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2002年12月26日 (木)

PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(2002)

PRIMAL SCREAMの通算7作目のアルバム(ダブ・リミックス集『ECHO DECK』は除く)。

プライマルはデビュー時と現在とでは比べものにならないくらい別物のバンドになってしまったわけですが、それでも一環している点がひとつだけあるんですね。それは中心人物であるシンガーのボビー・ギレスピーのパンク振り。プライマル以前のJESUS & MARY CHAIN時代(当時はドラマー)から彼のキャリアはスタートしてるわけですが、そこでも終始一貫してパンクしてるわけです。この『EVIL HEAT』のブックレット裏表紙に、革ジャンの背中に「REBEL 25」と書かれた写真があるんですが、ボビー曰く「俺はパンクロッカー歴25年」というところからきてるそうで‥‥もうね、この頭の悪さが最高なわけですよ。

そんなプライマルの新作は、前作『XTRMNTR』を更に強力に、凶悪にした印象を与える楽曲によって構成されています。前作も十分にパンキッシュで攻撃的な作品集でしたが、新作を聴いてしまうともうなんていうか‥‥あれだけ良いと思ってた前作ですらヤワに聞こえてしまうんですから‥‥

まずね、プロデューサー陣からして狂ってるわけよ。前作にも参加していたジャグズ・クーナー(「Miss Lucifer」)の他に、MY BLOODY VALENTINEのメンバーで現在はプライマルズのサブメンバーでもあるケヴィン・シールズが6曲(「Deep Hit Of Morning Sun」「Detroit」「Rise」「"The Lord Is My Shotgun」「City」「Skull X」)、かのアンディ・ウェザオールによるTWO LONE SWORDSMENが5曲(「Autobahn 66」「Some Velvet Morning」「A Scanner Darkly」「Space Blues #2」「Substance D」)それぞれプロデュースを手掛けているわけです。また、シングルオンリーですがATARI TEENAGE RIOTのアレック・エンパイアが「Miss Lucifer」のリミックスを手掛けていたりもします(これがまんまアレックといった感じで笑えるのですが)。

そういったバラバラな製作陣が携わったアルバム、やはり音楽的にも結構多岐に渡っています。バンド演奏によるシンプルなパンクソング「City」や「Skull X」もあれば、完全にエレクトロニカしている「Deep Hit Of Morning Sun」や「Space Blues #2」もあるし、KRAFTWERK的ジャーマン・テクノっぽい「Autobahn 66」や「A Scanner Darkly」もあるし、前作に収録された「Swastika Eyes」の発展型的エレクトロ・パンクチューン「Miss Lucifer」「Detroit」もあるし、初の試みであろうエレクトロ・ブルーズ「The Lord Is My Shotgun」もある。正しく“ELECTRONIC GARAGE BAND FUTURE ROCK 'N' ROLL”という表現がピッタリな音だよね。アルバムとして音楽的な一貫性はあまり感じられないのかもしれないけど、俺にはこれが一本筋の通った音楽に聞こえるんだよね。それが先の「パンク」って言葉だったり、「REBEL MUSIC」という表現だったりするんだけど。

ジョー・ストラマーという人はTHE CLASHを通してロックンロールに拘らず、スカやレゲエ、ダブ等多岐に渡る音楽を「REBEL MUSIC」として表現してきたわけだけど、正しくプライマルというバンドはこのTHE CLASHの後継者的存在なわけですよ。'87年という時代にサイケ色の強いファーストアルバムでデビューし、1089年に時代錯誤なガレージロックを、1991年にはロックバンドとしてはいち早くレイヴ・カルチャーに接近し、かと思えば1994年には祖先帰り的なアメリカン・ルーツミュージックに接近し、トム・ダウドやジョージ・クリントンまで引っ張り出してしまう。1997年にはレゲエやダブ等に影響を受けたエレクトロミュージックを我々に提示し、2000年には更にそれらの音楽を拡大/拡散したような作品を生み出す‥‥アルバム毎に音楽的変化を繰り返しながらも、常にボビーの頭の中には「パンク」というキーワードがあったはずなんです。それは社会に対する怒りであり、ロックシーンに対する挑戦状であったり、我々ファンに対する啖呵であったり。人によっては「こうコロコロとやってること変えるなんて信用ならない」と思うでしょうけど、俺は逆に「だからこそ信用できるんだよ、この男は」って感心しちゃうんだわ。

音楽的にはもう、何も言うことはないよ。聴いて肌で感じで欲しい、そんな狂った音が満載。是非大音量で聴いて欲しいですね。そして出来れば日本盤の英詞を読みながらもう一度聴いてみてください(ボビーの意向によって対訳は載せていないそうです。が‥‥当初は全曲対訳が付くはずで、実際それに当たった人が全訳したそうですが、内容があまりに過激で酷かったそうで、日本のレコード会社側が掲載を中止した、という裏話も耳にしてます)

これがロックンロールの未来だとは言わないけど、間違いなくこれもロックンロールやパンクロックのひとつの形だと思います。人によってはこれを「エレクトロ・ロック」と呼ぶかもしれないし、あるいは「テクノ」もしくは「エレクトロニカ」と呼ぶかもしれない。もっと酷い人になると「クズ」と言い切ってしまうかも‥‥それでいいと思います。そういう風に一筋縄でいかない、ホントにイカレたアルバムだと思うので。個人的には2002年の10枚に入る作品ですね。

 


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