオの方は‥‥もしかすると、このまま手に入らない可能性もある。今後、彼女のフル・ライヴビデオやアンソロジー的映像作品でもリリースされない限りは、この映像はお目にかかれないのかもしれない。

  もしあなたの親類・友人に沖縄在住の方がいらっしゃるなら、その人に頼んででも手に入れるべき一品だろう。そういう知人もいないという人なら、俺と同じく某オークションで手に入れる方法もある(ただ、多少値が張っても文句は言えないが)。

  さて、この楽曲だが‥‥恐らく、Coccoの「メロウ/スロウ・サイド」の集大成的内容ではないだろうか? "樹海の糸"や"ポロメリア"といった作品の集大成的な作品だな?とは先のライヴで聴いた時にも感じたが、こうやってストリングスを含むスタジオテイクを聴いて、更にその思いは確信へと変わった。

  そういえば、この歌詞もどことなく「終焉」を匂わせる内容になっているような‥‥今回の発表の後だから余計にそう感じるのかもしれないが、同時リリースの"羽根 ~lay down my arms~"にもそう感じさせる表現・フレーズが多く登場する。

  「崩れ墜ちるあなたに/最後の接吻をあげる/すがりついた昨日を/振り払って私は星を辿る」だとか、このタイトル「風化風葬」という言葉に、そしてサビのフレーズに終わりを感じる。まさか自身の引退を唄ったわけではないだろうが、何故この時期にこういった内容の歌を幾つも書いたのだろうか? 今度のアルバム収録曲のタイトルにも、何となくそう感じさせる題名があるが‥‥それは俺自身の穿った見方なのだろうか。

  彼女が今後、メディアの前に登場するかは現時点では判らない。シングルプロモーションの為のTV出演はまずないだろう。ツアーは‥‥これもないかもしれない。だったら現時点でこんな発表はしないだろうし。もしするんだったら、アルバムが出てツアーが終わった時点で発表すると思う、混乱を避ける為に。もしかしたら取材‥‥「rockin'on JAPAN」辺りの取材を受けてくれるかも‥‥あるとしたら、この辺だろうな、きっと。何にせよ、彼女の「生きた」言葉を耳に出来る機会はあと1回‥‥4/18リリースのアルバムとシングルの計16曲‥‥だけは確実にあるという事。それだけだ。



▼Cocco『風化風葬』
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投稿: 2001 03 04 12:00 午前 [2001年の作品, Cocco] | 固定リンク

2001/03/01

fra-foa『宙の淵』(2001)

  昨年だったか、「ポストCoccoは誰?」というような話題をした事があった。確かにCoccoというアーティストは唯一無二の存在であって、それに続くフォロワー的存在ってのはなかなか見当たらない。椎名林檎に対する矢井田瞳、宇多田ヒカルに対する倉木麻衣のような存在がいないのだ。もっとも、あんなアーティストが簡単に10も20も出てきてもらっても困る。

  ソロアーティストとなると、皆無に等しいだろう。ではバンドでは? Coccoに匹敵するようなヘヴィなサウンドに繊細なメロディを乗せ、独特な歌詞を吐く、そんなバンド‥‥ひとつだけ心当たりがあった。それが今回紹介するfra-foaだ。


1話 真昼の秘密
2話 プラスチックルームと雨の庭
3話 夜とあさのすきまに
4話 ひぐらし
5話 澄み渡る空、その向こうに僕がみたもの。
6話 君は笑う、そして静かに眠る。
7話 青白い月
8話 月と砂漠
9話 宙の淵


  さて、以上のタイトル、一体何のタイトルだろう? 一見するとドラマのサブタイトルのようにも見れるが、実はこれ、このfra-foaのファーストアルバム「宙の淵」収録曲の全タイトルだ。コンセプトアルバムではないものの、こうやって「1話、2話」と連続性を持たせる事によって、1曲1曲をピックアップするよりも全体を通して聴きたくなるような仕組み?になっている(特に頭数曲は曲間が殆どなく、ずっと1曲が続いているような錯覚に陥る)。実際に先日行われたワンマンライヴでも、この曲順通りでライヴが行われたそうだ。CD時代になったここ15年くらいの間に、1曲目から順を追ってアルバムを聴き通すという行為が希薄になってきてるように感じていたので(実際、俺も買ったばかりのアルバムを飛ばし飛ばし聴くことが多い)、このタイトルを最初見た時には「おおっ!」と唸ってしまった。

  さて、俺がこのバンドを知ったのは昨年の初夏だっただろうか? 深夜番組のCMで彼らのデビュー曲"月と砂漠"の一部を耳に(目に)した。(本庄まなみ+ELT持田香織)÷2といったルックスの三上ちさ子(Vo.)と相反するようなグランジチックなヘヴィサウンド‥‥一聴してCoccoを思い浮かべたものだ。

  そしてその年の秋に、雑誌「rockin'on Japan」で三上のインタビューを読んだ。そこではセカンドシングル"青白い月"の歌詞の背景について語られていた。この楽曲というのが‥‥彼女の兄が幼い頃に亡くなったという実体験を元に作られているそうだ。不謹慎だが、ちょっとこの箇所が非常に気になったのも確か。そしてラジオでこの楽曲をフルコーラス聴く。かのスティーヴ・アルビニをエンジニアに迎えたこの曲‥‥それまでCocco的と感じていた俺は、ここで自分の間違いに気付く。ここにあるのは情念とかそういった類のものではない。「ぼくはここにいるよ。わたしはここにいるよ。」というメッセージ。ただそれだけなんじゃないだろうか? そう思えてきたのだ。

  そして今日、アルバムを手にしたわけだが‥‥その気持ちは確信に変わった。「わたしはここにいる。ここにいることに気づいて。」というメッセージ。それは丁度マンガ「MONSTER」に登場するヨハンとアンナのようでもある。たまたまここ数日読みふけっていたからイメージが重なったのかもしれないが、そう思えてならないのだ。幼い頃の実体験やトラウマのようなものがこのアルバムの中では唄われている。それは人によっては「パンドラの箱」のように開けてはいけない、封印したい過去かもしれない。しかしこのバンドの全楽曲の作者である三上ちさ子は、言葉にして、歌にして表現する事によって自分自身の存在を証明しているように感じる。「そしてわたしはここにいる。気づいて」と‥‥

  アルビニが数曲の録音に関わっている事もあってそのサウンドは一時期のグランジのようでもあるが、あそこまでモノトーンというわけでもなく、もっとカラフル‥‥どちらかというとRADIOHEAD以降といった感じだろうか。フリーキーなプレイや不協和音のフィードバック等にその片鱗を伺わせる。そう、サウンド自体は斬新というわけではない。しかし、ここに三上の言葉が乗ることによって、そして彼女が唄い叫び囁くことによって、これら9曲は独自の輝きを放つ。それは人によっては眩い程の輝きを放つあまり、目を背けたくなるものかもしれない。けど、これが現実。気づいてあげなきゃ。「きみはそこにいたんだね?」って。

  アルバムブックレットの最後に、彼女はこう述べて閉めている。


たとえ 一瞬でも
自分たちの音に
触れてくれた事に、
感謝します。

これら 愛すべき音のうち
どれか一つでも
ある瞬間 その心の中に
生命が宿る事を 願って・・・。


  残念ながら先日、Coccoは音苦活動の停止宣言を発表した。事実上の引退という事だろう。fra-foaはCoccoではないし、そのフォロワーというわけでもない。彼女の代用品になんてなり得ないのだ。けど‥‥彼女のファンにも手にとって欲しい1枚でもある。そしてダーク/ゴス路線のヴィジュアルロックが好きな人にも是非聴いてもらいたい。一体どういう反応をするのだろうか‥‥?

  そして、これを読んだあなたにも‥‥



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投稿: 2001 03 01 02:00 午前 [2001年の作品, fra-foa] | 固定リンク

2001/02/28

AEROSMITH『JADED EP』(2001)

前作『NINE LIVES』(1997)から丁度4年、映画「アルマゲドン」主題歌にして初の全米No.1シングルに輝いた「I Don't Want To Miss A Thing」から数えても3年振りとなるAEROSMITHの最新シングル。この4年の間には2枚組ライヴアルバムもリリースしたし、二度もドーム公演を行っている。「アルマゲドン」サントラに新曲を2曲提供し、昨年末にはこの3月に発表される新作『JUST PUSH PLAY』の予告編ともいえる楽曲「Angel's Eye」を映画「チャーリーズ・エンジェル」に提供し、常に話題を振りまいてきたので改めて4年振りとか言われて「えっ、そんなに経ったっけ?」とさえ思った。ここ数作のエアロは4年サイクルで新作を発表するペースにあるようだ(『PUMP』(89)~『GET A GRIP』(93)~『NINE LIVES』(97)~という具合に)。

さて‥‥エアロのシングルを買うのって、実は8年振りだったりする。そう、93年春の「Livin' On The Edge」以来なのだ。それ以後、何故か買わずに通ってきてしまった。このシングルの場合は、ラジオで聴いて一発でヤラれたから‥‥こんな曲、今までのエアロにあったかよ!?って位(当時は)衝撃的だったし、相当の名曲だと直感したから‥‥買ってしまったのね。その後、前作の先行シングル‥‥「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」は確かに耳に馴染むいい曲だとは思ったものの、こういう曲なら今までもあったよね?って感じでそれ程惹かれなかった(ちゃんと聴くと細部にまで拘った凄い曲なんだけどね)。某映画サウンドトラックのNo.1ソングに関しては「あれはエアロの曲じゃなくて、セリーヌ・ディオンのカヴァー」だと勝手に思ってるので(笑)却下。勿論、悪い曲だとは言わないけどね。

それなのに、今回は買ってしまいました。しかも発売日に。それも5曲中バージョン違いを含めると3曲が同じ曲、1曲は1分ちょっとのインタールードみたいなもんだから実質2曲‥‥この2曲の為に1500円払ってしまった。アルバム来週リリースだからそれまで待てばいいものを‥‥(笑)

声を大にして言っちゃいます、「新曲"Jaded"は超名曲だよぉ!」と。最初ラジオで聴いた時は40秒に編集されたバージョンだった為、それ程ピンとこなかったんだけど、フルコーラスで聴いたら‥‥うわっ、俺の中で「Livin' On The Edge」と並ぶ衝撃! ビートルズの「Ticket To Ride」みたいなドラムフレーズ、日曜の日だまりの中って印象の耳に馴染むメロディ、そして暴れないジョー・ペリーのギター(!)、効果的に盛り上げるオーケストラ(しかもアレンジはベック父のデヴィッド・キャンベル氏)。ギターソロらしいソロがないんだよね、この曲。本当、歌のみでここまで盛り上げてるよ‥‥これが今年の3/26で50歳になるオヤジの歌かよ!? 恐れ入りましたとしか言いようがない。

しかもそれと対照的なのが、カップリング曲の「Angel's Eye」。残念ながらアルバムには入らないそうで、ボーナストラックにさえもならなかった(その代わりに「I Don't Want To Miss A Thing」入れられてもなぁ。まぁこの1曲の為にバカ売れするだろうけどね)。これ‥‥めっちゃスゲェかっこいいんだわ。イントロだけ聴くといかにも昨今のヘヴィロック的なリフでスタートするんだけど、サビ前あたりから「いかにもエアロ」的メロディで盛り上がってくという、隠れた名曲。最初この曲をラジオで聴いた時も「これが50前後のオヤジの仕事か!?」って思ったもんなぁ‥‥ハァ‥‥。

あのね、アルバムの曲ってまだこの「Jaded」しか聴いてないのにこうもはっきり断言しちゃうのも何だけど‥‥悪いけど今度の『JUST PUSH PLAY』、凄い名作かもよ?



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投稿: 2001 02 28 12:00 午前 [2001年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2001/02/18

モーニング娘。『ベスト!モーニング娘。1』(2001)

  はい、マジです第2弾(爆)。掲示板上でいろいろ物議を醸しだしたモー娘。関連ですが、正直な話をすると、1年前程彼女らに興味はない。理由は‥‥判ってるでしょ?(苦笑)市井紗耶香が抜けちゃったしね‥‥だから今回これをオススメ盤として取り上げるのは、純粋に音楽を取り上げようという事ですわ。こりゃちょっと難しいぞ‥‥こんな事書くと、絶対に反論が来るのは判ってるんだろうけど、やっぱり多くの方に喧嘩を売ったと思われてしまった?以上、けじめとして書いておかなきゃ♪(苦笑)

  モー娘。デビューしたのは'98年1月。その前から「ASAYAN」で『インディーズで5万枚売ったらメジャーデビュー』ってな企画をずっとやってたので、それなりに注目はされていた。最初は話題性だけで売ってる、そんな印象を受けた。例えばデビューにまつわる企画だとか、デビュー時は5人だったのに次の曲では8人になってたり、更にその曲が前の曲よりチャート的に悪い成績だったら解散とか。前も別のところで書いたけど「番組内視聴者参加型ロールプレイングゲーム」だったんだな、と感じる。だから、そんな話題性だけで売ってるグループなんてすぐに廃れて売れなくなる→解散。誰もがそう思っていたはずだ。実際、デビューから1年後にオリジナルメンバーの福田明日香が脱退した辺りから、低迷しつつある印象を受けた。それは楽曲のパワーだったりセールスだったり‥‥

  ところが、デビューから3年経った今でも彼女達は残っている。それだけではなく、現在はメンバーを10人にまで増やし、セールス的にも毎回100万枚近いセールスをあげている。このベスト盤も発売1週間でアルバムとしては初の100万枚突破、現在までに250万枚もの出荷を記録していると聞く。勿論ベスト盤というのも関係あるだろうが、正直ここまで売れてしまうとはあの頃誰も思わなかっただろう。何故彼女達は3年もの間、競争の激しい芸能界を生き抜いてこれたのだろうか?

  まず一番大きいのは、彼女達が「プロ意識」というモノを常に持っている事。それは例えばデビュー時と今残っているメンバーの顔つきや目を見れば一目瞭然だ。もっと言えば昨年5月に加入した4人。加入当時はいかにも素人的な、本当にその辺にいる女の子だったはずだ。けど、今はどうだろう。顔つき、目つきが全然違うのだ。これは間違いなくつんくの影響だろう。つんくという男は音楽面だけでなく、精神性までもを彼女達に教育している。この点がおニャン子クラブやチェキッ娘と違う点じゃないだろうか? 勿論、歌唱力やダンスのセンス等は本当のプロの方々の足下にも及ばない。が、そこに食い付こうという気持ちだけは負けていないのでは?

  最初、つんくは彼女達を完全な『アイドル』として売りだそうとしたはずだ。それはデビュー曲"モーニングコーヒー"を聴けばお判りいただけるだろう。明らかに彼の好きだったアイドル歌謡路線だった。それが何故、現在のようなダンス路線‥‥もっと言ってしまえば「シャ乱Qの後継者的」ダンスミュージックへとシフトチェンジしたのだろうか? 時代性や流行というのもあるだろうが、それだけではないような気もする。

  初期のモー娘。の楽曲には、中途半端なエロさがあった。いやらしいと感じさせない、中途半端なエロさ。これはシャ乱Qでのつんくが持っていたモノだ。それが100万枚セールスと引き替えに後退している。この辺はSPEED初期と共通するものを感じる。ファンの低年齢化。そう、後藤や加護といったローティーンメンバーが加入した事によって、彼女達は小学生のヒーロー/ヒロインへと成長していった。これを意識する事によって、つんくは自身の歌詞に責任感のようなものを感じたのかもしれない。
  歌詞の内容も、初期は子供と大人の狭間で揺れ動く女心(って男の俺が言うのも何だが/苦笑)を唄っていたものから、徐々に幅広い年代にアピールする内容へと変化していった。これも上と同じような理由からだろう。特定の層を狙う事よりも、もっと大きい‥‥万人に愛される楽曲作りへと、つんくの意識も変わったのだろう。それを実現させるにはシャ乱Qでは不可能だったのだ。あのバンドはある意味、役目を果たしてしまったのかもしれない。

  改めて、音楽性のシフトチェンジについて考えてみよう。本来アイドル歌謡好きのつんくは、シャ乱Qでは表現しきれない音楽性を「女性」を使う事で表現しようとした。しかし、番組の企画と二人三脚で進めていく中、物足りなさを感じたのかもしれない。と同時に、シャ乱Qの人気・セールスの低迷→バンドメンバーの不祥事による活動休止。自身が本当にやりたい音楽を発表する場を失った、ソングライターとしてのつんく。そこで彼はその思いをモー娘。に託す。
  いかにもシャ乱Q的なダンスチューン"サマーナイトタウン"はデビュー曲よりも成功し、続く3作目"抱いて HOLD ON ME!"では初の1位を獲得する。この曲で初期モー娘。のイメージが完成したといっても過言ではないだろう。
  そして4作目"Memory 青春の光"ではよりアーバンなブラックミュージックへと接近する。この曲では初めてバンドサウンドを導入し、そのバックを支えるのはアメリカ屈指のスタジオミュージシャン達ばかりだ。有名なところではベースのウィル・リーなんかがその名前を知られているはずだ。この辺のアプローチは、SMAPがやっている事に近いモノを感じる。
  ここで福田が脱退し、7人になったモー娘。は"真夏の光線"で再びアイドル路線にアプローチする。デビュー曲と違ってそこには「つんく色」が更に色濃く表れていた。しかし3枚目を頂点にセールスは失速しつつあった。そこでつんくは新たな挑戦に挑む。「普遍的楽曲」作りへの挑戦だ。

  安倍をリードボーカルに据えた6枚目のシングル"ふるさと"は、そういう普遍性を目的に書かれた楽曲であり、当時つんくは「(同じ事務所の)森高千里さんにも自身の故郷を唄った"この町"という曲がある。そろそろ彼女達にもそういう『将来大切になる楽曲』があってもいいかな、という思いを込めてこの曲を作った」と発言している。そういう事もあってか、この楽曲のアレンジャーには森高の楽曲のアレンジも手掛ける小西貴雄を迎えている(アルバムでは彼を起用してたのかもしれないが、シングルとしては初めてだった)。しかし、この曲はセールス的には大失敗で終わる。失敗とは言っても20万枚は売り上げていたのだが‥‥同じ日に発売された鈴木あみに100万枚近い差をつけられてしまう。

  この次からの彼女達、そしてつんくが凄かった。アレンジャーにダンス☆マンを起用、演奏も彼のバンドをそのまま使う事によって、よりダンスミュージック‥‥それもシャ乱Q的な人工的なものではなく、より本格的な‥‥に近付く事となる。更に現在のモー娘。の人気を支える事となる後藤の加入。
  そうして発表されたのが、"LOVEマシーン"という楽曲だった。この楽曲が全てを変えた。彼女達の意識も、彼女達を取り囲む状況も、そしてつんく自身をも。結果この曲は最終的に160万枚ものセールスを記録する。

  本格的なダンスミュージック。ぶっちゃけてしまえば、海外の'70年代にヒットしたダンスミュージックへのオマージュ。ダンス☆マン自体がそういう事を目的としてバンド活動をしている事もあり、モー娘。の楽曲も自然と「パクリ」と「オマージュ」の間を行ったり来たりする。例えば"LOVEマシーン"は「笑う犬」でもお馴染みの"Venus"であり、"恋のダンスサイト"は"Genghis Khan"、"ハッピーサマーウェディング"はドナ・サマーの"Hot Stuff"というように。その後にリリースされた楽曲も、ダンス☆マンが関わっていない楽曲でさえもそういう「確信犯的」なイメージを受ける。
  レトロなものがもてはやされる時代ではあるが、これはそういうものとはちょっと違うのではないだろうか? 最近そう思えてしかたない。つんく自身が目指した「普遍的楽曲」‥‥最初は「心に残る名曲」という意味合いだったはずだ。しかし"LOVEマシーン"を生み出した事によって、何かが弾ける。消費されて廃れていくだけがヒット曲ではない、消費される事によって更にパワーを増す楽曲だってあるはずだ‥‥それがこの"LOVEマシーン"だったのだ。俺はこういうつんくの姿勢に「ロック魂」みたいなものを感じる。

  現在、シャ乱Qは2000年12月に「休憩」という名の活動休止期間に再び突入した。最近は自身が唄う事さえも忘れつつあった彼だが、昨年末にはBEATLESの完全コピーアルバムをリリースし、更にはライヴまでやってのけた。最近彼は「まことと二人でバンドっていうか、ユニットでもやろうかと思ってる。今は唄いたくてしかたない」と発言している。"LOVEマシーン"発表後、つんくは自身が唄うオリジナル楽曲を1曲も発表していない。ソロシングルはその前だし、「ラーメン大好き小池さんの歌」はリメイクだ。そうなると、あの爆裂モードに突入してから自身が唄う為のオリジナル曲は発表していない事になる‥‥勿論、あれがモー娘。というキャラが唄う事によって大成功したんだという事はよく理解している。けど、今のつんくが唄うとどうなるんだろう‥‥純粋にそう思ってしまったのだ。

  先日、あるテレビ番組でつんくのインタビューを観た。シャ乱Q時代のような飢えた目つきとはまた違っていた。優しさを持ちつつ、それでいて何かを企んでいるような。個人的にはこの人の音楽センス、大好きなので是非今後に期待したい。ロックなんて真剣さとギャグが紙一重なのだ。前回のロマンポルシェ。にしろ、今回のモーニング娘。にしろ。そしてつんく‥‥プッチモニやタンポポでの楽曲センスには光るものを感じていたし、今度はミニモニだ。バカにするのもいい加減にしろとお思いかもしれないが、あの小馬鹿にした感じ。日本の音楽シーンを舐めきった態度には共感するものがある。だからこそ、今後もつんくから、そしてモーニング娘。から目が離せない。いちロックファンとして。



▼モーニング娘。『ベスト!モーニング娘。1』
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投稿: 2001 02 18 12:00 午前 [2001年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク