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2002/12/19

HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(2002)

HANOI ROCKS、17年振りの復活。いや、マイケル・モンローとアンディ・マッコイの言葉を借りるなら、「再結成(Reunion)」ではなくて「再生(Rebirth)」と呼んだ方がいいんだろうな‥‥実際、これは復活っていうよりも、アンディとマイケルが組んだ新しいバンドという匂いがプンプンするし。そんなハノイの‥‥とりあえずラストアルバムとなったのが'84年の「TWO STEPS FROM THE MOVE」だから‥‥18年振りのオリジナルアルバムってことになりますか‥‥そうか、俺がロック聴き始めてからそれくらいの年月が経ったってことなのか‥‥そりゃ歳取るわけだ。当時中学に入学したばかりの、それこそアソコに毛が生え始めの童貞クンが、今や30を越えるオヤジの仲間入りなんだからさ。当時ハタチ過ぎだったマイケルも今や40に突入かぁ‥‥その割りに全然見た目が衰えてないところはさすがというか。俺も見習わなければ‥‥

そんな夢のような出来事‥‥再生の切っ掛け。それは昨年の「HANOI REVISITED」が切っ掛けだったんだろうな。アンディとマイケルが決裂してから15年以上経って初めてふたりが同じステージに並んで立ち、しかもハノイ時代の名曲やカバー曲をひたすら演奏する企画。これが切っ掛けなのは間違いない。フロントマンとして華があり過ぎ、それに匹敵するだけのパートナー(=ギタリスト)を見つけられずにいた孤高の存在マイケル。方や組むバンド組むバンド全てが短命に終わりながらも過去の栄光に決してすがることのなかったカリスマ、アンディ。二度とふたりが組むことはないだろうことは、古くからのファンならば誰もが判ってたはず。いくらマイケルがサミー(・ヤッファ。ハノイのベース。後にマイケルとJERUSALEM SLIMやDEMOLITION 23.で活動を共にする)やナスティ(・スーサイド。ハノイのギター。マイケルのソロに参加したのを切っ掛けに、後にDEMOLITION 23.にも加わる)とバンドを組んだりしても、メインソングライターであったアンディと組むことだけは決してない‥‥悲しいけど、それはつまり「食えなくなったメンバーが再び過去の栄光よ再び‥‥的に再結成」を意味することを知ってたから。だからマイケルがアンディ以外の元メンバーと共に活動しようとも、それがハノイにならないことを知っていたし、何よりも肝心のラズル(ハノイのドラマー。'84年12月に事故死)がこの世にいない事実‥‥それが「再結成はありえない」ことを物語っていたように思う。

けどアンディとマイケルは再び「HANOI ROCKS」の名の下に集まった。そこにはサミーもナスティもいない。勿論ラズルも。再びふたりが一緒に活動を始めるに当たり、それを「HANOI ROCKS」と呼ぶようになったのは、ごく自然な流れだった、とふたりは語ってます。そして最初に出した「再結成ではなくて、再生」‥‥たまたま新しく作ったバンドが出す音が「HANOI ROCKS」の名に相応しいものだった、と。

リアルタイムでふたりが動いてる姿を知らない後追い世代は喜んだと思うんですよ。素直に「再結成」を認めたはずなんです。けど、俺ら旧世代‥‥リアルタイムで彼等を知ってる人間はやっぱりどこか懐疑的だったはずなんです。「散々再結成を否定し続けたふたりが、何で今更‥‥」と。ソロでパッとしないふたりが、過去の名声で一旗揚げようって‥‥そんな感じじゃないかと。

だから俺も、春に地元フィンランドでリリースされたシングル「PEOPLE LIKE ME」を聴くまではずっと疑問を持ったままでしたよ。確かにマイケルにはアンディみたいなカリスマが必要だし、アンディにもマイケルみたいなフロントマンが必要だと思うし。けど、だからといって何もふたりが再び手を組む必要があったのか‥‥わざわざフィンランドから取り寄せましたよ、シングルを。で聴きましたよ‥‥余計に不安になりましたよ。良くも悪くもHANOI ROCKS。そういう音でしたし。好きか嫌いか?でいえば勿論大好きなんですが、何かマイケルのソロにアンディが参加しました、的イメージが強い楽曲だったから余計に不安になったし。

そうこうしてたら、今度はサマーソニックでの来日決定。不安を抱えながらも、表向きは大喜び。いや、嬉しかったんですよ素直に。けど‥‥やっぱり「けど‥‥」ってのが常に付きまとっていて。もし今のGUNS N'ROSESみたいなのだったらどうしよう‥‥とか、そんな感じで。自分の10代を支えたバンドのひとつだし、何よりも自分がプロのミュージシャンを目指したのはHANOI ROCKSがいたから、自分がシンガーとしてハーモニカやサックスを手にしたのはマイケル・モンローの影響だったから。それくらい自分にとって大きな影響を持った存在だからこそ、簡単に復活して欲しくない。安易なことはして欲しくなかった‥‥ファンの身勝手なのは重々承知。けど、それくらい自分に葛藤があったのは事実。

けどね‥‥そんなこと、あのステージを観たら正直どうでもよくなったよ。あのサマーソニックでのライヴ。あれが俺の全部だとは言わないけど、俺が求めるHANOI ROCKSが、俺が求めるロックンロールの現在・過去・未来が全部そこにあった。マイケルはどんなブートビデオで見るハノイ時代よりも、そしてこの10年のソロ時代よりも更にハイパーアクティヴでアグレッシヴだったし、アンディに至ってはもうそこにいてギター弾いて時々マイクの前でヘロヘロコーラスを入れるだけで神。ファンの贔屓目なんかじゃなくて、あの場にいた人間誰もがそう思ったはず。それだけの説得力を持つパフォーマンスだったんだよ。

というわけで‥‥改めて言わせてください‥‥


   Welcome back, HANOI ROCKS!


さぁ、前置きがかなり長~くなりましたが、やっぱりけじめとして書いておかなくちゃ、と思いこうなりました。やっぱりあのライヴを観るまでの、そしてアルバムを聴くまでの自分の気持ちを知って貰った上で皆さんにこのアルバムを聴いてもらいたいし、このレビューを読んで欲しいと思ったので、こういう形になりました。

ハノイのオリジナルアルバムとしては、通算5作目(コンピ盤「SELF DESTRUCTION BLUES」はカウントせず)、約18年振りの新作ですよ‥‥誰もが今年の前半、彼等が再びハノイの名を名乗り始めた時、こんなアルバムが出るなんて半信半疑だったはずなんですよ。きっとふたりのことだから、途中で頓挫するんじゃないか、と‥‥けど出来た。確かに予定よりちょっと遅れたけど(そのせいで、本来このアルバムを12月のオススメにするつもりが‥‥)、ちゃんと2002年中に出た。しかも1ヶ月後にはマイケルのソロまで出る。君らはZIGGYですか!?(何時の間に立場が逆転してんだよ、ったく)

楽曲のクレジットを見ると、日本盤ボーナストラックを含めた13曲(イントロ除く)のうちマイケル&アンディ名義の曲が4曲、マイケル単独が1曲、アンディ単独が2曲、マイケル&ジュード・ワイルダー(マイケルの妻。'01年6月に死去)名義が3曲、マイケル、ジュード&その他が1曲、カバーが2曲。過去のハノイはほぼ全ての曲をアンディが手掛けてきた事実を考えると、今のバンド‥‥アンディとマイケルの関係が如何にフィフティ・フィフティかが伺えるんじゃないでしょうか? 当然、マイケルはハノイ後、ソロアルバムを何枚も出していて、そこでかなりの楽曲を世に出してきたわけですから、ハノイ時代と比べてソングライティング力もアンディに肉薄する程伸びてるはずですし。また、そういったクレジットを見る前にアルバムを通して聴いた時、俺の第一印象として「マイケルのソロアルバムの延長線上にある作品」だと感じたんですが、その理由がマイケル単独やマイケル&ジュードの曲がアルバムの半分近くを占めているからだったんですね。

そう、ジュードはマイケルが再びアンディと組むことになる前にこの世を去っているわけですから、ここに収められているマイケル&ジュードの楽曲はハノイを意識したものではなくて、純粋にマイケル・モンローというシンガーの為に書かれたものなんですよ。そういう点からも、今回の再生が単なる再結成ではないことが伺えるんじゃないでしょうか?

カバー曲についてもコメントを。フィンランド盤シングルにも収められていた"Winged Bull"はかのダリル・ホールの作。勿論、HALL & OATESの曲で、彼等の'77年のアルバム「BEAUTY ON A BACK STREET」収録のナンバー。とはいってもかの有名な「PRIVATE EYES」前夜の楽曲なので、当然俺は知りません。なので原曲との比べようがないのですが、言われなければホール&オーツの曲だって判らないし、ああ、ハノイっぽいかなぁって気がしないでもないし。うん、いい曲ですよね単純に。

もう1曲は"Delirious"。再生ハノイのライヴでのトップを飾ることの多いこの曲は、かつてマイケルがソロでも取り上げた"She's No Angel"と同じくHEAVY METAL KIDSの曲。バンド名とは裏腹に、硬派なハード・ロックンロールを聴かせるバンド。これもカバーっぽく感じなかったのは、既にこの辺の曲もマイケルの色と化してるからかな? ホント、これもライヴではメチャメチャかっけー曲。多分これ、マイケルのリクエストなんだろうね。普通にマイケルのソロでやってても違和感ないし。つうか、マイケルのソロみたいだし、これなんて特に。

さてさて‥‥オリジナルの楽曲ですが、30秒程のイントロの後、如何にもハノイ‥‥というかマイケル・モンローな"Obscured"から勢いよくスタート。ハノイ時代の"Tragedy"やマイケルのソロ"Dead, Jail Or Rock'n'Roll"や"Just Because You're Paranoid"的なマイナーロックンロール。もうね、これ聴いてハマれなかったら、このアルバム聴く必要なし。続く"Whatcha Want"はミドル・ヘヴィナンバー。ちょっとJERUSALEM SLIMっぽいかな。後半のアップテンポになるところで、思わずゾクッとするよね。この曲のタイトルって、1月に出るマイケルのソロアルバムと同じ名前なんだけど、あっちのソロの方には入ってない‥‥どういうこと? で、シングルでお馴染みの"People Like Me"で再びアッパーに攻めて、ハノイ流バラード"In My Darkest Moment"に。この緩急ある流れ、いいわぁ。過去のハノイのアルバムの中でも一番完成された流れじゃない?(一部から「最もハノイっぽくないじゃん」という声も聞こえてきそうだけど、この際無視)この曲なんてハノイというよりも、そのハノイに影響を与えたMOTT THE HOOPLEみたいだよね。ハノイ版「All Young The Dudes」か? で、ライヴでもお馴染みカバー"Delirious"に続いて、アンディの単独作"A Day Late, A Dollar Short"。これがまたアンディらしい泣きのマイナーチューン。マイケルもソロ時代、こういう哀愁漂うマイナーキーのロックチューンを幾つか持っていたけど、ホントこういう曲をアンディに書かせたら、そしてマイケルに唄わせたらもう‥‥ああ、今俺はハノイのアルバムを聴いてるんだなぁと実感する瞬間。ギターソロではなくてあえてサックスがソロ取る辺りも抜群のセンス。いやーかっけーよマジ。

後半戦はマイケルの視点で語られる攻撃的なミドルロック"New York City"からスタート。歌詞がまた泣かせるのよ、「ニューヨークにはロックンロールが息づいている/やれることはいっぱいある/ニューヨークでの生活は辛い時もあるけど/またロックするために/いつか戻ってやる/今に見てろよ」。「今に見てろよ」ですよ!? 泣かせるじゃないですか、浪花節じゃないですか!(そ、そうか??)そこからホール&オーツのバラード"Winged Bull"でまた泣かされ、ハノイらしいアッパーなマイナーチューン"Watch This"、ブルージーな"Gypsy Boots"へ。アンディのドブロ(多分ね)とマイケルのオートハープのバトルに悶絶。出だし、ちょっと"Self Destruction Blues"を彷彿させるけど、こっちの方が重厚で渋いかも。その後シングルにも入ってたパーティーチューン"Lucky"で景気づけて、最後はアコースティック色が強いバラード"Designs On You"でしっとりとアルバムを締め括ります。アンディによるコーラスがホントにキース・リチャーズみたいで、更に渋みが増してます。日本盤はその後に(シークレットトラックを経て)アンディのボーカルによるボーナストラック"Check Out The Girl"がありますが、実はこの曲が一番従来のハノイらしいってのも、何だか微笑ましいというか。

こうやってアルバム通して聴くと、過去‥‥ファーストから「BACK TO MYSTERY CITY」までにあったような脳天気さが減退して、どっちかっていうと解散前のラスト作「TWO STEPS FROM THE MOVE」に近い印象を受けます。メジャー感がある、というよりもシリアスな空気感って意味でね。だって相変わらず楽曲にはB級臭漂いまくりだし。いや、勿論いい意味でね。ま、こうじゃなきゃハノイじゃないしね?

このシリアスさってのは、もしかしたらマイケルの持ち味なのかもしれないよね? ハノイ後のマイケルの活動を見た時、やっぱりシリアスな雰囲気のものが多いことに気づくし。ソロ最大のヒット作「NOT FAKIN' IT」('89年)もそうだし、マイケル版LAメタル・アルバムと呼ばれるJERUSALEM SLIMのアルバムもそんな空気を持ってるし。そうすると、やっぱり初期のハノイの脳天気さというのは、メインソングライターであるアンディの色なのかも‥‥実際、アルバム通してアンディがソングライティングに関わる曲よりもマイケルが関わる曲の方が多いわけだし。そういう点からすると、過去のハノイからすればとても異色作ってことになるのかな。でも、これはあくまで「新しいバンドのファーストアルバム」なのであって、「ソロとして活躍してきたマイケル・モンローが組んだバンドのアルバム」なのだと。イニシアティブを握る比重がちょっとマイケルの方が上なだけ。新しいバンドのアルバムとしても十分に楽しめるし、だからといって全然HANOI ROCKSではないわけでもない。いや、むしろここまでハノイ的な作品ってのは過去のマイケルのアルバムにはなかったわけで。そういう意味ではやっぱりこれはHANOI ROCKSのアルバムなんだなぁ、と再確認したり‥‥って意味のない同道巡りはこの辺にして。

いや~、年の瀬になってまさかこんなにかっけーアルバムに出会えるとは。しかもそのアルバムを作ったのがマイケルとアンディによるHANOI ROCKSだったというのが、俺にとっては凄く大きいわけで。だから気づけばこんなに長い文章になってしまってるわけで。多分俺と同世代で、'80年代にこの手のロックンロールやハードロックを聴いてきた人間なら間違いなく気に入るアルバムだと思います。逆に‥‥後追い組や、今回の再生で初めて彼等を知った若い人達にこのアルバムがどのように受け入れられるのかが気になります。過去に対する思い入れや知識が少ない分、余計な声に惑わされることなくストレートにこのアルバムを受け取ってくれるはずですが‥‥

‥‥へっ、俺!? んなもん、気に入ってるに決まってるじゃないッスか!これ聴きながらどんぶり飯5杯はいけますよ!

それにしても、HANOI ROCKSってのは特に世界中で大ヒットを飛ばした大物だったわけでもなく、むしろこれからって時に解散してしまった、ある意味カルト的な存在だったわけですよ。日本やフィンランドでは大人気、イギリスでもそこそこ人気があったわけだけど、結局アメリカではかのGUNS N'ROSESがフェイバリット・バンドとして名を挙げるまで、メジャー配給の「TWO STEPS FROM THE MOVE」以外のアルバムはリリースされていなかったわけだし。にも関わらず、そんなアメリカで一時代を築いたバンド達が「影響を受けたバンド」としてこぞって名を挙げる存在。現在、再生ハノイに対して好意的歓迎ムードなのは、地元フィンランドとここ日本のみ。まぁフィンランドの周りの国もツアーで回ってるはずなので、歓迎されているでしょう。けど、勝負はこれからですよ。再びイギリスで成功を手にするまでは、ホントの意味で「HANOI ROCKS is back!」なんて言えないでしょうしね。ホント、こんな時代だからこそ、彼等みたいなロックスターがこの世には必要なんですよ。自身も"People Like Me"の中で唄ってますしね、「Radio and MTV - You need people like ME」ってね。



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投稿: 2002 12 19 10:44 午後 [2002年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク