2004/07/24

JACK JOHNSON『BRUSHFIRE FAIRYTALES』(2002)

元プロサーファーが音楽をやる、なんてことはよくわるわけで。けど大概はハワイアンだったりパンクだったりするわけですが(それは偏見か?)、ここに紹介するジャック・ジョンソンの場合は‥‥例えばベン・ハーパーであったりG.ラヴであったり、そういったアコースティック主体のレイドバックしたポップ/ロックを聴かせてくれるわけです‥‥と思ってたらこのアルバム、そのベン・ハーパーもスライドギターで参加してたのね。成る程、納得だわ。

ジャックが2000年にインディーズからリリースしたこの「BRUSHFIRE FAIRYTALES」はその時点で20万枚ものセールスを記録したことから、後にユニバーサルとメジャー契約し、このアルバムをそのままの形でメジャーから再リリース('02年)したのでした。よくありがちな「メジャー向けに曲を差し替える」とか「ミックスし直す」「音を加える」といった作業は一切されず、最初のままの形で再リリースされています。

ハワイのオワフ島出身のジャックはいろいろな側面を持った素晴らしい才能の持ち主のようで、例えばサーファーとして名を馳せただけでなく、映画学校を卒業していたり(その絡みで後に映画や映画音楽に絡むことになるんでしょう)、こうやって曲を書いて歌を歌ったりギターを弾いたり‥‥羨ましいくらいに「勝ち組」な男じゃないですか。しかもアルバムが全米ナンバーワンになるような大ヒットまで収めるんですから。

上にも書いたようにこのアルバム、決してハワイ出身の彼らしい音楽をやっていると断言できるような内容でもなく、良い意味でユルい作風で統一されています。確かにその片鱗は見え隠れするんですが、それ以上にもっと大陸的なノリも感じられるし‥‥例えばブルーズやフォークといった、もっと本土的な色合いといいましょうか。上に挙げたようなアーティスト達にも共通する要素が多々見え隠れするわけですが、個人的にはもっとユルい印象があって、だからこそこれらのアーティストの中で最も愛聴してるんだろうな、と感じるわけです。

基本はアコースティックギターがメインなんですが、曲によってエレキを弾いていたりもするし、かといって歪みまくりのディストーションギターは皆無なわけで。リズム隊もスカスカで隙間ありまくりの演奏。ギターはその隙間を埋めるんじゃなくて、その上を自由に泳ぎまくってる‥‥いや、サーファーらしく「音の波」に乗りまくってるといった感じでしょうか(思わず自分で「上手い!」と膝をポンと叩いてしまいましたよ)。決して高揚感のあるタイプの音楽ではないですが、これも「アメリカン・ロック」のひとつの流れだよな、と。なんでこれが全米でウケたのか、聴いてみてよーく判りましたね。

よく彼に「癒し」とかそういう要素を求めたり口にする人がいますが、個人的にはそれともちょっと違うかな‥‥という気がしてるんですよね。ま、確かに聴いてるとリラックスするし、肩の力抜けまくりになるんですが‥‥自分が求める「癒し」とはまた違うんですよね。もっとこう‥‥大自然‥‥海辺や山で酒呑みながら、ユルーい感じで寝そべって聴く‥‥それを他人が「癒し」というなら、それはそれで否定しないけど‥‥とにかくそういう音なんですよ、俺にとってのジャック・ジョンソンって。

実は俺、アルバムよりも先にライヴで彼の「音」に出会ったわけで。それが昨年の朝霧JAMでのこと。その時はそこまで「これサイコー」とは思わなかったものの、でも間違いなくあの雰囲気にピッタリだったわけで‥‥気づいたらアルバム1枚買って、2枚買って‥‥で全部揃えてて。今年のフジロックでも勿論観る予定で、更にはその後の単独公演のチケットまで取ってしまったわけで。同時に彼の盟友・ドノヴァン・フランケンレイターにまで興味が向き、もうこの手の音から離れられない身体になってしまい‥‥アハハ。

昨日、午後から会社に出勤したんですが‥‥通勤路が海岸線なんですよ。この時期の海辺、最高ですよ。そこをこのアルバム聴きながら車で走るわけですから‥‥あー、やっぱりこういうシチュエーションにピッタリだな、と。仕事前にユルユルの状態になってしまって、思わずそのまま会社行くの止めようかと思った程でして。ええ。

間違いなく、これからのシーズンにピッタリの1枚です。続くセカンド「ON AND ON」も名盤なわけですが、とりあえず最初はこのファーストから聴きましょう。セカンドよりもロック色が若干強めで聴きやすいですからね。



▼JACK JOHNSON『BRUSHFIRE FAIRYTALES』
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投稿: 2004 07 24 02:43 午前 [2002年の作品, Jack Johnson] | 固定リンク

2004/05/12

AVRIL LAVIGNE『LET GO』(2002)

今更うちでアヴリル・ラヴィーンを取り上げる必要があるのか、そしてその需要はあるのかどうか‥‥正直判らないんだけど、新作もリリース間近だし(って実は既に購入済みだったりしますが)、今週プロモーションで来日するし、夏には「SUMMER SONIC04」で2度目の来日公演を行うし、ってことで‥‥まずセカンドアルバムを取り上げる前に大ヒット作となったデビューアルバム『LET GO』について俺なりの感想を書いておこうかと思いまして。

2002年6月(日本は7月)にリリースされたデビューアルバム、先行シングル「Complicated」がいきなり全米シングルチャートのトップ10入りしてしまったもんだから、アルバムの方も初登場8位を記録、最高2位まで上昇し600万枚以上ものセールスを記録しています。また同アルバムからは他にも「Losing Grip」「Sk8er Bo」「I’m With You」がシングルカットされ、それぞれ大ヒットしています。

多分よく言われることだろうけど‥‥アラニス・モリセット以降の流れから登場したシンガーなんですよね(奇遇にもアラニスもアヴリルもカナダ出身)。アラニスが登場したのが95年、その後ミシェル・ブランチ等『アラニス以降』の流れを汲む女性ソロシンガーは沢山登場していますが、結局のところ手詰まり感が強く感じられ、しかも世の中の流れがロック的なものからよりR&B/ヒップホップ的なものへと移っていき、こういったシンガー達が苦戦するわけです。と同時にここ数年、ティーンエイジャーによるアイドルポップがアメリカでも流行し出し、TVのオーディション番組人気も手伝って、かなりの数のアイドルシンガー(男女問わず)がデビューし、チャート上でもそれなりに成功を収めています。

そんな中登場したのがアヴリル。彼女の音楽性はR&B色こそないものの、ロック/パンク的な色合いをよりポップな方向へと導き、ストリート的要素(ヒップホップ的な色合い)も取り込み、更には17歳でルックスも優れていたこともあって、気づいたら大きな成功を収めていた‥‥というのは言い過ぎかな? 俺にはそういう風に見えたんだよね、彼女の成功って。隙間産業って言い方はどうかと思うけど、すごく上手いやり方で成功したよなぁ、プロデューサーにしろスタッフにしろ上手いこと考えたなぁ、って関心したもの。

曲の制作にはアヴリルも関わってるみたいだけど(クレジットには一応全曲の共作者として彼女の名前が記されています)、基本的にはTHE MATRIXといったその筋では有名なソングライター/プロデュースチームが大きく関わった結果のポピュラリティーかな、という気も。基本的なものはアヴリルが書いているのかもしれないけど、それをまとめてビルドアップするのがそういった脇役達の仕事で、これがかなり大きいんじゃないかな。これだけ一流どころがいきなりデビューアルバムから参加してる辺りにいろんな政治色を感じたりもするけど、まぁ要するにそれだけ「売れる/いける」と周りが直感したから、ここまでお金を掛けてもらえたってのもあるんだろうな。そこはやはり彼女の魅力/才能あってこそ。じゃなきゃその辺のアイドルと何ら変わらないわけだし。

というわけで、曲に関しては文句なし。本当によく出来たポップロックがズラリと並んでおります。先に挙げたシングル曲は勿論のこと、他のアルバム曲に関しても基本的には「どれもシングルとして切っても大ヒット間違いなし!」な完成度。ひとつだけ難を言わせてもらえば、頭のシングル曲4連発以降の流れが、似たり寄ったりな点かな。似たようなテンポ、似たような曲調、似たような構成‥‥ミドルチューンが基本なんだけど、そんな中だからこそ「Sk8er Boi」みたいなアップテンポの曲は目立つわけで。パンキッシュなイメージもこれくらいしかないし。ライヴは観たことないんで想像でしか書けないけど‥‥GREEN DAYの「Basket Case」やMETALLICAの「Fuel」なんかをカバーしてるって聞いて、思わず納得しちゃったんだよね。要するに、盛り上げるためのアップテンポの曲が異常に少ない。もうちょっと曲のバリエーションに気を使ってもよかったんじゃないかな?という気が今となってはするわけですが、まぁこういう構成だから誰もが安心して聴けて、その結果大ヒットしたんだろうな‥‥とも思えるわけで。その辺りは続くセカンドアルバムで解消されていればいいんですが‥‥(購入したものの、現時点では未聴)

まぁそんなこと言っても、ここまで優れたアルバムってのもそうはないんだし、贅沢と言われてしまえばそれまでかな‥‥自分にとってはこれ、全然パンクではないし、ロックというわけでもなく、どっちかといえばポップスの範疇に入るんだけど、だからって劣るとか悪いってわけじゃなく、だからこそ優れモノなんだよなぁと感じるわけでして。EVANESCENCE辺りと同じ感覚で聴いてますね。ホント、売れるのがよく理解できるよ、こりゃ。



▼AVRIL LAVIGNE『LET GO』
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投稿: 2004 05 12 12:00 午前 [2002年の作品, Avril Lavigne] | 固定リンク

2004/04/10

Mr.Children『HERO』(2002)

  Mr.Children 24作目のシングル「HERO」は、アルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」の流れを組む、正しく「ポップの究極型」と呼べる最高のナンバーを収録した作品になっています。桜井和寿の小脳梗塞によるバンド活動の休止から5ヶ月、実質レコーディングはこの年(2002年)の9月頃から行われていたようですから、復帰後すぐに作業に入ったようですね。とにかく手の込んだ、魂のこもった1曲に仕上がったタイトル曲 "HERO" といい、地味ながらも非常に完成度の高い "空風の帰り道" といい、非常に純度/濃度が高いシングルに仕上がってます。

  桜井の悲劇というフィルターを通すことで、どうしても深読みしてしまいがちの歌詞ですが‥‥それがなくても、いろいろ考えてしまう "HERO" の歌詞は、ちょっと切なくて、それでいて胸が熱くなるような内容。同年代の男性だからこその共感というのもあるでしょう。そして「ヒーローになりたい」相手である「君」を誰に想定するかで、また聴こえ方も違ってきます。恋人、妻、あるいは子供‥‥残念ながら自分は後者ふたつを持った経験がないので想像でしか理解できませんが、それでもそれらを当てはめて歌詞を読んでいると‥‥不覚にもウルッときてしまう。そういう「ズルい」曲なんですよね、全く。

  「IT'S A WONDERFUL WORLD」でのラヴソングやバラード曲は、その歌われる対象が恋人だったように感じたんですが、ここではもっと広い意味を持たせている。「IT'S A WONDERFUL WORLD」が「ポップソングとしての匿名性」を意識した為にそういう風に書かれたのかどうかは判りませんが、そういう意味ではこの "HERO" は明らかに歌われる対象を絞っているように感じられます。にも関わらずここまで「ポップの究極型」として成立してしまうのは、それ以外の要素がしっかりしているからなんでしょうね。

  演奏のアレンジにしても、シンプルなバンドサウンドの上に温かみのあるストリングスが乗ることで、デジタルな側面よりもアナログな側面が強調されている(実際には打ち込みも導入されてるんですが)。しかしシンプルながらも書く楽器のプレイはしっかり練られているんだよね。特にベース。自分がベース弾くからってのもあるけど、特に「DISCOVERY」以降の中川のベースフレーズには目を見張るものがあります。地味なんだけど味わい深い、印象に残るフレーズが多いのね。今回は特にそれが際立っているように感じますね。

  カップリング曲 "空風の帰り道" は如何にもカップリング/アルバム収録曲といった感じの地味目の1曲なんだけど、これも今のミスチルじゃなきゃ上手く表現できない楽曲なんじゃないでしょうか。この曲の歌詞も "HERO" 同様「~以後」を意識して(させて)しまう内容なんですよね‥‥地味なトーンのまま淡々と進んでいく曲調は、正に前シングル "Any" の延長線上にある路線なんですよね。ただ、明らかに響き方が以前とは違う。いや、違って聴こえるだけなのかな‥‥意識してないつもりでもやはり‥‥全く厄介なもんに巻き込まれたもんだよな、桜井も。

  とまぁ、駆け足でこのシングルについて書いてきたんだけど‥‥「ポップの究極型」と書いてはみたものの‥‥実は初めてこの曲を聴いた時、俺さ、全然頭に思い浮かべる事が出来なかったのよ、これらの曲を桜井が、ミスチルが歌い演奏している姿をね。明らかに「ミスチルの歌」だと聴いて判る内容なのに、それをバンドとして演奏している姿がね、全然イメージ湧かなくて。もしかしたら、この2曲に関しては‥‥「桜井和寿の歌」としてしか見れなくなっていたのかな、と。ソロとかそういう意味じゃなくてさ、もっとこう‥‥シンプルな意味で、別にミスチルである必要ないよな、と。良くも悪くもね、そう思ってしまったのよ。

  ま、そうは言ってみても、やはりこれも間違いなく「Mr.Childrenの楽曲」の一部なんだけどね。そしてこの後にリリースされた楽曲が "タガタメ" であり「掌/くるみ」だったというのも、何となく頷ける話ですよね。そういったことも含めて、俺は続くアルバムが『「Q」みたいな作風の作品集になるんじゃないか?』って書いたんですけどね。さて、実際にはどうなってましたかね‥‥。



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投稿: 2004 04 10 12:00 午前 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2004/04/09

THE JEEVAS『ONE LOUDER (EP)』(2002)

KULA SHAKERというバンドについて今更説明する必要もないでしょう。'90年代中盤、ブリットポップ・ムーブメント末期に現れ、胡散臭いインド崇拝に「時代の徒花」的空気を読み取り嫌悪した人も多かったバンド。そして「THE STONE ROSES以降」をOASISと共に最も具体的な形でサウンド化したバンド。それが自分にとってのKULA SHAKERでした。STONE ROSESというバンドに何の思い入れもない俺が、'90年代のイギリスから現れたギターロックバンドの中で、MANIC STREET PREACHERS、THE WiLDHEARTSらと一緒に肩入れしたバンド。それがKULA SHAKERであり、クリスピアン・ミルズというシンガー/ソングライター/ギタリストだったのです。

そんなKULA SHAKERは1996年にデビュー。同年秋にファーストアルバム「K」を日本先行でリリースし、日本盤が25万枚という新人としては異例のセールスを記録。同年12月の初来日公演は大盛況を収め、俺もリキッドルームに3日間連続で通ったものでした。

'97年初頭にはDEEP PURPLEでお馴染みのカバー曲(オリジナルはジョニー・サウス) "Hush" をリリースしたものの、NMEに掲載されたナチス崇拝と誤解されるような発言が波紋を呼び、イギリス国内ではバンドに対するバッシングが起こる。そしてその頃からKULA SHAKERはひっそりと影を潜める。

  '98年前半にはイギリス限定で新曲 "Sound Of Drums" がリリースされるものの、日本盤リリースには至らなかった為、大きな話題にはならず。

そして'99年2月。アルバムからの先行カットとなるシングル "Mystical Machine Gun" と共に、約2年半振りとなったセカンドアルバム「PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS」が発表されます。地味で難解ともいえる内容に動揺したファンも多かったようですが、それでも日本国内で約15万枚ものセールスを記録。6月には2度目となるジャパン・ツアーも決行され、俺も1日だけZepp Tokyoで楽しませてもらいました。

ヨーロッパでの夏フェスに幾つか出演した後、事件は起こります。1999年9月、クリスピアン・ミルズがKULA SHAKER脱退を声明、それによってバンドは解散。あまりにも急な出来事に、当時の俺は言葉を失い、酷く落ち込んだものです。

その後、プロデュースチームのTHE DUST BROTHERSと共にレコーディングに入ったとか、2000年夏にはこの年初めて開催されることとなった「SUMMERSONIC」にソロとして初出演するとか(結局レコーディングに専念することを理由にキャンセルされてしまいましたが)、今後はソロアーティストとしてやっていくんだな、とばかり勝手に思い込んでいました。また、それが彼らしいとも‥‥

しかし2002年。自体は急転します。いきなりバンド組んで、春にはツアースタート。7月に日本限定でEPをリリースし、その2週間後には「FUJI ROCK FESTIVAL」で来日‥‥何が何やらですよ、全く。

このシングル「ONE LOUDER」は、そんな来日記念盤となった、クリスピアンの新バンド・THE JEEVASの初音源となる1枚です。がしかし、このシングルがまた厄介な代物だったりします。

まず最初に、このシングルはあくまで日本向けに作られたものであり、それ以外の国では(勿論本国イギリスでも)リリースされていないという事実。つまり、ここに収められた3曲は日本でしか聴けないということになります。

更にこれら3曲は、アルバムレコーディング前からあったかなり古めの曲で、この後にリリースされることとなるファーストアルバム「1-2-3-4」とはスタイルや方向性がかなり違っていること。言い換えれば「最も過去のスタイル(=KULA SHAKER)に近い曲」をアルバム前に持って来て処分した、とも取れるわけで(実際、その後のアルバムではKULA SHAKERとはかなりかけ離れた、シンプルでレイドバックしたスタイルを提示しているし)。

最初にタイトルトラック "One Louder" がスピーカーから流れ始めた瞬間、俺は大きくガッツポーズしたのを覚えてます。何だよクリス、やりやがったな!!って。それがKULA SHAKERを薄めたようなものでも、俺にとっては「クリスピアンが帰って来た!」という事実だけで十分だったんですよ、少なくとも2002年の7月半ばの時点では。あのワウがかかったギターのフレーズを聴いただけでね‥‥

勿論他の2曲もそのスタイルをなぞった路線と言っていいでしょう。"Red" の怪しげというか胡散臭さもモロにKULA SHAKER時代のそれだし、ブルージーでワイルドな "Stoned Love" もしかり。多分KULA SHAKERのファースト「K」に収録されていても何ら違和感がない楽曲達なわけですよ。悪い訳がない。

‥‥けどさ。クリスピアンはKULA SHAKERを脱退してまでやりたかったことがこれなの?という疑問を持ったのも正直な感想。単純にキーボードが入ってないKULA、マリファナから解放されたKULAといったイメージで、特に目新しさは皆無。曲の良さとクリスピアンがそこで歌ってギターを弾いているという事実が光っているのみ。リズム隊の個性はこれといって感じられず‥‥勿論、この3曲だけで判断するのは酷ですけどね。

ところがさ。本当の衝撃はこの2週間後に待ち受けていたわけよ。そう、初来日‥‥フジロックでのステージですよ。前半は殆どが当時未発売のファーストアルバム「1-2-3-4」からの曲‥‥そりゃいろんな意味で衝撃ですわな。で、後半でKULAの曲をバンバンやるんだから。しかもトリオ編成で‥‥これもいろんな意味で衝撃。心中複雑ですよ。

とまぁこんな感じで、ほんの一瞬ですがこの俺をぬか喜びさせてくれたのが、このシングルの3曲。ホント、いい夢見させてくれたよ‥‥



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投稿: 2004 04 09 02:50 午前 [2002年の作品, Jeevas, The, Kula Shaker] | 固定リンク

2004/04/08

Mr.Children『Any』(2002)

  Mr.Children 23作目のシングル「Any」は、非常に可哀想なシングルだったと思う。会心の一撃となったアルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」から2ヶ月しか経っていないのにドロップされたこの曲は、まだまだミスチルの快進撃は続くんだよ‥‥というダメ押しの1曲になるはずだったのに。いや、実際にはいつも通り1位も取り、そこそこのヒットを記録したんだけど‥‥2002年7月、桜井和寿が小脳梗塞の疑いで緊急入院、及びMr.Childrenの活動休止。やはりこの事実を前にして、この曲のインパクトは薄まってしまったように思います。

  実はこのシングルのレビューをリリース当時に試みようとしたことがあったのですが、その矢先にあの出来事。結局まともな判断がつかないだろうなぁと感じたので、取り止めに。で、気づいたら桜井もミスチルも復活し、既にアルバムまでリリースしている始末。そろそろ本腰入れて『「IT'S A WONDERFUL WORLD」以降』について書いてもいい頃だよな‥‥ということで、「シフクノオト」と向き合う前に今一度、そこへ向かうまでの道のりを再確認しておこうかと思います(主に俺内で)。

  表題曲となる "Any" はイントロのピアノが印象的な、メロディアスなミドルチューン。サビで被さってくるブラスも気持ちいいし、田原健一によるギターも味わい深いし、リズムトラックのアレンジも地味ながらも凝ったものがある。そして桜井の歌詞/メロディ/歌唱。熱くなりすぎず、それでいて醒めてるわけでもない。サビでの盛り上がりはあるものの、以前のような劇的なまでの盛り上げがあるわけでもない。決して抑えて歌っているわけでもないのにそう感じてしまうのは、彼なりのテクニックなのか、それとも作戦なのか‥‥

  イントロからの流れを追っていくと、ふと "Tomorrow never knows" とイメージを重ねてしまうんだけど‥‥この曲って、もしかして "Tomorrow~" へのアンサーソング?なんて思ったりして。「心のまま」進んだ青年が「誰も知ることのない明日」を目指して迷走し、大人になった彼は「真実からは嘘を/嘘からは真実を/夢中で探してきたけど」、最終的には「今/僕のいる場所が/探してたのと違っても/間違いじゃない/きっと答えは一つじゃない」というひとつの真理にたどり着く。そんな一種悟りのようなものさえ感じさせる歌詞にしろ、言い方は悪いけど‥‥煮え切らないような劇的盛り上がりに欠ける展開/アレンジにしろ、桜井自身が当時感じていた「余裕」のようなものが生んだ産物なのかもな‥‥その先に待ち受けている「真実」が彼にとって辛いものであったとしても、ね。まぁその辺は結果論でしかないですけど

  散々「煮え切らない」「盛り上がりに欠ける」とか書いてるけど、決してそれを嫌ってるわけじゃないですよ。この曲にはこういうアレンジがピッタリハマっていて、全然アリだと思うし。むしろこのアレンジだからこその1曲だと思うし。決してシングルだけを想定して作られたものではなく、この先に待ち構えている次のアルバムへの布石‥‥パズルのピースみたいに考えて制作されてると思うしね。

  それはカップリングの "I'm sorry" にしても同様で、決してシングルのタイトルナンバーに持ってくるようなタイプではないものの、アルバムやカップリングとしては最高に良い役割を果たす作品として完成しているし。サビでのちょっと風変わりなコード進行とコーラスが印象的で、やはりブラスが被さっているんだけど "Any" 程目立ってない。曲も決して派手な盛り上がりをするアレンジではない。けど、何度もリピートして聴いてしまうし、気づけば口ずさんでしまう‥‥

  このシングルでの2曲って、共通してそういう「地味」「劇的な展開がない」「煮え切らない」みたいなイメージがあるんだけど、この辺が当時桜井及びMr.Childrenとして目指していた「ポップ」の、「IT'S A WONDERFUL WORLD」みたいな王道とは違った追求の仕方だったのかもしれませんね。勿論、ヒットメイカーでもある桜井のこと、頑張って抑えてみたものの、しっかり王道になっちゃってるんですけどね。

  あのアルバムとこの曲を引っ提げて長期のツアーをしていたら‥‥その後に "HERO" は生まれなかったかもしれない。いや、生まれたとしても、ああいった形にはならなかったかもしれない。そういう意味ではこの "Any" という曲及びこのシングルがひとつの分岐点になってしまったようですね。歌詞通り、正に「いつも答えは一つじゃない」わけだしね‥‥ 。



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投稿: 2004 04 08 12:00 午前 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2004/03/17

AUDIOSLAVE『AUDIOSLAVE』(2002)

2000年秋に空中分解してしまったRAGE AGAINST THE MACHINEの楽器隊が、元SOUNDGARDEN、当時はソロとして活動していたシンガー、クリス・コーネルと共にスタジオ入りし、リック・ルービンをプロデューサーに迎えてレコーディングしている、といった噂が2001年から出回っていたのはご存じでしょう。実際その後本当にレコーディングに突入し、2002年前半には新バンド「CIVILLIAN」としてのデビューアルバムがリリースされる予定でした。が、何故か急にクリスがバンドを脱退、予定されていた「OZZ FEST」への出演をキャンセルしたという話題が。ここで完全に立ち消えたはずだったこのバンド、結局クリスとRATM残党という同じ顔ぶれで新たに「AUDIOSLAVE」という名前で活動再開、同年11月にいよいよ話題のファーストアルバムがリリースされたのでした。

既にリリースから1年半近く経っているし、「何を今更‥‥」という気もしないでもないんだけど、いやいや、今だからこそ語ろうじゃないですか、このバンドについて‥‥。

俺は89年にSOUNDGARDENの『LOUDER THAN LOVE』を聴いて彼らに興味を持ち、91年の『BADMOTORFINGER』で完全に彼らにハマッったくちで、94年春に行われた来日公演にも足を運んだ程好きなバンドでした。一方RATMに関しても最初こそ印象がよくなかったものの、97年に前年夏のレディング・フェスでのライヴ映像を観て衝撃を受け、彼らにハマっていった人間です。どちらも好きだけど、どちらかというとSOUNDGARDEN側の人間である、ということを先に書いておきます。

聴く前から恐らく多くの人がAUDIOSLAVEが出すであろう「音」を、何となくでも想像できていたと思うんですよ。ヒップホップ版LED ZEPPELIN的な側面を持つRATMと、そのZEP以上にZEPらしいスタイル/音楽性を持っていたバンド・SOUNDGARDENのシンガーが合流することで、間違いなくZEP的オーソドックスなハードロックを再現するであろう、と。

実際にアルバムから聞こえてきたサウンドは、ほぼその想像に近いものでした。だから特に大きな驚きや衝撃もなく、納得ずくでアルバムと向き合うことができました。と同時に、「‥‥正直、こんな程度なのかな‥‥」と思ったのもまた事実でして。やはりこの組み合わせ、期待はかなり大きかったんですよ。特にSOUNDGARDENをリアルタイムで通過してない若い子にとっては、ある意味「伝説の存在」だったクリス(というのは言い過ぎかな?)が、当時リアルタイムでトップにいたロックバンド(RATM)と合体するということで、俺以上に期待してたんじゃないかな?

何がいけない、というわけじゃない。決してこの組み合わせは間違ってないと思うし、実際かなりしっくりきてると思う。思うんだけど‥‥まだまだこんなもんじゃないよね?と。特にクリスな。彼の声の衰え(枯れ具合)には正直ショックを隠し切れませんでした。確かにSOUNDGARDEN晩年もハスキーではあったけど、もっとハイトーンがすっきりと出たはずなのに‥‥ソロになってから落ち着いたトーンの楽曲ばかりだったのは、これも関係あったとか!?と疑ってしまう程、全盛期の輝きは見受けられませんでした。

しかし、じゃあそんなに酷いかというと、実は‥‥1曲目「Cochise」みたいな声を張り上げる曲では厳しいものがあるものの、例えば5曲目「Like A Stone」のようなトーンの曲になると逆に「このサウンドにこの声じゃなきゃいけない」という説得力を強く感じるわけ。4曲目「What You Are」みたいなモロにSOUNDGARDEN的な楽曲でもそうだけど‥‥要するにバンドとして、まだ「今のクリスの魅力」を最大限に発揮する方法を模索してる最中なのかな、と。いきなりスタジオ入りして、互いの手札を見せ合って作ったであろうファーストアルバム。そういう意味では「新しい武器」を手に入れたというよりは、これまで使っていた武器の「合わせ技」といった印象が強いかも。良い意味でも、そして悪い意味でもね。

「跳ねないレイジ」「ヒップホップ色のないレイジ」とか「サイケじゃないSOUNDGARDEN」「ドンヨリしてないSOUNDGARDEN」といった表現もできると思うけど、個人的には「シアトルの湿った空気」を「カリフォルニアの太陽」で照らしたような、そんな要素をこのバンドから既に感じています。カリフォルニア特有の陽気さや豪快さと、一年中曇りか雨というイメージが強いシアトルの繊細さや湿り気の融合‥‥それがAUDIOSLAVE「らしさ」とするなら、上に挙げたような「Like A Stone」みたいな楽曲が今後の彼らにとって大きな武器になることは間違いないでしょう。

しかし、そうはいっても彼らはロックバンド。より「らしい」豪快なロックも追求してくれると思いますよ。クリスに無理のない形でね(けど楽器隊には無理して欲しい‥‥という我が儘も言ってみたりして)。どちらにしろ、早ければ年内にはセカンドアルバムが期待できそうですから、その答えは意外と早く我々に届けられそうですけどね‥‥。



▼AUDIOSLAVE『AUDIOSLAVE』
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投稿: 2004 03 17 12:00 午前 [2002年の作品, Audioslave, Rage Against The Machine, Soundgarden] | 固定リンク

2004/02/29

ZIGGY『HEAVEN AND HELL II』(2002)

  デビュー15周年を祝うアニバーサリー・イヤー最後を締めくくるのは、このアルバムでした。ZIGGY名義に再び戻った復活作「HEAVEN AND HELL」(通称「金盤」)と対を成す形でのリリースとなった新作「HEAVEN AND HELL II」。ジャケット柄が全く同じで、その色だけが金色と銀色とで違うのみ。だから「銀盤」と呼ばれることになったこの作品集は、金盤とは正反対の内容なんですね。金盤が所謂「端的にZIGGYらしくない」パンキッシュでハイパーアクティヴな「動」の作品集だったのに対して、この銀盤はミディアム/スロー/アコースティック/バラードといった「静」の作品集。ふたつでひとつということなんでしょうけど、敢えてこうやってふたつに分けたのは正解だったのか失敗だったのか‥‥今となっては判りませんが、リリース当時はそれなりに賛否あったと記憶しています。デビュー15周年を記念する年にアルバムを2枚リリースし、その2枚が過去のフォーマットとはかなり違ったことに、ファンは動揺したんでしょうね。その気持ち、よく判りますよ。

  しかし、そうはいっても、そこはあのZIGGYのこと。名曲目白押しの1枚に仕上がってるんですね。元々ポップなメロディーが売りのひとつでもあるわけですし、その要素を余す事なく出し切った作品集と呼ぶ事もできると思います。所謂「バラード集」になっていないところはさすがと言うべきでしょうか?(この辺を勘違いして敬遠してるファンもいるかと思いますが、これは絶対に「バラード・オンリー」な作品集ではないですよ!)

  ベース・津谷のペンによる1曲目 "INNER SPACE FLIGHT #1" はどことなく「ZOO & RUBY」の頃を思い出させるミディアムスロウのポップナンバーで、如何にこのアルバムが肩の力を抜いて聴くべき作品かを示しているかと思います。続く "LOVE SHINE" はAEROSMITHやT-REXにも通ずるグルーヴィーなミドルチューン。そういえば初期のZIGGYにもこんな感じの曲、あったよね? つまり、決して今回の試みは新機軸なんかじゃなくて、過去からあった側面にスポットライトを当てただけ。どうしても「グラマラスでロックンロールしてるZIGGY」に注目が集まってしまうのですが、同時に彼らにはこういった要素も常にあったわけで。それをメンバー自身が再確認する作業としてもいい機会だったのではないでしょうか?

  本格的なブルーズロックに初挑戦した "ウヰスキーと混沌(CHAOS)" では松尾によるドブロギターと森重によるブルースハープが渋みを増し、これが金盤と同じバンドか!?と耳を疑います。ヘヴィでサイケな色合いを持つ "FAITH" も昔からあった要素を再構築した良曲ですし、先行シングル "誓い ~放浪者の丘の静けき夜~" も如何にもZIGGYらしいマイナーポップチューン。ちょっとRED WARRIORSの "ルシアン・ヒルの上で" を思い浮かべちゃいますね(「丘」というキーワードといい、バックに被さるアコギといい)。凄く「らしい」名曲だと思います。ホンキートンク・ブルーズといった印象が強い "HAPPY BIRTHDAY" は歌詞がちょっとアレですけど、この「時代に迎合しない」ところがまた彼ららしくもあり、同時にちょっと切なくもあり。そして最後の最後に、8分もある大作バラード "世界の果てまで"‥‥如何にも彼ららしいメロディーを持った、恐らく彼らの発表したバラード曲の中でも5本の指に入るんじゃないかと思えるような1曲で、ZIGGYの「これまで」と「これから」を繋ぐ歌詞を読んで、ちょっとだけウルッとして‥‥例えばMOTLEY CRUEでいう "Time For Change"、GUNS N'ROSESでいう "November Rain"、AEROSMITHでいう "Amazing" のような1曲といえるのかなぁ、と。こういう曲がちゃんとしっかり作れて、しかも人を感動させられるようなアレンジと演奏ができるロックバンド、そう多くはないと思いますが、金盤で試みたようなパンキッシュでハイパーな路線もそつなくこなしつつ、この銀盤で試みたような渋めの路線もしっかりこなせる。しかもちゃんと心に残るような名曲を連発できる。改めてこのバンドの現在における過小評価には涙が出てきますよ。

  おっと、忘れてた‥‥そういった新曲群に混じって、このアルバムには4曲のセルフカバーが含まれています。金盤/銀盤両方におけるメインテーマ曲といえるであろう "HEAVEN AND HELL"のアコースティックアレンジ版は節回しも所々変えつつ、更にメロディーを際立たせたアレンジが心憎い1曲。メロが良ければ、テンポの良いロックチューンであろうと、スロウなバラードであろうとどっちだっていいんだ、という事実。如何にこのバンドがメロディーにこだわっているかが判っていただけるかと思います。そして旧ZIGGY時代の名曲‥‥インディーズ時代からの "BURNING LOVE" を、かなり渋くてブルージーなアレンジで生まれ変わらせています。モロにHANOI ROCKSだった旧バージョンから20年近い年月を経て、文字通りの「成長」を果たした印象。原曲のイメージが強いから、古くからのファンにはどう受け取られるか不安ですが、俺はアリだと思います。そして中期の大ヒット曲 "JEALOUSY ~ジェラシー~" も渋く生まれ変わってます。原曲では松尾は参加していなかったわけですが、ここではスパニッシュギター的フレーズで彼なりの自己主張を体感できます。そしてこれも初期から "KISS ME"(原曲タイトルは "I WANT YOU TO KISS ME ALL NIGHT LONG")。ちょっとだけスウィングジャズっぽいアレンジで、原曲にあったグラマラスさが消え、軽快なピアノとコーラスが味付けとして絶妙。原曲を長年に渡って聴きまくってきた身としては、最初違和感を覚えたものの、やはり原曲のメロディーが持つ良さを再確認出来たという意味では、これはこれで正解だったのかなと思えるようになりました。セルフカバーが多めですけど、決してカバー曲に頼っているわけではなくて、あくまで今回のアルバムの目玉は新曲群なんだという事実がまず先にあるので、最終的にはそういった点は殆ど気にならなくなりましたけどね。他の人は知りませんけど、俺はそう感じています。

  よく「金/銀2枚から曲を厳選して1枚にまとめれば良かったのにね」という声を耳にしますが、俺はそれ、反対です。金盤はああいう曲が10曲、ああいう構成でああいうプロダクションで鳴らされているからこそ意味があるんであって、同時に銀盤もしかり。それが混ざり合うことは互いが互いの良さを打ち消し合ってしまうんじゃないかと懸念してるんですね。それだったらまだ2枚組としての方が理解できる‥‥と思ってたら、最近金&銀盤をワンセットにした2枚組がリリースされたようで。しかも金盤はリミックスされ、銀盤はリマスターされている‥‥ちょっと早過ぎませんか? もうちょっと先でもよかったような気がするんですが‥‥多分レコード会社の陰謀なんでしょうけど、ちょっとねぇ‥‥まぁ買うんでしょうけど。



▼ZIGGY『HEAVEN AND HELL II』
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投稿: 2004 02 29 12:51 午前 [2002年の作品, ZIGGY] | 固定リンク

2004/02/10

宇多田ヒカル『DEEP RIVER』(2002)

前作「Distance」から1年3ヶ月という短期間で届けられた宇多田ヒカルにとって3枚目のアルバムとなる「DEEP RIVER」は、彼女の人生において節目となる時期に制作~発表された、いろんな意味で記憶に残る1枚。

このアルバムと前後して、彼女のプライベートにはいろいろなことが起こりました。健康上の問題、そして結婚‥‥その詳細は改めてここに書くまでもないでしょう。そういうこともあってか、全体的にディープで重厚な印象があるこのアルバム。何もそれはビジュアル的な問題だけでなく(アルバムのジャケットやブックレット内の写真全てがモノクロというのも大きなポイントでしょう)、そのサウンドであったり歌詞にも明確に表れていると思います。

前作「Distance」からのリカットシングルであり、尚かつ新たなアレンジと歌詞の追加によって新しく生まれ変わった "FINAL DISTANCE" が、リリース当時起こった忌まわしい事件に対して彼女が「亡くなった子に贈る」とコメントしたことで、この曲が原曲以上に重いイメージを持ってしまったのも事実だし、彼女自身の名前をそのまま曲名にしてしまった "光" にしてもどこか決意めいたものを感じずにはいられないし、アルバム冒頭を飾るシングル曲 "SAKURAドロップス" からもQUEEN末期に通ずる重厚さやシリアスさを感じるし‥‥そしてアルバムタイトルトラックである "Deep River"。これが決定的かな、と。もし当時ああいった出来事がなかったとしたら、ここまでヘヴィだとかディープだという評価はくだされなかったかもしれません。聴き手の勝手な決めつけや結びつけというのが非常に大きいとは思うのですが、それでも‥‥このアルバムの楽曲を当時、彼女がどういう気持ちで書き続けたのか、ちょっと気になるものです。

とはいうものの、シングルとしてリリースされた "traveling" のような軽快な曲もあるにはあるんですけど‥‥やはり全体的に同じようなトーンの楽曲で統一されている印象が強いですね。確かに"traveling" 1曲を取り出せば「ポップで軽快」という判断もできると思いますが、このアルバムの中に入れてしまうと、同じようなトーンで落ち着いてしまう。そういう不思議なアルバムではあるかな。

このアルバムの評価が一般的にそれ程高くないように、個人的に感じているのですがどうなのでしょう? 確かにシングル曲とアルバム用の新曲との間に「溝」が見え隠れするのも事実。メロディ的に似た曲が出てきてるのも問題ですし("嘘みたいな I Love You" と "光" の英語バージョン "Simple And Clean" のサビメロが似てる、等)、アレンジ的にちょっと弱い気が‥‥例えばジャム&ルイスを大々的に導入したり他のソングライターとの共作もあった前作と比べると、曲のバラエティーも狭まったし、何よりも1曲に対する手の込み入れ方がちょっと弱くなってるように感じられるんですね。良く言えばラフ、悪く言えばチープという。これが前作から1年ちょっとでリリースせねばならなかったことが原因なのか、それとも「どうしても早く世に出したかった」為の措置なのか‥‥

ただ、そうは言うものの、アルバムとして考えると実は一番トータルコンセプトがしっかりしてる作品集なのかな、とも思うわけで。既出シングル曲が軸になっているように見せかけ、実はアルバム用新曲がこのアルバムでは大きな役割を果たしている気が‥‥全体的に同じようなトーンだし、頭を "SAKURAドロップス" で、そしてラストを "FINAL DISTANCE" ~ "光" で固められているのでどうしても派手なシングル曲に耳に行きがちですが、このアルバム本来の持ち味を理解するには、実はアルバム曲にもっと目を/耳を向けるべきなのかな、と。

ソングライターとしての初期衝動をそのまま形にしたファースト「First Love」、ちょっと欲が出ていろんなことを手広く挑戦してみたいと考えた意欲作「Distance」、そしてアーティストとして、ひとりの女性としての「成長の記録」として形にしておきたかったトータルコンセプトアルバム「DEEP RIVER」。確かにアーティスト・宇多田ヒカルとしてはここでひとつ完結してしまったのかもしれませんね。10代のうちにこんな凄いアルバムを3枚も発表できたなんて‥‥と、ここでふと尾崎豊と重ねてしまいたくなってしまいました。実は尾崎の「10代三部作」と宇多田の3作って、共通項が多くないですか? その辺も(特に制作側は)意識してたのかな‥‥



▼宇多田ヒカル『DEEP RIVER』
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投稿: 2004 02 10 12:00 午前 [2002年の作品, 宇多田ヒカル] | 固定リンク

2003/12/02

REEF『TOGETHER, THE BEST OF...』(2002)

昨日の更新でLED ZEPPELINの「HOW THE WEST WAS WON」というライヴ盤を取り上げましたが、あの音源自体30年以上も前のものなんですが、全然色褪せてないんですよ。所謂「ブリティッシュ・ロック」と呼ばれるスタイルの基本となるものの全てがあそこに凝縮されているという意味でも、非常に興味深い作品であると同時に‥‥果たして最近のバンドでこういったスタイルを受け継いでいるバンドがどれくらいいるのか‥‥非常に気になるところです。

よくZEPをハードロックバンドとして捉える人がいます。それも間違いではありませんが‥‥そうすると、後期に行くに従って徐々に苦しくなるわけです。そういったスタイルからかけ離れていくわけですし。そういった意味での「ハードロック的側面の後継者」というのは、これまでもかなりの数いたと思うんですが、もっと広意義での「ロックバンド」となると‥‥特に'90年代以降のイギリスにはあまりいなかったように思います。そんな中、STONE ROSESがセカンドアルバム「SECOND COMING」で示したスタイルというのは正しく「'90年代的ZEPスタイル」でした(が、ファンには不評でしたが)。同じようなスタイルで考えると昨年ブレイクしたTHE MUSICもこの系譜に入るでしょう。

しかしもっと泥臭い、コテコテなスタイルとなると‥‥これが本当に数少ない。自分が思いつく限りでは、今回紹介するREEFくらいじゃないでしょうか。他にももっといたんでしょうけど、セールス的にも成功を収めたバンドとなると、やはりREEFしか思いつきません。上記の2バンドが非常に現代的でスタイリッシュなのに対し、このREEFはホントに時代遅れで、何もこんなことを21世紀目前にやらなくても‥‥と呆れてしまうようなど真ん中の剛速球を投げ続けてきたんですから。そんな直球勝負の歴史を綴ったのが、今回紹介するベストアルバム、「Together, The Best of...」。日本では2002年の秋に先行発売され、本国イギリスでは今年2003年初頭になってようやくリリースされたこのアルバム、歴史を総括する以上の意味合いを持つ1枚となってしまいました。

所謂シングルヒットを殆ど抑えた内容になっていて(勿論選外になった曲もあるんですが、大ヒットナンバーはほぼ収録されてます)、ファーストアルバムから2曲、ファースト未収録のシングル1曲、大ヒットしたセカンドから4曲、サードからは1曲(何故 "New Bird" を外したんだよ!!)、4作目「GETAWAY」からも1曲という形になってます。まぁ確かにサードと4作目は大ヒットには程遠いし(サードはそれでもまだトップ10入りしたんだよね。4枚目は10位圏外だったけど)、大ヒットしたセカンドからのシングルは全部入ってるんで、入門編としては非常に重宝する内容かと思います。

そしてこのアルバムの凄いところは、それ以外に新曲が5曲収録されている点でしょう。ポップでストレートな方向に移行した「GETAWAY」路線ではなく、サード以前の泥臭いルーズでグルーヴィーなロックンロール路線に回帰している点が非常に興味深く、「やっぱ小難しいこと、俺達にゃ無理!」という開き直りすら感じられます。自分達が最も得意とする方法で、更に純度の高いモノを生み出す。これが功を奏し、ただのベスト盤というよりも「REEFの第2章」を予感させる内容になってるんですね。プロデューサーもセカンドやサードを手掛けたジョージ・ドラクリアスが復帰、正に「あの時代」を彷彿させる作風で、好きな人にはたまらない内容になってます。

日本盤には更に2曲の新曲(内1曲はスティーヴィー・ワンダーのカバー、"Love Having You Around")がボーナストラックとして追加収録されてます。これはシングルカットされた新曲 "Give Me Your Love" のカップリング用にレコーディングされた曲なんですが、これらを含めると都合7曲の新曲が聴けることになります。既出ヒット曲が9曲に新録曲が7曲。バランスとしては最高じゃないでしょうか? ベスト盤だからいいや‥‥とかいって無視すると罰が当たりそうな程に豪華で、重要な1枚。ブリティッシュ・ロック好きを自称する人なら絶対に聴くべき1枚ですよ、これ。

上で「歴史を総括する以上の意味合いを持つ1枚」と書きましたが、正にそういうことなんです。ところが‥‥それだけでは済まなくなってしまったんですね。まず‥‥ま、ベスト盤リリースの時点で何となく想像がついてましたが‥‥このベスト盤リリースを機に、REEFはレーベルからドロップしてしまいます。更に‥‥ドラムのドミニクが脱退してしまったという話が飛び込んできてます(今年4月には来日公演も行ってるし、6月にはインディーズ・レーベルから新曲 "Waster" もリリースしてるので、恐らくその後のことなんでしょうね)。今後を占う意味でも非常に重要な作品だったのに、ホントの意味での一区切りとなる作品集になってしまうとは‥‥残念でなりません。

とにかくこのアルバム、日本盤をオススメします。全16曲で60分にも満たない、本当に濃い作品集ですよ。「グルーヴって何さ?」とか言ってる人、これ聴けば判りますから。



▼REEF『TOGETHER, THE BEST OF...』
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投稿: 2003 12 02 04:04 午後 [2002年の作品, Reef] | 固定リンク

2003/10/07

THE LIBERTINES『UP THE BRACKET』(2002)

何故俺がTHE STROKESよりもこのTHE LIBERTINESに惹かれるのか。理由は明確なのね。自分にとって「何がリアルなのか、どこにリアルさを感じられるか」といった命題にハッキリとした答えを提示してくれるのがLIBERTINESだったわけ。俺からすればSTROKESは優等生過ぎるっつうか。いいバンドではあるんだけど、正直「リアル」じゃないのね、俺にとって。

と、ここまで読んで「そもそも出身国も育ちも音楽性も違うふたつのバンドを比べること自体、間違ってんじゃねぇの?」と突っ込む人が多数現れそうだけど。あとSTROKESがちょっと不利なのは、俺がまだ彼らのライヴを生で観ていないという点。こればっかりはねぇ‥‥いずれフェス等で観る機会があると思うんだけど。その時に改めてふたつのバンドを評価してみてもいいかな。ま、今回のはちょっと乱暴だけど、自分の立ち位置を明確にするためにこういう書き方をしてみました。

LIBERTINES、イギリスでも話題らしいですね。勿論「何を今更‥‥」なのは判ってるんですが、俺ここ最近の洋楽ニュースに疎かったからさ。だってつい最近までLIBERTINESのメンバーの顔なんて知らなかったし(だからフジロックにピーター・ドハーティが来てなくても全然気づかなかった程だし)、音には興味はあってもメンバー構成とかその生い立ちにまで興味が持てなかったのね。でもさ、ここ数ヶ月‥‥トップの方で洋楽ニュースを追ってるでしょ。そこで改めて最近のLIBERTINESの動向を把握できたわけ。んで、知れば知るほど面白いなぁと。

勿論、この手のバンドはそれこそOASIS、MANIC STREET PREACHERS、もっと遡ればSEX PISTOLSだってLED ZEPPELINだってROLLING STONESだってBEATLESだっていたわけで決して新鮮とか目新しさそういったものに惹かれたわけじゃないんですけど‥‥やっぱりね、そういうサイドストーリーが魅力的なバンドって、当然ながらサウンドの方も魅力的なわけじゃない? そういうの(楽曲の良さ)が前提としてあるから、更に素行不良で捕まったりとかするとみんな喜ぶわけじゃない、「ロックだ‥‥かっけーっ!」って(んなこたぁないか)。

というわけで、やっと本題。このアルバム「UP THE BRACKET」はここ日本でも昨年末にリリースされたファーストアルバム。来日自体は昨夏のサマーソニックで先行していて、そこでのステージを観た人が衝撃を受けたってことで、更に口コミ(あるいは雑誌経由)で話題になったようだけど。そういった初期衝動性も勿論魅力的なんだけど、やっぱり俺が惹かれた最大の魅力は楽曲の良さなわけで。プロデューサーがミック・ジョーンズってことでTHE CLASHと比較される運命にあるんだろうけど、そういった直系にあるパンクロックだけでなく、パブロックだったりモッズだったりアシッドフォークだったりインディーギターロックだったり‥‥「1977」以降のブリティッシュ・ロックを現代の視点で描いたかのような楽曲ばかりなのね。例えば上に挙げたようなバンド‥‥MANICSやZEPやSTONES、BEATLESは同じようにひとつのスタイルに固執することなく、いろんな要素を取り入れ、自身の引き出しを増やしていったわけ。そりゃね、まだアルバム1枚しか発表してない、しかも今やメンバー分裂は必至な状態なバンドをそういった偉大な先人達と比較すること自体間違ってるのかもしれないけど、俺にそう言わせてしまうだけのパワーと魅力を持ったアルバムだったわけよ、このファーストアルバムは。

そう、だからこそSTROKESとは対極にいるバンドなのかもしれないよね。STROKESは優等生っぽいんだけど、もっと不器用なイメージがあるし。何となくだけどSTROKESはこのまま大きな路線変更はせずに突き進んでいく感じだけど、LIBERTINESは‥‥もし「この先」があるなら、このファーストとはちょっと作風の違ったアルバムをリリースするんじゃないかな、という気がするのね。いや「気がする」だけなんだけどさ。

まぁ何はともあれ、良いアルバムには違いないんだからさ。もしまだ聴いてないようだったら、これを機に聴いてみては如何でしょうか? もし今後、このバンドが最悪の決断を下した後で「あーライヴ1回も観れなかったよー」とか「バンド存続時に出逢えてたらなぁ‥‥」って思っても後の祭りですからね。そういう俺も、ピーターを含む編成でのライヴは1度も観れてないわけですが‥‥



▼THE LIBERTINES『UP THE BRACKET』
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投稿: 2003 10 07 03:33 午前 [2002年の作品, Libertines, The] | 固定リンク

2003/09/20

BON JOVI『BOUNCE』(2002)

ひとりのアーティスト、ひとつのグループが一度頂点に達し、その地位を維持するために奮闘し、時代の流れと共に落ち目になっていく。こんな光景、ロックやポップスを長年聴き続けていれば何度も目撃するもの。そうやって我々の記憶に残り続けるモノもあれば、時代の徒花として瞬時に忘れ去れれる存在もいる。けど、例えばそんな落ち目時代を何年も耐え続け、ひたすら作品を重ねていく中で再び頂点に達したアーティスト/グループって、一体どれくらいいるんだろうね? みんなが好きなアーティストの中にそういった存在っている? 少なくともそんなに数いないと思うんだけど。

今回紹介するBON JOVIはある意味、その「数少ない存在」の中のひとつだと思うんですね。ここ日本では80年代後半から現在に至るまで、常に安定した人気を保っているし、他のアジア諸国やヨーロッパ諸国でもアルバムやシングルは常にヒットチャートの上位に君臨し、ライヴをやれば数万人規模のスタジアムを満員にしてきた。けどそれは「本国以外」での話。ご存じの通りBON JOVIはアメリカのロックバンド。最初にブレイクしたのはここ日本だったかもしれないけど、彼等が80年代に大ブレイクしたのはアメリカでの大ヒットがあったからこそ。2枚連続でアルバムが1位(しかも共に500万枚以上のセールスを記録)、シングルヒットも連発。誰もが「国民的バンド」になったと思ってた矢先‥‥90年代に入ってグランジやヒップホップの台頭があり、それまでメインストリームと呼ばれていたようなバンド達は時代遅れ扱いされ、特にBON JOVIなんかは本国で「空白の10年」と呼ばれるような時代を送るのでした。とはいいながらもアルバムは出せば常にトップ10入りしたし、94年には「Always」という過去最大のヒット曲も誕生してるわけで。そかし、00年代のメガヒットと比べれば明らかに落ち目と言われても仕方ないセールスなのも事実。同じ頃、海外(日本やヨーロッパ)では東京ドームやウェンブリー・スタジアムを連日満員にしていたというのに。

しかし、時は流れ00年。彼等は起死回生の『CRUSH』というアルバムをリリース。日本やヨーロッパは勿論、本国アメリカでも久し振りのヒットを記録します。シングル「It's My Life」はMTVやラジオでも頻繁にかかり、ライヴもアメリカでは久し振りのスタジアムクラスを経験。久し振りに「アメリカにBON JOVIが帰って来た!」的歓迎ムードを体感したわけです。そしてそんな上げ上げムードの中、'01年にはロックトラックを中心に編集されたライヴベスト『ONE WILD NIGHT』を海外でリリース(後に日本でも限定リリース)、その勢いのまま次作の制作に突入したのでした。

そんな感じで、満を持して発表されたのがこの『BOUNCE』。オリジナルアルバムとしては前作から2年3ヶ月という非常に短いインターバルでのリリース。ライヴ盤も含めると00年から毎年アルバムをリリースしてることになります。如何にバンドが「今の上昇気流から外れないように」と気合いを入れて活動してるかが伺えますよね。

アルバムを最初に聴いた時、非常に硬質な印象を受けました。オープニングからダウンチューニングしたヘヴィなリフを持つ「Undivided」で攻めの姿勢を示し、続くシングル曲「Everyday」は従来の持ち味とこれまでに感じたことのなかった新しい要素を上手く融合した実験作になってるし、3曲目「The Distance」も大きいノリを持ったBON JOVIらしいメロディの1曲なのですが、バックトラックは今までとはちょっと違う色合いを感じる。ダウンチューニングしたギターが放つ奇妙なサウンドのリフ、そんな重々しいバンドサウンドに被さる生オーケストレーション。異質なんだけどBON JOVIらしい。前作での成功をそのままに、更にバンドとしてワンステップ上に行こうという意欲が見え隠れします。

しかし、その後は比較的落ち着いた要素が続きます。フォーキーなバラード「Joey」や如何にも彼等らしい埃っぽい「Misunderstood」、名バラード「All About Lovin' You」の3曲で、頭3曲のイメージを完全に覆してしまいます。つまりここでの3曲は従来のBON JOVIらしさを、最も得意とする方法で料理してるわけです。勿論、そこには今のBON JOVIもしっかり感じられるわけですが。

後半6曲はそういったイケイケモードと落ち着いたモードが交互に押したり引いたりします。現代的なノリを持ったヘヴィチューン「Hook Me Up」、大人ならではの落ち着いたバラード「Right Side Of Wrong」、壮大なんだけどどこか落ち着いたイメージを感じさせる「Love Me Back To Life」、如何にもなアコースティックバラード「You Had Me From Hello」、「It's My Life」の流れを組む彼等ならではの「Bounce」、最後を締め括るに相応しいバラード「Open All Night」。こうやってみると全体的にバラードが多いことに気づきますよね。実際最初に通して聴いた時は「あー、バラードばっかりで、ちょっと聴く頻度高くないかも」と思ったのも事実で、買って暫くして聴かなくなってしまったんですよね。自分の彼等に対する興味や好奇心も以前ほどじゃなくなっていたのもあったし。

しかし、バンドはこのアルバムで本格的な復活を果たしてしまったのですよ。アメリカでアルバムチャート初登場2位。『CRUSH』が確か6位くらいだったと記憶してるから、更に上を行ったということになるんでしょうね。丁度アルバムリリース直前に「スーパーボウル」か何かに出演してゲストライヴをやったのも影響したでしょうし。まぁそれだけ多くの人に待たれたアルバムだったってことなんでしょう。来日公演も東京ドーム2公演分が久し振りにソールドアウトで、追加&再追加公演も出た程ですし。アメリカでもこの夏までツアーをやっていたようですから、それだけ人が入ったってことなんでしょう。とにかく完全に復活したと言っていいんでしょうね。

最近、自分の中でこういったアメリカンロックやアメリカンハードロックに対する興味が再び高まっていることもあって、久し振りに聴き返したんですよ、このアルバム。そしたらね‥‥本当に良かったんですわ。いや、確かにバラードは少し多いと思いますが、それは前作(『CRUSH』やロックトラック中心のライヴ盤『ONE WILD NIGHT』)からの反動でこうなったのでしょうし、まぁ彼等も皆40過ぎ、もうちょっとレイドバックした方向に行きたいのかもしれないし。けど同時にロックし続けたいという気持ちもある。バランス的には「柔」の方向に傾いているように感じられるんですが、全体を通して聴いてみると意外と「硬」な印象が強いアルバムだったことに改めて気づくわけで。そういう意味ではバラードが多いながらも硬派なイメージが強い『NEW JERSEY』と共通するものがあったりなかったり。『CRUSH』が『SLIPPERY WHEN WET』的アルバムと呼ばれることからも、この『BOUNCE』もそういった感じで出来ていったアルバムなのかもしれませんね。

BON JOVIは今世紀に入ってから本当に休み知らずな活動を続けています。来月にはアコースティック・アレンジや実験的なアレンジを施した過去の名曲達を集めた新録編集盤『THIS LEFT FEELS RIGHT』もリリースされるし、来年2004年はデビュー20周年記念のボックスセットも発表される予定。恐らくオリジナルアルバムは2005年以降になるんでしょうけど‥‥毎年こうやって何かしら音源をリリースしてくれるなんて、90年代後半では考えられなかったことだから、ファンにとっても嬉しいんじゃないですか?

最後に‥‥BON JOVIは決して「過去の焼き直し」をして再び頂点を手にしたんじゃない。80年代の偉業と比べれば最近の作品は質が下がったと嘆く旧ファンも多いだろうけど、アーティストはそうやってドンドン先へと進んでいくもんだと思ってます。それが我々の望んだ方向でなくても。それはどのアーティストにも当てはまることなんじゃない? ねぇ、心当たり、ない?



▼BON JOVI『BOUNCE』
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投稿: 2003 09 20 12:00 午前 [2002年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2003/09/03

44MAGNUM『IGNITION』(2002)

  「日本のMOTLEY CRUE」も今は昔……そんな風に呼ばれ、鳴り物入りでデビューした'80年代初頭。あれから20年近く。解散から数えても10数年。まさか21世紀に44MAGNUMがオリジナルメンバーで復活するとは思ってもみませんでした。いや、誰が想像したよ? そもそも需要があるのか?って話ですが‥‥個人的には「ほほぉ~、面白いじゃない。一体何をやろうってぇの??」と、ちょっと意地悪な期待の仕方をしてたんですね。

  ご存じない人の方が多いと思うので、改めて説明。このバンドは'80年代初頭にデビューした国産ヘヴィメタルバンド。当時、LOUDNESSやBOW WOW(後のVOW WOW)、EARTHSHAKERといったヘヴィメタルバンドが続々とメジャーデビューを果たしていく中、このバンドも同じムーブメントで括られてデビューしたわけです。そのルックスやストレートなハードロックサウンドから、「日本のMOTLEY CRUE」なんて呼ばれることもしばしば。メンバーはPAUL(Vo)、JIMMY(Gt)、BAN(Ba)、JOE(Dr)の4人。'83年にアルバム「DANGER」でデビュー後、'89年の解散までに6枚のアルバムを発表しました。アルバム毎に変化していく音楽性は、徐々にヘヴィメタル/ハードロックの枠から飛び出していき、最終的にはダンサブルなポップロック路線にまで手を出す始末。最後は再びハードロックの世界へと戻っていくのですが、その過程でメンバーの脱退→解散となってしまうのです。その後メンバーはライナセロス(PAULが元爆風スランプの江川ほーじんと結成したファンクポップロックバンド)、TOPAZやSPEAD(JIMMYが参加)、ZIGGY(JOE)等で活躍します。尚、JOEは他にもDIAMOND☆YUKAIやhideのバンドメンバーとしても活躍してきました。最後のひとり、BANだけはその後音楽界から足を洗い、全く別の業界で普通に働いています(今回の再結成も、彼のスケジュールに合わせて活動してるみたいですし)。

  ‥‥とまぁ、こんな感じでよろしいですか? そういうわけで、彼等は'01年に再結成するわけです。最初はPAULとJIMMYが合流し、一緒に新しい音楽を作っていたわけですが、最終的にそれらを「44MAGNUM」名義で発表するわけです。この名前を使うということは即ち、BANやJOEの了承を得る、あるいは彼等も参加して初めて「44MAGNUM」と名乗れるわけです。PAULとJIMMYが選んだのは‥‥あくまで「PAUL、JIMMY、BAN、JOEの4人での44MAGNUM」という至極当たり前の答えでした。というわけで、全員のスケジュールに合わせてレコーディングを行った結果、'01年の再結成発表から‥‥いや、PAULとJIMMYとの二人作業から数えれば約2年近くもの歳月をかけて制作されたようです。

  現役自体も常に変化を重ねてきた44MAGNUM。この通算7枚目のオリジナルアルバムでも、その変化は更に続いています。短いインスト"ENTER"から実質1曲目"FAR PLANET"へと流れていくわけですが‥‥曲が始まった瞬間「‥‥はぁ~‥‥」という深い溜息をついてしまいました。44よ、お前もか‥‥

  所謂モダンヘヴィネス、ラウドロック、ラップメタル的要素をそこはかとなく感じさせるオープニング、そして明らかに第一声はラップボーカル‥‥RAGE AGAINST THE MACHINEやLIMPBIZKIT以降の音。確かに元祖・MOTLEY CRUEも'90年代半ばにそっちへシフトチェンジしましたが‥‥しかし落胆したのはほんの束の間。ラップボーカルはほんの数小節で、その後は一聴して「44MAGNUMだ!」と判るPAULのハイトーンボイス。確かにアレンジは現代風ですが、メロディは節回しは昔のまんま‥‥とまでは言わないものの、それにかなり近い作りになっていて、一安心。ただ、'80年代の王道路線を期待してたオールドファンには厳しい内容かと思われます。

  モダンへヴィンス風、インダストリアル風の味付けがメインで、今回はハードディスクレコーダーを駆使したというだけあって、生のバンドサウンドを加工してるのが耳につきます。打ち込みとの同期だったり、ドラムサウンドをぶつ切りしたりエフェクトかけまくったり、ギターリフもただ普通に弾くのではなくてサンプリングだったり。お堅い方々が聴いたら血管ブチ切れそうな勢いで否定しそうなサウンド。こんなの44でもなきゃメタルでもねぇ!とお怒りかもしれません。

  しかし、暫くメタルの世界から離れていた俺からすれば、ここで表現されているもの、これらは間違いなくヘヴィメタルそのものですよ。若手バンドによるモダンヘヴィネスとは一線を画する内容だと思いますね。それはサウンドの肌触りだったり匂いだったり味付けだったり。そしてそういった装飾だけでなく、根本にあるもの‥‥つまり4人が「新しい44MAGNUMを表現する」という気持ちで向き合って制作したという事実だけでも十分に「これはメタルだ」と言い切るに値すると思いますね。

  確かにこれよりも優れたラウドロックや若手バンドは沢山いるでしょう。けど、個人的にはこれを「PAUL、JIMMY、BAN、JOEの4人での44MAGNUM」で制作したということに意味を感じてるので、「40オヤジ共、頑張ってるなぁ」と嬉しくなっちゃうんですよね。だってさ、同じく再結成された他の同期‥‥LOUDNESSやEARTHSHAKERやANTHEMと比べて、これだけ過去に拘らずに前進する20年選手、どれだけいるよ!?

  近々、このアルバムはヨーロッパやアジア諸国でもリリースされると聞いています。あの頃('80年代)44MAGNUMが活躍したことを覚えている海外の人達がこの新しいサウンドにどう反応するか、そして普段ラウドものを聴き慣れてる若いロックファンにどうアピールするのか、非常に気になるところです。



▼44MAGNUM『IGNITION』
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投稿: 2003 09 03 03:54 午後 [2002年の作品, 44MAGNUM] | 固定リンク

2003/08/31

ROSSO『BIRD』(2002)

  '02年、いきなり登場したROSSOというトリオバンド。ボーカル&ギターにチバユウスケ(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)、ベースに照井利幸(元BLANKEY JET CITY)、ドラムにMASATO(ASSFORT)という一部納得、一部異種格闘技的な組み合わせによるこのバンド、しっかりアルバムまで作りライヴ三昧。ブランキー解散後、照井にとって一番大きなアクションであり、そしてチバの参加によってミッシェルが今後どう転がるのか、等々とにかくいろんな意味で注目に値するバンドだったのは確かで、恐らく多くの人がライヴで目にする前にこのバンドの音を「ブランキー+ミッシェル」と安直に想像したことでしょう。勿論この俺もそんな中のひとりであって、そこまで大きな注目というのはしてなかったんですね。ま、ブランキー自体そこまで熱中する程好きというわけでもなかったし、ミッシェルに対しても以前程興味が持てなかったし。

  けどね、実際に聴いた音‥‥最初に接したのは、アルバムリリース前に行われた「FACTORY」出演時のテレビ放送でした‥‥いや、最初に聴いた1曲、"シャロン"のインパクトが強烈で。買うつもりのなかったアルバムを速攻でネット注文したのは言うまでもありません。

  チバが歌詞を書いて歌ってしまえば、それはミッシェルと比較されても仕方のないことでしょう。曲自体は「ROSSO名義」で書かれているのでどの曲のどのパートを誰が作ったというのは正直判りませんが、確かにブランキーやミッシェルにも通ずる要素はそこら中から感じることができます。しかし、明らかにそれらふたつのバンドとの違い・違和感が大きいのも事実。

  ファーストアルバムってことでバンドとしての「初期衝動性」を強く求めたようなサウンドは非常に素晴らしいと思うし、恐らく二度とこういう「空気感」は作り出せないかもしれない。例えば初期数枚のブランキーやミッシェルのアルバムに感じられたモノと同様に‥‥けど、それでいいんだと思います。そういった「空気感」を求めて、彼等(特にチバ)はこのバンドに参加したのでょうし‥‥いや、あくまで想像ですが‥‥勿論、初期衝動を強く求めたからといって、若手バンドのような蒼いサウンドになるわけでもなく、MASATOが参加したからといってハードコアなパンクサウンドになるわけでもなく、そこはあくまで「照井+チバ」から生まれ得る楽曲なわけで。けど、ただの「ブランキーやミッシェルの亜流」には終わらない「ROSSOらしさ」も十分に感じられるわけで。むしろこれだけアクの強い表現者が別の場所で違ったことをやろうとしても、古巣と比べられてしまうのは宿命であり、そして全く違ったものなんて作れないわけであり、そして我々もそういった類のモノは求めていないわけで。そういった意味ではこのアルバム、多くのファンも納得がいく作品だったんじゃないでしょうか。

  このアルバム最大のポイント、個人的には「リズム感」だと思ってます。中村達也でもなくクハラカズユキでもない、新しいリズム感を得たことによる、それまでのバンド(ブランキーやミッシェル)とは異なった個性。"シャロン"や"星のメロディー"なんていう名曲達はそれこそそのふたつのバンドでやったとしても全然違和感がないし、むしろそうすることで新たなキラーチューン誕生ということになったのかもしれません。が、これをROSSOというバンドで、MASATOというドラマーによって演奏することによって(あるいはチバがメインでギターを弾くことによって)全く別物の、新しい世界が生まれたわけですから‥‥ミッシェルファンからすれば「これをミッシェルでやれよ!」と当時お怒りだったかもしれませんが、そこまで思い入れの強くないロックファンからすれば「普通にカッコいい、新しいロックバンドが、すっげーカッコイイ曲を沢山ドロップしてくれた」っていう新しい出会いがあったわけで。特に俺なんかはその後者に比較的近い思いでしたしね、リリース当時。

  その後、ミッシェルの活動が活発になっていき、ROSSOの活動は小休止といった感じになっているのか、あるいは「1回こっきりのユニット」だったのかは判りませんが‥‥今後(10/11以降)チバは再びROSSOに向かって行くのか、あるいは全く別の新しいプロジェクト(バンド)に着手するのか‥‥個人的にはこのバンドの「先にあるもの」を見て(聴いて)みたいと思ってるんですけどね‥‥



▼ROSSO『BIRD』
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投稿: 2003 08 31 12:00 午前 [2002年の作品, ROSSO, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/08/29

ソニン『津軽海峡の女』(2002)

  とでも言いたくなってしまいそうなこの曲。ソニン2枚目のソロシングルとして'02年11月にリリースされたこのシングルは、前作"カレーライスの女"に続く「女」シリーズ第2弾として、また前作のジャケットでの「裸エプロン」に続く企画モノ・ジャケットとして我々を魅了したのでした(いやそんなことはないが)。

  タイトルトラックとなる"津軽海峡の女"はアレンジャーに鈴木Daichi秀行と上杉洋史のふたりを迎えた、意欲作。リズムトラックは打ち込みなんだけど、あくまで「バンド形体」を模倣していて、適度に歪んだバッキングギターや所々に挿入されるソロがいい味を出してます。そこに生ストリングス、そして外人女性コーラスが加わることで、よりゴージャス且つ大きなノリを持つ1曲になってます。

  俺ね、最初にこの曲を聴いた時‥‥oasisの "The Masterplan" っていう曲を思い浮かべたのね。同じようにマイナーキーのミディアムスロウナンバーで、ちょっとヘヴィな側面を持ちつつ、生ストリングス等が加わることで壮大なイメージを作り出していた、あの名曲をね。"The Masterplan" も、そしてソニンの曲も、共に「ブルージー」だなと感じるわけですよ。『津軽海峡』ってのは、かの石川さゆりの名曲 "津軽海峡冬景色" のことを指してるわけで。演歌、つまり『日本のブルーズ』‥‥敢えて日本のそういった古典的且つ土着的な側面を色濃く表現することで、よりソニンの負の面を強調するだけでなく、非常にロックな人((c)つんく♂)だということを我々に証明してくれたわけです。

  俺ね、最初はこの曲に対する印象、あんま良くなかったのよ。確かにoasisのその曲は大好きなんだけど、何でこういう演歌調のフレーズをわざわざ入れるかなぁ、EE JUMP時代みたいに、そして前作以上にキワモノ的に扱われちゃうんじゃないの??って疑問があったわけ。けど、CD音源でこの曲をじっくり聴くと、そういったいろんな面が見えてきたり、そしていろんなことを考えさせられたり‥‥ま、それは俺がソニンという『表現者』に強い興味があったからこそなんですが。普通の人はそれこそ「イタい人」で終わっちゃうかもしれないしね。

  カップリング曲である"MISSING YOU"は'02年5月にリリース予定だったEE JUMP幻のファーストアルバム収録曲。ユウキのパートをそのままつんく♂がラップすることで事なきを得てます。アレンジには小西貴雄が当たってるんですが、例えば先日リリースされた安倍なつみの初ソロシングル"22歳の私"にも通ずる「チキチキ・サウンド」なんですね。けど、正直ソニンのこの曲の方がしっくりくるんですわ。メロディや曲の運びも関係してると思うんですが、こっちの方がより自然体。安倍の方は安倍なりの良さが確かにあるんですが、楽曲の総合的な完成度でいえば間違いなくソニンの方が数歩上ですね。この曲では事務所の後輩であるより子。がコーラスで参加してたりします。こうやって聴くと(前作での "愛はもっとそうじゃなくて" といい)、本当にEE JUMPのファーストアルバム発売中止は悔やまれますね。音源、どこかに落ちてないかしら?

  ソニンは歌も上手いですし、表現力もどんどん付いてきてるし、表情も良くなってきてる。しかし、まだまだ「ホントの一発」はかませてないと思うんですね。10月には約半年振りのシングルがリリース決定しましたが、どうやらまたまたキワモノっぽいノリみたいですし‥‥アルバム「華」で聴けるような正統派楽曲をストレートに歌うシングルをいきなりかまして欲しいなぁ‥‥なんて淡い期待を寄せているんですが。その時こそが、彼女がちゃんとした評価をされる時だと信じてます。そして、その日がそう遠くない将来、必ず訪れることも。



▼ソニン『津軽海峡の女』
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投稿: 2003 08 29 12:00 午前 [2002年の作品, ソニン] | 固定リンク

2003/08/16

NINE INCH NAILS『LIVE : AND ALL THAT COULD HAVE BEEN』(2002)

トレント・レズナー率いる‥‥というか、彼自身の別名だといっても過言ではないNINE INCH NAILSの、デビューから12年以上経って初めて発表されるライヴアルバム、それがこの「LIVE : AND ALL THAT COULD HAVE BEEN」。'99年に発表された2枚組アルバム「THE FRAGILE」に伴うツアー(同年冬、ヨーロッパからスタート)で'00年1月に初来日を果たしたNIN。その後『FRAGILITY V2.O TOUR』とバージョンアップした形で行われたUSツアーからのテイクを収めたのがこのアルバム。CD1枚ものということで残念ながら1本のライヴを丸々収録したものではないが(同時期にリリースされたDVDも然り)、そこはかの奇才、トレント・レズナーのこと。ライヴでの臨場感はそのままに、スタジオ作品とは違ったアプローチでひとつの『完成された作品集』に昇華してるように感じられます。多分、細部に渡っていろいろと手直しが加えられたと思うのですが、ちゃんと「ライヴアルバムらしさ」を損なわずにそれを成し得ているのですから、さすがとしか言いようがないでしょう。そういえばこのアルバム、当初はもっと早くに出る予定だったもんなぁ‥‥ツアー終了から1年半近く経ってからのリリース、ツアー終了後多少の休憩はあったものの、如何にこのアルバム(及びライヴDVD)に時間を割いたかが伺えるポイントではないでしょうか? っつうか、この「アルバム1枚に3~4年平気でかける」男が(まぁ素材は揃っていたとはいえ)たったの1年ちょっとでこれをリリースに踏み切ったのですから、それだけでも快挙といえるんじゃないでしょうか?

収録されている楽曲は、やはり「THE FRAGILE」リリース後のツアーということもあり、同アルバムからの曲が多く、それ以外は各アルバムから(とは言ってもそれ以前には2枚のフルアルバムと1枚のミニアルバムしか出てないわけですが)代表曲と呼べるであろう名曲群が満遍なく収められています。アルバムの流れも実際のライヴに倣って、同じように配置されています。NINのライヴでは定番といえる映像を駆使したビジュアル要素がない分、こういう風に割り切って1枚のアルバムに再構成したのは個人的には大成功だと思ってます。そういった要素が体験できないのだから、ライヴでの「アッパーなパート」を強調するのは自然な流れかと。中盤及びエンディングに「静のパート」を挿入していますが、これは約75分の流れを考えればごく自然ですし、特にダレることはないと思います。1本のフルライヴから削れるパートを可能な限り削り、それでいて実際のフルライヴの流れを壊すことなく見事に疑似体験させてくれているんだから‥‥うん、ホントよく出来たライヴアルバムだと思います。

このライヴアルバム、他のアーティストの通常のライヴ盤とはちょっと変わったポイントがあるんですね。それはアルバム1曲目"Terrible Lie"の曲頭と、ラスト"Hurt"の一番最後。それぞれフェイドインもフェイドアウトもせずに、いきなり音のブッタ切り状態でスタート/終わるんです。通常のライヴ盤って、曲がスタートする前に‥‥例えばオープニングのS.E.や客の歓声がドンドン大きくなっていって曲に入る、所謂「フェイドイン」してから曲がスタートすると思うんですね。逆にエンディングも曲が完全に終わって、客の大歓声の中ドンドン音が小さくなっていく、「フェイドアウト」して終わるはずなんですよ。それが『定番』なわけですが、このアルバムの場合はそういったセオリーを一切無視し、ブートレッグの如く音のブッタ切り。いきなりドラムのフィルインからスタートする。これから始まるぞ‥‥といった高揚感を一切味わうことのない状態‥‥あるいは「既に始まっている」状態なのかもしれません。同様にエンディングもギターのフィードバックやエフェクト音が延々と流れ、それも途中でいきなりブッタ切られるような形で終了。ライヴの余韻を一切味わう間もなく、一方的に終わるわけです。

これを「ライヴ盤というよりも『1枚の作品集』だから」といった見方をすれば、確かにそれもアリなのかなと思えますが、俺はむしろ「つまりトレントにとって、これは『日常の断片』でしかないんだな」と感じました。ライヴというと通常「日常の煩わしさを忘れさせ、現実逃避させてくれる空間」だったりするわけですが、このアルバムはそういった要素を他人とは共有しない、トレントと仲間達(バンドメンバー)との『ツアーの記録』であり、即ち『日常の断片』であると。それを加工して『1枚の作品集』として完成させただけなのかもしれませんね。まぁそうはいいながらも、しっかり歓声や大合唱も結構な音量で入ってるんですから‥‥単なるエフェクト音としてなのか、あるいは「トレントと仲間達(バンドメンバーとオーディエンス」と解釈しているのか‥‥それはトレント本人に聞かない限り判りませんが‥‥

最後に。現在はこのアルバム、ライヴ盤のみの1枚モノとして流通してますが、リリース当初は限定盤として上記のジャケットを用いた2枚組仕様でリリースされました。ディスク1に今回紹介したライヴ盤、そして過去のアコースティック風にリアレンジしたものに加え、シングルでしか聴けなかったアルバム未収録のアコースティックナンバーを1枚にまとめた「STILL」というタイトルの作品集がディスク2として付属されています。以前、「THE FRAGILE」制作時に「ピアノに向かって曲作りをしていた」ことがあったそうで、これはある意味その片鱗と言えなくもないでしょう。「動」の要素がないNIN、ライヴ盤のみを持ってる人も、これだけの為にこの限定盤を買うべきだと思いますね。



▼NINE INCH NAILS『LIVE : AND ALL THAT COULD HAVE BEEN』
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投稿: 2003 08 16 02:11 午前 [2002年の作品, Nine Inch Nails] | 固定リンク

Hermann H. & The Pacemakers『PINKIE'S ROCK SHOW』(2002)

  Hermann H. & The Pacemakersが'02年9月にリリースした、セカンド・フルアルバム「PINKIE'S ROCK SHOW」。このバンドを知ったのは2~3年前、多分HANOI ROCKSの国内トリビュート・アルバムでだったと記憶してます。いや、名前自体はその前から知ってたのかな、んで音を初めて聴いたのがこのトリビュートでのカバーで。勿論単なるカバーなのでそれだけで「こういうバンド」という風には判断しなかったわけだけど‥‥何故かピンと来なかったのね、残念ながら。で、その後も聴く機会が殆どなかったんだけど‥‥昨年春~夏にリリースされた2枚のシングル、"ROCK IT NOW!"と"アクション"。この2曲を有線で聴いてやられちゃったわけですよ。ホント、いい曲だもんね。で、この2曲が入ってるならって感じでアルバム買ったんだけど‥‥どういうわけか、買った当時は数回聴いたと思うんだけど、全然印象に残ってなくて。ところが、この春に某イベントで彼等を初めて生で観る機会を得て、改めて彼等の音楽性に惹かれ、帰宅後このアルバムを引っ張り出したら‥‥何だよ、全然いいじゃないかよ! メッチャ好きなタイプの音なんですけど。CD買い過ぎだね、マジで。こうやってちゃんと聴かずに通り過ぎちゃった音、もっと沢山あるんだろうなぁ‥‥

  というわけで、ヘルマン。見た目の派手さ(普通に考えれば無駄なメンバー構成とか。ま、全然アリですけどね)とは相反するような、意外と地味目なサウンドなんだよね。ギターロックかと思うとそうでもなく、もっとこう‥‥'80年代前半に聴いたような懐かしさ‥‥'80年前後のエルヴィス・コステロ(当然THE ATTRACTIONS時代ね)や初期XTCとかTALKING HEADS経由のニューウェーブっぽい色を持ってるんだよね。ま、シンセの音色とかちょっとしたアレンジからそう感じるんだろうけど(特にストレートなアッパー系が正にそれ)、これがね、俺的には思いっきり直球でして。とかいって特に初期XTCに影響を受けているかというとそうでもなく、'80年代中~後期以降の彼等をリアルタイムで通過してるんでそっちの方が思い入れ強いんですよね。ま、それはまた今度別項で話すとして‥‥

  こういう音をプロデュースするのってどういう人なんだろう?と思ってクレジットに目をやると‥‥ああ、成る程。Dr.Kyon(元ボ・ガンボス)の仕事なのか、これ。何か納得できる人選だなぁ。パンク経由というよりも、そこから派生したニューウェーブ経由でパンクをかじったかのような音、というか。例えばこれを俺と同年代、あるいは俺よりも4~5歳上の人達がやってたなら納得出来る音なんだよね。つうかいたもん、'80年代にこういうことをやろうとしてたバンド。けど問題は、これを(恐らく)20代半ばの奴らがやってるってことでしょう。しかもプロフィールとか見ると『はっぴいえんどやHM/HR等に影響を受け~』なんて書いてあるし。ますます正体が掴めないバンドだな、こいつら。

  でね、そういった'80年代初期のニューウェーブ経由といいながらも、それらの焼き直しに決して終わらず、むしろヘルマン風と呼んでも差し支えない「自己流サウンド」として成り立ってるんだもん。上に挙げたようなバンドの要素を感じるものの、決して似てるとかパクッてるわけではなく、余所を見渡すと他にはないようなオリジナリティを確立してると思うんだわ、彼等。その辺が好感持てるポイントであり、俺がこのアルバムを(今になって)何度も聴き返すことになった理由なのね。変にインディーっぽさに拘るわけでもなく適度にメジャー感も備え、派手そうなのに実は渋い、みたいな。小さくまとまってるなんて見方もあるだろうけど、いやいや、このバンドはまだまだこれからでしょう?

  ‥‥とか思ってたら、昨年末(だったか今年の頭?)にギターが脱退してしまい、バンドとしても非常に窮地に陥ってたわけですが、3月に観たライヴではギター1本で何とか持ち堪えていた印象が。初めて観た俺からすれば十分に楽しめた内容だったものの、古くからのファンにすればやはり少々物足りないものだったようで(ま、その辺は人それぞれでしょうから、一概に悪かったとは言い切れないでしょうけどね)。先日リリースされたミニアルバムも楽曲のパワーで乗り切ってる感が強かったので、このまま更に突き進んで「よりヘルマンらしい」サウンドを確立していって欲しいものですね。またライヴ観たいです、マジで。



▼Hermann H. & The Pacemakers『PINKIE'S ROCK SHOW』
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投稿: 2003 08 16 12:00 午前 [2002年の作品, Hermann H. & The Pacemakers] | 固定リンク

2003/08/14

岡村靖幸と石野卓球『come baby』(2002)

  結局、幻のユニットとして我々の前から姿を消した「岡村靖幸と石野卓球」。ユニット名のまんま、それぞれがソロとして独特な活動をしてきた個性的なアーティスト(ま、卓球は休止中ながらも電気グルーヴという「帰るべき家」があるわけですが)、そんなアクの強い二人がどういうコラボレーションを果たすのか。結局はこのシングル「come baby」1枚で事実上の活動停止となってしまったわけですが(本来、今年の前半に2枚目のシングルとアルバムがリリースされる予定だったんですが、どういうわけかリリース直前になって全てが白紙に。音源自体は完成しているようなんですが‥‥全て「あのお方」の気まぐれなんでしょうかね?)

  そもそも、2001年の時点で所属していたエピックとの契約も終了したと言われている岡村靖幸が、最後にリリースした "マシュマロ ハネムーン" 以来約1年半振りに公式発表したCD音源(あれっ、その間にも何か他アーティストとのコラボで歌ってたような記憶が。ド忘れしてるだけか?)でもあるわけだし、方や石野卓球の方も2001年秋に電気グルーヴの活動休止を宣言し、さあソロ活動どうなる?って時期に突如発表された音源だったわけですよ。そもそもこの二人って、昔からある程度の付き合いはあったと記憶してるんですが、そんな一緒に活動する程仲良かったんだっけか!?と最初に驚いたものの、けど冷静に考えるとそこまで違和感もないんですよね、岡村ちゃんと卓球って。共に日本の音楽界では異端だろうし、にも関わらず'90年代のメジャーシーンを駆け抜けてきたアーティストでもあり、実際のところ「どんな音出すんだよ!?」とワクワクしてその音を待ったのですが‥‥

  収録されているのは、たったの1曲。表題曲である"come baby"のオリジナル・ミックスと、そのPV用エディット・バージョン、そして卓球によるリミックスという計3バージョン。これ1曲でこのユニットの存在意義を語るのは危険だし、結局その他の音源が発表されることもなかったことから未だに謎の多いユニットだったわけですが‥‥あー俺、これ好きだなぁ。岡村ちゃんが歌う「新曲」という意味でも勿論、卓球が電気や自身のソロ以外で「歌モノ」をやろうとした時に、ああ、こういうことやるんだ!っていう驚きもありつつ、それでいて予想出来うる範疇外でもあるという。多少矛盾したこと書いてますが‥‥要するに卓球、自己流表現で「エレクトロクラッシュ」的なものをやってみたかったのかなぁ、と。

  ま、エレクトロクラッシュと一言でいってもいろんなタイプがあると思うんですが、要するに'80年代のニューロマンティックやエレクトロポップ的なサウンドの、現代版リバイバルといいますか。岡村ちゃんが歌うことで更にその色合いが濃くなってるように感じられるこの曲、サウンド自体は全然古くさくないわけですが、全体的に漂う「あの当時」の懐かしさ、いかがわしさ、雲散臭さ。そういったエレクトロクラッシュ系DJやアーティストとの付き合いもあるでしょうし、実際興味を持ってるのかもしれませんが、見事に「石野卓球meets岡村靖幸」として成立しているという。互いの個性の潰し合いには終わらず、互いが互いの仕事をちゃんとこなしつつ、それでいてしっかり他方に歩み寄ってるように感じられる‥‥だからこそ、この「続き」をもっと聴きたかったんだよなぁ。つうかそもそも、これってまだ「始まり」でも何でもないですよ。「これから何か始めるよ!」みたいな挨拶状というか、要するに試しにやってみた「テスト版」ですよね? これが上手くいったから、アルバム制作に踏み切ったんだろうけど‥‥嗚呼、勿体ない。

  岡村ちゃんの復活ライヴ@RIJFでもライヴの1曲目で歌われていたように、彼にとっては「消し去りたい、忘れたい過去」なんかじゃなくて、しっかり「輝かしき歴史の一片」として我々の前に提示してくれているこの曲。岡村ソロバージョンも良かったけど、やっぱり‥‥岡村&石野でのステージも観てみたかったなぁ‥‥



▼岡村靖幸と石野卓球『come baby』
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投稿: 2003 08 14 12:00 午前 [2002年の作品, 岡村靖幸, 岡村靖幸と石野卓球] | 固定リンク

2003/08/08

ZEPPET STORE『Singles and Rare 1994-2001』(2002)

  ZEPPET STOREが'02年3月にリリースしたベストアルバム、「Singles and Rare 1994-2001」。タイトル通り、シングル曲を中心に、数曲のレアトラックをプラスした代物。何故この時期に!?と当時は思ったけど、要するに彼等が所属していたレーベル「LEMONed」が配給元・東芝EMIとの契約を終了→レーベル解体が原因らしいですね。つまり、ZEPPETはこのベストを最後に契約を失った、と(ま、その1年後に再び東芝/ヴァージンと再契約するわけですが)。これは一種の契約消化作と呼べるわけですが‥‥これがね、侮れないわけですよ。

  収録された17曲中、過去にリリースされた全13枚のシングルのタイトルトラックを全て、年代順に収録。更に4曲のレアトラックもほぼシングルの流れ(年代)に合わせた位置に収録されていて、正しく「ZEPPET STOREの歴史」を過去から現代へと順に追っていく形で構成されています。

  ベスト盤というと、そのバンドのことをよく知らない初心者が「とりあえず代表曲をてっとり早く知る」為に手を出す、所謂入門編としての役割が大きかったりするのですが、今回の場合も勿論その役割を果たしつつ、更にこれまで彼等を応援してきたファンに改めて「ZEPPET STOREの凄さ」を認識させる為の、素晴らしいテキストにもなっているわけです。

  アルバムは1994年6月にインディーレーベル「UNDER FLOWER RECORDS」からリリースされたアルバム「swing, slide, sandpit」収録の"lacerate your brain"からスタート。現在廃盤の為、入手不可能となっている1枚からの音源ということで、やはりこのアルバム一番の目玉となっているようです。インディーギターロックの王道といえるようなスタイルで、歌詞は勿論英語。この曲を聴いてかのhideが彼等を気に入ったというのも、頷ける話。そしてそのhide絡みでアメリカでリリースすることとなったアルバム「716」からの"FLAKE"で、バンドはかなり成長します。2年の歳月やメンバーチェンジも大きいでしょうけど、何よりもバンドとしてのアイデンティティが確立されたのがこのアルバムからだったのではないでしょうか? UKギターロック、特にシューゲイザー系やDINOSAUR JR.といった辺りからの影響が強いディストーションギターによる壁のような音像が特徴で、その完成型といえるのがメジャーデビュー曲となった"声"だったと俺は思っています。そう、メジャーデビューした途端にそれまでのスタイルが完成型に到達してしまった。バンドは新たな模索を始めるわけです。シングル"TO BE FREE"や"SUPERSTITION"、メジャーファーストアルバム「CUE」はとりわけそういった「その後」を模索する姿をそのまま作品に閉じこめた形になっています。しかし、ここで古くからバンドを支えてきたギターの五味が脱退。ZEPPET STOREの「新たなる自分探し」の旅は再び振り出しに戻るわけです。

  が、バンドは「CUE」で得たものを早くも続くシングル"DON'T ASK ME WHY"、"LOOP"の中で活かし始めます。と同時に、ギターには新たに赤羽根が加入したことで、バンドとしても更に強靱になっていきます。更にこの時期、初期から彼等を支えてきたhideの死にも直面します。そんな中生まれた名曲"ROSE"は、メジャーデビュー後のZEPPET STOREの新しいスタイルの「ひとつの答え」でした。ディストーションギターによる壁をぶち壊し、その根底にあるメロディを全面にさらけ出すことで、よりバンドとしての強みを感じさせる。本来なら危険ともいえる行為ですが、このバンドはスタートした時点から優れたメロディを持ったバンドだったわけで、前任のギタリストが抜けた時点でこういう方向に進んで行ったのはむしろ必然だったのかもしれません。

  そういったスタイルを更にもう一歩押し進めたのが、本来デビュー曲候補として制作された"もっと もっと"、初のドラマ主題歌となった"遠くまで"の2曲。メディアへの露出も増え、テレビの音楽番組への出演も果たします。こうして少しずつ、彼等の知名度は「hideのお気に入り」といった枕詞なしで高まっていきます。その決定打となったのが、アルバム「CLUTCH」。チャートのトップ10入りを果たした、メジャーデビュー後の集大成ともいえる内容になっています。

  ある程度の成功を得たことで、更なる前進を考えた彼等は"EMOTION"、"DISTANCE"、"PRESENCE"といったシングルで新たな実験を試みます。ブリットポップ以降のUKロック‥‥MANIC STREET PREACHERSやBLUR、SUEDE、RADIOHEADといったバンドに通ずるアプローチ、そして積極的にデジタルサウンドを取り入れたり等、非常に攻撃的なサウンドに力強い『歌』が乗るという、バンドとしての過去と未来との架け橋的スタイルを模索し始めます。アルバム「GOOSEFLESH」を経て、更にシングル"TIGHTROPE"と"SEEK OUT"でその路線は極まり、続くアルバム「DINO」でひとつの完成を見るのです‥‥

  というようなストーリーが、この75分に及ぶ1枚のアルバムから伺えるわけです。初めてこのベストで彼等に触れる初心者にとってはこういう背景も初耳でしょうけど、既に彼等のことをよく認識しているファンにとっては、如何にこのバンドが突き進んで来た道が多難に満ち溢れていたか、そして常にこのバンドはそういった困難に真っ向から立ち向かって勝ち続けてきたか、という事実を再確認させてくれるわけです。だからこそ、無視出来ない1枚なんですよ、単なるベストとして切り捨てるには勿体なさ過ぎる内容になってるんですよ。

  残念ながら、先日リリースされた移籍第1弾アルバム「SLICK」は、東芝/ヴァージンということでCCCDとしてのリリースでした。当然ながらこのサイトではアナログ盤でも出ない限りはこのアルバムを取り上げることはありません‥‥ZEPPET STOREが今、どんな「音」を鳴らしているのか、ライヴにも行けてない俺には知る術もありませんが、願わくばこのバンドには「守り」に入ることなく、常に前進していて欲しいと願ってます。勿論、その力強い「歌」は変わることなく‥‥



▼ZEPPET STORE『Singles and Rare 1994-2001』
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投稿: 2003 08 08 03:57 午後 [2002年の作品, Zeppet Store] | 固定リンク

2003/07/19

EGO-WRAPPIN'『NIGHT FOOD』(2002)

  EGO-WRAPPIN'が2002年6月にリリースしたメジャー移籍後2枚目、通算3枚目のオリジナル・フルアルバム「NIGHT FOOD」。丁度リリース後にスタートしたテレビドラマに収録曲"くちばしにチェリー"が起用されたこともあり、またシングルとしてリカットされてチャートのトップ10入りしたこともあって、アルバムの方もロングランヒットを記録、それ以前の「ちょっとした音楽通なら誰でも知ってる存在」から「普通の人でも流行モノとして聴かれるようになった存在」にまで一気に知名度が上がってしまったわけです。勿論それ以前から、特に前年末にリリースされたマキシシングル「色彩のブルース」がジワジワとチャートを上がり続け、結構長きに渡ってチャート30位前後に居座っていたこともあって、ブレイクの機会を待ってるような状態ではあったんですが。とにかく、このアルバムで彼等の人気に一気に拍車が掛かったといっていいでしょう。

  基本的にはそれまでやってきたことから劇的な変化を遂げてるような内容ではなく、ジャズやブルーズを基調とした、生音主体のクラブサウンド。時にギター一本をバックに歌われるミニマムなものから、ブラス隊をも含むビッグバンド的なサウンドまで、更にはリズムボックス&オルガンをバックに歌うといったものまで、意外とサウンド的には色彩豊かなんですよね。彼等との出会いはライヴの方が先だったので、どうしてもそっちの印象が強かったんですが‥‥こうやって音源として改めて聴いてみると、スタジオならではの良さや魅力が新たに発見できて、純粋に面白いアルバムだと思いますね。

  「ジャズの要素を取り入れたロック/ポップス」というのは、それこそ'80年代のある時期に一度ブレイクを果たし、'90年代に入ってからも度々こういったサウンドを耳にするようになってはいたんですが、ことEGO-WRAPPIN'の場合は逆の、「ロック/ポップスの要素を取り入れたジャズ」というイメージが強いんですよね。それは恐らく表現方法にもよるんだと思いますが、特にアルバムを重ねていく毎にそのイメージは強くなっていきますね。ライヴを体験したことがある人なら判ると思いますが、あの歌い上げはロックのそれと同等ですし、テンション的にも下手なB級パンクよりも全然ロックだし。精神的にはロックなんでしょうけど、表現方法が独自のものだという、そういう意味ではパンク精神を持ったレゲエ・アーティストなんかと同じようなものを感じるんですよね。ま、偏見を持って「サウンドがロックじゃないから自分には関係ない」って切り捨てちゃう人の気持ちも判らないでもないですが、そういう人はこのサイトを続けて読んでないと思うんで、この際無視して先へ進みます。

  このアルバムにはいろんなゲストが参加して、それぞれの楽曲を盛り上げています。オオサカモノレールの面々だったり、MAMA! MILKのメンバーだったり、LITTLE CREATURESやACOUSTIC DUB MESSENGERSのメンバーだったり‥‥何となく、このアーティスト間の繋がりだけ見ても、EGO-WRAPPIN'の音楽性が単にジャズというものをなぞってるだけじゃないことがご理解いただけると思います。実際、ライヴやイベント等でもこういったバンド達と共演したりしてますし、バンド外でもいろいろ余所のバンドに飛び入りしたりユニット作ったりしてますし。で、そういった活動がちゃんとこのアルバムに反映されてると思うんですよね。

  懐古的なイメージが強いかもしれませんが、個人的には「クラブサウンド」として受け取ってます。勿論、テクノ等のクラブサウンドと同列に並べる気は毛頭ありませんが、これもひとつの「クラブサウンド」の形ですよね? 昭和の香りがする‥‥なんて一時期騒がれたりもしましたが、確実に「今」の音だと思います。それが自分が実際にクラブで彼等の曲を他のロックバンドの曲と共にかけても何ら違和感がないから。デカい音で鳴らしても十分にカッコイイから。それで十分じゃない?



▼EGO-WRAPPIN'『NIGHT FOOD』
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投稿: 2003 07 19 12:00 午前 [2002年の作品, EGO-WRAPPIN'] | 固定リンク

2003/07/17

奥田民生『E』(2002)

  もう今更「元ユニコーン」なんて前置きが要らない存在となった奥田民生。2002年9月にリリースした通算5枚目のオリジナル・フルアルバム(企画盤やミニアルバム等は除く)「E」。約2年半振りのオリジナルアルバムってことで、普通なら(そう、民生の曲名のように)満を持しての力作って感じで発表されるんだろうけど‥‥ま、いつも通り、肩の力がちゃんと入ってるんだか抜けてるんだかの、絶妙な作風で我々を魅了してくれてます。

  正直な話、民生のアルバムを語る時って‥‥「いつも通り、良い。」で済んじゃうんだよね。けどそれで終わっちゃうとここで取り上げた意味がないので‥‥もうちょっとだけ努力して語ってみますか。

  例えばこのアルバム、曲数が非常に多い。インタールード的な小作品が数曲入ってるから余計にそう感じるんだけど、それを抜きにしても実際に入ってる歌モノが15曲。アルバム以前にリリースされていたシングル曲も幾つか入ってるんで、実際には10曲程度が完全なる新曲ってことになるんだけど‥‥そんな話、どうでもいいよね? とにかく名曲揃い。シングル曲だけ取り上げても"まんをじして"や"ヘヘヘイ"といったヘヴィでグルーヴィーなロックンロール(特に"ヘヘヘイ"は『民生版 "悪魔を哀れむ歌"(ROLLING STONESの名曲)』といったタイプ)だし、彼の全ての楽曲の中でも名曲中の名曲の部類に入るであろう"The STANDARD"や"花になる"が入ってる時点で、もう反則。とにかくズルいぜ、民生。

  勿論他にもそういったシングル曲にも負けず劣らずの楽曲が沢山入ってるわけですよ。オープニングをグイグイ引っ張る感じで盛り上げるブルージーなロックンロール"俺は知ってるぜ"、民生らしい言葉遊びが素晴らしい地味で味わい深い"E"、メチャメチャ地味なんだけど一番印象深いソウルナンバー"モナムール"、キース・リチャーズがソロ活動を行う時にバックを務めるTHE X-PENSIVE WINOSのメンバーも参加する、正にそれっぽいアーシーなロックンロール"鼻とフラワー"、PUFFYで試しそうなディスコファンク調"御免ライダー"、どうしてもこういう力強い「うた」を彼に求めたくなっちゃうんだよね‥‥ってな"ドースル?"等々‥‥とにかく全部名曲。ちょっと言い過ぎ!?って思うだろうけど、アルバムを1曲目から曲順通りに聴いていくと、自然と素直にそう思えちゃうんだから、あら不思議。ま、民生に関してはいつもそうなんだけどね。

  ‥‥ああ、もう書くことがない(苦笑)。じゃあちょっとだけ脱線してみますか‥‥上でこのアルバムのことを「いつも通り、肩の力がちゃんと入ってるんだか抜けてるんだかの、絶妙な作風」って書いたんだけど‥‥今年の3月に久々彼のライヴでこのアルバムの楽曲を聴いて再確認したんだけど‥‥ちょっと「攻め」モードに入りつつあるよね、民生。いや、そんな全面的に攻めの姿勢を見せるタイプじゃないから判りにくいんだけど、無理してない攻めの姿勢というか、背伸びをしてない「等身大の攻め」というか‥‥って何言ってるのかちょっと訳判んなくなってきたけど、要するに「力みを感じさせない力強さ」という矛盾する姿勢を見事に表現してるのが、このアルバムでの、そして今の奥田民生なんじゃないかな、という気がするのです。だから、本来なら今年はツアーが終わってひと休みってことになるはずなのに、YO-KINGに誘われるがままにO.P.KINGという期間限定バンドを結成してしまったし。ま、民生は殆ど「まぁいいんじゃない?」って簡単に参加しちゃったと思うんだけど‥‥ここで聴ける民生が作った楽曲も、また「E」同様の「力みを感じさせない力強さ」を感じさせる楽曲になってるのね。それには勿論、YO-KINGとTheピーズのはるとthe pillowsのシンイチロウという錚々たるメンツによる相乗効果もあるんだけど、それだけじゃない気もするのね。3月に観た「プレO.P.KING」はまだ民生のやる気みたいなのが感じられなかったんだけど、やっぱりオリジナル曲も作りライヴもやるとなると、それ相応の気合いが入ってるんじゃないですかね?

  と、結局ピーズ絡みの話題で脱線してしまったわけですが、このサイトの住人の多くが待ち望んでいるであろうO.P.KINGのミニアルバムを前に今一度、この民生の『名盤』に触れてみては如何でしょうか?



▼奥田民生『E』
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投稿: 2003 07 17 12:00 午前 [2002年の作品, 奥田民生] | 固定リンク

2003/07/08

スネオヘアー『スネスタイル』(2002)

  スネオヘアーというインパクトのある名前を持つアーティストをご存じでしょうか? 夕べ(関東地区では7/7)放送されたフジテレビ系列「HEY! HEY! HEY!」に出演したことで、その名前を知った方も多いんじゃないでしょうか? まさかなぁ、地上波の、しかもゴールデンタイムの音楽バラエティー番組にまで出演するようになるとは‥‥スペシャ等ではたまに見かけるみたいですが‥‥いよいよブレイクの兆しが見え始めたってことでしょうか?

  というわけで、今日は彼のメジャーファーストアルバムである「スネスタイル」を紹介したいと思います。このアルバムがリリースされたのは、'02年10月なんですが、俺が買ったのは今年の4月、しかも初めて彼の音楽に触れたのはその1ヶ月前という遅さ‥‥何でもっと早くに出会っていなかったんだろう!?と後悔した程、彼の音楽に今は惹かれているわけです。そもそも、考えてみれば昨年末辺りにビジターさんから「今オススメのアーティスト。絶対に気に入るはず!」なんてメールを貰っていたにも関わらず、それを無視しちゃってたんですから‥‥ホント申し訳ない!

  んで、彼の音楽性をひとことで表せば、それはもう「パワーポップ」ってことになるんでしょうか? ギター・ベース・ドラムというシンプルな構成ながら、それらの楽器が一丸となって楽曲を盛り上げる働きをしている、決して派手にならず、むしろ地味ながらもツボを押さえた的確なプレイ。スネオヘアーこと、渡辺健二が全ての楽器を多重録音する楽曲も幾つか見受けられる‥‥つまりは、そういうアルバムです‥‥と言えば、好きな人には何となく理解してもらえるでしょうか? 「パワーポップ」「多重録音」「ツボを押さえたプレイ」‥‥ねっ?

  勿論、全ての楽曲の演奏を自身ではやっておらず、いろんなゲストプレイヤーを迎えたりもしています。有名どころだと、クラムボンの伊藤大助、Little Creaturesの鈴木正人といったところが有名でしょうか。勿論、今現在のツアーメンバーとなる方々も参加していたりします。とにかく感じたのは、名前から得るヘナヘナ感が殆ど感じられず、むしろ前向きな力強さを音から感じるんですよね。歌詞はちょっと弱さというか切なさを感じさせる面が強かったりするんですが、そのバランス感覚が個人的には気に入ってたりします。ちょっと前に海外の新世代パワーポップバンドを幾つか取り上げましたが、やはりサウンドはストロングスタイルなのに対し、歌詞はどうしようもないくらいに情けなかったりしますからね。あそこまで酷くはないにしろ、確かに共通項は幾つも見つけられるんですよね、面白いことに。

  そうそう、"自問自答"という曲ではストリングスが取り入れられていて、そのアレンジを河野伸が、ストリングス演奏を弦一徹ストリングスが担当してるんですよ‥‥「ある属性」の方々にはたまらない組み合わせではないでしょうか?(これを切っ掛けに、そういった方々がスネオに興味を持ってくれたら、それはそれで万々歳ですしね!)

  とにかく名曲揃い。シングルとなっている"アイボリー"、"訳も知らないで"、"Over the River"は勿論のこと、アルバムトップを飾る"パイロットランプ"から勢いよく始まり、先の"自問自答"から"スピーカーズコーナー"といったスロウナンバー、更にはシークレットトラックまで、とにかく隙のない名曲揃い。もしこのアルバムに昨年出会っていたら、間違いなく「2002年の10枚」の中に選んでいたことでしょう。それくらい気に入ってます。騙されたと思って聴いてみて!

  今年に入ってから、"ウグイス" と "セイコウトウテイ" という2枚の強力なシングルをリリースしているスネオヘアー。いよいよ来月にはそれらの楽曲を収録したセカンドアルバムが登場。上記2枚のシングルがCCCDであることから購入して聴けない今、早くアルバムがリリースされることを心より待ち望んでいるわけであります。

  けど、何よりも一番驚いたのは、彼が自分と同い年だということでしょうか‥‥頑張れ遅咲き!



▼スネオヘアー『スネスタイル』
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投稿: 2003 07 08 12:00 午前 [2002年の作品, スネオヘアー] | 固定リンク

2003/07/04

RUSH『VAPOR TRAILS』(2002)

カナダが誇る史上最強のトライアングル、RUSHが'02年春に発表した約6年振り(!)のオリジナルアルバム「VAPOR TRAILS」。メンバーが皆50代に差し掛かろうという年齢(いや、差し掛かってるのか?)にもかかわらず、ここまでアグレッシヴに、且つ前向きで実験的なアルバムをリリースするとは‥‥6年のブランクがあるにも関わらずですよ!? ホント、頭が下がります。

RUSHについてはこちらでバンドの魅力について記述していますが、未だにここ日本では彼等に対する評価が低いように思います。現在雑誌で取り上げられるとするなら「BURRN!」のみ、という現状。ま、確かに彼等はハードロックを基本スタイルとしたバンドですよ。けど、もっと幅広い層に受け入れられてもいいように思うんですよね。

メディアが彼等のことを「プログレ・ハード」とか呼ぶことで、敬遠する人も少なくないでしょう。確かに複雑な展開を持つ長尺な曲も過去に沢山ありました。けど'80年代以降は比較的コンパクトな楽曲がメインになっていき、今回のアルバムでも6分を超えるような曲って13曲中2曲しかないんですよね。逆に、3~4分台の曲が5曲、残る6曲も5分台とそんなに長いわけじゃないんですよ、実際。歌メロにしても判り易さを重視したポップなものが多いし、ソフト路線の楽曲も結構あるし。何故彼等がアメリカで常にウケているのか(この10数年、出るアルバム全てが米チャートトップ10入りしてますしね)、その辺も非常に大きく関係してると思いますよ。要するにラジオ受けがいいコンパクトでポップな楽曲がシングルとして切られて、実際受け入れられている。ここ日本じゃまず考えられないことですよね(実際、専門番組でもない限り、RUSHの曲なんて聴けないですからね)。

いきなりヘヴィでゴリゴリの"One Little Victory"でスタートするのにはビックリしますが、これがまたRUSHらしい曲で。確かに今風なんだけど、全然無理してる感じがしないし、むしろ「TOOLとかの若手から影響を受けたんじゃなくて、俺達が奴らに影響を与えたんだよ」とでも言いたげな、有無を言わさぬ威圧感をもの凄い勢いで聴き手にぶつけてきます。が、基本的には"Ceiling Unlimited"や"The Stars Look Down"みたいなポップなタイプと、"Vapor Trail"や"Ghost Rider"のようなムーディーで独特な緊張感を持ったロックチューンが大半を占めているので、そういう意味ではここ数作の作風を踏まえた流れになっているといえるでしょう。が、先の"One Little Victory"や"Secret Touch"みたいなハード&ヘヴィでプログレッシヴな展開を持つ実験的なタイプも数曲見受けられ、惰性で6年振りにアルバムを作ったわけじゃないという意気込みが十分感じられます。特に後半に進めば進む程、その要素は更に強くなっていき、各楽曲のイントロでのアンサンブルを聴くだけで、溜息を漏らさずにはいられなくなるバカテク振りを堪能できます。勿論、楽曲そのものの良さは大前提ですから、ご心配なく。

やはり後半最大の山場はラスト前の"Freeze (Part IV of "FEAR")"でしょうか。6分半という長さは、確かに普段DREAM THEATERのようなバンドを聴いてる人にとっては決して長尺とは言い難いですが、逆に言えば「これだけのことを、6分半という短くはない時間の中に詰め込んだ」ことの方が誉められるべきなんじゃないかなぁ、と。何も10分20分やれば偉いというわけじゃないし。勿論、RUSHの場合はそういったタイプの楽曲も経験してきたからこそ、ここまでコンパクトにやれるんでしょうね。

13曲で67分という収録時間は確かに長く感じるし、個人的には10曲程度にして50~60分程度に収めてくれればもっと聴きやすかったのに‥‥なんて思うのですが、ま、6年振りってことでやりたい事・やるべき事が沢山あったのでしょう。そして、それらを全て吐き出す必要があったと。まぁ贅沢なアルバムですよね。

もしあなたがまだRUSHというバンドに触れたことがなくて、何から聴こうか悩んでいる場合。過去の名盤に手を出すのもいいでしょう。けど、ここはひとつ、この「VAPOR TRAILS」から聴いてみては如何でしょうか? 気難しさが伴うバンドですが、いざ聴いてしまうと単純にカッコいいロックバンドだという至極シンプルな答えにたどり着くはずですから。



▼RUSH『VAPOR TRAILS』
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投稿: 2003 07 04 04:18 午後 [2002年の作品, Rush] | 固定リンク

2003/06/26

THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON『IRONY IS A DEAD SCENE』(2002)

アメリカが誇る変態テクニカル・ラウド集団、THE DILLINGER ESCAPE PLANが奇才マイク・パットン(元FAITH NO MORE、現FANTOMAS等)を迎えて制作したEP。昨年夏、フジロックに出演した際には新ボーカリストを含んだ編成になっていたものの、このEPはそれ以前に録音されたもの。何故新編成になってから(リリースは昨年秋)リリースすることにしたのかは判らないけど、これは世に出すべき音源ですよ。つうかこれ読む前に、まず先に音を聴いて欲しいよ。絶対に言葉が出なくなるから。

マイク・パットンが過去、どういう音楽をやってきたか、そして彼のパーソナリティが如何に複雑かを知ってる人なら、このEPでやってることも何となく想像が付くと思いますが、更にその上を行ってますよ実際。俺、DILLINGER ESCAPE PLANというバンド自体、昨年のフジロックで初めて知ったのですが(結局観れなかったんだけど)、「EPITAPH」所属なのね。「EPITAPH」っていうと、BAD RELIGIONとかRANCID、OFFSPRINGといった'90年代前半のアメリカンパンク・ムーブメントを支えたバンドが所属するレーベルっていうイメージが強いんだけど、こういうバンドもやってるのね。

とにかくこのバンド、凶暴なんだけど知性を感じさせるのね。度を超す程凶暴で狂ってるんだけど、そんな中に一瞬だけインテリジェンス‥‥知的さからくる冷たさを感じさせるのね。そういうキチガイ・サウンドに、あのマイク・パットンのボーカルが乗るんだから‥‥ねぇ。特定のバンド名は敢えて出さないけど‥‥これ聴いちゃったら、やれ○○だの何だのって言ってられないんじゃないの? 結局はみんなニューメタルだよな、と。

勿論ね、このバンド自体もメタルの影響が強いんですよ。マイク・パットンだってそうだと思うんだけど(‥‥違ったかな??)、そういうのを上手く消化しつつ、更に違った地平というか、更に高い地点に到達しようとしてるんだよね。それも無意識に。いや、無意識さを装って実は計算しまくりか。そんなイメージもあるな、この組み合わせ。

1曲目"Hollywood Squares"が始まった途端に異空間。いきなりキチガイ100人が詰まった満員電車の中に放り込まれたような状態に陥るわけですよ。次に何が起きるか全く想像がつかない、かなり怖い、けどちょっとドキドキ、みたいな?(いやドキドキはしないか)演奏テクや展開もハンパじゃないし、何よりもマイクの歌いっぷり、これがもうね‥‥ホントにひとりで歌ってるの!?って疑いたくなる程多彩。勿論FAITH NO MORE時代からのことなんですが、ここでのマイク、正しく「水を得た魚」状態だよね。ヘヴィメタルやハードコアからの影響を感じさせつつ、ところどころにプログレやジャズ、映画のサントラ的な要素も見受けられる。何て言うか‥‥いろんな色を感じさせるんだけど、そのどれもが自分自身を強く主張しすぎて他者を潰し合って結局何色なのか判らないような状態になっちゃう‥‥そんな感じ(どんな感じだよ)。とにかく凄すぎ。それ以上語れないよ(いや語ってるし)。

そういえば、このアルバムにはダンス系好きにはたまらない山場があるんだった。そう、APHEX TWINの名曲"Come To Daddy"のカバーをやってるんですよ! しかもバンド演奏で! マイク・パットンの歌入りで!! これがねぇ、原曲の雰囲気を見事に残しつつ、完全な変態ハードコアソングへと生まれ変わってるのね。きっとリチャードも涅槃で喜んでるはず(いや死んでないし)。そういうひねくれた喜び方しそうだもんな、あの人‥‥このユニットにこのカバー、ここまで合致した組み合わせもそうはないでしょう。'80年代ヒット曲で一山当てるような安パイでお茶を濁すようなことせずに、こういう冒険して欲しいよね、もっと。

本当ならこの編成でのライヴってのも観てみたかったんだけど、後任ボーカルグレッグもかなりのキチガイらしいので(人伝で聞いただけですが)、そろそろリリースされるであろうフルアルバムに期待大ですね。



▼THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON『IRONY IS A DEAD SCENE』
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投稿: 2003 06 26 08:25 午前 [2002年の作品, Dillinger Escape Plan, The, Faith No More] | 固定リンク

2003/06/22

DRY & HEAVY『FROM CREATION』(2002)

  レゲエ、レゲエといいますが、ただ「ズッチャ、ズッチャ♪」と気持ちいいリズムを鳴らすだけがレゲエではありません。BOB MARLEY & THE WAILERSがレゲエとして一級品だったのと同時に、ロックとして、そして「レベル・ミュージック(Rebel Music)」としても一級品だったというのは、皆さんご承知でしょう。何故THE CLASHがレゲエやダブ等に走っていったのか、何故テクノ系アーティストがダブ等の方向性を重視するのか、等々‥‥レゲエやダブといったジャマイカから生まれた音楽は、当時の国の情勢も影響し、多くの後続達に「レベル・ミュージック」と認識され続けてきました。ここ日本でもaudio activeを始め、多くのアーティスト達がそういったジャマイカン・ミュージックを現代的に表現した「レベル・ミュージック」を実践しています。

  そして今回紹介するDRY & HEAVYもそういったアーティスト達に含まれるバンドです。本来はリズム隊が主体となったユニットだったわけですが、2001年フジロックのステージ上で中心メンバーのひとり、秋本武士(Ba)が脱退を表明後、audio activeにも参加したことのあるPATAが加わり、同じくギタリストのチェンジ等を経て、2002年夏に通算4枚目のオリジナルアルバムであるこの「FROM CREATION」をリリースしたわけです。

  リズム隊が中心メンバーであり、ドラムの七尾とベースの秋本こそが「DRY & HEAVY」だったわけですが、このアルバムではそういった構図が崩壊し、ひとつの「ユニット」「バンド」としての新しい動きを見せています。ダブ的側面よりもレゲエ的側面が強調されたバンドサウンドは、ロックのそれと引けを取らない程に緊張感のある、それでいて気持ちいい「音」を鳴らしています。レゲエというと、どうしても「ユルユル」とか「怠そう」とか「脳天気」なイメージがあるわけですが、このアルバムではそういった面よりも更にストイックで攻撃的な、聴き手を惹き付ける「何か」を感じることができます。それが「レベル・ミュージック」としての魅力なのかどうかは正直何とも言えませんが、それは聴いた人それぞれが判断すればいいことなので、あえてこれ以上は書きません。ホントにカッコイイ。ただそれだけですよ。

  二人のシンガー(男女)がそれぞれの曲を歌い分けるというスタイルも、聴き手側に贅沢感を与えるし、またそれぞれの曲に合った「歌」を提供し我々を満足させます。両者それぞれにあるもの/ないものを感じさせつつ、それが楽曲毎に独立した魅力となってるんですから、ちょっと侮れません。「レゲエは全部同じ」みたいな偏見を持ってる人にこそ聴いて欲しいかも。日本にもこういうカッコイイバンドがいるんですよ?

  そういえば、彼等は海外のでの評価も非常に高く、以前リリースしたアルバムやシングルはイギリスのNME誌での「Single Of The Week」にも選ばれたことがあるそう。前作「FULL CONTACT」の評価も非常に高かったそうで、アルバムに伴うヨーロッパツアーも大成功だったとのこと。海外のレゲエ/ダブ・ミュージシャンからの評価も高く、そういった面々がリミックスしたアルバムもリリースされる等、如何にここ日本で過小評価されていることか‥‥これを機に是非このアルバムを手に取ってみてください。

  そうそう、このアルバムには「対の作品」として、このアルバムのダブ・リミックス「DUB CREATION」も同時制作されてます。両方合わせて聴いて初めて、このバンドの本質が見えてくるんじゃないでしょうか‥‥古くはTHE CLASH、最近ではPRIMAL SCREAMのようなバンドがダブミックスをシングルに入れたり、それこそダブアルバムを作ったりする程、所謂「レベル・ミュージック」と呼ばれるアーティストに必要不可欠な要素。ここで改めて、そういった「ダブ/レゲエ」をルーツに持つ日本のバンドに触れてみては如何でしょうか?



▼DRY & HEAVY『FROM CREATION』
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投稿: 2003 06 22 12:00 午前 [2002年の作品, DRY & HEAVY] | 固定リンク

2003/06/21

Cymbals『sine』(2002)

  男女混合トリオ、cymbalsが'02年夏にリリースした、通算3枚目のオリジナルアルバム、「sine」。実は彼等の音に触れるの、このアルバムが初めてだったんですね。手にした理由は簡単。店頭で視聴して一発で気に入ったから。もうそれ以外の何ものでもないですよ。聴いてて気持ちいいサウンド、気持ちいいボーカル、気持ちいい空気感。それがこのアルバムなわけです。

  全然予備知識とかなくて、せいぜい女性ボーカル+男性ふたりによるユニット、その中のひとりである矢野博康がモーニング娘。のことが好きで、以前某音楽誌で「日本には天才がふたりいる。ひとりはイチローで、もうひとりが加護ちゃん」と発言したこと(笑)、そしてその後彼は念願のハロプロと仕事上で関わるようになること(「FOLK SONGS」シリーズや市井紗耶香 in Cubic-Crossのアレンジを手掛ける)、等々‥‥ホントその程度の知識で、音に関しては全く想像がつかなかったわけで。で、このアルバムに手を出した時はまだハロプロとのお仕事はする前で、単純に先の音楽誌での発言が頭に残ってただけで「‥‥この人はどういう音を作る人なんだろう?」といった、簡単な興味から聴いてみようと思ったわけで。で、聴いたらハマッた、と。

  お洒落なポップス、というイメージが相応しい1曲目"Sine"が静かに流れ去ると、ゴリゴリのベースが‥‥スペイシーなシンセが被さり、ギターが暴れまくる。リズムはドラムンベースの如くただ突き進む‥‥というインスト"Baumkuchen"、そしてエンディングのシンセをそのまま引きずって、爽やかな5月の明け方‥‥といったイメージを彷彿させる"Satellite Sings"。このアルバムの基本形は、打ち込みを主体としたポップス。所々に生楽器(ドラムだったりストリングスだったり)が挿入され、歌モノ(全て英詞)の後にインストが出てきたり、そしてそのインストで新たな空気を作ったところに別の歌モノが‥‥といった、コンセプトがありそうな、なさそうな、そんなアルバム。とにかく聴いてて気持ちいい。メロディの良さもあるし、ボーカル・土岐の歌声・歌い方がそれにマッチしてるのもあるし、非常に練られたバックトラックがそれらふたつの要素を盛り上げたりしてて‥‥上手い表現が見つからないんだけど、ただただ気持ちいい。

  丁度リリース時期が重なったこともあり、よく俺の周りではスーパーカーやくるり等との比較を持ち出す人がいたんだけど‥‥当時は「ああ、なるほどねっ?」とか思いながらも、実は今現在のスーパーカーやくるりに全くと言っていい程愛着のない俺は、結構違和感を感じてたのね。けど、あれから1年近く経った今、こうやって改めてこのアルバムを聴いてるんだけど‥‥全然別物だわな、やっぱ。当たり前の話なんだけど、スーパーカーやくるりが今やってるようなサウンドに革新性を求めて音楽性が変化(=進化)していったのに対し、cymbalsの場合は「単純に『この曲』に合ったアレンジが、これだった」といった程度の考えだったのかも、と。それは最新作「Love You」を聴いてしまった今だからこそ、そう思えるようになったのかもね。

  あと、英語詞というのも結構重要な要素かも。上の2バンドって、やはり歌詞がかなり耳に(頭に)グサリと入り込んで来るんだけど、cymbalsの場合はブックレットの歌詞や対訳を読むまで内容が判らない。だからただ曲を聴く分に関しては、その曲に対しての決めつけとか固定観念のようなものが生まれない。こういうポップスの場合って、実はそういうのが結構大事かもね、なんて思う瞬間もあったりするので、ええ(但し、全てにおいてそういう事が当てはまるとは思ってませんよ。「だからみんな英語で歌え」とか、そういう意味ではなくて。大した意味もないようなことをひたすら判りやすい日本語で歌ったり、ってのも同じような意味合いを持つと思うんです。だからこそ、ポップスとして成立するんだ、と。ポップスってのはそういうもんでいいと思うし、そうあるべきと個人的には思ってます)。上記2バンドがあくまで「ロックバンド」なのに対して、これは結構大きな違いかな、と。

  まぁそうは言ってみても、今更そういうの、どうでもいいんですよね。サウンドが、メロディが、歌声が、ただ気持ちよければそれでいい。だから俺達は今晩もベッドルームで、cymbalsを聴き続けるのです。



▼Cymbals『sine』
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投稿: 2003 06 21 12:00 午前 [2002年の作品, Cymbals] | 固定リンク

2003/06/19

中澤裕子『東京美人』(2002)

  前作から丁度1年振りにリリースされた、独立後2枚目となるシングル。しかしその間には単独でのミュージカル出演、テレビドラマへの出演、そして連発された「FOLK SONGS」、「FOLK SONGS 2」のリリースもあったので、活動自体は充実していたといっていいでしょう。しかし我々が彼女に求めているのは、やはりオリジナル曲。そしてこの"東京美人"はその期待に応えるだけの充実振りを魅せてくれます。

  表題曲は高橋諭一アレンジの、如何にも彼らしい「ナイアガラ」風な1曲。過去2枚のシングルがマイナー調だったこともあり、このメジャー調のポップソングは中澤の「陽」の面を全面的に打ち出した、非常に親しみやすい楽曲に仕上がっています。つんく♂不調といわれるこの時期に、こういった充実度の高い楽曲が彼女に与えられたこと自体が奇跡的ともいえますが、そういったことを抜きにしても素直に「よい曲」と呼ぶことができるでしょう。前作での力みっぷりが嘘のような、けどそれでいてユル過ぎない‥‥この1年間に得た「自信」によるものなんでしょうね。

  カップリング曲"クラクション"も同じく高橋諭一による、ボサノバ風アレンジ。メロディ自体は過去の彼女の楽曲を踏まえたタイプなんですが、アレンジがこれまでになかったタイプだけに、非常に新鮮です。彼女の歌唱も"東京美人"以上に肩の力が抜けているんですが、以前ような緩さはそこにはなく、大人の色気すら感じさせる切なさを見事に表現しています。こういう曲を、こういう風に歌えるのは間違いなくハロプロ内では彼女だけでしょうね。松浦亜弥に与えられたとして、確かにそれなりに歌いこなすことは出来るでしょうけど、こういう世界観にはならないはず。ま、当たり前といえば当たり前ですが。ホント、お見事としかいいようがありません。

  こうやって2曲聴いてみると、如何に高橋諭一によるアコースティック風ポップスが中澤に合っているかが一聴瞭然ですよね。いっそのこと、彼が全面プロデュース(サウンド・プロデュースのみでいいん)でセカンド・ソロアルバムを作ってくれないでしょうか‥‥こういう楽曲が沢山詰まったアルバムなら、間違いなく充実した作品集になると思うんですが‥‥。



▼中澤裕子『東京美人』
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投稿: 2003 06 19 11:56 午後 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 中澤裕子] | 固定リンク

2003/05/22

THE POLYPHONIC SPREE『THE BEGINNING STAGES OF...』(2002)

時節柄、メッチャ話題になりそうなグループですよね、彼等。確か今年のサマソニへの出演が決まった時点で俺「今年ある意味一番推し!」みたいなことを書いたと思うんですが、まさかその1ヶ月後にあんなことになるとは‥‥って、別にこのTHE POLYPHONIC SPREE自体は何をしたわけでもないんですが‥‥ねぇ?

大丈夫ですよ、このCD聴いたからって別にスカラー波が出たりとか、そういった害は一切ありませんからね(w。

そんなわけで、このバンド。昨年秋にリリースされたファーストアルバムなのですが、何やら昨年末辺りから本国ではないイギリスで大絶賛されるという、正にヘンテコなユニット。何せ「総勢23人組」「全員白装束」という強烈なビジュアル・インパクトですから。最初、このユニットのことを知人から教えてもらった時、「まさかぁ!」と笑ったのですが、「THE FLAMING LIPSとかMERCURY REV辺りが好きなら、絶対に気に入るから!」との言葉に騙されてネット注文。いざ届いたそのCDジャケットを見て、更に大爆笑。ヤバイ、マジだよこいつら! そして音の方も笑っちゃうくらいにイッちゃってるし。

どこまでが本気でどこからが冗談なのか正直判断がつきませんが、正にこの編成から生み出されるのが真っ当な、コーラスが分厚いサイケデリック・ゴスペルとでもいいましょうか‥‥とにかくね、飛んでるのよ本気で。いや、気持ちいいよ実際。上に挙げたようなバンドとの共通点は幾らでも見つかるし、実際なるほどと思ったもん。個人的には、生楽器を多用してる分、MERCURY REVに近いかな‥‥という印象を受けましたが‥‥後は聴いた人の判断に委ねます。ま、この手の音が好きな人だったら絶対に気に入るアルバムなので。

10曲収録で約70分。殆どの曲が3~5分程度で意外とコンパクト。非常にポップな曲ばかりで、それをサイケにコーティングしているといった感じでしょうか。ただ、最初聴いた時は「このコンパクトさで、この収録時間。計算合わないじゃん」と思ってたのですが‥‥最後の10曲目、"A Long Day"ってのが‥‥曲者でして。これ、36分以上もあるサウンドコラージュといいますか‥‥グレゴリアン・チャントも真っ青な環境音楽。ホント、マジでこんなの36分も聴いてたら完全に「あっち側」にたどり着くよ。実際、今それを聴いてる最中なんですが‥‥あぁ‥‥だんだん落ち着いてきた‥‥これ、もしかしたら『サイケ版「METAL MACHINE MUSIC」(LOU REEDが'70年代に発表した、全編ギターのフィードバックノイズのみで構成された実験作)』ってことなんでしょうか‥‥何かそんな気がしてきた‥‥ま、これはステージで再現されることはないでしょうが、なんつーか、ある一定の人達の為の音楽という気がしますね。とりあえず通常素面な俺には必要ないかな、この曲は(ま、必要になった時は喜んで聴かせてもらいます)。

実際にこの人達、ステージに23人昇ってライヴやるようですよ。サマソニでも一番デカいアウトドアの方でライヴやるみたいだし。しかも真っ昼間っから。炎天下のスタジアムに合うかどうか甚だ疑問ですが‥‥だったら大自然で聴いた方が気持ちよくないか? それこそフジのフィールド・オブ・ヘヴンでさ。辺り一面にはヘンプの香りが充満して‥‥理想的だなぁそれ(オイオイ)。

全編ダウナーというわけでもなく、実はゴスペルチックなロックンロールも1曲入ってるし、曲調も思ったよりは幅が広いので、好きな人なら本当に楽しめると思います。ってこれを書いてる今現在、日本盤はリリースされてませんけどね(初来日に合わせて、やっと6月上旬にリリース決定。つうか時期的にホント大丈夫か!?)。

来日の際に、某パ○ウ○ーブ研究所からスカウトされないことを祈ります(w



▼THE POLYPHONIC SPREE『THE BEGINNING STAGES OF...』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 05 22 03:29 午後 [2002年の作品, Polyphonic Spree, The] | 固定リンク

2003/05/19

渋さ知らズ『渋旗』(2002)

  ここ数年の「FUJI ROCK FESTIVAL」に行ったことのある人なら、その名前くらいは知っているであろう渋さ知らズ(オーケストラ)。一度観たらまずその人数の数、そして舞台の上で行われる異端ともいうべきエンターテイメントショーに呆気にとられるでしょう。そして最後には踊らずにいられなくなり、汗だくになって気持ちよく踊りまくってしまう‥‥それがこのバンド(というか楽団)の醍醐味であり、最大の魅力ではないでしょうか。本当は渋さ知らズに関してはこうやってディスクレビューをするよりも、実際にライヴに足を運んでもらい体感してもらうのが一番なんですよ。生に敵うものはないわけですから。けど、それを踏まえた上で、「そうはいってもフジロックにもそう簡単に行けないし、地元周辺でも観れないんだよなぁ」って人の為にあえてこのライヴアルバムを取り上げてみたいと思います。

  このアルバムは'02年1月にリリースされた、今のところ最新作となる作品。内容は'01年6月1&2日に行われたライヴから、ベストテイクといえる7曲を収録したベスト盤的役割を果たすライヴアルバム。当然、全ての曲がライヴでよく演奏される楽曲ばかりで、過去3度観ている俺も殆どの楽曲が「あ、これ聴いたことある」「へ~こういうタイトルだったんだ」って感じで知ってるものばかり。7曲で72分。20分前後の大作を2曲含む構成になってますが、ジャズやファンク、フュージョンなんかが好きな人なら飽きずに聴けるはず。

  とにかくこの楽団、インストメインにも関わらず聴いてて全く飽きが来ないのね。ま、本来は現場で楽しむべきなんだけど、こうやって1枚の作品集として家で聴いていても全く普通に楽しめるアルバムになってます。けどね、やっぱり聴いてるとどうしても踊りたくなるんだわ、これが。もうめっちゃファンキーなリズムを持ってるし。けどね、ただのファンクってわけでもなく、それこそ先に挙げたジャズやフュージョン、プログレ、演歌、歌謡曲、前衛音楽、更にはテクノまで(ま、とある有名ユニットの超有名曲をカバーしてるだけですが)、とにかく幅広い。で、それを演奏するメンツもまた豪華で、とみ宮的にはROVOのメンバーとしてお馴染みの勝井祐二(そういえば3曲目"股旅"中間部でのバイオリンソロ、完全にROVOのそれですよね!)、そのROVOやDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENにも参加するドラマー・芳垣安洋、忌野清志郎との共演でも有名な片山広明といったところが有名でしょうか。他にもジャズの世界等では名が知れたメンバーばかり。ドラムが常に二人いて、ベースがいて(時々指揮をする不破大輔もベースを弾く)ギターが2~3人常にいて、ブラス隊がとにかく沢山いて、キーボードやオルガンプレイヤーも数名、更にパーカッションも数名、バイオリンも入るしコーラス隊もいる。そしてダンサー10名近く、時にリードボーカル数名‥‥さて、ここまでで大体何人でしょうか? とにかく最低でも20数名はいるはずだし、最高で50人近くにまで膨れあがる時がある、それがこの渋さ知らズ(さすがに40名前後になる時はそこに「オーケストラ」を付けてますよね)。

  とにかくゴージャズ。とにかく音が分厚い。とにかくビートが気持ちいい。とにかくメロディが心地よい。ステージ上ではさすがジャズメンの集まり、即興で曲の長さが毎晩変わる。客が盛り上がれば各パートのソロが増えたり、即興演奏が始まる。完全に現場主義。だからやっぱりライヴを体験して欲しいんですよ。やはりここに収められた7曲ってのは正直少ないと思うし(実際にはこの倍の長さはやるらしいです、単独の時)、ライヴならではのカバー曲‥‥演歌の大御所・石川さゆりの "天城越え" の滅茶苦茶ファンキーでブルージーなバージョンや、先にも書いたように某YELLOW MAGIC ORCHESTRAの "RYDEEN" をブラスロック風にアレンジしたり等々‥‥絶対にライヴでしか聴けない、そういうお遊びが沢山ありますから。だからこれを読んで彼等のことが気になって、アルバム聴いて気に入ったって人。悪いことは言わないから、絶対に今年のフジロックに行ってみな。最高・最強のエンターテイメント・パフォーマンスを味わうことが出来るから。「だってロックじゃないじゃん」って宣うそこのあなた、絶対に現場で観たらノックアウトされるから。まずはライヴ。そこからですよ!

  って完全にアルバムレビューとはかけ離れたものになっちゃいましたが、まぁ彼等の良さの一端を垣間見るにはいいサンプルだと思いますよ、このアルバム。ライヴの臨場感もあるし。ただ、やはり視覚が加わった時のパワーはハンパじゃないッスから、渋さ知らズって。



▼渋さ知らズ『渋旗』
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投稿: 2003 05 19 12:00 午前 [2002年の作品, 渋さ知らズ] | 固定リンク

2003/05/18

氣志團『1/6 LONELY NIGHT』(2002)

  一発屋だと思ってた人、多いんじゃない? そんな俺も実は「‥‥2枚目(のアルバム)は厳しいんじゃない?」と思ってた口でして。そんな氣志團のセカンドアルバム「BOY'S COLOR」はコピーコントロールCDにも関わらず売れに売れていて、リリースから2ヶ月近く経った今現在もチャート誌トップ20に居座っているんですから‥‥昨年春にリリースしたシングル「ONE NIGHT CARNIVAL」も未だに有線で毎日のように耳にするんですよ‥‥ねぇ、誰が昨年の今頃、1年後もこうやってヒットを飛ばしてると思いました!? 所謂「イロモノ」として切り捨てられてもおかしくないのに。

  本来ならここでそのセカンドアルバムを取り上げるべきなんですが‥‥ご存じの通り、CCCD作品は一切取り上げないという決め事がこのサイトにある以上、残念ではありますが「とみぃの宮殿」ではあのセカンドアルバムはレビューしません。ファンの皆様及びあのアルバムのレビューを読みたかった人達、申し訳ない。ただ、どうしてもやって欲しいというなら‥‥MDなりCD-Rなり‥‥送って‥‥いや‥‥嘘です、ごめんなさい(w

  冗談はここまでにして、とりあえずはこのメジャーファーストアルバム「1/6 LONELY NIGHT」を取り上げることにします。リリースと同時に買ったんですよね、このアルバム。そういえば当時の日記に「売れに売れまくっている」って書いた記憶があるんですよね。実際、発売初日はチャート誌デイリーチャート1位だったんですよね。まぁ俺は氣志團と同じ千葉県に住んでいるので、やっぱり地元感覚ってのがあるのかな、結構売れてますよね実際。とはいいながらも、木更津って結構遠いっていう感覚があるんで、一度も行ったことはないんですが。

  音楽は非常に真っ当なビートロック。もっと遊び心があってもいいんじゃない?と却って心配してしまう程、ちゃんと音楽をやってるんですよ。なんつーか、非常に懐かしい香りのするロック‥‥'80年代後半のバンドブームを思い出しちゃいますよね、彼等の音を聴いてると。ボウイ発、BUCK-TICK経由、矢沢永吉行き‥‥というか。まぁ自身でも「ヤンク・ロック」なんて呼んでるくらいなんで、ホントにそういうバンド/アーティストが好きなんでしょうね。田舎のヤンキーが好みそうなロックというか。うちの地元でも多いですよ、そういうアーティストが好きだっていうヤンキー上がりが。まぁあまりいないもんね、RADIOHEADが好きなヤンキーとかさ(いたらいたで面白いんだけど)。

  多分、綾小路翔って俺と同年代だと思うんですよね。俺より上ってことはないだろうけど、せいぜい2~3才下程度だろうね。だから、彼がどういう音楽を聴いてきたか、そのバックボーンも何となく想像することが出来るし、いろんな'80年代のアイドル文化/ロック文化/サブカルチャーからパクッたキャッチコピーとかツアータイトルとか‥‥そういうのからも彼のバックボーンが見え隠れするし。で、やっぱり俺もそういうのが非常に好きなんですよ。そういうのを嫌という程通過してきてるし、リアルタイムで。音楽面でも、やっぱりこういうビートロック的なサウンドが染みついてるんですよ、俺も。口ではバカにしながらも、絶対に嫌いになれない自分がいたりで。前回取り上げたボウイ「BEAT EMOTION」にしろ、JUN SKY WALKER(S)にしろ、ホントそういう単純なものが好きだったんですよ、10代の頃って。あ、そうか。だから翔やんは「永遠の16才」なのか!(‥‥あれ、17才だっけ??)

  再び音楽の話題に戻りまして。プロデュースを手掛けるのはやはり俺世代にはお馴染み、元ユニコーンの阿部義晴。最近、あまり名前を目にしないなぁと思ってたら、こういうプロデュース業も始めたんですね。で、アルバムではプロデュースのみならず、キーボーディストとしても参加していて、これが結構いい味出してるんですよ。ハモンドオルガンの入る曲‥‥特に"暁がよんでる"なんてジャパメタかと思わせるイントロのリフに、思わず聴いてるこっちがドキリとした程。あとインスト曲の"房総スカイライン・ファントム"なんかもアレンジが非常によく練られてるし。キーボードが目立ちすぎることは決してなく、あくまで彩り鮮やかにする為の飾り程度。ギターの音色がどちらかというと単調なので、いいアクセントにはなってますよね、うん。

  曲はホントよく出来ていて、先に挙げたようにビートロック的なものがメインなんだけど、かと思うと上に書いたような"暁がよんでる"みたいなのもあるし、アイドル歌謡かと!?と突っ込み入れたくなる"涙BOY涙GIRL"、感動的なラストソング"國道127號線の白き稲妻"等、意外とバラエティ豊かなんですよね。しかも、アルバムには入らなかったけど、このすぐ後にリリースされたインディーズ時代の名曲リメイク「ONE NIGHT CARNIVAL」なんて完全なディスコビートだし。モーニング娘。の "LOVEマシーン" にも匹敵するキラーチューンですよね、これ。更に続くセカンドアルバムでは、このアルバム以上にバラエティ豊かになってるようだし‥‥悔しいなぁ、これ聴けなくて。

  昨年春以降、タイミングを逃してしまって取り上げることが出来なかった氣志團。以前から何度か「とみ宮的に氣志團ってどうなのよ?」という質問を戴いていたんですが、これが俺の答えです。つうか嫌いだったらこうやって取り上げないでしょ? セカンド聴けなくて悔しがらないでしょ? ホント、一回ライヴを観たいバンドのひとつなんですよねぇ‥‥行っちゃおうかなぁ、夏の木更津イベント‥‥(w

  最後に。セカンドアルバムのジャケットがBLONDIEのパクリだってことは既に有名な話ですが(実際タワレコとかでは並べて売ってたしね)、このファーストの場合はやはりINU「メシ食うな」なんでしょうか‥‥赤と黄色の違いはあるけど、間違いなくそうだと確信しております。



▼氣志團『1/6 LONELY NIGHT』
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投稿: 2003 05 18 12:00 午前 [2002年の作品, 氣志團] | 固定リンク

2003/05/17

54-71『enClorox』(2002)

 正にそんな言葉がピッタリな、54-71のメジャーファーストアルバム。簡単なデータ的なことから書きますと‥‥シカゴにあるスティーヴ・アルビニ(オルタナ界にこの人あり、と言われる人。最近ではプロデュース/エンジニアとしても有名で、NIRVANAの「IN UTERO」もこの人が手掛けた)所有のスタジオで、レコーディングされたとのこと。別にアルビニがレコーディングに携わったわけじゃないんだけど、うん、何となくその雰囲気だけは伝わってくる音作りがされてるよなぁ。

  このバンドのこのアルバムを指して、皆さんはどういうジャンル分けをしますか? いや、本来ジャンル分けなんて必要ないし「ロック」で十分なわけだけど、あえてやるなら‥‥ロック、ヒップホップ、ラップメタル、ガレージロック‥‥そのどれにも当てはまらないという気がするのは俺だけでしょうか? いや、ロックはロックだけどさ‥‥決して新しい道を開拓したとかそういった路線ではないんだけど、どこでも聴いたことのないような気がする音なんだよね。音数が異常に少なくて(ドラムに関してはバスドラ、スネア、ハイハットのみという)隙間だらけ。ボーカルは英詞で歌われ、ヒップホップ調なのかと思わせといて、メロディアスな曲も登場する。けど、この音像のせいで統一感だけはある。非常に不思議な「個性」を持ったバンドなわけで(まずバンド名からして個性的だしな、うん)。

  俺ね、このジャケットに惹かれたのよ、まず(このバンドの音に触れるのは、このアルバムが初めて)。この水墨画タッチのジャケットに。純日本風な絵柄なのに英詞。水墨画なのにロック。音聴く前はまずそこに惹かれて。所謂「ジャケ買い」ってやつですね。んで実際聴いてみると‥‥これが一致するんですよね、ジャケットと音とが。

  結構いろんなタイプの楽曲が入っていながらも決してカラフル過ぎず、むしろモノトーンといったイメージが強い彼等の音。メロウな曲に載るボーカルラインも決して派手にはならず、どこかもの悲しさを漂わせる‥‥モノクロのイメージが強いんですよ。勝手な思い込みかもしれませんが。ラップ調の曲にしても、非常に隙間の多い演奏で、やはりどこかモノトーン調なんですよね‥‥そこがいいんですけどね、このバンドの場合は。

  ボーカルが感情を押し殺したように歌ったりラップしたりするのも、またこのバンドの個性といいましょうか。"humpty empty mellow blues"や"swamp disco"で聴けるラップも余所のラップメタルやラッパーとは違い、熱すぎず冷たすぎずという絶妙なバランス感を保ってるし、メロディアスなポップナンバー"doors"にしろもの悲しさの点ではブルーズと呼んでいいだろう"don black cock"にしろ、同じトーンで歌われているのね。しかも英詞だから歌詞の意味が判らない分、余計に単調に感じそうなんだけどさ‥‥けどそれが単調に感じられないのは、やはりこのバンド特有のグルーヴ感や表現力によるものなのかなぁ。

  聴いて暴れるぜ!とか熱く燃えたぎるロック魂に痺れるぜ!とかその類のバンドではないんだけど、非常に面白い存在ですよね。これもポストロックと呼ぶべきなのか、はたまたもっと違ったジャンルを確立したのか‥‥けど、やっぱりそんなのどうだっていい話であって、「ロック」でいいんですよね、うん。下手な先入観や情報量が多ければ多いと、純粋に楽しめないことが多いので‥‥ここはひとつ、騙されたと思って聴いてみてください(ホントはこんなの読まずに聴くのが一番なんだけどね!)



▼54-71『enClorox』
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投稿: 2003 05 17 12:00 午前 [2002年の作品, 54-71] | 固定リンク

2003/05/13

モーニング娘。『LOVE IS ALIVE! モーニング娘。CONCERT TOUR 2002春 at さいたまスーパーアリーナ』(2002)

  何を今更こんなDVDを取り上げるの!?とお思いの方も多いことでしょう。何故この時期にこのライヴDVDなのか‥‥きっとこんな疑問を持った人って、今のモーニング娘。に対して懐疑的になってる人達なんじゃないでしょうか? だったとしたら、その答えは全部このDVDの中に詰まってます。そう、この俺自身も改めてこのライヴDVDを観直してそれを悟ったのですから。

  言うまでもなく、このDVDは2002年3月末から4月末まで、約26万人もの動員を記録した彼女達の春ツアー最終日、さいたまスーパーアリーナでの公演を完全収録したもの。これを読めば当日の大体の内容は判ると思います。そんな「2日間に同じライヴを4回も観た」この俺が、何を今更そのライヴを収めたDVDをここで紹介するのかというと‥‥実はこのライヴって非常に特殊な状況下なんじゃないかな、と今になって思うからなんですね。

  これまでのモーニング娘。のライヴDVDって(ハロー!プロジェクトでのライヴを除く、単独公演のみ)、その殆どがメンバーの卒業ツアー最終公演を収めたものばかりなんですね。福田明日香然り、市井紗耶香然り、中澤裕子然り。そういったツアーを収めたDVDに続いてリリースされたライヴ収録DVDが今回紹介するツアーのものなのですが‥‥このツアーってご存じの通り、誰かの卒業ツアーではない、約2年振りにリリースされたオリジナルアルバム『4th「いきまっしょい!」』を引っ提げた、純粋なツアーなわけですよ。つまり、他の公演と違って悲壮感皆無、むしろ前進あるのみな姿勢の彼女達を余すところ無く収録してるわけです。

  ま、だからといって他のDVDが悲壮感漂うものかというと必ずしもそうではなく、まぁ最後の方になると涙なしでは観られなくなるという類のもので‥‥ライヴ自体がいくら素晴らしくても、最後の最後でそういった要素で全体像が何となくボヤけてしまうような気がするんですね、俺的に。だってさ、このライヴDVDの後にリリースされた(される予定の)ものって、全部卒業公演モノだしね(昨年9月の後藤真希、そしてもうじきリリースされる保田圭卒業公演)。

  よく「モーニング娘。にはマイナス要素が加わってこそ、そのパワーを遺憾なく発揮する」とか「常に死と再生の繰り返しをしてこそ、モーニング娘。」なんて声をネット上で目にするんですが、確かに言っている意味はよく判るんですよ。実際その通りかもしれないし。けどね、俺が好きになったモーニング娘。というのはそういった類のものではなく、あくまで前向き・ポジティヴで、観てるだけでこっちまで幸せな気分になる、元気を分けてもらえる。そういった存在なわけですよ。

  勿論、他のライヴでも俺はそういったものを受け取ってきたけど、今となってみると‥‥このツアーって本当に「笑顔」しか記憶に残ってないんですよ。それはステージ上のモーニング娘。だけでなく、この俺自身にとっても‥‥

  改めてこのライヴDVDを観てみると、確かに5期メンバーの4人はまだぎこちなさが残るしパフォーマンス的にも今より劣ります。加入してまだ1年経ってない時期、それは仕方ないのかもしれないし、今がそれだけ素晴らしいからこそそう感じるんだと思うんですね。他のメンバーにしても途中で息切れして声が枯れてるメンバー、ペース配分を考えてか多少手を抜いてるように見えるメンバー、常に全力疾走で疲れを見せないメンバー等、13人もいればホントにいろんな奴がいるわけですよ。ある意味、「13人娘。」としての完成型はその後の後藤卒業公演まで持ち越しとなるわけですが、俺はこの頃の13人が本当に大好きで。それは多分、あの悪夢の「7月31日」を通過する前だからかもしれませんし、当の本人達も「終わることなんて考えられない。この13人が離れるなんて考えられない。」なんて考えてたかどうかは知りませんが、とにかく向かうところ敵なしな状態なわけですよ。

  もうね、冒頭のパイロ爆発~舞台から炎が吹き上げ~"そうだ!We're ALIVE"の「努力!未来!A BEAUTIFUL STAR!」を13人が力強く歌うという‥‥あそこだけで何杯飯が食えることか‥‥ってくらい、本当に鳥肌モノなわけですよ。下手なロックバンドのライヴ観るより全然いい。絶対にあの時、あの頃の13人じゃなきゃ出来なかった、表現できなかったもの。それがあの「ひたすら前向きな力強さ」だったのではないでしょうか?

  勿論、その後や今を否定するためにこれを書いているんじゃないですよ。改めて「何で俺はモーニング娘。を好きになったんだろう、どこが好きだったんだろう?」という問いに対する答えを求めた結果、その回答をこのDVDの中から見つけることができた、ただそれだけなんですよ。

  もし今、あなたがモーニング娘。に対してのモチベーションが下がってたとしたら、迷わずこのDVDを観てください。感動し過ぎて涙することはあるかもしれないけど、絶対にそれまでの自分を、そしてこれからの自分を否定しない、全てを肯定するであろう「モーニング娘。」がそこにいるはずですから。

  この、ある種神がかったとさえ呼べる「13人時代」の、2002年4月を超えることは至難の業。今後どうやってこれを超えるようなスタイルを見つけるのか‥‥新しい「始まり」はすぐそこまでやってきてますよ‥‥。



▼モーニング娘。『LOVE IS ALIVE! モーニング娘。CONCERT TOUR 2002春 at さいたまスーパーアリーナ』
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投稿: 2003 05 13 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2003/05/12

ソニン『カレーライスの女』(2002)

  2002年4月、衝撃的だったEE JUMPの活動停止~解散劇。そこから約4ヶ月の空白を経て発表されたのが、ソニンのソロシングル第一弾「カレーライスの女」。過去にもEE JUMP時代に「featuringソニン」名義でのソロ活動はあったものの、既にグループが存在しない今、これこそが本来の意味では「ソロ一発目」と呼べるでしょう。

  それにしても‥‥その音楽以上にジャケット等のビジュアルイメージが先行してしまって‥‥いや、仕方ないか、「裸エプロン」だもんなぁ‥‥「売れる為なら何でもやるのか!?」「ソニン必至だな?」とかいろいろ否の意見も多く聞かれたわけですが‥‥ここではいつものように「音楽」についてをメインに語っていきたいと思います(そういうサイドストーリー的な面は余所のファンサイトに詳しく載ってるんで、そちらを参考に)。

  ヒップホップ的要素(ユウキのラップ)を強調したダンサブルなポップソング、それがEE JUMPの持ち味であって、そこで初めてソニンの歌声も映えるんだなと思ってた俺のような人間には、ここで聴くことができるようなロック系サウンドは正直衝撃でしたよ。メロディ自体は如何にもつんく♂らしい楽曲なんですが‥‥こういう色ってEE JUMP時代にはなかった面だし、何もソロになったからっていきなり路線変更をしなくても‥‥って最初は思ったものです。

  タイトルトラック"カレーライスの女"のアレンジはEE JUMP時代も結構な楽曲を手掛けてきた、ハロプロ系でもお馴染みの鈴木Daichi秀行。聴けば何となく彼らしいなぁと思うわけですが‥‥俺、彼が手掛けたアレンジワークの中で、5本指に入る程好きですよこれ。演歌調のマイナーメロディを劇的に盛り上げる、それでいて余計な装飾が少ないアレンジは評価に値すると思いますが、如何でしょうか? 意外と「Daichiがアレンジだし‥‥」ってだけで毛嫌いする人も多いようだし、尚かつ「最近つんくダメだよねー」って最初から無視してる人も多いので、あの裸エプロンだけでこの曲を評価した気になってるみたいで‥‥けどね、これは正直もっと評価されてもいい楽曲だと思いますよ。

  歌詞の「上京して暫く経った、孤独な女の子」という設定を見事に盛り上げるBメロ以降の流れ、そしてギターソロ‥‥何か、BON JOVI辺りのメロディアスHRを聴いてるような錯覚に陥るわけですが‥‥ってもっとポップ色が強いですけどね。いや、この辺のさじ加減が絶妙だと思うんですが。決して後ろ向きじゃないんですよね、歌詞。「なんもない なんもない」の連呼の後、「だけど少し今も 夢を見てる/だから私明日も 生きていける」と結んでいるわけで。絶望的に暗いわけでもなく、そこから少しでも光を見出そうとする主人公がもうソニンの当時の状況と重なるわけで。そういった点も個人的には高く評価してるんですけどね。ただ、この手法はそう何度も使えるものではないので、正直これっきりにして欲しかったんですが‥‥

  そしてカップリング曲"愛はもっとそうじゃなくて"は、今や幻となったEE JUMPのファーストアルバム「EE JUMPコレクション1」に収録予定だった、ソニンのソロナンバー。アレンジには河野伸が当たっているんですが‥‥先に挙げたようなEE JUMP時代の特徴を踏まえた上で、更に次のステップに進もうという意気込みが感じられる非常に優れたR&B歌謡。いや、歌謡は余計か‥‥正直、今その辺に流れてるR&B的なポップソングと並べても何ら聴き劣りしない、素晴らしい楽曲だと思います。何より、メロディの潤いが素晴らしい。最近のつんく♂作と比べると、もうその違いに愕然とするわけですが(ま、"カレーライスの女"をこれを比べるのはちょっと可哀想な気も‥‥大体楽曲のタイプが全然違うしね)‥‥途中に入るソニンの韓国語のセリフもいい雰囲気出してるし‥‥曲調といいセリフといい、ちょっとT&Cボンバー(太陽とシスコムーンね)を思い出す楽曲ですよね。ホント、こういう曲がカップリングってのが勿体ないよな。シングルを敬遠した人には聴く機会さえないわけだからさ。

  これを聴いちゃうと、お蔵入りとなった「EE JUMPコレクション1」が如何に優れた作品集だったか、ということが伺い知れますよね。シングル曲は名曲ばかりだし‥‥ホント、あのクソガキのお陰で(ry

  もうね、この"愛はもっとそうじゃなくて"だけのために買ってもいいシングルだと思います。いや、個人的にはタイトルトラック"カレーライスの女"も好きなんで、そっちを目当てで買ったらオマケ(カップリング曲)も更に豪華で、一粒で二度おいしかったという、そういうシングルですね。近々リリースされるファーストソロアルバムにはこの"愛はもっとそうじゃなくて"等のシングルでのカップリング曲は一切入りませんので、これを聴くためだけに買ってもいい程です。

  ホント、裸エプロンとか負のイメージとか、そういった要素ばかりが一人歩きしてるソニンですが、楽曲自体はホントに優れたものばかりなので、こういったポップスに興味がある人、そしてEE JUMPは好きだけど‥‥って躊躇してる元ファン、絶対に聴いてみてください。いや、ホントいい曲なんだってば2曲共。



▼ソニン『カレーライスの女』
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投稿: 2003 05 12 12:00 午前 [2002年の作品, ソニン] | 固定リンク

2003/05/11

HUSKING BEE『the steady-state theory』(2002)

  HUSKING BEEが'02年秋にリリースした、現時点での最新作。つうかね、俺さぁ‥‥正直に告白しておくよ。このアルバムで初めてまともに彼等に接したんだわ。「今まで何やってたの!?」ってファンに怒られそうですが‥‥仕方ないよ、周りが騒げば騒ぐ程、俺はどんどん冷静に、そしてしらけてったんだからさ。なんつーかね、一時期の「AIR JAM」系のバンドに対して、俺の中で色眼鏡で見てたところがあってさ。Hi-STANDARD系っていうの? 全部が全部、ああいったメロコア風なんでしょ?みたいな、さぁ。いや、ハイスタは好きだよ。でもね、その亜流には正直ウンザリっていうのがあってね‥‥それぞれのバンドをちゃんと聴いたわけでもないのにさ。だからね、このハスキンに対しても過去いろんなフェスで遭遇してるはずなんだけど、全部スルーしてるのね。観ようとさえも思わなかったし、正直観たくないとさえ思ってた程、この周辺のバンドに対して嫌悪感みたいなのがあったのよ。

  けど、そんな俺がそのハスキンに対して「ん!?これって俺が思ってたのと違うんじゃないの??」っていう違和感を感じるようになったのが、今回紹介する「the steady-state theory」にも収録されている"新利の風"との出会い。これ、メロコアか!? つうか俺が最も愛してきたロックンロールのそれじゃないか!?って。直線的な楽曲の多いメロコア系には「ROCK」は感じられても、ROLLING STONESのキース・リチャーズ風に言えば「ROLL」の要素が感じられなかったのね。ところが、このハスキンの楽曲には肝心な「ROLL」の部分を感じることが出来た‥‥これが俺の中でとてもショックで。いや、ハスキンごときが「ROLL」しやがって、って意味じゃなくて、そんな風に色眼鏡で見てた自分に気づいたことがショックで。ああ、悪い癖だなぁ‥‥ってさ。で、友達にその"新利の風"が収録されていたEPを借りたりして、更にはアルバムなんかも聴かせてもらって‥‥でも、買うまでには至らず。何故かは判らないけど。

  そしてこのアルバム。昨年秋にCDショップで「あ、出たんだ」っていう軽い気持ちで視聴したんですが‥‥もうね、1曲目でやられた。いや、別に新しいことや革新的なことをやってるわけじゃないんだけど、俺が"新利の風"を聴いて感じた「ROLL」の部分が見事に表現されたアルバムだと思ったんですよ。もうね、即CD持ってレジに並びましたよ。うん、それくらい自分の中では良かったなぁと。

  古いファンからすれば、このアルバムよりも前のアルバムの方がハスキンらしいとか良かったと思ってるのかもしれませんが、俺みたいな新参者‥‥特にひねくれ者からすれば、こういった作品の方が楽しめるわけですよ。「ハスキンの何たるかが判ってない!」と叱られそうですが、単純に自分の好みになった、だから気に入った。それで十分じゃないですか?

  俺ね、その昨今のメロコアの総本山といえるGREEN DAYにしろ、初期の作品よりもここ1~2枚のアルバム‥‥パンク一辺倒な流れから逸れた作品の方が好きなんですよ。単に自分がそういった作風の方が好きってのもあるんだけど、なんつーか‥‥先の「ROLL」の部分が多いに感じられるようになったというか、真の意味で「ロックンロール・バンド」に化けたなぁ、なんて感じたりして。そういう面をハスキンのこのアルバムにも感じるんですね。

  直線的なパンクナンバー的な楽曲もありますが、それよりもスピードを抑えた大らかなノリを持つロックンロールナンバーや、アコースティック色を強めた楽曲に、より「今のHUSKING BEEらしさ」を感じると思うんですね。なんつーか、THE CLASHが「LONDON CALLING」を経てどんどん拡散方向へと進んでいった流れや、ROLLING STONESが「SOME GIRLS」で時代に敏感なサウンドを導入していった経緯、それと同じものをこの「the steady-state theory」から感じるんです。

  日本語詞の楽曲が増えた(14曲中半分の7曲が日本語詞)ことも大いに関係してると思うんですが、これはもはや「メロコア界を支える実力派」なんてちんけな存在ではなく、「今後のニッポンのロックンロールを代表するバンド」に成長するんじゃないか‥‥なんて思ってる程で。そしてこのアルバムはそれに一番近い存在だと思うんですね。上に挙げたような海外の大物バンドと同じような経緯を経て、今正しくこのバンドは次のステップに進もうとしてる。これが決して完成型ではなくて、更にもっと大きくなると思うんですよ、このバンド。そういう意味でこの作品は今後、とても重要になると思います。今はどういう評価をファンから受けているのか判りませんが、間違いなくハスキンの現時点での最高傑作だと思いますね。そして次に出るであろうアルバムはこれをも軽く飛び越えた、本当の意味での最高傑作になると思いますよ。

  とにかく、こんな俺をも振り向かせた"新利の風"という1曲だけの為に聴いてもいいし、それ目当てで買ったら他の曲も負けず劣らず素晴らしい曲ばかりだったと驚いてもいい。とにかくいろんな見方/聴き方の出来る優れモノのロックンロール・アルバムです。

  最後に‥‥「ROLL」の部分でいうと‥‥何故か俺、このアルバムを聴いてると‥‥本当に何故か奥田民生と共通する何かを感じるんですよね。ホント、何でだろう。全然音楽的にも違うのに。多分、そのロックンロールが本来持つ「ROLL」の部分を両者が無意識のうちに発しているからなんでしょうね。ハスキンも民生も共にロックンロールの世界では「ニッポン代表」だと個人的には思ってるので、それはそれで間違っていないのかもしれませんね。



▼HUSKING BEE『the steady-state theory』
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投稿: 2003 05 11 02:04 午前 [2002年の作品, HUSKING BEE] | 固定リンク

2003/05/03

ROVO『FLAGE』(2002)

  山本精一、益子樹、芳垣安洋、勝井祐二‥‥等といった名前を聞いて「オオッ!」って唸る人も多いことでしょう。このメンツがそれぞれ参加してるユニット/バンド名を挙げただけでも、それこそこの10年間の日本のクラブ/オルタナ/ジャズシーンの流れを垣間見ることができるんじゃないでしょうか。そういった面々が約8年くらい前から一緒になって始めたのが、このROVOという7人組のバンドであり、今回紹介する「FLAGE」は前作から約3年振り、5作目のアルバムになります。この3年間に所属するレーベルが閉鎖したり、海外でのリリースがあったり(海外限定のライヴ盤ってのもありました)、フジロックや朝霧JAM等のフェス/イベントに出演したりと、各メンバーそれぞれの活動の合間を見て精力的にライヴを行ってきたようです。

  そんな俺が彼等の音に最初に触れたのは‥‥DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENとのスプリットシングル「シノ」でした。その時は特にピンとくることもなかったのですが、それから数ヶ月後に観た'朝霧JAMでのステージにノックアウトされ、そしてその2ヶ月後('02年11月)にリリースされたこのアルバムに至った、というわけ。もうね、ライヴが完全に先。音源に関しては完全に後追い。ライヴ観てから「シノ」聴いたら、また全然聞こえ方が違うのね。単に俺の興味が強まったというのもあるんだろうけど。

  で、この新作。既にライヴでもやっていた"SUKHNA"や"NA-X"以外は全て未発表新曲。確かにこの2曲は印象に残ってるわ。特に"SUKHNA"の方が。どんどん盛り上がっていく構成、こんなの生で聴かされたらやっぱり踊り狂っちゃうわけですよ。ライヴも良かったけど、このスタジオ版もなかなか。あの日あの時の想い出が蘇ってきますね。また、スタジオ作品として非常に音が緻密ということもあって、ヘッドフォン等でのリスニング作としても十分に楽しめる1枚となってます。ま、個人的にはフロアで大音量で流してもらって、それに合わせて無心で踊るのが一番なんだけどね。

  左右に振り分けられたふたりのドラムサウンドの、微妙なズレはもうこの手のバンドの一種持ち味といえるわけで、それがどれだけ気持ちよく聴かせてくれるか、逆に聴いてて気持ち悪さを感じさせないかというのもテクニックでありセンスだと思うし、更にROVOの場合は山本のギターと勝井のバイオリンが独特なわけで、これらのウワモノ(メロディを奏でる楽器)が放つメロディが彼等独特なものとなってるんですね。ジャズとも違う、かといってフュージョンというわけでもない。どっちかっていうと、明らかにクラブサウンド‥‥テクノやその手のジャンルに最も近いんじゃないかなぁと思うわけです。例えば上にも挙げたDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENの場合はもっとジャズ的で、尚かつブラックミュージックからの影響も伺える。より人間的な温かみ‥‥「陽」のイメージを受けるんですね。逆にROVOの場合はそういうテクノだったりポストロックだったり(勿論デトコペにもテクノ的要素はありますけどね)‥‥なんつーか、非常に冷たい印象を受けるんですよ。「陰」というか。いや、熱い演奏をしてるんだけど、非常にクールっていうか。上手い例えが浮かばないんだけど、デトコペの音を「炎」と呼ぶなら、ROVOの方は「焔」とでもいいましょうか‥‥判ってもらえますかねぇ?

  6曲で74分30秒。1曲を除いて全部12~5分もの長尺。当然歌モノは1曲もなし。プログレ的とも呼べるでしょうけど、今や何をもって「プログレ」と呼ぶのか、個人的には判りませんが‥‥もし上手い例えがあるというのなら、「人力テクノ」と呼びますね。ま、この手のバンド全てに当てはまる例えなんで何もROVOに限ったことじゃないですけどね。

  ドラムの音ひとつひとつを聴いてるだけでも楽しめるし(それは単に自分が同じように楽器を弾くからかもしれませんね)、シンセの音にトリップしそうになったり、バイオリンの音色に酔ったり、ギターサウンドに高揚したり‥‥楽器を弾く人は尚更楽しめると思いますよ。デトコペ程メンバーが多くないんで(あちらが11人に対して、こちらは7人ですから。ギター+ベース+バイオリン+ダブルシンセ+ダブルドラムという構成)、意外とひとつひとつの楽器の聞き分けもできそうですし。

  朝霧JAMを体験して思ったんですが、この手の音はクラブのような閉鎖的な空間で聴くのもいいんですが、個人的にはやはり野外で聴きたい音ですね。しかも大自然の中で、割れんばかりの爆音で。気が狂いそうになる程の音圧で、オーディエンスをノックアウトして欲しいなぁ、と。ま、あまり音がデカすぎてもなんなので、適度な爆音で(笑)。なんか数日後に日比谷野音でイベントやるようですが、こういう野外イベントもまたいいんじゃないですかね。

  プログレ好きな人、テクノ等のクラブミュージックに興味がある人、そしてROVOに在籍する各メンバーに興味を持つ人、それぞれがそれぞれの聴き方で楽しめる1枚になってると思いますよ。



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2003/04/14

THE DATSUNS『THE DATSUNS』(2002)

まぁ俺が今更取り上げるまでもなく、既に巷では大いに盛り上がっているTHE DATSUNS。このレビューを書いてる今も、ここ日本に滞在してライヴをやってる最中なんですよ。しかも今年2度目の来日(1月だか2月だかにショーケース来日後、今回が本ツアー)、更に8月にはSUMMER SONIC出演の為に3度目の来日。正直、アルバム1枚しか出してない新人がここまで年に何度もライヴで来日するのは、例えば昨年でいうところのANDREW W.K.みたいな感じで、正直集客面とか大丈夫か!?と心配までしてしまうんですが、まぁ今の彼等の勢いなら問題ないでしょう。小さいハコでも体感したいし、野外のスタジアムクラスでも体験したいし。で、その両方がちゃんと似合う音を出すバンドなだけに、両方のシチュエーションに惹かれて観に行っちゃいそうなんですよね。へっ、俺!? 多分サマソニは行くだろうね。日程次第だけど。

というわけで、THE STROKES以降イギリスで盛り上がっているリフ主体のロックンロール、とみ宮風に言えば「リフ・ロック」‥‥ってまんまなんですが、とにかくイギリスで他国のリフ・ロックバンドがチャート上で大成功を収めているんですよね。STROKESを始めTHE HIVESとか、THE WHITE STRIPESとか、このDATSUNSとか。STROKESやWHITE STRIPESはアメリカのバンドだけど、他は結構北欧出身が多かったりする中、このDATSUNSなんてニュージーランドですからね。穴場中の穴場ですよ。つうかニュージーランドのロックバンドって‥‥他にメジャーな存在、いないよね? もしかして初? 凄いねマジで。

とにかく、リフ・ロック。そういうふうに呼んでみるものの、その音楽性はまちまちで、単純に「カッコいいリフを持つ、ストレートなガレージロック/爆走ロック」という共通項のみでそう呼んでるだけなんだよね。だって、どう考えたってSTROKESとTHE HELLACOPTERSの音楽性が一緒だとは思えないし(ルーツ的には被ってるところがあるだろうけど)、WHITE STRIPESとANDREW W.K.を同じと捉える人はまず少ないでしょう。単純にリフ主体のロックってだけ。それこそAC/DCだってMOTORHEADだってSTOOGESだって、みんなリフ・ロックなわけだし。ああ、そういう古いバンドを持ち出すから収拾付かなくなっちゃったよ。

このDATSUNSを語る時、必ずといっていい程上記のようなバンド‥‥AC/DCやMOTORHEAD、そしてDEEP PURPLEやLED ZEPPELIN、あるいはKISSのようなバンドが引き合いに出されるわけですが、ホントそういう音なんですよね。よく「これはハードロックか、ガレージロックか?」なんていう声を目にするんですが、正直どっちでもいいと思うんだけど‥‥個人的にはこれが売れてなかったらガレージバンドって呼ばれてただろうと思うけど、やっぱりハードロックだよね。しかも、自分が中学~高校生の頃に慣れ親しんだ王道ハードロック。今は亡き「FM STATION」とか「ミュージックライフ」なんかで必ず年に一回はやる「ロックの名盤100選」みたいな特集記事に、必ず取り上げられるようなハードロックバンドの名盤を聴いてるような錯覚に陥る程、懐かしい感触。何も知らない人に「'70年代に活躍した幻のハードロックバンド、奇跡のリマスター再発!」とか言って聴かせても信じちゃうような音。それがこのアルバム。じゃあそんなに古臭くて使い古されたような楽曲なのか?というと、実は全然そんなことはなく、時代がひと回りもふた回りもして、逆に新鮮なんだよな。例えばこれが「BURRN!」で最初に取り上げられたなら、きっと「rockin'on」では『時代錯誤も甚だしい』と切り捨てたんだろうけど、逆だったからなぁ‥‥イギリス先行ってのも大きかったし。その辺はちと微妙っていやぁ微妙なのかも。ま、要するに切っ掛け次第ってことですよね。

つうかさ‥‥やっぱりハードロックよ。特にハモンドが入っちゃうと、完全に「MACHINE HEAD」とか「IN ROCK」の頃のDEEP PURPLEだし、ボーカルの歌い方は完全にボン・スコット(AC/DCの初代ボーカル)だし、ギターソロのメロウで計算され尽くしたかのようなプレイは'70年代のKISSみたいで、そういった点ではHELLACOPTERSにも通ずる要素を感じるし。で、そのHELLACOPTERSと仲が良くて、一緒にツアーをやってたんだよね(夏場もまた一緒にやるんだっけ)。つうかDATSUNSのメンバーがHELLACOPTERS大好きなんだっけか。かと思えば、MC5みたいなのもあるし、初期MOTORHEAD的なブルーズロックもあるし。そしてメンバーのラスト・ネームが皆「DATSUN」という点はかのRAMONESからだろうし。ホント、時代錯誤も甚だしいんだけど、音聴いちゃうと有無を言わせぬ迫力と説得力でこっちが圧されちゃうんだよね。つうかさ、これ聴いてると冷静に物事を判断出来なくなるんだよね‥‥「カッケー!」とか「スゲー!」とか、そんな擬音ばかりよ、口から飛び出すのは。

きっと新しモノ好きのロキノン読者は「これこそ『NEW WAVE OF GARAGE ROCK』だ!」とか声高に叫ぶのかもしれないし、STROKES等の流れで聴き始めた若いロックファンは「新しいロックヒーローの誕生」なんて思ってるのかもしれないね。けどね、もうこれは30代以上の、昔ハードロックを貪るように聴いてたオヤジ達に聴いて欲しいな。もしこれを読んでるあなたが俺と同年代で、しかも最近はこういったハードロック的なバンドを聴いてないのなら、絶対に聴くべきアルバムですよこれは。悶々とした童貞時代が蘇ること間違いなし!(笑)



▼THE DATSUNS『THE DATSUNS』
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投稿: 2003 04 14 12:00 午前 [2002年の作品, Datsuns, The] | 固定リンク

2003/04/06

BAZRA『ひょうろくだま』(2002)

北海道在住のトリオバンド、BAZRAが02年春にリリースした、ファーストミニアルバム。5曲入りで1000円という良心的な値段もさることながら、何よりもまず内容が素晴らしい。とてもトリオ(ギター、ベース、ドラム)の演奏とは思えないような迫力、いやトリオだからこその緊張感が生み出した結果がこれなのかも。とにかく聴いていてワクワク・ドキドキするのと同時に、非常に気持ちいいのね。それは例えばボーカルの、如何にも身体全体を使って歌ってますといったような歌唱法だったり、ギターのクリーントーンでのコードストロークだったり、ベースの流れるようなフレーズだったり、ドラムのしなやかなリズムだったり。たった3つの楽器+ボーカルのみなのに、音が分厚かったり繊細だったり。この辺の強弱の使い分けが非常に上手いバンドだなぁと思います。

よく俺は1枚のアルバム、ひとつのアーティストを紹介する時、「○○に影響を受けたかのようなサウンド/音楽性」とか「○×フォロワー」というように、既存する有名/無名のアーティスト名を例えとして挙げますが、正直このバンドの場合はそれが難しいんだよね。確かに聴いたことあるようなサウンド/フレーズがあったりもするんだけど‥‥それが「これだ!」と断定するのが難しい。ギター・ベース・ドラムのトリオ編成のバンドで、ちょっとファンキーな音を出すバンドと比べることもできるだろうけど、それも無意味に思える程、曲やボーカルの個性が強い。このバンドの強みって、そういう「誰かに似てそうで、実は誰にも似ていない、真似できないような個性」なんじゃないかな、と思っています。アルバム2曲目「口達者」のイントロでのギターストロークとか聴くと「あー何だっけ。聴いたことあるような‥‥」とか瞬時に思うんだけど、それが何なのかは結局判らないまま、最終的にはBAZRAの素晴らしさに惹き付けられている自分がいたりして。3曲目「最後の海」のアルペジオとかも個性的だし、やはりバンド・アンサンブルには目を見張るものがありますよね、このバンド。楽器をやる人は是非一度聴いてみることをオススメします。

素晴らしい、素晴らしいを連呼していますが、ひとつだけ難点というか、個人的願望を言わせてもらうと‥‥先日初めて彼等のライヴを観たんですが、正直生の彼等を聴いてしまうと、アルバム音源がショボく感じてしまうんですよね。ボーカルの太さ・生々しさはレコーディングでも上手く表現されていると思うんですが、楽器に関してはちと迫力不足じゃないかな、と。インディーズでの少ない資金による制作ではこれが限界なのかもしれないけど、もうちょっと各楽器の音が太くてもいいんじゃないかな?と思ったんですよね、ライヴと比べると。ベースももっとブリブリしてていいはずだし、ギターも線が細過ぎだし、ドラムも音色がちょっと‥‥まぁこの辺は個人の好みもあるでしょうけど、やはりライヴと比べちゃうとねぇ。生に勝るものなし、ってことなのでしょうか。とはいいながらも、スタジオ盤にはスタジオ盤の良さもちゃんとあるわけで、例えばライヴでは完全に3人だけど、スタジオではキーボードやオルガン(クレジットがないけど、その後出たフルアルバムではかのKYONがキーボード弾いてるので、これもそうかな?)が加わることで、更に音に厚みが増す曲もあるにはあるんだよね。4曲目「ミハイル」なんてまさにそれだし。逆にこの曲はオルガンが加わったスタジオ版の方がカッコイイし。一長一短あるとは思うんだけど、是非次回はサウンドに拘ったアルバム作りを目指してもらいたいな、と。贅沢なお願いですけどね。

なんていいながらも、このアルバムを久し振りに聴いてますが、1年前に初めて聴いた時と印象が何ら変わってないことに驚いてます。やっぱりいいバンドだと思うし、いいシンガーだと思うし、いい曲だと思う。他に似たタイプのバンドがいないだけに、一度聴いたら忘れられないバンドでしょうね。今、100円シングルとかも出てるし、このアルバムも1000円だし、その辺のクソみたいなコピーコントロールCDを買うくらいなら、是非こっちを買ってくださいね。値段以上の内容に大満足すること間違いなしですから。



▼BAZRA『ひょうろくだま』
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投稿: 2003 04 06 12:00 午前 [2002年の作品, BAZRA] | 固定リンク

2003/03/29

羅針盤『はじまり』(2002)

  古くはBOREDOMSや想い出波止場、現在ではROVO等、とにかくいろんなバンド/ユニットで活躍しているギタリスト/シンガーの山本精一。今回取り上げるのも、その内のひとつである羅針盤という、サイケデリック・ロックバンド。山本氏自身がボーカルも兼任していて、フォーキーな歌にサイケで広がりのあるギター&キーボードが被さる、非常に聴いていて気持ちのいいサウンドが約60分に渡って繰り広げられる、ある意味「和み系」であり、またある属性の方々にとっては「あっちの世界への橋渡し」的作品と言えるでしょうね‥‥へっ、俺ですか? そんなの、どっちでもいいじゃないですか‥‥聴いていて気持ち良ければ‥‥

  羅針盤は数年前に出た「らご」というアルバムを最初に聴いたっきり、全然追ってこなかったのですが、昨年その山本氏が参加するROVOを観る機会があり、そこで彼に非常に興味を持ったんですね。で、再び「らご」を引っ張り出して‥‥そうこうする内にROVOも新作「FLAGE」をリリースし、同時期に羅針盤の方もこの「はじまり」をリリースしたという‥‥ええ、両方買いましたけど。

  ROVOの方はまた別の機会に取り上げるとして、今回は羅針盤のレビューってことで、この「はじまり」というアルバムについて書いていきます。

  このアルバムをまず聴いて思ったのは、最初に「歌」があって、そこにサイケとかそういった装飾が乗っかったような印象を受けました。サイケなバンドをやろう、というよりもまず最初に「歌モノバンド」というコンセプトがあって、たまたま演奏してる内にこういう音になっていった、という流れだったんじゃないでしょうかね。いや、ホントのところはよく判りませんが、歌や歌詞がサイケなサウンドに打ち消されることは決してなく、むしろその歌声や歌詞さえもがサイケサウンドの一部として成り立っていて、既になくてはならない要素としてそこに存在しているんですね。

  サイケサウンドっていうのは、所謂ドラッグカルチャーから生まれたものであって(そしてその多くがドラッグを通してより理解を深めることが出来るという)、正直彼等がドラッグ‥‥まぁマリファナ等をドラッグと呼ぶのは正直心苦しいのですが。俺の中ではああいうハッパ系とケミカル系は全く別物という認識がありますからね‥‥を通してこういう音楽を作っているとは思えないのですが、それでも所謂「素面」の人間が健康な状態で聴いても、そういう疑似体験をすることができる、トリップしたような気持ちになれるサウンドを見事に再現してると思いますね。例えば、ドラッグと呼ばれる類のものと無縁な中学生~高校生がこのアルバムを聴いても純粋にいいと感じるだろうし、擬似的にトリップしたかのような気分になるだろうし、「ああ、サイケってこういうのだよな?」とさ感じると思うんですよ。そういう意味では非常に健康的なアルバムかなぁ、と個人的には思います。

  中にはサイケやドラッグというと、所謂ドゥームロックやストーナーロックというジャンルを思い浮かべる人も多いと思いますが、これはそれとは似て非なるものだと思いませんか?(ま、ストーナーロックをやってる連中が皆マリファナでキメて音楽作ってるとは正直思いませんけどね)

  '60年代後期に流行ったサイケサウンド‥‥サイケロックであり、サイケなフォークであり‥‥を忠実に再現しながらも、非常に現代的なアレンジで表現している。例えばそれは最近のRADIOHEADやBLURといったバンド達にも共通する面を持っている。けど、そういったバンドとの決定的な違いは「バンドサウンドに最後まで拘っている」点や「結局、根本にあるのは歌」という点ではないでしょうか? どっちの方がより優れているという問題ではなく、装飾的な点は共通するものがあっても、基本的な考え方や取っ掛かりの違いで、それぞれ独自の個性というものが際立っているように感じます。そういった意味ではむしろFLAMING LIPSやMERCURY REVといったバンドに近いのかもしれませんね(で、そういったクラブミュージック的側面はROVOで体現しているという、ね?)。あそこまで「音響系」的側面は強くないですけどね。意外と共演したら面白いと思いませんか?(で、フジロックの「FIELD OF HEAVEN」でライヴを観れたら‥‥完全に昇天しますね間違いなく)

  1曲が無駄に長い(殆どの曲が7分前後で、最大15分半もある曲も。7曲で55分というのも頷ける話)という声もあるでしょうけど、俺には無駄に思えないし、むしろ「歌に必要」「バンドに必要」だからこういった構成になったのでしょうし、それが羅針盤の特徴のひとつだと思っていますから、全然気になりませんね。普段パンキッシュなバンドばかり聴いている耳にはちと難解で長尺に感じられるかもしれませんが、こういう音楽をも楽しめる心の余裕、懐の深さを持って欲しいな、と勧める側としては思いますね。

  寝る前や休日の朝等、気持ちを落ち着けたい時によくこのアルバムを聴いています。ま、聴いてとても「やる気」になるような作品ではないと思いますが、こういうダウナー系の作品、大好きです(根が元々ダウナー系なもんで/笑)。



▼羅針盤『はじまり』
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投稿: 2003 03 29 12:00 午前 [2002年の作品, 羅針盤] | 固定リンク

2003/03/18

THE WiLDHEARTS『STORMY IN THE NORTH - KARMA IN THE SOUTH (EP)』(2002)

2002年9月、英国でリリースされた復活シングル第1弾「Vanilla Radio」が初登場24位を記録、本当の意味での「復活」を遂げたTHE WiLDHEARTS。ここ日本では同年10月にミニアルバム「RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKING RIFF」をリリースして、12月に来日公演。そして2003年1月に本国イギリスで復帰後2枚目となるシングルとしてリリースされたのが、今回取り上げる「Stormy In The North - Karma In The South」。既に初登場17位を記録していて(言っておきますがこの数字、メタルチャートとかじゃなくて、イギリスの一般チャートですからね。OASISだのt.A.T.u.だのに並んでチャートインした数字ですから。如何に今のワイハーが本国で歓迎モードなのか、ご理解いただけるかと思います)、早くも5月には3枚目のシングルリリースも決定。この数字は'97年のシングル "Anthem" (19位)以来の好ポジション。

既に1月末から日本にもこのシングルが入荷してるはずなんですが、あまり見かけないんですよね、これ。通販でも軒並み「品切れ」だし、大手外資系ショップでは見かけないし、結局専門店に行かないと見つからないという。しかも今回、3種類のフォーマット(お約束のCD-1 & 2と、DVDシングル)でリリースされたんですが、DVDシングルは見つからないし、CD-2も限定盤らしく、数が少ないようですね。幸い俺は先日、都内の某専門店で2枚共ゲットできたのですが、これから探すとなると意外と大変かもしれません。

けど、そうはいってもタイトルトラック"Stormy In The North - Karma In The South"は日本限定ミニアルバムに入ってたのと同じテイクなので、無理して買うこともないか‥‥と一瞬考えた、そこのにわかワイハーファンのあなた! これ、絶対に買いの2枚だよ! 各シングルにそれぞれ2曲ずつ、計4曲の未発表新曲が入ってるんですが(このシングルの為に新たに録音された新曲)、これがね、もうなんつーか、既にミニアルバムをも超えちゃってるのね、楽曲のクオリティーがさ。

CD-1(一番上のジャケット)に入ってる新曲は、"Bang!"と"If I Decide"の2曲。"Bang!"は "29xThe Pain" や "Sick Of Drugs" 辺りの流れを組む、非常に判りやすいポップなメロディを持ったストレートな楽曲。サビへのメロディの持ってき方は間違いなく、我々がよく知ってるあのワイハーそのもの。ミニアルバムの楽曲がまだどことなく手探り感が漂ってたのに対し、この曲にはそういう迷いは一切なし。つうかこれ、ジンジャーというよりもCJ‥‥HONEYCRACK辺りの流れを感じる楽曲ですよね。そういう風に例えれば、何となく曲の感じは想像つきますか? そういったタイプの曲をワイハーが演奏してるという。しかも、ワイハー以外の何者でもないという説得力。これはもう凄いよマジ。そしてもう1曲の"If I Decide"はちょっと風変わりなコード進行とリフを持った、これも如何にもワイハーらしい1曲。ちょっと "Vanilla Radio" の路線といえなくもないけど、あれよりも更にヘンテコリン度が高い、アルバムでいえば「P.H.U.Q.」や「FISHING FOR LUCKIES」辺りの流れを組む楽曲といえなくもないですね。けど、当然ながらどちらも過去の焼き直しで終わってないのは言うまでもなく、ジンジャーらしさ、そしてCJらしさが滲み出たメロディを持ってるんですよね。

そして、問題のCD-2(二番目のジャケット)の新曲は、アホみたいなタイトルの"You've Got To Get Through What You've Got To Go Through To Get What You Want, But You've Got To Know What You Want To Get Through What You've Got To Go Through"(苦笑)と、"Move On"の2曲。長いんで曲名は省略しますが、最初の方は‥‥これこそワイハー!といえるような、ヘンテコリンで複雑で重くてポップで狂っててインダストリアル調で馬鹿馬鹿しいまでにかっけーナンバー。たった3分40秒の中にワイハーの要素が全て凝縮された、もの凄い曲ですよこれ。オープニングはジンジャーを中心とした3声コーラス&アルペジオで静かに始まり、ガッツィーなリフが唐突に入ってきてかなりアッパーな演奏に。AメロはCJを中心とした2声で流れるようなメロディを奏で、所謂Bメロでいきなり転調して、インダストリアル調の演奏に合わせジンジャーが曲のタイトルを叫ぶという展開。そして叫び終わると、ダニーお得意の「Fuck it!」の叫び声が‥‥そしてメインリフに戻るという‥‥途中、何度かいろんな展開を重ね、最後にインダストリアル調に終わるという‥‥ちょっと「ENDLESS, NAMELESS」での流れも感じさせる、もの凄い曲。

俺ね、このシングル聴く前はバカにしてたのよ、たかがBサイドだと思って。勿論、過去のワイハーはBサイドに至るまで名曲の数々を連発してきたんだけど、正直今の彼等(特にジンジャー)にはそこまで魅力的な楽曲を連発するだけのパワーがまだ備わってない(復調してない)と思ったのね‥‥けど、この曲を聴いた瞬間、身体中の血液が逆流して、沸騰して脳天から吹き出しそうな程興奮しちゃってさ‥‥大声で「うぉーっ!」って叫んじゃったよマジで。そうそうそうそう、こういうバカバカしいまでに大袈裟でもの凄い曲を待ってたのよ!って。そしてそれに続く"Move On"は今までにないようなイントロを持った、所謂「ワイハー風R&B調ロックンロール」とでも呼びましょうか、とにかくHELLACOPTERS辺りの黒っぽいロックンロールの要素を取り入れた感のある、ちょっと哀愁漂うメロウな1曲。けど、勿論歌に入るとワイハーそのものなんだよね。この曲もメロが本当に際立ってて、かなりいい感じ。うわぁ、これら2曲が入った方が限定盤っての、勿体なくない?

つうわけで、かなりベタ誉めなわけですが‥‥録音は低予算の中で作られたこともあって、かなりラフな感じ(タイトルチューンやミニアルバムの楽曲に比べれば、って意味ね)なんだけど、特に長いタイトルの曲(笑)や"If I Decide"みたいなガッツィーでヘヴィな曲、"Move On"みたいなガレージ色の強い曲にはこういうラフで生々しいミックス&サウンドの方が似合ってるので、これはこれでアリってことで。それにしても‥‥本当に短期間でこうも化けるか!?って程に相当良くなってるのね。勿論、あのミニアルバムも良かったんだけど‥‥あれを80点(合格点)とすると、このシングルの新曲4曲だけで90点以上を軽くクリアしてるんだよね。これ、是非日本盤出して欲しいなぁ。もしかしたら、次のシングルと一緒にまとめて、またミニアルバムとしてリリースするのかも(いや、今度のシングルに収録される6曲と今回の4曲を合わせたら、普通にフルアルバム並みになっちゃうよな)。

今度のシングルは間違いなく、これよりも更に上をいく楽曲が求められるわけだけど‥‥これを聴いた後となっては、心配などこれっぽっちもしてないし、むしろ早く聴きたくてたまらないっつうね。ホント、このバンドは'95年にいたポイントとも、そして97年にいたポイントとも全く違うポイントへと向かってるよ‥‥こりゃ面白いことになってきた!



▼THE WiLDHEARTS『COUPLED WITH』(シングル全曲を収録)
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投稿: 2003 03 18 06:48 午後 [2002年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2003/03/06

t.A.T.u.『200KM/H IN THE WRONG LANE』(2002)

いや~やっぱりやっておいた方がいいですよね、この話題のガールズ・ポップ・デュオのバカ売れアルバム。義務感というよりも、単に俺が今年の頭頃から気に入っていて、既にヨーロッパ盤持ってるにも関わらず、PV観たいが為に先日やっとリリースされた日本盤まで買ってしまったという‥‥ってアホですか俺は(ちなみに輸入盤でも現在、エンハンスト仕様は手に入ります。念のため)。

というわけで、昨年末辺りから少しずつ話題になっていて、今年に入って一気にブレイクした感のある、このロシア出身のティーン・デュオ「t.A.T.u.」(タトゥー)のワールドワイド・デビューアルバムを今回オススメしたいと思います。って俺がオススメするまでもなく、みんな話題の"All The Things She Said"はCDショップやラジオで聴いたことがあるだろうし、あるいは既に輸入盤を手に入れて聴き込んでんでしょうね。ビジュアル的な話題(件のPVでのふたりのキスシーン、レズ云々、制服姿、等々)が先行してしまってる感がありますが(って、やっぱりそっちがセンセーショナルだったからこそここまでウケたってのも大いにありますけどね)、今回はやはり「とみぃの宮殿」的に、音楽に焦点を当ててレビューを進めていきたいと思います。

このアルバムは、現地ロシアでリリースされたアルバム(当然ロシア語で歌われている)を英語で歌い直し、更に全世界を標的にした新曲(カバー曲含む)を加え、おまけとして英語で歌われた曲のオリジナル・バージョン(原語バージョン)を2曲、更にリミックスナンバーを加えた構成となっています。そういう意味では純粋なオリジナル・アルバムとは言い難いですが、元々が企画モノっぽい存在なので、まぁこれはこれでアリかと思います。いや、全然アリですね。

で、今回のワールドワイド・デビューに対して新たなプロデューサーを迎えているのですが、それがかのトレヴァー・ホーンだという‥‥'80年代通過組ならご存じでしょう。元BAGLES~元YES、後にFRANKIE GOES TO HOLLYWOODなんかを手掛けてきたプロデューサーですね。で、その大ヒット曲"All The Things She Said"を始め、PRODIGYっぽい"Not Gonna Get Us"、"Clowns (Can You See Me Now?)"といった楽曲のプロデュース、そして作詞にクレジットされているのですが‥‥全然トレヴァーっぽくないんですよね。確かにヒンヤリとした哀愁漂うマイナーキーのテクノポップ、といった辺りに彼の色を感じなくはないですが、少なくとも我々が想像する「トレヴァー・ホーン・サウンド」はここにはないわけです。"All The Things She Said"と"Not Gonna Get Us"のロシア語バージョンのトラックが英語バージョンと同じという点からすると、どうやらトレヴァーは英語での作詞に携わったのみ、といったところでしょうか? ま、まさか21世紀になってまでトレヴァー・ホーンの名前を目にするとは思ってもみなかったので(しかもそれが大ヒットするとはねぇ)、嬉しいっていえば嬉しいですが。

全ての楽曲に言えることですが、基本的にマイナーキーの楽曲が殆どで、そこにヨーロピアン・テイスト漂うテクノポップだったり、ちょっとヒップホップ調だったり、オーケストラ風トラックのバラードだったりと、意外と曲の幅はあるんですが、それら全てに統一感を感じてしまうのは、ジュリアとレナのふたりによる歌によるものが大きいかと。声質といい、歌い方といい、ロシア語混じりの英語(‥‥ホントか!?)といい、それらが更に味わい深さを増す要因となっています。なんかね、この「幸薄そう」な雰囲気がいいんだよね、個人的に。で、バックトラックが壮大になればなる程、どんどん幸せから遠ざかっていくような、そんなオーラに包まれてるんだよね、このアルバム自体が。勿論これ、最大の誉め言葉ですよ。

そしてこのアルバム最大の問題作といえるだろう、THE SMITHSのカヴァー"How Soon Is Now?"。イントロのギターを聴いた瞬間、「ああ!」と認識できるんですが、ただでさえ幸薄そうだったモリッシー&ジョニー・マーの原曲が、PET SHOP BOYS的アレンジになったことで、更に幸薄そうになってたりします。つうかこれ、不幸自慢大会か何かですか? ま、THE SMITHS及びモリッシーのファンは無理して聴かなくてもいいかと。昔、デヴィッド・ボウイやジェフ・バックリーがモリッシーのカバーをやったことがありましたが、ああいうカバーとはまた質や方向性が違うので‥‥ちなみに俺は支持派ですけどね。

というわけで、駆け足で彼女達のファーストアルバムについて触れてきたわけですが、個人的には「アリ」だと思うし、凄く気に入ってる作品なんですよ。"All The Things She Said"なんて一度聴いたら、あのサビが脳内で延々リピート状態する程だし、アルバム全体の音楽性もPET SHOP BOYSとかDEPECHE MODE辺りに通ずるものがあるし。そう、ご存じの通り、俺は10代の頃、こういった音楽が大好きだったわけで。まぁある意味'80年代的と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、逆に時代が一回りも二回りもしてしまった今だからこその新しさに加え、あのセンセーショナルな話題が重なってここまで大ブレークしたんじゃないかと‥‥ロシアからってのも新しかったしね。

正直、次があるのかどうか、そしてそれが同じようにヒットするのかは甚だ疑問ですが、とりあえず今はこれを貪るように聴きまくろうと思います。



▼t.A.T.u.『200KM/H IN THE WRONG LANE』
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投稿: 2003 03 06 05:01 午後 [2002年の作品, t.A.T.u.] | 固定リンク

2003/03/03

THUNDER『BACK FOR THE CRACK (EP)』(2002)

THUNDERが帰ってきた!!

一時的な再結成とは知っていながらも、やはり嬉しいし、ワクワクするんだよね。だって、単なる「懐メロ・メドレーを演奏する為の集金ツアー」じゃなくて、こうやって新しい音源を引っ提げての期間限定復活なんだから。しかも、ここに提示された4曲が、過去の偉業に引けを取らない内容なんだから‥‥待った甲斐があったってもんだよ。

俺が彼等の解散をどれだけ悲しみ、どれだけ嘆いたか。それを憶えている人は今や数少ないかもしれませんね‥‥3年前の3月にここ日本でラストツアーを行った後、4月にイギリス国内での最後のスペシャルギグをもって約10年に及ぶ活動に終止符を打ったTHUNDER。その辺の経緯についてはこの辺を読んでもらえば、ある程度理解してもらえるでしょう。

さてさて‥‥THUNDERというバンドがどうして解散してしまったのかを知って貰ったら、次は再結成に至るお話を少し。

その昔‥‥といっても'90年代前半までは存在していたのですが‥‥'80年頃からスタートしたイギリス夏の風物詩のひとつと呼べるドニントン・フェスティバル‥‥通称「MONSTERS OF ROCK」というフェスがありました。所謂ハードロック系のアーティストが毎年、ドニントン・パーク(レース場か何かなんだよね)に約8万人も集めて大盛況だったあのフェス。今や憶えている人は20代後半以上の元ハードロック少年少女だけかもしれませんが、とにかくグラストンバリーやレディングに並ぶ程のフェスだったんですよ。そのフェスが何故なくなってしまったのか‥‥集客の問題、資金難の問題、そしてハードロック/ヘヴィメタルという音楽自体の衰退、等々‥‥いろんな要素が重なって、多分METALLICAかIRON MAIDENがヘッドライナーを務めた回で終了してるはずなんですね(終了と銘打っていたわけではないんだけどね‥‥)。

で、その「MONSTERS OF ROCK」が休止して丁度10年経ったか何かで、2002年秋にイギリス国内で「MONSTERS OF ROCK」ツアーというのが行われることになったらしいんですよ。'90年前後に出演したバンドを集めて、ホールツアーをするという、ちょっとしたお祭りですね。幸い、ここ最近「クラシック・ロック」として'80~'90年代のハードロックがイギリス国内でも再評価されるという動きがあるようで、それに便乗してのことらしいですね。俺も詳しいことは知らないんですが、何やら最初はWHITESNAKEにオファーしたという話。ま、その当時はまだ再始動(もなにも、解散してるんですよね一応)の予定もなかったため、結局アリス・クーパーをヘッドライナーとして、その他幾つかのバンドを交えてツアーをすることになったようで(ま、そのWHITESNAKEも今年になって再始動を宣言するわけですが)。

そこで、そのイベント最大の目玉としてプロモーターは「THUNDER再結成」を打診するわけですよ。勿論、THUNDERは2000年4月の解散以降、一度としてメンバー5人が集まって演奏する機会はなく、せいぜい昨年にダニー・ボウズとルーク・モーリーが「BOWES & MORLEY」として活動を共にし、「MOVING SWIFTLY ALONG」というアルバムを作り、ツアーをした程度。又は2001年5月にルークがソロで来日した際に元メンバー数人がツアーメンバーとして参加した程度。決して「THUNDER」の名で5人が揃う事はなかったわけです。

なのに、こんなにもあっさり再結成してしまうとは‥‥あり得ないと思ってた話だけに、そりゃ最初は寝耳に水でしたよ。実際、ダニーが他メンバーにこの話をした時、あまりいい反応は得られなかったそうだし。最初はその「MONSTERS OF ROCK」ツアーでの7回の公演(最終的に、追加公演が2回決まり、合計9回)の為だけの再結成ということだったみたいで、新曲を発表する予定などなかったようなんですね。ところが、どこでどう間違ったか、こうやってツアーに合わせてこのシングルが発表され(このシングルは2002年11月にイギリス/日本でのみリリース)、更にはアルバムまで発表する予定がある、と‥‥恐らくソングライターであるルークが、リハーサルで出した音に触発されて、THUNDERらしい楽曲/THUNDERでやったら面白いであろう楽曲をどんどん作り出してしまった結果がこれなんでしょうね。じゃなきゃ、期間限定とはいえ、オール新曲のオリジナルアルバムなんて作らないでしょうし。

というわけで、前置きはこんな感じで。THUNDERについての知識があまりない方々、ご理解いただけましたか?

このシングルには再結成後に書かれた完全新曲が4曲収められています。アルバムにはここから3曲が収録されるとのこと。まずは、如何にもTHUNDERらしい、シャッフルビートが心地よいブルーズロック"Somebody Get Me A Spin Doctor"。今時、こういうグルーヴィーでブルージーで、ソウルフルでハードなロックンロールを演奏できるバンド、イギリス国内には皆無なんじゃないでしょうか? いや、絶対にいないだろうね。だってこんな音、10代や20代のガキンチョには出せないって。最近、THE MUSICとかが「グルーヴ・ロックの再来」とかいって騒がれてるけど、あれとは次元が違うもん。いや、THE MUSICはTHE MUSICなりの良さがあるんだけど、やっぱり違うと言わざるを得ないよね。最も近い存在とえいば、やはりREEFのようなバンドでしょうね。そのREEFですら、最近は国内での人気もちょっと減退気味だし。THUNDER再結成によって、国内でのラジオオンエアも少しずつ増えてるみたいだけど、これを機に「ブリティッシュロック本来の良さ」を再認識して欲しいと願って止みません。

続く2曲目"Blown Away"は、どこからどう聴いてもTHUNDER以外の何ものでもない王道スタイル。如何にも初期の彼等らしい展開とギターソロを持ったブルーズロック。それでいて、ただの焼き直しで終わってない点はさすが。ブルージーなんだけど、歌メロ自体は非常にポップ度が高いんだよね。そこがこのバンドの持ち味なんだけど、なかなか世に出る(というか、HRファン以外に聴いてもらう)機会がなかったせいで、ああいう風に解散に追い込まれてしまったわけだけど‥‥ここで更にファン層を広げて、少しでも長く「限定期間」を延長してもらいたいもんです。

3曲目は当初アルバムには入る予定ではなかったけど、結局収録されることになった"The Pimp And The Whore"。小気味いいテンポの、ソウルフルなロックンロール。とにかくどの曲にも言えるんだけど、ダニーは既に40歳を超えているにも関わらず、全く衰えを感じさせないんだよね。そしてルークのソングライターとしての冴えにも全くマンネリを感じないし。これって結局、バンドを完全に終わらせてソロに向かったりして、対外試合を楽しんだ結果なんだろうね。「この1枚に賭けてます」っていう意気込みはそんなに感じられず、むしろ「俺ら、肩の力抜いてやっても、これだけのことが出来るんだぜ!?」とでも言わんばかりの説得力が終始感じられます。いや、肩の力を抜いてても、その辺のイギリスの若手バンドの何十倍もパワフルなんだけどさ。

そして最後は、結局アルバム未収録になってしまった"When Tomorrow Comes"(当初はこっちがアルバムに入る予定だった)。これも一聴すればTHUNDERと判るメロディーを持った、メロウなロックンロールナンバー。同じTHUNDERの曲でいえば、後半の展開が "She's So Fine" にも通ずるものがありますね。もうね、ダニーのソウルフルな歌がそこに乗っかれば、間違いなくTHUNDERの曲になるんだよね。つうかこのレベルでアルバムのアウトテイクになってしまうとは‥‥どんなアルバムになるんでしょうか!? ま、その答えはあと数日で出ますけどね!

ルークがソロで来日した時、俺はライヴには行きませんでした。同じように、BOWES & MORLEYのアルバムは嫌いじゃなかったけど、ライヴには足を運ばなかった。何故か? 答えは至極簡単。「THUNDERではない」から。当たり前っていえばそうなんだけど、やっぱり俺はルークのソングライターとしての才能とか、ダニーのシンガーとしての力量に惚れ込んだんじゃなくて、それら全てを包括した「THUNDER」という集合体、ロックバンドが好きだったのね。だから進んで行く気にはならなかったわけ。けど、今回は違うよね。ダニー、ルーク、ベン、ハリー、クリス‥‥後期のメンバーである5人が再び揃って、「終わり」からの続きと呼べるアルバムをリリースする。そして、5月にはイギリス国内を単独ツアーすると発表。期間限定だったくせに、3/1からは新しいオフィシャルサイトをスタート。夏前には来日公演の噂も‥‥それぞれが別々の活動/仕事/生活を持っている為、パーマネントの活動は無理だ、ということだったはずだけど‥‥その後の予定は、アルバムとツアーの結果次第なんでしょうね、きっと。

とにかくね。俺は声を大にして言いたいわけ。イギリスのロックが好きとか平気でほざいている奴ら。君らにはTHUNDERを聴く義務がある、と。四の五の言わず、まずは聴けってぇの!



▼THUNDER『BACK FOR THE CRACK』
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投稿: 2003 03 03 02:21 午後 [2002年の作品, Thunder] | 固定リンク

2003/02/28

FLASHCUBES『LIVE IN JAPAN -RAW POWER POP-』(2002)

自分が足を運んだライヴがたまたまライヴアルバム、あるいはライヴビデオとしてリリースされたってことが過去何度かありました。しかもそれがアリーナクラスの会場じゃなくて、小さいライヴハウス程度のハコだったりすると、尚更嬉しかったりするんですよね。ここ最近で思いつくところだと、THE WiLDHEARTS「TOKYO SUITS ME」('98年10月24日の赤坂ブリッツ公演)とか、ナンバーガールの記録シリーズ緑盤での水戸公演とか。他にもあるんだろうけど、今は思い浮かばないや。特にワイハーのライヴ盤は思い出深い公演だったこともあって、何度も聞き返してはあの日のライヴを思い返してみたりしてました(再結成してしまった今となっては、単なる記録の断片でしかないのかもしれないけどね)。

そして今回、ここに新たに1枚、大切な「記録」、いや「記憶」が加わることになりました。2002年5月18日(土)。場所は下北沢シェルター。そう、あの日俺が観たFLASHCUBESのライヴがアルバムになったのです。本来なら'02年後半に初のオリジナルアルバムをリリースのはずだったのでは‥‥ま、こうやってボーナスみたいなアルバムがリリースされたんだ、もうそれだけで嬉しいよね。

で、そういう「自分が参加したライヴの記録」っていう面を排除して、このアルバムを語ってみますと‥‥40歳越えたオヤジ共が何故、この時期に再結成したのか。シングル2枚しかリリースしてなかったバンドがどうして来日出来たのか。その理由がこのアルバムに全て詰め込まれています。もうね、全然オッサンぽくないのよ。パワーポップの草分け的存在なんて言われてるらしいけど、そんなのお構いなしにハードな演奏を聴かせてくれる。勿論、メロディやコーラスは甘すぎる程にポップ。けど、演奏は録音状態もあってか、かなりハード。いや、実際あの場にいた俺でさえも、他の共演バンド(日本のFIRESTARTERやSAMANTHA'S FAVOURITE等)よりもハードだと感じていたし。最初メンバーを見た時、腹の出かかった(いや、実際に出てたメンバーもいたけど)オッサンばっかで、正直全然期待出来なかったんだけど、もうね、音楽は見た目じゃないな、と猛烈に反省しました。そりゃルックスいいに越したことはないけど、この音だけ聴いたら「どこぞのパンクバンドだ!?」ってみんな思うはずだし。それくらい活き活きしてて、激しいサウンドなのね。

曲の良さは折り紙付き。殆どの楽曲が編集盤「BRIGHT LIGHTS」からの曲なんだけど、遊び心満載でカバーも結構やってくれてたのね。例えば知ってる人は知ってるFLAMING GROOVIESの"Shake Some Action"、最近マイケル・モンローもカバーしたEDDIE & THE HOT RODSの"Do Anything You Wanna Do"、RAMONESの名曲"I Wanna Be Sedated"、そしてニック・ロウの"Heart Of The City"の4曲。後半2曲は一番最後にメドレーでやってたので記憶に残ってるんだけど、前者2曲は原曲を知らなかったので(いや、EDDIE & THE HOT RODSのは知ってるな。けど当日やったの全然記憶に残ってなかった/汗)あれだけど‥‥全然違和感なし。オリジナル曲だけでも十分ライヴやれるだけの曲数あるはずなのに、敢えてカバーをこれだけやるってのに驚いたと共に、奇跡の来日が実現して喜んだ俺ら以上にメンバーがこのライヴを心底楽しんでいたんだな、と再確認。つうか、上手いバンドはカバーやらせるとセンスっつうか、その実力が端的に表れるよね。特にパワーポップ系のバンドは面白いカバーやってることが多いしね(TEENAGE FANCLUBとかJELLYFISHを思い浮かべてみて)。

全15曲。メドレー分もカウントしても17曲。全部で50分程度‥‥って、当日そんなに短かったっけ!? ギタートラブルとかあって結構間が空いたりしたし、CD聴く限りでは曲間を出来るだけ短く編集してるし、MCも殆ど削られてるから、余計短くなったんだろうけど‥‥ライヴレポに俺、約90分くらいかな!?とか書いてたのに、実際はそんなにやってなかったってことになるんだわ‥‥だってあの日やった曲、削られてないもんね?(多分)ということは、それだけ充実した、内容の濃いライヴだったってことなのでしょう。

当サイトでも度々取り上げる「パワーポップ」というキーワード。オリジナルと言える存在であるBADFINGERとかRASPBERRYSとか、既に解散している歴史的グループをまず聴くのもいいでしょう。けど、こうやって再結成して細々と活動してるグループがいることもお忘れなく。若くてルックスのいいモダンなバンドが持てはやされる時代ではあるんだけど、やっぱり「2003年はオヤジのロケンロー」がブームになると断言した俺としては、このFLASHCUBESのライヴ盤をイチオシしたいと思います。だって、俺の声が(多分)入ってるとかそういうの関係なしに、本当に素晴らしいロックンロールアルバムなんだもん。パンク好きも、パワーポップ/ギターポップ好きも、そしてハードな音を好む人も皆、これを聴いて何かを感じて欲しいな。

そして、今年こそリリースされるであろうオリジナル・フルアルバムと、来るべき再来日に向けて、もっとFLASHCUBESの名前を世に知らしめて行きたいなぁ、と考えながら、このアルバムを爆音で毎日聴いていきたいと思います。



▼FLASHCUBES『LIVE IN JAPAN -RAW POWER POP-』
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投稿: 2003 02 28 07:16 午後 [2002年の作品, Flashcubes] | 固定リンク

2003/02/12

BON-BON BLANCO『愛のナースカーニバル』(2002)

  '02年12月リリースの、BON-BON BLANCO3枚目のシングル。相変わらずハイテンション、ハイクオリティです。が‥‥これ、一歩間違ってればボンブラ版「LOVEマシーン」になってたかも‥‥なんてことすら思ってしまう、ちょっと変わってて、それでいてポップでカッコいい楽曲。デビュー曲 "愛 WANT YOU!!" のクールさと、セカンドシングル "だって、女の子なんだもん!" のアイドル的な陽気さを併せ持った、非常に優れた1曲になってるんですね、これが‥‥アホっぽい「吸って~吐いて~吸って~吐いて~」ってコーラスが妙に気になって、気になり出すともう耳にこびり付いて離れないという、ねぇ‥‥(「ナース」→「聴診器」→「診察時の吸って/吐いて」ってことなんですかね、やっぱ?)Aメロ、Bメロ、サビ前半はかなりクールでファンキーな感じのマイナーチューンといった感じなのに、サビの途中でメジャーキーに転調して、アイドルポップ的な空気を強引に持ち込むんですよね。いや、そこがいいんですが。モー娘。 "そうだ!We're ALIVE" みたいな強引さ/暴力性は感じさせず、もっとスムーズに移行してく辺りに、作曲者(大島こうすけ)とアレンジャー(night clubbers名義)の力量/スマートさを強く感じます。

  一方カップリング曲 "We are B3~放課後編~" は、「ラララむ○んく~ん♪」という、ちょっと懐かしい某消費者金融のCMソングを思い出さずにはいられない、3コードのロックンロール調ナンバー。この曲、所々を初めてAnna以外のメンバーも歌ってる、ある意味記念すべき1曲。女子校生の日常を歌ったような内容の歌詞なので、全員参加ってとこなんですかね(いや、全員は歌ってないか?)。こういう曲を聴くと、ボンブラには是非サンタナ辺りをカバーして欲しいな、と思うんですが。ほら、こないだ出たアルバムで、女性シンガーをフューチャリングしてる曲があったでしょ? ああいうのをボンブラ風にリメイクして欲しいんですけどね。勿論、過去の有名なラテンナンバーでも可ですが。サンタナというと昔、森高千里がカバーしてたことがありましたが、もっとピッタリだと思うんですよね。問題は、肝心のサンタナのギターをどうするか?ですが‥‥(まぁこの際なくてもいいか、ギター)

  恒例のリミックスは、タイトル曲を更にDJリミックス風にした感じ。ちょっと一時期のCHEMICAL BROTHERSを彷彿させるリズムトラックが登場しますが、最近ありがちなハロプロ系のリミックスものよりは全然クオリティが高いし、時間がかけられてるし、何よりも愛情を感じるのね。この点がある/ないだけでも、かなり違いますよね。ただ「売ろう、ボンブラをブレイクさせよう!」っていう気負いだけじゃなくて、制作者側の遊び心も同じくらい感じるんですよ。少なくとも、一昔前のハロプロにもこういった「遊び心」、十分感じられたんですけどねぇ‥‥どこいっちゃったんでしょうか?

  早くもリリースされる次のシングルは、アニメのタイアップも付いたし、更にメディア露出(祝・Mステ初登場!)も増えるようですし、元々楽曲の完成度やパフォーマンスには定評があるだけに、ここで一気にブレイクしそうな予感ですね‥‥って俺、まだその4枚目のシングル "涙のハリケーン" を聴けてないんですが‥‥ま、問題ないでしょう。

  それにしても‥‥最近、ホントにボンブラ好きを公言する人、多いよなぁ‥‥ま、俺は後追いなんでデカイことは言えませんが。こうなると、早くアルバムが聴きたいですね。何か、ボツ曲だけ集めてアルバム作っても、かなりクオリティが高そうな気がするんですが‥‥。



▼BON-BON BLANCO『愛のナースカーニバル』
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投稿: 2003 02 12 12:24 午前 [2002年の作品, BON-BON BLANCO] | 固定リンク

BON-BON BLANCO『だって、女の子なんだもん!』(2002)

  '02年7月にデビューしたBON-BON BLANCO。早くも9月にはセカンドシングルであるこの "だって、女の子なんだもん!" をリリースします。この時点では、まだ一部の属性の方々にのみ知られるような存在だったボンブラですが、それでは勿体ないくらいにクオリティの高い楽曲を、またまた連発するわけです。

  前作 "愛 WANT YOU!!" はハウス色が強いクールな楽曲でしたが、今回はパーカッションという打楽器を更に有効利用した、ラテン調のファンキーなポップソング。今回の方がアイドルっぽいイメージが強いですが、やはりバックトラックはハロプロ等のアイドル勢とは異なる、かなり本格的でコンテンポラリーな打ち込み。曲の合間に入る合いの手的コーラス(モー娘。「LOVEマシーン」的な「FU~FU~」みたいなのね)が入ることで、「ああ、ボンブラってアイドルだったよな」という現実に引き戻されますが、基本的にはポップソング(あんまり使いたくない表現ですが、J-POP的なポップス)として十分過ぎる程に機能しています。

  カップリング曲 "恋の放課後" もサンバ調のラテンナンバー。ほぼ同時期にリリースされた松浦亜弥の "The 美学" と比べても、同じラテンをネタにした楽曲で何故こうも違ってしまうのか、改めて考えされられますね。ま、松浦(つんく♂)はあくまで歌謡曲、ボンブラサイドはもっと洋楽的なポップスってとこなんでしょうかね?(そもそも比べること自体が間違ってるという声もありますが)

  そしてお約束となってる今回のリミックスは、タイトルナンバーをもっとアッパーにして、ちょっとスカっぽいアレンジで再構築してます。あ、こっちの方が "The 美学" と勝負させた方がいいかな? 同じメロディを持った曲を、こうも違ったアレンジに仕上げ、全く異なる印象を与えるという仕事ぶりに、プロの技を見た気がします。アコーディオンが入ることで、タンゴっぽいイメージもありますね。とにかく、一粒で二度オイシイとはこのこと。アッパレ!

  それにしても‥‥この "だって、女の子なんだもん!" という曲‥‥MTV世代、そして'80年代末のアイドルを通過してる世代には懐かしいメロディなんじゃないでしょうか‥‥つうかさ、これってあからさまにWINKの "愛が止まらない" だよね?(原曲はカイリー・ミノーグの "Turn It Into Love" っていいましたっけ?)Aメロのコードの運び方とか、サビメロの入り方とかさ‥‥ま、あれを意識したんだろうね。訴えられないことを祈ります‥‥とにかく、このシングルは名盤ですね!



▼BON-BON BLANCO『だって、女の子なんだもん!』
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投稿: 2003 02 12 12:22 午前 [2002年の作品, BON-BON BLANCO] | 固定リンク

BON-BON BLANCO『愛 WANT YOU!!』(2002)

  昨年末辺りから、ずっと取り上げようと思ってたBON-BON BLANCO、通称ボンブラ。なんか、ハロプロに突っ走ってから、こういう音に対して貪欲になってるような気が‥‥気のせいかな? ま、単純にクオリティの高い、いい曲だということで、今回紹介していきたいと思います。

  このグループ、余所のアイドルグループと大きく異なる点があります。女性5人組なんですが、基本的に歌うのは真ん中のAnnaのみ。で、他の4人は何をやるかというと‥‥コンガであったり、マラカス、ボンゴ、ティンバレスといったパーカッションを担当するわけです‥‥で、それだけパーカッション類が充実してるんだから、それらが楽曲に反映されてるのかというと、されてるんですね確かに。

  このデビューシングル "愛 WANT YOU!!" は、イントロからしてパーカッション乱れ打ちみたいな感じでスタートする、非常にダンサブルなポップソングに仕上がってます。基本的にはハウス系のバックトラックに、メンバーが叩くパーカッション類が乗っかる、という形態なんだけど、特に耳障りでもなく、逆に要所要所に入るパーカッションの音が心地よいです。

  で、この楽曲の作曲&編曲を担当しているのが、「大島こうすけ」という人。いざ名前を出されて「ああ、あの人~」というような濃ゆい人はなかなかいないと思いますが、この人、初期WANDSのキーボーディストだった人です(当時は大島康祐と名乗っていた)。もっとも、WANDSの全盛期といえる "時の扉" や "世界が終わるまでは" の頃には既に脱退していましたが(セカンドシングル "もっと強く抱きしめられたなら" をリリースした後に脱退)。その後、SO-FIというユニットを結成したり、プロデューサー/作曲家/アレンジャーとしていろいろなアーティストのレコーディングに携わったりしてきました。今回のボンブラの場合も、基本的には彼がプロデューサーといった感じなのでしょうか、殆どの楽曲の作曲/アレンジを手掛けています。ま、WANDSの音楽性をイメージしてボンブラに接する人はまずいないでしょうけど、全く異なる音楽性なので、念のため。

  カップリングには、俺と同年代且つMTV世代なら憶えてるであろう、MIAMI SOUND MACHINE(後にグロリア・エステファンのソロユニットへと移行)初の全米ヒット曲である "CONGA" のカバーが収録されていて、これがまたかなりカッコいいリミックステイクになっています。ここではパーカッション類の音はほぼ皆無で、基本的には打ち込みのみ。ま、それはそれでかなりカッコいい出来なんですけどね。また他にも、タイトル曲を更にクラブリミックスしたテイクも収録されていて、トータル的にもかなり「ビート」「リズム」を強調した作りなってます。

  しかし、だからといってメロディが疎かになっているわけでもなく、非常に馴染みやすいポップなメロディやコーラスを持った1曲だったりします。これがデビュー曲だっていうんだから‥‥完成度高すぎ。何やら100曲近い候補曲の中から選んだっていう噂もあながち間違いではないかな、と。最近のハロプロものばかりを聴いてる耳で接すると、アイドル云々を抜きにしてもかなり高品質なポップソングとしてスコーンと耳に飛び込んでくるんですよね。勿論、路線の違いもありますが、これはこれでかなり強烈な個性を持ったグループが出てきたなぁ、と。

  間違いなく、近い内にブレイクするだろうなぁ、こんなレベルの楽曲を連発されたら‥‥。



▼BON-BON BLANCO『愛 WANT YOU!!』
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投稿: 2003 02 12 12:20 午前 [2002年の作品, BON-BON BLANCO] | 固定リンク

2003/01/31

THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』(2002)

一昨年辺りから、「とみ宮」的に言うところの『リフ・ロック』が徐々にブレイクしていき、THE STROKES、THE HIVESといったバンドから、最近ではTHE DATSUNSまでブレイクしつつある状況下、何故かそういったバンドを好む人の中からこのバンドの名前が挙がることが少ないんですよね‥‥そう、それが今回紹介するTHE HELLACOPTERSです。あのね、HELLACOPTERSがいたからHIVESもDATSUNSも生まれたようなもんなのよ、大袈裟ではなくて。特にDATSUNSなんてHELLACOPTERSに対するリスペクトを口にしてるし、実際ツアーも一緒にやってるしね。

ここ日本ではまず最初にTHE WiLDHEARTSのジンジャーがお気に入りのバンドとして「BURRN!」で紹介され、しかもそのTHE WiLDHEARTSのラストツアー(再結成前の)でオープニングアクトとして初来日したことから、意外と『rockin'on』で紹介されるバンドをメインに聴いてる人達からは敬遠されているような感じですが、実はそういった雑誌を普段読んでる人達にこそもっと聴いて欲しいアルバムなんですよね、この「BY THE GRACE OF GOD」ってアルバムは。

先に挙げた『リフ・ロック』系のバンドを称して『爆走ロックンロール』と呼ぶことが多いと思いますが、その呼称は正にHELLACOPTERSの為に作られた言葉であり、実際彼等がここ日本で取り沙汰されるようになってから『爆走ロックンロール』って表現が浸透していったんじゃないかな‥‥と記憶してます。初期はそれこそMOTORHEADとIGGY & THE STOOGESを掛け合わせたかのようなパンキッシュで疾走感のあるガレージサウンドで我々を魅了していたわけですが、セカンド以降、徐々に彼等のルーツであるKISSやRAMONESといったバンドが持っていたメロディセンスやポピュラリティを表出していき、その集大成と呼べるような1枚がメジャーリリース第1弾となった前作「HIGH VISIBILITY」だったことは、ファンならご存じでしょう。

'02年9月に本国スウェーデンで、そして同年12月にようやくここ日本でもリリースされたこのアルバムは、メジャー配給では2枚目、通算5枚目(編集盤「CREAM OF THE CRAP! Vol.1」除く)のオリジナルアルバム。本国では同時期にリリースされたBON JOVIの新作「BOUNCE」を抑えて堂々の2位を記録する程の大人気振り。意外とその辺の情報はファン以外には知られていませんが、それだけ凄いバンドだってことですよ。

音楽的には、前作を更に押し進めたような、正に延長線上にある作品。なのだけど‥‥激渋な1枚となっております。初期の衝動性や激しさは影を潜め、KISSばりのメロディは更に磨きがかかり、前作辺りから表れ始めたソウルからの影響も更に色濃く出ています。

このバンドの強みは、激しいツインギターもさることながら、やはりピアノ/オルガンを取り入れている点でしょう。先に挙げたようなバンドは、ギター・オリエンテッドな、正しく『リフ・バンド』の称号そのままなのですが、HELLACOPTERSにはバックに流れるハモンドオルガンの音色、メロウな曲を更に盛り上げるピアノの音が加わることで、更に「男泣き」の世界を盛り上げています。今作中でも特に名曲との声も高い "Rainy Days Revisited" なんて、もう‥‥速いだけ、ウルサイだけじゃダメなんだよ、爆走ロックってのは。パンクの影響が色濃いバンドばかりがもてはやされる時代なのかどうかは知りませんが、俺的にはTHE MOONEY SUZUKIとかDATSUNS、そしてこのHELLACOPTERSみたいにソウルやR&B、ブルーズの影響を感じさせるバンドの方がより信頼できるんですよね(いや、それ以外のバンドが悪いとか劣るって意味ではなく、個人の感性の問題ですけどね)。

ファーストシングルにもなったタイトルチューン "By The Grace Of God" イントロのピアノリフを聴いた瞬間から鳥肌が立ち、更に哀愁のメロディに泣き、続くタイトな "All New Low"、ZOMBIES辺りを彷彿させる哀メロ具合抜群の "Down On Freestreet"、ただのパンクチューンでは終わってない辺りに個性を感じる疾走チューン "Better Than You"、サザンロック等のアメリカンな香り強い "Carry Me Home"、そして先の名曲 "Rainy Days Revisited"、前作の流れを引き継ぐ哀メロ疾走チューン "It's Good But It Just Ain't Right"、KISSみたいなイントロが異常にカッコイイ "U.Y.F.S."、カントリーウェスタンやソウル等の影響が伺える "On Time"、KISSの "C'mon And Love Me" のHELLACOPTERS版とも呼べるだろう "All I've Got"、HELLACOPTERSの王道タイプといえるだろう "Go Easy Now"、怪しい雰囲気を醸し出す疾走ガレージチューン "The Exorcist"、イントロのギターリフに悶絶しそうになる哀愁ロケンロー "Pride" ‥‥といった本編13曲だけでも捨て曲なしの名曲揃いなのに、そこに加えて日本盤は2曲のボーナストラック(ワイルドな疾走チューン "Big Guns" と初期を彷彿させる爆走チューン "Red Light")もボーナス以上の出来映えなので、これから買うなら迷わず日本盤をお買い求めください。だってEU盤はコピーコントロールCDだしさ。当サイト的には全くオススメ出来ません。

ボーナストラックの2曲が初期の彼等っぽい攻撃的な爆走ナンバーなので、これらが入ることで更にアルバムのバランスが良くなったような気がします(ま、人によっては蛇足と感じるかもしれませんが)。HIVESやDATSUNSのパンキッシュな面が好きな人にも十分アピールすると思うんですけどね。で、そういう面を求めてHELLACOPTERSのアルバムを手にしてみたら、いきなりメロウで哀愁感漂う「男の世界」に魅せられてしまう、という寸法ですよ。だから騙されたと思って買ってみてください。で、気に入ったら‥‥哀メロの世界感が気に入ったなら前作から遡って聴いていけばいいし、もっと攻撃的な面を知りたかったらファーストから順々に追っていくか、昨年春に出た初期のシングルのみに収録されていた曲を集めた編集盤「CREAM OF THE CRAP! Vol.1」を買ってみるか‥‥とにかく、選択の幅が広いバンドなんで、どこかで引っ掛かると思うんですよ。

もうね‥‥「何でもっとブレイクしないかなぁ、ここ日本で」と常々思ってたわけですよ。前作に伴う来日公演の時、もっと盛り上げておけばよかった‥‥とか今更後悔してますが、逆に今みたいな状況の方が多くの人達にアピールするんじゃないでしょうかね? もうね、今まで聴いてこなかった人、恥を知りなさい! 世の中には、まだまだ「すげぇいい音楽やってるのに、全然日本でブレイクできない」ネクストレベルのバンド達は山程いますからね‥‥それを、少しずつでもここで紹介できていけたらいいなぁ、そしてそれに反応してくれる人が少しでも増えてくれればいいなぁ、と願いつつ、来る来日公演(4月頃との噂)に備えて大プッシュしていきたいと思います。



▼THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 01 31 04:23 午前 [2002年の作品, Hellacopters, The] | 固定リンク

2003/01/09

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『太陽をつかんでしまった』(2002)

  まず最初に、自分が不真面目なミッシェルのリスナーだということを断っておきます。「CASANOVA SNAKE」の後あたりまではちゃんと聴いていたのですが、前作「RODEO TANDEM BEAT SPECTER」はシングル曲やラジオ/クラブで数曲聴いたのみで『自分の求める音じゃない』と判断して、未だに買ってないし通して聴いてもいない。ライヴに関しては「CHICKEN ZOMBIES」での千葉ルック公演を最後に5年以上観てないし、観たいとも思わない。そんな人間が書くレビューだということを最初に言っておきますね。

  というわけで、ミッシェルのCDを買うこと自体が2000年暮れのベスト盤とライヴ盤以来なもんで、ホント2年振りなんですよ。で、その2年の間に俺の彼等に対する興味も薄れていって、当初やる予定だった初期のアルバムレビューもそのままお蔵入りにしてしまう程だったんですね。何故そんな急激に彼等に対して興味を失っていったのか、今となってはその理由すら忘れてしまいましたし、もしかしたら理由なんて最初からなかったのかもしれません。

  ただ、これだけは言えます‥‥明らかにミッシェルというバンドは、前作辺りから音の触感が変わってきた、と。「GEAR BLUES」というアルバムである種奇跡的な瞬間をそのままアルバムに詰め込んでしまい、そのままのテンションで突っ走って「CASANOVA SNAKE」というアルバムを作ってしまった。そういう意味でベスト盤とライヴ盤を間に挟んで、一旦バンドとしての区切りを付けた(あるいはそんな意味なんてないのかもしれないけど)。そういえばこの頃、バンド解散なんて噂が頻繁に流れたもんね(で、それを逆手に取ったアルバム告知とかもあったし)。

  で、前作。変わったようで変わってない部分、変わってないようで変わった部分。俺が聴いた数曲から判断しただけで実際にはそうじゃないのかもしれないけど、既にその頃興味が薄らいでいたこともあって、そういう感想しか持てなかったのね。で、現在に到る‥‥前に、ROSSOがあったわ。そう、あれで俺自身の中ではかなり持ち返したのね。全然期待してなかっただけに、いきなり耳に飛び込んできた "シャロン" にノックアウトされて。アルバムもそこまで期待してなかっただけに、満足度もかなり高かったし。

  けどね‥‥それでもミッシェルというバンドには依然と興味を持てなくて。レコード会社移籍したとかツアー始めたとか、そういった話題が耳に入りつつも、新しい音源を聴くまでは何とも言えないなぁ、と思ってたわけ。

  12月に入って、某CS曲で流れた"太陽をつかんでしまった"のPVを観て、すっげー嫌な予感がしたんですわ。曲はジャムセッションの延長みたいな間延びしたヘヴィブルーズといった感じで、どことなくサイケな印象を受けるPV‥‥ベスト盤レビューの最後の方に書いた「正直、彼らが中~後期ルースターズのような実験的音楽に目覚めるとは思えないし」っていう言葉を思い出してしまって、ちょっと鬱な気分になっちゃうし。ああ、やっぱそっちに流れていくのかなぁ、とか勝手に思い込んじゃって。だからカップリング曲に期待してたこのシングルを聴いた時も、全てにおいて全然いいとは思えなかったわけ。掲示板にもそれらしいこと、書いたしね。ミッシェルファンには申し訳なかったけど。

  このシングルには初回限定盤があるのはファンならご存じでしょうけど、俺が買ったのもこの初回盤なんですね。で、一緒に付いてくるライヴDVD("水色の水"(ここでしか聴けない現時点では未発表曲)と"ベガス・ヒップ・グライダー"の2曲)を観て‥‥ちょっと印象が変わったんですよ。"水色の水"も、どっちかっていうと"太陽をつかんでしまった"の流れにある楽曲だと思うんですが‥‥ああ、なるほど、と。何か上手く言葉では言い表せないんだけど、感覚的に納得してしまったのね。この曲のバックでもサイケな映像(と呼んでいいかどうか‥‥)が使われているんだけど、"太陽をつかんでしまった"のPVよりも全然印象が良くて。多分ライヴだってのが良かったんだろうけど‥‥それにしても全然カッコ良さが違う。続く"ベガス・ヒップ・グライダー"も素直にカッコイイと思えたし、そこから本当なら "G.W.D" に続いていくんだけど、イントロだけでフェードアウトして終わってしまうという、正しく寸止め状態。これ、身体に悪いよマジ。

  ライヴDVDの2曲だけで俺の中の印象がガラリと変わったってのも、ファンからすれば何だか胡散臭い話かもしれないけど、DVD観た後に改めてシングル聴くと以前とは聞こえ方が変わってることに気づいて。あれっ、何これっ!?みたいな。

  全然シングルのレビューにならないと思うんだけど、あえて書きます‥‥この曲、絶対にライヴで聴いた方が印象がいいと思うわ。スタジオの中でジャムって作った曲っていうよりも、ライヴで演奏されていく過程で完成していった曲ってイメージが強いのね。だからいきなりスタジオ音源とかPV観てしまって違和感を感じたのかなぁ。あるいは俺の中のミッシェルに対する黒い部分がそう思わせたのか。とにかく、ライヴで聴く"太陽をつかんでしまった"は絶対にシングル音源の数十倍はカッコイイはず。カップリングの"ヴァレンタイン"は、まぁありがちなブギーかなぁ、ちょっと小さくまとまりすぎてないか?といった程度の印象。ま、アルバムには入らないだろうから、特には気にしないけど。そしてDVDと同じライヴ音源と思われるもうひとつのカップリング曲"blue nylon shirts"も良い。良いけど、やっぱり映像付きで聴きたいなぁ。エンディングがフェードアウトしてるけど、あのドラムの入り方からすると、きっとライヴではそのまま"太陽をつかんでしまった"に続いていくんだろうね。ああ、ますます俺の中でこの曲に対する興味が増してるよ。

  人間の感覚なんていい加減なもんで、こういう風にちょっとした切っ掛けで印象が全然変わっちゃう。あれだけ「ミッシェル、マジで終わった方がいいんじゃ‥‥」とか思ってた人間が、たった1曲に振り回されてるし。しかも、あのDVDを観たのが、買ってから1週間以上経った、年明けだっていうね‥‥もうね、アホかと。バカかと。

  けどね‥‥これ1曲で「絶対にアルバムは名盤に違いない!」と盲目的に決めつけたりはしないよ。まだまだ懐疑的な部分は残ってて、果たしてアルバムはどういったテンションの下で作られ、どういった内容になってるのかは全然判らないわけで。既に秋のツアーでは何曲か披露したらしいけど、概ね好評なようですね。あとはそれを俺が気に入るか否かですね‥‥ま、今回のシングルみたいに気に入れば当然取り上げますよ。

  でも‥‥アルバムよりもライヴ! 今年は是非久し振りにミッシェルのライヴが観たいな。そう素直に思わせてくれただけでも、このシングルを買ったことは大きな収穫になったわけで。野外で"太陽をつかんでしまった"を爆音で聴いてみたいですね。フジとかエゾみたいなフェスで、寒空の下で。狭いライヴハウスじゃなくてさ‥‥そういう方向に向かってるのかもしれないね、今の彼等は(って、前のアルバム聴いてない分際で何をほざくか俺)。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『太陽をつかんでしまった』
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投稿: 2003 01 09 12:00 午前 [2002年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2002/12/31

グループ魂『Run魂Run』(2002)

  2001~2年はキワモノ的バンドが表舞台に出る機会が多かったような気がします。「ロマンポルシェ。」であったり氣志團であったり、今回紹介するグループ魂であったり。ある種、お笑い的要素を持ち込んだロックバンド(あるいはテクノユニット)だったりするのですが、俺ら世代だと古くはYMOと合体したスネークマンショーやS.E.T.(スーパーエキセントリックシアター)というのがあるし、もっと古いとドリフターズだって元はベンチャーズ譲りのGSバンドだったわけですし(ま、あそこまでいくとコミックバンドですけどね)。

  で、今回紹介するグループ魂。結構前にNHK「トップランナー」(2002年春に終了済)にグループ魂の「暴動」こと宮藤官九郎が出演した時、伝説の名曲"竹内力"を演奏したことで一部で有名になってしまったような‥‥あ、氣志團も確かあの番組出てから人気が急に出てきたような(で、その後同じく宮藤官九郎脚本のドラマ「木更津キャッツアイ」に氣志團が出たんだっけ)‥‥そんな感じで俺もあの番組をチラッと観て初めて「グループ魂」の存在を知ったわけで。

  活動歴は結構長くて、元々は劇団「大人計画」の阿部サダヲ(=暴動)とクドカンが始めた「デビルデモクラシー」というコミックバンドが原型で、その後村杉蝉之介(=バイト君)が加わり今のグループ魂となったそうで‥‥もうね、「パンク・コント・バンド」なんていわれてるけど、その言葉通りだと思うし、尚かつパンクロックとしても十分楽しめるし(俺的にね)。こういうのが苦手って人が多いのは知ってるんですが、やっぱり普通にロマンポルシェ。とか取り上げてきて、氣志團も普通に推してきた「とみ宮」としては、このグループ魂も十分に魅力的だし、取り上げるに値する存在だと思うんですよ(けど、何もそれを2002年を締め括る大晦日に取り上げなくても‥‥)。

  やっぱり個人的には"竹内力"のインパクトですよね。ジョンスペかと思うような、引きずる重いリズム&リフに「リキ! リキ! 竹内力! ミナミの帝王」ですよ!?(笑)これで心が動かないなんて嘘だ! Vシネ大好きっ子としては、その後に出てくる「哀川翔」「大杉漣」「伊佐山ひろ子」「石橋凌」「白竜」の名前に悶絶ですよ。つうか「伊佐山ひろ子」って!(爆)曲のカッコよさに相反する歌詞。いや~泣くよマジで。「哀しい川を翔ぶと書いて 翔! 翔!」って(笑)

  俺的にはこの1曲で十分なのに、更に他の楽曲も‥‥スターリンだったり映画「爆裂都市」だったり外道だったりARBだったり‥‥個人的にツボな'80年代前半の日本のアングラロック/パンクから影響受けまくりの楽曲(歌詞除く)が次から次へと登場。いや、マジでカッコイイと思いますよ(逆に言えば、この歌詞にこの演奏だから許される、というのもありますが)。

  で、問題は‥‥後半のコント部分に登場する、ナンバガなんですよね。一応ナンバガとしての最後のスタジオ音源が"あの歌の故郷を訪ねて"という、10分にも及ぶコント+歌。ナンバガの4人もコントに参加していて、しかもクドカン作詞・向井作曲のオリジナル曲が4曲も収録されているという‥‥あ、一応念のため書いておきますが、コアなナンバガファン以外は期待してこれを聴いてしまうと、逆に怒ってしまうんじゃないかと‥‥シャレの判る人のみ聴いて下さいね。で、その曲。4曲中3曲("屍ブレイクダンス"、"廃人の森が紅に染まる夜"、"ヴィレッジ・ナイトメア")が向井の弾き語りで、しかも"ヴィレッジ・ナイトメア"に関しては三線による弾き語り。けどね‥‥歌詞が‥‥歌詞が‥‥(笑)ネタバレするんで書きませんが‥‥向井サイコー!(爆)いや、中尾くんもひさ子ちゃんもアヒトも(笑)

  最後の1曲"ソルト・オア・ソース"のみバンドによる爆音演奏。全部数十秒程度の曲なんであれなんですけど、最後にこういうお茶目なナンバガが見られたってだけでも、何か救われますね(‥‥へっ、俺だけ!?)

  ‥‥やっぱり、こういうネタバレすると面白味半減しそうな音源を紹介するのは、ちょっと無理があるかな? とにかくね、これ呼んで興味を持った人なら絶対に気に入ると思うんで、CDショップの視聴機で聴いて店頭で爆笑してくださいね。

  最後に。日高大将。本人達も劇団の公演を休んででも、何してでも出たがってるようなので、是非2003年のフジロックに出演させてあげてください、前夜祭でもいいんで!



▼グループ魂『Run魂Run』
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投稿: 2002 12 31 01:52 午前 [2002年の作品, グループ魂] | 固定リンク

ハナレグミ『音タイム』(2002)

  SUPER BUTTER DOGは苦手だけど、ハナレグミは好きって人が多いようですが、それも納得のいく出来なんですよね、"家族の風景"って曲は。出だしから何書いてるんだ君は?と突っ込まれそうですが、ホントそうだと思うんですよ。やっぱりああいったファンクものが苦手なロックファンって未だに多いと思いますし(あ、「ラ」のレビューで書いてるように俺はあれをドンズバのファンクだと思っておらず、ファンクロックだと認識してますので念のため)、そういった人からすればこの永積タカシ(SBDのボーカル)のソロプロジェクト「ハナレグミ」で奏でられる楽曲というのは、万人の耳に届く音だと思うんですよ(いや、SBDの音がそうではない、という意味ではないですよ)。

  元々、SBDで2001年末に発表された"サヨナラCOLOR"という曲が発端だったと思うんですよ、ハナレグミのコンセプトというのは。あの曲と"家族の風景"は地続きだと思うし。全く別物という気はしないんですよね。むしろ、あそこでやった事の発展型というか、これをSBDでやってしまうと、古くからのファンから敬遠されてしまうんじゃないか、ファンが離れていってしまうんじゃないか‥‥そんな危惧があったはずなんです。で、時同じくしてキーボードの池田が100式(中村一義のバンド)にアルバム/ツアー共に参加するから、その間SBDとしての活動を休んで、それぞれソロとしてやってみてはどうだろう‥‥ってことで、本格的にシングル~アルバム~ツアーという形での活動が可能になった、と。きっとそういうことなんでしょうね?

  実は俺もハナレグミについては数ヶ月前まで何も知らなくて、たまたまラジオで流れた"家族の風景"が切っ掛けだったんですよ。で、たまに有線でも流れていて、声は何となくSBDの永積だと判ったんですが、音楽雑誌とか全然読んでなかったのでそういった活動を始めたなんて知らなくて。そしたら余所のニュースサイトでハナレグミという名前を目にして。で、やっと認識したという。けどね、何故かシングルとか買わなくて。何ででしょうねぇ‥‥すごくいい曲だと思ったんですけど、"家族の風景"。

  俺的に"家族の風景"が2002年の10曲に選ばれる程、心にズシリときたのは‥‥12/8の100式ライヴ@大阪城ホールでのオープニングアクトとして登場した、永積ひとりによる弾き語りでした。ここでは"家族の風景"の他に"音タイム"他1曲の計3曲を弾き語りで演奏したんですが、下手な装飾がなくなった分、ホントに唄の持つパワーがこっちにまで伝わってきて‥‥「普通にいい曲」から「すげぇいい曲」に昇格しちまったんですよね、俺の中で。やっぱり生で聴いちゃうと、ちょっと印象変わりますよね。逆に悪くなる曲もあるけど、ああいった形で曲本来の持ち味を殺す事なく、更に印象をよくするってのはやはりメロディや歌詞本来の良さもあるけど、やっぱり根本にある永積の表現力・歌唱力だと思うんですよ。それが1対数千人という環境の中でも十分に伝わったと。もうね、それだけで感動でしたよ。

  アルバムの方ですが、"家族の風景"で見せたようなアコースティック色が強い作風になってますが、特にああいった曲がメインというわけでもなく、基本的には永積の唄を中心に、ゴスペルチックなソウル、レゲエ、スイング感の強いジャジーな曲、Natalie Wiseが全面的に参加した曲等もあり、いろいろな味を楽しめるようになってます。けど、やっぱりゆったりした落ち着いた雰囲気の曲がメインですね。だから"家族の風景"の空気感が気に入った人ならまず間違いなく気に入ると思いますよ。

  アルバムやライヴでバックを務めるのも、POLARISからオオヤユウスケ(Gt)と坂田学(Dr)、クラムボンからミト(Ba)と原田郁子(Key)というのも、何となくこの音を象徴するようで納得いくメンバーですし、Natalie Wise(高野寛やTokyo No.1 Soul SetのBIKKE)が参加してる点も妙に納得してしまうし。そう、音聴いてホント納得してしまうメンツですよね。

  好きな曲はホント多くて、どれも全部オススメなんですが‥‥やっぱりシングルの2曲("音タイム"と"家族の風景")もそうだし、Natalie Wiseが参加した"ナタリー"も独特な空気の曲でいいし、ラストの"一日の終わりに"も心地よいし、"かこめ かこめ"のハッピーなスイング感もツボだし‥‥そりゃSBDと比べればどうしても物足りなさとか出てくると思うんですよ。けどね、これはこれで落ち着いて聴けるし、十分楽しめるし、ホント捨て曲ないと思うんですよ。SBDが「よし、これから一発かますぞー!」っていう気合い入れで聴くことが多い反面、やっぱりハナレグミは"一日の終わりに"という曲目と同じように、個人的にはベッドタイム・ミュージックになることが多いですね。落ち着きたい時に聴くという。寝起きとか寝る前とかのリラックスしたい時に‥‥休日の、遅く目覚めた朝にボリューム絞って聴きたい音。そういうアルバムですこれは。

  大名盤!とかそういうアルバムではないけど、多分何年経っても、今聴いているこの瞬間と同じ輝きを持った作品だと思いますよ。来年の今頃も、きっと5年後も今と変わらない気持ちで聴けるアルバム‥‥そういうアルバムになってくれるといいなという思いを込めて、皆さんにこの「音タイム」をオススメします。



▼ハナレグミ『音タイム』
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投稿: 2002 12 31 01:44 午前 [2002年の作品, ハナレグミ] | 固定リンク

2002/12/30

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『DCPRG3/GRPCD2』(2002)

  「次世代ダンスミュージック」と絶賛されることの多いDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(通称「デトコペ」)ですが、今回リリースされたのは、そのジャズとも人力テクノとも人力エレクトロニカともいえるようなサウンドを国内の有名DJ/サウンドクリエイターによってリミックス/再構築したディスク1に、初回限定盤にのみ付いてくる2002年4月のライヴを収めたディスク2からなる2枚組作品集。リミックスという「人工的」な音源と、殆ど手を加えていないであろう「生」のライヴ音源という対照的な2枚からなるアルバムですが、これが全く違和感なく楽しめる作品集なんですね。

  とみ宮、あるいはエスロピIIを通して菊地成孔ワークスに興味を持った人、又はデトコペというバンドの出すサウンドに興味がある人なら言うまでもありませんが、この11人による風変わりなバンドが出すサウンドはそれこそジャズとも呼べるし人力テクノとも呼べるしエレクトロニカともソウルミュージックとも、もっと言ってしまえばロックと呼ぶこともできるわけですよ。けど、そうはいいながらも実際にはそのどこにも属さないのがデトコペという集合体の出すサウンドなんですね。そういった点が特徴ともいえるわけですが、そんなデトコペの音をTatsuya Oe(Captain Funk)、bayaka、DJ Quietstorm、大友良英、dj me dj you、永田一直、レイハラカミといった人達がぶっ壊して、それを自分の音として組み立て直すわけですよ。ただでさえ弄り難そうな音をしてるのに、いざ出来上がった音源は元の楽曲にも引けを取らない‥‥完全に別物になってしまっているものもあれば、原曲の空気を残しつつもDJ/サウンドクリエイター自身の特徴もちゃんと取り入れたサウンドになっている。これはやっぱりスゲェなぁとマジで思うわけですよ。

  完全にエレクトロニカと化してしまってるTatsuya Oeによる"CATCH 44.1 OE Reconstraction"みたいなのもあれば、DJ Quietstormによる"Play Mate at Hanoi -Inu ni kirawareta-"なんてソウルミュージック風になってるし、そのDJ Quietstormと同じ原曲なのに完全に別物となってる大友良英(デトコペのギタリスト。2002年12月をもって脱退)による"Play Mate at Hanoi -OLATUNJI MIX-"はもっとガチャガチャしたイメージになってるし。ホント、やる人が変わるとこうも違うもんなのかねぇと溜息混じりに感心してしまいますよね。

  7名のクリエイター中、6名がアルバム「REPORT FROM IRON MOUNTAIN」からの曲を使ってますが、ただひとりレイハラカミのみROVOとのスプリット音源としてリリースされた「PAN-AMERICAN BEEF STAKE ART FEDERATIONS」(1曲32分もある、所謂サウンドコラージュ的楽曲)を再構築(というよりも、完全に自分のモノにしちまってるような)。ここまでくると、ダンスミュージックというよりは、正にアブストラクトなフリージャズ‥‥というか、人によっては「サウンドコラージュによるジャンクミュージック」なんて呼んでしまうかも。それくらいぶっ飛んでます。

  殆どのリミックスが10分を軽く越える長尺さだけど、これが原曲もそうだったように、全然飽きがこない。むしろ、フロアでこれらがかかったら絶対に気持ちいいはず。現場の人間が再構築したものだもん、現場で鳴らされることを前提でリミックスしただろうしね(だからアナログ盤も出たわけだし)。いや、これはデトコペ本来の味とは別のものかもしれないけど、かなり楽しめる1枚だと思います。クラブミュージック/新しモノ好きにはオススメ。

  一方、今年4月のライヴを収めたボーナスディスクの方は‥‥もう圧巻。スタジオ盤を聴いただけでも「ライヴ凄そうだよね?」と想像がついたものの、やはり実際のライヴは想像以上でしたよ。俺は実際にこの7月にフジロックでのステージを観てるわけですが(「アイアンマウンテン定食」と呼ばれる、所謂アルバムのショートバージョン的内容でした)、あの1時間だけでも相当な濃さだったのに、通常のライヴでは軽く3時間とかやってしまうんですからねぇ‥‥ここに収められたライヴ音源は70分少々‥‥実際の3分の1程度でしかないですが、それでもその凄さは十分に伝わってくると思います。けど、やっぱりこのバンドはライヴを観て欲しいな。視覚が伴うと、やっぱり更に呆気にとられること必至。俺が2002年に観た30数本のライヴの中でも最も記憶に残る1本でしたから。

  ちなみにこのライヴディスクは初回限定盤のみに付いてくるもので、現在店頭に並んでいるものがなくなり次第、リミックス集のみの1枚ものとして流通されるとのことですので、値段的にも普通のアルバムと400円くらいしか変わらないので、俺の「デトコペすげぇ!」って言葉がずっと気になってる人でまだファースト聴いてない人は、まずこの初回盤から聴くことをオススメします。あ、逆にこっちから聴いたら「スタジオ盤のファースト、ライヴ盤よりも迫力が‥‥」とかなったりしないかなぁ‥‥いや、スタジオ盤にはスタジオ盤の凄みが、そしてリミックスにはリミックスの良さが、更にはライヴ盤にはライヴという空間でしか生み出せない特殊なものがあるので、それぞれにそれぞれの良さが必ずあるはず。この手のサウンドに興味がある人、ROVO等のバンドに興味がある人、是非聴いてみてください。



▼DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『DCPRG3/GRPCD2』
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投稿: 2002 12 30 12:00 午前 [2002年の作品, DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN, 菊地成孔] | 固定リンク

2002/12/29

松浦亜弥『草原の人』(2002)

  完全に異色作ですね。前のシングルのところで「もう普遍的な曲から脱却して、もっとひねくれた曲を歌って欲しい」と書いた後でリリースされたのが、この"草原の人"という曲。バラードらしいバラードという意味では初の試み、しかもセリフ入り。更に作詞が加藤和枝‥‥美空ひばりが残した詞を使ってつんく♂が作曲したという、話題の1曲。これはそのひばりさんが残した詞を元に作られた同名のミュージカルの主題歌となる曲で、アレンジを前作同様、鈴木Daichi秀行が、ストリングスアレンジを弦一徹が担当(娘。「ここにいるぜぇ!」と同じメンツですね)。俺の思惑とは裏腹に、あややはどんどんスタンダードな方向へ進んで行くのでしょうか‥‥ただ、残された歌詞を元に作曲したためか、これまでのつんく♂楽曲と比べればサラッとした淡泊な印象を受けますね。基本的にはAメロとBメロのみの構成で、これってバラードだからよかったものの‥‥うまいことセリフで誤魔化してる感もありますし。いや、決して悪い曲じゃないですよ、ただ、あややにしては平凡な曲だなぁと。まぁこれはあくまでもミュージカル用の曲ってことで割り切って聴けばいいんでしょうけど、世間はそう思うはずもなく、あくまで「あややの新曲」として受け入れてるわけで。評価が難しい1曲ですよね。

  カップリング曲はジャジーな空気感を持った"YOKOHAMA SING A SONG"。お馴染み高橋諭一がアレンジ。スイングジャズ的アレンジで、確かにこういう曲はいままであやや、歌ってないだけに新鮮ですね。「普遍的な曲から脱却して」と書きましたが、こういう一般的でない曲(=アイドルポップから外れたメロ/アレンジを持った曲)なら俺、大歓迎なんですよ。これまでもハロプロ関係ではジャズ的要素を持ったアレンジ曲って何曲かあるんですが、俺、それら全部好きなんですよね。昨年辺りからEGO-WRAPPIN'等が人気を得てますが、その辺を狙ったアレンジなのか、それともこれもミュージカル用の楽曲なのか‥‥確かにミュージカル用と考えると、そう聞こえなくもないですが‥‥うん、こういうあややもいいですね。

  やっぱり今後のあややに望むのは、「アイドル界のE.YAZAWA」として、もっと幅広い音楽に挑戦して欲しいんですよね。それこそ‥‥ハロプロがまだ手をつけてない「ビジュアル系」や「ハードコア/スラッシュ」、あるいは「ヘヴィメタル」等といったジャンル。そういうアレンジを持ったポップソング(そう、あくまでポップソングね)を作れるだけの技量が今のつんく♂にあるのかは甚だ疑問ですが、やっぱりもっと爆裂したあややを見たいですね。

‥‥なんて思ってるのは俺だけでしょうね、きっと。



▼松浦亜弥『草原の人』
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投稿: 2002 12 29 06:55 午後 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 松浦亜弥] | 固定リンク

松浦亜弥『The 美学』(2002)

  あややの衣装からヘソ出しが消えたことでお馴染み、"The 美学"です。アレンジにはあややでは初登場の鈴木Daichi秀行。トランペットといった生ブラスも登場しますが、基本的にはDaichi氏による打ち込みが主体のアレンジ。曲調から郷ひろみの「GOLD FINGER '99」の悪ノリ・オマージュと取られがちですが、俺は最初に聴いた時、そっちよりも米米クラブの「SHAKE HIP!」を思い浮かべたのですが‥‥ま、早い話がマイナー調のラテンポップということですね。今更ヒロミ・ゴーを‥‥なんてみんな思ったでしょうけど、俺はそういうわけで「おお、今ここで米米ですか!? ナイアガラの次は米米かぁ‥‥'80年代のJ-POPをなぞってるのかね」なんて思ってひとり納得してたわけですよ。

  で、この曲。俺は人が言う程悪いとは思ってないんですよ。ま、楽曲全体のクオリティを考えれば、そりゃこれまでのシングル曲よりは劣ると思うんですが、これって結局秋ツアーのオープニング用に作られた、勢いのいいアップテンポの曲ってだけなんじゃないですかね? いや、実際ライヴでは1曲目でしたが、ライヴ観る前から「これって絶対にライヴ向けに作られた曲だよな」って思ってたもん。春ツアー以降、新曲は"Yeah!めっちゃホリディ"からの2曲しかないわけで、それこそやり尽くした感がある中での40数本ですよ。オープニングまで前回と同じだったら‥‥ねぇ? こういうロック調(いや、ロック調ではないな)のアッパーチューンがどうしても必要ってことで、考えに考えた末出来た1曲のような気が‥‥いや、そこまで考えてないかもね、きっと。とにかく、ライヴで聴くと更にカッコよさが増す1曲ですね。考えてみると、今年に入ってリリースされたシングル曲、ここまでの3枚って結局ライヴをある程度想定して作られてるような気がしますね。その辺が去年リリースされた「完璧なポップソング」との大きな違いなのではないでしょうか?(つまり、制作過程の段階でのコンセプトが違っている、と。だからってクオリティー下げてもいいとは言いませんが)

  一方、カップリング"I know"は初期の娘。関係でお馴染みの河野伸がアレンジ。彼らしい煌びやかなポップチューンに仕上がっていて、過去彼が手掛けてきた楽曲‥‥「真夏の光線」や「夏の夜はデインジャー!」といった、夏に聴きたくなるようなブラス主体の1曲。ファンの間でもかなり評価の高い曲みたいですね。うん、確かにここ数枚のカップリング曲の中ではかなりクオリティの高い曲。ライヴでも中盤の山場となるパートで歌われる1曲。ただ‥‥周りの声とは裏腹に、俺的には「今更あややがこういう曲をやらなくても‥‥他のユニット‥‥メロンとかミキティとかにあげてもよかったのに」なんて思いもあるんですよね。こういうオーソドックスなポップチューンから一歩踏み込んだ、もっとひねくれた曲を彼女には歌って欲しいな、と勝手に思ってるんですよ。だから俺の中でのこの曲の総合評価って周り程高くはないんですね。ファーストアルバムや「FOLK SONGS 2」でそういう普遍的なポップスを歌ってきた彼女、そこに留まることなくもっと先に進んで欲しいなという気持ちが強いんですね。俺的にここ数枚のシングル曲を楽しめたというのは、そういう気持ちもあるからなんでしょうね。ま、だからといって何時までもキワモノ的アイドルポップを歌い続けて欲しいとは思いませんが‥‥

  何だかんだいいながらも、俺はこのシングルの2曲も今年後半、通してよく聴きましたよ。



▼松浦亜弥『The 美学』
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投稿: 2002 12 29 06:53 午後 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 松浦亜弥] | 固定リンク

松浦亜弥『Yeah!めっちゃホリディ』(2002)

  前作から3ヶ月強でリリースされた6枚目のシングル。タイトル曲"Yeah!めっちゃホリディ"は前作同様、高橋諭一アレンジで、ストリングスアレンジのみ村山達哉が担当(アルバムにも参加していた人ですね)。前作の延長線上にあるといえる、キワモノ的アイドルポップの極みがこれでしょう。音楽的にも非常に興味深いアレンジをしていて、まず聴いて多くの人が思い浮かべるのが、ナイアガラ・サウンドでしょう。小林旭を彷彿させるAメロでの歌いっぷりや、「すんげぇ」といった表現&歌い方、サビでのアレンジ等、 大滝詠一の楽曲的な表現がふんだんに使われています。これは高橋諭一というよりもつんく♂なりのリスペクトなのでしょうか? 個人的にはこの曲があややのシングル関係では一番好きですね。

  当然、単なる 大滝詠一リスペクトには終わっておらず、Bメロ~サビという如何にもなアイドルポップ感、つんく♂らしさ炸裂の「i@yume../(アイ・ユメ・ドット・ドット・スラッシュ)」等のフレーズにも冴えを感じさせます。初春以降の「つんく♂低調気味」といった空気からこの曲も同じような色眼鏡で見てしまいがちですが、間違いなくこれは過去のあややソングスと比べても聴き劣りすることのない楽曲だと思います。

  カップリング曲はReiji Matsumotoによる"つまんないよ…"。前のシングルc/w曲"遠距離の恋愛"に似たタイプの曲ですが、あっちがアコースティック基調なのに対し、こっちは打ち込み主体になっている違いがあります。R&B的アレンジですが、その後連発される「つんく♂流R&B」と比べれば全然それっぽくなく、もっと聴き応えのある「唄主体」アレンジになっています。ま、悪い曲じゃないけど、過去の楽曲と比べるとどうしても‥‥という気が。ボコーダー使ったりそれなりにいろいろ挑戦はしてるんですが、やっぱりあややの歌に頼りすぎな気も‥‥"Yeah!めっちゃホリディ"のインパクト&クオリティが高かっただけに、ちょっと‥‥ねっ?

  ちなみに"Yeah!めっちゃホリディ"、PVのクオリティも最高でした。今年作られたハロプロ関係のPVの中では3本指に入る出来だと思います。



▼松浦亜弥『Yeah!めっちゃホリディ』
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投稿: 2002 12 29 06:52 午後 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 松浦亜弥] | 固定リンク

松浦亜弥『♡桃色片想い♡』(2002)

  あやや初のCMタイアップ曲となった"♡桃色片想い♡"は、お馴染み高橋諭一アレンジ曲。出だしの「あっ行くよ!あっ1、2、3ぃ!」や「ピーチッ!」といった掛け声がアクセントとなった、小気味いいロックンロール風ポップス。CMソングってことで、明らかにサビから作られたであろうこの曲、サビのインパクトは絶大だけど、それ以外のパートのメロディが過去の楽曲‥‥特にシングルナンバーと比べるとちょっとクオリティが落ちるかも。逆にいえば、これまでのシングル曲のクオリティが異常に高かったとも言えるんだけど‥‥この頃から「つんく♂楽曲全体のクオリティが下がった」とよく言われるようになったので、あややもその弊害を受けたのかも‥‥とはいいながらも俺、この曲大好きですよ。ライヴで聴いた人なら判ると思いますが、この曲はライヴでは完全なキラーチューンとなったわけですし、実際俺はいろんな場所でこの曲を聴いてきましたが、ハズレは一度もなかったですしね。高橋諭一ってことで、どことなく森高千里の楽曲を彷彿させるローファイチックなロックンロールと、そこに被さるストリングス系のシンセが気持ちいいですし。何となく森高の「ロックンオムレツ」を思い出しますよね。

  そしてカップリングは正反対なタイプの"遠距離の恋愛"。アレンジは松尾和博が担当。"♡桃色片想い♡"で完全なアイドルを演じたあややが、こちらではしっとりとした曲調に合わせた歌い方で「シンガー・松浦亜弥」をちゃんと提示してくれています。アコースティックギターをメインとしたAOR調の曲調なんですが、アルバムの延長線上として作られた曲なんでしょうね。ただ、アルバムに入れるまでの曲でもなかった感じで、こうやってシングルのカップリングに落ち着いたんでしょうけど。あややはシングル曲はカップリング曲も含めて、これまで相当クオリティの高い楽曲を発表してきたわけですが、やはりこの曲はそれまでと比べるとちょっと劣るかなぁ‥‥という気がしますね。勿論、決して捨て曲というわけでもないんですが、やっぱり「B面曲」という匂いが強いですね。

  ただ、そうはいってもこれら2曲を通して「松浦亜弥」の持つポテンシャルの高さを再確認できるという意味では、非常に意味のあるシングルだと思います。実際、このシングルがこれまでリリースされた8枚の中で最も売れたわけですし。CM効果が強かっただけでなく、それだけ一度聴いたら耳に残るメロディと声を持った1曲だったと思いますし。女の子とカラオケに行くと、必ずこの曲を歌う子がひとりはいたってのも、それを象徴してると思いますよ。ヲタだけのアイドルから、世間一般的に知られるアイドルへと成長する為の第一歩といったところでしょうか?



▼松浦亜弥『♡桃色片想い♡』
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投稿: 2002 12 29 06:50 午後 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 松浦亜弥] | 固定リンク

2002/12/26

PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(2002)

PRIMAL SCREAMの通算7作目のアルバム(ダブ・リミックス集「ECHO DECK」は除く)。プライマルはデビュー時と現在とでは比べものにならないくらい別物のバンドになってしまったわけですが、それでも一環している点がひとつだけあるんですね。それは中心人物であるシンガーのボビー・ギレスピーのパンク振り。プライマル以前のJESUS & MARY CHAIN時代(当時はドラマー)から彼のキャリアはスタートしてるわけですが、そこでも終始一貫してパンクしてるわけです。この「EVIL HEAT」のブックレット裏表紙に、革ジャンの背中に「REBEL 25」と書かれた写真があるんですが、ボビー曰く「俺はパンクロッカー歴25年」というところからきてるそうで‥‥もうね、この頭の悪さが最高なわけですよ。

そんなプライマルの新作は、前作「XTRMNTR」を更に強力に、凶悪にした印象を与える楽曲によって構成されています。前作も十分にパンキッシュで攻撃的な作品集でしたが、新作を聴いてしまうともうなんていうか‥‥あれだけ良いと思ってた前作ですらヤワに聞こえてしまうんですから‥‥

まずね、プロデューサー陣からして狂ってるわけよ。前作にも参加していたジャグズ・クーナー("Miss Lucifer")の他に、MY BLOODY VALENTINEのメンバーで現在はプライマルズのサブメンバーでもあるケヴィン・シールズが6曲("Deep Hit Of Morning Sun"、"Detroit"、"Rise"、"The Lord Is My Shotgun"、"City"、"Skull X")、かのアンディ・ウェザオールによるTWO LONE SWORDSMENが5曲("Autobahn 66"、"Some Velvet Morning"、"A Scanner Darkly"、"Space Blues #2"、"Substance D")それぞれプロデュースを手掛けているわけです。また、シングルオンリーですがATARI TEENAGE RIOTのアレック・エンパイアが"Miss Lucifer"のリミックスを手掛けていたりもします(これがまんまアレックといった感じで笑えるのですが)。

そういったバラバラな製作陣が携わったアルバム、やはり音楽的にも結構多岐に渡っています。バンド演奏によるシンプルなパンクソング"City"や"Skull X"もあれば、完全にエレクトロニカしている"Deep Hit Of Morning Sun"や"Space Blues #2"もあるし、KRAFTWERK的なジャーマン・テクノっぽい"Autobahn 66"や"A Scanner Darkly"もあるし、前作に収録された"Swastika Eyes"の発展型的エレクトロ・パンクチューン"Miss Lucifer"、"Detroit"もあるし、初の試みであろうエレクトロ・ブルーズ"The Lord Is My Shotgun"もある。正しく「ELECTRONIC GARAGE BAND FUTURE ROCK'N'ROLL」という表現がピッタリな音だよね。アルバムとして音楽的な一貫性はあまり感じられないのかもしれないけど、俺にはこれが一本筋の通った音楽に聞こえるんだよね。それが先の「パンク」って言葉だったり、「REBEL MUSIC」という表現だったりするんだけど。

ジョー・ストラマーという人はCLASHを通してロックンロールに拘らず、スカやレゲエ、ダブ等多岐に渡る音楽を「REBEL MUSIC」として表現してきたわけだけど、正しくプライマルというバンドはこのCLASHの後継者的存在なわけですよ。'87年という時代にサイケ色の強いファーストアルバムでデビューし、'89年に時代錯誤なガレージロックを、'91年にはロックバンドとしてはいち早くレイヴ・カルチャーに接近し、かと思えば'94年には祖先帰り的なアメリカン・ルーツミュージックに接近し、トム・ダウドやジョージ・クリントンまで引っ張り出してしまう。'97年にはレゲエやダブ等に影響を受けたエレクトロミュージックを我々に提示し、'00年には更にそれらの音楽を拡大/拡散したような作品を生み出す‥‥アルバム毎に音楽的変化を繰り返しながらも、常にボビーの頭の中には「パンク」というキーワードがあったはずなんです。それは社会に対する怒りであり、ロックシーンに対する挑戦状であったり、我々ファンに対する啖呵であったり。人によっては「こうコロコロとやってること変えるなんて信用ならない」と思うでしょうけど、俺は逆に「だからこそ信用できるんだよ、この男は」って感心しちゃうんだわ。

音楽的にはもう、何も言うことはないよ。聴いて肌で感じで欲しい、そんな狂った音が満載。是非大音量で聴いて欲しいですね。そして出来れば日本盤の英詞を読みながらもう一度聴いてみてください(ボビーの意向によって対訳は載せていないそうです。が‥‥当初は全曲対訳が付くはずで、実際それに当たった人が全訳したそうですが、内容があまりに過激で酷かったそうで、日本のレコード会社側が掲載を中止した、という裏話も耳にしてます)

これがロックンロールの未来だとは言わないけど、間違いなくこれもロックンロールやパンクロックのひとつの形だと思います。人によってはこれを「エレクトロ・ロック」と呼ぶかもしれないし、あるいは「テクノ」もしくは「エレクトロニカ」と呼ぶかもしれない。もっと酷い人になると「クズ」と言い切ってしまうかも‥‥それでいいと思います。そういう風に一筋縄でいかない、ホントにイカレたアルバムだと思うので。個人的には2002年の10枚に入る作品ですね。



▼PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』
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投稿: 2002 12 26 03:37 午後 [2002年の作品, Primal Scream] | 固定リンク

2002/12/25

藤本美貴『ボーイフレンド』(2002)

  前作から2ヶ月足らずでリリースされることとなった4枚目のシングル。これまでのアッパーなメジャーポップチューンとは一転して、マイナー調の切ない印象のナンバー。あややでいうところの"100回のKISS"では?なんて声もありましたが、俺は全然そう思ってないんですよ。むしろ、ミキティにとってのそういう曲はまだ先になりそうな気がしますね。もう1~2曲いろんなタイプの曲を歌わせてみたいですね、マジで。

  この"ボーイフレンド"は俺、ミキティの声を想定して作られた曲だな、と思うんですよ。これをあややとかごっちんが歌ってるところ、俺は想像できませんね。ミキティだからこそ歌える、彼女の為に作られた1曲。最近、テレビで彼女がこの曲を歌っているところに遭遇する度、その思いは更に強くなっています。アレンジの鈴木Daichi秀行もデビュー曲での印象を一変するくらいのいい仕事振りですしね。

  一方、カップリング曲にはTATOOアレンジによるバラードナンバー"幼なじみ"は、つんく♂による「アー、イェー」がかなりウザいですが、曲とボーカルパフォーマンス自体はかなり良いと思います。セカンドシングルでもバラード調の曲をやっていましたが、同じような歌唱法ながらも、若干今回の方が肩の力の抜き加減を覚えてきた印象を受けます。いろいろな場で歌う経験を積んだ結果、あるいはレコーディングを数こなしてきた結果でしょうか。ホント、曲も唄もかなりイイだけに、つんく♂の声が邪魔で邪魔で‥‥わざとやってるんですかね、やっぱ?(だったら殺意を抱くね、つんく♂Pに対して)

  デビュー曲と聴き比べると、人間ってたった1年足らずでこんなにも成長するもんなんだな?と改めて実感。ルックスや表情的にもどんどんアイドルらしさに磨きがかかってきたし、「ごまっとう」を通過したことで今後、更に大化けする可能性を秘めてます。実際、ここ最近になって「ミキティかわいいよね?」という声を実世界でよく耳にしますし(多いんですよ、俺の周りでも)。

  来年2月にスタートする初のソロツアー、そして同月下旬にリリース予定のファーストアルバム「MIKI①」。そのちょっと前には5枚目のシングルも出るんだっけ?(確か「ブギートレイン'03」ってタイトルだっけ??)‥‥更に凄い快進撃が始まりそうですね。



▼藤本美貴『ボーイフレンド』
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投稿: 2002 12 25 12:22 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 藤本美貴] | 固定リンク

藤本美貴『ロマンティック 浮かれモード』(2002)

  またまた3ヶ月に満たないペースでリリースされたサードシングル。ここで一気にブレイクします。やっぱりここは楽曲の良さでしょう。まず"ロマンティック 浮かれモード"というタイトルでドカンとくるわけですよ。

  如何にもつんく♂なタイトル。で、曲も完全な王道アイドルポップ。衣装のイメージからピンクレディーを思い浮かべる人が多いようですが、俺はそれよりも楽曲のイメージや衣装の雰囲気、そしてミキティの表情やスタイルから、全盛期の森高千里を思い浮かべたのですが‥‥どうでしょうか? もう、なるべくしてなったという感じ。ここで俺の中でも一気に大ブレイクするわけですよ、ミキティが。あの中途半端な「ヘ~イ!」とか、もう最高なわけですわ‥‥あ、いや、楽曲の評価になってませんなこれ。えっと‥‥アレンジは上杉洋史。ここでちょっと変化球を投入された感じで、聴き手のこちらとしてもドキリとさせられました。

  更に変化球なカップリング曲"ケーキ止めました"は、かの花田裕之によるアレンジ。そう、伝説のルースターズのギタリスト/ボーカリスト、現在はROCK'N'ROLL GYPSIESとして活躍しているあの花田氏です。しかも楽曲の演奏を同じく元ルースターズ、現ROCK'N'ROLL GYPSIESの下山淳や、元AJICO、現在は花田のソロツアーのドラマーでもある椎野恭一が担当。実際、楽曲のスタイルもアーシーな感じのマイナーロックで、所々つんく♂っぽい変なエフェクトが入ったりしますが(ギターにまでエフェクトかけまくりなのにはちょっと萎えますが)、こういう無骨なロックナンバーはミキティの太めの声には合ってますね。

  あややはパンク、ミキティはアーシーなロックンロール。俺の中ではこういう方程式があったりします。つまり、あややはカリスマ的な存在になりうる可能性を秘めているわけですが、ミキティっていう子はもう庶民的に、ひたすら判りやすいスタイルで我々に近いスタンスを取って活動を続ける‥‥みたいな。この1曲でそんな妄想をしてしまう程、このシングルでの2曲の対比は面白いですね。これまで出来が素晴らしいシングルです。



▼藤本美貴『ロマンティック 浮かれモード』
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投稿: 2002 12 25 12:19 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 藤本美貴] | 固定リンク

藤本美貴『そっと口づけて ギュッと抱きしめて』(2002)

  あややと同じよなペースで3ヶ月後には早くもセカンドシングルをリリースするミキティ。ちょっとこの辺りからルックス的にもあか抜け始めます。で、俺の中でもちょっとずつ好印象に。あ、最初に断っておきますが俺、最初はミキティ、苦手だったのね。正月ハロコンのライヴレポ~娘。春コンレポを読んでもらうと判ると思うんだけど、イマイチ馴染めなくて。それがこの"そっと口づけて ギュッと抱きしめて"で急に馴染み始めるわけですよ。

  この曲はまずPVで最初に目に耳にしたんで、あのメインのサビ箇所でのミキティの視線にドキッとしつつ、曲のキャッチーさにやられたんですわ。如何にも渡部チェルらしいアレンジで、中間部ではお約束の如く「カノン」コードが登場したりします。つんく♂が得意とする二段サビ構成が上手く機能してる、とてもポップな1曲。Bメロとなる1段目のサビでのアイドルポップらしいサビと、一転してちょっとシリアスムード漂う大サビとの対比が絶妙。俺、今のところこの曲がミキティの楽曲の中では一番好き。ライヴでのショートバージョンよりも、フルサイズでの完璧に計算された構成の方が全然いいです。

  一方、高橋諭一アレンジによるカップリング"恋よ!美しく"も、煌びやかなサウンドを用いたシンプルなバラードナンバー。ただ、まだまだ一本調子な印象のミキティの歌唱法によって、完全にはこの曲に彼女の声がマッチしてない気がしないでもない、かな? もっと切ない感じで、肩の力を抜いて歌ってもいいかなぁ‥‥という気も。ま、その辺は今後経験を積むことでドンドン良くなっていくでしょう。楽曲としてもシンプルな小楽曲といった感じで、特に悪いとも感じないのですが‥‥ま、如何にもB面曲という印象は拭えませんが。やっぱりこのシングルはタイトル曲の完成度に尽きると思います。



▼藤本美貴『そっと口づけて ギュッと抱きしめて』
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投稿: 2002 12 25 12:17 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 藤本美貴] | 固定リンク

藤本美貴『会えない長い日曜日』(2002)

  藤本美貴はご存じかもしれませんが、モーニング娘。の4期メンバーオーディションでの落選組だったわけですよ。つまり、彼女は石川、吉澤、加護、辻の4人に負けたわけです。で2000年春に負けながらも、そのまま放っておくには勿体ないと判断した事務所が秘密裏にアイドルとして育成、2001年秋にスタートした「新・美少女日記」からレギュラーとしてテレビ出演開始。翌2002年1月のハロコンより我々の前に登場、という形で前年に同様のパターンでメディアに露出し始めた松浦亜弥と同じ道筋を辿り始めたのでした。

  本作はそんな彼女の、今年3月にリリースされたデビューシングル。当初はカップリング曲の"Let's Do 大発見!"が2002年1月から「新・美少女日記」のオープニングテーマ曲として使用、また正月ハロコンでもラストの横アリ以外で歌われていたため、こっちがA面曲だと思っていたのだけど(実際にメディアにもそうアナウンスされていたはずなんだけど‥‥)、発売前になって急遽この"会えない長い日曜日"に変更。その辺の事情はよく判らないけど、まぁどっちがデビュー曲としてよりキャッチーか?ということで差し替えたんでしょうね。

  で、そのA面曲となった"会えない長い日曜日"は、悪名高き鈴木Daichi秀行アレンジ曲。いや、悪くないですよ。悪くないけど‥‥可もなく不可もなくといった平均点的な出来とも言えるかな。打ち込み主体の、春っぽい感じのポップチューン。逆にカップリングに回された"Let's Do 大発見!"は生バンド演奏による、アッパーでファンキーなナンバー。アレンジが鈴木俊介というのも納得の出来。こちらの方がよりつんく♂的と言えなくもないかな。個人的な趣味でいえば、俺はこっちの方が好きなんだけど。

  けどね、今改めてこの2曲を聴き比べてみると‥‥やっぱり"会えない長い日曜日"の方がよりA面的かもと感じるわけです。テレビで使用されたテイクと若干違う"Let's Do 大発見!"は歌い慣れた感じがあるけど、ちょっと硬さが残る歌唱の"会えない長い日曜日"の方が初々しいかな。ま、あややのデビュー時を考えるとこういうタイプの楽曲が春デビューには向いてるのかもね。一聴してカッコイイのはカップリングの方で、耳に馴染みやすいのはA面曲の方という風に今は感じています。



▼藤本美貴『会えない長い日曜日』
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投稿: 2002 12 25 12:14 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 藤本美貴] | 固定リンク

2002/12/20

BUMP OF CHICKEN『jupiter』(2002)

  しっかしBUMP OF CHICKEN(以下バンプと略)は何時からこんなに「ネタ」にされるようになっちゃったのかねぇ‥‥やれ「厨房の聴くもの」だの「引き籠もり云々」だの‥‥ま、その殆どが某巨大掲示板での書き込みから発したものなんだけど、その他にも某有名ロック雑誌での持ち上げ方といい‥‥"天体観測"の大ヒットによってミーハー的ファンの急増、カリスマ視するメディア、それを横目に失笑する「自称」ロックファン、そして苦悩するバンド‥‥いや、ホントに苦悩してんのかどうかは知らないけど。何か俺から見ると、今のバンプの置かれてる状況ってのがこういう風に見えるんだよね‥‥しかも、今年の夏に放送されたドラマ「天体観測」での、必要以上にバンプの曲を使いまくる構成に、好意的に見てたこっちまで反吐が出そうになって、当分の間バンプは聴かなくてもいいやって思えるようになってきて‥‥去年の暮れ、ミスチルも同じような使われ方をしたけど、今回のはあれよりたちが悪いと思ったよ。

  そんな感じで、正直購入後暫くしてからいつの間にかこのアルバムをプレイヤーで再生することがなくなってたんですが、つい先日、たまたまDJやる時にこのアルバムから何かかけようとして、久し振りに通して聴いたんですよ‥‥で、偏見なしにやっぱりいい曲の詰まったアルバムだなぁ、と再確認しまして。

  間違いなく、アルバムトップの"Stage of the ground"は2002年前半を代表する曲のうちのひとつだと思うんですよ。あのバンプがこんなにもスケールがデカイ、深みのある曲を作るようになるとは‥‥正直に言ってしまえば、やってること自体は「THE LIVING DEAD」までの頃の方が好みなんですよ、個人的には。ただ、やっぱりメジャー移籍後の必殺シングル攻勢‥‥特に"天体観測"と"ハルジオン"の2連発は有無を言わせない勢いがあったと思うんですよ。それまでのバンプとは違う「硬さ」や「熱さ」とでもいいましょうか‥‥そういうのにどうしても馴染めなかったんですね、先入観があったもんで。けど、アルバムがスタートした途端‥‥"Stage of the ground"なんですが、もうこれは有無を言わせないとか、そういったレベルじゃないんですよ。これを否定するってことは、これまで自分が好き好んで聴いてきたロックを否定することじゃないか?って素直に思えて。自分が愛してきたロックのエッセンスがそこらじゅうに散りばめられていて‥‥確かにこれ、名曲なんですよね。で、その名曲に続くのが、これまた名曲中の名曲である"天体観測"なわけで‥‥あのドラマのお陰で、どうしても変な色眼鏡で見られがちだけど、やっぱり名曲なのには違いない。「とみぃの宮殿」内のアンケート企画「BEST OF 2001」での「SONG OF 2001」でも1位を記録した程ですから。

  頭2曲でノックアウト寸前の聴き手を優しく包む、繊細な"Title of mine"。繊細だけど、実は芯は太いという。どの楽曲にもいえるけど、それがこのアルバムでのバンプ。続く"キャッチボール"も同じような空気感と香りを持った曲。そして再びキラーチューン"ハルジオン"へ‥‥シングルリリース時、俺はこの曲、イマイチ馴染めなかったんだよね。けど、こうやってアルバムの中の1曲として、このポジションで聴くと、不思議とすんなり聴けちゃうんだよね。で、いい曲だなぁと思えるんだから‥‥

  後半は比較的落ち着いた雰囲気を持っていて、実は"Stage of the ground"以上に好きかもしれない"ベンチとコーヒー"や"メロディーフラッグ"といったメロウなミディアムチューンが続き、更にスローな"ベル"で完全にゆったりした空気に包まれます。そしてエンディングにメジャーデビュー曲"ダイヤモンド"~最も前作のノリに近いかも?の"ダンデライオン"の2曲を持ってきて終わる‥‥んですが、お約束のシークレットトラックもあります(実は"ダンデライオン"以降シークレットトラックまでの流れが一番従来のバンプらしかったりして。シークレットトラックについては、CDトレイをパカッと外してみてください。ってみんなお気づきかと思いますが‥‥)。

  ロックバンドってのは、ヒットチャートの上位に入ったりセールス的に大成功すると「女子供が聴いて喜ぶようなバンドに成り下がった」と貶されることが多かったりします。で、その成功したバンドがまだハタチ前後の若い奴らだったとすると、更に叩かれたりして‥‥ま、その辺は日本だろうが海外だろうが一緒ですけど。そんな偏見や、音とは全く関係のない外的要素でこのアルバムを見過ごしてしまうのは正直勿体ないと思うんですよ。決して「後年に残る名盤」というわけではないですが、いい曲が沢山詰まったいいアルバムなのには間違いないですし。まだアルバム2~3枚しか出してないバンドですよ? しかも、滅茶苦茶創作活動がスローペースな。それでいて、非常に世渡りが下手な20代前半の青年4人ですよ(ホントに世渡り上手だったら、"ハルジオン"リリースしたすぐ後にアルバム出してるはずですしね。見事に絶好のタイミングを逃してのリリースだったため、期待された程の大ヒットにはならなかったし。ま、その辺のマイペース振りがこのバンドのいいところでもあり、悪いところでもあるんですが)。ホント、まだまだこれからの存在ですよ。

  MR.BIGやBON JOVIで音楽に目覚めた佐倉の中高生4人が初めてバンドを組み、気づけば出す曲出す曲がチャートのトップ10入りするバンドにまで成長。その現実をどこまで理解してるのかは謎ですが、先日このアルバム後初の新曲(10ヶ月振り!)"スノースマイル"がリリースされましたが、これもアルバム収録曲にも勝る名曲だったりします。このバンドには是非このまま、そういった現実をスルリとかわしつつ、マイペースで活動を続けて欲しいものです。



▼BUMP OF CHICKEN『jupiter』
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投稿: 2002 12 20 02:58 午前 [2002年の作品, BUMP OF CHICKEN] | 固定リンク

SUPER BUTTER DOG『ラ』(2002)

  SUPER BUTTER DOGというバンドの音と初めて接したのは、多分2000年末辺りだったと思います。当時うちのサイトによく来てくれた方がオススメのアーティストの曲を編集したMDをくれたんですが、その中にSBDの"コミュニケーション・ブレイクダンス"だったか"FUNKYウーロン茶"が入ってたはずなんですよ。だから俺はこの2曲だけはずっと知ってたんですね。で、当時は結構気に入ってたんですよ。でも、アルバムを買って聴いてみようとか、それこそライヴに行ってみようとまでは思わないで。で、そのまま半年以上経ってフジロック。2001年の初日レッドマーキーに出演したんですよね。で、これも何故か無視(くるりだったかEGO-WRAPPIN'を観てたはず)。翌週に行われたROCK IN JAPAN FES.にも出演してたのに、これは確か俺が行かなかった日に出演したんで観れず。そんな感じで自分の中でSBDの存在がどんどん希薄な存在になっていこうとした頃‥‥

  2002年に入り、俺は完全にモーニング娘。のファン(=モーヲタ)になってしまいまして。ルックス云々も勿論あるんですが、それ以上に彼女達の楽曲に惹かれまして。ダンス☆マンがアレンジするファンクサウンドに唸ってしまうわけですよ。そんな頃、たまたまSBDと再会してしまうわけです。しかもよりによって"サヨナラCOLOR"ですよ‥‥もうね、これはヤバイと。ま、今回は2002年リリースの作品をどんどん取り上げるという企画なので、残念ながら2001年末ってことでアルバム「grooblue」は対象外に‥‥その代わり、このライヴベストというべき作品「ラ」を今回取り上げることにしたわけです。タイミング的にもボーカルの永積タカシがソロユニット「ハナレグミ」としてアルバムをリリースした後なので、丁度いいかなぁと思いまして。

  このふざけたタイトル、ふざけたジャケット。ちなみにこのブックレットの裏面は「イ」の文字が、そしてトレーや裏ジャケには「ブ」の文字‥‥ま、「ライブ」ってことですよね。帯にも「ラフでラウドでラムーでラメでラブでラップでラケンローなライブベストアルバム」との表記があるんですが‥‥多少こじつけな表現もありますが、ほぼその通りだと思いますよ。まずね、収録されてる楽曲が過去5作のアルバムから満遍なく入っていて、ホントにベスト盤。そしてそれらがライヴでのベストテイクで収録されてるわけです(ひとつのライヴからの実況中継盤ではなく、1999~2001年のライヴからのベストテイクだそう)。ライヴならではのアレンジや煽りもあり、またトラブルもそのまま収録してるようですし。やっぱり目玉は"五十音"でのキーボード池田によるコーラスだったり、超名曲"サヨナラCOLOR"だったり(この曲があったから、その後ハナレグミが生まれたようなものだし)、エンディング間際の"マッケンLO"~"セ・ツ・ナ"、そしてオーラス"FUNKYウーロン茶"でしょうね。ライヴならではのどんどん延びていくエンディングだったり、コールアンドレスポンスだったり、メンバー間の笑い声だったり。そういう細かいポイントやニュアンスまでそのまま収録してる、そういうアルバムだったりします。そういう意味では、ここ数年の彼等のベストを集めたものなんだけど、それ以上に「今のSBD」を端的に表現してるような気がします。

  彼等の演奏や永積の唄を聴いてて思うのは、ファンクというよりは完全にロックだよな、ってことでしょうか。ファンクロックといえばいいのか‥‥いや、確かにファンキーなんだけど、完全にロックとして機能してしまっているんだよね。そういう意味では、俺はかなりP-FUNKに近い存在じゃないかな、と勝手に解釈してるんですが。P-FUNK‥‥特にFUNKADELICもファンクロックというよりは、完全にロックバンドだしね。彼等自身も周りが思う程「ファンクの伝道師」なんて思っていないだろうし、むしろライヴやってる最中は気持ちよくロックしまくってます、くらいの気持ちなんじゃないかなぁ‥‥と。

  で、それは決して悪いことじゃなくて、むしろいい方向に作用してるように思うんですね。これがド・ファンクだったら‥‥やっぱり人によって得手不得手があると思うんですね。ところが、ここまでロックしてしまうと、逆に聴きやすい。ファンクに疎いロックファンの耳にも優しいんですよ。例えば、いくらモーニング娘。がファンクに接近しようが、それはあくまでポップフィールド上での話であって、決してファンクそのものになることはないと思うんですよ。だからこそ、モーニング娘。のダンス☆マン・ナンバーはロックファンである我々の耳にも馴染みやすいんですよね。あくまでロックやポップスの範疇でのファンキーさですから。そしてSBDも‥‥。

  百聞は一見に如かずじゃないですが、まだ彼等に接したことのない人は是非このライヴ盤から聴くことをオススメします。このアルバム、普通のアルバムよりも安い2,100円(税込)ですよ!? それで12曲、70分以上も収録されているんですから。「ファンクとか跳ねるリズムは苦手」というロックファン、モー娘。でファンキーな音楽に目覚めつつあるモーヲタ、そして「心に響く唄」が聴きたいリスナー、全てにオススメの1枚です。当然、今年の10枚候補ですよ、これ(ま、ライヴでベストという反則合わせ技ですけどね)。



▼SUPER BUTTER DOG『ラ』
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投稿: 2002 12 20 12:00 午前 [2002年の作品, SUPER BUTTER DOG] | 固定リンク

2002/12/19

HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(2002)

HANOI ROCKS、17年振りの復活。いや、マイケル・モンローとアンディ・マッコイの言葉を借りるなら、「再結成(Reunion)」ではなくて「再生(Rebirth)」と呼んだ方がいいんだろうな‥‥実際、これは復活っていうよりも、アンディとマイケルが組んだ新しいバンドという匂いがプンプンするし。そんなハノイの‥‥とりあえずラストアルバムとなったのが'84年の「TWO STEPS FROM THE MOVE」だから‥‥18年振りのオリジナルアルバムってことになりますか‥‥そうか、俺がロック聴き始めてからそれくらいの年月が経ったってことなのか‥‥そりゃ歳取るわけだ。当時中学に入学したばかりの、それこそアソコに毛が生え始めの童貞クンが、今や30を越えるオヤジの仲間入りなんだからさ。当時ハタチ過ぎだったマイケルも今や40に突入かぁ‥‥その割りに全然見た目が衰えてないところはさすがというか。俺も見習わなければ‥‥

そんな夢のような出来事‥‥再生の切っ掛け。それは昨年の「HANOI REVISITED」が切っ掛けだったんだろうな。アンディとマイケルが決裂してから15年以上経って初めてふたりが同じステージに並んで立ち、しかもハノイ時代の名曲やカバー曲をひたすら演奏する企画。これが切っ掛けなのは間違いない。フロントマンとして華があり過ぎ、それに匹敵するだけのパートナー(=ギタリスト)を見つけられずにいた孤高の存在マイケル。方や組むバンド組むバンド全てが短命に終わりながらも過去の栄光に決してすがることのなかったカリスマ、アンディ。二度とふたりが組むことはないだろうことは、古くからのファンならば誰もが判ってたはず。いくらマイケルがサミー(・ヤッファ。ハノイのベース。後にマイケルとJERUSALEM SLIMやDEMOLITION 23.で活動を共にする)やナスティ(・スーサイド。ハノイのギター。マイケルのソロに参加したのを切っ掛けに、後にDEMOLITION 23.にも加わる)とバンドを組んだりしても、メインソングライターであったアンディと組むことだけは決してない‥‥悲しいけど、それはつまり「食えなくなったメンバーが再び過去の栄光よ再び‥‥的に再結成」を意味することを知ってたから。だからマイケルがアンディ以外の元メンバーと共に活動しようとも、それがハノイにならないことを知っていたし、何よりも肝心のラズル(ハノイのドラマー。'84年12月に事故死)がこの世にいない事実‥‥それが「再結成はありえない」ことを物語っていたように思う。

けどアンディとマイケルは再び「HANOI ROCKS」の名の下に集まった。そこにはサミーもナスティもいない。勿論ラズルも。再びふたりが一緒に活動を始めるに当たり、それを「HANOI ROCKS」と呼ぶようになったのは、ごく自然な流れだった、とふたりは語ってます。そして最初に出した「再結成ではなくて、再生」‥‥たまたま新しく作ったバンドが出す音が「HANOI ROCKS」の名に相応しいものだった、と。

リアルタイムでふたりが動いてる姿を知らない後追い世代は喜んだと思うんですよ。素直に「再結成」を認めたはずなんです。けど、俺ら旧世代‥‥リアルタイムで彼等を知ってる人間はやっぱりどこか懐疑的だったはずなんです。「散々再結成を否定し続けたふたりが、何で今更‥‥」と。ソロでパッとしないふたりが、過去の名声で一旗揚げようって‥‥そんな感じじゃないかと。

だから俺も、春に地元フィンランドでリリースされたシングル「PEOPLE LIKE ME」を聴くまではずっと疑問を持ったままでしたよ。確かにマイケルにはアンディみたいなカリスマが必要だし、アンディにもマイケルみたいなフロントマンが必要だと思うし。けど、だからといって何もふたりが再び手を組む必要があったのか‥‥わざわざフィンランドから取り寄せましたよ、シングルを。で聴きましたよ‥‥余計に不安になりましたよ。良くも悪くもHANOI ROCKS。そういう音でしたし。好きか嫌いか?でいえば勿論大好きなんですが、何かマイケルのソロにアンディが参加しました、的イメージが強い楽曲だったから余計に不安になったし。

そうこうしてたら、今度はサマーソニックでの来日決定。不安を抱えながらも、表向きは大喜び。いや、嬉しかったんですよ素直に。けど‥‥やっぱり「けど‥‥」ってのが常に付きまとっていて。もし今のGUNS N'ROSESみたいなのだったらどうしよう‥‥とか、そんな感じで。自分の10代を支えたバンドのひとつだし、何よりも自分がプロのミュージシャンを目指したのはHANOI ROCKSがいたから、自分がシンガーとしてハーモニカやサックスを手にしたのはマイケル・モンローの影響だったから。それくらい自分にとって大きな影響を持った存在だからこそ、簡単に復活して欲しくない。安易なことはして欲しくなかった‥‥ファンの身勝手なのは重々承知。けど、それくらい自分に葛藤があったのは事実。

けどね‥‥そんなこと、あのステージを観たら正直どうでもよくなったよ。あのサマーソニックでのライヴ。あれが俺の全部だとは言わないけど、俺が求めるHANOI ROCKSが、俺が求めるロックンロールの現在・過去・未来が全部そこにあった。マイケルはどんなブートビデオで見るハノイ時代よりも、そしてこの10年のソロ時代よりも更にハイパーアクティヴでアグレッシヴだったし、アンディに至ってはもうそこにいてギター弾いて時々マイクの前でヘロヘロコーラスを入れるだけで神。ファンの贔屓目なんかじゃなくて、あの場にいた人間誰もがそう思ったはず。それだけの説得力を持つパフォーマンスだったんだよ。

というわけで‥‥改めて言わせてください‥‥


   Welcome back, HANOI ROCKS!


さぁ、前置きがかなり長~くなりましたが、やっぱりけじめとして書いておかなくちゃ、と思いこうなりました。やっぱりあのライヴを観るまでの、そしてアルバムを聴くまでの自分の気持ちを知って貰った上で皆さんにこのアルバムを聴いてもらいたいし、このレビューを読んで欲しいと思ったので、こういう形になりました。

ハノイのオリジナルアルバムとしては、通算5作目(コンピ盤「SELF DESTRUCTION BLUES」はカウントせず)、約18年振りの新作ですよ‥‥誰もが今年の前半、彼等が再びハノイの名を名乗り始めた時、こんなアルバムが出るなんて半信半疑だったはずなんですよ。きっとふたりのことだから、途中で頓挫するんじゃないか、と‥‥けど出来た。確かに予定よりちょっと遅れたけど(そのせいで、本来このアルバムを12月のオススメにするつもりが‥‥)、ちゃんと2002年中に出た。しかも1ヶ月後にはマイケルのソロまで出る。君らはZIGGYですか!?(何時の間に立場が逆転してんだよ、ったく)

楽曲のクレジットを見ると、日本盤ボーナストラックを含めた13曲(イントロ除く)のうちマイケル&アンディ名義の曲が4曲、マイケル単独が1曲、アンディ単独が2曲、マイケル&ジュード・ワイルダー(マイケルの妻。'01年6月に死去)名義が3曲、マイケル、ジュード&その他が1曲、カバーが2曲。過去のハノイはほぼ全ての曲をアンディが手掛けてきた事実を考えると、今のバンド‥‥アンディとマイケルの関係が如何にフィフティ・フィフティかが伺えるんじゃないでしょうか? 当然、マイケルはハノイ後、ソロアルバムを何枚も出していて、そこでかなりの楽曲を世に出してきたわけですから、ハノイ時代と比べてソングライティング力もアンディに肉薄する程伸びてるはずですし。また、そういったクレジットを見る前にアルバムを通して聴いた時、俺の第一印象として「マイケルのソロアルバムの延長線上にある作品」だと感じたんですが、その理由がマイケル単独やマイケル&ジュードの曲がアルバムの半分近くを占めているからだったんですね。

そう、ジュードはマイケルが再びアンディと組むことになる前にこの世を去っているわけですから、ここに収められているマイケル&ジュードの楽曲はハノイを意識したものではなくて、純粋にマイケル・モンローというシンガーの為に書かれたものなんですよ。そういう点からも、今回の再生が単なる再結成ではないことが伺えるんじゃないでしょうか?

カバー曲についてもコメントを。フィンランド盤シングルにも収められていた"Winged Bull"はかのダリル・ホールの作。勿論、HALL & OATESの曲で、彼等の'77年のアルバム「BEAUTY ON A BACK STREET」収録のナンバー。とはいってもかの有名な「PRIVATE EYES」前夜の楽曲なので、当然俺は知りません。なので原曲との比べようがないのですが、言われなければホール&オーツの曲だって判らないし、ああ、ハノイっぽいかなぁって気がしないでもないし。うん、いい曲ですよね単純に。

もう1曲は"Delirious"。再生ハノイのライヴでのトップを飾ることの多いこの曲は、かつてマイケルがソロでも取り上げた"She's No Angel"と同じくHEAVY METAL KIDSの曲。バンド名とは裏腹に、硬派なハード・ロックンロールを聴かせるバンド。これもカバーっぽく感じなかったのは、既にこの辺の曲もマイケルの色と化してるからかな? ホント、これもライヴではメチャメチャかっけー曲。多分これ、マイケルのリクエストなんだろうね。普通にマイケルのソロでやってても違和感ないし。つうか、マイケルのソロみたいだし、これなんて特に。

さてさて‥‥オリジナルの楽曲ですが、30秒程のイントロの後、如何にもハノイ‥‥というかマイケル・モンローな"Obscured"から勢いよくスタート。ハノイ時代の"Tragedy"やマイケルのソロ"Dead, Jail Or Rock'n'Roll"や"Just Because You're Paranoid"的なマイナーロックンロール。もうね、これ聴いてハマれなかったら、このアルバム聴く必要なし。続く"Whatcha Want"はミドル・ヘヴィナンバー。ちょっとJERUSALEM SLIMっぽいかな。後半のアップテンポになるところで、思わずゾクッとするよね。この曲のタイトルって、1月に出るマイケルのソロアルバムと同じ名前なんだけど、あっちのソロの方には入ってない‥‥どういうこと? で、シングルでお馴染みの"People Like Me"で再びアッパーに攻めて、ハノイ流バラード"In My Darkest Moment"に。この緩急ある流れ、いいわぁ。過去のハノイのアルバムの中でも一番完成された流れじゃない?(一部から「最もハノイっぽくないじゃん」という声も聞こえてきそうだけど、この際無視)この曲なんてハノイというよりも、そのハノイに影響を与えたMOTT THE HOOPLEみたいだよね。ハノイ版「All Young The Dudes」か? で、ライヴでもお馴染みカバー"Delirious"に続いて、アンディの単独作"A Day Late, A Dollar Short"。これがまたアンディらしい泣きのマイナーチューン。マイケルもソロ時代、こういう哀愁漂うマイナーキーのロックチューンを幾つか持っていたけど、ホントこういう曲をアンディに書かせたら、そしてマイケルに唄わせたらもう‥‥ああ、今俺はハノイのアルバムを聴いてるんだなぁと実感する瞬間。ギターソロではなくてあえてサックスがソロ取る辺りも抜群のセンス。いやーかっけーよマジ。

後半戦はマイケルの視点で語られる攻撃的なミドルロック"New York City"からスタート。歌詞がまた泣かせるのよ、「ニューヨークにはロックンロールが息づいている/やれることはいっぱいある/ニューヨークでの生活は辛い時もあるけど/またロックするために/いつか戻ってやる/今に見てろよ」。「今に見てろよ」ですよ!? 泣かせるじゃないですか、浪花節じゃないですか!(そ、そうか??)そこからホール&オーツのバラード"Winged Bull"でまた泣かされ、ハノイらしいアッパーなマイナーチューン"Watch This"、ブルージーな"Gypsy Boots"へ。アンディのドブロ(多分ね)とマイケルのオートハープのバトルに悶絶。出だし、ちょっと"Self Destruction Blues"を彷彿させるけど、こっちの方が重厚で渋いかも。その後シングルにも入ってたパーティーチューン"Lucky"で景気づけて、最後はアコースティック色が強いバラード"Designs On You"でしっとりとアルバムを締め括ります。アンディによるコーラスがホントにキース・リチャーズみたいで、更に渋みが増してます。日本盤はその後に(シークレットトラックを経て)アンディのボーカルによるボーナストラック"Check Out The Girl"がありますが、実はこの曲が一番従来のハノイらしいってのも、何だか微笑ましいというか。

こうやってアルバム通して聴くと、過去‥‥ファーストから「BACK TO MYSTERY CITY」までにあったような脳天気さが減退して、どっちかっていうと解散前のラスト作「TWO STEPS FROM THE MOVE」に近い印象を受けます。メジャー感がある、というよりもシリアスな空気感って意味でね。だって相変わらず楽曲にはB級臭漂いまくりだし。いや、勿論いい意味でね。ま、こうじゃなきゃハノイじゃないしね?

このシリアスさってのは、もしかしたらマイケルの持ち味なのかもしれないよね? ハノイ後のマイケルの活動を見た時、やっぱりシリアスな雰囲気のものが多いことに気づくし。ソロ最大のヒット作「NOT FAKIN' IT」('89年)もそうだし、マイケル版LAメタル・アルバムと呼ばれるJERUSALEM SLIMのアルバムもそんな空気を持ってるし。そうすると、やっぱり初期のハノイの脳天気さというのは、メインソングライターであるアンディの色なのかも‥‥実際、アルバム通してアンディがソングライティングに関わる曲よりもマイケルが関わる曲の方が多いわけだし。そういう点からすると、過去のハノイからすればとても異色作ってことになるのかな。でも、これはあくまで「新しいバンドのファーストアルバム」なのであって、「ソロとして活躍してきたマイケル・モンローが組んだバンドのアルバム」なのだと。イニシアティブを握る比重がちょっとマイケルの方が上なだけ。新しいバンドのアルバムとしても十分に楽しめるし、だからといって全然HANOI ROCKSではないわけでもない。いや、むしろここまでハノイ的な作品ってのは過去のマイケルのアルバムにはなかったわけで。そういう意味ではやっぱりこれはHANOI ROCKSのアルバムなんだなぁ、と再確認したり‥‥って意味のない同道巡りはこの辺にして。

いや~、年の瀬になってまさかこんなにかっけーアルバムに出会えるとは。しかもそのアルバムを作ったのがマイケルとアンディによるHANOI ROCKSだったというのが、俺にとっては凄く大きいわけで。だから気づけばこんなに長い文章になってしまってるわけで。多分俺と同世代で、'80年代にこの手のロックンロールやハードロックを聴いてきた人間なら間違いなく気に入るアルバムだと思います。逆に‥‥後追い組や、今回の再生で初めて彼等を知った若い人達にこのアルバムがどのように受け入れられるのかが気になります。過去に対する思い入れや知識が少ない分、余計な声に惑わされることなくストレートにこのアルバムを受け取ってくれるはずですが‥‥

‥‥へっ、俺!? んなもん、気に入ってるに決まってるじゃないッスか!これ聴きながらどんぶり飯5杯はいけますよ!

それにしても、HANOI ROCKSってのは特に世界中で大ヒットを飛ばした大物だったわけでもなく、むしろこれからって時に解散してしまった、ある意味カルト的な存在だったわけですよ。日本やフィンランドでは大人気、イギリスでもそこそこ人気があったわけだけど、結局アメリカではかのGUNS N'ROSESがフェイバリット・バンドとして名を挙げるまで、メジャー配給の「TWO STEPS FROM THE MOVE」以外のアルバムはリリースされていなかったわけだし。にも関わらず、そんなアメリカで一時代を築いたバンド達が「影響を受けたバンド」としてこぞって名を挙げる存在。現在、再生ハノイに対して好意的歓迎ムードなのは、地元フィンランドとここ日本のみ。まぁフィンランドの周りの国もツアーで回ってるはずなので、歓迎されているでしょう。けど、勝負はこれからですよ。再びイギリスで成功を手にするまでは、ホントの意味で「HANOI ROCKS is back!」なんて言えないでしょうしね。ホント、こんな時代だからこそ、彼等みたいなロックスターがこの世には必要なんですよ。自身も"People Like Me"の中で唄ってますしね、「Radio and MTV - You need people like ME」ってね。



▼HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』
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投稿: 2002 12 19 10:44 午後 [2002年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク

RIP SLYME『TOKYO CLASSIC』(2002)

  誤解を恐れずに言うならば、俺はヒップホップと呼ばれるジャンルがそれ程好きでもない。あ、嫌いって意味じゃないですよ? ただ、例えば自分が好きなパワーポップだったりハードロックやガレージサウンド‥‥そういったものと比べた場合、どうしても一歩二歩自分の中では退いたポジションにいるジャンル。それが自分にとってのヒップホップなんですよ。

  けどね、「ヒップホップ的なもの」は好きなんですよ。この微妙な線引きをどこまで理解してくれるかは読み手次第なんですけど‥‥リアルでコアなヒップホップに対しては苦手意識があっても、例えばロックにヒップホップ的要素を取り入れたもの、ファンクにヒップホップ的要素を取り入れたもの、ポップミュージックにヒップホップ的要素を取り入れたもの‥‥そういったものの方が自分的には受け入れやすいんですね。

  で、今回取り上げるRIP SLYME。今月に入って取り上げてきたアルバム群と比べれば明らかに異色なわけですが、これも全然自分的には「あり」なんですよ。むしろモロ直球っていうか。例えば‥‥固有名詞を挙げるのは避けますが‥‥一般的なヒップホップと比べればRIP SLYMEというのは非常にポップで、もしかしたらそういったヒップホップを愛聴するファンからは「あんなのヒップホップじゃねぇよ!」と軽蔑されてるのかもしれません。

  けどね、俺はそれでいいと思ってるんですよ。何故RIP SLYMEがここまで大ヒットしたか。それは彼等の楽曲がポップだったから。ヒットチャート上に乗っても、全然違和感のないポップソングだったからなんですよ。

  と、当たり前のことを書いてみましたが‥‥とはいいながらも、実は未だに彼等のことを「ヒップホップだから」という理由だけで毛嫌いするロック/ポップフィールドのリスナーが多いという事実。今回はこの辺のリスナーに向けて書いていこうかと思ってます。勿論、彼等のことが気になりつつも敬遠してきた人も読んで今後の参考にしてみてください。

  前作「5」も十分にポップで親しみやすいアルバムだったけど、このアルバム「TOKYO CLASSIC」はそれとは比べものにならない程更にポップなんですわ。勿論、基本にあるのはヒップホップでありラップだったりするんですが、今回はそこからも逸脱しようとする意志が強く表れています。ま、その基本となるのが大ヒットシングル3枚‥‥"One"、"FUNKASTIC"、そして"楽園ベイベー"なんですね。彼等の根底にある「普遍的なポップ要素」を端的に表した"One"、生バンド&ブラス隊を取り入れたファンクチューン"FUNKASTIC"、そしてボサノバテイストで脳天気さ満点のサマーソング"楽園ベイベー"。もうね、これだけで十分なんですよ。前作ではまだヒップホップ的「型」に拘ったところが多々見受けられたんですが(勿論、遊び心も十分でしたが)、今作では当然従来の色を持った"By the Way"や"Tokyo Classic"のような曲もあるんですが、やはりメインとなるのは先のシングル曲であり、それに匹敵する各MCのソロナンバーの多彩さなんですよ。特にROLLING STONESもカバーしたマディ・ウォーターズの"MANNISH BOY"を独自の解釈でカバーしたRYO-Z(しかもここではラップすらせず、普通のブルーズマンの如く唄っている!)、ラップというよりは昨今のR&Bダンスチューンと呼べるPESによる"STAND PLAY"、ILMARIによるダニー・ハザウェイやマーヴィン・ゲイ的フィーリングを持ったソウルチューン"Bring your style(夜の森)"、そして最もヒップヒップに拘ったSUによる"スーマンシップDEモッコリ"‥‥それぞれのキャラクターと声を生かした4曲。4人の声ってのはそれぞれホントに魅力的で、韻の踏み方もタメもメロのなぞり方も全く別々の個性を持ってるんですね。で、個々のソロナンバーもよく出来た楽曲なんですが、やっぱりこのユニットはこの4つの全く違った声が重なることによって生まれる「ポップ感」が命なんだな、とこのアルバムで再確認することが出来ると思うんですよ。そういう意味ではホントに考えて作られてるように感じます。そういう意図がなかったとしても、それぞれのソロナンバーを入れた結果、より4人揃った時の魅力が増して感じられるように自然と構成されてるし。

  海外ではRAGE AGAINST THE MACHINEやLIMP BIZKIT、あるいはBEASTIE BOYSやEMINEMによって、ここ日本ではDRAGON ASHによって、ヒップホップ側とロック/ポップサイドがどんどん接近し、いい意味で互いが互いのいい部分を取り入れることによって、ロックファンに優しいヒップホップ、あるいはヒップホップファンに優しいロック/ポップスが生まれ、互いのジャンルがよりクロスオーバーし、「見えない壁」は以前程感じられなくなったように思います。何十年もヒップホップ一筋でやってきた人達、あるいはそのファンからすればこういう存在というのは疎ましいものなのかもしれません。でもね、ひとつのジャンルがずっと同じままを保ちつつ生きながらえるってことは少ないわけですよ。ブルーズがロックンロールを生んだように、ファンクやR&Bがヒップホップを生んだように‥‥そのヒップホップだって生まれて早20年以上。どんどんいろんなものを吸収して、また吐き出して更に進化していくと思うんですね。そういった意味で、DRAGON ASH的なロックフィールドからヒップホップ的要素を取り入れたものもあるだろうし、ヒップホップをよりポップなものとして、完全にポップスとして機能してしまうようなものだってあってもいいし。勿論、好き嫌いはあるでしょうけど、俺はむしろこういう変化を好意的に受け入れていきたいと思います。

  とかいいながら、実は俺、RIP SLYMEのアルバムをあんまりヒップホップと認識して聴いてはないんですよね。むしろモーニング娘。のダンス☆マン・ナンバーと同じようなファンクソング、あるいはファンク的ポップソングとして聴いてる節があるんですが。そういう意味ではやはりRIP SLYMEも「ヒップホップ的なもの」だから好きなのかもね。



▼RIP SLYME『TOKYO CLASSIC』
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投稿: 2002 12 19 12:00 午前 [2002年の作品, RIP SLYME] | 固定リンク

2002/12/18

カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『新しい恋の初デート』(2002)

  10月にカントリー娘。及びハロープロジェクトを卒業した「りんね」さんが、来年2月上演予定の松浦亜弥のミュージカル「草原の人」に出演することが決まったそうです。一応卒業の公式理由として「ミュージカルの勉強をしたい」というのがあったのですが、ハロプロ離脱後(事務所も離脱したのかな?)もやはりハロプロとは切っても切れない縁なのでしょうか‥‥ま、そんな細かいことはこの際どうでもいいんです。あのりんねさんが動き、話し、唄う姿が見れればそれで‥‥それだけの為に、行く予定のなかったあややミュージカル、行くことにしたんですから‥‥重症ですね、俺。

  さて。カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)名義でのサードシングルは"色っぽい女~SEXSY BABY~"ということになってますよね。いや、「なっている」ではなくて実際にリリースされましたよね。ところがこのサードシングル、本来は別の楽曲が用意されていたという噂があるのを皆さんご存じですか? 俺もつい数ヶ月前に知ったことなんですが‥‥

  今年の4月からフジテレビ系列で深夜放送されている「ハローランド」という番組があるんですが、その第1回目放送分にてカン梨華「ア~ン」(だからそんなタイトルじゃないってば)のジャケット撮影風景を紹介してるんですよ。そう、あの青空バックに春っぽい雰囲気のやつですね。曲のイメージと全く正反対のやつね。

  で、ここでりんねさんや梨華ちゃんが新曲について興味深い発言をしてるんですよ。要約すれば「今度の新曲は春っぽい曲で、初めてのデートで海に行きたいな、って感じの曲なんです」というような事を皆さん口にしてるんですよ‥‥


あの~、「せくしーべいべー」のどこが春っぽいんでしょうか??

  まぁ娘。関係のシングルで、ジャケットのイメージ(衣装)と曲の雰囲気が全く違うというケースは過去何度もあったことなので、正直ジャケットを見ただけでは別に何とも思わなかったんですよ。ところが、夏過ぎに当時録画したこの映像を見直した時、そう発言してる事に改めて気づいたんですね。で、いろいろネット上を彷徨っていると、同じような発言をしてる方が結構いらっしゃるんですよ。となると‥‥やっぱりカン梨華のサードシングルは、当初予定してた楽曲から「ア~ン」に、直前になって差し替えられた、と。もっとも、あの頃は娘。の春ツアーで、3月末にはツアースタートしてる(「ア~ン」も披露されている)んですよ。つうことは‥‥遅くとも3月の頭頃には決定されていたってことですか‥‥

  これはあくまで憶測でしかないですし、実際につんく♂及び関係者が「シングル曲を差し替えた」と発言したところを見たことがないので実際のところは判りませんが‥‥カン梨華のサードシングルはやはり差し替えられた、と考えるべきですよね。多分、2曲をレコーディングしたのか、先にこの"新しい恋の初デート"を録音していたのか判りませんが、とにかくレコーディング後のフォトセッションも終わった後に楽曲の差し替えが決まった、と。しかしジャケット写真等のアートワークは既に差し替えが効かず(そもそもまた新たに撮影する時間なんて当時なかったでしょうし)、現行のジャケットのままタイトルだけ変えてリリースされた、と‥‥

  そう考えながら、この「プッチベスト3」に収録されることでやっと日の目を見たこの曲を聴くと、いろいろと感慨深いものがあるんじゃないでしょうか? りんね在籍時の未発表曲という事でこのアルバム発売前から話題でしたが、もうね‥‥何で当時、こっちをリリースしなかったんだ!?と声を大にして言いたいね。これこそカン梨華の持ち味を最大限に生かしたポップチューンだったんじゃないか?と思うんですよ。結局その後りんねさんが抜けて、再び3人になったカン梨華は従来の路線‥‥ある意味この曲の延長線上にあると言っても過言ではない‥‥の"BYE BYE 最後の夜"をリリースするわけで。もし"初めてのハッピーバースディ!"~"恋人は心の応援団"~"新しい恋の初デート"~"BYE BYE 最後の夜"という流れでシングルリリースを重ねていれば、音楽的にもごく自然な流れを持ち、ファンや聴き手も「カン梨華らしいね」で納得できたと思うんですよ。実際‥‥嫌いじゃないんですが‥‥"色っぽい女~SEXSY BABY~"は糞曲の一歩手前でしたしね。あれをあの時期のカン梨華がやる理由や意味がどこにあったんだろう、と今でも思うわけですよ。もう、りんねさんに関して言えば最後の頃‥‥夏ハロコンや娘。夏コンでは正直痛々しかったですからね。

  この"新しい恋の初デート"という曲、アレンジには過去のカン梨華と同じく高橋諭一が携わり、確かに過去2作よりもカントリー色は減退しましたが、一聴すれば「ああ、カン梨華だね」と判るようなカラフルな空気感を持ったアレンジを施しています。それにね‥‥何よりもメロディがいいと思うんですよ。前2作同様、どことなく懐かしい'70年代アイドルポップ風フレイバーが所々感じられるし、またそういう古くささが逆に新鮮だったりして。今これを聴いてるのは12月も真っ直中だけど、もしこれを春‥‥4月5月に女の子を車に乗せて海にデートへ向かう時に聴いたら、ホントにピッタリだと思うし(ってまんま歌詞の世界だけどね)。ホント勿体ない。何でこれが今まで世に出なかったのか。これを黙殺するってことは即ち、りんねさんを飼い殺しにするってのと同義ですよね? だから彼女は卒業「させられた」のかな‥‥いや判らないけどさ。

  まさか「プッチベスト3」の目玉楽曲として今まで隠してたわけじゃなかろうし(隠し球として使用するにはアーティストパワー弱すぎだしな)、仮に年明けにアルバム出すとしてそこまで取っておく理由も正直思いつかないし(だってりんねさんは既に卒業してるのに、新曲と呼ばれるこの曲にはしっかりりんねさんの声が入ってるわけですから)。つんく♂多作過ぎとか叩かれてるけど、こうなるとまだまだ未発表の曲って沢山あるんじゃないか?って思えてきたよ。ま、あやや「100回のKISS」も初出から1年近く寝かされたし、娘。の「ポップコーンラブ」(ミスムンのC/W)もmusix!放送開始時にはテレビで唄ってたそうだしな。アルバム曲の「いいことある記念の瞬間」も2001年春までにはバックトラックが録音されてたそうだし。あ、タンポポ「王子様と雪の夜」も当初「乙女 パスタに感動」の後に出すつもりで作ってたんだっけ。やっぱりあるんだねいろいろ。そう考えると‥‥今出てる新曲が必ずしも「今のつんく♂」を象徴する楽曲とは言い切ることができないかも‥‥ま、今出した=今を象徴、なのかもしれないけど。

  第二期タンポポやプッチモニがそれぞれのベスト盤の中で最後の曲を発表したけど、俺、実のところそんなに感慨深さを感じなかったし、周りが思ってる程名曲とか「この曲で終われてよかったね」なんて全然思ってないんですよ。やっぱり新編成について最初に知った時、俺の中ではタンポポは「王子様と雪の夜」で、プッチは「ぴったりしたいX'mas!」で一旦終わってるんですよ。決着ついちゃったんですよ。ああ、カップリングも含めていい曲で終われてよかったね、と‥‥正直納得は行ってなかったんだけど、楽曲に関しては「あれで終われてよかったかも」って気持ちが強くて。だからその後の「I & YOU & I & YOU & I」も「負けない負けたくない」もいい曲だとは思うけど、結局はボーナストラックだと思うんですよ。終わりを念頭に置いて唄われたそれら2曲もいい出来なんだけど、それ以上にそういったことを全く念頭に置かずに、ただひたすら全力で、ガムシャラに向かっていった「王子様と雪の夜」「ぴったりしたいX'mas!」の方が、俺は終わりにピッタリだと思った。ただそれだけの理由なんですね。

  じゃあカン梨華の場合は‥‥またケースが違うってのもあるんですが、ここに発表された"新しい恋の初デート"ってやっぱり違うんですよ。終わりを想定して唄われたものでもないし、別にボーナスとして制作されたものでもない。本来春には出るはずだった、あの当時のりんねさん、あさみ、まいちゃん、梨華っちが全力で唄ったものがこれだったんですから。りんねさんは決して「最後」を意識して唄ったわけでもないし、それは「あ~ん」にしてもそうだと思うんですよ。けど、力の入れ具合や思い入れの面でいえばやはりこっち‥‥"新しい恋の初デート"だったと思うんですよね。「ハローランド」での発言を思い出すまでもなく。

  この曲は、卒業していったりんねさんへのレクイエムではなく、来年新しい形で戻ってくる戸田鈴音さんへの応援歌なんですよ。「カントリー娘。イズムを忘れるな」という、あさみやまいちゃんからの声であって、梨華ちゃんからの声であって、そしてつんく♂からの声であると‥‥俺はそう思いたいですね、うん。

  この1曲を聴いて、これだけいろいろと思うことがあり、考えることがあり、気づけば帰宅後この曲だけ延々とリピートしてるわけです。もうね、この曲の為だけに「プッチベスト3」買っても損しないって。いや、他にもポッキー関連の新曲も良かったし、「Do it!Now」リミックスも原曲以上に良かったし、アイ~ン・リミックスも良かったし。そこにあんた、あややもミキティもごっちんもメロン「香水」も入ってるんですよ!? 迷わず買えよ、買えば判るさ!!



▼ハロー!プロジェクト『プッチベスト 3』
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投稿: 2002 12 18 12:00 午前 [2002年の作品, カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2002/12/16

THE HIGH-LOWS『angel beetle』(2002)

  ブルーハーツやTHE HIGH-LOWSを取り上げるってのは、自分にとってとても敷居が高い事なんですよ。いや、そんなに心底好きなの?と問われれば、いや、そうでも‥‥と答えてしまいそうなんですが、やはり自分の10代中盤~20代前半をブルーハーツで過ごした身としては、なんか簡単に語れない、語り尽くせない魅力があるんですよね。で、20代後半になっても彼等‥‥ヒロトとマーシーの作る楽曲に心打たれたりして。"日曜日よりの使者"だったり"月光陽光"だったり"千年メダル"だったり、そして"青春"や"14才"だったり‥‥ピンポイントで俺の心をくすぐるっつうか、針でツンて突き刺すっていうか。そういう存在なんですよ、俺にとってのヒロトとマーシーって。

  で、今回取り上げるのはTHE HIGH-LOWSとしては7枚目となるオリジナルアルバム(編集盤「FLIP FLOP」やライヴミニアルバム等を除く)。毎年毎年、ちゃんとアルバムを出してくれる彼等だけど、単に「1年経つと曲が貯まるから、レコーディングするだけ」とのこと。彼等らしい理由。ツアーをやりたいからアルバムを作るんじゃなくて、ツアーは延々続けて、曲が貯まってきたからそろそろ‥‥って感じでアルバムレコーディング。実はこのアルバム、11月末リリースなんだけど、実際にはフジロックの前‥‥つまり7月下旬にはレコーディングがほぼ完了してたそう。実質数週間で作業終了したらしいし。すげぇよ、相変わらず。

  そういえば、既にこのアルバムから3曲もフジロックで演奏されてたんだよな("Too Late To Die"、"アメリカ魂"ともう1曲‥‥何やったか失念!)。印象に残ってるのは、やっぱりタイトルを覚えてた前述の2曲。シングルにもなった"Too Late To Die"は如何にも彼等らしい、力強いロックアンセム。で、問題は"アメリカ魂"‥‥ライヴではブルース・スプリングステーィンの"Born In The USA"のフレーズを頭にくっつけたアレンジで、彼等にしては非常にグラムロック調の演奏。で、歌詞が‥‥恐らく「9.11」を題材にしてると思うんだけど、聴く人が聴けばアメリカ賛歌に聞こえるだろうし、俺なんかはアメリカをジャイアンに見立てた皮肉ソングに受け取れるし。ま、ここでは後者なんだろうけど‥‥その辺の解釈は各自それぞれ好きなようにやればいいし。にしても、ここまでストレートにこういうことを過去、彼等は唄ったことあったかなぁ‥‥ま、ブルーハーツ時代にはもっとストレートな"チェルノブイリ"みたいな曲があったけど。

  前作「HOTEL TIKI-POTO」辺りから非常にゆったり目の曲が増えて、前々作「Relaxin' WITH THE HIGH-LOWS」までにあったような攻撃的なアップテンポの曲が減ってるんだよね。で、今作でもそういったアップテンポの曲は"曇天"くらい。それに近いタイプは"ななの少し上に"とか"俺達に明日は無い"なんかがあるんだけど、パンク的というよりももっとロックンロール寄りだしね。それは決して悪いことだとか何かより劣るってわけじゃないんだけど、ライヴで盛り上がるアッパー系の曲が初期の曲っていうのが‥‥やっぱり新作の曲で盛り上がりたいじゃない?

  と、不満を書いてみたけど、やっぱりいいアルバムなんですわこれ。"スカイフィッシュ"みたいなファンクチューンもあれば"映画"のようなソウルチューンもあるし。当然これまでの彼等らしいストレートなロックチューン"ecstasy"も"一人で大人 一人で子供"もある。バラード"マミー"もあるし、HIGH-LOWS風"Paint It, Black"と呼びたくなる"つき指"も登場するし、ある意味アンセムソングと呼べなくもない可愛らしい"Born To Be Pooh"まである。バラエティの面では前作以上かもね(ま、"21世紀音頭"を超えるような怪作はないけどね)。

  ヒロトもマーシーも今年2002年で、ブルーハーツでデビューしてから15年なんだよね。今年で15周年ってバンド(アーティスト)、他にどれだけ残ってる? ユニコーンは既に解散してしまったし、筋肉少女帯は解散同然だし、ZIGGYは頑張ってるけど‥‥ヒロトとマーシーがこうやって、未だにふたり一緒に活動しているのってある意味奇跡なんじゃないかな? フロントマンであるボーカルとギターがぶつかり合うってことは別に珍しいことじゃないし。清志郎とチャボだって仲はいいのに、結局離ればなれになっちゃったし。だからこそ、プライベートでも一緒にライヴ観に行ったり、フジロックにふたり揃って来てたりとか、そういう 「当たり前のことなんだけど、ちょっとあり得ない」現実を目の当たりにすると、もうそれだけで感動するっつうか‥‥

  ‥‥ほらねっ? 結局彼等について語り出すと、アルバムとかを飛び越えて、こういった文章になっちゃう。ホントはもっといろいろ語りたいんだよ、ヒロトとマーシーについて。けどね、それはまた別の機会‥‥ブルーハーツを取り上げる時にまで取っておこうと思います。

  つうわけで、話題をアルバムの方に戻して‥‥アルバムタイトルの「angel beetle」。タイトルに意味はなくて、単純に響きで決めたらしいね。毎回毎回、アルバムタイトルを決める時は困るみたい。別に毎回毎回そのタイトルがアルバムの内容を端的に表してるとは限らないんだけど、意外と彼等の場合、タイトルとジャケットが内容と一致してるように思えるのは俺だけかな? 今回もシンプルなジャケットの割りにバラエティ豊かな楽曲が詰まってる点が、タイトル「天使とカブトムシ(=BEATLES)」通りっつうか。ま、勝手な妄想なんだけどね。

  そうえいば、仕事場でこのCDを1日中かけっぱなしにしてたんだけど、音楽に疎い後輩が「これ、ブルーハーツの人達ですよね?」って俺に聞いて、「僕、彼の声を聞いてるだけで涙が出そうになるんですよねぇ‥‥」と呟いたのが印象に残ってます。そう、俺にとってもHIGH-LOWSの歌声、曲、演奏、歌詞、全てが泣ける要素なんですよ。

  最後にここにも書いておきましょう(過去、日記にも書きましたが‥‥)


   俺は、ブルーハーツやHIGH-LOWSを貶す奴を、人として認めません。

  人の弱さ、痛み、優しさ、強さ‥‥それらが理解出来ない奴とは絶対に俺、合わないと思うから。未だにそういう事をストレートに曲に乗せて唄うのって、彼等とモーニング娘。くらいだし。



▼THE HIGH-LOWS『angel beetle』
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投稿: 2002 12 16 01:29 午前 [2002年の作品, HIGH-LOWS, THE] | 固定リンク

SKETCH SHOW『AUDIO SPONGE』(2002)

  というわけで、このふたりが一緒に並んでしまうと、否が応でもあのバンドを思い出してしまうわけですが‥‥しかもやってる音楽自体、あの頃の発展型‥‥あるいは2002年版とでもいえるサウンドですしね。

  つうわけで、YMOを愛して止まなかった俺からすれば、この「細野晴臣+高橋幸宏」という組み合わせだけで生唾モノなのに、更にやってる事がマジで「TECHNODON」(再生YMOが'93年にリリースした唯一のオリジナルアルバム)の10年後という形で終わってない、テクノの型に囚われないポップアルバムだし、しかもゲストとして2曲に教授・坂本龍一が参加してる事実‥‥ヤベェ、マジヤベェってば。

  私事で申し訳ないんだけど‥‥俺、幼少の頃ピアノを習ってまして、最初は自分から始めたいと言ったものの、やっぱりどこかに「やらされてる感」みたいなのがあったんですよ。ところが、小学2年生だった俺があるグループに出逢うわけです‥‥それがこのYMOなんですね。もうね、「SOLID STATE SURVIVOR」('79年リリースのセカンドアルバム)がその後の俺の人生全てを変えてしまうわけですよ。小学生ながらに「こりゃヤバイ」と、感覚的に悟ったわけです。で、俺は何をどうしたかというと‥‥ピアノからエレクトーンに乗り換えたわけです、親を説得して。「これからの時代は電子サウンドだよ」とか言ったかどうかは覚えてませんが(いや、実際そういうようなことを言ったらしいね、母親に聞くと。YMOを持ち出してさ)、とにかく俺がどのくらい細野・高橋・坂本に影響を受けたか、ご理解いただけましたか?

  とまぁ前置きはこんなもんにして‥‥今年最大の心残り、それは「WIRE02」を欠席してしまったこと。ま、精神的にそういう心境じゃなかったわけですが、そこでの最大の楽しみであった彼等SKETCH SHOWのステージを見逃してしまったことが、ホント悔しくて悔しくて。だったら単独公演何で行かないの!?と突っ込まれそうですが、ええ、トライしましたよ、追加公演の方。けどね、取れなかったの、マジで。本公演の方はメロン記念日と被っちゃったから仕方なかったし(つうか今の俺にはどっちも大切な存在なんで)。

  そんなSKETCH SHOW。音楽的にはハリー&幸宏のポップセンスが光る楽曲を、テクノというよりもエレクトロニカ系のサウンドで聴かせる、正しく2002年の音。幸宏はここではドラムを叩いておらず(当たり前か)、完全にふたりしてコンピューターやらシンセやらをいじり倒した様子。細野氏が「踊れないテクノ」というキーワードをテレビか何かで言ってた記憶があるけど、他のエレクトロニカ系サウンドと比べれば全然リズムがしっかりしてて踊りやすいし、馴染みやすいポップなメロを持っているのですんなり聴ける。英語詞あり、日本語詞あり、インストよりも唄モノが多いのも特徴。最近細野氏がこの手(エレクトロニカ系)のサウンドに興味を示していたことからこういう方向性になったんだろうけど、やっぱり唄モノポップアルバムって印象が強いかな。まぁYMO以前に「はっぴぃえんど」やミカバンドがあったわけですからね、彼等には。

  で、2曲("Wonderful To Me"と"Supreme Secret")のみ教授こと、坂本龍一が参加してる曲があるんだけど‥‥どっちかっていうと、これらの曲の方がよりエレクトロニカ的サウンドで構築されてるかも。演奏だけでなく作曲にも携わってる辺り、ホントに過去に捕らわれずに自由にやってるんだなぁというのが伺えますね。また、他にもレーベルメイトであるテイ・トウワも参加してたりで。ま、その辺は完全にオマケって感じかも。とにかく楽曲もバックトラックも充実してるし、そういうゲストの要素がなくても十分に魅力的なアルバムだよね、これ。

  YMO時代から積極的にカバー曲を取り上げてきた彼等ですが、今回も3曲、非常に地味な選曲で我々を驚かせてくれます。まずはアルバム6曲目の"Do You Want To Marry Me"。映画「セシルの歓び」劇中歌だそうで、幸宏の選曲。10曲目"Turn Down Day"はCIRCLEというグループのヒット曲(ゴメンナサイ、俺このグループ知りませんでした)。最後に12曲目"Theme From A Summer Place"はパーシー・フェイズ楽団やLETTERMENでお馴染みの曲(らしいです)。これまでみたいなBEATLESだったりプレスリーだったりっていう判りやすい曲ではなく、非常にマニアックな選曲なのが「完全に肩の力抜いてやってます」的で面白いかも。ま、オリジナルを知らない俺からすれば、これらの3曲も十分に彼等のオリジナルソングとして楽しめるんですけどね。

  いやぁ、それにしてもホントに奥が深いアルバムだな、これ。モロにエレクトロニカな"Microalk"の後に、如何にも幸宏氏なBEATLESライクな"Wilson"が続いたり。エレクトロニカ・フォークとでも呼びたくなる"Do You Want To Marry Me"に続いて、懐かしのスネークマン・ショー2002年版"Gokigen Ikaga 1.2.3."が出てきたり。クラブサウンドで構築されているものの、やっぱり根本にあるのは幸宏氏なり細野氏なりの「ポップセンス」なんですよね。それをこの時代に改めて再認識できたってのが、もしかしたら最大の収穫だったかも。

  先頃行われたライヴではCORNELIUSこと小山田くんが参加、来年2月にリリース予定のマキシシングルでは小山田くん、全面参加するとのこと(!)。ってことよりも、噂ではアルバム1枚っきりって話だったみたいだけど、アルバム作って評判良くて、ライヴやって評判良くて、更に本人達も気持ち良かったようで、今後もパーマネントのユニットとして活動を続行してくことが正式に決定したそうです。ま、毎年アルバム出しますとかそういった感じではないと思うけど(それぞれソロだったり他のユニットだったりプロデュース業もあるでしょうし)、また新しい音源が聴ける、そしてライヴを観る機械があるってだけでも俺は嬉しいよ。以前、とあるテレビ番組でのインタビューで「1枚目は顔見せ的カタログ、2枚目でバンドを代表するような名作を発表して、3枚目でケンカ別れで解散、という一般的なバンドが辿る道をなぞっていきたいと思います」と面白がって言ってたふたり。ま、いい歳してホントに3枚目でケンカ別れしたら、それはそれで爆笑モンなので、是非実践して欲しかったりして‥‥嘘ですが。

  ちなみにこのアルバム、avexからのリリースですが、CD-EXTRA対応ってことで無事Copy Control CD(CCCD)を回避。続く2月のマキシもCD-EXTRAでのリリースになるそうです♪



▼SKETCH SHOW『AUDIO SPONGE』
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投稿: 2002 12 16 12:00 午前 [2002年の作品, SKETCH SHOW, Yellow Magic Orchestra] | 固定リンク

2002/12/14

UNDERWORLD『A HUNDRED DAYS OFF』(2002)

ライヴアルバム「LIVE : EVERYTHING, EVERYTHING」から丁度2年振り、オリジナルアルバムだと前作は「BEAUCOUP FISH」になるんで‥‥約3年半振りってことになります、ダレン・エマーソン脱退後(このフレーズもいい加減飽きたなぁ‥‥)初のオリジナルアルバムとなる今作、ダレンの穴を感じさせないといったら嘘になるでしょうけど、個人的には十二分に期待に応えてくれたアルバムだったし、新しい可能性とか魅力を示した素晴らしい作品だと思います。

今更彼等をトランスという怪しいジャンルで括る人はいないと思いますが、そうはいっても非常にトランシーな"Born Slippy"でブレイクしたわけですから、その後もそういった曲を求められ、その度に"Moaner"だとか"King Of Snake"といった、"Born Slippy"にも劣らない名曲を次々と誕生させてきました。で、今作でもそれらの流れを汲む"Two Months Off"や"Dinosaur Adventure 3D"が収録されていますが、過去の名曲に劣らない楽曲だと個人的には思ってます。

ただ、これまでの作品と違って‥‥これは他のアルバム収録曲にもいえることなんですが‥‥1曲1曲に込められている音数が若干減ったかなぁ、という気がしないでもないです。これは単に今のUNDERWORLDの目指す世界感からくるものなのか、それともダレンを失ったことによって生まれる「2人組UNDERWORLD」の弱点なのか‥‥それは受け取る側の感じ方や見方によって変わってくるでしょうけど、俺個人としてはそれを欠点とは思ってないし、逆に2002年という時代を考えた時に何も1995年と同じことをやる必要はないので、これでいいと思ってるんですが‥‥

このアルバムでは過去のようなプログレッシヴな大作からスタートせず、淡々とした感触で"Mo Move"からスタートします。特に気負った感じもせず、逆に肩透かしを食らうかも。カールの唄もバックのパーカッシヴなイメージとは逆に、ゆったりと流れていきます。その後、前述の"Tow Months Off"へと流れ、3曲目のインスト"Twist"へと続きます。これら3曲はどれも、派手というよりは地味に、ユラユラとした感じで盛り上がっていくタイプの曲。特に"Twist"は‥‥過去の彼等はよりプログレちっくでしたが、これはテクノというよりはフュージョンにより近い印象を受けます。リズムトラックは確かにダンスミュージック的なんだけど‥‥もしかしたら、今後彼等はこういう方向性もより強めていくのかもしれませんね。個人的には大歓迎ですけどね(で、またこの曲のライヴ・ヴァージョンがいいんですわ。カールがギターをこれまで以上に弾きまくってて)。

その後、ダウナーなヒップホップ調"Sola Sistim"、新作の中では比較的以前のプログレッシヴ性が若干感じられる"Little Speaker"、UD風ロックンロールとでも呼びたくなる?小楽曲"Trim"、インタールード的な"Ess Gee"(ここでもギターの色が濃いですね)を経て、後半の山場である"Dinosaur Adventure 3D"へ‥‥最後は再びダウナーな"Ballet Lane"、そして徐々に、徐々にと地味に盛り上がっていく"Luetin"と、比較的落ち着いた空気で終わります。

以前程の攻撃モードでないのはアルバムの空気感から何となく判りますが、ここまでアルバムのイメージがジャケットの色合いに近いとは思ってもみませんでした。これまでの彼等って、アルバム毎にそれぞれのジャケットの絵柄や色合いに近いイメージの音を提供してきたと思うんですよ、「DUBNOBASSWITHMYHEADMAN」の頃からずっと。そしてシングル「BORN SLIPPY」の情報としての文字ジャケもらしいジャケットだったし。今回の新作、グレーを基調とした色合い、そして電球(?)に描かれた顔。上手い表現が見つからないんですが‥‥何となく、イメージとピッタリなんですよね、うん。

ライヴを観ても思ったことですが、もはや彼等は完全にクラブという限られたスペースを飛び出して、アリーナを沸かすロックアーティスト(=恐竜)になってしまったなぁ、と思いますね。確かにアルバムではまだ「クラブで回されることを前提に」作られているように感じられる節もありますが、やはり大音量で鳴らした時、これはもはやテクノだとかプログレだとか言ってられない、アリーナクラスで観客を沸かすロックアルバムだなぁと個人的には思うわけです。その辺がCHEMICAL BROTHERSの新作との違いでしょうか。同じようなフィールドで活躍してるようで、実は既に到達点が全然別の地点にあるような気がします。フジロックのグリーンステージでトリを務め、数万人もの観客を沸かしたCHEMICAL BROTHERSですが、やはりあれはテクノのステージでしたし。ところが、UNDERWORLDの場合はカール・ハイドの存在が大きいわけで、あれはもう完全にロックのアリーナショウなわけですよ。見せる・聴かせる・楽しませるの三大要素。そこに「パイロ」や花火といった特殊効果がないだけで、もう既にU2なんかに近い存在になってしまったと言っても過言ではないでしょう‥‥

勿論、それがダレン・エマーソンが抜けた為だ、だなんて言うつもりはありませんし、2人になったUNDERWORLDが目指すべき方向性がそこだったとも思ってません。これは単に、流れとして必然だっただけでは?と思うのです。で、その流れを察したダレンが自ら身を退いた、と。それもごく自然な流れだったと。結果論として語ってるだけかもしれませんが、今の彼等を見、このアルバムを聴き、そしてライヴを体験すると尚更そういう印象を感じるわけです。そういう点から、今の彼等がクラブ系アーティストを好む人達(主に現場主義の人達)から敬遠されるのかなぁ、なんて勝手に解釈してます。

既にこのサイトを開設した頃から「もうUNDERWORLDをテクノだとか、そういう文脈で語るのはやめません?」と言っていた身としてはこの流れ、全然違和感を感じていないし、むしろ今年後半最も聴き込んだアルバムのひとつです、これ。「踊れるか、否か?」‥‥いや、全然踊れるし、問題ないでしょ?? ま、ロックが嫌いなクラバー(死語)にはこれ、キツイかもしんないけどさ‥‥



▼UNDERWORLD『A HUNDRED DAYS OFF』
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投稿: 2002 12 14 04:02 午後 [2002年の作品, Underworld] | 固定リンク

2002/12/13

ミニモニ。『ミニモニ。ソング大百科1巻』(2002)

  2002年のハロプロは(その出来・不出来は別として)とにかく音源を出しまくりでした。2001年はオリジナルアルバムは年末のカントリー娘。「カントリー娘。大全集1」のみだったけど(それすらアルバム用の曲はたった3曲のみだったが)、今年のハロプロはちょっと違う。まず元旦に松浦亜弥が「FIRST KISS」を(11曲中新曲が7曲)、3月にはモーニング娘。が2年振りのオリジナルアルバム「4th「いきまっしょい!」」を(13曲中新曲は8曲)、そして6月にはミニモニ。が今年唯一のユニットでのオリジナルアルバム「ミニモニ。ソング大百科1巻」(16曲中新曲は7曲)をリリースしました(他にもタンポポやプッチモニもアルバムを出しましたが、あれは共にベスト盤だったので、ここではカウントしていませんし、ハワイアンアルバムも既発曲のリアレンジなので同様でした)。

  ご存じの通りミニモニ。は幼稚園児や小学生を中心とした低年齢層に大人気のユニット。正直、ここまで大きくなろうとは当のつんく♂でさえ考えてもみなかったのではないでしょうか。このユニットの大成功が、後のモーニング娘。本体だけでなく、ハロープロジェクト全体にまで低年齢化を進めたわけですから。

  そんな「子供相手の阿漕な商売」と思われがちなミニモニ。ですが、ここに紹介するアルバム「ミニモニ。ソング大百科1巻」が意外に‥‥いや、かなり楽しませてくれる内容だったのは、今年一番の驚きだったかもしれません。こんなに充実した、狂ったアルバムは今年だと他にPRIMAL SCREAM「EVIL HEAT」くらいでしょうか?(ミニモニ。なんかと比べるな!という声が聞こえてきそうですが)

  ドラムンベース的イントロが印象的なデビュー曲 "ミニモニ。ジャンケンぴょん!" なんて、ある種ビッグビートですからね。そんな似非ビッグビートから始まるこのアルバム、続くミニハムず名義の "ミニハムずの愛の唄" では四つ打ちテクノ有り、THE DOORS "Light My Fire" 的サイケなオルガンフレーズ有り、THE VENTURES "Diamond Head"的フレーズ(あるいは寺内タケシのエレキじょんがらか?)有りなごった煮似非テクノ、更に3曲目はハロプロ初のトランスナンバー "アイ~ン!ダンスの唄" ですから。ま、トランスといっても非常にavexトランスですけどね。更に続くは "ミニモニ。ひなまつり!"。オールディーズ風な空気感を持ちながらも、ビッグビート的なノリを持ってますからね。リズムの緩急はあるものの、頭4曲を現代的ダンスチューンの自己流解釈で固めた子供向けアルバム‥‥ある種、「テレタビーズ」と同等の暴力性を感じます。

  更にアルバムはLED ZEPPELIN並みに拡散方向へ進みます。憂歌団的ブルースナンバー "あいらぶぶる~す" では、各メンバーの関西弁を聴くことができます。ミカちゃんが関西弁ですよ!? もうこの時点で狂ってるし。それに続くは "アイ~ン体操"。日本人なら誰もが知ってるコメディアンを迎え、どこまでがマジでどこからが冗談なのか判らなくなるような音楽を繰り広げます。元々音楽に強い志村けんがつんく♂と一緒になって悪ふざけするわけですが‥‥正直この曲だけ判断に困ります。

  音楽的拡散は更に進み、7曲目 "ビタミン不足解消交響曲" ではアヴァンギャルドなジャズ、天才・永井ルイをアレンジャーに迎えた "春夏秋冬だいすっき!" ではBEATLES、E.L.O.、更にはCHEAP TRICKにまで手を伸ばしています。そして9曲目 "すき・すき・きらい・きらい・きらい・すき" ではジェームズ・ブラウンや和田アキ子も真っ青な極太ファンクチューンに挑戦。このテンションは正直、娘。のダンス☆マン・ナンバーに匹敵、いや、ある意味超越してます。

  テクノから始まった音楽の旅は「ダンスミュージック」の原点を辿るという意味でいろいろ拡散方向に進みながらも最終的にはJB的ファンクチューンにたどり着きます。そしてミニモニ。の音楽紀行は更に世界中へと‥‥10曲目 "ミニモニ。のでっかい旅" では応援歌的なマーチ、"お菓子の街" ではタンゴに挑戦。12曲目 "ミニモニ。テレフォン!リンリンリン" で再び独自の路線にたどり着き、そこから更に "ちっちゃなちっちゃな女の子" ではレゲエに進んでいきます。スペイン~東京~ジャマイカ。そして "ミニ。ストロベリ~パイ" ではロックンロール/ポップミュージックの聖地、リバプールへ‥‥全ての音楽を飲み込んだ巨大な存在、ミニモニ。の旅はいよいよ終わりに近づきます。子守歌のような "おはようさん~また明日の唄~" でチルアウトし、"ミニモニ。バスガイド" で旅のガイド役を務めたミニモニ。4人から終着駅に到着したことを告げられる‥‥そこは天国なのか、地獄なのか‥‥

  全てのロックンロール、全てのダンスミュージック、そしてあらゆるポップミュージックを飲み込んだミニモニ。‥‥矢口・辻・加護・ミカの4人だからこそ成せた奇跡。それがこのアルバムであり、このアルバムこそが'80年代以降の日本のミュージックシーンをダイジェスト版にしたものであり、ある人にとっては非常に興味深い優れた作品であり、またある人にとっては最も忌むべきアンチテーゼなのです。

  ‥‥そんな大袈裟なと思ったあなた。確かに大袈裟かもしれません。けど、正直なところ俺はそのくらい曲解してもいい作品だと思ってるんですよ、これを。ある人にとってはとても切実な作品であり、一部の人にとっては非常に暴力的な作品集である、と。それくらい評価されるべきアルバムですよこれは。



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投稿: 2002 12 13 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, ミニモニ。] | 固定リンク

2002/12/11

ZIGGY『HEAVEN AND HELL』(2002)

  SNAKE HIP SHAKESからいよいよZIGGYに戻り、満を持しての新作。オリジナルアルバムとしては通算14作目、SNAKE HIP SHAKESのラストアルバムとなった前作「NEVER SAY DIE」から数えても7ヶ月しか経っていないのに、この多作振り。しかもその間に森重氏、ソロアルバムもリリースしてるし。一体どうなってんだ!?

  で、このZIGGY復活作と呼ぶできであろう新作。誰しもが復活した彼等に「従来のZIGGYらしさ」を求めるんだろうけど‥‥ハッキリ言って、SHS時代にも演奏されていたシングル曲である5曲目 "HEAVEN AND HELL" まであのポップで煌びやかなロックナンバーは出てこないんだわ‥‥いや、ここに収められている10曲どれもがZIGGYらしいポップで親しみやすいメロディを持っているんだけど、それらの楽曲を構築する演奏がかなりハイパーテンション‥‥つまり、これまでで最もパンキッシュなのだ。それでいて硬質なリズム隊。何だかZIGGYともSHSとも違う、またまた突然変異的な作品‥‥なんてことも言えるだろうけど、ちゃんと聴けばやっぱり頭からお尻まで、正真正銘のZIGGYサウンド。

  5月に出演したイベントで、森重は「今作ってるZIGGYのアルバム(今作)は、いい意味で『ZIGGYらしくない音』のアルバムになる」と発言していて、実際そこで演奏された新曲3曲の内、完全未発表の新曲2曲("AGAIN" と "明日は誰も知らない")は、SHSの曲を更にアップテンポにして、演奏ももっとパンキッシュにした印象があったんで、個人的にはそれなりの覚悟ができてたんだけど、いざ出来上がったアルバムを聴いてみると、のっけから自分の予想を遙かに超えるテンションでビックリ。

  アルバムはいきなりJOEのツーバスがドコドコ暴れまくる "MY CONVICTION" からフルテン状態でスタート。そのまま更にハイテンションでハイエナジーな "ONEWAY TRAIN ~ROCK'N'ROLL SI STILL ALIVE~" へと流れていく。そしてそのテンションを維持したまま3曲目 "AGAIN"。ホント、頭3曲を聴いてみんなビックリするんじゃないでしょうか? 多分ZIGGYと言われて "GLORIA" や "I'M GETTING' BLUE"、"JEALOUSY" の彼等しか知らない人が聴いたら、絶対に同じバンドだと思わないだろうな。しかもこれを40歳に手が届きそうなオヤジ共がバリバリのメイクと衣装で身を固めてプレイするんだから‥‥海外にはROLLING STONESもAEROSMITHも、それこそ同年代のGUNS N'ROSESもHANOI ROCKSもいるけど、ここ日本にだってこんなに活きのいいオヤジ共がいるんだって事にみんな気づいて欲しいなぁ。

  テンション的にはちょっと一段落したような気もするけど、それでも他の曲に引けを取らない松尾作曲のメロコア調 "SO HAPPY"、既に名曲の仲間入り "HEAVEN AND HELL" で前半終了。ここまで勢いであっという間に聴ける。っつうか、気づいたら終わってるような、そんな勢い。

  6曲目にしてやっとテンポダウン‥‥かと思うと、実はかなりヘヴィだという "CELEBRATION"、昨今のメロコア調にZIGGYが挑戦しましたといった印象を受ける(かといって、それが全然狙った感じしなくて、ZIGGY風になってる辺りがさすが) "SLAVE OF LOVE"、如何にも松尾らしいスライドギターが入るちょっと初期の彼等っぽい松尾作のシャッフルナンバー "サダメノツルギ"、ベースの津谷が正式メンバーとなって初めてZIGGYの為に書いた高速チューン "明日は誰も知らない"、ZIGGYらしい潤いあるメロディーが詰まった "希望という名の花" というバラエティに富んだ後半。前半はとにかく勢いで攻めて、後半に多彩さを見せつける。全10曲でトータルランニング36分、最も長い曲でも4分18秒(!)。この多彩さといい、短い中にいろいろ詰まってる感じといい、ファーストアルバムを思い出したのは俺だけでしょうか?

  確かに「らしくない」といえばそれまでだし、「これまでで一番パンキッシュ」の一言で片づけることもできるんだけど、こうやって改めて聴いてみると‥‥実はかなりいろんな要素の入った、「2002年のZIGGY」を象徴する音のアルバムなんだなぁということを再認識しました。いいバンドが作った「普通にカッコイイ」ロックアルバム。この「普通にカッコイイ」アルバムが今年、どれだけあったことか‥‥変に実験に走ったりせず、且つ常に同じ事の繰り返しにもならない。特にここ数年‥‥現在の4人になってからの彼等は枚数を重ねる毎に更に成長してる印象を受けます。

  決していいことばかりじゃなかった15年。たった1曲の大ヒットが彼等のその後の運命を変えてしまい、メンバー脱退~2人組ユニットとして再始動~よりポップ寄りの方向へ~超絶ヘヴィメタルドラマー加入~オリジナルギタリスト復帰~再起を賭けるも、メインソングライターのひとりであるベースが脱退~バンド名の法的使用制限による変名バンド始動~10年前は武道館をソールドアウトにしていたバンドが、今ではキャパ2~300程度のクラブ回り‥‥正しく「HEAVEN AND HELL」を地でいってるわけです。

  今のZIGGYが「HEAVEN」にいるのか、それともまだ「HELL」にいるのか、それは誰にも判りません。そもそも何をもってそう呼ぶのか‥‥という認識の違いもあるし。けど、間違いなくZIGGYというバンドのテンションは過去最高。これだけは胸張って言える。そんなZIGGYはもうじき、更に変化球的アルバム「HEAVEN AND HELL II」をリリースします。相反する内容ながら2枚で1組、正に対を成す作品になることでしょう。こっちも楽しみだ。



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投稿: 2002 12 11 12:49 午前 [2002年の作品, ZIGGY] | 固定リンク

2002/12/06

DEF LEPPARD『X』(2002)

DEF LEPPARDの21世紀最初を飾るアルバムは、デビューから22年目にして10作目となる「X」。文字通り「エックス」と読むことも出来れば、ローマ数字での「10」を意味するものでもある。しかもジャケットにはロゴマークは控えめに、全体にでっかく筆書きされたような「X」が。白地に黒。インパクトからいえばバッチリだよね。その昔、プリンスが無題・クレジットなし・ジャケットその他も全て真っ黒という通称「BLACK ALBUM」ってのを作ったり、METALLICAが黒地にロゴと蛇のイラストというセルフタイトルアルバムをリリースしたことがあったけど、それに匹敵するものがある。つうかこれ、過去のLEPPSのイメージを覆すために用いられたような気が‥‥

ご存じの通り、'83~'90年代初頭の彼等の勢いは本当に凄いものがありました。今の10代のファンは知らないだろうけど、当時マイケル・ジャクソンの「THRILLER」によって1位を取ることが出来なかった「PYROMANIA」が600万枚(当時)、4年振りに発表された「HYSTERIA」はリリースから1年経ってからアメリカで1位を取って、結果1,000万枚近いセールスを記録。グランジが席巻していた'92年、「ADRENALIZE」は全米初登場1位を記録。ドラムのリック・アレンが交通事故によって左腕切断という事故に遭ったり、メインソングライターでありギタリストであったスティーヴ・クラークがアルコール依存が原因で亡くなったり等、悲劇と引き替えに彼等は天文学的な成功を手にしてきたわけですが、「ADRENALIZE」以降‥‥現在のメンバー(ジョー・エリオット、フィル・コリン、リック・サヴェージ、リック・アレン、ヴィヴィアン・キャンベル)になってからは結構順調にリリースを重ねている割には、どんどんセールスを落としているんですよね。ここ3作、全米ではアルバムがトップ10入りすることもなく、大きなシングルヒットもなし。BON JOVIが初登場2位という逆転劇を繰り広げた2002年、何故LEPPSは過去のような成功を収めることが出来ないのでしょうか?

理由は幾つかあると思いますが、一番大きな理由はズバリ、彼等がアメリカ人ではないという点でしょう。えっ、だって彼等は'80年代はバカ売れだったんでしょ?何で今更!?とお思いでしょう。そう、確かに彼等は過去異常なほどに売れていた。しかしそれは純粋に楽曲が評価されたのと、丁度大きな波が押し寄せていたHM/HRムーブメントに思いっきり乗ることができたから。しかし'90年代以降、ハードロックが'80年代以上の成功を収めたでしょうか? それ以前にグランジ以降、アメリカではロックが市民権を得るのに相当苦しんでいたのです。R&Bやヒップホップがチャートの上位を占め、過去ヘヴィメタルと呼ばれていたジャンルのバンドは、新たにヒップホップ的要素やラップボーカルを取り入れ、メタルのようでメタルでない「ロックみたいなヒップホップ」としてチャートを席巻したのでした。

しかし、時代は少しだけ動きつつあります。そう、CREEDやNICKELBACK、TRAIN等といった純粋に楽曲で勝負するロックバンドが再び脚光を浴びるようになったのです。BON JOVIなんて正にここに入れてもおかしくない存在ですよね?

'90年代後半のLEPPSは非常に振り幅の大きい作品をふたつ発表しています。グランジムーブメントを彼等なりに消化し、これまでになく生々しくダークな「SLANG」と、'80年代の彼等を踏まえた上での集大成と呼べる「EUPHORIA」です。そういう極端な作風のアルバムが2作連続で過去のセールスの三分の一にも及ばなかったのです。そこで彼等はバケーション中、各自ソロ活動を行ったりしました。特にジョーとフィルによるCYBERNAUTSはデヴィッド・ボウイのカヴァーバンドであるにも関わらずアルバムもリリースし、来日公演まで行いました。その後、再びバンドは集結し、この記念すべき10作目のアルバムについてミーティングを重ねたそうです。そこでは「ポップの定義」だったり「コマーシャル性」について話し合われたそうです。そして5人の意見が一致し、『「HYSTERIA」みたいな全曲シングルカットできるようなポップでコマーシャル性の高い曲が詰まったアルバム』を想定して、ソングライティング~レコーディングに挑んだそうです。

これは過去、最も難しい挑戦・実験だったのかもしれません。ハードロックバンドとしてデビューし、「ポップなハードロックバンド」として成功し、'90年代にはそれが足枷となっていろいろな実験をするものの、最終的には「ファンが最も望むLEPPS」を現代的にアレンジしたアルバムを制作してきた彼等が、ある意味ロックであることに拘らず、ひたすら「ポップ」なものを作る。一歩間違えば過去のファンを的に回すことになり得るこの挑戦。まず、「ポップ」とは何かという命題と戦わなければなりません。BACKSTREET BOYSのようなアイドルソングをポップと呼ぶのか、LIMP BIZKITのようなファンキーで親しみやすいラップメタルもポップと呼べるのか、それとも‥‥彼等が出した結論は、このアルバムの13曲で表現されています。

先に挙げたようなCREEDやNICKELBACK的イメージを彷彿させるトップナンバー "Now" からアルバムはスタートします。これはポップというよりも、かなりヘヴィな作風ではないでしょうか? 過去、こういったミディアムヘヴィチューンからスタートするアルバムが2枚あります。ひとつは「HYSTERIA」であり、もうひとつは「SLANG」。もっとも「SLANG」の方はヘヴィといっても、インダストリアルサウンドによるヘヴィさが強かったので、ここではどちらかというと「HYSTERIA」に近いのかも。けど、あそこまでヘヴィメタリックな硬質感は皆無。どちらかというと、もっと柔らかくて自然体。これまでみたいな長くて速弾きしまくりのギターソロは皆無(それはアルバム全体に言えることですが)。

続く "Unbelievable" は2曲目にしていきなりバラード。しかもLEPPSのメンバーが作詞・曲の全く絡んでいない‥‥過去そんなことが考えられたでしょうか? これも「ポップ」であることへの挑戦なのでしょうね。3曲目 "You're So Beautiful" は過去の "Animal" や "Promises" にも通ずるタイプ。こういう曲をファーストシングルにすればよかったのにね(ちなみにファーストシングルは "Now")。続く "Everyday" も過去のLEPPSをイメージさせるタイプ(偶然にもBON JOVIの新曲も同タイトルでしたね)。そして2曲目のバラード "Long Long Way To Go" はストリングスを取り入れた哀愁系。'80年代の "Bringin' On A Heartbreak" や "Love Bites" みたいに絡みつくような情熱系ではなく、もっとサラリと聴ける曲。

ポップソング的なナンバーが続く前半、6曲目にして過去のハードロックチューンにも引けを取らない "Four Letter Word" が登場。モロにAC/DCだよね、これ。グラムなAC/DCって印象。サビになると相変わらずLEPPSしてるんだよね。これも彼等なりの「ポップ」なのか、それとも「ロックバンド」としての拘りなのか。ライヴで盛り上がる1曲。続く "Torn To Shreds" もヘヴィなイントロを持った曲なんだけど、歌に入るとちょっと穏やかに。で、サビでまた爆発というタイプ。そのまま風変わりな "Love Don't Lie" へ。ループを取り入れてるけど、「SLANG」時代程あざとくなく、ごく自然に取り入れられてて、全然気にならない。この辺の曲の並びはちょっとロック色が強めかな。

9曲目は "Gravity" もシーケンスサウンドが入った、ちょっと軽めに始まってサビでロックするタイプ。サビのバンドサウンドがなかったら、完全にその辺のポップソングかも。要するに曲(メロ)さえしっかりしてれば、後はアレンジ次第でどうにでもなるってことか? 続く "Cry" はLEPPS的なヘヴィリフを持ったサイケ調ナンバー。リズムパターン(ベースの刻み方やギターとベースのシンコペーション)が、モロに過去のLEPPSしてて、安心して聴ける1曲。つうかこれは完全にポップソングじゃないでしょ? 前作や「ADRENALIZE」に入ってたとしても違和感ないもん。11曲目は "Girl Like You"。曲がポップな割りには、実はバックのバンドサウンドは結構ヘヴィだという、その対比が面白い。しかもリフはサンプリングされたものなのかな? 面白い曲だと思います。

12曲目はこのアルバム3つ目のバラード "Let Me Be The One"。ここでもストリングスが導入されていて、かなり聴かせる曲になってます。考えてみれば、こういう感じのバラードってLEPPSに今までなかったような気が‥‥前出の2つのバラードは共にLEPPS以外のソングライターによるものなんだけど、この曲は完全なLEPPSオリジナル。なのに、前の2曲よりも過去のLEPPSっぽくないかも。いや、サビはLEPPSしてるんだけど。不思議な感じ。

本編最後には「スティーヴ・クラークのことを考えながら作った」という "Scar"。アルバム中、最も過去の彼等らしい長いギターソロが登場するのはこの曲だけ。イントロのフレーズとかソロが、ホントにスティーヴが弾いてるかのよう。コード使いやサビのコーラスなんて、モロに「HYSTERIA」に入ってそうなタイプだよね。いろいろ新しい試みをやっているものの(勿論、どれも好きという前提で)一番好きな曲は?と聞かれれば、迷わずこの曲を選んでしまいます‥‥悲しいかな、やはり俺はオールドタイプのLEPPSファンなんだよね(日本盤には他に2曲ボーナストラックが入ってるんだけど、アルバムの流れを考えてここでは割愛)。

確かに過去には考えられなかったような「ロック色が薄い」ポップソングもあれば、メンバーがソングライティングに全く携わっていない楽曲まであり、プロデューサーも曲毎に変えている。そういう意欲的な姿勢で制作されたこのアルバムだけど‥‥俺にとってはやっぱり、全然過去と変わらないDEF LEPPARDなんだよね。ま、だから好きっていうのもあるんだけど‥‥ちょっとだけ残念なのは、過去必要以上に拘っていた「英国色」‥‥ブリティッシュ・ロックへの拘りがちょっと薄らいだかな、と。非常に普遍的なポップソングに拘るのと引き替えに、「イギリス人らしさ」はこれまでで一番後退してるような気がします。それはアメリカで再び成功を手にする為なのか、それとも「一般的な普遍性」を意識した為なのか‥‥ま、ジョーは「全然そんなことない!どこを取ってもvery britishじゃないか!!」って否定するんでしょうけどね。

1曲1曲がコンパクトな為、アルバムのトータルランニングが50分にも満たない(ボーナストラックを除く)点はラジオでのエアプレイを意識してのことだろうけど、1曲くらいライヴを意識した6分7分あるようなプログレッシヴナンバー(過去でいえば "Gods Of War" や "White Lightning"、"Paper Sun" 等)があると「ロック」アルバムとしては引き締まったんだろうけど、ま、ポップというものに拘った結果がこれなら、上出来じゃないでしょうか? 過去の作品と比べれば決して傑作と呼べるような作品ではありませんが、それでも「今を生きるバンド」が時代性を意識して作った作品としては高品質で賞賛されるべき1枚だと思います。そして、もっと売れるべきです。

リリース後半年近くが立ちましたが、結局このアルバムはヒットには程遠いセールスしか残していません。レコード会社はロック以外のアーティストだったり、売れ線であるU2やBON JOVIの新作に力を入れ、LEPPSを無視しつつあります。それでも彼等は『「HYSTERIA」だってブレイクするまでに8ヶ月かかった。まだまだ勝算はある。だってこんなにいい曲ばかりなんだから』と言っています。11月に日本公演を終えた後、来年2月から再びアメリカツアーがスタートします。それに合わせてアルバムから新たにシングルをリカットする予定もあるとか。恐らくバラードで攻めるんでしょうけど、さぁこの「ヨーロッパ人達」がアメリカという国でどこまで善戦するか、これからが見物です。



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投稿: 2002 12 06 08:10 午前 [2002年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2002/12/04

SOFT BALLET『SYMBIONT』(2002)

  ソフト・バレエ、7年振りの復活。正直冗談だと思いましたよ。夏前にサマソニのメンツが発表になった時、「SOFT BALLET」の名前を海外のサイトで見つけて、その時は「SOFTBALL」の間違いじゃねぇの、サマソニだけにSOFTBALLならありそうだしな、とか思ったんだけど、いろいろ調べるうちに、春先にあった森岡賢のライヴか何かで「ソフバで再び動く」というような発言をしたとか、endsが活動休止状態になったとか、確かにメンバー3人が再び活動再開に向けて着々と動き出してるような様子は伺えたんだけど‥‥正直信じられなかったし、そこまで熱くはならなかった‥‥いや、嬉しかったんだけどね。

  個人的にソフバというと、アルファ時代‥‥「愛と平和」までしか聴いてなくて、何故かビクターに移籍してからのアルバムは今までちゃんと聴いてなかったんだわ。そりゃ、シングルになった曲とかはPVがかかるような番組で目にしてたけど、何故か興味が薄れて。単純に初期のコンセプトであった「エレクトロニック・ボディ・ビート」がたまたま自分的にツボだったってのが大きいんだけど。

  でね。最近‥‥サマソニ後、ビクター時代の3枚も含めて全アルバムを通して聴いたんですわ‥‥いや~、本当に申し訳ないっつうか。全部ツボでした。何でこれをもっと早くに聴いてこなかったんだろうね、と本気で後悔。7~8年前の俺、何やってたのさ!?(って考えてみたら、最もその手の音とかけ離れたものを聴いてた頃だったしな)

  そんなわけで、7年振りに復活したソフバのニューアルバム。こんなに早く出るとは思ってなかったのでビックリ。サマソニの時点でほぼ完成していた感じだね。あの復活ライヴでも既にここから5曲("OUT"、"DEAD-END GAZE"、"メルヘンダイバー"、"BIRD TIME"、"JIM DOG")演奏していて、初期の名曲は皆無。他はビクター時代の曲を3曲。かなり挑戦的且つ実験的なステージだったわけだけど、俺は一発で魅了されちまったんだわ。いやーマジでやられた。初期のライヴビデオとかは観たことあったけど、まさかこんな事になってるとは‥‥ゴスだとかビジュアル系だとか、そんなちっぽけなカテゴライズいらないよな。ステージの真ん中にはデカダンなイメージの遠藤がいて、向かって左にはヘラヘラした、10年前と全然変わってない森岡がいて、右側には前進黒のレザーで、頭にはSLIPKNOTばりのマスクを被ってギターを持った藤井がいて。この3人が並んで立っただけでも凄い空気なんだけど、更にライヴになるともう、ねぇ‥‥言葉に言い表せない程のカッコ良さなわけよ。

  そんなビジュアル面以上に、更に凄いことになってるのが音の方で。ソフバは既に'90年代初頭に、MINISTRYやNINE INCH NAILSがまだ日本で全く騒がれていなかった頃から、あれに匹敵するような音楽をやってきたわけで、活動停止前の「FORM」なんて今聴いても全く古くなってない程なのよ。で、今回のアルバム。前作から7年という月日が流れているものの、確かにあそこからの続きと呼ぶこともできる。けど、この7年ってのはかなり大きくて、例えば彼等がやってるようなテクノポップ的なものがメインストリームになってしまったり、それこそUNDERWORLDやCHEMICAL BROTHERSのようなグループから、ここ日本にもBOOM BOOM SATELLITESのようなユニットまで登場してるわけです。そういう事実を踏まえつつ、このアルバムは制作されているような印象を受けます。時代感覚云々より、この7年の空白を埋めるような、それでいてその7年間の音楽を総括するような音。過去のように時代を先取りしてるような感覚はないんだけど、安心して聴けるアルバム。ちょっと例え的にどうかと思うけど‥‥元YMO組によって結成されたSKETCH SHOWに非常に近いイメージを受けます。

  ケミカル "Setting Sun"的な"BIRD TIME"からアルバムは幕を開け、これまでにない程に攻撃的なオープニングを飾ります。続く"JIM DOG"もテクノポップというよりも、完全にロック。そう、今回の楽曲クレジット。全て「SOFT BALLET」名義になってるんです。過去は森岡、藤井がそれぞれ作曲し、遠藤が作詞というパターンだったんですが、それぞれがソロとして過ごした7年間、各自ソングライターとしても以前よりも成長しているはずだから、絶対に各自いろんな曲を持ち寄ってるはずなんですよ。ところが、作詞にしろ作曲にしろ、全て「SOFT BALLET」名義。まぁ曲を聴けば「これは森岡だな」とか「これ絶対にフジマキ!」ってファンは判るんですが‥‥歌詞がね‥‥過去のソフバからは考えられない歌詞。つうかこれ、endsじゃんか‥‥もう、それが一番の衝撃でしたね。いや~、古くからのファンはどう思ってるんでしょうね、これらの楽曲。

  当然、過去のソフバ的ナンバーもあるし、"LOVE JUNK"みたいなMARILYN MANSON的シャッフルナンバーもある。"メルヘンダイバー"はシングルの2テイクとも違うアルバムバージョンで、一番 「メルヘン」って言葉がピッタリなアレンジかも。ただ、イントロや間奏で流れるブラス系のシンセ音が脳天気過ぎて‥‥しかもこれ、「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」のメインリフに使ってる音と同系統じゃない? もうね、アルバム聴いててこの曲になるとどうしても苦笑いしちゃうし。

  過去にもこういう感じの藤井ナンバーはあったけど、ここでは更に今っぽく‥‥RADIOHEAD以降とでもいいましょうか?的アレンジになってる"TOO FAT TO UGLY"なんかもあって、ホントに飽きさせない。森岡が「この3人にしか作れない、大人のテクノポップ」というように復活ソフバを表現したけど、正にそんな感じ。YMOが一度だけ再始動した時、多くのファンがあの「早すぎたラウンジサウンド」に「踊れねぇよ!」と怒ったり落胆したりしたと思うんですが(しかも東京ドームでのライヴじゃ、皆が求めるパブリックイメージ的楽曲を排除してたしね。そりゃ、俺もドーム行って正直ガッカリしましたよ)、ソフバの場合は我々が思い浮かべるソフバ(但し後期)と、彼等3人が「過去の焼き直しじゃなくて、今だからこそこの3人でやれる音」を想定したソフバの、丁度中間にあるんじゃないでしょうか?

  多分、このアルバムを聴いて一番喜ぶのは、'90年代に活躍してた頃を知らず、先のサマソニでたまたま彼等に触れてヤラれてしまった若いファンや、活動停止前は意図的に避けて通ってきて、ここ数年こういう音にハマってしまった人達じゃないでしょうか? ある意味、俺も後者に近いんですが、ホントいいですよ。アッパーというよりはダウナー、だけどポップみたいな。「テクノ」ではなくて、完全に「テクノポップ」ですよね。「ダンスミュージック」というよりは、完全に「ロック」、いや「ポップ」。まぁそんなカテゴライズは最初に必要ないって言いましたけどね‥‥

  もしかしたら、過去のどのアルバムよりも一番聴きやすいアルバムかもしれませんね。そういう意味では、まだ彼等の音に接したことのない人、是非このアルバムから聴いてみては如何でしょうか? そして行けそうだったら、活動休止に合わせてリリースされた2枚組ベスト(初期の曲をリテイク&リミックスしてるお得盤)「SOFTBALLET」に手を出してみるのがいいでしょう。ベスト盤から聴くよりも、まず最新作から聴きましょう。絶対にハマりますから!

  あ‥‥最後に。アルバムには3人の他にゲストミュージシャンも参加してます。お馴染みの成田忍(Gt)や、藤井の奥方である濱田マリまでコーラスで参加しています。で、ここでちょっと気になる名前が‥‥ベースで「TATSU」という名前の人が参加してるようなんですが‥‥俺が知ってる「TATSU」っていうと‥‥GASTANKのTATSUを思い出すんですけど、もしかして彼ですか!? あ‥‥でもGASTANKのTATSUはギタリストだしな‥‥他に最近「TATSU」っていうベーシスト、いましたっけ?? すっげー今気になってるんですが。いや、ソフバとGASTANKって意外と合いそうな気がするんだけど‥‥。



▼SOFT BALLET『SYMBIONT』
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投稿: 2002 12 04 12:00 午前 [2002年の作品, SOFT BALLET] | 固定リンク

2002/12/03

MANIC STREET PREACHERS『FOREVER DELAYED : THE GREATEST HITS』(2002)

去年(2001年)春にリリースされた6枚目のオリジナルアルバム『KNOW YOUR ENEMY』リリース時点で、既に「次のアルバムはグレイテストヒッツになる」と発言していたマニックスの面々。同年夏のフジロックでのステージではそれに先駆けるかのような、正しくグレイテストヒッツと呼ぶに相応しい内容を我々に提示しました。その後、新作に伴う単独来日公演は行われず、アルバムに関する噂話だけが一人歩きする状態が1年以上も続きました。当初昨年の今頃には既にリリースされているはずだったこのアルバム、結局は2002年という『GENERATION TERRORISTS』リリースから10年経った年にリリースされることになりました。あれから10年‥‥マニックスにとっても、そして俺にとっても決して短くはない時間です。あの頃20歳だった俺は既に30歳を超え(それはマニックスの4人にとっても同じことですが)、まさかアルバムやシングルを連発し、本当に「英国を代表する国民的バンド」にまで成長するとは思ってもみませんでした。そして、メンバーが4人から3人になってしまうことも‥‥

このアルバムには、過去マニックスがリリースしてきたシングルの中から18曲が収録されています。実際にはもっと多くのシングルが発表されていますが、今回はオフィシャルサイトを通して人気投票を行い、その上位18曲がここに収められたということらしいです。更に2曲、このアルバムの為に新曲も収録されています。

今回は珍しく、自分とマニックスとの10年間を回想する意味で、全曲解説をやってみようかと思います。とはいっても、楽曲のデータ解説等はせずに、その曲を聴くと思い出すこととか、自分とマニックスとの関わりとか、そういった駄文を書いていきますので、ちょっとこれまでのマニックス・レビューとは違った感じになると思いますが、最後までお付き合いください。


M-1. A Design For Life(4th AL『EVERYTHING MUST GO』)
凹んだ。最初にシングルを手にした時、あのシルバーとゴールドの2枚のジャケットが何か嫌な感じだったし、実際必要以上にメランコリックな曲調が嫌でも「あの出来事」を思い出させた。今でこそ大好きな1曲だけど、受け入れられるようになるまで相当時間がかかった。多分、そう感じたオールドファンって多かったんじゃないかな?

M-2. Motorcycle Emptiness(1st AL『GENERATION TERRORISTS』)
「雨」、「雨の東京」。PVのイメージも強いんだけど、この曲を聴くと当時専門学生だった自分が雨の中、この曲を聴きながら学校へ向かってた頃を思い出す。神田に学校があったから、お茶の水とか秋葉原をこの曲聴きながら雨の中歩き回ったり‥‥あ、イギリス滞在中も雨のウィンザーとかをこのアルバム聴きながら歩いたっけ。

M-3. If You Tolerate This Your Children Will Be Next(5th AL『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』)
「別れ話をしてる車の中」ってイメージ。って全部実体験談じゃねぇか、これ。何かこの曲を聴くと、11月の寒い夜、つき合ってた子と車の中で別れ話を何時間もしたことを思い出すよ。曲とは全然関係ないことだし、この曲の恨みとかもないんだけど‥‥ちょっと鬱になるね。

M-4. La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)(2nd AL『GOLD AGAINST THE SOUL』)
で、その子と付き合い始めた頃によく聴いてた曲っていう‥‥ねっ。当時、東京駅の構内でバイトしてて、朝6時半から仕事してたんで、朝の5時40分頃には家を出て‥‥まだ薄暗い中、この曲が入ったアルバムを聴きながら出勤したっけ、彼女起こさないように身支度してね。初めて観たマニックスのライヴもこのアルバムの時だから、特に思い入れのある時期。

M-5. There By The Grace Of God(新曲)
メロはマニックスまんま。結局何も変わってないってことか。装飾部分はかなり大人になった感じだけど、唄い始めた瞬間、自分の中で何かのスイッチが入る音が聞こえるんだよね‥‥マニックスの曲を聴くといつもそんな風になっちまう。それにしても、ホントにこの曲の雰囲気、80年代末~90年代前半のDEPECHE MODEみたいだね?

M-6. You Love Us(1st AL『GENERATION TERRORISTS』)
テレビ東京系列で放送された、水着の女性タレントが高台の上で尻相撲をする番組「ヒップでダダーン」テーマ曲。いやマジで。そんなこと、今更誰も覚えてないだろうけど、この曲を聴くと嫌でもあの番組を思い出してしまう自分がちょっと嫌。っていうか、毎日観てました。大好きでしたマジで。

M-7. Australia(4th AL『EVERYTHING MUST GO』)
アルバム最初に聴いた時、殆ど印象に残らなかった曲。普通のストレートなロックチューンって感じで、これだったらまだ「Further Away」の方が印象に残ってた。けど、それがガラリと変わったのはライヴビデオ『EVERYTHING LIVE』を観てから。ああ、ライヴだとこんなにかっけーんだ、って。けど今でもそんなに好きな曲ってわけでもないかな。もっと捻った曲の方が好きだから俺。

M-8. You Stole The Sun From My Heart(5th AL『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』)
この曲聴くと、夜の海岸道を時速100キロくらいで飛ばしたくなる。ていうか、ホントに飛ばしてましたが。サビに入る前の、ディストーションギターが爆発するような感じが大好き。サビでがなるジェームズも好き。唯一ダメなのが、この曲が入ったアルバムを聴くと、「別れ話w(ry

M-9. Kevin Carter(4th AL『EVERYTHING MUST GO』)
この曲はPVでトランペット吹くショーンのイメージが強いな。あと、CDだとポップソング色が強いのに、ライヴになるとかなり強靱なロックソングとして機能してるっていうとこが好き。この曲もそうだけど、リアルタイムでリリースされた頃は殆ど聴いてなくて、出てから1年近く経ってからちゃんと聴いたって感じなので、リリースされた頃はこの曲も殆ど印象に残ってなかったんだよね、3曲目だったにも関わらず。

M-10. Tsunami(5th AL『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』)
後にサザンが日本語詞でカバーしたことで有名な1曲‥‥ってことはなく、単にこっちのほうがタイトル付けるの1年以上早かったってだけ。『THIS IS MY TRUTH~』ってアルバムは何も悲しい思い出だけじゃなくて、新しい出会いの季節を思い出すアルバムでもあり、それはその後つき合うことになる女性だったり、このサイトだったり、そしてサイトを通じて知り合ったかけがえのない友達であったり。そして、6年振りに再会したマニックスの3人だったり‥‥そういったことが走馬燈のように思い出されます。

M-11. The Masses Against The Classes(none-album track)
この曲っていうと、俺の中では「大阪」っていうイメージ。いや、丁度この曲出る前に今の会社に入って、リリースされた後に大阪に1週間程飛ばされたんですわ。テレビもない生活の中、毎晩向こうの会社の人間と呑んで、帰ってから寒い部屋の中ひとりでこの曲やモーニング娘。「恋のダンスサイト」なんかを聴いて、闘争心を高めてたんだよね‥‥何か違うような気が‥‥。

M-12. From Despair To Where(2nd AL『GOLD AGAINST THE SOUL』)
命がけでやってたバンドが空中分解した頃にリリースされた曲。マジで凹んだんだよね。だって、(マイケル・モンローに倣って)腕にバンド名のタトゥー入れようと思った程、思い入れのあったバンドだったから。音楽的にも煮詰まってて‥‥そんな時にこの曲が出て、バカ一辺倒だったはずのマニックスが真剣に「音楽」に取り組みだした‥‥って感じで励まされるどころか、逆に焦らされて。で、とにかく動こうってことで友達のバンドにヘルプで参加したり、アコギ1本持って路上に出たり‥‥その後の音楽活動の原点だよね、そういう意味では。今でもマニックス・ナンバーの中で5本の指に入る好きな曲。

M-13. Door To The River(新曲)
もう1曲の新曲。随分と穏やかな曲だなぁ‥‥何かU2の曲みたいだ。『ZOOROPA』とかのエンディングに入ってても違和感ないかも。後半の盛り上がるパートになると、あぁ、やっぱりマニックスの曲だわ、と一安心。大袈裟過ぎる程のストリングスは相変わらず。無意味に過剰っていうか。ま、そういうところは(方向性が変わっても)デビュー当時、いや、その前から何も変わってないってことか。前作とは違った方向を見せる2曲だね、新曲は。

M-14. Everything Must Go(4th AL『EVERYTHING MUST GO』)
俺が『EVERYTHING MUST GO』アルバムを再評価する切っ掛けとなったのがこの曲。後半の「ハ~ッピィ~!」っていうジェームズのシャウトに鳥肌。そうそう、この曲で99年の来日公演はスタートしたんだった。身体の大きくなったジェームズがこの曲でギター弾きながらピョンピョン跳ね回ってたのが印象的。パンク版フィル・スペクター・サウンドとでも呼びましょうか、これは‥‥名曲ですね。

M-15. Faster(3rd AL『THE HOLY BIBLE』)
唯一サードアルバムから選ばれた1曲。つうかこの曲を選ばずして何を選ぶっていうの!? まぁサードアルバムから1曲選ぶってのは難しいよね。俺的にはあのアルバム自体、全体で1曲みたいな考え方だから。別にコンセプトアルバムってわけじゃないけど、13の音の塊っていうイメージがあるから。バンドでもコピーしたなぁ‥‥まともに歌詞覚えてなかったけど。

M-16. Little Baby Nothing(1st AL『GENERATION TERRORISTS』)
アメリカの(元)有名ポルノ女優、トレイシー・ローズがデュエット相手。中学生の頃、初めて観た洋モノ裏ビデオがトレイシー・ローズのだったな。あれで当時10代だったんでしょ??‥‥考えられねぇよマジ。その頃好きだった子に『GENERATION TERRORISTS』を貸して、返してもらう時に「この曲が一番好きだった」って言ってくれたっけ。で、「ところでトレイシー・ローズってどんな歌手なの?」と質問されて答えに困ったっけ‥‥。

M-17. Suicide Is Painless (Theme From MASH)(none-album track)
ファーストが出た半年後に急遽リリースされたカバー曲。リリースされた経緯(NMEの企画盤用)を知らず、タイトルから深読みして「ああ、終わりに向かってるんだな‥‥」としんみりしてたあの頃の自分がバカらしいッス。アルバム以上にメタリックなアレンジになっててビックリ。何かこういうガンズとかがやりそうなアレンジ(エンディングでテンポアップみたいなの)好きだよね、初期のマニックス。そこが如何にも「ロックに憧れる田舎の少年達」って感じで好感持てたんだけど。

M-18. So Why So Sad(6th AL『KNOW YOUR ENEMY』)
考えてみたら、前作からはこれ1曲なのか‥‥勿論好きな曲だけど、もっとロックした曲が欲しかったなぁ。けどこうやって20曲並べてみると、如何にこのバンドがパンク一辺倒ってわけじゃなくて、幅広い音楽を10年の間にやってきたかが手に取るように判るよね。これなんてぶっちゃけ、「Everything Must Go」の発展型だよね、「パンク版フィル・スペクター・サウンド」的楽曲って意味で。このアルバムが出た後に前の彼女と別れるわけだけど(ってみんなが知ってることを前提として話してる感じだな、こりゃ)‥‥何か、またバンドがあるひとつの方向(音楽的にではなく、バンドの進むべき道という意味で)に向かって走り出したなぁ‥‥って内心思ってた。で、俺もそれに便乗して乗っかって、その方向に突っ走ってやろうかな、とか無茶なことも考えたりして。まぁそれは今でも思ってることなんですけどね。

M-19. The Everlasting(5th AL『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』)
‥‥これ、反則! こんなブッタ切り方‥‥6分ある曲を4分に縮小してしまうなんて、既に曲として機能してないよ、これ。このベスト盤で初めてマニックスに出逢った人にすれば「ああ、この曲ってこんな感じなんだ」っていうふうに納得される危険が‥‥やっぱりこの曲を聴くと泣きそうになる。去年のフジロックでこの曲やってくれて、しかもアコギ弾き語りでやってくれたもんだから‥‥更にそのフジロックに一緒に行く予定だった人は、既に隣にいないなんてオマケまで付いて‥‥やばっ、また聴いてて涙腺緩んできた‥‥。

M-20. Motown Junk(none-album track)
今のマニックスの原点であって、スタート地点であって、結局行き着くところであって、俺自身の衝動の根元であって、ある意味人生のテーマソングであって‥‥いろんな意味が含まれれた、大切な1曲。結局さ、全部‥‥一番最後にジェームズが叫ぶ「We destroy Rock'n'Roll!」‥‥ここに全部あるんだよね。


というわけで、「とみぃの宮殿」4周年を記念する月のオススメ盤には、この10年間で自分にとって一番大切なバンドであるMANIC STREET PREACHERSの初のベストアルバムを選びました。そしてアルバムのレビューと称して、このサイトの4年間だけでなく、自分のこの10年間を振り返ってみました。相変わらず女々しいことばかり書いてますが、俺の90年代、そして俺の20代はそういう10年間だったと。カッコつけたり、いきがったりしながらも、傷つき心が痛み、やり場のない怒りや悲しみを貯め込んで精神が壊れかかったり。いろんな出会いがあり、そして同じくらいの別れがあったり。そういう10年間でした。

音楽の素晴らしいところは、そうやって聴いてた頃の自分の思い出が何時でも簡単にフラッシュバックしてくるところ。いい思い出も悪い思い出も、楽しかったことも悲しかったことも全部。ベストアルバムという形でバンドの10年間を総括しているものの、これはある意味「とみぃの20代総括」アルバムでもあるわけです(って勝手に決めつけるなよ)。

マニックスはこの後、2003年1月に単独としては実に4年振りの来日公演を行い、その後の予定は今のところ判っていません。噂通り、本当にこのまま終わってしまうのか、それともまた新たな道を模索するのか、あるいはそのままの勢いでアルバムをサラッと作ってしまうのか‥‥それは誰にも判りません。もしかしたらメンバー3人にも判ってないのかも。そして俺は、そんな彼等を見届ける為、いろんな思いを抱えてライヴに向かうことでしょう。



▼MANIC STREET PREACHERS『FOREVER DELAYED : THE GREATEST HITS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2002 12 03 12:00 午前 [2002年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2002/12/02

メロン記念日『メロン記念日シングルMクリップス①』(2002)

  メロン記念日初の映像作品集ですよ奥さんっ! これまで、モーニング娘。のライヴDVDやハロコンDVDなんかには彼女達のライヴ映像が入っていたりしましたが、PVがリリースされるのは初めてのこと。快挙といえるでしょう。これもひとえに今年に入ってからの快進撃のお陰です‥‥しかも、CSに加入していない俺にとっては、"This is 運命"以前のPVというのはホント「幻の作品」なわけですよ。ネット上でその絵を見かけたりするのですが、噂では凄いことになってるっていうし‥‥うわ~っ、すっげー観たいんですけど。で、そこにこのPV集。やったー!!!

  さて、これまでメロンは7枚のシングルをリリースしていて、その度にPVを制作してきました。今回は各曲のPVの出来や構成なんかと絡めて、これまで彼女達が歩んできた「ミラクルの歴史」を検証してみようではないか!と思ってます。

  まず、彼女達のここまでの道程を幾つか段階別に分けてみたいと思います。


①モーニング娘。の模倣からカルトクイーンへ
②各個性を生かした攻撃的姿勢へ
③ギミックのない、普遍的な楽曲と自然体で勝負


大まかに分けて、こんな感じじゃないでしょうか?(あくまで個人的な観点で段階分けしてます)では、各段階別にコメントしていきましょう。


①モーニング娘。の模倣からカルトクイーンへ

  当然ながら彼女達は「モーニング娘。の妹分オーディション」で選ばれた4人なわけです。そんな彼女達ですから、当然事務所的には「第二のモー娘。」的売り出し方をしようとするのは当然なわけです。2000年2月、丁度娘。が「LOVEマシーン」や「恋のダンスサイト」、プッチモニが「ちょこっとLOVE」でミリオンを達成した後、満を持してメロン記念日はデビューするわけです。そのデビュー曲が「甘いあなたの味」‥‥正直この時点では、つんく♂及び事務所はメロンをどういう方向で売り出していくかが見えていなかったようです。楽曲自体がロック調、世間がつんく♂に当時求めていた方向とずれているわけです。そんなチグハグさはPVにも如実に現れています‥‥つうか低予算PVだな、これ。まず素材(4人)があか抜けてない。まだ芸能人になり切れてないわけですよ。完全に素人。ちょっとその辺の子よりはカワイイけど素人4人衆。で、そんなだから低予算PVの中に入ると、微妙なエロさを発するわけです。なんていうか‥‥観てるこっちが気まずくなるような?感じ。これはある意味「伝説」に残る迷PVですよ。よくこんなものを収録&リリースする気になったよな!(いや、こうやってまとめて世に出てくれてホントは有り難いんですが)

  この年の5月に娘。から市井紗耶香卒業。最後の舞台となった武道館のステージにもメロンは登場しました。しかも翌月リリースのセカンドシングル「告白記念日」を引っ提げて‥‥これがいけなかった。退くって、普通に。金髪のヅラに猫耳ですから。一部のマニアだけですよ、喜ぶのは。で、PVでもそれは再現されてるわけで‥‥けど、武道館ライヴのやつより、PVの方がいいっていうのはどういうこと?? このPVもまた低予算。まぁ最初のよりは金がかかってるような印象を受けるけど、まぁこの程度だとテレ東やフジテレビの明け方にやってるような「歌う天気予報」みたいなのでしか放送されないんだろうな‥‥っていう程度の出来です。けどね‥‥この「狙ってない感じ」?がいいんですよ。限られた予算の中で出来る精一杯のことをやったら、結果としてカルト的なものになってしまったという。このチープな感じがたまらないッスね。デビューから2作連続でこの出来だもん。それを考えると、あややとかミキティって‥‥羨ましい。そうそう、この曲の最後の方に4人がソロで私服っぽい感じでワンショット抜かれるんですが‥‥大谷、柴田、村田という順番でみんなカワイイ仕草や表情を見せるんですよ。ところが、何故か斎藤さんだけ出てこないんです。出てこない変わりに、顔が以上に白いおかめさんが出てくるんです。あれは一体何なんですか!? 僕の斎藤さんはどこにいってしまったn(ry

  ここまでの2作のPVはビデオ撮りなんですよね。で、前作から9ヶ月振りにリリースされたサードシングル「電話待っています」。ここからようやくフィルム撮りになります。そしてPVの出来も幾分レベルアップしてます。何か曲が曲だっていうのもあるんですが‥‥冒頭の赤バックに黒のレザースーツに身を包んだ4人の姿‥‥某「武○士」のCMとイメージがダブるんですが‥‥気のせいでしょうか? ここでのメロンは「クールで儚い」感じを醸し出しています。PVの構成も「とりあえずやれること全部やっとけ」な過去2作と比べると詰め込み過ぎ感がなく、先の赤バックにレザースーツで踊りながら唄うシーンと、イメージショット、各メンバーのアップという感じで構成されています。これは過去の娘。PV‥‥「抱いて HOLD ON ME!」辺りの流れを汲むものでしょうね。しかし時は2001年。娘。がそれをやったのは3年も前の話で、既に「LOVEマシーン」以降、CGを駆使した新たなパターンを築いていたわけです。多少豪華になったものの、この辺のズレ感覚が当時のメロン記念日を物語っていたように思えます。

  モーニング娘。の辿ってきた道をなぞることから始まったメロン記念日。しかし、それがいい方には作用せず、結果として「一部のマニアしか喜ばないようなカルトアイドル」への道を歩みつつあったのでした。4人お揃いの衣装といい、WINK辺りを彷彿させるアイドル歌謡的作品といい、微妙なPVといい‥‥いや、俺はそこが好きだったりするんですけどね、ええ。


②各個性を生かした攻撃的姿勢へ

  そうそう、PVやジャケット写真なんかを見ても判ると思いますが、「電話待っています」辺りから、以前のような素人っぽさが薄れ、かなり今の顔つきに近くなっています。柴田なんて完全にあか抜けましたしね。
  これまでの失敗からスタッフは何を学んだのか‥‥それまでの「純アイドル路線」から離脱し、4人のバラバラな個性を生かす方向に軌道修正します。4人バラバラの衣装、メルヘン村田、ボーイッシュ大谷、セクシー斎藤、ナチュラル柴田というようなキャラ立ちの要求、そして「This is 運命」という画期的な楽曲との出会い。ここで初めてメロン記念日は力強さをアピールすることになったのです。その曲のPVなんですが‥‥ご存じの方も多いと思いますが、「This is 運命」のPVって実はショートバージョンしかないんですよね。テレビサイズと同じ、2コーラス目をカットした短いやつ。PVの出来自体はかなりよろしいのに、短い。事務所的にそこまでお金をかけられなかったのか‥‥非常に勿体ない。この辺の中途半端さが、この曲でもう一歩抜けきることが出来なかった敗因なのかもしれません。

  セールス的にもチャート的にも過去最高を記録した「This is 運命」。既に後からデビューした松浦亜弥にも追い越され、周りからすれば危機感すら感じるような状況だったはずなんですが、当のメロンは周りにも目をくれずに、ひたすら前進するのみ。第二の爆弾「さぁ!恋人になろう」をドロップするわけです。楽曲の素晴らしさは言うまでもなく、PVにも今回はさぞ予算をかけたんだろう‥‥と思いきや、前のPVを更にチープにしたような印象が。勿論今回はフルコーラスなんですが、目に悪そうな黄色バックで、バラバラな衣装を着たメロンの4人が力強くダンスするわけですよ。色使いが非常にサイケっぽく、映像の質感もちょっと滲んだような感じで、意図的にそういう「カルトっぽさ」を作ってる感じがします。偶然から発した初期のカルト感でしたが、ここにきて今一度そういったイメージを作り出そうというような意図を感じます。何かさ‥‥これから本格的に売り出そうっていうアーティストのPVとはおよそ思えないよね、これ。ま、そこがまたメロンらしくていいんだけどね?(要するに何でもいいらしい、俺からすれば)


③ギミックのない、普遍的な楽曲と自然体で勝負

  2曲のロックチューンを引っ提げて、テレビやステージで暴れまくったメロン記念日。確かな手応えを感じたはずです。実際、この頃からライヴで観る彼女達からある種余裕のようなものさえ感じられるようになったのですから。あのガムシャラ一筋だったメロンからですよ!? 煽りも上手くなり、ステージングも大きくて自信を持ったものになってるし。この1年での成長ってのはホントに凄いなと思えます。PVからもそれは伺い知ることができるはずです。

  6枚目のシングルとなった「夏の夜はデインジャー!」から再びつんく♂が単独で作詞作曲するようになります。そして届いた楽曲は、如何にもつんく♂な感じのポップナンバー。派手なロックチューンを期待していたファンをガッカリさせたのは言うまでもありません。しかし、それに続いた7作目「香水」もそうなんですが、ここにきてつんく♂は過去モーニング娘。で試したような手法にシフトチェンジしてるんじゃないか?と思えるようになったんですよ。色モノ的でギミックの多かった楽曲から、純粋に「聴ける曲」「普通にいい曲」を唄わせることによって、キャラを全面に出すこと以上にまず曲が耳に残るような仕掛けを始めたわけです。

  「デインジャー」のPVは初のオールロケ、しかも沖縄で撮影されたものです。このPVの素晴らしいところは、自然光がふんだんに使われている点でしょう。それまでの「サイケな色彩の中の4人」や「薄暗いスタジオの中、必要以上に照明を当てられる4人」といった不自然さ、そういったものがあまり感じられないんですよね。それと8ミリっぽいフィルムで撮られたショットも自然な感じでいいですし、何よりも4人の表情が柔らかい。自然な笑顔がこれまでの作品の中で一番多いんじゃないでしょうか? ダンスや唄うシーンにしても、非常に余裕のようなものが感じられるんですよ。俺、このPVが一番好きかもしれません。観てて飽きないのはこれと「香水」ですね。

  で、一方の「香水」は、スタジオ収録作品の中では一番いいですね。無敵状態の今撮影したからこその表情がここで観れると思います。柴田の切ない表情もいいし、途中挿入される他の3人の車にもたれるソロショットとか、ホントいい表情してるんですよ。歌&ダンスのシーンもバシッと決まっててカッコイイし、何よりも映像が全体的にセピアがかってるのが曲のイメージとマッチしていていい! 「デインジャー」が一番かもと言っておきながら、やはり甲乙付け難い程にいい出来だと思います。余計な演技や演出もなく、純粋に歌を引き立てる映像という感じ。そういう意味では「デインジャー」も「香水」も、ここにきて初めて曲と映像がマッチした好作品だったと思います。


  ‥‥というわけで、解説にもなってないヲタの妄想文になってしまいましたが、これを読んで「‥‥どんなやねん!」とツッコミを入れたくなった人、ちょっと気になりだした人。悪いことは言いません。DVD買いましょうね。

  「甘いあなたの味」PVを観た後に「香水」PVや、このDVDのジャケ写や「香水」ジャケ写を観ると、本当に4人が別人のように見えます。つうか、他のジャケ写と比べても、「香水」とPV集のジャケ写は余裕が感じられる、柔らかい表情をしてるんですよね。これはなかなか出せるもんじゃないと思いますよ。そう、メロン記念日は着実に一段、一段と次の段階にステップアップしてるんですね。

  さてさて、早くも2003年1月末には8枚目のシングルがリリースされるという情報が入ってきています。一体次はどんな曲/PVで我々を驚かしてくれるのか‥‥今から楽しみでなりません。そして次の映像作品は‥‥間違いなく、12月9日の初単独ライヴの模様でしょうね!



▼メロン記念日『メロン記念日シングルMクリップス①』
(amazon:国内盤DVD

投稿: 2002 12 02 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

2002/12/01

中島美嘉『TRUE』(2002)

  何故ついつい手が伸びちゃうんだろ? ‥‥っていうアルバムですよね、これは。いや、ていうか、中島美嘉という存在自体が「何故!?」の塊っつうか? すっげー美人というわけでもなく、歌も上手いってわけでもないけど‥‥それでも何故か聴いてしまう。気づけば口ずさんでるし、こうやってCDまで買ってしまってる。しかも発売日に、初回盤手に入れてるし俺(ハハハ‥‥)。いや、好きですよ、彼女。確かに微妙かもしんない。けど、その微妙さがいい。ルックスにしろ歌にしろ、最高とは言い難いんだけど、そのバランス感がいいんです。断言しますよ。中島美嘉サイコー!って。

  デビューから1年と経たずにシングルをバンバンと連発、結局このアルバムまでに5枚ものシングルをヒットさせてるわけですから、いやはや恐れ入ったというか。昨(2001)年末のデビューってことで、ショーレース自体は2002年扱いになるわけですが、もう今年はこの人で決定じゃないですか? つうか他に思いつかんし。いや、ミキティ(藤本美貴)も大好きな俺ですが‥‥この人を前にしたら、ねぇ?

  で、その5枚のシングルを全て含むファーストアルバムがこれ。既に100万枚近いセールスを記録してるとのこと。デビュー盤でこのセールスは大したものだと思います。しかもこの「CD不況」の時代に‥‥あ、そうか。所謂「ベスト盤」的内容だもんな、ここまでくると。だってさ、シングル5曲、そのカップリング曲が2曲。CMやTV番組とのタイアップ曲が7曲(タイアップ自体は8つ)って‥‥そりゃ売れるわけだ。で、売れるだけのクオリティーを持ってるもん、これ。曲はよく出来てるし、アレンジや演奏もポップスとしては一級品。お金かけてるよね、マジで。

  参加してる作家・アレンジャーに目を通しても、もう豪華過ぎて‥‥秋元康、富田恵一、吉田美奈子、T2ya、テイトウワ、おちまさと(いや、こいつはいらないけど)、今井大介、伊秩弘将、CHOKKAKU、松本隆、河野伸‥‥J-POPに詳しい人なら、これらの名前を目にして思わず唸っちゃうと思うな。しかも各楽曲のゲストもEXILEやケツメイシのメンバー、m-floのVERBAL、Demi Semi Quaverのテラシィイ、BIG HORNS BEE等が参加‥‥制作にどれだけの金額がかかってるんでしょうか、マジで。ハロプロもこれくらい(ry

  ‥‥愚痴が出てしまったところで、本題に戻りましょう。確かにいくら作家やゲストが豪華だからといっても、肝心の表現者‥‥歌い手である中島美嘉が大したことなければ意味がないわけですが、素っ気ない唄いっぷりなのに、何故か心に残るんですよね、この人の歌。特にバラードナンバーがね。このアルバム自体、半分近くがミディアム~バラードだったりするんですが、やっぱりアップテンポの曲よりも"WILL"や"STARS"、そして"AMAZING GRACE"のような曲での歌唱が印象に残るんですよ。決して絶賛する程の歌唱力ではないんですが(それでも昨今の若手シンガーの中では上手い方だと思いますよ)、不意にもググッときてしまう。何故か? これってやはり、中島美嘉自身がそれらの歌を自分のものにしてしまってるからではないでしょうか? 「唄い切れてる」って意味ですね。よくテレビの歌番組を観てて「あ~この人にこの曲は勿体ないなぁ‥‥全然唄えてないじゃん」って思う瞬間が何度もあるんですが‥‥実はテレビでの中島美嘉もどっちかっていうとそのタイプの人だと思ってたんですよ。けどね、CDで聴くと全然そんな風に聞こえないんですよね、何故か。ライヴは生ものだから、その一瞬一瞬が勝負なわけですが、そういう意味では彼女はまだライヴ慣れしてない‥‥生に弱いわけです。でも、たまたま昨日観た「オールジャパン・リクエスト・アワード」っつう元「全日本有線大賞」での"STARS"の唄いっぷりには、正直ちょっとやられたなぁ‥‥と思いましたね(しかも、最優秀新人賞を取った後の彼女のリアクションや、観客からの声援にウルッと来たところなんかも‥‥ってそれは歌とは全然関係ないですが)。

  歌の上手い人とか癖の強い人って、大体「好き」か「嫌い」かがハッキリしてると思うんですよ。けど、彼女みたいな「ある意味中途半端」なタイプは‥‥もしかしたら、こういう人が意外としぶとく生き残ってくんじゃないかなぁ、と。このアルバムを聴きながら、ふとそんなことを考えてしまうわけです。

  いや、いいアルバムですよ。夏以降、暫くは毎朝通勤時の車中で聴いてたし、今でもこうやってしょっちゅう聴いてるし。あ、仕事中もよくこのCDかけましたね。リラックスして仕事できたし。

  やっぱり一番好きな曲はと問われれば、バラードタイプになるんですが‥‥シングルでの既発曲ですが"STARS"が一番好きかなぁ。ドラマはあんま面白くなかったけど、曲にはググッときたし。それ以外だと、やっぱりシングル曲になりますが"HELPLESS RAIN"も好きです。アルバム曲となると"I"とか"TEARS(粉雪が舞うように...)"といったバラード曲ですね、やはり。つうかアルバムの頭"AMAZING GRACE"からケツの"A MIRACLE FOR YOU"まで飽きることなく、通しで聴いていいと思える作品です。アルバムとして好きです。

  ライヴまで観たいとは思わないんだけど、こうやってCDなら何度でも聴いてみたい。そういうアーティストなのかもしれませんね、俺にとっての中島美嘉は。いや、つき合ってくれって言われたら当然「OK」と即答するんですが。



▼中島美嘉『TRUE』
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投稿: 2002 12 01 12:00 午前 [2002年の作品, 中島美嘉] | 固定リンク

2002/11/30

中村一義『100s』(2002)

  今日やっと、来週の日曜に大阪城ホールで行われる中村一義のライヴ「博愛博+」のチケットが届きました。ライヴまで8日、こんな間際までチケットが届かなかったのは初めての経験だったので、ここ数日はちょっと焦っていましたが、これで安心して大阪での宿を予約することができます。大阪城ホールは数年前に一度、大阪城へ行った時にその前を通っただけで、一度はライヴを体験してみたいハコのひとつだったので、ちょっと今からドキドキしています(まさか初の城ホール体験が娘。以外のアーティストになるとは‥‥ちょっと自分でも意外だったわ)。今年は名古屋のレインボーホールといい大阪城ホールといい、そして福井のホールだったり、過去経験したことのないような広範囲ライヴ体験をしてきましたが、これはそのトドメになるような公演になるんじゃないかな、と思ってます。

  雑談はこの辺にして‥‥さて、その中村一義の約2年振り、4作目のオリジナルアルバムは、昨年夏に行われた「ROCK IN JAPAN FES」の為に作られたライヴバンド「100式」を従えてのバンドスタイルでの録音となっています。宅録からスタートした中村くんは過去、一度もライヴをやったことがなかったと聞いています。そんな彼の初の舞台となるはずだったのが、一昨年の同フェス。しかし台風の影響でフェスは途中で中止に。中村くんの初ステージはそのすぐ後に別のイベントで実現してますが、やはりリベンジとなった昨年のRIJフェスは中村くんのみならず、ファンにとっても思い出深いライヴとなったのではないでしょうか。そして俺自身にとっても、中村一義というアーティストを更に好きになったステージでもあったわけです。

  100式というバンドを手に入れた中村くんは、その関係をそこでご破算にはせずに、そのままレコーディングにまでバンド形態で突入したのでした。そう、それまで作っていた宅録デモを捨ててまで‥‥そうして出来上がったスタジオ作1発目がシングル「キャノンボール」だったわけです。当然、楽曲自体はそれ以前からあった曲だったのですが、RIJフェスで掴んだ確信をそのままCDの中に閉じこめることに成功したのです。そのままバンドは春からライヴハウスツアーに突入。合間を縫ってアルバムのレコーディングも続行されました。ツアー中に披露された"セブンスター"も"新世界"も、それまでの中村くんを更にスケールアップしたかのような感動的な名曲でした。特に"新世界"ときたら‥‥初めて聴いた時は正直、泣きそうになりましたよマジで。

  ライヴの為に結成されたバンド。大きな舞台で手応えを感じ、そのままスタジオ入り。そろそろツアーやろうよって感じでライヴハウスツアー決行、そこで新曲を披露し様子を見る。ライヴを重ねることで養った一体感やグルーヴで新曲を更に再構築‥‥そうして出来上がったのが、この「100s」というアルバムなわけです。

  当然これまでも中村くんのアルバムではバンドスタイルの楽曲が沢山ありましたが、それはあくまで「レコーディング上での疑似バンド」でしかなかったわけで、いくらマーシーや岸田くんが参加しようが、彼等が中村くんと並んでステージに立つわけではないし、そのままライヴバンドに発展する可能性も殆どないし(つうか中村くんがライヴをやるなんてこれまで考えもしなかったわけだし)。そういう観点からすれば、このバンド結成というのは彼の人生の中で画期的な出来事ではあるんだけど、「バンド、バンドスタイル」ってのには我々にとってはこれといった目新しさは感じない。逆に、これまであったような実験性が後退してるような気がしないでもない。しかし、そういった要素を排除してでも中村くんはこれを今やりたかった。その強い意志や「何か掴んだよ!」という確信は、確かに色濃く表れてると思います。

  え~っと‥‥ぶっちゃけて言っちゃいます。俺、このアルバム大好きです。リリースから2ヶ月経ちましたが、今でも本当によく聴いてますよ。けど、俺はこれが彼の最高傑作だとは思ってないし、そんなこと口が裂けても言えない。もっと言ってしまえば、それこそ傑作との声が多かった前作「ERA」のレベルにまで及んでいないと思うんです。あ、ファンの方々。これは決して批判ではないですよ。確かに俺は過去、中村くんの音楽が苦手だった時期がありますが、今では全アルバム揃えてよく聴いてる程ですし、嫌いだったらわざわざ千葉から大阪までライヴ観に行ったりしませんって。

  そもそも作品としてのベクトルの方向が違うという話もありますが、先に書いたように「ERA」までにあったような実験要素が若干後退し、楽曲自体がシンプルでコンパクトになってる点がまず印象深いですね。これは右脳と左脳の違い、頭で考えて作った作品と身体で感じたままを音にした作品という違いが大きいのだと思います。そしてバンドメンバーからのインプット。これが一番大きいでしょう。OASISしてたりレッチリしてるような「高校生が初めて作ったオリジナル曲」なアレンジも多少見受けられますが、そこはまぁご愛敬ってことで。更にバンドのキーボーディストである池田貴史(SUPER BUTTER DOG)との共作曲"Yes"もあったり(これがまたアルバム内で1,2を争うような名曲)。そうそう、曲がコンパクトにまとまってるってのは、間違いなくライヴが影響してるんでしょうね。スタジオで煮詰めたような曲だと、例えば過去の中村くんの作品だと"ハレルヤ"みたいになる可能性だってあるわけだし。いろんな装飾を剥ぎ取って、出来るだけ「素」に近い状態にまで持っていって、それをレコーディングした。そんな印象を受けました。

  1曲1曲は本当に名曲揃いで、恐らくこれまでの作品集の中でもかなりレベルの高い1枚だと思うんだけど、これがアルバム‥‥一塊りとして聴いてしまうと、先のように過去のアルバムと比べてちょっとレベルダウンしてしまう。何故だろう? 決して曲順が悪いとかそういう理由からではないんだけど‥‥多分、これまでのレベルが高すぎたってのもあるだろうし、何度も言うけどベクトルの方角がちょっと変わってきたってのもあるだろうし。

  そこで、上のサブタイトル。「脱・引き籠もり人生」って失礼な‥‥とお思いでしょうけど、正しくそういうことだと思うわけです。例えばデビュー作である「金字塔」というのは、俺からすれば「閉じた世界から、外の世界に憧れる少年が、外へ、外へと飛び出していこうとする気持ち」を形にしたようなアルバムだったわけで、そこから作品を重ねることによって彼はリハビリ(って言い方はちょっと語弊がありますが)していき、その「閉じた世界」と「外の世界」への窓口となったのが「ERA」だった、と。そのアルバムを持って外へ飛び出した彼は、ライヴを経験することでバンドメンバーや観客との繋がりを確認する。そうして出来上がったのが今作「100s」だった、と‥‥ってお得意の妄想をカマしてみましたが、俺の中でのこのアルバムの位置付けはこんな感じなのです。だから、まだこれはスタート地点なんですよ。

  RIJフェスで体験した彼等のステージは、決して「閉じた世界」なんかじゃなかった。「閉じた世界」で作った歌を、聴き手に一生懸命伝わるように唄っていた中村くんは、もう引き籠もり少年なんかじゃなかった(当たり前ですよね、ファンの皆さんゴメンナサイ)。この「100s」を聴くとホントに元気になる。そしてこのアルバムの曲を満面の笑顔で唄う中村くんの姿が頭の中に浮かび上がってくる‥‥中村くんのアルバムを聴いて「ライヴ観たいなぁ」って思う日が来ようとは‥‥何だかんだ言っても今年を代表する1枚なのは間違いありません。ライヴまであと8日。きっとまた何回も、何十回も聴くんだろうな。そして、聴く度に元気を貰うんだろうな。そんなアルバムですこれは。



▼中村一義『100s』
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投稿: 2002 11 30 12:00 午前 [2002年の作品, 中村一義] | 固定リンク

2002/11/29

GRAPEVINE『another sky』(2002)

  GRAPEVINE通算5作目のオリジナルアルバムとなる「another sky」は、ある意味『最も「GRAPEVINE」らしいアルバム』になっていると思う。特に革新的なことをやっているわけでもなく、逆に時代に逆行してるようにも感じられる‥‥だけど、これだけ自信を持って「己の信じた道」を突き進み、そして深く表現することができるってのは尊敬に値するし、正直羨ましいよ。

  個人的には前作「CIRCULATOR」が地味だけど傑作だっただけに、それに続くオリジナルアルバムってことでかなり期待してました。勿論、この半年の間にリリースされたシングル曲"ナツノヒカリ"と"BLUE BACK"がこれまたすこぶる好調だっただけに、必要以上に期待してたんだなこれが。ところが‥‥いざ出来上がったアルバムを聴くと‥‥「‥‥へっ!?」って程に地味、地味、地味。前作よりも更に派手さが後退し(いや、前作だって決して派手ではなかったけどね)、もしかしたらこれまでのアルバムで一番地味かもしれない。確かにここ数作のシングルの中では一番アッパーな"BLUE BACK"なんかは派手な部類に入るだろうけど、音使いが地味‥‥いや、渋いのよ。

  「地味、地味‥‥」ってしつこい程に書きまくってるけど、この地味さ・渋さがいいのよ。楽曲的には確かに地味なタイプの曲が多い。けど、内容的にはこれまでの集大成に近いような作りになっているにも関わらず、過去の作品より高純度。演奏だけに耳を向けると、実はかなりテンションが高かったりするし。そういう意味では「地味」という言葉は不向きなのかもしれないけど‥‥けどね、ここで言う「地味」って、ある意味「唯一無二」と同意義だと思ってください。それくらい、誰にも真似できないレベルにまで到達してると思うのね、今のGRAPEVINEって。

  思うに今回のアルバム、ここまで高純度な作品集となったのには、外部ゲストを一切交えず、バンドのメンバー4人+前作のツアーにも参加したサポートキーボーディスト、そしてプロデューサー兼ベーシストの根岸孝旨(Dr.Strangelove)の6人で作られたからだろうな。腱鞘炎から復帰したベースの西原はまだ完全復帰とはいかず、曲によっては根岸やボーカル&ギターの田中がベースを弾いていたりするんだけど、基本的には気心知れたメンツで作った「ホームメイドなアルバム」という印象が強い。例えば前作ではキーボードやドラム/パーカッションにゲストミュージシャンを迎えたり、アルバムの殆どを西原抜きで制作していたりするし。通常なら「西原復帰したし、ここで一発気合いの入ったのを‥‥!」ってなるんだろうけど、そこはバイン。完全に肩の力が抜けきった、ホントに味わい深い1枚を作ってくれた。

  フォーキー且つブルージーでサイケな"マリーのサウンドトラック"からアルバムは緩くスタート。そのままアッパーな"ドリフト160(改)"~"BLUE BACK"と勢いをつけ、如何にもバインらしいファンキーな"マダカレークッテナイデョー"、男泣きバラード2連発の"それでも"~"Color"で前半戦終了。後半はバイン濃度が非常に高いミドルチューン"Tinydogs"~"Let me in ~おれがおれが~"から、俺の2002年夏のテーマソングとなった爽やかなポップチューン"ナツノヒカリ"へと続く。この曲が後半でいいアクセントになってるんだな、うん。そのまま如何にもバインらしい(ってその例えばっかだな俺)"Sundown and hightide"~"アナザーワールド"~"ふたり"でアルバムはしっとりと終了。これといった超山場を迎えぬまま、適度な高揚感と適度な潤いを我々にもたらし、50数分・12曲収録のこのアルバムは終了するんだけど‥‥そのままエンドレスでまた"マリーのサウンドトラック"に戻ってたりするんだよね。そういう意味では本当に飽きさせない、「かっぱえびせん」のようなアルバムだと思います、これは。

  GRAPEVINEというバンドは常に「自分達なりのブルーズ」を鳴らしてきたバンドだと思います。確かにバンドのタイプとしては「ブリットポップ/OASIS以降」なのかもしれません。しかし、今やブリットポップを通過して生き残った英国産バンドも数少なく、あのムーブメントに触発されて結成された日本のバンドも今では音楽性を変えたり姿を消してしまったり。そんな中、バインは劇的な変化や成長をすることなく、常にマイペースで等身大の自分達を表現してきました。ひとつの型を持ち、それをアルバム毎、ツアー毎に追求し、更に深い表現力・表現方法を身に付け、周りから地味だと言われながらもそれに相反するようなライヴを繰り広げる。セールス的には決して大成功しているとは言えないだろうけど、「バンド」という生き物としてみれば、ここまで成功している存在はそうはいないんじゃないでしょうか? ホント、羨ましいと思います。

  未だにこのバンドを「女子供がギャアギャア言う、アイドルバンド」という色眼鏡で見る洋楽信者が多いみたいですが、もうそんなのどうでもいいや。ホント、いいバンドがリラックスして作った、いいアルバムですよこれは。前作で彼等に入った人は更に気に入るんじゃないかな。ただ‥‥このアルバムを最高傑作とは呼びたくないな、俺は。なんていうか、これよりももっと凄いアルバムは彼等なら作れるんだろうけど、これよりももっと濃くて深いアルバムは、今みたいなリラックスの仕方じゃないと作れないんじゃないだろうか‥‥と思うのね。だから俺はこれを最高傑作とは呼びません。だけどこれまでの作品の中ではダントツで一番好きなアルバムであります。回りクドイ言い方だけど、そういうことでいいじゃない?



▼GRAPEVINE『another sky』
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投稿: 2002 11 29 01:57 午前 [2002年の作品, Grapevine] | 固定リンク

2002/11/23

THE WiLDHEARTS『RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKING RIFF』(2002)

THE WiLDHEART本格的に再結成、しかもメンバーは名作「EARTH VS THE WiLDHEART」制作時の4人(ジンジャー、ダニー、CJ、スティディ)‥‥という情報が入ったのが、2001年の春先。そして同年7月には本当に来日公演を行っちゃったんだから、本気で驚いた。しかも、ダニーが直前になってドラッグによるツアーからのリタイア(日本公演は当時ANTi-PRODUCTSに在籍していた日本人ベーシスト・TOSHIが代役を果たす)という如何にも彼等らしいオマケまで付いてきたんだからさ。俺は昨年のツアー、BACKYARD BABIESやギターウルフ、SEX MACHINEGUNSと共に行われる予定だったイベント「OUT OF HELL Vol.2」に行くつもりだったんだけど、これが直前になって会場&日程変更(NKホール→SHIBUYA AXに。恐らくチケットが売れなかったんだろうね)になった為、泣く泣く断念。なので、再結成後初のライヴ観戦は今年8月に千葉マリンスタジアムで行われた「SUMMERSONIC 02」出演時だったのね(しかも今回はやっとあの4人でのライヴだもん)。

ある意味、俺にとっての「復活ワイハー」はサマソニで正解だったな、とあの時思いましたよ。だって、去年来た時はバンド自体が今後も本当に続くのかも不明な状態だったし、しかもダニーがあんなことになって、三度ジンジャーと手を組むことがあり得るのか、とか、本当にあの4人による新曲が生まれるのか、とか‥‥不安材料ばかりだったわけですよ。しかも俺、実際にライヴ観れなかったわけだし、外野から聞こえてくる声を聞けば聞くほど余計に不安になるわけですよ。

でもね、サマソニでのライヴの充実振り&安定感に感動し(しかもCJがいることで、ステージ上が本当にハッピーな空気が流れてる!)、更にそこで聴けた2曲の新曲(このミニアルバムにも収録されている"Stormy In The North, Karma In The South"と"Vanilla Radio")が想像してた以上にカッコイイナンバーだっただけに、今後のワイハーに対しても大いに期待できるようになったわけです。だってさ、ソロになってからのジンジャーの仕事振り‥‥SUPER$HIT 666やSiLVER GiNGER 5は良かったものの、ソロシングルなんてさ‥‥我々が心の中に勝手に作った「ジンジャーに対するハードル」を全くクリアしてなかったわけでしょ? いや、勿論余所のB級マイナーバンドと比べれば全然レベルは高いと思うんだけど、誰もジンジャーに平均点なんて求めてないわけで。みんな「天才ソングライター・ジンジャー」が見たいわけですよ。知ってるんだから、みんなジンジャーという男がワイハーでやってきたことを。

そんなわけで、再結成後初の音源となる‥‥完全な新曲ということでは、'97年秋の「ENDLESS, NAMELESS」以来だから‥‥5年振り!? 嘘ぉ~!? そんなに時間が経ったのかよ‥‥そりゃ俺も歳取るはずだわ。今回の音源は本国イギリスではシングル「VANILLA RADIO」(CD-1&2としてリリース)としてリリースされる予定の7曲を、ここ日本限定で1枚のアルバムとしてまとめたもの。しかもタイトルがまた彼等らしい「RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKING RIFF」っていうんだから‥‥「リフに次ぐリフ、そしてマザーファッキンなリフ」って‥‥まんまじゃねぇか! こんなにピッタリなタイトル、他にあるかよって程に名タイトル。本国でもこのタイトルを使いたかったみたいだけど‥‥使えるわけないってば(ちなみに「VANILLA RADIO」のシングル、結局CDシングルは1枚ものとしてリリースされることになったようで。今回収録されなかった曲は本国では後々のシングルに入るとの事です)。

タイトルだけじゃないよ。楽曲も一聴して一発でワイハーだって判るサウンド&楽曲&コーラス&メロディ。プロデュースは以前にも彼等を手掛けたことのあるサイモン・エフェミーが担当してるので、特に何かが変わったという印象を受けないんだよね。もし変わったところがあるとすれば、それはかなりの割合でジンジャー+CJによるツインボーカルナンバーが収録されている点。勿論メインはジンジャーなんだけど、その主旋律を唄うジンジャーに絡みつくようなCJのハーモニーが、これまで以上にワイハーサウンドをポップにしてるように感じられます。1曲目"Stormy In The North, Karma In The South"なんて聴くと中期ワイハーとTHE JELLYS(CJとスティディがワイハー脱退後に結成したバンド)の融合っていう印象を受けるし、正しくアルバムタイトルを体現したかのような2曲目"Putting It On"や5曲目"O.C.D"もリフに次ぐリフなんだけど、そのメロディやコーラスワークはこれでもかって程に甘いものになってるし。

元々シングル用として制作された7曲なんだけど、こうやってミニアルバムとして並べられても、意外と統一感というか「アルバムとしての流れ」がしっかり出来上がってるんだよね。パンキッシュでストレートな"Stormy In The North, Karma In The South"から始まって、ワイハー的変化球が魅力な2曲目"Putting It On"、ヘヴィメタリックなイントロから如何にも彼等らしいメロへと繋がっていく3曲目2曲目"Looking For The One"、ある意味これがシングルでよかったと思えるミドルチューン"Vanilla Radio"、そして怒濤の後半戦("O.C.D"~"Better Than Cable"~"Let's Go")の流れ。ミニアルバムのくせに‥‥という言い方はちょっとあれだけど、ホントにフルアルバム並みの充実度なわけですよ。

恐らくジンジャーは今回の楽曲‥‥再結成後最初に世に出る楽曲について、「EARTH VS THE WiLDHEARTS」でのサウンド(楽曲の構成や質感等)をかなり意識したと思うんですよ。何せ今回は顔見せ的な役割を果たす楽曲なわけだし。過去に離れていったファンや今でも支え続けてくれる古いファン、そして「名前は知ってるけど音は聴いたことがない」という新参ファンをも巻き込むような曲を書かないと、見向きもされない‥‥その結果が「All songs written by THE WiLDHEARTS」という一行に集結してると思います。ある意味ジンジャーのワンマンバンドだった'90年代のワイハー。勿論、そうだったからこそ成功し、そして失速していったわけですが、ここで初めて「本物のバンド」になれたんじゃないかなぁ‥‥あのステージ上でのピースフルな雰囲気はここからきてるんじゃないか?と今になって思うわけです。初来日から観てる古参者としては(他の古いファンは違和感を覚えるかもしれないけど)今のワイハー、本当に無敵なんじゃないかなと思ってます。

だからこそ、2週間後に迫った単独再来日公演も楽しみだし(何せ1年の間に彼等のステージを2回も、しかもスタジアムでのフェスとクラブクラスでの単独公演といった違うシチュエーションで楽しめるわけですよ!)、恐らくその先に予定されているであろう「本当の意味での復活作」となるオリジナル・フルアルバムも心の底から楽しみに待てるわけです。

ここ数年の不調振りが嘘のような現在のジンジャー。今後はアリーナロック的なハードロックバンドとしてのSiLVER GiNGER 5と平行して現在のワイハーを運営していくようです(しかもSG5の方も、ドラムに後期ワイハーのメンバーだったリッチが加わった!!)。来年はワイハーのフルアルバム、そしてSG5のセカンドもあるでしょう。勿論、未だに4枚しか発表されていない「シングルクラブ」も。そしてアルバムリリース後にはワイハー、SG5共に来日公演があるだろうし‥‥久し振りにネガな感情なしでジンジャーの歌に接することが出来そうです。改めて言わせてもらいます‥‥

Welcome back, THE WiLDHEARTS!!!



▼THE WiLDHEARTS『RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKING RIFF』
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投稿: 2002 11 23 06:35 午後 [2002年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2002/11/14

U2『THE BEST OF 1990-2000』(2002)

U2のセカンド・ディケイドを総括したベストアルバム「THE BEST OF 1990-2000」。最初の10年('80年代)をまとめた「THE BEST OF 1980-1990」がリリースされてからもう4年、あの時はまだこのサイトを制作途中で、作業しながらよく聴いていたのを昨日のことのように思い出します。U2というバンドは自分にとって常に2番手、3番手的存在で、決してナンバーワンになることはないバンドでした(しかしながら、自分が最初にやったバンドではU2をコピーしていましたが)。そんなU2ですが、やはり曲を聴けばその曲がリリースされた頃、流行った頃の自分のことを思い出し、ああ、もうそんなに時間が経ったんだ、と感慨深くなったりします。特に自分にとっては、前回のベスト盤よりもこっちに入ってる曲の方が思い入れが強いんですよ。

アルバムとしては'91年秋の「ACHTUNG BABY」、'93年夏の「ZOOROPA」(この年の12月に東京ドームでライヴ観ました)、'97年初頭の「POP」、'00年秋の「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」の4枚からで、確かに最初のベスト盤に比べれば選択肢は少ないですが、その分1曲1曲の密度はかなり濃かったりします。更にアルバム未収録だった"Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me"や、U2名義ではなくPASSENGERS名義での"Miss Sarajevo"も収録されていて、個人的には面白いな、と思ってます。

さて、簡単に各曲の解説や思い出話などを‥‥


M-1. Even Better Than The Real Thing
アルバム「ACHTUNG BABY」から、4枚目のシングルとしてリカット。当時のツアー「ZOO TV TOUR」及び「ZOOROPA TOUR」でも頭の方(確か3曲目)に演奏されていた印象深い曲。確かライヴではキーを下げて演奏してたんだよね。U2独特の「黒っぽさ」に当時のテクノロジーをアレンジに取り入れたバンドの演奏がかっけー。10年以上経った今聴いても古さを感じないんだよね。

M-2. Mysterious Ways
「ACHTUNG BABY」からのセカンドシングル。アメリカではアルバムと同時期にリリースされて、トップ10入りしました。U2が当時流行のグラウンドビート(SOUL II SOUL等でお馴染み)を取り入れたダンスチューンってことで当時話題になりました。この点に違和感を感じた人が多かったようですが‥‥そんなに変ですか?? 純粋にいいメロディを持ったいい曲。何故そんな評価をしてくれなかったんですかね、当時。勿論、'80年代の「熱い/戦うU2」というイメージを覆す楽曲だとは思いますが、自分は普通にその変化に着いていくことが出来ました。何故でしょうか‥‥そこまで思い入れが強くなかったから? いや、そんなことはないです。俺、「ACHTUNG BABY」ってアルバム、U2の中でも1、2を争う程に好きなんだよね。恐らく「WAR」か「ACTUNG BABY」か、って感じだと思います。バンドをやってきた身としては、統一したスタイル/音楽性で何十年も続けるバンドもカッコイイとは思うけど、U2みたいに根本にあるものは変わらずにいろいろなことに挑戦するバンドの方が憧れるのかもしれませんね。

M-3. Beautiful Day
ついこないだ出た曲って印象でしたが、もう2年も前になるんですね。現時点での最新オリジナルアルバム「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」からのファーストシングル。この曲を聴いた時はちょっと感動でしたね。U2なりの「It's only rock'n'roll, but I like it.」って想いを聞かされたようで、胸に込み上げる熱いモノを感じたりして。当時は「テクノロジー3部作」を経て、いよいよU2はロックンロールアルバムに着手した、なんて噂もありましたが、確かにその通りなんですが、そこはU2。我々の予想をいい意味で裏切ったアルバムでしたね。'80年代の彼等が好きだった人達はこのアルバムをどう感じ、聴いたのでしょうか?

M-4. Electrical Storm (William Orbit Mix)
このベスト盤の為に録音された2曲の新曲のうちのひとつ。先行シングルとしてもリリースされています。エレクトロニック・ミュージック界では孤高の存在であるウィリアム・オービット(ロック系ではBLUR「13」のプロデューサーとして有名)をプロデューサー&キーボーディストとして招いて作られたこの曲は、ちょっと初期の彼等っぽい「冷たさ」が前面に出たアレンジになってます。'90年代の作品もヨーロッパテイストが強い作風でしたが、これはそれとも違う作風で‥‥ウィリアムを起用したことに起因するのでしょうけど、ギターと同じくらいシンセが前に出てます。ダンスビートはここには皆無で、ある種環境音楽的なサウンドともいえます。エレクトロニカ??‥‥ううん、全然そういうのとは違う、独特なエレクトロニック臭が漂ってます。けど、腐っても鯛、U2はどこまでいってもロックバンドですよ。

M-5. One
「ACHTUNG BABY」からのサードシングル。PVが2種類あることでも有名、かな? とにかく名曲。これで感動できない奴は、人間を1からやり直し。当時のツアーでもハイライト部で演奏されてました。ダンスビートやエレクトロニックサウンドを取り入れたアルバムの中でも、比較的'80年代の路線に近い大陸的なノリで、この曲や"Mysterious Ways"が同じアルバムに並んでいる点からも、如何にU2というバンドが「近代的なアレンジを施しながらも、純粋に『いい曲』を作ろうとしていた」かが伺えると思うんですが‥‥個人的にはこの曲がヒットしていた頃、丁度イギリスに短期留学していて、よくMTVやラジオで流れていたのを思い出します。

M-6. Miss Sarajevo
'95年秋にリリースされた、U2とブライアン・イーノ(U2の諸作プロデューサー)のユニット・PASSENGERS唯一のアルバム「ORIGINAL SOUNDTRACKS 1」からのシングルナンバー。オペラ界の重鎮、パバロッティがゲスト参加しています。確か当時、U2はPASSENGERSに対し「U2として捉えると、若いファンが落胆するであろう作風なので、プロモーションにはU2の名を使わないで欲しい」と通達していたはずだけど‥‥結局はこれも「U2の歴史」として捉えることにしたのでしょうか。ま、ホントいい曲なので入れない手はないわな。

M-7. Stay (Faraway, So Close!)
「ZOOROPA」からのセカンドシングルとしてリカットされたヒット曲。この曲はヴィム・ヴェンダースの映画「時の翼にのって/ファラウェイ・ソークロース!」のテーマソングとしても起用されています。PVでは映画のシーンも挿入されて、またバンドが映画に出演してるかのような錯覚さえ与える作りになってます。作風的には前作で大ヒットした"One"の続編的作品といえなくもないですが、こっちの方がもっとヨーロッパ色が強い、影のようなものを感じさせます。サビでのエッジの合いの手的コーラスが如何にもU2って感じで素敵です。「ZOOROPA」の中で一番好きな曲ですね(一番普遍的な、普通の楽曲とも言えますが)。

M-8. Stuck In A Moment You Can't Get Out Of
「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」からのサードシングル、ということでいいのでしょうか?(「Elevation」は映画サントラ曲ですけど、一応セカンドシングルってことで)再びU2がゴスペル的要素を持ち出した感動的楽曲。「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」は'80年代U2の良い部分と、90年代U2の良い部分をそれぞれ持ち出し、更に同時代的な要素も新たに加えた単なる集大成的内容になってない点が素晴らしいのです。決して「U2が再び初期のロック路線に戻った」から歓迎されたのではないんですよ‥‥と、一部の勘違いファンに言いたいですね。

M-9. Gone (New Mix)
「POP」のアルバムトラック。シングルカットされたって記憶はないんだけど。いや、されてないはず。このアルバム用に新たなミックスで収録されています(追加プロデュース&ミックスを、MANIC STREET PREACHERS等でお馴染みのマイク・ヘッジスが担当)。かなりダークで地味な印象の強い「POP」の中でも、よりダークな部類に入るこの曲を、何故にここに収録したのかは不明ですが(他にも入れるべきシングルヒットがあるのにも関わらず)、こうやって新たなミックスで収録されたこの曲をこの流れで聴くと、そんなに地味な印象を受けないんですよね。確かにダークですが、独特な「熱さ」が感じられる演奏と歌なんですよね。そうか‥‥「POP」で聴くと地味だった、という印象を拭う為にここに再登場させたのか‥‥って思える程、選曲の意図がちょっと判らなかったりしますが、ここに入ったお陰でこの曲に対する印象が変わりました。今はかなり気に入ってます。

M-10. Until The End Of The World
「ACHTUNG BABY」のアルバムトラック。これもシングルカットはされていないものの、先述の"Stay (Faraway, So Close!)"同様、ヴィム・ヴェンダースの同名映画(邦題は「夢の涯てまでも」)主題歌として起用されています。U2が主題歌やってるってんで、この映画見に行った記憶があるんだけど‥‥内容が思い出せない‥‥独特なリフが印象的な、かっけーミドルナンバー。「ACHTUNG BABY」の楽曲はどれも、ローキーで抑え気味に唄うボノという印象が強いですね。それまでの「熱く叫ぶイメージ」とは真逆ですし。そういった点も過去のファンから敬遠される理由となったのでしょうか?

M-11. The Hands That Built America
このアルバム用の新曲2曲のうちのもう一方は、映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」の為に作られたもの。この春にオフィシャルサイトにて新曲の制作過程をネット中継するという試みがあったけど、その時に作られていたのがこの曲。こちらもプロデュースはウィリアム・オービット。バンドの演奏にストリングスやマリンバが加わり、更にその上にウィリアム得意のシンセサウンドを被せるという、独特な作品になってます。マリンバが使われている点やコード進行がちょっとROLLING STONES "Under My Thumb"に似てなくもないですが、これも静かに流れていき徐々に盛り上がっていくという、以前の彼等とは一線を画するタイプ。

M-12. Discotheque (New Mix)
「POP」からの先行シングルで、当時トップ10ヒットを記録。VILLAGE PEOPLEのパロディ的なPVも当時話題になりました(あのU2が真顔であんなことを‥‥っていう驚きが強かったかな)。この曲はある種のファンにとっては「悪しき存在ナンバー1」なのではないでしょうか。とにかく「POP」というアルバムがファンにあまりいい印象がないのは、この曲のイメージが強いからでしょうね(しかしながら、こういったタイプのディスコチューンはこれ1曲だけなんですけどね。ま、それだけ印象が強かったってことでしょう)。この曲もベスト盤ように新たなミックスで収録されているのですが‥‥これがビックリするようなバージョンになってます。これ、知らない人が聴いたらこっちがオリジナルバージョンで、「POP」に収録されている原曲の方をリミックスと勘違いするんじゃないかな? ドラムビートは生ドラムを前面に出し(というよりも「POP」では打ち込みと同期してたリズムを今回ちょっといじっただけなんだろうな、これ)、ボーカルエフェクトを抑え、よりロック色が強いアレンジに作り直してるんだわ。オリジナルバージョンも好きだったけど、こっちも十分にかっけー。でね、この新しいミックスで聴くと、曲の骨格がよく見えるんだわ。勿論オリジナルの方でも十分に気付いてはいたけど、このロックバージョンの方で聴くと‥‥それ以前のU2と何ら変わってないんだわ、根本の部分。そこまでたどり着かずに苦手意識を持って接した人達が、「POP」というアルバムを敬遠していったんだろうね。このベスト盤一番の収穫。それは「POP」アルバムの再評価だったのではないでしょうか?

M-13. Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me
'95年公開の映画「バットマン・フォーエバー」主題歌として当時大ヒット。これまでオリジナルアルバムには未収録だったナンバー。「ZOOROPA」から「POP」への橋渡し的作品として当時注目されたものです。何せプロデューサーの名前にみんなビックリしたもんな。かのネリー・フーパーを起用ですから(SOUL II SOULの主要メンバーで、後にBJORK等を手掛けるヒットメイカーに)。そのままアルバムも手掛けるものと思ってたら、「POP」ではハウィー・Bですからね。ミドルテンポのヘヴィなリフにストリングスという観点からLED ZEPPELIN "Kashmir"を彷彿させる、ちょっとそれまでのU2とは毛色の違うタイプじゃないでしょうか。だってU2とZEPってイマイチ結びつかないもん。軽めに唄うボノのボーカルにラジオボイスのエフェクトがかけられ、更に軽薄な空気を作ってますが、演奏は本当にヘヴィなんだよね。「POP MART TOUR」でも演奏されていたことから、やはり彼等にとって大きなターニングポイントとなった1曲なのかもしれませんね。

M-14. Staring At The Sun (New Mix)
「POP」からのサードシングル(セカンドだったっけ? "Last Night on Earth"とどっちが先にリカットされたんだっけ??)として当時ヒットした曲。今やこの曲のイントロが流れただけで「ガチンコ!」の絵図らとナレーションが頭に浮かんでしまうという、困った存在に。しかしながら、当然のように名曲なんですけどね。「テクノロジー3部作」には毎作かならず「歌モノの名曲」が1曲収められていますが("One"であったり"Stay"であったり)、これもその流れにある曲でしょう、アレンジこそ現代的ですが。この曲も含めて「POP」収録曲は今回全てニューミックスで収録されています。決してU2がこのアルバムを気に入っていないからではなく、ファンの間での評価が低いこのアルバムからの楽曲に新しい服を着させて、違った印象を与えよう‥‥そうい意図の元に今回のリミックスが行われたのではないでしょうか? そしてその構想は次の曲にも言えることなのですが‥‥

M-15. Numb (New Mix)
「ZOOROPA」からのファーストシングルで、リードボーカルをギターのエッジが取った1曲。より実験的要素が増した「ZOOROPA」を象徴する1曲だけど‥‥当時思ったのは「何でアルバムからの1発目のシングルに、エッジが唄うこの曲を選んだのか?」ってことでして‥‥その疑問は今でも解けたわけでもなく。ま、アルバムの内容が実験的なら、シングルの選曲も実験的にいこうってことになったのかもしれないし。エッジの抑揚がない唄い方が特徴のこの曲、そこに被さるボノのファルセットが対照的で、機械的な冷たさがあったり、人間的な温もりを感じ取れたり。当時はそんなに好きな曲でもなかったんだけど、こうやって聴くと意外と悪くない。この曲も「POP」からの楽曲同様、そういった印象を拭い去るためにか、新たなミックスで収録されてます。ボーカルトラックをいじることによって、よりソウルフルな印象を受けます。‥‥そうか、これって所謂「プラスチック・ソウル」((C)デヴィッド・ボウイ)だったのか‥‥!!と、今頃気付いてみたりして。SMチックなこの曲のPVを、当時の彼女と「なんかエロだね?」とか言いながら観てたことを、今急に思い出しました‥‥時の流れってやつは残酷なもんですね‥‥ええ。

M-16. The First Time
「ZOOROPA」からのアルバムトラック。ボーナストラックを除けば、アルバム本編はここで終了となります‥‥「THE JOSHUA TREE」からの流れと、デビュー時から持っていた色との融合、そこに重なる「今」の音‥‥寡黙ながらも「U2の今」を象徴する作風となってます。アルバム中特に重要な曲というわけではなかったはずですが、こうやってこの位置にこの曲を持ってこられると、何かとても深い意味があるのでは‥‥と思えてきます。前のベスト盤が "All I Want Is You"という楽曲で終わっていた作風(正確にはその後に、シークレットトラックとして "October"があるのですが)と対を成させる為に選曲されたのかもしれません。そういえば「ZOOROPA」からは、アルバムを象徴するような "Zooropa"や"Lemon"といった曲が取り上げられませんでしたが、それはバランスを取るためだったのでしょうか。ちょっと残念です(その分、ボーナスディスクの「B-SIDES」にはその辺の曲が入ってますけどね)。

M-17. The Fly
「ACHTUNG BABY」からの先行シングル。このベスト盤では日本盤とイギリス盤にのみボーナストラックとして収録されています。ホント、何でこの重要な曲が選択されなかったのさ?って疑問に思ってたんだけど、この曲は当時アメリカではヒットしなかったんだよね、残念ながら(確かシングルとしてリリースされたのは日本とイギリスだけだったんだっけ? アメリカではラジオプレイの成績のみでビルボードの下位にランキングしたんだっけか?)。そういうこともあって、アメリカ盤未収録なのでしょうね。良くも悪くもこの1曲でその後のU2の路線が決まってしまったようなもんですからね。テクノのように反復されるギターリフ、リズムはあくまでダンサブルに、しかし曲自体はシンプルなロックンロールだったりする、そして歌はどことなくゴスペルの香りがする(サビの部分でのボノ&エッジによる掛け合い等)‥‥「ACHTUNG BABY」を象徴する1曲であり、それまでのU2のイメージを見事にぶち壊した記念すべき曲なのですよこれは。へっ、当時はどう思ったかって?? そんなの、一発で気に入ったに決まってるじゃないか! これを一聴してそのカッコよさを理解できない奴なんているのかな? 当時のツアーでは "Zoo Station"に続いて2曲目に演奏されていた、ライヴでも重要な曲。そしてボノに新たなキャラクターを与えた曲でもあります。


というわけで長々と全曲解説をしてしまいましたが、全てを通して言いたかったこと、それは「'90年代のU2は誤解され過ぎている」ってことです。随分前から自分の周りにも「『WAR』とか『THE JOSHUA TREE』は好きなんだけど、ねぇ‥‥」という声があったし、「POP」の頃なんて散々でしたからね。実は、このサイトを始めた頃に、最初のベスト盤と「POP」を取り上げることで「結局U2のやってることは何も変わってないんだよ!」ってことを力説しようと企ててたのですが‥‥見事に頓挫しました。というわけで、このベスト盤も出たことですし、ここらでちゃんとリベンジしておかなければ‥‥と考え、こんなに長編大作なレビューを書いたわけです。

じゃあ、そのU2の「ずっと変わってない根本の部分」って何??って思うでしょ。お答えしますよ、ええ‥‥それは「自己の矛盾と戦っていくこと」ですよ。勿論楽曲的にはスタイルやアレンジこそ時代によって変化していったものの、楽曲の根本にあるものは何も変わってないし、そういった思想的な面でもいろいろ騒がれながらも、俺は何も変わってないのでは‥‥と思うのです。

「POP」というアルバムの中に、"Please"という曲があります。シングルカットもされていますが、残念ながら今回はこのベストに収録されませんでした。しかし、この1曲こそがその「何も変わっていないU2」を端的に表した楽曲なのです。それは楽曲的にもそうですし、唄われている内容についても同じことが言えると思います。俺がそのことに気付いたのは、アルバムを最初に聴いた時ではなく、それから数ヶ月経った後に観た「MTV MUSIC AWARDS」でのこの曲のライヴででした。今売られている「POP MART TOUR」のDVDを観てみるといいですよ。この曲がかなり重要なポジションを占めているのですから(しかもこの曲からそのまま地続きで名曲 "Where The Streets Have No Name"に繋がっていくのですから、もうそれだけで必見ですよ)。まだ観てない人、このベストで彼等に興味を持った人は是非チェックしてみてください(あ、そういえばこのベストの初回盤にはボーナスDVDが付いてて、そこに "Please"のライヴ映像が収められてるんだった。残念ながら "Where The Streets~"に行く前に終わっちゃうけどね)。

というわけで、誤解されまくりのU2。R.E.M.やRADIOHEADやNINE INCH NAILSやAEROSMITH、BON JOVI、ROLLING STONESにさえも影響を与え続けている、恐らく現役のロックバンドの中でも最高に画期的な存在なのではないでしょうか? これから聴いてみようという人には本当ならオリジナルアルバムに手を出して欲しいところですが、まぁ入門編としては十分な内容かと思います。新曲もいいですしね。ベスト2枚共買って、その音楽的成長を聴き比べてみるのもいいのではないでしょうか。



▼U2『THE BEST OF 1990-2000』
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投稿: 2002 11 14 05:29 午後 [2002年の作品, U2] | 固定リンク

カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『BYE BYE 最後の夜』(2002)

  前作「色っぽい女~SEXY BABY~」でのレビュー最後で「秋にもまた新曲が出そうな予感」と書いたら、やっぱり当たりました。残念ながら自分が希望したナース服でのコスプレは娘。本体での新曲(「ここにいるぜぇ!」)にて実現という形になりましたが(しかも梨華ちゃんはナース服着てないし)、この夏以降のハロプロ大改革にて殆どのメンバーがふたつ以上のユニット掛け持ちがなくなった中(本体以外にもうひとつ、という意味)、唯一タンポポとカン梨華のふたつを掛け持つことになった石川梨華。如何に事務所が彼女を「顔」として売ろうとしてるかが伺えるのだけど‥‥弱いんだよね、何故か。ルックス的には文句なしなんだけど決定力不足。歌が上手いわけでもなく、喋りも中途半端、しかも笑いのセンスは‥‥何も言うまい。そんな梨華ちゃんを「レンタル」名義でセンターに立たせる、ある意味反則なユニット。それが「カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)」。

  そんなカントリー娘。からこの10月に、唯一のオリジナルメンバーだったりんねさんが卒業しました。正直、これはかなりショックでした。一連の構造改革で正直一番衝撃を受けたのは、タンポポ解体よりもこっちの方かもしれません。例えれば「モーニング娘。からなっちが抜ける」ようなもんですから‥‥考えられますか? カントリー娘。イズムを知る唯一の存在、それがりんねさんだったわけですが、その柱がなくなった今、どれだけカントリー娘。というユニットに、そしてその名前や活動内容に意味があるのか。コアなファンと同じように、今後のカントリー娘。について心配してしまった俺でした。

  そんな中、前作から7ヶ月振り、カン梨華としては4作目となる新曲が発表されました。りんねさんが去った後だけに意味深なタイトルですが、歌詞の内容は男女のそれのことでした。というわけで深読みするのは今回止めます。

  前作を通過し音楽的には何でもありな状態の中、今回も「何もカントリーの名のもと、そんな曲調でなくても‥‥」な感じの曲をドロップしたカン梨華。季節柄、クリスマスをイメージさせる煌びやかなポップソングとなっています。どことなく「タンポポでやっても違和感ないよな、これ」な印象がありますが、要所要所にオーケストラヒット(サビ等で「ジャンジャンッ」と入るシンセ音)を入れることで、「恋人は心の応援団」の流れを組むアレンジになった、と言えなくもないですね。けど、「初めてのハッピーバースディ!」や「恋人は心の応援団」にあった(音楽ジャンルとしての)カントリーテイストは完全に皆無。普通のポップソングですこれは。

  アレンジはカン梨華初登場の酒井ミキオが担当。自身もソロシンガーソングライターとして活躍する彼は、過去にはプッチモニ「ぴったりしたいX'mas!」、ミニモニ。「ミニ。ストロベリーパイ」、後藤真希「特等席」を手掛けています。タイプとしては今回「ぴったりしたいX'mas!」に一番近いかもしれませんね(あの曲もクリスマスをイメージさせる曲でしたし)。

  この曲、テレビで唄ってるところを観ると印象悪いんですよ‥‥メンバー3人の歌唱力があまりにも‥‥で。CDだとホント安心して聴いてられるのに、テレビでは石川さんだけでなく、里ちゃんもあさみもかなりヤバめ。ダンスで誤魔化しが効かない、これまでで一番ギミックが少ない純粋な「ポップソング」として仕上がっているだけに、やはり歌の未熟さが目立ってしまうのは仕方ないのかなぁ‥‥ま、濃いヲタからすれば、そのアンバランスさに萌えるのかもしれなけど。

  さて、今回もカップリング曲は新曲ではなく、タイトル曲のリミックスでお茶を濁してます。しかし、今回の「Airly X'mas present Remix」と名付けられたこのバージョン、かなりいい出来なのではないでしょうか? これまでのカン梨華別バージョンの中では一番だと個人的には思ってます(そもそも「初めてのハッピーバースディ!」はカントリーバージョンが先にあって、その後にシングルバージョンが出来たんじゃないか?と個人的には思ってるので、あれは別として考えましょう)。リミキサーはREOという人。ゴメンナサイ、この人完全に知りません。勿論ハロプロ初登場。更にMCとしてKYORICKという人が参加してますが、この人はドナウディ3というグループ(恐らくヒップホップユニットでしょう)のメンバーらしいのですが‥‥ゴメンナサイ、全く知らないどころかGoogleの検索にも引っ掛かりませんでした。どなたかご存じの方がいらしたらご連絡を。

  さて、そのアレンジなんですが。テンポをオリジナルバージョンよりも落とし、もっと跳ね気味にリズムを強調。コード使いもオリジナルの判りやすいシンプルなものから、ちょっと凝ったコード進行になってたりして面白いですね。所謂「つんく♂流R&B」の流れにあるアレンジなのですが、これまでのものよりも安っぽさを感じないんですよね。初登場のREOという人が関わったことによるのでしょうか? よりクリスマスっぽさが強調され、歌詞の切なさもより判りやすく表現されていると思います。うん、正直こっちの方が好き。

  このリミックスバージョンを聴くと、この曲がタンポポ「BE HAPPY 恋のやじろべえ」と同じ流れにある曲だというのがよく判ります。純粋な正統的ポップソングにヒップホップ調リズムを組み合わせる‥‥多少試行錯誤があるようですが、過去にもつんく♂は「そうだ!We're ALIVE」に至るまでにいろいろな実験や挑戦をしてきています。そういう意味ではこれも近い将来に誕生するであろう名曲への習作になるのかもしれません。

  というわけで、最近のハロプロ関係の楽曲は必ずといっていい程賛否両論挙がりますが、今回の曲、特にリミックスバージョンの方はかなり好きな部類に入る楽曲であります。この感じでいくと、間違いなく来春には5枚目のシングルが発表されるんでしょうね。そして、カントリー娘。としてのセカンドアルバムは‥‥というよりもカントリー娘。としての存在意義を問われる今、セカンドアルバム発表は本当にあり得るのか? それとも次はカン梨華としてのアルバム発表となるのか‥‥ん、それ、レンタルの意味ねぇし。単に梨華っちのソロアルバムにカントリーがゲスト参加してるのと同じじゃねぇか。いっそのこと「石川梨華(モーニング娘。)にカントリー娘。」に改名した方が(略

  まぁ何はともあれ、俺はこの曲を支持します。梨華ちゃんカワイイし♪



▼カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『BYE BYE 最後の夜』
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投稿: 2002 11 14 12:00 午前 [2002年の作品, カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2002/11/04

the pillows『Thank you, my twilight』(2002)

  先日、友人と電話で話していた時、The ピーズの話題から偶然、the pillowsの話題になり(the pillowsのドラム・しんいちろうが現在The ピーズでも活躍している為)「何故the pillowsはここまで過小評価されてるんだろうね?」と互いに疑問を吐き出したりしてる中、「こないだ出た新作っていろんなサイト見ても評判いいようだし、今度余裕が出来たら買ってみよう」って話をして。

  更に数日後、先にこの新作「Thank you, my twilight」を買った彼。うちの掲示板にも「買って間違いなし。絶対にとみぃ気に入るし。気に入らなかったら俺が金出す!」との書き込みをしてる頃、偶然にも俺はその書き込みを見ぬままCD屋へ駆け込み、このアルバムと、同時発売のBサイド集「Another morning, Another pillows」を買ったのでした‥‥こういうのってシンクロニシティーって言うんでしたっけ?

  というわけで、前振りが長くなりましたが、当サイト初登場のthe pillowsです。これまで何曲かを耳にした程度、ルースターズ・トリビュートアルバムでのカバーは結構気に入ってた、といった印象しかなかった彼等。けど、これまでにも何度か余所のサイトで「pillowsいいよ、絶対に気に入るってば」てな感じで、数年前のアルバム「RUNNERS HIGH」を薦められたりしてたんですよ、あとベストアルバムとか。なのに何故か今まで手が伸びなかったthe pillows。勿論、ここ数作のアルバムに対する評価が高いことは知ってました。

  俺が完全に彼等に対する見方を変えたのは、最近とあるサイトで目にした、シンガー・山中さわおの「この10年間、大ヒットとかなかったけど、それでもいい10年間だったと思う」というような発言でした(大体こんな感じだったと思いますが、細かなディテールは多分違うと思います)。大してファンでもないのに、この発言にちとウルッときちまった俺。何か、カッコイイな、と。ただそれだけ。もうそれだけで、普通に応援したくなった、音も聴いてないのにね。

  それともうひとつ‥‥話が前後するけど、昨年の「アラバキ・ロック・フェス」での彼等のステージを観た前述の彼からの、彼等の評判。これがかなり好印象だったことを思い出したんだわ。

  たったこれだけの理由で3,000円もするアルバムに手を出すなんて、ちょっと馬鹿げてるかもしれないけど、何故か自分の中で確信めいたものがあって。勿論、たった数曲ながらも彼等がどんな音楽をやってきたかをある程度認識してたってのも大きいんだけどね。

  で、その自分の予想大的中。これ聴かないとヤバイよ、マジで。すんげぇ大傑作。さわおくんに「君、今まで何やってたの?」と問い質されても素直に謝るしかない、ホントそんなかっけーロックアルバム。40才に手が伸びそうな連中がやるようなロックかよこれが!?って思える程に活き活きしてて、変な「出来上がり感」がないんだよね、10年選手特有の、あの落ち着きというか安定感が。いや、演奏は確かにしっかりしてて余所の若手バンドよりも安定感は確かにあるんだけど、もっとこう‥‥バンド特有のグルーヴ感ていうの?そういうのが未だに若々しいというか‥‥聴いててこっちが高揚してくる、そういう芯の熱さがこっちにまで十分伝わってくる。この年代のバンドにしては、ホントにそういう要素をかなり強く感じられるわけ。

  曲はね、もう文句なし。いきなり引きずるようなヘヴィーリフでスタートする"RAIN BRAIN"から、聴いててマジで泣けてくるタイトルトラック"Thank you, my twilight"、そしてラストの疾走ナンバー"Rookie Jet"まで、40分少々のランニングタイムがあっという間。で、気付けば二度、三度と繰り返し聴いてるし。楽曲のタイプも様々な要素を感じ取ることが出来て、例えば"RAIN BRAIN"なんてグランジっぽいリフを持ちながらも、サビはCHEAP TRICKにも通ずるようなポップなメロディを持ってるし、"ビスケットハンマー"もパワーポップに通ずる演奏/メロディだし、"バビロン 天使の詩"なんてイントロだけだとモッズっぽいイメージなんだけどサビで一気に甘いメロディが爆発するし、"My Beautiful Sun (Irene)"は近作のくるりにも共通する色があるんだけど、もっとこっちの方が「単なる味付け程度」って印象で、あくまで「the pillowsというバンドのポテンシャルがまずありき」という強い主張を感じるし‥‥ってこのままいったら全曲解説しそうな勢いだな、こりゃ。とにかく全曲捨て曲なし。どれも名曲、そしてそれら11曲が完全なひとつの流れを持っていて、それが間違った方向に進んでいない。その結果が「完璧なロックアルバム」というひとつの完成品を生み出したわけ。ホントこりゃすげぇアルバムだよ。

  ナンバーガールのような緊張感も、スーパーカーやくるりのような実験性の強さも、スピッツやミスチルみたいな大ヒットシングルも、GLAYやソフト・バレエのようなビジュアル要素もここにはない。だけど、ロック好きなら聴いて一発で魅了されちまうような特別な要素ががここには十分ある。それで十分じゃない? 30才過ぎたからって枯れる必要はなし。ロックはガキだけのものでもないし、かといって大人になって卒業するもんでもない。何時だってプレイヤーに載せれば、スピーカーからは俺らを「永遠の10代」に引き戻してくれるスペシャルな空間を作り出してくれる、それがロックでしょ?

‥‥なんて柄にもないこと吐かせちまう程、このアルバムは最高ってわけです。買って損なし。久し振りに「とみぃの宮殿」で大プッシュしたいアルバムに巡り会えた気がするよ。



▼the pillows『Thank you, my twilight』
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投稿: 2002 11 04 12:00 午前 [2002年の作品, pillows, the] | 固定リンク

2002/10/22

メロン記念日『香水』(2002)

  日記の方には既に何度か書いているけど、もうここで言い切ります。単純にいい曲。それ以上でもそれ以下でもないです。ホント、こんなにいい曲貰っちゃって。勿論、この曲にヒットして欲しいけど、改めてCDで何度も聴いてみて、もうそんな事どうでもいい‥‥ただこの曲がここで鳴ってくれていれば、それだけでいいです。

  この曲がメロン記念日というグループにとって、いろんな意味でターニングポイントになるのは明らか。例えば、これまでのシングルと違って柴田あゆみが完全にリードボーカルを取っている点。他の3人がコーラス/ラップと、完全に脇役に回ってしまった点。バックトラックの完成度、そしてメロディ。いろんな点でこれまでのメロン記念日とは一線を画する1曲となっていて、実際この曲を初めてライヴで聴いた時、正直戸惑ったのを覚えています。曲は聴いての通り、賛美歌のようなハモンドオルガンのイントロから入り、2ステップをリズムに取り入れたり、メロン初のラップが入ったり、かなり大人っぽい歌詞だったりで、聴いて一発で「いい曲だなぁ」と素直に思えたんですよ。けど‥‥それまで「メロン記念日=村田・斉藤・大谷・柴田」という風に「4人がかりでぶつかっていくのがメロン記念日」と認識していた自分は、この「リード/柴田、コーラス/他3人」という図式に違和感というか心苦しさを感じてしまい、複雑な気持ちのまま聴き終えたのを、つい昨日のように思い出します。

  けどね。テレビでのパフォーマンスを何度か見てるうちに‥‥決して柴田ひとりで成り立っているんじゃなくて、村田・斉藤・大谷の3人がいるから柴田が活きるのだ、曲に対するアプローチが変わっただけで、彼女達の一枚岩のような強靱さは何も変わってなかったのです。いや、逆にその4人の絆は更に強くなったようにさえ感じられるのです。

  確かにファンの観点からすれば、彼女達にはもっと"This is 運命"や"さぁ!恋人になろう"のようなパワーチューンを元気イッパイに唄って欲しいです。けど、押し一辺倒ではなく、今年は"夏の夜はデインジャー!"のような曲にも挑戦したし、そしてこの"香水‥‥デビューからの2年は試練の年でした。けど、そこで腐らずに前向きさを手にし、"This is 運命"を起爆剤として這い上がった去年~今年の彼女達。今年1年はメロン記念日にとって「挑戦の年」だったのかもしれません。来るモノは拒まず、それを上手く消化して血や肉と化す。2月リリースの"さぁ!恋人になろう"のジャケット写真と今度のジャケ写、彼女達の顔を見比べてみてください。違うんですよ、表情や雰囲気が。これに気付いた時、俺は「あっ、今のメロン記念日なら何やっても大丈夫だ」と安心できたのです。

  データについて触れておきましょう。タイトル曲とカップリング曲"恋愛レストラン"共につんく♂作詞作曲、アレンジには鈴木俊介氏が当たっています。鈴木俊介というとこれまでバンドサウンドを起用したアレンジが多かったと思うんですが、今回の"香水"は打ち込みメインとなっています。2ステップを取り入れたリズムパターンといい、ハモンドの音色といい、ストリングス系のシンセや生ギターのアルペジオといい、音の「隙間」を大切にした味わい深いアレンジに仕上がってます。音数がそれまでの楽曲と比べ断然少ないので、これまで以上に歌に重点が置かれ、柴田の切ない歌声がより強調され、村田・斉藤・大谷のコーラスもただのバックコーラスに終わらず、柴田のリードに上手く絡んでくるのでとても印象的です。テレビで唄う時は柴田の歌以外はリップシンクですが、ライヴで聴いた時は完全に4人でハーモニーもコーラスも付けていたので、余計印象に残ってます。

  一方カップリングの"恋愛レストラン"は、ちょっとGYPSY KINGS的なガットギターのストロークから始まる、マイナーキーのロックチューン。正直、こっちをA面(タイトルトラック)にしても、メロン記念日的には何ら違和感、ないですよね。ただ、それまでのパーティーロック的なノリではなく、もっとシリアスなファンクロックというか‥‥例えるならキザイア・ジョーンズっぽいんですよね。そこにつんく♂お得意の水っぽさが加わることによって、マニアックにならず親しみやすい触感になってる。"香水"で引きの美学を表現した柴田以外の3人は、ここで思う存分暴れてます。途中で入るシャウトも上出来。完全にロックしてるし、この曲を赤坂ブリッツのステージで唄う4人の姿が容易に想像できる1曲です。何で両A面とかにしなかったんだろう?って思える程の出来。カップリング曲なのに全然手抜きじゃないし、むしろこっちの方がうちを覗いてくれてるロックファンにすぐに受け入れられるんじゃないでしょうか。

  メロン記念日はデビュー曲以来、チャート順位を60位→42位→53位→28位→20位→14位、という具合に着実に伸ばしています。「大きな古時計」や浜崎あゆみ、嵐といった強力な上位陣がいるものの、ここでひとつ大きな「結果」を残してもいいんじゃないでしょうか? 少なくとも"香水"という楽曲はそれらのヒット曲と比べても、何ら引けを取ってないと個人的には思ってます。これまでリリースしてきた楽曲とはペクトルの向きが違っているものの、これま間違いなく「メロン記念日」。俺は断固この曲を支持します。



▼メロン記念日『香水』
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投稿: 2002 10 22 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

2002/10/14

SUEDE『A NEW MORNING』(2002)

suedeの不在が3年半も続くとは正直思ってもみなかった。前作「HEAD MUSIC」が'99年春、アルバムに伴う来日公演が同年9月だったから、日本のファンが最後に彼らと触れ合ったのはまる3年振りということになる。第2期とも呼べるサード「COMING UP」('96年)から「HEAD MUSIC」までの間が2年半だったが、それでもその間には2枚組のBサイド集「SCI-FI LULLABIES」のリリースがあったので、そこまでは長く感じなかった。が、今回の場合は特に長く感じた。その理由は、我々を凹ませる情報の方が多かったからだろう。まずサードアルバムから加わったキーボード/ギターのニール・コドリングの脱退。これは健康上の理由だから仕方ないとしても、ソングライターとしての活躍振り、そしてステージ上での佇まいを思い出してもらえば彼の損失が如何に大きなことか理解してもらえるだろう。そしてもうひとつは所属する「nude」レーベルの閉鎖。多額の負債が原因といわれているが、これがsuedeのアルバム制作費用が嵩んだことが原因では!?との噂もあった程だ。

このアルバムを作る上で、彼らは一度完成したものを廃棄している。トニー・ホッファーというBECK等を手掛けてきたプロデューサーとの共同作業で一度は完成したアルバムを、「今の自分達が作るべき音ではない」との理由でお蔵入りにし、結局スティーヴン・ストリートというブリット・ポップ・シーンに名を轟かせた名プロデューサー(古くはTHE SMITHS、BLUR等で有名)を起用、完成に至るのだった。

トニーを起用したという時点で、新作は「HEAD MUSIC」を更に押し進めたダンスミュージック寄りの内容になることは、何となく予想できた。が、今の彼らは完成したそれを聴いてそれを世に出すことを拒んだ(少なくともその時点では)。何故彼らは「今やるべき音ではない」と判断したのだろうか? 楽曲自体はスティーヴンがプロデュースしたものと同じ曲だったはずなのに、このアルバムは何故にこうも穏やかで深いサウンドを持った異色作になったのだろうか?

理由のひとつと考えられるのは、ブレット・アンダーソンのドラッグとの決別だろう。彼は過去(「DOGMAN STAR」時期)にも同じ問題を抱え、それを克服した後に心機一転、「COMING UP」という傑作を生み出した。しかし、上に挙げたような問題を幾つも抱え、彼は再びドラッグに走った。そしてバンドを立て直す課程で、再びドラッグを絶った。憶測でしかないが、彼がもし再びドラッグを克服していなかった、こういう作風にはならなかったのではないだろうか? 逆に、もし今でもドラッグを常用していたなら、このアルバムはトニーとコラボレートしたままリリースされたか、あるいはそれ以上にエキセントリックな内容になっていたかも‥‥今となっては何とでも言えるが、そういう幾つもの事柄を乗り越えたからこその産物だったのかもしれない。

このアルバムの面白みはそういった裏事情から見え隠れする音楽性の変化だけではない。純粋に楽曲が優れているのだ。装飾を出来るだけ排除し、よりコンパクトに、そしてメロディーが際立つようなアレンジや音使い。これらはプロデューサー云々というよりも、メンバーが望んだものなのだろう(プロデューサー選択は後付だった、と個人的には思っている)。そしてそれは上手く機能している。これは新たに加入したアレックス・リーの貢献度も大きいだろう。既にサマーソニックで彼らの最新ステージを目撃しているが、キーボードを弾くよりもギター(主にアコースティックギター)を持つ頻度の方が高い新曲群(とはいってもここから3曲しか披露されなかったが)は、どれもが「歌」「メロディー」をいう根本にあるものを大切に扱われたものばかり。勿論それまでの楽曲がそうではなかったという意味ではない。初期の3枚も勿論美しいメロディーの宝庫だったが、やはりそれ以上にビジュアルや歌詞の面の方が印象的だったし、前作はリズムがより強調された、suede流「時代との対等」を表現した作風だった。そういう意味で、今度のアルバムはそういった外的要素を取っ払ったことにより、これまで以上に根本にあるものが表出したのだ。そしてそれは過去のものよりもより洗練され、味わい深いものになっている。これは成長以外の何ものでもないだろう。

これまでの作品がライヴで演奏することやクラブで流れることを想定して作られた作品‥‥つまり「夜」や「閉鎖感」を彷彿させるものだとしたら、この「A NEW MORNING」は間違いなくお日様の光りを沢山浴びた、優しさや温もりを感じさせるアルバムだ。人の生活、あるいは人生においてネガティヴな時期というのは必ず何度も訪れる。がしかし、それらは決して終わらないものではない。「夜は必ず終わるもの」なのだ。suedeというバンドにとって「夜」は特別な要素、あるいはごく自然なものだったのかもしれない。けれど、彼らは朝が来ることを望み、そしてそれを喜んで受け入れた。「前とは違う」「自分の好きだったsuedeは終わった」といって切り捨てるのは簡単なことだろう。しかし本当にそうだろうか? もしかしたらこれこそがsuedeというバンドの、そしてブレッド・アンダーソンの本質なのかもしれない。

ロック特有の派手さ、そしてそれまであったようなグラマラスさはここには殆ど見当たらない。けど、俺はこのアルバムを今後愛聴していくだろう。ファーストアルバムや「COMING UP」と同じように、いや、あるいはそれ以上に。グルーヴィーなロックとはある種対極にある内容だが、それでも俺はこれを愛す。多分、この先何年も‥‥



▼SUEDE『A NEW MORNING』
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投稿: 2002 10 14 04:52 午後 [2002年の作品, Suede] | 固定リンク

2002/10/09

モーニング娘。『ここにいるぜぇ!』(2002)

  正直、現在某巨大掲示板に出回っている音源は極悪状態のもので、これを使ってこういうレビューを書くというのは正直気が引けるのだけど‥‥どうしても何か書いておきたい、この時点での自分の気持ちを文章にしておきたいと思い、こうやって「更新活動無期限停止」を一時ぶち破ってまでして、日記にではなく「とみぃの宮殿」の中のひとつのレビューとしてアップすることにしました。

  まず‥‥前回のシングル "Do it! Now" のレビューを書いた時点では、あの曲は単に「前進する為の決意表明」的内容と書きました。しかし結果は後藤の卒業・ハロプロ構造改革への序章に過ぎなかった‥‥ということになるのでしょうか。

  ということは、後藤が卒業した後に発表されるこの曲は、これからのモーニング娘。をアピールする曲になる‥‥そう考えるのは至極自然な流れですし、実際卒業ライヴから数日しか経っていない時期に新曲タイトルやジャケット写真、新しい12人編成のアーティスト写真が公表されたことからも、「後藤卒業」=マイナスイメージと思われないための「攻めの姿勢」が伺えます。

  実際にそれらが発表になってから新曲の音源がネット上に流出するまでの約10日間に色々な情報が飛び交いました。例えば‥‥

  ・センターは矢口と辻
  ・打ち込みと生バンドを融合させたロックチューン
  ・アレンジャーは前作に引き続き、鈴木Daichi秀行が担当
  ・どうやら曲調はスカコア調らしい

等といったところでしょうか。

  さて‥‥既に聴いた人の中では「かっけー」「最低」「前よりマシ」「完全に終わった」等々いろいろ感想はあるでしょう。ま、こういうのは毎度のことなのでここでは無視します(だってまだ発売されてないわけだし)。

  曲調は噂通り、スカコア調のアッパーロックチューン。基本的には生バンド(ギター、ベース、ギター)が演奏しているものに、鈴木氏特有のチープなシンセサウンドが乗り、一部生ブラスを取り入れているようです(恐らく松浦亜弥の "The 美学" と同じ手法でしょう)。最初、デジタル+生バンドのスカコア調と聞いた時、"青いスポーツカーの男" や "ちょこっとLOVE" といった過去の曲を思い出しましたが、実際にはそれに近いようでちょっと違うものでした。生バンド導入の割には音が軽い、といった声もありますが、基本的にスカコアって軽くて低音抑え気味でスカスカした音ってイメージがあるし、"そうだ!We're ALIVE" みたいな極太リズム隊はこういう曲調だとモッタリしてしまい、却って悪影響を及ぼすと思っているので、これはこれで正解だと思います。ま、正規のクリア音源を聴くまでは、それも何とも言えないですけどね。

  では、以下に数回聴いた感想を書いていきます。

  まず、メロディーが良い。サウンドや演奏云々以前に、1回目聴いたときに一番印象的だったのはこのメロディーでした。「アニメの主題歌みたい」という声を幾つか目にしましたが、要するに「判りやすい/覚えやすいメロディー」なのだと解釈しました。俺自身「アニメソング=ロックより劣る」という考えは持ち合わせていないので、この点は特に気になりません。むしろ、現在の彼女達のファン層を考えれば、こういう判りやすい/覚えやすいメロを持った曲を "そうだ!We're ALIVE" ~ "Do it! Now"の後にドロップするのは自然な流れなのかなぁ、と思ったりもします。また個人的にも、最近のヒップホップを意識した曲調が続いたことにちょっと疑問を感じていたので(特に新生タンポポにまでそれを導入した点や、メロン記念日新曲 "香水" 中間部のラップパート等)、流行から遠ざかっていても松浦の新曲やこの曲を好意的に受け入れているし、実際一発で気に入りました。

  で、続いて歌詞なんですが‥‥これまでの流れを組む、前向きな応援歌的内容と呼べるでしょう。が‥‥個人的にはそれだけで終わってないな、と思ってます。前回の曲のレビューで俺は、モーニング娘。は常に既成概念をぶち壊してきたことを踏まえつつ、「今回つんく♂氏はヲタの既成概念をもぶち壊した」と書きました。前回は言葉にこそしなかったものの、曖昧な形でそれは楽曲に表現されていましたが、今回はどうでしょう? いきなり唄い出しのサビパートで「Break Through 自分をぶち破れ!」と唄われています。さぁ‥‥ここからいきなり俺の妄想が入りますが‥‥

聴き手自身がそれまで『モーニング娘。』に対して持っていた既成概念をぶち壊す
           ↓
  「Break Through 自分をぶち破れ!」

なのであり、更に

既に次のステップへと進み始めた娘。から、戸惑っているヲタに対してのメッセージ
           ↓
  「ここにいるぜぇ!」というタイトル、あるいは
  「「I'm Here」 今ここで叫ぶぜぇ!」という歌詞

というように、この曲にはいろいろ深読み出来るメッセージが含まれているように感じられます。他にも

  「何がしたい?」とか聞くけれど  話せばビックリするじゃん
  知らない事とか始めると 超不安な 顔するじゃん

なんて歌詞もいろいろ深読み出来る‥‥「歌は国境越えて 何処までも進むよ」って歌詞も額面通りに受け取ればそれまでだし、以上のポイントからいろいろ深読みすることも可能だし。浅いようで深い、あるいはその逆もある。どれが正解でどれが間違いか。この曲の中でも唄われているように「答えは幾つもあるんだ」。答えはみんなの心の中に‥‥それでいいと思います。

  とにかく‥‥長い文章でいろいろ分析することも可能だろうけど‥‥気に入っちゃったんだよね、うん。確かに "そうだ!We're ALIVE" と比べればまだまだなのかもしれないし、実際今年ドロップされた3枚のシングルはどれもタイプが違うので正直比較する気にはならないんだけど‥‥出されたものを楽しめるか、楽しめないか。それでいいんじゃない? 楽しめなきゃ、次に期待するなり、諦めるなり見捨てるなり。それくらいシビアでいいと思う。もしかしたら大きな影響力を持つサイトが「今回の曲は糞」って言えば、右にならえで「新曲は糞」ってのが一般的評価になるのかもしれない。けど、俺は好きだし、そういう意見に左右されることはないし、最初に感じた自分の気持ちを大切にしたいと思う。売れようが売れまいが、「好き」って気持ちには影響しないし、しちゃいけないと思う。皆さんも「自分をぶち破」って、気持ちを貫き通してくださいね。

  後藤の抜けた穴は確かに大きいでしょう。けど、それを代役を立ててカバーするのではなく、12人がかりで一丸となって攻める姿勢、俺は支持したいと思います。それだけでも気持ち的にスカッとしたし。恐らくライヴもこの曲からスタートするんだろうなぁ‥‥「モーニング娘。第三章」をスタートさせるにはもってこいの曲だと思う。だって、これはまだ結論ではないんだから。「全てはまだ学ぶ途中」なんだからさ‥‥

  最後に‥‥エンディングの「Wow Wow Wow みんなロンリーBoys&Girls」ってリフレイン。ウルってきた。娘。の曲で泣けそうになったのは久し振りだなぁ。



▼モーニング娘。『ここにいるぜぇ!』
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投稿: 2002 10 09 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2002/08/06

BUGY CRAXONE『NORTHERN ROCK』(2002)

  今年(2002年)1月にリリースされたサードアルバム「This is NEW SUNRISE」以来、快進撃の続くBUGY CRAXONE。6曲入り、30分少々の作品集だったが、他アーティストとのコラボレート等、内容は60分以上あるフルアルバム以上の濃さだった。勿論、コラボ作以外の単体楽曲の勢い・深さもハンパじゃなく、やっとBUGY CRAXONEというバンドが「何か」を掴んだ記念碑的アルバムだったと言い切って間違いないだろう。

  3月まで全国ツアーを行い、その後も6月には単発ライヴやイベントへの出演を果たしながら、曲作りとレコーディングを続けていった。既に年明けのツアーでは新曲も数曲披露されていて、中でも新たなアンセムソングと呼ぶに相応しい"YOUR SUNRISE"という曲を聴いてしまった後となっては、これに続く新作への期待が否が応でも高まってしまうものだ。

  そんな中、3月のツアー中にメンバーが発言した通り、この夏に早くも4作目のアルバムがリリースされることが決定した。タイトルは「NORTHERN HYMNS」。北海道出身の彼等らしいタイトルだ。そしてその先行シングルとして7月にリリースされたのが、今回取り上げる「NORTHERN ROCK」だ。

  シングルとしては随分久し振りとなるが、ここに収められた3曲がまた濃いの何のって。タイトルトラック"NORTHERN ROCK"はボーカルの鈴木由紀子とギターの笈川司との共作となる、爆走ロックナンバー。ギターのコード使いといい、サウンド全体の渇いた歪み具合といい、鈴木のボーカルパフォーマンスといい、前作「This is NEW SUNRISE」の更に数歩先をそのまま形にしてしまったかのような楽曲だ。今回のシングルには、エンジニアとして山口州治を起用。前作でも1曲だけ参加していたが、今回は恐らくアルバムもこの人が手掛けているのだろう。THEE MICHELLE GUN ELEPHANT等を手掛けてきたこの人、この手の破壊力のある疾走ロックを録音させたら天下一品である。勿論、今回のBUGYはただ突っ走るだけではない。鈴木のボーカルからは力強さも優しさも、突き刺さるような鋭さも包み込むような温かさも感じることができる(そうそう、山口州治は他にもTHE YELLOW MONKEYなんかも手掛けてきた、日本でも数少ない本当の意味でのロック・エンジニア/ミキサーなのだ)。

  それにしても、この勢い‥‥オフを取らずにツアー終了後、そのままスタジオに入ったかのようなテンション。BUGYのライヴを観たことがある人なら判ると思うが、あのテンションをそのまま凝縮することに成功している。どちらかというと、これまでのアルバムは「ライヴの延長としての作品集」というよりは、カッチリ作り込まれた「鑑賞用作品集」という印象が強かった。しかし、それが前作辺りから「実験と割り切ったスタジオ作」と「ライヴを想定した『RAW(生)』な感じの録音」とが上手い具合に同居し始めていた。たった3曲を聴いただけで判断してしまうのは危険だと承知の上で発言するが、次のアルバムは実験要素もありつつ、それらをステージ上で公開実験してしまうような、そんな作品集になるのではないだろうか。

  さて、話題をシングルに戻そう。そんな実験的要素の強いトラック2"箱庭"は、前作でも感じられたポストロック的要素が前面に出たサイケナンバー。作曲がバンド名義になっていることから、恐らくスタジオでジャムセッションしながら作り上げていった曲なのだろうと想像できる。ワンコードで引っ張る感じは正にそれといった感じで、そんな単調になりがちなところを、彩り豊かな演奏と、鈴木の表現力豊かなボーカルとで、見事な「世界観」を作り出している。セカンドアルバム「歪んだ青と吐けない感情の底」の頃とはまた違った「冷たさ」を持った1曲。是非ライヴで聴いて・感じてトランスしてみたいものだ。

  最後のトラックは、そのセカンドアルバムに収められていた"月光"のリアレンジバージョンだ。最近のライヴで演奏されているスタイル(サビに入るとパンキッシュな高速バージョンになるアレンジ)でレコーディングされている。BUGYの場合、こういった感じで古い曲が全く新しいアレンジで演奏されることが多いので、いざライヴで演奏されても「あれっ?今の曲って‥‥聴いたことあるけど!?」って感じで気付かないことがある。いっそのこと、リアレンジ集とまでは言わないものの、ライヴ盤でもリリースしてもらうか、今後のシングルにそういった過去の楽曲のリアレンジ版ライヴテイクを収録して欲しいものだ。それらの楽曲が生み出された頃と今とでは、バンドの状況もテンションも全く違う。過去を否定する意味ではなく、バンドの「成長過程」として「記録」を残して欲しいと俺は思っている。

  たった3曲、ほんの15分のシングルなのに、それこそアルバム並みに充実した内容を持ったシングルだ。これを聴いてしまうと、否が応でもアルバムに期待してしまう。そして、当然ながらライヴにも行きたくなる。ツアーは10月、ファイナルは18日(金)、下北沢SHELTERだ。これは行くしかないだろう。会社を早退してでも行こうと思う。いや、もう決めた。この脂の乗りきった今のBUGY CRAXONEを無視する、あるいは見逃すのは犯罪に近い行為だ。悪いことは言わない。ポール・マッカートニーに14,000円払うなら、このシングルとニューアルバム「NORTHERN HYMNS」、そしてツアーのライヴチケットを買った方があなたの為だ。全部買っても6,000円以上ものお釣りがくる。それで前作も買って欲しい。いや、本当にそれだけの価値があるバンドだから。



▼BUGY CRAXONE『NORTHERN ROCK』
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投稿: 2002 08 06 12:00 午前 [2002年の作品, BUGY CRAXONE] | 固定リンク

2002/07/18

モーニング娘。『Do it! Now』(2002)

  何度も書いては削除して、そして違った視点から書き直しては削除、しまいには結論まで達する直前に保存しないままフリーズ‥‥なんてことの繰り返し。しかし、ようやくこの文をアップ出来そうな予感です。お疲れさま、俺(号泣)。

  さて、サブタイトルにもあるように、俺はこのサイトではネガな感情を題材にレビューをするつもりは基本的にはありません。唯一、例外もありましたが(言うまでもなく、市井ちゃんライヴの感想)、大半は「はじめに」にもあるように、「好きなものを、愛を持って取り上げる」のがこのサイトの趣旨。

   つうわけで、この賛否両論激しいモーニング娘。の新曲 "Do it! Now" に対しても、俺はこれまで同様の接し方でレビューしていきたいと思います。


  2ちゃんねるでの神光臨より早2週間近く経ち、最近ではテレビの歌番組でもそのパフォーマンスを目にする機会が増えたこの曲。それでもダメな人にとっては「糞・駄曲」でしかなく、既になかったことになっているようです。というよりも、この曲の発表により、いよいよ解散へのカウントダウンが進んだ、といったところでしょうか‥‥


そんな意見、それこそ糞くらえ。

おっと、失礼。それでは本題に‥‥

  まず最初に、俺はこの曲が好きですが、決して "そうだ!We're ALIVE" を越えたなんて言うつもりもないし、これっぽっちも思っていません。比較の対象として間違ってるのでは?なんて考え方もあるでしょうけど、例えばモーニング娘。の歴史を物語のような括りで表すとすると、手売り~ "ふるさと" までが第一章、後藤真希加入以降~ "そうだ!We're ALIVE" までを第二章と区切れると思います。その第二章の中に映画「ピンチランナー」&市井卒業までが第一節、4期メンバーが本格的に絡み始めた "I WISH" 以降~中澤卒業までが第二節、ミュージカル「LOVEセンチュリー」~ "ザ☆ピ~ス!" の9人時代を第三節、そして5期メンバー加入~さいたまスーパーアリーナ公演までが第四節。大まかに分ければこんな感じでしょうか?(ま、細かい区切りはその人の思い入れによってある程度変わってくると思いますが)

  では、この新曲はどの章の、どの節にあたるのか‥‥俺はこの新曲を「新しい展開への中継ぎ」、あるいは「過渡期的楽曲」というように捉えています。決して最高の楽曲でもないし、むしろこれまでのダンス☆マン路線を好んでいたファンを裏切るようなチープな楽曲と呼ぶことができるかもしれません。

  だけど、この時期に、このタイミングにつんく♂はこの曲をドロップした。そう、絶対に批判されることを判っていて彼はあえてそれを実行した。

  この曲のテーマは「決心」。「(恋愛・人生において)次に進む為の決意表明」的内容といえるでしょう。歌詞から受ける印象は、例えば "恋愛レボリューション21" や "そうだ!We're ALIVE" にあった「人生は素晴らしい」「日常の幸せ」のような溌剌とした前向きさではなく、どちらかといえばストレートな生真面目さ・重さを感じさせる作風になっているように感じられます。そういう意味では前作 "そうだ!We're ALIVE" とは対極にあると言えるでしょう。そう、今のつんく♂にはそうするしか為す術がなかったのです。

  常々書いていますが、間違いなく "そうだ!We're ALIVE" という楽曲は、つんく♂という作家、そしてダンス☆マンというアレンジャー/ミュージシャンとのコラボレーション作業の、良い意味でも悪い意味でも最高峰といえる内容でした。よく言えば「ブッ飛び過ぎ」で、悪く言えば「悪ふざけが過ぎる」1曲。細部までディテールが凝っていて、パフォーマンスにおいても完璧だったこの曲を越えるのは至難の業。恐らくこのウィアライが二人での共同作業の臨界点だったはずなのです。だから、それに続くアルバム『4th「いきまっしょい!」』にはそれを越えるようなテンションを持つ楽曲はなかった。それは仕方ないことなのです。このテンションの楽曲を連発されたら、間違いなくつんく♂はバーンアウトしていただろうし、それを表現する娘。自体にも影響が及んだはずなのです。

  娘。本体の新曲が7月後半に出ると知った時、俺は絶対にダンス☆マンとの作業はないな、と確信していました。もしそれをやってしまったら、それこそ "そうだ!We're ALIVE" という曲が嘘になってしまうから。あの時点で、ああいう曲をドロップしたことに何の意味もなくなってしまうから。だからつんく♂は新しい「道」を模索しなければならなかった。それには、これまで本体に導入したことのないアレンジャーを起用したり、毛色の違う楽曲を作ったり‥‥しかし、その結論‥‥答えは現時点では出せなかった。つまり、ここで提示された "Do it! Now" という曲は「答え」ではなく、ある意味つんく♂からの問題定義だったのではないでしょうか?

  つんく♂はモーニング娘。というユニットを使って、恐らくそれまでの歌謡界、あるいはロック界に根付いていた「既成概念」をぶち壊し続けました。メンバーのすげ替え・増減、ソロ・ユニット連発、そしてシャッフル。音楽的にも "LOVEマシーン" でのファンクミュージックへのオマージュ~ダンス☆マンの起用。そういう「ヒップホップ文化」的概念(音楽的なものだけでなく、そのスタイルも含めて。例えばWU-TANG CLANを思い出して欲しい)をひとつのヒントとして、モーニング娘。はその地位を確たるものにしていき、そのスタイルを最終的に "そうだ!We're ALIVE" という最強の楽曲で完成させた。つまり、みんなの知ってるあのモーニング娘。は、この曲で終わったのではなく、既に "そうだ!We're ALIVE" で終わっていたのです。しかしそれは決してネガなものではなく、清々しいまでの力強さと目映い程の光を放っていた。その光が強すぎて、受け止めきれない人も多々いた‥‥そんな中、我々の前に提示されたのは、それまでの路線を好んでいたファンも、そして前作が眩し過ぎて完全に中身を把握出来ずにいた人までをも困惑させる別路線。そういう意味では、つんく♂は「ヲタの既成概念をもブチ壊した」のかもしれません。つまり、それまで世間的には「変な/おかしな」と評されていた路線の楽曲が、いつの間にか当たり前に受け入れられるようにまで安定してしまった。と同時に、その路線も行き着く所までたどり着いてしまった。新しい第一歩を飾るような路線を模索するものの、その答えが出せないまま、現時点での苦悩・そしてその安定路線を好んだヲタへの問題提議をも形にしてしまったのが、この曲だった、と‥‥

  以上は俺の勝手な想像でしかないけど、俺はそういうことだと思っています。つまり、ここではまだ結論は出てないし、まだ始まってもいない。ここから何かを始めよう、新しい「モーニング娘。・第三章」をスタートさせるための決意表明なのですよ、この曲は。ここからまたモーニング娘。は更に大きくなる。そしてそれを娘。達本人に認識させる必要があった、と。"I WISH" という楽曲はその前後にリリースされたシングルと比べれば大ヒットしたとは言い難い1曲でしたが(それでも70万枚近いセールスを記録しているが)、あの曲が(歌詞の面でも、音楽的にも)果たした役割は大きかったと思うのです。そして今度の新曲は、もしかしたら後年同じように再評価されるようになるかもしれない。その可能性だけは秘めていると思うのです。

  音楽的遍歴だけ見れば、実験要素の強かった "Mr.Moonlight~愛のビッグバンド" や "そうだ!We're ALIVE" の方が「新しい始まり」を予感させるものだったのかもしれません。まぁその辺は人それぞれの受け取り方の違いこそありますが、俺はこの2曲も "I WISH" 以降の一連の流れと捉えています。その当時の在籍メンバーの違いこそあれど、やはり伝えたい事は基本的に同じだったと思うのです。

  しかし、今度の曲にはそういった実験的要素もないし、変わること・一歩前へ進むことの決意を唄っていたりする。まだつんく♂自身が見えていない「その先」を模索する最中にドロップしてしまったこの曲。そんなだから、万人の心を惹き付けるにはちょっと荷が重すぎるかもしれない。歌詞のストレートさの割りにアレンジはチープだし。いや、その対比があるからこそ、この曲は生きるのかもしれない。"I WISH" がその歌詞やテーマの割りに、ブラスアレンジ以外はチープなオケだったのと同じように、この曲もそこでバランスと取っているのだろうか?なんて思えてくるし。

  メロディーに関しては、ここ最近のつんく♂ワークスの中ではかなり潤いある哀メロだと思うのだけど、実際にはそう思わない・感じない人の方が多いようで‥‥俺の耳が腐ってるってことですかね? こういうマイナーメロにチープなオケを付けてしまったことが敗因だったのかなぁ(いや、まだリリース前なのに負けもなにも‥‥)。

  歌のパート分けにしても、つんく♂のマジックはまだ健在だと思います。たとえば、あの紺野がソロを取ったことでかなり「紺野がサブ・センター」というような強烈な印象を焼き付けたけど、実際には彼女、「一生忘れない」という1パートしかソロが与えられていない。あとは1番のサビ・コーラス後半と最後のリフレインでの同パートでの後藤とのユニゾンのみ。これだけで「あの紺野がセンター!?」という印象を与えてしまうのだから、これこそマジックではないでしょうか。それに加えて、相変わらず高橋と新垣は要所要所でポイントを押さえた好演を見せているし、小川も紺野同様出番が少ない割りにはインパクトが強いパートを与えられているし。石川も得意の台詞調パートで我々の耳を惹き付けるし、2コーラス目での矢口~飯田の長めのソロパートにはやはり安定感がある。勿論、メインを務める安倍・後藤には文句なんてあろうはずがないです。唯一残念といえば、保田のソロパートがないことですね。例えば、前回矢口は前に出る機会があったのだから、今回の矢口のソロパートを保田が唄っていたら、この曲はどうなっていただろう‥‥そういう意味では、よくよく考えるとやはりまだツメが甘かったのかなぁ?なんて気にもなってきたりして。

  昨日、某テレビ局の特番で、元SPEEDのhiroと今井絵里子の新曲と共に、この娘。新曲をオンエアされました。クオリティー的にどうだとか、どれが一番優れていたとか、そういうことを言うつもりは全くないです。しかし、これら3組の曲を聴き比べて‥‥何となくだけど、「その先」が少しだけ‥‥ほんの少しだけ見えたような気がしたのは、俺だけでしょうか? それが従来の楽曲を好むヲタにとって茨の道だとしても‥‥自分的にしっくりくる楽曲であるならば、そしてそれを表現する13人からまだ何かを感じることが出来るのなら‥‥俺は今後もモーニング娘。を応援していきたいと思ってます。決して俺はこの曲を無視しないし、これも「歴史のひとつ」として真剣に受け止めるつもりです。


‥‥とかいって、次の曲がまたダンス☆マン・アレンジのファンク歌謡路線だったとしても、俺を責めない方向でひとつ(爆)



▼モーニング娘。『Do it! Now』
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投稿: 2002 07 18 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2002/07/06

おどる♥11『幸せきょうりゅう音頭』(2002)

  ‥‥さて、ハロプロ史上、最大の問題作がこれだろう。モーニング娘。から安倍なつみ、飯田圭織、保田圭、吉辻希美、紺野あさ美、カントリー娘。からりんね、メロン記念日から柴田あゆみ、村田めぐみ、ソロ組から松浦亜弥、藤本美貴、そして童謡のおねえさんこと石井リカという3組中最も大所帯の11人から成る「おどる♥11」。3組中唯一、「世界最大の恐竜博2002」の公式テーマ曲、NHK「みんなのうた」という2大タイアップがついたこの楽曲、「何故に恐竜で音頭なの?」という疑問はさておき(いや無視しちゃいけないんだけど)‥‥4月時点での前評判通り「本格的な音頭」となったわけで。正直な話、これを6月頭にネット上で拾った時には‥‥驚いたというより「よくここまで思い切ったなぁ」という感心の方が強く、周りが糞だの終わっただのと嘆くのに反して、「うわ~よく練られた、いい曲じゃんか」と素直に思ってしまったのだが‥‥。

  そして、それ以上に衝撃的だったのが、テレビでのパフォーマンスだろう。辻の独壇場‥‥あややはヅラをつけてもあやや‥‥圭ちゃんの思いっきりの良さ、等々。「ハッピー♥7」のチアダンス的パフォーマンスよりも、「セクシー8」の似非エロ路線よりも、衝撃的で狂っていて笑えて、それでいて哀愁が漂ったパフォーマンス。後半ブレイク部の「ガオー!」で鳥肌と涙が(歌詞カードにちゃんと書いてあるし/苦笑)‥‥多分これが「音頭」じゃなかったら「つんく♂、バカだね相変わらず」って具合に絶賛されるのかもしれないが(いや、されないだろう。ま、少なくとも今よりはされるかもしれないが)、俺は「音頭」をここまで正面切ってやったからこそ絶賛したい。バカだよつんく♂。狂っててアホでバカバカしくて笑えて、それでいてちょっと悲しい。クソ格好良くて、それでいて哀れで。全然「負け組」なんかじゃないし。ウワッハッハ。

  この曲のアレンジはお馴染み小西貴雄。前回のシャッフルで10人祭を手掛けた人だが、今回は前回のような中途半端な出来ではなく、完全に「音頭」という命題に立ち向かい、尚かつコンテンポラリーなバックトラックに仕上げたのではないかと思う。小西作品の中では、個人的には5本指に入るものだと思っている。10人祭では邦楽界の重鎮が参加していたが、今回は更に人間国宝と呼ばれるような演奏者まで参加している。かと思えば「色シャッフル」にも参加していた元T&Cボンバーの小湊美和がお囃子で参加。カップリング曲では稲葉貴子もコーラスで参加してるし、こうやってハロプロから巣立っていった人間(稲葉は違う)がレコーディングに参加するというのは、非常に興味深い。確かにこういう曲にはもってこいの人だし、小湊は。

  このユニットでの収穫といえば、上記のようなポイントもあるのだが、個人的にはそれに加えて紺野がいよいよ自身の個性を見つけつつある、という点を挙げておきたい。特にc/w曲"よくある親子のセレナーデ"は、3組中最も興味深く聴くことが出来る。5期メンが頑張ってる「ハッピー♥7」よりも、一番安定感がありそうな「セクシー8」よりも、クセの強いなっち・圭ちゃん・かおりん(=フラット3/笑)、唯一無二であるのの、良くも悪くも相変わらずのりんね、この中に入ったら伸び悩み!?なメロン柴田&大谷、もはや貫禄といえるあやや、意外と使い回し悪そうなミキティ、まだまだ未知数の石井ちゃんといった強者揃いの中、紺野の声がとても個性的で、かなり通った声質をしているのだ。ミュージカルを観た時にも感じた事だが、この子はトレーニングさえ積めば将来、かなりいい歌い手になると思うのだが‥‥梨華ちゃんが越えた壁を、この子はまだ越えられずにいる。加入から早くも1年が経とうとしている。このまま伸び悩んだままなのは惜しい。機会さえあればちゃんと実力を発揮するのはミュージカルでも実証済みなので、今後もっとチャンスを与えてあげて欲しい(と思ったら、さっきテレビで初披露された本体の新曲では、なっち&ごっちんに加え、高橋&紺野もメイン級の扱いだった。ニヤリ)。

  いろんな所で大絶賛し、「これが一番売れなきゃ嘘!」と言ったものの、世間受けは一番悪いのはこの俺にも嫌という程判ってる。けど、3組中どれが一番長生き(ロングヒット)するか‥‥と問われれば、俺は間違いなくこの"幸せきょうりゅう音頭"だと思うのだが‥‥。

●総評

  2002年に入り、CDのセールスがかなり低調だ。娘。本体も40万枚を越えるのが精一杯で、未だにミリオン突破したシングルは、まだ今年はない。アルバムは相変わらずベスト盤が強いし、あゆやヒッキーといったところは安泰だ。ミスチルも何とかミリオン達成し、昨年秋にリリースされたモンゴル800はインディーズながら200万枚を越える予想外の大ヒットとなった。娘。のアルバムも何とか50万枚を越えたものの、以前のセールスと比べれば確かに精彩を欠いたセールスといえるだろう。今回のシャッフルユニットも、それぞれが10万枚を越えればまぁいい方なのだろう。ということは、ヲタさえもが見放したということになるのだろうか‥‥まあいい。それでダメになるようなハロプロならダメになってしまえばいいし。個人的には熱くなりながらも、数歩退きながら見続けていきたいと思う。

  過去3回のシャッフルユニットを回想して思うのは、個人的には今回の「幸せシャッフル」が歌詞・楽曲・イメージやビジュアル等、最もしっくりくるということだ。全体的には今年が一番面白いと思う。それは「色」だとか「祭り」だとかいったテーマではなく、「幸せ」という至極抽象的なテーマを設けたことによって、各ユニットがこれまで以上にてんでバラバラな、際立ったものになったからだ。勿論各個人の感じ方はバラバラなので、「年々クソになってくね?」って落胆してる人もいることだろう。重度なヲタになってしまった今でも俺は生粋のロックファンなのだ。過去のつんく♂風に言えば、今回が一番「ロックしてる」と思うのだが‥‥。



▼おどる♥11『幸せきょうりゅう音頭』
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投稿: 2002 07 06 01:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

セクシー8『幸せですか?』(2002)

  モーニング娘。から矢口真里と後藤真希、石川梨華、吉澤ひとみ、ソロとして頑張ってる平家みちよ、メロン記念日から大谷雅恵、カントリー娘。から里田まい、そしてココナッツ娘。からアヤカという8人から成るのが「セクシー8」。その名の通り、各ユニットのキレイどころを集めた(中には「それ、厳しいんちゃう!?」と首を傾げたくなる人もいるが‥‥)のだが‥‥これも衣装にネグリジェのようなレースのドレスを使うという羞恥プレイ。やはり罰ゲーム!?(苦笑)

  アレンジにモーヲタ界では悪名高い(!?)鈴木Daichi秀行を起用。案の定、曲が世に出回る前から不評の嵐で「糞曲」呼ばわり。ま、確かに直前にリリースされたカン梨華「色っぽい女 ~SEXY BABY~」のアレンジがああだったこともあり(それ以前に曲も凡作だったが)、個人的にも覚悟していたのだが‥‥これ、そんなに酷評される程の出来だろうか? 個人的には平均点は軽くクリアしてると思うが。確かに娘。本体のシングル曲と比べればレベルが低いし、1年前のつんく♂作品と比べると「?」と感じる箇所が多々あるのも事実。けど、曲自体は悪いと思わないし、アレンジも鈴木氏のこれまでの作品と比べればかなり高ランクの出来だと思うが(あくまで「鈴木Daichi秀行が手掛けた曲」の範疇で)。カン梨華ほどの安っぽさはないし、転調等のアレンジもよく練られていると思う。

  しかし、今‥‥2002年にハロープロジェクトというユニット(団体)が今更こういうタイプのダンスミュージック(とあえて呼ばせてもらう)を再びやることに、何のメリットが、どういう意味があるのだろう、そういう疑問はある。モーニング娘。でいえば「Memory 青春の光」で生バンドでやったような路線だし、つんく♂的にいえばシャ乱Qが得意とする路線のひとつだといえる。アレンジ的には現代的になっているものの、曲のタイプでいえば2~3年前に一度披露した手札だ。これを「原点回帰」と取るか、「手詰まり」と取るかで評価は真っ二つに分かれるだろう。が、個人的にはこれを「原点回帰」とも「手詰まり」とも思わない。確かにつんく♂自身の作曲に関してはバースト寸前な気がするが。

  ファンというのは実に我が儘なもので、これまでと違った路線を(しかも自分が想定していたものと全く違った色で)見せれば非難し、逆に過去の路線を再び取り出すと「終わった」とか非難する。メロディーや楽曲そのものの出来が糞ならばしかたないが、そこまで非難されるような曲でもない時に糞よばわりされると‥‥ちょっと退いてしまう。まぁそれだけハロプロ関連、特に娘。絡みの場合、聴き手が製作陣や娘。に対して用意するハードルが高く、内容・ビジュアル・パフォーマンス全てに高品質なものが求められているということなのだが。



▼セクシー8『幸せですか?』
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投稿: 2002 07 06 12:10 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

ハッピー♥7『幸せビーム!好き好きビーム!』(2002)

 3年目のシャッフルユニット、今年のテーマは「幸せ」だそうだ。1回目が「色」、2回目が「祭り」というように、これまでとは何となく趣旨が違うような今年のテーマ。そもそもモーニング娘。も「ハッピーサマーウェディング」以降のシングル曲はこの「幸せ」テーマだったと言い切ってしまっても過言ではなく、だからここで改めて「テーマ・幸せ」と言い切られてもなぁ‥‥と感じてしまう。ここ最近の楽曲が何となく低年齢層へアピールするようなものが多く(ミニモニ。やごっちんの新曲等)、そう考えると今回のシャッフルも‥‥なんて深読みしてみたが、いざ3組を見てみると、とてもバランスが取れた構成になっていると感じる。

  これまでは少人数組=その年の事務所の推しメンバー=勝ち組(あか組4、三人祭)、大所帯=余り物=負け組(青色7、10人祭)という公式が成り立っていたし、実際それはセールスにも反映されていた。が、今年はちょっと違う。もはや「シャッフル=推しメン品評会」なんてものはここにはない。一見負け組チックな「おどる♥11」にはあややも藤本美貴もメロン柴田もいる(かと思えば前回「10人祭」に参加したメンバーが6人もいたりするが‥‥)し、勝ち組的な「ハッピー♥7」には加護やミカといったミニモニ。組(ヲタ的にはミカは不評のようだが、世間の小さなお友達にはミカ、大人気だそうだし)がいるかと思えば、5期メンバーが3人もいるし。そして中立の「セクシー8」が最もゴージャスなメンツ(後藤、石川、吉澤、矢口)なのだから、本当に読めない。もはやシャッフルユニットは、本当の意味での「お祭り」へと昇華したように感じられる。

  2002年7月3日に3枚同時発売された「幸せシャッフル」企画。今回は8ユニット(グループ4組、ソロ4人)総勢26人による過去最大規模。前回の20人からレフア(ココナッツ娘。)が脱退し、娘。5期メンバーの4人(高橋、小川、紺野、新垣)、藤本美貴、カントリー娘。に加入した里田まい、童謡のおねえさんこと石井リカの7人が増えたわけだ‥‥って一般の方々にとっては、顔と名前が一致しないモーニング娘。に加えて、メロン記念日やらココナッツ娘。やら‥‥って感じなのだろう、きっと(苦笑)。その気持ち、痛いほど判る。

  さてさて、そんな感じで今年のシャッフル。各ユニットやその楽曲の感想等を書いていこうと思う。

  モーニング娘。から加護亜依と5期メンバーの高橋愛、小川真琴、新垣里沙、ココナッツ娘。とミニモニ。のミカ、カントリー娘。のあさみ、メロン記念日の斉藤瞳から成るのが、この「ハッピー♥7」。平均年齢が約15歳って‥‥やはり斉藤さんにとっては罰ゲーム(略

  3組中、最も元気イッパイなのは、やはり10代前半の子が過半数を占めることからも納得がいくし(ミカもあさみも今年18歳。斉藤さん‥‥涙)、それに見合った楽曲を与えられている。この曲のアレンジはTATOOというユニット(?)が担当。モーニング娘。新曲「Do it! Now」c/w曲もこの人が担当。ゲームミュージックのようなチープなシンセ音からスタートするこの曲、全体的にもチープで軽い印象がある。まぁ良く言えば「軽快でローティーン的な初々しさがある」とも表現できるが。所々に入るトロピカルなフレーズや音色も、その若々しさに花を添えている。歌のパート割りやテレビでのダンスシーンを観る限りでは、加護と高橋が中心となって全体を引っ張ってる感じか。とにかく元気。ユニット名通りの7人だ。

  世間的にはこれが「勝ち組」とか「一番売れる」って前評判だったんだけど、どうだろう‥‥実際には

  「セクシー8>ハッピー♥7>>おどる♥11」

って順位らしいけど。楽曲的には確かに一番馴染みやすい曲だけど、メンツ的にやっぱり弱い。いくら高橋が新メンバーの中で飛び抜けていたって、世間的には彼女の名前と顔なんて一致してる人、ごく僅かだろう。となると、やはり加護だったりミカだったりってことになるんだろうけど‥‥今度はヲタ的に「ミカってどうなのよ?」ってことになりかねない。そういう意味で本当に微妙。アレンジも微妙。曲も‥‥中途半端な良さなので微妙。よって3組中1番になるのは正直厳しいと思う。テレビでのあの元気も、お茶の間からすれば空回りしてるように見えるし‥‥。

  5期メンバーをメインに持ってきたのは、本体での伸び悩み・ユニットへの参加見送りからだろう。今後、もしかしたらプッチモニ・タンポポ・ミニモニ。のメンバー入れ替えなんてことが実現するかもしれないし、それらを排除して新しいユニットを組み立てる可能性もある。今回の「幸せシャッフル」はその試金石となれば‥‥セールス云々を抜きにしてでも試したかったことは、実はそういった「可能性」だったのかもしれない。じゃなきゃミニモニ。人気に肖ったかのようなこのグループに5期メンバーの3/4を投入しないだろう。

  個人的には高橋や新垣よりも、カン娘。あさみの頑張りと、斉藤さんへの羞恥プレイ、このふたつに限ると思う(笑)。



▼ハッピー♥7『幸せビーム!好き好きビーム!』
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投稿: 2002 07 06 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2002/06/23

Polaris『TIDE』(2002)

  Polarisというグループは、ご存じの人もいると思うけど‥‥元LaB LIFeのオオヤユウスケが中心となって結成されたバンド。そこに元FISHMANSの柏原譲が参加することによって今の三人(オオヤ、柏原、坂田学)が揃ったのです。このセカンドアルバム「TIDE」は、昨年秋にリリースされたセルフタイトルのファーストアルバムに続く作品。アルバムとはいっても6曲しか入っておらず(ファーストは4曲だったし)、普通だったら間違いなくミニアルバムと呼ばれるであろう構成なのだけど、この30分強に及ぶ至福の時はその辺の無駄に60分以上もあるアルバムよりも遙かに内容が濃いものになってます。

  音楽性はそのものズバリ「ダブポップ」と呼んで差し支えないでしょう。各メンバーが所属していた過去のバンド(LaB LIFeやFISHMANS)の流れを組む、聴いてるだけで別世界へトリップしそうな独特な空気感を持った音を持ってます。個人的にはLaB LIFeはアルバム1枚しか聴いたことがないのでそれ程詳しいわけでもなく、FISHMANSにしても同じようにアルバム数枚を通過してる程度でして‥‥その程度の知識しかない俺の感想なのだけど、どちらかというと後期FISHMANSの延長線上にあるバンドなのかなぁと思うわけです。いや、FISHMANSよりも聴きやすいかな?(それはもしかしたらアルバムが30分程度だというのも関係してるかも)

  ダブポップというからには、あの独特なディレイやエフェクトが所々に登場するわけで、それはギターが何本も複雑に絡み合うものだったり、リズムだったりするわけですが、とにかく心を落ち着かせて聴いてるだけでトリップしそうな感覚に感度も陥るわけです。それが全く嫌味じゃなく、本当に気持ちいい。何故かというと、曲が判り易くてポップだという強みがあるから。ダブというとやはりジャマイカからの流れがあるじゃないですか。そこからどうしてもマリファナだったりハッシシだったり、そういったものを想像してしまうんですが(安直ですかね?)、ここにはそういった危うさはなく、むしろ酒もクスリもハッパもない状態で我々をナチュラルトリップへと誘うんです。ひとり部屋でヘッドフォンを付けて聴くもよし、カーステレオで大音量で聴きながら夜の街をドライブするもよし、クラブの大音量で気持ちよく踊るもよし、そして‥‥野外の大自然の中、大勢で気持ちよく踊るもよし。とにかくこのアルバムは「大音量」で「気持ちよく踊り」ながら聴くことをオススメします。本当に気持ちいいんだから。

  実はアルバムには歌モノは3曲しかなく、その内の2曲はライヴでもお馴染みの"季節"とそのバージョン違いで、残る1曲も細野晴臣のカバー"ハニー・ムーン"だったりするんだけど、別にこのバンドは歌モノじゃなくても十分に満足出来るし、その辺は余り関係ないかも。実際、1曲が異常に長い(10分以上はあるであろう)インストナンバーを聴いてても全く飽きさせないし。そういう魅力を持ったバンドだと思っているので、もしかしたらアルバムよりもライヴ向きなのかもしれません。

  幸運にも、今年のフジロックに出演することが決まったPolaris。FIELD OF HEAVENという如何にもピッタリなステージで演奏することになっているので、当然俺もあの環境の中でマッタリしながら、気持ちよく踊らせてもらおうと思ってます。



▼Polaris『TIDE』
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投稿: 2002 06 23 12:00 午前 [2002年の作品, Polaris] | 固定リンク

メロン記念日『夏の夜はデインジャー!』(2002)

  2001年後半から怒濤の攻撃態勢に入ったメロン記念日。シングル"This is 運命"と"さぁ!恋人になろう"はそれまで以上の成果を収め、またお茶の間でも多少ながらも知名度を上げることに成功した。こうなると今一番必要になるのが、決定打となる1曲なのだ。勿論、上記の2曲は知名度と話題性さえあれば間違いなくトップ10入りしてヒットしたである名曲なのだが、それまでの経緯を考えるとそこへ至るまでの起爆剤程度の役割しか果たさなかったに過ぎない(とはいっても、それが一番大事で、尚かつその役割には持ってこいの名曲だったわけだが)。

  "This is 運命"以降、順調に4ヶ月に1枚ペースでリリースを重ねてきたメロン。これもつんく♂が楽曲制作に殆ど関わっていないことが大きいのかもしれないが、この勝負作となる"夏の夜はデインジャー!"では、約1年振りにつんく♂が楽曲制作にも本格的に参加。結果、タイトル曲をつんく♂が作詞作曲、カップリング曲"愛メラメラ 恋ユラユラ"を過去2作同様に新堂敦士が作詞作曲することとなった。プロデュースは勿論つんく♂。アレンジャーには2曲共ab:flyというアーティストが初参加することとなった(7月にリリースされるシャッフルユニットでも1曲ab:flyが手掛けている)。そういう意味では話題性もそこそこではないだろうか?(一般的には弱いのかもしれないが)

  つんく♂が手掛けるタイトル曲は、過去2作の岡村靖幸チックなロック~ファンク色が減退し、初期3作(つまり、つんく♂作詞作曲ナンバー)に通ずる爽やかなアイドルポップ的楽曲。しかし、それまでのような「B級アイドル臭」は既になく、どちらかというとモーニング娘。や松浦亜弥のそれに匹敵しつつある(それだけ製作陣も意識しているということなのだろう)。ブラスアレンジに河野伸が参加していることから、彼が過去にアレンジした"真夏の光線"や"I WISH"を彷彿させる。メロディーはつんく♂の手癖的なものが多くて新鮮味は少ないが、決して駄曲ではない。逆に、過去2作よりも減退したメロの強みをアレンジによってカバーしている。とにかくブラスが気持ちいいし、カッコイイ。所々に入るエフェクトやパーカッションのフィルインもいい味を出している。夏っぽいし、これからの時期にはピッタリの曲なのではないだろうか?(実際その夏っぽさの象徴として、PVは沖縄ロケで作られている。この辺も過去の作品とは比べものにならない制作費のかけようだ)。

  一方、カップリング曲の方は過去の新堂ナンバーと比べても、かなり穏やかなものではないだろうか。これまでの「元気でパワフルなメロン記念日」とは一転して、しっとりと、そしてソウルフルに歌を聴かせる面が強調されている。アレンジも昨今のR&B的で、どことなくDESTINY'S CHILDっぽいかも。サビメロの唄い出しが「愛のコリーダー」っぽいところは微笑ましいが、それとは関係なしに本当にいい曲だ。ビシッとダンスをキメながら唄ったら本当にカッコイイだろうな。そういう意味ではMAXなんかが唄ったらハマるかもしれない。

  そうそう、ひとつ忘れていた。今回の"夏の夜はデインジャー!"では、それまでの2曲とは違う点がもうひとつある。それは柴田のワントップという点だ。過去にも"電話待っています"にてその試みが実験されたことがあったが、元々歌唱力的には4人の中で一番弱い柴田だが、4人の中では一番「世間的に」カワイイであろう柴田を全面に出すことは、ルックス重視のアイドル界では至極当たり前のことなのだが‥‥正直、聴く前は「大丈夫か!?」と思ったものだが、いざ出来上がった楽曲を聴いてみてちょっと安心。柴田は1年前よりも遙かに成長していた。この成長は他のメンバーも認めるところで、本来ならリードを取るべき実力者の大谷・斉藤も上手く柴田をフォローしながら各々の個性を出しているように思う。
  事務所が柴田推しで売りだそうとしていたのは、実は前作"さぁ!恋人になろう"の時点で既に見え隠れしていた。そして単独でのラジオ番組、更には新曲に合わせるように初の単独写真集‥‥決して他の3人が売り物にならないという意味ではないだろうが、これは昨年夏にいきなり石川梨華の写真集が発売されたのに近いものを感じる。まだまだ露出の少ないメロン記念日だが、こういう形で単独の仕事が増えていくのはいいことなのではないだろうか?

  そしてこの曲を引っ提げて、再び怒濤のメディア露出が始まった。「うたばん」では前回の扱いが嘘のような待遇で(前回は2時間スペシャルだったこともあり、地方では1時間に編集されて放送され、メロンのトーク部分がカットされた所もあった。更にトーク自体が5分にも満たないぞんざいな扱いだった)、「Mステ」では1曲目。更に今回は「HEY!×3」への出演も決まっている。「HEY!×3」の放送は7月上旬と、タイミング的にはセールス増加には結びつかないかもしれないが、如何に彼女達がダウンタウンのふたりと絡むかが興味深い。「世間での知名度を上げる」という意味ではかなりの効果が期待できるだろう。

  現時点ではまだオリコンのウィークリーチャートは発表されていない。発売初日のデイリーチャートでは前回の9位を上回る4位、翌日は8位といい感じだったのだが、3日目にして早くもデイリートップ20圏外に落ちてしまった。週末に「Mステ」の放送や握手会等のイベントがあったので巻き返しが期待できるが、果たして今回はトップ10入りできるのだろうか‥‥ここでひとつ、チャート上での好成績を期待したいところなのだが‥‥。



▼メロン記念日『夏の夜はデインジャー!』
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投稿: 2002 06 23 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

メロン記念日『さぁ!恋人になろう』(2002)

  2000年2月に「モーニング娘。の妹分」としてデビューしながらも、メディアへの露出は殆ど娘。関係の番組のみ。「誰、メロンって!?」というのが大半の感想であり、下手したらその辺のB級アイドル以下の存在。それが2001年半ば時点でのメロン記念日の立ち位置だった。シングルも"告白記念日"から"電話待っています"のリリース間は9ヶ月以上空き、唯一彼女達に逢えるのはモーニング娘。のコンサート。しかもその娘。ライヴでさえも休憩タイムになりかねないメロンの歌‥‥そんな彼女達に、起死回生のチャンスが訪れる。

  2001年7月。例の「祭シャッフル」ユニットにて、柴田は「7人祭」に、村田・大谷・斉藤は「10人祭」に抜擢される。まぁ10人祭は『抜擢』という表現は間違っているかもしれないが、ここではやはり柴田が後藤真希や矢口真里といった人気者や平家みちよという実力者と共に抜擢された点だろう。実際、"サマーれげぇレインボー"ではその唄い出しを柴田が務めるという大役を果たした。が‥‥シャッフルユニット自体が、石川・加護・松浦という最強の布陣からなる「三人祭」以外が(表面的に)惨敗したことから、メロン記念日の知名度が一般層の中で高まったということはなかった(実際、セールス的には3組共大成功には程遠かったことから、購入層はほぼモーヲタだけだったといっていいのかもしれないし)。

  しかし、メロンはそこでは終わらなかった。約7ヶ月振りとなる4作目のシングルが同年10月にリリースされたのだ。このシングル"This is 運命"こそが、その後のメロン記念日の大躍進への布石となったことは、モーヲタの皆さんならご存じだろう。それだけ素晴らしい、完成度の高い名曲なのだ、これは。

  このシングルのリリース時期にモーヲタへと変わりつつあった俺は、他サイトや雑誌等で大絶賛されるこの曲を一度も聴いたことがなかった。唯一得ていた情報は「アイドルmeetsメロコア」「クラブでかかるとモッシュの嵐」といった程度だった。そんな情報耳にしたら気になるじゃないか、普通‥‥で、早速買って聴いたわけだが(つうか近所にちゃんと売っていた時点でかなり驚いたが)‥‥すげぇ‥‥やられた‥‥初めて"LOVEマシーン"を、初めて"ちょこっとLOVE"を、初めて"ミニモニ。ジャンケンぴょん!"を聴いた時の衝撃。あれに近いものを感じたのだ。

  それまでのメロンの楽曲には「B級アイドルが持つ哀愁感」が(いい意味でも悪い意味でも)漂いまくっていた。ところが、この曲はどうだろう? ロック、グラム、パンク‥‥俺的に言わせてもらえば、「SWEETの曲をGREEN DAYが演奏して、APHEX TWINがいじってみました」的名曲なわけで。RADIOHEAD的神経症エフェクトがかかったボーカルや語り。半ば狂気じみた「ジャジャジャ~ン、ジャジャジャ~ン、ジャジャジャジャ~ン」という「運命」繋がりなだけのコーラス。キレのよい楽器隊の演奏(しかもドラムはかの「そうる透」氏)‥‥もし、これが居酒屋の有線でかかったら、ちょっと時間が止まるね。耳がいっちゃうもん。こりゃヤベェよ。かっけー((C)よっすぃー)よ、マジで。

  で、この曲は今までのハロプロ関連の楽曲と違い、作詞作曲をつんく♂以外の人(作詞はつんく♂との共作)が手掛けてる点が大きい。新堂敦士という人がカップリング曲を含めて作ってるのだが、ゲームメーカー「コナミ」専属ライターのようで、有名音ゲー「ポップンミュージック」等の音楽も手掛けている。その辺はオフィシャルサイトにいろいろ出てるので、ご参考に。元々、つんくとは古いつき合いの友人らしく、これまでもハロプロ関係ではカントリー娘。のレコーディングにも参加した経緯がある。つんく♂のソロライヴにもギタリストとして参加していたし、今年(2002年)にデビューしたつんく♂の新バンド「つんくビ♂ト」にもギター&ボーカルで参加している。

  つんく♂以外の人間が曲を作った点からみても、タイトルトラックやカップリングの"Wa!かっちょEなッ!"はかなり新鮮な印象を受ける。これまでのハロプロ関係楽曲にはなかったバンド演奏のロックナンバーというのもあるが、メロディーからつんく♂の手癖的B級歌謡曲臭が全く感じられないのだ。元々新堂氏は岡村靖幸やプリンスといったアーティストに影響を受けたこともあり(実際、彼の唄い方はかなり岡村チックだし)、特にカップリング曲でのファンキー度はかなり岡村靖幸の影響を伺わせるアレンジとなっている。

  リリースから既に9ヶ月近く経っているわけだが、今現在聴いても全く飽きのこない、本当にいい出来の楽曲だと思う。ルックス面で抜きん出た柴田と、歌唱面で抜きん出た大谷とのツートップにしたことも大きいだろうし、衣装をこれまでのお揃いから各人バラバラにして、それぞれの個性をより強めるような「キャラ立ち」(メルヘン大谷、ボーイッシュ大谷、ナチュラル柴田、セクシー斉藤というように)させたこともファン拡大へと繋がったに違いない。チャート的にも過去3枚のシングルがオリコン50位前後だったのに反して、この曲は初登場28位というまずまずの成功を収める。

  メロン記念日の歴史はデビュー曲"甘いあなたの味"から始まった。しかし、本当の意味でのスタートはこの"This is 運命"から始まったと言っても過言ではないだろう。それくらい彼女達にとっても、我々ヲタにとっても影響力の強い1曲となったのだ。

  ロックファンにこそ聴いて欲しいこの曲。俺はDJをやる度にほぼ毎回、この曲を回している。先日、メロンヲタの方に「ロックファンにメロンヲタは多い」というような話を聞いたが、本当にそれが頷ける、自信の1曲。それが"This is 運命"なのである。



▼メロン記念日『さぁ!恋人になろう』
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投稿: 2002 06 23 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

2002/06/01

THE MOONEY SUZUKI『ELECTRIC SWEAT』(2002)

THE STROKESのイギリスでの大ブレイク以降、ご当地では英国産以外の「リフ・ロック」バンド‥‥THE HIVESだったりANDREW W.K.といったバンド達が知名度・セールス共に上々らしい。当然、ここ日本でも(特に英国での流行に敏感「らしい」某音楽雑誌を中心に)そういったバンド達がこの1年の間に人気を上げ、来日公演も大成功を収めているようだ。

しかしながら、こういった「リフ主体のロックンロール」、あるいは「R&B色の強いガレージロックバンド」というのは当然のことながらずっと前から細々と活動してきたわけで、例えば某雑誌ではあまり相手にされてないような気がする(最近は読んでないので、実際には話題に上ってるかもしれないが)THE HELLACOPTERSなんていうのは、それこそ同郷のTHE HIVESよりも前から活動してきたにも関わらず、シンガーが元デスメタルバンドのドラマーだという観点から、某HM誌で取り上げられることの方が多かったり、それこそ同じように某ロック誌からHELLOWEEN辺りと同じような扱いを受けていたTHE WiLDHEARTSとの繋がりからも、そういった方面のファンからの支持の方が強かったりしたようだ(最近は知らないけど)。

もっといえば、JON SPENCER BLUES EXPLOSIONだっていたわけだし、遡ればAC/DCのような偉大なバンドだっているのだ。その色やタイプは全く違うものの、俺はごく最近盛り上がりつつあるその手のガレージバンドやロックバンドを総じて「リフロックバンド」と呼ぶことにしている。かなり乱暴な呼び方だとは思うが、結局俺がそういったバンドに惹かれる点は、如何にカッコいいリフをぶちかますか、そこに耳がいってしまうからだ。そのジョンスペの新譜にしろ、今年の頭に出たHELLACOPTERSのアルバム未収録曲編集盤にしろ、そしてHIVESやANDREW W.K.にしろ‥‥みんな曲の頭でガツンと一発激しいリフをぶちかましてくれるからだ。こういうロックに出会ってしまうと、自分自身が本当にまだロックを聴き始めたローティーンの頃に戻ったかのように興奮してしまうのだから、全くロックンロールってやつはタチが悪い。

で先日、某外資系CDショップをぶらついていたら、あるオレンジ色のジャケットと出会った。THE MOONEY SUZUKIというちょっと冗談ぽい名前のバンドのアルバムだった。だって日本人からすれば、某「紙おむつ」の名称と「クラスにひとりはいそうな名字」を列ねたバンド名だ。高校生の頃「それってROLLING STONESとGUNS N'ROSESを掛け合わせただけじゃん!?」とツッコミを入れずにはいられなかったSTONE ROSES以来の衝撃だった‥‥とは言いがたいが、とにかくこのオレンジ地に白抜き文字、バンド名がこれ、そしてアルバムタイトルは「ELECTRIC SWEAT」‥‥「電気の汗」だぜ!? ジャケットには暑苦しそうな野郎が4人、ギター弾きまくってたり、ベース持って仰け反ってたり、何か叫びながらドラム叩いてたり‥‥そんな「ギャグ一歩スレスレ」なチープさ。ある意味、俺の中で久し振りに直感が働いたのかもしれない‥‥EMINEMのアルバムを買おうと思っていたが、あっさりとこのMOONEY SUZUKIのCDを手にとって俺はレジに並んだ。そう、音も聴かずに‥‥こんな無名の、ある意味B級バンドのアルバムを‥‥

家に帰ってから、ジャケット裏に載っていたオフィシャルサイトにアクセスして、いろいろと情報を得た。ニューヨークのバンドで結成は1997年らしい。現在までに自主制作でミニアルバム(6曲入りEP)を1枚と、2000年にファーストフルアルバム「PEOPLE GET READY」をリリースしていて、今回俺が買ったのは2002年4月にリリースされたセカンドアルバム。メンバー構成は、


Sammy James Jr (Vo/Rhythm Gt)
Graham Tyler (Lead Gt)
Michael Bangs (Ba)
Augie Wilson (Dr)


の4人。後は‥‥オフィシャルサイトのバイオグラフィーを読んでもらいたい(要するに和訳するのが面倒らしい)。

さて、音の方だけど‥‥上に挙げたような「リフロックバンド」だったと言っていいだろう。アルバムタイトルと同名の"Electric Sweat"なんて、HELLACOPTERSに通ずるものを持った、黒っぽい爆走ロケンロー。節回しなんてモロにニッケが唄いそうな歌メロだ。もう俺的にはこの1曲目でKO状態。左右に振り分けられたギターがまたカッコエーのなんのって。続く2曲目"In A Young Man's Mind"なんてちょっとモッズっぽい雰囲気の爆走ロック。ギターのファズ具合が、これまた好きな人にはたまらない加減だし、サビでのボーカルとバンドとの掛け合いコーラスもそれっぽくて‥‥うわ~、ギターの鳴りがホントにサイコー!(としか表現のしようがない)

3曲目"Oh Sweet Susanna"は、ちょっとスワンプ調のロケンロー。こういうのを聴くと、ああやっぱりアメリカのバンドなんだなぁと妙に納得。ジョンスペ辺りがやってもはまりそうな1曲。4曲目"A Little Bit Of Love"はサビのオールディーズっぽいメロがもう爆涙モノ。爆裂する演奏に絡みつくアコギのストローク。こういうアコギが被さってるロケンローにはウルサイのよ、俺は(ストーンズにしろエアロにしろガンズにしろハノイにしろ、バックにアコギがうっすらと被さるのがまたカッコイイのよ!)。それにしても本当にギターが泣きまくってて、気持ちいい。続く5曲目"It's Not East"もそんなアコギが絡むロックナンバー。イントロでのドラムの派手具合なんてキース・ムーンだし。つうかさこのバンド、合いの手のように入るコーラスが滅茶苦茶ツボなんだけど‥‥この微妙な「黒さ」を出せるバンドが少ないんだよ、マジで。

アルバムはCDのくせして、しっかりジャケットには「Side One」「Side Two」という風に全10曲を前後5曲ずつ分けている。で、「Side Two」は6曲目の"Natural Fact"からスタート。いきなりイントロから泣きのマイナーコード。ここのリードギタリスト、グラハム・タイラーは本当にいいソロ/フレーズを弾くよ。そしてボーカルの歌メロ、この泣き具合は俺の中ではHELLACOPTERSのそれに匹敵するんだわ。聴いてて時々ゾクゾクするもの。7曲目"It's Showtime Pt II"はオルガンが入ったインストナンバー。シンプルな構成ながら、聴かせ所満載。残念ながらオルガンが暴れまくる曲はこれ1曲のみなんだけど、これがまたカッコイイ。所々に入る「ウッ!」だとか「Bring On!」とかいった掛け声がこれまたセクシー。曲構成は本当に単調なんだけど、こういう勢い一発でジャムりましたってのは、バンドの力量が試されるものとなるので、こうやって聴くとやっぱりいいバンドだなぁ‥‥なんて妙に納得してしまう。ライヴ観たいよなぁ、マジで。

8曲目"I Woke Up This Mornin'"はありがちなリフを持った前のめりロックなのだけど、やっぱりバンドの勢いが勝っているのが、聴いててそのテンションにやられちゃうんだわ。ここまでの流れ、本当にテンションが高すぎて、聴いてるこっちも手に汗握りっぱなし。

そして9曲目にしてようやく流れが変わる。"The Broken Heart"というありがちなタイトルのバラードナンバー。これもひねくれ度皆無。直球のロッカバラード。この辺の直球さはジョンスペにも通ずるよな‥‥なんて何度も書いてるけど、このバンドは俺の中でジョンスペやHELLACOPTERSに匹敵する「テンション」と「黒さ」を持ったバンドだと思う。とにかくね、リードギターがいいのよ‥‥実際に動いてるところは観たことないので何ともいえないけど、もしかしたらHELLACOPTERSのストリングスに匹敵するソロイストかも(まぁストリングスは容姿とプレイ共に完璧だけどさ)。

最後は再び勢いを取り戻したインストナンバー"Electrocuted Blues"で爆裂しまくって幕を閉じる。ここでもリードギター暴れまくり。確かにジョンスペ程の「非現実的」なテンションはここにはないのかもしれないけど、けどこの暴れ具合は必聴に値すると思う。このロックンロールの定義に則った1曲をどれだけのバンドが体現できるかどうか‥‥マジで10曲35分があっという間に終わる。で、気付くとリピートしてるんだから‥‥

何か終始「かっけー」「サイコー」「ジョンスペみたい」「ヘラみたい」を連呼してたような気がするが、それだけ俺の中では「大当たり」だったってことなんだわ。ジャケ買い自体、もう何年もしてないわけで、それこそ今は聴くべき作品が毎月沢山リリースされるもんだから、こういった冒険自体をしなくなっていたんだが‥‥やっぱりこういう出会いって大切だよね? 本当にそう思い知らされた1枚だった。これはマジで買いの1枚。爆走ロケンローが好きな方々(当然北欧モノに拘らない人)、買って損はないと思うよ? ルックス的にはANDREW W.K.にいそうな小汚いメンバーだけど、そこがまた如何にもニューヨークらしいというか(偏見?)。STROKES以降、アメリカからもいろんなタイプのバンドがイギリスでブレイクしつつあるけど、これのその候補に入れてもらいたい。だってカッコイイもの、理屈抜きで。



▼THE MOONEY SUZUKI『ELECTRIC SWEAT』
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投稿: 2002 06 01 02:46 午前 [2002年の作品, Mooney Suzuki, The] | 固定リンク

松浦亜弥、中澤裕子、メロン記念日、石井リカ『FOLK SONGS 2』(2002)

 2001年11月に、市井紗耶香復帰の為の「プレ・デビュー」作として中澤姐さん、たいせーと共に制作された「FOLK SONGS」の続編がリリースされることを知った時、正直「マジッ!?」と思った。が、その参加メンバーを知った時、「それなら是非聴きたい!」と即答したのも本音だ。とにかく中澤姐さんの歌が聴ける、それだけで十分なのに、あややが往年のフォークソングをカバーするのだから、こりゃたまらない。この際サウンドプロデューサーが無能のたいせーでも大目にみてやるとしよう。

  さぁ、早速本題に入ろう。今回カバーされたのは以下の16曲。()カッコは原曲者名、[]カッコは今回のボーカルメンバー。


01. てんとう虫のサンバ(チェリッシュ)[松浦亜弥・石井リカ]
02. あなたの心に(中山千夏)[メロン記念日・石井]
03. 冬が来る前に(紙ふうせん)[松浦・中澤裕子]
04. 恋人よ(五輪真弓)[中澤]
05. 花嫁(はしだのりひことクライマックス)[メロン]
06. 夢で逢えたら(吉田美奈子)[石井・メロン]
07. ひこうき雲(荒井由実)[松浦]
08. 「いちご白書」をもう一度(バンバン)[メロン・ばんばひろふみ]
09. オリビアを聴きながら(尾崎亜美/杏里)[中澤・メロン]
10. 長い間(Kiroro)[松浦]
11. 夏休み(吉田拓郎)[メロン]
12. 木綿のハンカチーフ(太田裕美)[中澤]
13. 神田川(かぐや姫)[松浦]
14. わかって下さい(因幡晃)[中澤・因幡晃]
15. ひだまりの詩(Le Couple)[メロン]
16. さとうきび畑(森山良子)[松浦]


今回の選曲をみると、フォークソングに拘っておらず、所謂「ニューミュージック」と呼ばれた時代の楽曲も多く選ばれているように思う。そこに加え、ここ数年の間にヒットしたフォーク的ナンバー(KiroroやLe Couple)や、昨年末にリリースされ話題となった森山良子の"さとうきび畑"が早くも選ばれている。

  歌構成だが、2組以上のアーティスト名が連なっている場合は、大体が最初がメインボーカルで、2番目以降がコーラスという形が殆ど。今回も原曲者が参加している曲があるが(ばんばと因幡のがそれ)、まぁ前回のベーヤン程目立ってないので、よしとしよう。
  コーラス要員を別として、メインを唄っているのは、


・松浦 ‥‥6曲(M-1, 3, 7, 10, 13, 16)
・中澤 ‥‥4曲(M-4, 9, 12, 14)
・メロン‥‥5曲(M-2, 5, 8, 11, 15)
・石井 ‥‥1曲(M-6)


松浦の6曲ってのは判る。如何に事務所が彼女に力を入れているか、そして如何にこのアルバムを売ろうとしてるか、が(まぁ実際には前作程売れてはいないのだけど。話題性皆無っぽいし)。それに次ぐメロンの5曲ってのも、今年は事務所がメロンに本腰を入れているってのがここからも伺えるだろう。がっ!中澤姐さんがそれより少ない4曲というのは如何なものだろうか? 前作の影の功労者はたいせーではなく、間違いなく姐さんだったはずなのだ。それを4曲、あややとのデュエットを含めても5曲ってのは‥‥やっぱりたいせー、無能だな(ボソッ)

  では、以下に各アーティスト毎の感想を簡単に書いていこう。

●松浦亜弥
  松浦がつんく♂の手元を離れ、如何に自分の個性を出すか。俺にとって興味深かったのはこの点だろう。あややの声は意外とアコースティック楽器と相性がいい。それはこれまでのシングルでのカップリング曲やアルバムでのその手の楽曲で実証済みだ。そういった観点から「あやや sings フォークソング」を楽しむことの贅沢さ。ファンにはたまらないのではないだろうか?

  さて、実際の彼女の仕事振りだが、1曲目"てんとう虫のサンバ"はまぁ無難な出来といったところだろう。実際、アレンジが可もなく不可もなくなものなので、尚更印象も薄い。ここにはあの「松浦亜弥」はまだいない。

  "冬が来る前に"。地中海風味なアレンジ(?)のどこが「冬」なんだよ!ってツッコミはこっちに置いといて‥‥どうにもキーが松浦向けじゃないんじゃないかな‥‥そんな気がする。ハモりの姐さんに合わせた結果なのか、サビになってもイマイチこう‥‥確かにあややっぽい節回しとか出てくるんだけど、あの「これが松浦亜弥だ、何か文句あっか?」な世界観はやはりここにもない。う~ん、こうなるとますますたいせーの力量を疑ってしまう(つうか、あややの力量を疑うことからまず始めろ、俺)。

  がしかし。"ひこうき雲"。こ、これは‥‥途中で何度もユーミンと被るんだよなぁ‥‥そして後半の盛り上がり。そうそう、こういうのを待ってたんだよ。この曲は正直、アルバムのハイライトと読んでも差し支えないでしょう。これはイイ! シングルのカップリングに入れても問題ないと思う。ただね、たいせー‥‥折角ピアノやギタリストがいい味出したプレイしてくれてるんだから、リズム隊も生楽器にしようよ‥‥勿体ないよ、マジで。

  次。"長い間"。ピアノ主体のこの曲をアコギ主体のアレンジにしてしまったのは、単にアレンジャー高橋諭一の趣味なのかな。この曲はこれまでとは逆にキーを上げているんだけど‥‥どうにもここ(心)にこないんだよなぁ‥‥やはり普通の出来。

  "神田川"。この辛気くさい(笑)曲を、どう現代っ子あややが唄いこなすのかが気になったが‥‥やっぱり普通でした。何故ここまで「可もなく不可もなく」が多いのか‥‥いろいろ考えた結果、やはりあややの持ち歌が「等身大の松浦亜弥」に近い内容だったことも大きく影響してるのかなぁ、と。では、何故"ひこうき雲"のような曲では「あややイズム」のようなものが感じられたのか‥‥正直なところ、その本当の理由は判らないけど‥‥単純に選曲ミスってのもあるんだろうけど‥‥何なんでしょうねぇ?

  "さとうきび畑"‥‥正直、これは驚いた。この10分近くある曲を唄いこなすあやや‥‥第二次大戦中の沖縄を舞台にしてるこの曲を、それこそ現代っ子のあややがどう唄うのか‥‥至極普通に、ストレートに唄うからこそ、伝わるものがあった(と俺は思う)。あややがこの歌詞を読んで(唄って)どう思ったかは知らない。けど‥‥間違いなく今回唄った6曲によって、また彼女の歌の引き出しは増えたはずだ。改めて、凄い15歳だよなぁ‥‥と思う。

  総合的には「可もなく不可もなく」な曲が多かったし、つんく♂プロデュースと比べれば彼女の個性も弱いが(それだけ彼のアクが強いということだろう。これは市井の時のも感じたことだが)、それでも彼女が唄えば(彼女の声が乗れば)それなりに説得力がある歌になるのだから、やはり才能なのだろう。前作での市井は何だったのだろう!?と思えてしまう程に(苦笑)。

●中澤裕子
  姐さんは前作でも"かもめはかもめ"という名カバーを残しているだけに、今回もかなり期待していた。まず最初に"恋人よ"。こういう曲を唄わせたらやはり上手い。歌唱力が優れているというよりも、その存在感や声の揺らぎが抜群なのだ。ヘタウマなのだけど、表現力は伊達にこの世界で5年やってきただけのものはある。これはさすがにあややにも出せないものだろう(年の功というのもあるだろうが/苦笑)。

  "オリビアを聴きながら"。恐らく杏里の歌で何度も耳にしてきたであろうこの曲を、そつなく唄いこなすあたりはさすが。それにしてもこの曲、アレンジが糞だなぁと思ったら、やっぱりたいせーだった。高橋諭一との差が一聴して判るもんなぁ‥‥。

  昨年12月のライヴ「FOLK DAYS」でもカバーされていた"木綿のハンカチーフ"。ラジオで聴いた時は「うぉ~!」と唸ったのだけど、こうやってCDで聴いてみると、そこまでの感動はない。けど、これはこれで悪くないよな、やっぱ。姐さんの声の透明感と揺らぎはやっぱり絶品で、まぁ太田裕美には至らないものの、それでも今この曲をカバーさせたら一番しっくりくるのではないだろうか? 面白いことにほぼ同時期にリリースされた椎名林檎のカバー集にもこの曲が取り上げられていたが、まぁアレンジの違いはあるものの、俺は姐さんの方に軍配を上げたいと思う。

  "わかって下さい"では、因幡晃もコーラスで参加。考えてみれば、姐さんはソロで演歌をやらされていたわけだし、そういうのがここである意味成果として出ているのかもしれない‥‥こういう演歌チックなマイナーキーの曲を唄う彼女の声を聴くと、そう思えてならない。サビでの透明感ある高音はやっぱりさすがと言わざるを得ないだろう。

  総合的にみて、やっぱりフォーク的なものよりもニューミュージック的な楽曲の方が姐さんの声に合ってるように思う。演歌を唄うにはやはり声量が足りないし、フォークを唄うとちょっと安っぽい気がするし、こういうアコースティック色の強いポップスが彼女には一番向いているんじゃないかな? 彼女の持ち歌にしても"上海の風"や"二人暮し"みたいな曲はやっぱりピッタリだと思うし。そろそろ準備に入るであろう新曲に否が応でも期待してしまう。

●メロン記念日
  各楽曲毎に解説しようと思ったけど‥‥そこまでいかなかった。いや、思っていた以上に唄えてたんで正直安心したけど、やっぱり持ち歌と比べれば、各人の個性がまだまだだし、そつなさ過ぎだし。そんな中、個人的には"ひだまりの詩"はよかったなぁ。これまでのメロンのイメージからすればちょっと違うのは判るんだけど、あぁこういうのも唄えるんだな?ってのが判っただけでも収穫。けど‥‥メロンはやっぱり元気イッパイな方がいいって。事務所的に売り出したいのは判るけど、やっぱり人選ミスかな、今回は。

●石井リカ
  この人がまだ「Peachy」というアーティスト名で活動してた頃をよく覚えているだけに、やはりハロプロ入りした以降の仕事振りには違和感があるんだわ。何故童謡のおねえさんなの?とか、なんで「エスパー」なの?とか、なんで「おどる♥11」なの?とか。そんな中、このアルバムでも殆どがコーラスワーク。正直、そんなに上手い人だとも思ってなかったので、コーラスってのはどうよ?って気が‥‥。

  そんな中、1曲だけリードが許された"夢で逢えたら"。最近、原田知世がDEENと共にカバーしたので知ってる人も多いだろうこの曲(そういえばこのアルバムの選曲、林檎にしろ知世ちゃんにしろ被りまくり。意図的に?それに今話題の「亜麻色の髪の少女」だって既に2年以上も前に娘。達が先にカバーしていたという事実があるのを皆さんはご存じだろうか? やっぱフォーク系事務所だね、UFAって)。ここでも石井ちゃんは「可もなく不可もなく」な印象を残すのみ。折角のセリフにも萌えず(笑)嗚呼‥‥。

  この人を事務所的にはどういう方向で売っていきたいのかが、明確に見えてこないよなぁ。何故ハロプロに入れたのか、その意図が全く判らない‥‥本当に謎の存在。


  さて、いろいろ絶賛しつつも貶しまくった今回。総評としては‥‥かなり聴いてますと言っておきましょう(笑)。いや、これさぁ‥‥いちーちゃんのよりも聴くと思うよ、今後。選曲的にはこっちの方が好きだし、あややに姐さんという(俺的には)安定要素があるだけに、聴いてて本当に心地よいんだわ。メロンの歌も耳障りじゃないし。

  ただね‥‥何度も言うけど、やっぱり人選ミスはあると思う。メロンはこういう企画に使うべきじゃない。折角の逸材なんだから(と俺は思う/笑)、もっと違った売り方/使い方してあげなよ? それだったら俺は、平家さんを使って欲しい。もし第三弾があるのなら、次回は松浦/中澤/平家でやってよ。実力と個性のあるシンガーがこのまま事務所に飼い殺しにされるの、見て見ぬ振りはできないもん。みっちゃんいい子なのにね?

  事務所的に何故このアルバムをリリースし続けるのか、そして売る気があるのかが全く見えてこない作品なんだけど(前回は市井の復帰作というそれらしい名目があったけど、今回はそれがないわけだし)、「何十万枚売ろう!」なんて野望もなく、単に実験として出しているのなら、是非平家みちよさんを使って下さい。カーペンターズだけじゃないですよ、きっと?(苦笑)あやや目当てで買った若い子達に「姐さん、なかなかやるじゃん!」とか、あややソロライヴで平家さんの歌に興味を持ったボンズ(笑)に「みっちゃん、いいじゃんか!」と思わせる絶好のチャンスだと思うんだけど‥‥ってそこまで考えてないか、UFAだし、たいせーだし。



▼松浦亜弥、中澤裕子、メロン記念日、石井リカ『FOLK SONGS 2』
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投稿: 2002 06 01 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日, 中澤裕子, 松浦亜弥] | 固定リンク

2002/05/13

後藤真希『手を握って歩きたい』(2002)

  どうやら世間一般では、後藤真希という女の子に対して「笑わない女の子」「クールでカッコイイ」というイメージがあるようで‥‥実は俺も今みたいに娘。にハマる前は、そういうイメージがあったのですよ、多少なりとも。けどね、知ってたんですよ、俺も‥‥プッチモニ「ちょこっとLOVE」で見せたあの笑顔こそが、ごっちん本来の持ち味だってことを。

  だから、ソロデビュー後の彼女に対するつんく♂の考え方や世間の考え方ってのが、どうにも俺には窮屈でならなかったわけです、特にヲタになったこの半年近くは。覚えてるんですよ、本能的に。ごっちんはよく笑う子だし、確かに自分から進んで前へ出ていくような子ではないかもしれないけど、なっちみたいなフロントマン然とはしてないかもしれないけど、それでも世間がイメージする「後藤真希」像は単なる固定観念に過ぎないって。曲の出来云々を別にして、俺はごっちんのソロ2枚目「溢れちゃう...BE IN LOVE」よりも、プッチモニの「ぴったりしたいX'mas!」の方が好きだったし、その表情や唄い方もずっとプッチの方が彼女らしいと思ってたし。

  そんな彼女が「あ、もしかしたら今後、変わってくんじゃないかな‥‥」と思える瞬間が何度かあって。それが正月ハロプロで「溢れちゃう...BE IN LOVE」を唄っている時の表情‥‥歌番組で観た記憶では、確かクールな、パブリックイメージをそのまま再現したような表情で唄ってたと思うんだけど‥‥はにかみながら、時に笑顔を見せて唄ってたんだよね。それがかなり強烈な印象に残ってて。福井で観た時以上に横浜はもっと笑顔見せてたし。彼女自身、そういうパブリックイメージがいい加減窮屈に感じてきてたんじゃないかな?

  そんな中、この曲が発表されたわけですが‥‥事前の情報では「アイドルらしいカワイイ曲」という話で。俺は常々、ごっちんには'80年代の浅香唯みたいな曲を唄わせたら面白いんじゃないか!?って発言してたんだけど、まぁ実際に出来上がった曲はそういうタイプではなく、どちらかというと「みんなのうた」とか「おかあさんといっしょ」なんかで流れそうな曲調なのですよ。あるいは、噂で挙がった「クレヨンしんちゃん」エンディングテーマなんかにピッタリな、ファミリーで楽しめるハッピーな曲調というか。明らかに対象年齢を下げてきてるなぁ‥‥と最初に聴いた時は思った。思ったんだけど‥‥


俺、この曲を初めてラジオで聴いた時、涙してしまって。


  曲後半、ブレイク後の「愛してる 素敵な人/素敵な家族/素敵な兄弟/ありがとう 素敵な思い出/出会ったみんな ありがとう」のフレーズで目頭が熱くなり‥‥決して当時、例の弟・ユウキの件があったからってわけでなく、何故か心にしみたのね。精神的に不安定だったのは確かで、相当仕事や生活に疲れてた時期だったんだけど、そういう時にふと心の中にこのフレーズが飛び込んで来て‥‥やられた、と思った。

  次に聴いたのは、4月末の春コンにて。4回観たけど、3回マジ泣きしたし(無言で涙ポロポロ。周りにヲタにはきっと頭オカシイ奴だと思われたことだろう)、残りの1回でも目頭熱くなったし。特にコンサートではごっちんがあの笑顔で5人の小学生の女の子達と楽しそうに唄い踊るわけですよ。あざといと言われれば確かにそれまでだけど、俺にはそう感じられずに、何か‥‥俺の中でこの曲がどんどん「ヤバい」存在になってったわけですよ。それ以前に、ラジオで1回聴いた時点で俺の中では「そうだ!We're ALIVE」とは対極にありながらも、既に名曲の仲間入りしていた訳ですが‥‥本当に力強い「歌」だなぁと思ったわけです。

  確かにね、この曲を酷評する人の意見も判るんですよ‥‥けどね、俺は自分のあの時の「涙」を信じてみたいんだ。

  この曲は今まで以上に売れないかもしれない。ただでさえ最近、ハロプロ関係のCDは底冷えが酷い上に、同日発売には宇多田ヒカルやCHEMISTRYやらがいるし(とりあえずデイリーでは3位につけてましたが)‥‥売れないかもしれない。けど、決して1位になることなくても、じわじわと、じわじわと売れて欲しいなぁ‥‥だってこの曲、時と場所を選ばず、ずっと唄い続けることが出来る曲だもの。この先、ごっちんの新曲がいつ出るのか知らないけど、俺は1年通してずっと唄い続けて欲しいなぁ、そう思うのね。これはそういう曲だと思うし。「後藤真希」っていうシンガーにとって、とっても意味のある、大切な歌にして欲しいのよ、これを。そしてこれはそういう曲だと思うし。ごっちんにとってもきっと辛い時期に唄わなきゃならない歌だと思うんだけど、だからこそずっと唄い続けて欲しいと思うのです。

  で、俺もずっと言い続けたいのよ。この曲"手を握って歩きたい"は名曲だって。

  あ、カップリング曲に対してもコメントを。"特等席"、こっちの方がアイドルっぽいかな。"手を握って歩きたい"の方は対象が大きな愛情だったけど、こっちはもっと個人的な、中高生っぽい内容だし。こういう歌詞をごっちんが唄うから意味があるんだよな、なっちや梨華ちゃんじゃなくてさ。うん、この曲も大好きだ。

  こうなってくると、本気で「後藤真希、ファーストソロアルバム」が聴きたくなってくる。"愛のバカやろう"も"溢れちゃう...BE IN LOVE"も悪くはないけど‥‥今度のシングルの路線を突き詰めてアルバム1枚作って欲しいなぁ。本体のアルバム、そしてミニモニ。のアルバムのリリース(6月末予定)と続いたので、今後タンポポやプッチモニのアルバムってのも予定されてるのかもしれないけど、是非ごっちんソロアルバムも、何なら6~7曲程度のミニアルバムでもいいんで、計画に入れてやって下さい! 本気で聴きたいんです! そっちが作らないなら、こっちにも考えがあるぞ!‥‥脳内で勝手に作ってやるっ!(壊)

‥‥ってそんな事が言いたいのではなくて、本当にいい曲なんです、今度のシングル、2曲共。俺の中では今年のベストを争う勢いです、そう、ウィアライと共に。

  あ~、人生がもう終わってる人とか、ない色気でせくしーべいべーしてる人はほっといてください。つうかひとつなかったことに。



▼後藤真希『手を握って歩きたい』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2002 05 13 12:49 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 後藤真希] | 固定リンク

2002/05/10

Mr.Children『IT'S A WONDERFUL WORLD』(2002)

  1992年5月10日にアルバム「Everything」でデビューしたMr.Children。前作「Q」から約1年8ヶ月振りのこの新作は、そのデビュー作がリリースされてから丁度10年後の2002年5月10日にリリースされた、いわば記念盤だ。「Q」とこのアルバムとの間にもツアーを2本行い、昨年7月には2枚のベストアルバム、同年8月にはシングル"優しい歌"、同11月には"youthful days"、そして今年1月には"君が好き"という具合に、近年希にみるリリース攻勢を仕掛けてきた。その裏にはベスト盤とそれに伴うツアーによってそれまでのミスチルに区切りをつけ(或いはそれまでの自分達を再検証し)、既に見え始めていた「新しい地平」へと向かって走り出し、その合間に出来たてのシングルをドロップしていきながら、じっくりとアルバムを作っていったというわけだ。

  今度のアルバムは事前から「ポップの再検証」のようなテーマが掲げられていた。ここに収められた15曲(内1曲が小林武史作曲のインスト、2曲が同じ曲をモチーフにした異曲なので、実質的には13曲といっていいだろう)は全てが全て、ある意味バラバラな作風を持った楽曲ばかりだ。そしてそれらは究極的に「ポップ」だ‥‥しかし、ミスチルが、桜井がポップを追求すればするほど、そしてよりポップになればなるほど、実はかなり「ロック」していたるいう現実。どっちがどっちを包括している、どっちの方が偉大だなんて言いたいのではない。結局このアルバムは「ポップ」というものを多方面から、多角度から覗いた結果なのだ。だからそこ究極に個性的な楽曲が並び、その全てが名曲揃いなのだ‥‥

  もう、いきなり言い切ってしまおう。このアルバムこそが、ミスチルの最高傑作なのだ、と。


★アルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」全曲解説★

◎M-1:overture
  小林武史作曲のインスト小楽曲。ここ2作はこういった始まり方をしていなかったが、改めてこういった始まり方をされると、やっぱり「次にどんな音がくるんだ!?」とドキドキする。オーケストラとサンプリングが共存する、いわばアナログとデジタルの融合。これはある意味、このアルバム全体に通して言えることかもしれない。

◎M-2:蘇生
  そして切れ目なく、ごく自然に流れるように始まるのが、このアルバム最初のハイライトといえる名曲。既に3月末から某コーヒー飲料のCMソングとしてテレビでバンバン流れていたので、聞き覚えある人が多いのではないだろうか。イントロのギターや曲の印象がNEW ORDERの"Regret"をイメージさせるが、あの曲以上に大きなノリを持った壮大な1曲。正直、なんでこの曲をアルバム先行シングルにしなかったんだ!?と思わせる程の出来(桜井は「シングルばかりが入ったアルバムというイメージよりも、ああ、アルバムにはこんなにいい曲が入ってるんだって思って欲しかった」からシングル化せずにタイアップのみにした、と語っている)。
  とにかく曲名と歌詞と演奏とメロディ全てが完璧な曲としか言えない。"youthful days"と並ぶ21世紀ミスチルの代表曲と言えるだろう。

◎M-3:Dear wonderful world
  「深海」における"手紙"のような流れを作る小曲。打ち込みとエレピをバックに唄われるこの曲、最近のRADIOHEADのようだ(パクってるって意味じゃなくて、雰囲気がという意味)。「この醜くも美しい世界で」という行と曲のタイトルが、雰囲気のせいか逆説的な、ある意味皮肉のように感じられる。まぁそういう風に取らせるための表現なのだろう。頭2曲の緊張感を持った流れ、凄いなぁ‥‥

◎M-4:one two three
  緊迫した空気をブチ破るのは、ブラスが気持ちいい軽快なポップナンバー。こういうタイプの曲、久しくなかったなぁ‥‥無理矢理例えれば、「Atomic Heart」までに存在した、ふざけ心満載の軽薄ポップナンバーといった感じか(いや多分違う)。こういう曲を敢えてやらなくなったミスチル。それに取って代わるように、時代はスガシカオやaikoという才能をこの世に生んだ。この3組は地続きだということを改めて認識させる1曲。いいなぁ、こういう曲。あ、曲タイトルの関係からか、アントニオ猪木が登場します(笑)

◎M-5:渇いたkiss
  続くこの曲もブラスをフューチャーしたミディアムナンバー。やはり初期の彼等をイメージさせる曲調が今となっては新鮮。こういう曲を聴いて、「DISCOVERY」以降離れていったファンは何を思うのだろう‥‥サビのコード進行といいメロディの持ってき方といいアレンジといい、初期ミスチル完全復活というよりは、更にレベルが高まってる感じ。これは進化でも退化でもない、「深化」なのだ。

◎M-6:youthful days
  シングルレビュー参照。それにしても、この3曲の並びは強烈だ。それこそ「KIND OF LOVE」のアルバム冒頭から"抱きしめたい"への流れや「Atomic Heart」のアルバム冒頭から"innocent world"への流れに匹敵するスムーズ且つ完璧な構成だ。

◎M-7:ファスナー
  実はこの曲、当初シングルの候補として挙がっていたらしい。実際、"君が好き"のカップリングとして起用するかどうかの瀬戸際までいったらしい(結局アルバム未収録の"さよなら2001年"が収録された)。それも頷ける出来。ミスチルのアルバム未収録カップリング・ナンバーというのは、実は隠れた名曲が多い。地味で渋い曲が殆どなのだが、これはそんな例えをしたら罰が当たりそうな程にポップな曲。イントロのコード進行が「versus」収録の"my life"を思い出させる。このタイトルのファスナー、ダブルミーミングとなっていて‥‥歌詞にも出てくる通り、女性のスカートのファスナーと、デパートの屋上でショーをするウルトラマンや仮面ライダーの着ぐるみ背中のファスナー。両者に言えるのは「ファスナーを下ろすと、中から僕の知らない顔を持った君がいる」ってこと。知らずにいるから幸せにいれること、見ずにいるから胸がドキドキするってこと、日常には沢山あるんじゃないかな?
  それにしても、唄い出しの「昨日/君が自分から下ろしたスカートのファスナー/およそ期待した通りのあれが僕を締めつけた」って歌詞‥‥どうよ?(笑)

◎M-8:Bird Cage
  初期ミスチルを更に昇華させたような高純度の名曲が4曲も続いた後、再びアルバムは中期ミスチル的シリアスナンバーへと突入する。PINK FLOYDやRADIOHEADのようなプログレッシヴなバンドを愛するミスチルの側面を端的に表した1曲。イントロでのJenのドラミングは圧巻だし、曲中の各楽器のプレイ、そしてこのアルバム中唯一桜井が「叫んで」いる点から、アルバム中盤の山場と言えるだろう(丁度ここが中間地点だし)。「深海」や「BOLERO」の頃のような痛々しい叫びではなく、「DISCOVERY」での、力強い「生」が漲った叫び‥‥鳥籠というタイトルも、アルバム「Q」でのツアーセットを思い出させる。「唄わせるミスチル」から「聴かせるミスチル」へ‥‥緊張感と説得力。前半は歌を楽しんでいたあなた、この曲ではどうか「バンドとしてのMr.Children」をじっくり堪能して欲しい。そう、ヘッドフォンを付けて、目を瞑って‥‥

◎M-9:LOVE はじめました
  そして続けざまにシリアスモードか‥‥と思いきや、「冷やし中華はじめました」みたいなふざけた曲名、RADIOHEADやアブストラクト系みたいなリズムトラックに、コードをかき鳴らすアコギが被さる辺りが、やはりミスチルらしいかな。曲調やバックトラックだけ取り出せば、完全にシリアスモードなのだけど、歌詞や唄い方はコミカルというか皮肉混じりというか。「殺人現場にやじうま達が暇潰しで群がる/中高生達が携帯片手にカメラに向かってピースサインを送る」‥‥日常によくある風景。しかし歌は続く。「犯人はともかく/まずはお前らが死刑になりゃいいんだ」‥‥ネガモード復活か!?とドキリとさせられるフレーズ。一瞬耳を疑う。が、ちゃんとオチは用意されている。「でも/このあとニュースで中田のインタビューがあるから/それ見てから考えるとしよう」改めて、桜井というストーリーテラーの狂気さを確認できる1曲。そう、ここには甘く切ない世界も、薄汚い世界も、全てが存在する。だからこその「It's a wonderful world」なのだから‥‥

M-10:UFO
  一転して、アップテンポのポップナンバーへと流れていく。中盤でのシリアスモードを経て、再びアルバムは甘美なモードへと移行していく。なんてことのない1曲かもしれないが、この1曲があるとないとでは大違い。演奏のテンションは改めて感心するばかり。気まずい雰囲気になったとき、場の空気を変えようとして空を見上げ「あ、あれあれ‥‥UFOじゃない?」‥‥なんて例え、歌詞に使おうなんて考えてもみなかった。このセンス、やっぱり好きだわ、俺(そして最後の「UFO来ないかなぁ」ってフレーズも)。

◎M-11:Drawing
  シングルレビュー参照。ここにきてやっとバラードらしいバラードが。ミディアム~スロウナンバーが中心だった「Q」と比べると、曲数も多いし収録時間も過去最長(約70分!)なのにも関わらず、全くダレた印象を与えないこのアルバム。1曲1曲の完成度が高いのもあるのだけど、やはり今回は曲の配置や構成・バランスにとても気を遣ってるように思える。長い分、飽きさせないような作りにしたんだろうけど‥‥ホントにベスト盤みたいな流れだな、これ。

◎M-12:君が好き
  シングルレビュー参照。バラード2連発。しかも究極のバラード。この位置に持ってこられると、やっぱりググッときちゃうんだよね‥‥切ねぇなぁ‥‥恋したいなぁ‥‥(涙)

◎M-13:いつでも微笑みを
  アナログレコードのようなノイズに乗って流れ出すシンセが、何だかポール・マッカートニーの"Wonderful X'mas"みたい。口笛も気持ちいい、軽快なナンバー。しかし唄い出しが凄いな‥‥「狭い路地に/黒いスーツの人達/急な不幸がその家にあったという/命は果てるもの/分かってはいるけど」って‥‥だから、そういう時にこそ「いつでも微笑みを」ってことなのだけど。「DISCOVERY」における"Simple"のような比喩のセンスが桜井らしいや。

◎M-14:優しい歌
  シングルレビュー参照。全てはここから始まったのだ。昨年夏のツアーでも一番最後に演奏されたのが、この曲。何度聴いても、この曲の力強さには胸を打たれるばかり。

◎M-15:It's a wonderful world
  3曲目"Dear wonderful world"のバージョン違いといえる1曲。2曲でひとつといった感じなのだろう。あちらが機械的だったのに対し、こちらは躍動的というか肉感的。向こうが皮肉混じりに「Dear wonderful world」と唄っていたとするなら、こちらからは「それでも世界は素晴らしい」という前向きさが強く滲み出ている。この「正も負も飲み込んで、吐き出して、消化して、それでも僕らは進んでいく」‥‥これこそがMr.Children、そして桜井和寿という人間なのだと再確認。そう、「深海」だろうが「Q」だろうが、全て一貫しているのだ。


◎最後に

  面白いことに前作「Q」レビューの内容は、その後のインタビューでの発言で、俺が予想してたようなことを桜井自身が当時考えていたことと見事に一致していたことが判った。「Q」でのソングライター桜井の成長、相反するように伸び悩むバンド、そして解散まで考えたこと等‥‥面白いように当たった。ならばまた予想してみよう‥‥夏のツアー開始前後に、新曲が出るだろう、そう、アルバム未収録の新曲が‥‥ってこれは桜井が既に雑誌で「早くも新曲が出来て、4月にスタジオに入る」って言ってたのを受けてですが(苦笑)。ということで、このアルバムのツアーは7月からスタートし、小~中規模のホールを中心に10月まで回り、その後11~12月にツアーファイナルとしてアリーナクラスの会場を回る、久々の長期間、大規模なツアーとなる。現時点で35公演前後が発表になっているが、間違いなく追加公演が出るだろうから、都合45公演前後か‥‥数にしたら「DISCOVERY」のツアーと同等か(42公演)。で、改めて‥‥きっと次のアルバムは、俺らが考えている以上に早い時期に発表されるんじゃないかな? 今のミスチル及び桜井を見ていると(そしてこのアルバムを聴くと)、何かツアー中にリハーサル重ねて新曲をバンバン作っちゃいそうなイメージがあるんだが‥‥ツアー中にアルバム制作‥‥案外、今回のツアー中盤辺りでは出来たての新曲をライヴで演奏してたりして。それくらい今のミスチルからは「なんでもあり」的空気と勢いを感じる。そう、「ハヤブサ」で完全復活したスピッツみたいに。そうなったら面白いのにな‥‥

  このアルバムを初めて通して聴いた時、俺はあるバンドのあるアルバムを思い浮かべた。それはU2の「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」。U2も紆余曲折ありながら、このアルバムで完全復活したと言っていいし、アルバム全体に漂う温かみも両者に共通する。デビュー10周年と20周年というキャリアの違いはあれど、実は共にそういう時期に来ていたのかもしれない。学生時代の友人が作った4人組バンド、一切のメンバーチェンジなし、共通点は幾らでも挙げられる。そう、ミスチルがU2を愛しているという点も。だから似てしまうのかな‥‥

  時期的に、ナンバーガールのアルバム「NUM-HEAVYMETALLIC」という傑作とどうしても比較してしまうが、そんなのナンセンスなのは百も承知だ。が、共に今のロックシーンを象徴する名盤/最高傑作を作り上げたという点では共通するものがある。乱暴な例えだが、ナンバガのアルバムをジョン・レノン的とすると、このミスチルのアルバムはポール・マッカートニー的、いや、ジョージ・ハリスン的ではないだろうか? とにかく、今日本のミュージックシーンは最高に面白い。アンダーグラウンドからはdownyのようなバンドが台頭し、メジャー(レーベルではなく、一般認知度の意)に切り込もうとする予備軍からナンバガやROSSOのようなバンドが孤軍奮闘し、トップクラスのメジャーバンドであるミスチルがこんなにも力強い「肯定」のアルバムを発表する。かと思えばアイドルが「そうだ!We're ALIVE」みたいな爆裂ナンバーを平気な顔してリリースするんだから‥‥

  というわけで、ナンバガを5月のオススメ盤として推したばかりだが、急遽このアルバムと2枚一緒に推すことにした。両方を楽しめる人ばかりじゃないのは重々承知だが、気になった人は騙されたと思って聴いてみて欲しい。「いい曲ってなんだろう?」という命題の答えは、この中に詰まっているのだから。



▼Mr.Children『IT'S A WONDERFUL WORLD』
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投稿: 2002 05 10 11:10 午後 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2002/05/08

J『go crazy』(2002)

  2001年12月27日、1年前にLUNA SEAが「終幕」したのと同じ日にアルバム「BLOOD MUZIK」をリリースしたJ。そのアルバムにおける某雑誌での取材で記者に「このアルバムにはバンド時代の"Rosier"のような、J得意のキラーチューンがない」というようなことを言われたのを切っ掛けに、すぐさまスタジオに入って作ったのがこの"go crazy"だ、と言われている。その逸話に納得がいく、如何にもJなキラーチューンに本当になっているのだから恐れ入る。つうか、何で敢えてこういう曲をやらなかったんだろうね、アルバムでは(そういう心境じゃなかったのか、はたまた意図的に書かなかっただけなのか)。例の如く、この曲リリース後に行われたツアーでは大盛り上がりの1曲となったそうだし。今から言うのもなんだけど、この曲があるとないとでは次のアルバム、全然違うものになりそうだね。こればLUNA SEA時代の"STORM"や"TONIGHT"にも匹敵するメロウな疾走ナンバーといえるだろう。けど、それだけで終わってないのは一聴してお判りの通り。

  レコーディングにはドラムに元THE BELL'Sの大島馨、ギター(ソロのみ)にDOOMの藤田高志(最初、ベースの諸田氏死去に伴って解散したと思って「元」と付けたのだけど、どうやら3年前に藤田さんはDOOM名義でアルバムもリリースしているようなので現存してるみたいです)というお馴染みのメンツを向かえて、それ以外のベース、リズムギター、ボーカル全てはJが担当している。何故かスコットが叩く曲よりもドラムが生き生きとしてるのは、気のせいかな? というよりも、こういう疾走系の曲はスコットよりも大島の方が合ってるかもしれない(同じような疾走チューンでも前シングルの"Route 666"なんてちょっとモッタリ感があったし)。

  さて、カップリングだが‥‥3曲全部がアルバム「BLOOD MUZIK」収録曲のリミックスバージョンだ。"Gabriel"を手掛けたのは、ニューヨーク在住の日本人DJ、GOMI。かなりテクノ的な味付けがされていて、そのままクラブで流れても何ら違和感ないリミックス。さすが本職。続いて"Twisted dreams"をPOLYSICSのハヤシがリミックス。イントロを聴いた瞬間、「あ、ポリだ」と思ってしまう程に印象的なシンセの音。だけど曲が進むに連れ、原曲を更にアッパーにしたゴツいアレンジに驚く。原曲が英語歌詞なせいもあるけど、なんか以上にカッコイイんだよね、このリミックス。欧米のラウドロックのリミックスチューンみたい。これもクラブで使えそう。そして最後は前シングル曲の"Perfect World"の"HOT remix #002 for J"。手掛けたのは、ホテロックこと、あの布袋寅泰。なんかね‥‥知名度が一番高い割に、一番面白くないんですけど‥‥そういえば、自身のリミックスアルバムも大して(略

‥‥と、ま、まぁ‥‥全部が当たりなんてあり得ないからね、リミックスものは(と話をそらしてみる)。そういえばJは布袋の新作でも1曲ベースを弾いてるみたいだし、いろいろ交流があるみたいだね。出来ればJのアルバムに参加、になんてならない事を祈るばかり‥‥(布袋は嫌いじゃないけど、やっぱり何か違うのね、この場合)。



▼J『go crazy』
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投稿: 2002 05 08 11:30 午後 [2002年の作品, J, LUNA SEA, 布袋寅泰] | 固定リンク

Mr.Children『君が好き』(2002)

  ドラマの挿入歌としてリリース前から流れていたので、多くの人が「あれは何て曲!?」って興味を持ったことだろうこの曲。リリース自体はドラマが終わった後だったにも関わらず、タイミングが良かったのか(2002年1月1日リリース。今回は年末年始テレビに出まくったからね)それでも50万枚以上ものセールスを記録。これはドラマ云々以上に、そうシンプルに「楽曲の良さ」が評価されたのだと俺は思っている。

  ミスチル久々のラブ・バラードってことで、多くの人が待ちわびた楽曲が遂にリリースされてファンのみならず大喜びだったのではないかな? 俺もそのひとりで、ここまでシンプルな作風で(バックの音像が「KIND OF LOVE」~「Atomic Heart」の頃を彷彿されるアレンジ)ストレートに「君が好き/僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい」と桜井に唄われれば、誰だって心揺らぐはずだ。そう、男の俺でさえ。ここまで直球勝負が出来るようになったのも、やはり心の底から納得のいく曲が書けた、変な拘りや虚勢がなくなったってことなのかもしれない。これは巡り巡って一回りしたというよりも、やはり全てを包括する程に大きくなったということなのだと思う。

  以前、「ミスチルは以前程のセールスを記録出来なくなったので、仕方なしにシングルで過去の作風を踏まえた曲を出してる」みたいなアホな意見を目にしたことがあったが、そんなのナンセンスだろう。今となってみれば、確かに"口笛"辺りにはそんな空気を感じなくもないが(まぁこれもセールス云々ではなくて「周りが求める自分達」に素直に応えてしまった結果だが)、この2作‥‥"youthful days"と"Drawing"、更には"君が好き"は過去の焼き直しに留まった楽曲だろうか? いや、そんなわけないのは普通の耳と感性を持ったリスナーなら判るはずだけど(これって暴言になるんですかね? いやね、すぐこの手の発言に食いつく暇な方がたまにいらっしゃるんで)。

  今回の新曲群は確かに初期の潤いと同等のものを感じることが出来る。と同時に、活動再開後、「DISCOVERY」以降に発表してきた楽曲群とも地続きで生まれていることも感じ取れる(実際、最近友人のために「DISCOVERY」以降の楽曲とこれらのシングル曲をシャッフルして収録したCD-Rを作ったが、特に違和感は感じなかった)。つまり、これはバンドという「生き物」の、とても素晴らしい成長例なのではないだろうか?

  そして、ミスチルは何も以前のシリアスな顔を捨ててしまったわけではない。 c/wでは"さよなら2001年"という、ニューヨーク同時多発テロ以降に書かれた曲も収録している。坂本龍一監修の「非戦」という本にこの曲の歌詞がリリース以前に掲載されたが、社会派バンドのようになりつつあった中期ミスチルの顔はここにもまだ存在する。ただ、あの頃のようにささくれ立った音や言葉はここにはなく、普通に日常を暮らす我々レベルの歌詞が連ねられている。

  タイトル曲で甘い汁を吸わせ、c/w曲で日常の苦みを味わせる。このバランス感が今のミスチルを物語っているようで、本当にいいシングルだなぁと実感。「NOT FOUND」の時にあのシングルを「ミスチル史上、最強のカップリング」と俺に言わしめたが、今回もそれに匹敵する2曲だと思う。



▼Mr.Children『君が好き』
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投稿: 2002 05 08 12:05 午前 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2002/05/05

ナンバーガール『NUM-HEAVYMETALLIC』(2002)

  最近音楽雑誌を全く目にしていないので、このアルバムがどのような位置付けで語られているのか判りませんが、間違いなく今年のロック界を代表する1枚ですよね、これは。まさかナンバーガールがこんなにスゲーアルバムを作るとは思ってもみなかったので、「やられた!」っていう軽く裏切られたっていう、いい意味での爽快感がありました。いや、先行シングル"NUM-AMI-DABUTZ"をPV込みで初めて聴いた時から既に予感めいたものはあったのですが‥‥まさかこんなに凄い内容だったとは。

  「SAPPUKEI」から早くも2年が経とうとしていたわけですが、その間にシングルが1枚単発で出ただけで、これといったリリースがなかった彼等(昨年映画のサントラに1曲提供してるけど)。その前作でも既にダブの要素は感じられたし、去年初めて観たフジロックでのライヴでもその要素は既発曲のダブ風アレンジという形で表れていたので、新曲を聴いた時、全ての点が一本の線で繋がったような気がした。そしてあのPVの不気味な雰囲気がまた、同じダブを取り入れたニューウェーブグループ、THE POP GROUPを思い出させたわけで。そう感じた人、意外と多かったんじゃないかな?

  民謡のビートやメロディーを取り入れた"NUM-HEAVYMETALLIC"とか"INUZINI"(冒頭の「やっぱりロックンロールやね」という、その曲調とは不似合いな掛け声にゾクゾクっときた)、ダブともファンクともラップともとれるけど、実はかなり独特なグルーヴも持った突然変異な"NUM-AMI-DABUTZ"、ダブやレゲエの要素をナンバガなりに消化した"delayed brain"といった新境地、勿論彼等らしいアップテンポな"CIBICCOさん"や"MANGASICK"もある。1曲の中で目まぐるしくテンポが変わる"FU・SI・GI"みたいなヘヴィな曲もある。こういういろんなタイプの曲がありながら、しっかり統一感があるのはそのサウンドプロダクションのせいなのかな?(いや、逆にとっ散らかってるからこその統一感という逆説的な捉え方もあるかな)

  上手い言葉が見つからないんだけど(考えれば考える程、ドツボにはまりそうな内容だよなぁ)‥‥このアルバムに対して俺は、最高の誉め言葉としてズバリ、「狂ってる。キチガイ。頭おかしい」という3拍子揃った最高の例えをした。今回の新曲の中にもその名前が出てくるけど("INUZINI")、もはや誰もナンバガの事を「PIXIESみたいなバンド」とか「NIRVANA以降」なんて呼ぶことはないだろう。いや、そんなのナンセンスだってば。だって、このアルバムからまた新しい歴史が始まるんだもん。今度は『「NUM-HEAVYMETALLIC」以降のロックシーン』なんて例えがバンバン飛び出すんだよ。じゃなきゃ嘘だね。ここまで騒がなかったら、雑誌メディアなんて嘘っぱちだと言いたいね。

  幸運にもアルバムを聴いてから数日後に、彼等のライヴを(40分程度だが)観ることが出来た。想像以上だった。去年のフジロックなんて比じゃない程に、バンドのポテンシャルは更に高いものになってた。客の反応も半端じゃなかった。みんな判ってるんだよ、オーディエンスは正直だよ。最高のアルバムに、最高のライヴだって事を直感で感じ取ってるんだもの。

  それにしても、購入後1週間も経ってないのにこんなに聴き込んだアルバム、何年振りかなぁ‥‥少なく見積もっても20回は聴いてるわけで。今日だけでも日中、町中をぶらつきながら常にディスクマンにはこのアルバムが入っていて、4回は聴いたと思うし。で、今もこれ書きながら聴いてるわけですが‥‥全く飽きが来ないし、逆にライヴを観たお陰で更に聴き込むようになったし。こんなに無条件で


  『お前ら、聴けっ!』


なんて言いたくなる作品、年に何枚ある!? 本当に洋楽ファン/邦楽ファン/モーヲタ関係なく、ロックを愛する人に是非とも聴いて欲しいアルバム。


  近年、俺の中で「ギターロック」が盛り下がりつつあったんだけど、そういう気持ちを持ち直させてくれたのがROSSOのアルバムとこれだった。まぁ「ギターロック」なんて狭い括りはしたくないけどさ。本当は今更うちのサイトで取り上げるまでもない作品だと思うし、言葉をダラダラ書くよりも実際に聴いてもらった方が早いんだけど‥‥躊躇してる人にとって、この駄文が出会いの切っ掛けになってくれたら‥‥と思って、急遽5月のオススメ盤として取り上げることにしました(本当は別の盤を取り上げる予定だったんだけど)。とみ宮的に、このアルバムを早くも『21世紀の名盤100選』の1枚として決定しました。



▼ナンバーガール『NUM-HEAVYMETALLIC』
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投稿: 2002 05 05 12:00 午前 [2002年の作品, ナンバーガール] | 固定リンク

OASIS『THE HINDU TIMES (EP)』(2002)

新曲としては2000年夏の「SUNDAY MORNING CALL」以来ということになるのかな? もっとも俺はあのアルバム(「STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS」)からのシングルは1枚たりとも買っていないので、個人的にはそのアルバム以来、まるまる2年振りの新曲っていう捉え方をしてます。ちなみに、それ以前‥‥「BE HERE NOW」までの関連シングルは全部買ってましたよ。それは純粋に、シングルのカップリングにはアルバムに入ってる以上の名曲が入ってる確立が高いから。その好例が、'98年リリースのBサイド集「THE MASTERPLAN」だと思ってます(実際、OASISではファーストの次に好きなアルバムで、今ではセカンド以上に聴く頻度が高いです)。

さて、そんなOASISだけど、前作に伴う一連のシングルでのカップリング曲って特に印象に残ってないんですよね‥‥レコード屋で視聴した限りでは。絶対に買おう!って思わせる程のパワーを持ってないのと同時に、どうもノエル・ギャラガーの独断場(ノエルがボーカルの曲が多かったし)ってイメージが強くて。いや、ノエルの歌は嫌いじゃないんだけど、やっぱり俺にとってのOASISはリアムの「声」だから。だって、何のアナウンスもなしにラジオで流れてきた今回の新曲"The Hindu Times"にしても、すぐに彼等の新曲だって判ったし(確か前作からの先行シングル"Go Let It Out!"の時もそうだったよな)。今の俺が明らかに惰性でOASISの同行を追ってるのは確かだけど、けどそれだってリアムが唄ってるから未だに続けてるという。リアムのソロは聴きたいと思うけど、正直俺はノエルのソロアルバムってそんなに惹かれないなぁ‥‥多分。曲を書いてるのはノエルだけどさ(ここらへんは恐らく、最初にOASISというバンドに惹かれた切っ掛けが音楽ではなく、リアムの行動や佇まいだったことに起因すると思う)。

っていきなりネガティブなことばかり書くのもなんですが(苦笑)、そんな感じで今度のシングルにも向かっていったわけです。ただ、今回は珍しく買ってまで聴こうって気になりまして。単純にアルバムがまだ先(予定では7月)ってのもあってのことなんですけどね。それに思ってた以上に悪い曲だとも思わなかったし、タイトルトラック。ただ、大騒ぎするような曲でもないかな、と。正直、曲のインパクトでいえば前作からの"Go Let It Out!"の方が大きかったなぁ。それに前作からだと、一番最初に聴いた曲が"Fuckin' In The Bushes"ってのもインパクト大だったからなぁ(発売2ヶ月近く前に、某クラブで何のアナウンスもなしに、このツェッペリンばりのヘヴィーロックを聴かされたら‥‥ねぇ?)。そういう観点からすれば、ごく普通のロックンロールナンバーだな、と。いや、それでも他の平凡なUKロックバンドと比べれば遙かにレベルの高い、ポップで親しみやすくて、それでいてロック然としたカッコイイ曲なのですが。個人的な趣味からすれば、シングル向きって感じじゃないような‥‥やっぱりこれまでのOASISを考えると、サビでドカンと一発!ってイメージがあるんで。そういう意味では新機軸!?って捉えることもできるけど‥‥これ、やっぱりノエルの曲だしね。恐らくそこまでは何も考えてないんでしょう(多分、一番最初に出来た曲だから最初のシングル、程度でしょうね? 実際、昨年秋の結成10周年ライヴでも既に演奏されていたっていうし)。

で、問題は残りのカップリング曲ふたつなんですが‥‥これが予想通りの、ノエルがボーカルをとるバラードナンバーでして‥‥正直なところ、そんなもんを今のOASISに求めてないんですよ、俺は。ゲムとアンディ・ベルを向かえた新体制での1発目のアルバムなのに‥‥もっとこう、すっげー爆発力のある、揺るぎない力強さをここでまず誇示して欲しかったんですけどねぇ‥‥いや、両方とも悪い曲じゃないんですよ。特に2曲目"Just Getting Older"はアルバムに入っていてもおかしくない、優れたナンバーなんですが‥‥逆に「今度のアルバムにはノエルが唄う曲は1曲も入ってません。第二のデビュー盤ですから(「DEFINITELY MAYBE」がそうであったように)」っていう意志が働いてのことだったらいいのですが、そうも考えられないし‥‥久し振りに全曲リアムが唄うシングルってのも聴いてみたいんだけどねぇ‥‥

‥‥と不満をタラタラと書き綴ってしまいましたが、結局のところはアルバムを聴いてみないと最終判断は下せないと思うんです。だから、過度に期待し過ぎずに7月を待とうと思ってます。ちなみに俺はここ1年くらい、セカンド「MORNING GLORY」は聴いてません。よく聴くとすればファーストとBサイド集、そして意外にも「BE HERE NOW」と前作なんですよね。雑誌が「ノエルが失敗作と言ったから駄作」「売れなかったから失敗作」という捉え方を次の新作が出る度にするけど、俺は全然そんなこと思ってもないわけで。そういう意味で次のアルバムも楽しみにしてるんですよ。



▼OASIS『THE HINDU TIMES (EP)』
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投稿: 2002 05 05 12:00 午前 [2002年の作品, Oasis] | 固定リンク

2002/04/25

カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『色っぽい女~SEXY BABY~』(2002)

  今年(2002年)1月のハロプロ正月公演から正式加入した里田まいを向かえて当初の3人組へと戻ったカントリー娘。だが、まさか三度石川さんを助っ人として起用するとは、誰が考えただろうか? 正直、俺なんて「う、裏切ったな!」とさえ思った程でして(ご存じの通り、俺は「カン梨華での梨華っちを見るのはこれが最後かも‥‥」と思って、何を思ったか福井まで出向いたわけでして)。まぁ視点を変えれば「また梨華ちゃんをテレビで観る機会が増えて、素直に嬉しいワン♪」とヲタ精神丸出しだったりもするんですが(苦笑)。

  「カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)」、略して「カン梨華」(カン石と呼ぶ人も多いようですが、とみ宮的にはカン梨華で通します)の約半年振り、通算3枚目のシングルとなる"色っぽい女~SEXY BABY~"なのですが‥‥そのタイトルを最初に聴いた時の違和感まんまの、似非セクシー路線(またの名を「似非水商売路線」とも)。シャ乱Q時代のつんく♂が得意とした、中途半端なエロさを取り入れた、マイナーでラテン調のダンスナンバーを、まさか「カントリー」の名の下で、いや、石川梨華が唄うことになろうとは‥‥初期モーニング娘。ならまだしも、4期メンバー参加以降にはこの手の曲ってのはなかったわけで、そういう意味では非常に貴重な「迷曲」となってしまってます。

  今回のアレンジャーは、鈴木Daichi秀行氏。これまでにごっちんの「愛のバカやろう」、ココナッツ娘。の「情熱行き 未来船」といった楽曲のアレンジを手掛けている人で、どれも系統は比較的近いものがあるかも。けど、その中でも飛び抜けて今回の曲のアレンジは(悪い意味で)爆涙モノの出来で、いちーちゃんじゃないけど、こっちもあと4年早くリリースされてたらもっとヒットしてたんだろうなぁ~なんて思ったりして(とかいってたら、何とオリコンウィークリーチャート初登場4位。上出来過ぎですわ)。

  悪ノリしすぎなのはアレンジャーだけではなく、プロデューサーのつんく♂も一緒でして、過去2曲の路線をこの際無視してこの路線を発注しただけでは収まらず、梨華っちに「ア~ン」だの「ハ~ン」だの「カモ~ン」だの(それは言ってない)曲中に言わせる始末。初期タンポポのや「サマナイ」の出来損ないじゃないんだから。とにかくね、これ以上語るべき点が見当たらないという、本当に困った曲なのですわ、これは。

  これはある種、ファンにとっては踏み絵のような代物だよなぁ‥‥本体「ウィアライ」の後にこの程度の似非ダンスチューンを、しかもカントリー名義で出すかよ!?とか思っちゃうわけで。どう考えても今の梨華っちは セクシーじゃないわけで(せめてもう少しシェイプアップした方が‥‥)。そう考えるとこの曲は、やはり新人・里田まいちゃん推しの為の1曲かなぁ、と思うわけで(実際、梨華っちとのツートップで唄ってるし)。それはテレビで観た衣装&里っちの胸元を観た瞬間に「なるほど、そういうことか」と判ったわけで。更にPVを観て悟ってしまったのですよ‥‥これは曲云々ではなく、石川さんにコスプレをさせる為の企画だったのだと。チャイナ服の里田さん、メガネっ娘の梨華っち。ツナギ着たあさみ。そしてあのジュリアナ衣装でオモチャの光線銃を持ったクールな梨華っち。こ、これは‥‥

要するに「FLASH」や「CHAIN! CHAIN! CHAIN!」でやったことの映像版(BGM付)だと‥‥BGMかよっ!?(苦笑)

スパイ梨華ちゃんの実写版というわけですな。それでセクシー路線。それでつんく♂の「これまでのカントリーは無視してココナッツみたいなセクシー路線の曲を」って発注。なるほど。

  すべてはヲタのためですか。

そうですか、ならいいんですよ、ええ。こりゃ一本取られたなぁ~参ったなぁ~‥‥んなわけあるかぁ~!

  まぁね、最初に非常に悩ましい曲だなぁと心苦しく思ってたんですが、今ではいい具合に洗脳され、1日10回は聴き、テレビ出演は全てチェックし、振りまで記憶しつつあるんですから‥‥何か間違ってますか?

  最後に、カップリング曲にも触れておきましょう。昨年12月に出たカントリー娘。のファーストアルバム「カントリー娘。大全集①」収録の名曲"女の子の取り調べタイム"のニューバージョン。アルバムではバンド形態で録音されたシャッフルナンバーでしたが、ニューバージョンは普通の8ビート、尚かつドブロギターやバンジョー、ハーモニカなんかが被せられたカントリーバージョンになってます。ボーカルテイクはそのままで、ハードディスク上で上手い具合に編集したものでしょう。これはこれで悪くないけど、俺はオリジナルバージョンの方が好きだなぁ。まぁこれまでのカン梨華のシングルはカップリングもタイトル曲のバージョン違いばかりだったんで、これはこれでいいんじゃないかな? このシングルで初めてカン梨華に触れた人に「こんないい曲もあるよ?」って知らしめる絶好のチャンスになるしね。

  さてさて。梨華ちゃん本人も「(里田さんが加わって)これで私の役目も終わりなのかなぁ‥‥」と感じていたカン梨華。この感じでいくと秋にもまた新曲が出そうな気配です。あ、今度はナース服でお願いします♪(爆)



▼カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)『色っぽい女~SEXY BABY~』
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投稿: 2002 04 25 12:00 午前 [2002年の作品, カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2002/03/27

モーニング娘。『4th「いきまっしょい!」』(2002)

  さぁ、全宇宙待望の、モーニング娘。単体としては前作「3rd -LOVEパラダイス-」('00)から丁度2年振りとなる、4枚目のオリジナルアルバム。この2年の間にベスト盤やミュージカルのサウンドトラック、各ユニットの楽曲を集めた3枚のコンピレーション盤が発表されてきた。このような状況から、「純粋な新曲を沢山含んだオリジナルアルバムは、つんく♂の多忙振りを考えるともうありえないのではないか?」なんてファンの間では囁かれていた。さすがにここ何回かのコンサートツアーでのマンネリ振りを考えると、この時期に出しておかないと本当に毎年コンピ盤でお茶を濁すことになりそうだったのだが、今年に入って間もなくしてからプロデューサーのつんく♂自身が「現在、モーニング娘。のアルバムの準備をしている」とラジオで発言したことから、いよいよか‥‥と我々はこの日を待ち望んだのだった。

  全部で13曲というのは恐らく現在の13人編成を意識してのことだろう。シングルとしての既発曲が5曲なので、完全未発表の新曲は8曲ということになる("そうだ!We're ALIVE" も同時期に録音された新曲なので、正確には9曲ということになるか)。既発曲に関してもシングルとはバージョン違いだったり、5期メンバー加入以前の曲を13人で新たに振り分けしたりと、いろいろ手を加えられている。

  まぁ前説明はこの辺でいいだろう。今日はこの際なので、久し振りに全曲解説レビュー形式でやってみようと思う。モーニング娘。では初めてか? まぁいずれ過去のアルバムやシングルに関しても同様の形でレビューするつもりなので、既発曲については初出の所で詳しく触れるとして‥‥メインはあくまでアルバム用の新曲。

●M-1. ザ☆ピ~ス!(Complete Version)
  '01年7月リリースの通算12枚目のシングル。詳しいレビューはこちら。先日のハロプロ正月公演もこの曲からスタートしていたので、やっぱりこの曲がトップにくると「おお、始まるぞ!」というワクワク感、高揚感で胸がいっぱいになる。特に「Complete Version」ということで既発のシングルテイクとどこが違うのかというと‥‥基本的には何も手を加えられていないはずだ。ミックスもシングルと同じだと思うし。ただ、唯一の違いはエンディングだろう。あの、いつ終わるのか判らない、いつまた始まるのか‥‥というクドいくらいの繰り返し。シングルではフェードアウトになっているが、ここではフェードアウトしそうになるとまだデカい音で始まる、その繰り返し。まぁ早い話が、レコーディング時のバックトラックをそのまま完全収録した、ということなのだろう。というわけで「完全版」なのだ。ライヴやテレビで唄う時は既にこのテイクを用いているので(とはいっても繰り返しの回数が遙かに少ないが)、まさにここからスタートといったところだろう。

●M-2. いいことある記念の瞬間
  編曲にダンス☆マンが携わった、シュープリームスの名曲「恋はあせらず」(の、フィル・コリンズがカバーした方のバージョン)を彷彿させる、モータウン調のポップナンバー。「自分を信じて 強く生きよう/生まれ変わるような 記念の瞬間」って歌詞がいいなぁ。こういうタイプの曲、俺すごく好きなんだよなぁ‥‥アルバム中一番好きかも。シングルにはならないものの、決してアルバムの穴埋め的ナンバーでもない。この2曲の流れ、好きだなぁ~

●M-3. Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~(Long Version)
    '01年10月リリースの通算13枚目のシングル。詳しいレビューはこちら。ロングバージョンとはいっても曲が長くなったのではなくて、曲に入る前に3分程度のミュージカル風のセリフがプラスされている。PVを観たことある人ならわかるだろうし、テレビでのあの衣装からも察しがつくだろうけど、この曲は非常にミュージカル的な要素を持っている。こういう形でストーリーが明確になることに「クドい」と難色を示すか、より伝わりやすくなったと受け取るかで、このロングバージョンの評価って変わるんだろうな? とりあえず、今度のツアーではこの冒頭のパートをショートドラマ風に演じてから歌に入るんだろうな(去年の春ツアーでの "あこがれMY BOY" みたいに)。
  ただね、3曲目にしてこんなに3分もコントでアルバムの流れを止めてしまうってのは如何なものか? せめて真ん中辺りじゃないかな!? 楽曲的には3曲目でも問題なしなんだけど、折角頭からの流れがよかっただけに、そこがちょっと残念だったなぁ‥‥
  それにしても新垣、オイシイなぁ~。そして石川、相変わらず棒読みだなぁ~。そして何故にたいせー!?

●M-4. 初めてのロックコンサート
  娘。関係ではシングルのカップリングや後藤ソロ等を手掛けてきたAKIRAアレンジによる、ブリトニー・スピアーズとかあの辺の洋楽アイドルポップ的なサウンドを持ったR&Bテイストの1曲。後藤ソロ曲としてもそのまま発表できる程、彼女が唄うと違和感ないわ。それにしても、タイトルは「ロックコンサート」なのに曲調は「R&B」っていうズレ具合。狙ってる?
  この曲は飯田、保田、矢口、後藤、辻、小川の6人のみが唄う曲で、それぞれが交互に唄う構成。やはりごっちんと圭ちゃんは安心して聴いてられる。小川も頑張ってるんだけど、まだこれからって感じかな? この曲もかなりいい出来じゃないかな? 個人的には嫌いじゃないです。

●M-5. 男友達
  安倍のソロナンバー。5期メンバーがコーラスで参加。アレンジにはお馴染みの鈴木俊介の名が。ごっちんの加入後、なっちの歌を思う存分味わう機会がライヴ以外では殆どないので、この曲は非常に有り難い。しかも最近の曲はどれも黒っぽいテイストが多少なり取り入れられているので、こういうタイプの曲(ポップロック調の小楽曲)は新鮮だし、なっちの色に合っていると思う。
  中盤のギターソロがちょっとMR.BIGの "Green-Tinted 60's Mind" っぽいのは、気のせいかな?

●M-6. そうだ!We're ALIVE
    '02年2月リリースの通算14枚目のシングル。詳しいレビューはこちら。アナログでいえばA面ラストがこの曲ってことになるんだけど‥‥ちょっと前の曲からの流れに違和感というか、ギクシャクした印象を受けたなぁ。もしかしてMR.BIG~BON JOVI繋がり、とか?(と、勝手に想像して喜ぶのは世界中で俺ひとりだろう)この曲はシングルと同テイク。ただ、アルバム用にミックス(というかマスタリング)を若干柔らかくしてる印象が(多少、ドンシャリ感が強まったかな?)。アルバム全体のバランスを考えてのことだろうけど、個人的にはシングルの方が好きだな。

●M-7. でっかい宇宙に愛がある(Album Version)
    '01年7月リリースの通算12枚目のシングルのカップリング曲。詳しいレビューはこちら。アルバムバージョンってことだけど‥‥曲の後ろで娘。達が騒いでる音量がデカくなった程度?(それは気のせいかな??)‥‥(シングルバージョンと比べてみる)‥‥ああ、なるほど。1分程エンディングが短くなってるのか‥‥ってそれだけ?
  それにしても、鈴木俊介はこのアルバム内でもダンス☆マンに次ぐ貢献度の高さだなぁ。非常にいい仕事してると思います。

●M-8. いきまっしょい!
  初期から関わりのある小西貴雄アレンジの、ユーロビート調ハイパーチューン。既に娘。には "Say Yeah! -もっとミラクルナイト-" という同タイプの曲があるし、秋ツアーではアンコール1曲目に唄われる等非常にいいポジションで唄われていた曲だったので、このアルバムタイトルトラックが今度のツアーでは取って代わってその役割を果たすのかもしれない。ライヴでは間違いなく盛り上がるだろうし。
  正直な話、アルバムからの新曲が解禁になった時、最初に聴いたのがこの曲だったのだが‥‥「ああ、ヤバいなぁ‥‥」という暗い気持ちになった。こういう曲ばかりだったらどうしようって‥‥けど、このタイプの曲はこれ1曲なのでよかったけど。悪くはないんだけど、個人的にはタイプではないのよ、この曲調(てゆうかアレンジね)。ただ、唯一の救いは、石川のセリフだったりするのですが‥‥

●M-9. 電車の二人
  前嶋康明氏アレンジ。4曲目に参加してなかった残りの7人‥‥安倍、石川、吉澤、加護、高橋、新垣、紺野が交互に唄う曲。石川さん、下手なりに頑張ってるなぁ‥‥いきなり唄い出しだもん、そりゃビックリしますよ。
  高橋と新垣はここでも頑張ってるなぁ。"そうだ!We're ALIVE" といい、ホント新メンバーの中では優遇されてるというか、恵まれてるなぁ。しかもそのチャンスをちゃんとモノにしてるし。加護ちゃんもうかうかしてると追い越されちゃうぞ!?(それにしても、よりによってチャーミー、よっすぃー、コンコンの3人を一緒にしてしまうなんて‥‥冒険するよなぁ、つんく♂も)

●M-10. 本気で熱いテーマソング
  ダンス☆マンが携わる、如何にもモーニング娘。的なファンクナンバー。ラジオで聴いた時にもピンときたけど、ホントにいい曲。シングル向きだね。ただ、"ザ☆ピ~ス!" や "恋愛レボリューション21" と同系統なので、これを先行シングルにしてたら「また同じかよ!?」ってヲタに酷評されてたんだろうな‥‥って結局何出しても貶す奴は貶すだろうけど。
  このサビメロって‥‥何だっけ? 何かに似てるよね、昔のヒット曲だと思うけど‥‥歌詞を読むと、こっちの方がオリンピックの応援歌にピッタリだったんじゃないだろうか?という疑問も生じるんだけど(「いざ進め 世界の熱い奴ら」って歌詞なんか特にさ)‥‥最後の「いざ進め!」と「モーニング娘。!」をかけたとこもカッコイイよね? うん、純粋にカッコイイ曲。ただ悲しいかな、"Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド" や "そうだ!We're ALIVE" を聴いた後となると、このレベルの曲でも「平均レベルかなぁ?」なんて思えてくるし‥‥

●M-11. 好きな先輩
  5期メンバーの4人がメインとなる曲。コーラスに先輩メンバー9人が参加。正しくタイトル通りの、ポップな小楽曲。娘。とは古い付き合いの高橋諭一がアレンジ。それにしても新垣。その少年っぽい節回しにソウルフルさを感じる。これまでの娘。にはいなかったタイプ‥‥てゆうか本当に子供だからこその味わいだと思う。あと1~2年したらどうなるのか判らないけど‥‥現時点では光るものがあるなぁと思うんだけど。こないだの「童謡ポップス2」といい "そうだ!We're ALIVE" といい、ホントにこれからが楽しみな娘。だと思う。
  それ意外だと、小川の頑張りも目に(耳に)つく。先輩の中に入ってしまうと埋もれがちだけど、同期4人が並ぶとやはり負けてられないって気持ちが強く出るのか、いい感じなんだよなぁ。この感じをもっと出せればと思うんだけど‥‥いや、新メン、みんないいよ!

●M-12. 恋愛レボリューション21(13人 Version)
  '01年12月リリースの通算11枚目のシングル。13人バージョンってことで、オリジナルバージョンから中澤のソロパートを消して、小川が替わりに唄い、5期メンバーの歌を足した(?)んだろうけど‥‥ミックスも若干変わってる気が‥‥変わってないか。この曲が一番古いものだんだけど、未だに飽きが来ないのは何故なんだろう‥‥ベスト盤にも入ってたし、こないだの「プッチベスト2」にもリミックスバージョンが入ってたのに。明らかに "I WISH" 以降の曲って何かが違うんだよなぁ‥‥ライヴでいうとここで盛り上げて本編終了ってとこだろうか。

●M-13. なんにも言わずにI LOVE YOU
  ライヴでいうならばアンコールナンバーであるアルバムラスト曲は、久し振りのバラードナンバー。アレンジは再び小西氏。AOR調に始まり、中盤のコーラス隊が加わる辺りからゴスペル調に変化していく盛り上げ方が好き。どうせなら打ち込みじゃなくて、生リズム隊でやって欲しかった気もするけど‥‥
  この曲に限らず、多くのアルバムトラックに言えることなんだけど‥‥やはりシングル曲並みの手の込みようは見られないんだよねぇ。中にはそれに肉薄する出来の曲もあるんだけど‥‥やはり "ザ☆ピ~ス!" 以降のシングル曲のレベルが並外れているってことなんだろうか? この曲だって、アレンジ次第ではシングルとして切ってもおかしくない曲なんだけどなぁ‥‥勿体ない。


‥‥というわけで、総評に入りますか。うん、想像してたよりはずっとよかった。正直なところ、もうちょっと散漫な内容になってるかなぁって思ってたんだけど(特に今朝、久し振りに「3rd -LOVEパラダイス-」を聴きながら通勤したから、余計にそう感じたんだろう)、バラエティーに富んでる割には1枚のアルバムとしてかなり評価できる作りになってると思う。

  ただ、何度か書いたように問題点も幾つかあって、それはアルバムの流れ(曲順)だったり、新曲と既発シングル曲とのアレンジにかける時間の違いだったりするんだけど、あれだけ忙しい中ここまでやったことを評価すべきなのか、「だったら各ユニットのリリースサイクルをもっと長く取って、その分娘。に費やせよ」と非難すべきなのか‥‥

  勿論、評価すべき点はそれ以上に沢山ある。加入後、目立つ機会の少なかった5期メンバーにチャンスが沢山与えられたことや、なっちのソロ、ドラマやコントを通じての演技力の向上等々。視点をいろいろ変えてみると、発見の多いアルバムだと思うよ、これ(ってまだ4回くらいしか聴いてないけどね)。

  個人的観点で言わせてもらえば、過去4枚のアルバムの中で一番いい出来じゃないかと思う。セカンドもかなり素晴らしいアルバムだけど、既にあの頃とはモーニング娘。自体が別物となってしまったので、比べること自体が無意味なんだけど‥‥じゃあ4枚の中で一番いいって表現も何だか違うよなぁ‥‥そう、13人編成となって新たに生まれ変わった「モーニング娘。」というグループのデビューアルバムとでも言えばいいだろうか? "Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド" でデビューした新しいグループのファーストアルバムだろう、これは("恋愛レボリューション21" や "ザ☆ピ~ス!" はセルフカバーって感じかな?)そういう意味で、一番勢いみたいなものが感じられる作品集なんだよなぁ。

  ただ、それでもこれは決して最高傑作なんかじゃないと思う。娘。の歴史を考えた上で、一番出来の良い作品集だとは思うけど、娘。史上歴史に残るような曲を収録した前作がそうでなかったのと同様、このアルバムにも最強のキラーチューンが幾つも収録されているが、「かなりいい」けど「超超超超名盤」とはお世辞にも呼べない。

  でもね、ファンだから言うわけじゃないけど‥‥ずっと聴き続けると思うな、これ。何か知らないけど、聴いてると凄くポジティブな気持ちになってくるもの。いいアルバムだよね、何だかんだ言ってさ。

  願わくば、この編成でもう1枚アルバムを作って欲しいな、今すぐにでも。次も同じ13曲入りで、けど今回のアルバムとの大きな違いはシングル曲皆無で、しかも13人それぞれのソロ曲計13曲を収めたオリジナルアルバムを。いっそのこと、アレンジャーを13人使うとかして、もっとバラバラな、それでいて非常に統一感のある、矛盾しながらも暴力的且つ強引なまとまりのあるアルバムを。

‥‥なんて妄想をしつつ、既にアルバムは5周目も中盤に差し掛かっているのだった‥‥

結論:それでもやっぱり、モーニング娘。がだいすっき♪


‥‥もっと真面目にレビューするつもりだったんだけどなぁ‥‥。



▼モーニング娘。『4th「いきまっしょい!」』
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投稿: 2002 03 27 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2002/03/24

BUGY CRAXONE『This is NEW SUNRISE』(2002)

  BUGY CRAXONEの1年2ヶ月振りとなるサードアルバム。フルアルバムと呼ぶには少ない曲数(6曲で30分強)なのだが、これが想像以上に「濃い」内容となっている。

  このアルバム最大の特徴というか「売り」は、他アーティストとのコラボレーションだろう。2曲目"人と光"にはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケがデュエットで参加、4曲目"why?"にはWINOのボーカル・吉村とギター・外川が参加(吉村は作詞・作曲にも参加)、6曲目"O.M.D."には「remix and additional production」としてaudio activeの名前がある。

  チバ参加の曲は、これまでの彼のイメージからは考えられない、非常にニューウェイブ的な空気感、そして昨今のラウド系にも通ずる爆音系の色を持った異色作で、BUGYの曲にチバが参加しましたというイメージなのだが、これがまたいい味を出している。チバがこれまでに参加した他アーティストとのコラボ作(PEALOUTやスカパラ)とは全く違う、ある意味チバの新たな魅力を引き出した1曲といえるだろう(ま、歌唱はいつものあの感じだが)。

  WINO参加の曲は、BUGYの持つグランジ通過後のひんやりとしたUKロック色と、WINOが持つマッドチェスター通過後のダンサブルなUKロック色が見事に融合した、非常に個性的な楽曲となっている。鈴木・吉村両者共色の濃いシンガーなだけに、それぞれが唄い出すと互いのバンドの曲のような印象を一瞬受けるのだが、全体を見渡せばやはりこれはBUGY CRAXONE以外の何者でもない楽曲だ。

  そしてaudio activeが手掛けた曲。元々ダブの要素が強かった原曲を、見事にaudio active風に調理し、それでいながらBUGYらしさを崩さない完璧なリミックスワークではないだろうか。そもそもこの曲は原曲自体が発表されていたわけではなく、このリミックスされたバージョンが最初に世に出たわけなので原曲との比べようがないのだが(ライヴを体験した人ならそのライヴバージョンと比べることも可能だろう)、audio activeの持つスペーシーさを前面に出しつつも、それでもBUGYらしさを失わないでいられるのは、この曲がそういったエフェクトによって成り立っているのではなく、鈴木の「歌」そして「言葉」によって成り立っているからではないだろうか。

  これら3曲に総じて言えることなのだが‥‥元々BUGYには「RADIOHEAD以降」というイメージ(アルバムでいえば「THE BENDS」辺りだろうか?)があったのだが、ここでは更に「OK COMPUTER」あるいは「KID A」等で色濃く表れた「ポスト・ロック」的表現を上手く取り入れている。特にaudio activeとのコラボ曲等はそういったアーティスト達の曲と並べても何ら見劣りしない出来である。これを「時流に乗った」と切り捨てるか「大いなる成長」と好意的に受け取るかで、評価は大いに変わってくるのかもしれない。

  しかし、彼等にとってこれらの要素は、いろいろある引き出しの内のいくつかに過ぎないのだ。他アーティストが絡まない、純粋にバンドのみで仕上げた3曲‥‥"New Sunrise"、"No idea"、"悲しみの果て"の完成度が高いからこそ、こういった実験が上手く機能しているのだ。アルバム全体を他アーティストとのコラボのみで構成することも可能だろう。しかし、彼等はそうしなかった。それはコラボ以外の曲の完成度に自信があったからだろう。このアルバムはそういったコラボ曲を世に出す為に発表されたのではなく、あくまでそれ以外の、バンド単体でプロデュースした3曲を世に出したいからこそ作ったものだったのではないだろうか? 憶測だが、俺にはそう思える。それだけこれら3曲には「これから何かが始まる」という力強さがみなぎっているのだ。アルバムのブックレット内にも記されている(そして今回のツアーTシャツのデザインにもなっている)「AUDIENCE! This is OUR SUNRISE.」、この言葉が全てを物語っているのではないだろうか?

  このサイトをご覧の皆さんにとっても、このBUGY CRAXONEはまだノーマークなバンドなのではないだろうか? 最近、他サイトの影響で再び彼等に注目をし始めた俺だけど、暫く彼等からは目が離せないだろう。現在行われているツアーに続き6月にはツアー第2弾があるようだし、夏頃には4枚目のアルバム(あるいはシングル?)がリリースされるようだ。タイミングさえ合えば、夏フェスにも出演するんじゃないだろうか? 是非騙されたと思ってこのアルバムに手を伸ばし、一度ライヴに足を運んでもらいたい。特にUKギターロックファンにこそ聴いてもらいたいバンドなのだが‥‥ここでは例えとしてRADIOHEADの名前を挙げたが、既にBUGY CRAXONEはオリジナルの域に達している。だからこそチバユウスケ、WINOやaudio activeといった個性的な面々とのコラボレーションが実現したのだ。そしてBUGYはそれら個性的なバンド達に負けないだけの「色」を発している。何にも染まらない「色」‥‥それは自らが虹のようないろいろな色を放っているから染まらないのだ。逆に他の色をも飲み込んで更に大きくなっていく。このアルバムからはそういった印象を受けた。

  こういった出会いがあるから、ロックファンはやめられないのだよ。



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投稿: 2002 03 24 12:00 午前 [2002年の作品, BUGY CRAXONE] | 固定リンク

2002/02/13

中村一義『キャノンボール』(2002)

  既に2001年前半には某自動車会社のテレビCMにてそのデモテイクが使用されていたので、サビの「そこで愛が待つゆえに。」というフレーズを聴いた瞬間に「ああ!」と思い出すことだろうし、同年8月・茨城県ひたちなか市で行われた「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2001」出演時にも演奏されていたので、参加したロックファンにもお馴染みだろうこの曲が、ようやく日の目を見ることとなった。しかも、そのひたちなかでのライヴテイク(1曲目の"犬と猫"とラストの"キャノンボール")も収録されているのだから、初めてこの曲で中村一義の音楽に触れる人にとっても、かなりお得度の強い1枚となっている。

  この曲はきっと、今後の中村一義の活動を語る上でも非常に重要な1曲となるだろう。確かにこの曲よりも優れた楽曲は過去3枚のアルバムの中に沢山詰まっている。が、中村当人もインタビュー等で語っているように、この曲は「中村一義の第2章」の幕開けを飾るに相応しい出来・内容だと思うのだ。"犬と猫"という名曲でデビュー(第1幕)を飾った彼は「僕として僕は行く。」と、まるでOASISがデビュー曲"Supersonic"で「I need to be myself」と唄ったのと同じように力強く我々の前に登場した。

  そして彼は、その第2幕のスタートを飾る1曲で「僕は死ぬように生きていたくはない。/そこで愛が待つゆえに、僕は行く。」と唄う。再び彼は前進を選んだのだ。デビュー時はひとりで音楽界へ飛び込んできた彼だが、今度は最高の相棒と呼べるだろうバンド「百式」と一緒だ。ライヴテイクを聴いてもらえばお判りいただけると思うが(RIJFの為に結成されたバンドだが、この時の感触を中村はとても気に入り、結局レコーディングも同じメンバーで再録音している)、それまでの中村から感じられない「初期衝動性」を感じる事ができる。これまでの彼は、やはり宅録メインでライヴ経験が全くなかったことから、どうしても「こぢんまりと出来上がった」感が強かった。しかし、このひたちなかでのライヴテイクは、とても暴力的で攻撃的なのだ。確かに中村の歌はロックバンドのシンガーとしては頼りなさげだが、それでもこれまでに感じたことのない「力強さ」を見出すことができる。

  パワーポップ然としたスタジオテイク。これはこれで素晴らしいし、これを聴いてしまうと早くアルバム単位で聴きたいという期待感でいっぱいになるが、個人的には「自分もその場にいた」という思い入れもあって、やはりライヴテイクの方が好きだ。走り気味のリズム、ひっくり返るボーカル、荒くれだったギター。その全てがそれまで感じたことのない魅力なのだから。

  このシングルを引っ提げてなのか、それともまたシングルをリリースするのかは不明だが、5月にはこの「百式」と共に初のツアーに出る中村一義。4作目のアルバムは間違いなくバンドでレコーディングされることだろう。しかし、現時点ではリリースの目処が全く立っていないとも聞く。早くて年末、あるいは来年以降なんて話もある。恐らく5月のツアーを経ることによって、また中村の中にあったイメージやアイディアに何かしら影響を与えることだろう。そんなことを考えながらこのシングルを聴くと、早く新しい作品が聴きたくて待ちきれなくなる。ライヴには行けるかどうか判らないが、とりあえずは過去3枚のアルバムとこのシングルを聴いて、来るべき4枚目のアルバムに思いを馳せようではないか。



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投稿: 2002 02 13 12:06 午前 [2002年の作品, 中村一義] | 固定リンク

2002/02/01

モーニング娘。『そうだ!We're ALIVE』(2002)

  これを書いている2/1の時点ではまだ発売されていない(2/20発売)音源の、最速レビューだ。そもそも一般公開も昨夜の「矢口真里のALL NIGHT NIPPON SUPER」内でたった一回のみ、放送されただけなのだから‥‥そんな新曲を、リリース3週間近くも前に「2月のオススメ盤」として紹介しようとしているのだから‥‥狂ってるって言われても仕方ないと思う。けど‥‥そんな外野からの声も蹴飛ばしてしまうくらい、今度の曲は凄すぎるのだよ‥‥いちモーヲタ以前に、いち音楽ファンとしてこの曲の素晴らしさを説きたいと思って、こうやって大絶賛文を書き始めたわけだ。


  ハッキリ言わせてもらう。いや、「とみぃの宮殿」という音楽サイトの管理人として、その管理人生命を賭けてでも言い切らせてもらう。



モーニング娘。の新曲

「そうだ! We're ALIVE」

は完全無欠の大傑作!

これを否定することは

即ち

「ロック」を否定する

のと同然だ!!!


  何故この俺にここまで言わせてしまうのか? 何故この曲はこんなにも聴き手の魂を揺さぶるのか? 何故この曲はこんなにも聴き手の曇った顔を明るくさせるのか? そして何故にこの曲はこんなにも聴き手の涙腺を緩くさせるのか?

  そう、この5分に満たない1曲の中に、我々が「モーニング娘。」というユニットに求めるもの、そして一般人が持つ彼女達へのパブリックイメージが全て凝縮されているだ。しかも、ある種ごった煮的コラージュ作品とも呼べなくもないこの曲は、それでもひとつの楽曲として成立している。もっと言えば、作り手であるつんく♂とアレンジャーのダンス★マン、そして表現者である娘。達13人‥‥送り手のパワーが最大限に発揮された、マックスレベルを振り切らんばかりの1曲なのだ。現時点ではまだダンスや振りを見ていないので、振り付け師である夏まゆみの力の入れ具合は確認できていないが、昨夜の矢口の発言「これまでの振りの中で一番激しいし、ある意味 "ミニモニ。ジャンケンぴょん!" にも匹敵する激しさ」からもこの曲の振り付けがもの凄いことになるのは、察することができる。


  どこがどう凄いのか‥‥これをまだ聴いていない人間に文字でどこまで伝わるのか疑問だが、可能な限り俺のつたない表現力で書き記してみたいと思う。

  の前に‥‥この曲の歌詞を最初に読んでみて欲しい。

(※掲載割愛)

  ちなみに繰り返される「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」の行がふたつあるサビの内の最初のサビ("恋愛レボリューション21" でいう「超×4いい感じ」、"ザ☆ピ~ス!" でいう「HO~ほら行こうぜ」みたいなものと思っていい)でBON JOVI等のアメリカン・ハードロックを彷彿させるシンガロングタイプ、「幸せになりたい」以下の行がふたつめのサビで、ポップでメロウな如何にもなアイドルポップメロディー。石川や加護辺りが唄ったらハマりそうなパートと言っていいだろう。

  このふたつの、ある意味相反する形のサビが同居するだけでも意外なのに、それ以外のパートでは白人ファンクバンドWILD CHERRYの大ヒット曲 "Play That Funky Music" をイメージさせる、骨っぽいミディアムヘヴィなファンクチューン。カッチリした演奏が時々THE POWER STATION('80年代中盤に活躍したスーパーユニット。ボーカルにロバート・パーマー、ギターとベースにそれぞれ当時DURAN DURANに在籍していたアンディ・テイラーとジョン・テイラー、ドラムにCHICのトニー・トンプソン、そしてプロデュースに同じくCHICのバーナード・エドワーズを迎えた、ファンクをハードロック的アプローチで再現したグループ。'90年代中盤にも一度再結成している)を思い出させる程、重量級のリズムパート(ドラムの重い音作り、そして独特なベースプレイ)が耳から離れない‥‥これがアイドルへ提供された楽曲のバックトラックか!?と信じられないくらい、完成度が高い。

  そう、モーニング娘。のシングル曲におけるバックトラックの完成度は、この2~3曲でかなりの飛躍を見せている。しかもそれを聴き手に意識させないように、至極自然にやってのけてきたのだ。"ザ☆ピ~ス!" イントロ部の歪みまくったシンガロングパートとそれに絡むインダストリアルノイズ、"Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~" での生ビッグバンドを導入した豪華な演奏とそのクオリティーの高さ(悪い事は言わない。可能ならCDを借りてきて、ヘッドフォンで聴いてみて欲しい。そのクオリティーにビックリするはずだから)。そして今回の新曲‥‥つんく♂と各アレンジャー陣(ここではダンス★マンン)は意図的にその仕事をより緻密で高品質なものに高めている。

  勿論、遊び心も忘れない。悪ノリと言われてしまえばそれまでだが、中間部でのロシア民謡をモチーフにしたパート‥‥段々とテンポが速くなっていく様、そしてそのバックに被さる「Wo, Ha!」という掛け声は "恋のダンスサイト" を思い出させるし、メロウな二段目のサビは初期の娘。とイメージが重なる。特にロシア民謡パート‥‥明らかにダンスが見せ場となるパートなのだが‥‥やはりここでコサックダンスとかしてしまうのだろうか?

  ハッキリ言って無茶苦茶だし、ここでロシア民謡が挿入される必然性は全く感じられない。けど、これまでのモーニング娘。だって十分に雑食性の高い、「何もこんなところでこんなことやらなくても‥‥」と思わせる存在だった。ただこれまではそれらの要素を1曲の中にこんなに詰め込んでいなかっただけなのだ。ということは‥‥明らかに送り手はこの曲に勝負をかけているのか、新たなステージへと駆け上がる為の実験作として発表したものと思われる。

  いや、実験だけはずっと行っていたはずだ。"LOVEマシーン" 以後、敢えて同じようなフォーマットを取りながら、毎回そこにはいろんな実験を組み込んでいたのだ。少なくとも昨年発表の2曲に関しては、その要素がそれまで以上に表面化しているように感じられる。そして、機は熟した、と‥‥そういうことなのだろう。

  先に紹介した歌詞にしてもそうだろう。一見意味がなさそうでバカバカしさ炸裂な感じだが、本当にそうだろうか? つんく♂という作詞家は、日常の他愛もない出来事をモチーフにしながら、実はかなりディープなテーマを根底に潜ませるという高度なテクニックを使う人だ。一読して無意味そうな "ザ☆ピ~ス!"でさえも、一言一言意味を考えながら読んでいくと、かなり興味深い作品だし。

  この "そうだ!We're ALIVE" でもそれは同様で、まぁ全てはそのタイトルに集結していると思うのだが‥‥早い話が「僕らはみんな生きている」なのだ。けど、その中には本当に他愛もないことに幸せを感じたり、がっかりして落ち込んだりする。生きているから恋もするし失恋もする。誰しもが幸せになりたいと感じ、他人に自分の気持ちを伝えようとする。それら全てが「THE 人間」なのだ、と。表面的にはこういう解釈だろう。今回の曲はオリンピックの応援歌となる曲、つまりは「人生応援歌」のような立ち位置を取る曲とならなければならない。確かに今回は "ザ☆ピ~ス!" や "I WISH" の時のような「深み」は感じられないが、それを補い余るようなサウンドと娘。達のパフォーマンスがある。

  そう、そのボーカルパフォーマンスも、これまで以上のもの、いや、これまでの集大成と言えるものとなっているだろう。前シングルでの男的発声に始まり、「Come on」を「カモンナッ!」と、「幸せ」を「しやわせ」と言わせたり等の「つんく♂節」炸裂。特に「カモンナッ!」の所は加護がGacktの物真似をした時のそれなのだ。所々に入る「ヒ・ホ・ハ」という無機質な掛け声といい、各メンバーのソロのパフォーマンス・クオリティーの高さといい、これまでとは比べようがない程にレベルが高い。「幸せになりたい」の行でも加護や飯田といったメンバーがそれまでとは間逆の、女の子女の子した甘い声で表現する‥‥このギャップも最高だ。


  ‥‥とここまで書いたところで、実際に曲を聴いていない人にとっては「何を熱くなってんの、この人?」の一言で流してしまう話題なのだろう‥‥けど、実際に聴いてみたなら、その後でいいのでもう一度この文を読んで考えて欲しい。

  現在の日本のヒットチャートで、ここまで実験性の高い、聴き手に喧嘩を売るような1曲がどれだけあるだろうか?という事を‥‥具体的な名前を挙げるのは控えるが、現在ヒットチャートを賑わしているアーティスト達の中で、常に前進する事を選ぶ人間はどれだけいるだろう? そのキャリアが長くなればなる程、我々がイメージする「パブリックイメージ」をトレースするような作品を再生産するに留まる。勿論、それも素晴らしいことだろう。しかし、本当にそれだけでいいのだろうか? そういう楽曲ばかりが大半を占めるヒットチャートだからこそ、我々は段々興味が薄らいできているのではないだろうか?

  この曲は、聴き手の「パブリックイメージ」を守りつつも、それまでにはない攻撃性や実験性を強く感じさせる。見方を変えれば「両刃の剣」にもなりえる1曲だ。恐らく今のモーニング娘。のアーティストパワーを考えれば(そして同日発売の他のシングルを見渡せば)、間違いなくヒットチャートの1位を取る曲だろう。しかし、一歩間違えばセールスに響く。1位を取ったものの、後はスルスルと落ちる一方。そういう曲であってはならないのだ、これは。その為には、モーニング娘。にこれまで興味が殆どなかったであろうロックファンをも巻き込む必要がある。そしてこの曲にはそれだけのパワーがある。だから俺はここでこうやって声を大にして叫んでいるのだ。

  俺は「モーニング娘。」という存在、そして彼女達が発表する歌が大好きだ。しかし、今回こうして書いている文は、そういう自分の想いを無視してでも伝えたかった事だ。だから最初に「管理人生命を賭けて」と書いた。これが理解されないなら、本気で辞めてもいい。そう言い切れるだけの楽曲だと信じて疑わない。



▼モーニング娘。『そうだ!We're ALIVE』
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投稿: 2002 02 01 10:49 午後 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2002/01/05

松浦亜弥『ファーストKISS』(2002)

  2002年最初に買ったCDというわけではないけど、とりあえず2002年1月1日発売の新譜です。新年を迎え、いよいよ「とみ宮」は更に混沌へと向かっております(笑)。もうここまで来たら、着いて来れない人は置いてけぼりってことでひとつ。そもそも無理してまで他人に合わせるのが嫌な人間だし、これまでもそんな暴走振りでこのサイトを運営してきたので、やれアイドルだ、アフォだ(笑)云々言うなら、こんなつまらんサイトに拘らずに、余所のすっばらすぃ~「ロック評論サイト」を覗いてあげてください。その方が互いの精神衛生上最も好ましいと思いますので。

  さぁ、洒落の判る人、偏見のない人、そして我がモーヲタ同志(爆)にお届けする今回の1枚。もうこれは、久し振りに感動した、10年に一枚あるかないかの、究極のアイドルポップ・アルバムをご紹介したいと思う次第で。そう、今回の主役はモーニング娘。ではなく、その妹分の松浦亜弥のファーストアルバムでございます。

  松浦亜弥の魅力・衝撃については後程、別ページに執筆すると思いますので、今回はこのアルバムが如何に優れた作品かについてを純粋に語ってみたいと思います。

  松浦亜弥は'01年4月のデビューからこの8ヶ月の間に、シングルを4枚リリースしています。最初の2枚("ドッキドキ!LOVEメール"と"トロピカ~ル恋して~る")は比較的今のモーニング娘。等が所属する「ハロー!プロジェクト」系アイドルの色‥‥ちょっと飛んだ感じのアイドルポップ‥‥で、そのビジュアル(衣装)のイメージと重なり、見る人が見れば「キショい」の一言で片づけられそうな印象でした。そして俺自身もそんな印象を受け、ちょっと無視気味でした(それ以前にまだこの頃は今ほど娘。関係にのめり込めなかったのも大きいですが)。

 そして秋以降の2枚("LOVE涙色"と"100回のKISS")で少し路線修正したのか、真っ当な歌謡路線‥‥いや、どちらかと言えばJ-POP路線とでもいいましょうか、とにかくそれまでのコッテコテ・アイドル路線と比べると異常に完成度が高いのです。で、俺が彼女に注目し出したのもこの頃からで、後者の"100回のKISS"の楽曲・アレンジ・パフォーマンスの完成度の高さにノックアウトされ、結局シングルを買うに至ったのです。

  当然この松浦亜弥の全楽曲及びプロデュースを手掛けるのも娘。同様つんく♂なわけですが、その力の入れ具合がちょっと異常‥‥というか、事務所を含め、相当金を時間をかけて彼女をプロモーションしてるな?ってのが、そういうシングル1枚とっても伺えるんですよ。そして、デビューから8ヶ月にして早くもアルバムですから。ヒットシングル4枚(全てオリコントップ10入り、しかも3枚目は第3位、4枚目は2位ですし)全てを網羅し、しかも各シングルのカップリング曲はアルバム未収録、全11曲のアルバム収録曲の内シングル曲以外は全て新たに書き下ろした新曲。同時期に発表されたカントリー娘。のアルバムが同じ収録曲数にも関わらず、完全未発表新曲は3曲のみだったのを考えると、その力の入れようが判って貰えると思います。あのモーニング娘。でさえ、アルバムには「へっ!?」と思えるような中途半端な出来の曲が入っていたりしたのに、この松浦亜弥のアルバムは隙のない、完璧な作りなんですよ。

  当時毛嫌いしていたファースト&セカンドシングルも、改めてちゃんと聴くと本当に完成度の高い楽曲なんですよね。これはある意味、松浦亜弥にしか唄えない楽曲ではないか、と。最近の2枚のシングルを、例えば他の娘。メンバーが唄ったとしても違和感ないと思うんですけど(それだけ普遍性の高い楽曲という意味)、最初の2曲は本当にスタッフやつんく♂が「どうやって聴き手に『松浦亜弥』を印象づけるか?」という事を真剣に考えた結果出来た曲なんだなと思うのです。

  アルバム用の新曲ですが、こっちもすっげー完成度高いポップソング満載なんですよ。如何にもつんく♂が好きそうな"オシャレ!"や、クラブでかけたらモッシュの嵐じゃないか!?なんて思えてしまうハイパーロックチューン"絶対解ける問題X=♡"(これなんて、メロン記念日"This is 運命"に匹敵するハロプロ的モッシュチューンではないでしょうか?)、そしてアルバムの最後を締め括る名曲(と言って差し支えないでしょう)"初めて唇を重ねた夜"等‥‥ホント、どれも捨て曲なし。"そう言えば"でのアコースティック+バンドサウンド+ストリングス=最近のタンポポに共通する色とか、本当取り上げればキリがない程、語り甲斐のある作品なんですよ。つんく♂、自身も今年は新しいバンドで動き出すっていうのに、しかも昨年夏以降のハロプロ関連のリリースラッシュ(しかもどれもが平均以上の完成度を保っていた)を考えると‥‥この松浦亜弥のアルバムで全ての力を使い果たしてしまっていてもおかしくないのに‥‥改めて、脱帽。そして、それを支える各アレンジャー陣にも。

  こういう「完成度の高いアイドルアルバム」はここ数年、久しくなかったような気がします。同じつんく♂関係でいえば、タンポポのファーストアルバム「TANPOPO 1」の完成度も素晴らしかったですし(あれはアイドルというよりも、コーラスグループって表現の方が合ってるような)、同時期に制作されたモーニング娘。「SECOND MORNING」もなかなかの出来でした。しかし、アルバムまるまる1枚隙のない作りとなると‥‥どれくらだろう? 俺自身もここ5年以上はこの手のアイドルから遠ざかっていたので何とも言えませんが、例えば小室哲哉が当時力を入れていた華原朋美や鈴木あみのファーストアルバムと比べても‥‥いや、個人的趣味から言えば、こっちの方が全然完成度高いと思うのですが。音楽的にも結構幅があるし、歌唱力という意味でも、華原や鈴木のような危うさは全く感じられないし。

  そう、そういう点からもこの『松浦亜弥』を「アイドルサイボーグ」と表現できると思うんですよね(この点については、また次回に)。やれ「15才の小娘に対して、何本気になってんねん?」とか「ヲタ、キショ!」とかいろいろ意見はあるでしょうが、純粋に音楽だけとってもこれだけ語るべき点が存在する。それだけ優れた「J-POPアルバム」(J-POPっていう表現は個人的には嫌いですが)なのですよ、これは。



▼松浦亜弥『ファーストKISS』
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投稿: 2002 01 05 12:00 午前 [2002年の作品, ハロー!プロジェクト, 松浦亜弥] | 固定リンク