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2002/04/24

ALICE IN CHAINS『DIRT』(1992)

「アリス・イン・チェインズ」ボーカル変死
米国の人気ロックバンド「アリス・イン・チェインズ」のボーカル、レイン・ステイリー(34)がシアトルの自宅で死んでいるのが19日、見つかった。20日に地元当局者が明らかにしたところでは死因は不明。遺体は腐敗が始まっており、ステイリーと確認されるまで検査が必要だった。アリス・イン・チェインズは'90年にアルバム「フェイスリフト」でデビュー。麻薬などをテーマにした暗く不気味な音色で人気を集めた。
     ‥‥2002年4月22日「スポーツ報知」より

ご存じの通り、ALICE IN CHAINS(以下AICと略)は95年秋リリースのサードアルバム『ALICE IN CHAINS』リリース後、表だった活動をしていない。レインの重度のドラッグ癖が原因と言われていた。サードアルバムリリース後はMTVでのアンプラグド出演やKISSのリユニオン・ツアーの前座として数回ライヴを行った程度。レコーディングに至っては98年秋にボックスセット用に録音した「Get Born Again」など数曲のみ(レインは単発でRAGE AGAINST THE MACHINEのメンバーらとCLASS99というユニットで映画のサントラにPINK FLOYDの「Another Blick On The Wall (Part 2)」カバーを録音している)。バンドはほぼ解散状態だったといっていいだろう。

しかし、それでもバンドは公には解散発表はしていない。ギターのジェリー・カントレルは97年に初のソロアルバム『BOGGY DEPOT』をリリースした際の取材で「状況が整うのを待っている」というような発言をしていたはずだ。そう、バンドのメンバーはレインの克服を根気よく待っていたのだろう。先の新曲録音も奇跡に近かったのかもしれない(たった1曲しか録音されなかったという事実が全てを物語っていると思う)。そして、完全復活は叶わぬ夢となってしまった‥‥

NIRVANAの現役時代を知らない10代のファンでも、メディアでの扱われ方等から彼等が如何に凄かったかを想像することが出来るだろう。SMASHING PUMPKINSはついこの間まで活動していたわけだし、PEARL JAMは未だ現役だ(日本のメディアでの扱われ方には疑問が残るが)。SOUNDGARDENは解散して暫く経つものの、ボーカルのクリス・コーネルがRAGE AGAINST THE MACHINEの残党とCIVILLIAN(のちのAUDIOSLAVE)というバンドを結成したことで関心が向けられつつあったし(結局クリスは脱退してしまったが)、シアトル出身ではないものの、STONE TEMPLE PILOTSも解散の危機を乗り越え、順調にリリースを重ね、最近ではツアーも行っている(相変わらず日本へは93年11月以来来ていないがために、その評価は低いが)。

しかし、AICはどうだろう? 名前は知っていても、その音に触れたことのある10代のロックファンはどれだけいるのだろう?

アーティストの死が切っ掛けで、初めてその音楽に触れるというケースはよくあることだ。過去にもhideを敬遠してきた洋楽ファンが彼のソロアルバムやzilchのアルバムに触れて、その音楽の素晴らしさに気付いたといったことがあった。そういう形で彼等の音に接することに不快感を示す者も多いだろう。しかし、こんな過小評価されてきた状況を打破するいい切っ掛けではないだろうか?

きっとこれまで表だって取り扱ってこなかった雑誌メディア(rcokin'on等)がここぞと追悼特集を組むのかもしれないが、その前にまず音に接して欲しい。そう思って今回、急遽予定していたオススメ盤と差し替えて、この92年リリースのセカンドアルバムを紹介することにしたのだから。

この「DIRT」というアルバムは92年秋にリリースされ、全米チャート初登場6位を記録し、約200万枚ものセールスを記録した出世作だ。このアルバムの発売前から彼等に対する評価は高まっていた。91年春にはMEGADETHのオープニングアクト、その後MEGADETH、ANTHRAX、SLAYERが交互にヘッドライナーを変わるカップリングツアー「CLASH OF THE TITANS」へも参加、更にはVAN HALENのオープニング等も務めた。そういえば『METALLICA』アルバムリリース時のインタビューでジェームズ・ヘットフィールドはお気に入りのバンドとしてAICの名前を挙げたりしていた。そう、AICは当初メタル系アーティストから高い評価を受けていたのだ。

それもそのはず、AICは結成当初はメタルバンドだったのだから。クリス・コーネルが「奴らは元はRATT(80年代に活躍したLAメタルバンド)みたいなファッション/音楽性だった」と日本の雑誌インタビューでチクッたりもしていた。その後、独自の音楽性を確立していった結果、唯一無二の存在となったのだ。

このアルバムのユニークな点はBLACK SABBATHやLED ZEPPELINを彷彿させるヘヴィリフや変拍子、そこに乗る不協和音気味コーラスだろう。アルバムトップの「Them Bones」からして上の要素を全て持ち合わせているのだから、最初に聴いた時のインパクトは絶大なものだった。勿論ファーストアルバムから聴いていたし、その音楽性を気に入っていたのだが(独自の暗さとハーモニーが好みだった)、このアルバムで完全に化けたといっていいだろう。

そして歌詞の難解さも大きな特徴といえるだろう。難解というよりも、芸術的といった方がいいのだろう。日本盤を買ったのなら、是非対訳に目をやってみて欲しい。この歌詞読みながら聴いてると、マジで凹む。サウンド的にはこれよりもヘヴィなアルバムはいくらでもあるが、ここまでトータル的に暗さ・重さを強調した作品はそうはないだろう。それもただ闇雲に暗いのではなく、芸術作品として完成され尽くしているのだから。

アルバムの音とは関係ないが、このアルバムからは4曲のシングルカット、5曲のビデオクリップが制作されている。シングルは「Them Bones」「Angry Chair」「Rooster」「Down In A Hole」、PVはその4曲に加え映画「SINGLES」サウンドトラックにも収録された「Would?」。この「Would?」がMTVでヘヴィローテーションされたお陰で、セカンドアルバム大ヒットの土台が出来上がったのだ。

今聴くと、他のシアトル勢とはかなり異質なサウンドを持ったバンドだっといえる。リフの刻み方等から、元々の出所(メタル出身)が伺えたりするが、そこから突然変異したかのようなサウンドアプローチ。そして何よりも、レインの独特な歌唱。これがあるとないとでは大違いなのだ。ジェリーのソロアルバムは確かにAICを彷彿させるものだった。しかし、いくらメインソングライターがアルバムを作ったからといって、そこに乗った「声」はレインではない。その違和感にどうしても馴染むことができず、このソロアルバムはあまり聴く機会がなかったと正直に告白しておく。かのSTONE TEMPLE PILOTSがAICとPEARL JAMのパクリバンド呼ばわりされたのも、今は昔。その後、彼等のようなサウンドを持ったバンドはなかなか現れなかった。それだけ個性の強いサウンドだったといえるだろう。

しかし時代は流れ、このアルバムから10年近く経った今、AICからの影響を公言するバンドが増えている。その代表格がSTAINDだろう。他にもAICから影響を受けたであろう新人バンドを幾つか見かけるが、そういうサウンドに出会うたびに「本家は何やってんだか‥‥」と何度思ったことか。その度にこのアルバムを引っ張り出して‥‥ってことが、特にこの1~2年の間に何度かあった。実は‥‥虫の知らせだったのだろうか、つい先日、AICのボックスセットを注文したばかりだった。

レイン・ステイリーの声や歌唱は本当に独特なものだった。聴いてすぐ彼のものだと判る程に。カート・コバーン程ぶっきらぼうでもなく、ビリー・コーガン程好き嫌いが激しいわけでもなく、クリス・コーネル程熱くもなく‥‥何か、人間ではなく別の生き物のように感じられる瞬間が何度かあった。例えば初期のデヴィッド・ボウイのアルバムを聴いてると、時々「この人は本当に宇宙人なんじゃないだろうか?」なんて思った時が10代の頃あったが、まさにそんな感じなのだ。

それにしても‥‥本当にいいアルバムだなぁ。90年代にリリースされた作品で死ぬ程聴き込んだ作品の上位5枚に必ず入るであろう1枚だといえる。このアルバムやファースト『FACELIFT』やサード、あるいはアンプラグド盤等を聴いた今の10代のファンは、どう感じるんだろう‥‥


     Did she call my name?
      I think it's gonna rain when I die.

            ‥‥"Rain When I Die"



▼ALICE IN CHAINS『DIRT』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2002 04 24 12:00 午前 [1992年の作品, Alice in Chains, 「R.I.P.」] | 固定リンク