カテゴリー「2002年の作品」の136件の記事

2024年4月23日 (火)

PEARL JAM『RIOT ACT』(2002)

2002年11月12日にリリースされたPEARL JAMの7thアルバム。日本盤は同年11月23日発売。

前作『BINAURAL』(2000年)から2年半ぶりの新作。エディ・ヴェダー(Vo)、マイク・マクレディ(G)、ストーン・ゴッサード(G)、ジェフ・アメン(B)、マット・キャメロン(Dr/SOUNDGARDEN)という現在まで続く布陣による2作目のスタジオアルバムにあたります。

チャド・ブレイクと初タッグを組んだ前作から一転、今作ではアダム・カスパー(FOO FIGHTERSQUEENS OF THE STONE AGE、SOUNDGARDENなど)をプロデューサーに迎え制作。ミキシングエンジニアにはこれまで同様、ブレンダン・オブライエンが名を連ねています。

『BINAURAL』発表後に行われたデンマークでのフェス『Roskilde Festival』(2000年6月30日)にて、PEARL JAMのパフォーマンス中に9人の観客が圧死。この事故は彼らに大きな影を落とすことになります。その後、充電期間に突入するのですが、今度は「9.11」(2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ)が発生し、さらに今作完成間近には盟友レイン・ステイリー(ALICE IN CHAINS)の訃報も飛び込んでくる……こうした悲劇を前に、彼らは「死」や「実存主義(Existentialism)」と真正面から向き合い始め、バンドとしても人間としてもひとまわり大きく成長し、新たなステップを踏み出します。

前々作『YIELD』(1998年)から打ち出し始めた、普遍性の強いアメリカンロック色は作品を重ねるごとにどんどん強くなり、本作ではもはや「グランジ界の寵児」なんて看板すら必要ないほどの地点にまで到達している。バンドに暗い影を落とすような悲劇が続いたものの、そこで鳴らされているサウンドは決して悲観的ではなく、強い生命力が伝わるもの。明日どうなるかわからないからこそ、今この瞬間この命をスパークさせる……各曲からは、そんな彼らの覚悟が伝わるのではないでしょうか。

ですが、リリースから20年以上を経た今の耳でこのアルバムに接すると、そこ覚悟の中にはまだまだ「迷い」も存在していたんだなという事実にも気付かされる。その迷いも含めて、実は初期のPEARL JAMらしさなんじゃないかという気がしているので、そういった点では本作は初期10年の集大成と言うこともできるでしょう。

と同時に、真の意味でバンドがすべてを「背負って」「乗り越える」のは、本作から3年半後に届けられる次作『PEARL JAM』(2006年)でのことなのかなと。セルフタイトルを冠するあたりにも、その姿勢が伝わるのではないでしょうか。

4thアルバム『NO CODE』(1996年)以降、日本人の耳には地味に聴こえる土着的サウンドは、ここでひとつのピークを迎え、“グランジ3部作”(1stアルバム『TEN』、2ndアルバム『VS.』、3rdアルバム『VITALOGY』)以降の混迷期を乗り越えたPEARL JAMは、ここから新たな領域へと到達する。そういった意味では、本作は集大成であると同時に、新章へ向かう過渡期の1枚なのかもしれません。

 


▼PEARL JAM『RIOT ACT』
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2023年2月10日 (金)

BRYAN ADAMS『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』(2002)

2002年5月14日にリリースされたブライアン・アダムスの9thアルバム。日本盤は同年6月21日発売。

コンピレーションアルバム『THE BEST OF ME』(1999年)を挟みつつも、オリジナル作品としては『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)から約3年半ぶりとなった本作は、アニメーション映画『スピリット:スタリオン・オブ・ザ・シマロン』のサウンドトラックとして制作されたもの。そういった意味では純粋なオリジナルアルバムとは言えないかもしれませんが、全15トラック中11トラックがブライアンの歌モノ楽曲なので一般的にオリジナルアルバムにも含まれています。

映画のスコアをかのハンス・ジマーが手掛けていることもあり、アルバムのプロデュースや収録された楽曲の制作にも彼の名前を見つけることができます。しかし、すべてがハンスの色というわけではなく、楽曲自体はグレッチェン・ピーターズやロバート・ジョン・“マット”・ラングなどブライアンの楽曲制作には欠かせない面々や、ギャヴィン・グリーナウェイ、エリオット・ケネディ、トレヴァー・ホーンなど英国出身のコンポーザーとのコライトにより生まれたものが中心。演奏にもキース・スコット(G)やミッキー・カリー(Dr)など気心知れたメンツが加わっていることから、ハンスとのサントラ制作というお題の下に完成した1枚と解釈できます。

「Get Off My Back」といったブライアンらしいロックンロールも収録されているものの、基本的には映画を劇的に盛り上げるため、各場面に則した楽曲が中心。ということもあってか、ムーディーなミディアムナンバーや穏やかなバラードがずらりと並ぶ大人な内容となっています。90年代に入ってから「(Everything I Do) I Do It For You」の爆発的ヒットも手伝い、バラードシンガー的な見られ方も強いブライアンですが、彼のそういった側面を愛するリスナーにはうってつけの1枚と言えるでしょう。

また、前作『ON A DAY LIKE TODAY』での内向的な作風を考えると、本作へと続いていく流れはあまり意外とは思えず、当時は「ああ、彼も大人になったし、こうやってどんどん穏やかな方向へシフトしていくんだね」と少しだけがっかりしたものです。もちろん、本作は映画のサントラありきで制作されたものなので、これがずっと続くわけではないのですが。

本作のリード曲であり映画の主題歌的な立ち位置にある「Here I Am」、サラ・マクラクランをフィーチャーした「Don't Let Go」、アコギの弾き語りから徐々に盛り上がっていく「Nothing I've Ever Known」など良質な楽曲は当然のように豊富な本作。あくまで“長いアーティスト史における、1方向に特出した表現のひとつ”として受け取れば、これもアリなのでは。もちろん、ここでの経験があったからこそ続く『ROOM SERVICE』(2004年)で、溜め込んだものが一気に爆発するわけですけどね。

 


▼BRYAN ADAMS『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』
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なお、本作はフランスやドイツ、スペイン、イタリア、ブラジルなど、リリースされる国によってボーカルの言語が異なるとのこと。映画自体がそれぞれの上映国の言語でアフレコされていることもあり、劇中で使用される楽曲(ボーカル)も合わせているようです。ブライアンは英語版のほか、フランス語版も歌唱しており、こちらのバージョンもサブスクで聴くことが可能です。なお、日本版の主題歌はZIGGY森重樹一が担当しているので、ぜひ映像で確認してみてください。

 


▼BRYAN ADAMS『SPIRIT: L'ETALON DES PLAINES』
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2023年1月 9日 (月)

2002年4月〜2003年3月発売の洋楽アルバム20選

2015年から毎年この時期に用意してきたこの成人企画。ちょうど昨年から成人年齢が18歳へと引き下げされ、現在は成人式の概念も崩れつつあります。が、この企画はこの企画として毎年やっていってはどうかと思い直し、タイトルから「祝ご成人」の文字を外し、20年前を振り返る企画として残すことにしました。

通常なら1月はじまりでカウントするところを、これまで同様4月はじまりの翌年3月終わりという年度縛りで進めるのは、ちょっと日本的なのかな。とはいえ、今さらこのフォーマットを崩すのも何かなと思い、このまま続けさせていただきます。

この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2002年4月〜2003年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップする……というのが本来の趣旨。20年って結構節目にもなると思うので、改めて「ああ、自分が生まれた頃はこういうアルバムがヒットしていたのか」とか「これってもう20年前の作品なのか」とか、いろいろ浸っていただいたり驚いていただけるとうれしいです。

 

では、サブスクを通して20年前の名盤20枚をお楽しみください。

 

AVRIL LAVIGNE『LET GO』(2002年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

BECK『SEA CHANGE』(2002年9月発売)(Spotify

 

COLDPLAY『A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD』(2002年8月発売)(Spotify

 

EMINEM『8 MILES: MUSIC FROM AND INSPIRED BY THE MOTION PICTURE』(海外:2002年10月発売、日本:2003年4月発売)(Spotify

 

EVANESCENCE『FALLEN』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

JURASSIC 5『POWER IN NUMBERS』(2002年10月発売)(Spotify

 

KILLSWITCH ENGAGE『ALIVE OR JUST BREATHING』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE LIBERTINES『UP THE BRACKET』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

LINKIN PARK『METEORA』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

MAROON 5『SONGS ABOUT JANE』(2002年6月発売)(Spotify

 

MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003年2月発売)(Spotify)(レビュー

 

MOBY『18』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE MUSIC『THE MUSIC』(2002年9月発売)(Spotify

 

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002年7月発売)(Spotify)(レビュー

 

SIGUR ROS『( )』(2002年10月発売)(Spotify

 

STONE SOUR『STONE SOUR』(2002年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『DOES THIS LOOK INFECTED?』(2002年11月発売)(Spotify

 

t.A.T.u.『200 KM/H IN THE WRONG LANE』(海外:2002年12月発売、日本:2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

UNDERWORLD『A HUNDRED DAYS OFF』(2002年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

このほかにも、以下の作品を候補に挙げていました。

ASIAN DUB FOUNDATION『ENEMY OF THE ENEMY』
BEN HARPER『DIAMONDS ON THE INSIDE』
BON JOVI『BOUNCE』(レビュー
BRUCE SPRINGSTEEN『THE RISING』
DAVID BOWIE『HEATHEN』(レビュー
DISTURBED『BELIEVE』(レビュー
EMINEM『THE EMINEM SHOW』
FEEDER『COMFORT IN SOUND』(レビュー
HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(レビュー
THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』(レビュー
IN FLAMES『REROUTE TO REMAIN』
KING CRIMSON『THE POWER TO BELIEVE』
KORN『UNTOUCHABLES』(レビュー
MESHUGGAH『NOTHING』
OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』(レビュー
OK GO『OK GO』
OPETH『DELIVERANCE』
PET SHOP BOYS『RELEASE』
PETER GABRIEL『UP』
PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(レビュー
QUEENS OF THE STONE AGE『SONGS FOR THE DEAF』
ROYKSOPP『MELODY A.M.』
RUSH『VAPOR TRAILS』(レビュー
SPARTA『WIRETAP SCARS』(レビュー
THE USED『THE USED』(レビュー
THE VINES『HIGHLY EVOLVED』

 

2022年12月 4日 (日)

KISSのベストアルバムを総括する(2022年版)

ブライアン・アダムスAEROSMITHに続く「ベストアルバムを総括する」シリーズ第3弾(シリーズだったのか……)はKISS。まあとにかくベスト盤やコンピ盤、ボックスセットが多い方々ですが、今回は数あるベスト盤の中からレーベル主導で制作された『MILLENNIUM COLLECTION』シリーズを除く、バンド側の公式リリースに絞ってセレクトしております。中には新曲やレアトラックなど含まないもの、現在廃盤でサブスクでも配信されていないものも含まれていますが、あえて掲載してみます。

とにかく非常に長いエントリーなので、心してお読みください……(苦笑)。

 

 

『DOUBLE PLATINUM』(1978)

 

1978年4月2日にリリースされたKISS初のグレイテストヒッツアルバム。アナログ2枚組、CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナル編成。新曲こそ皆無ですが、既存楽曲に加え「Strutter」のリテイクバージョン「Strutter '78」やリミックステイクなどが豊富。サブスクではApple Musicはフルで楽しめますが、Spotifyでは「Calling Dr. Love」と「Black Diamond」が歯抜け状態。Amazon Musicでは配信すらされていないようなので、どうにかしていただきたいものです。

詳しくはこちらのエントリーを参照のこと。

 


▼KISS『DOUBLE PLATINUM』
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『KILLERS』(1982)

 

1982年6月15日にリリースされた、KISSにとって2作目の公式コンピレーションアルバム。アナログ/CDともに1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『KILLERS』
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『CHIKARA』(1988)

 

1988年5月25日に日本限定でリリースされたコンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。

枚数限定生産ということで、現在は廃盤。ただ、中古盤ショップを回れば意外と簡単に見つけられるはず。値段もそこまで張っていないので(Amazonは論外!)、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼KISS『CHIKARA』
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『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

 

1988年11月15日にリリースされた、KISSにとって3作目の公式コンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。

内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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『GREATEST KISS』(1997)

 

1997年4月8日にリリースされたKISSの公式コンピレーションアルバム第4弾。日本盤は1997年1月の来日公演にあわせて、1996年12月9日発売。CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、ピーター・クリス(Dr, Vo)。オリジナル編成およびメイクアップ期へと回帰した彼らのワールドツアーにあわせて制作されたもので、北米、ヨーロッパ、日本とそれぞれ収録曲が一部異なるのが特徴。

これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。

オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。

サブスクでも聴くことができますが、Apple Musicでは日本盤バージョンで配信、Spotifyはヨーロッパバージョンでの配信のようです。

 


▼KISS『GREATEST KISS』
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2022年4月12日 (火)

AEROSMITHのベストアルバムを総括する(2022年版)

先日ブライアン・アダムスで試してみた、いちアーティストの公式ベストアルバム/コンピレーションアルバムをひとつのエントリーの中で総括する記事AEROSMITH版です。

AEROSMITHは1973年のデビュー以降、Columbia Records(1973〜1984)→Geffen Records(1985〜1997)→Columbia(1997〜2021)→Universal(2021〜)と移籍を繰り返してきましたが、現在は全カタログの権利をUniversalが取得したことで、今後Columbia/Sony時代の音源もUniversalからフィジカル再発/デジタル配信されることになりそうです。

そういった意味では、ここに記す代表的なコンピレーションアルバムのいくつかは今後、姿を消すことになるかもしれません。それでもこの機会に改めて、ひとつの記録として記事を残しておくのはアリかなと思い、今回の執筆に至りました。

選出したベストアルバムは、レーベル主導によるシリーズ企画(Universalの『THE MILLENNIUM COLLECION』など)を除く、新曲やレア曲などを含む9作品。中には廃盤になっていたりサブスクで聴けないものも含まれていますが、ご了承ください。また、すでに単独エントリーで公開済みの作品もありますが、その場合は該当記事のリンクを貼っておきますのでご参考ください。

 

 

『AEROSMITH'S GREATEST HITS』(1980)

 

1980年11月にリリースされた、バンド初のベストアルバム。

そのタイトルどおり、収録内容はシングル曲を中心にしたもので、アナログ時代ということで全10曲/約38分というコンパクトな内容でまとめられています。また、構成的にもリリース順に並べられているので、いきなり「Dream On」から始まるという曲順はロックバンド的にどうなのかな?という疑問も残ります。

収録曲のうち、「Same Old Song And Dance」「Sweet Emotion」「Kings And Queens」はイントロを短くした“シングル・エディット”バージョンで収録。「Walk This Way」もアルバムバージョンより10秒近く短い形にエディットされています。オリジナルバージョンに勝るものはありませんが、本作リリース当時は70年代の代表的シングル曲をひとまとめに楽しめるアルバムとして、非常に重宝されましたし、80年代後半の本格的復帰以降も『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)とともにこのアルバムを愛聴したファンは少なくなかったはずです(注:Apple Musicなど一部ストリーミング配信版は各シングルエディットがアルバムバージョンに差し替えられているのでご注意を)。

また、映画サントラに提供したビートルズのカバー「Come Together」が収録されている点も注目ポイントかな。『LIVE! BOOTLEG』(1978年)ではライブバージョンを先に聴くことができましたが、スタジオテイクがエアロのアルバムに収録されるのはこれが初めて。そこも本作が長く愛された要因のひとつかなと。

なお、本作がリリースされた頃にはすでにバンドの人気も低迷期に突入しており、チャート的には大きな成功を収めることはありませんでしたが、そこから数年後の再ブレイクも手伝い、セールス的には現在までに1000万枚を超えるメガヒット作となっています。

 


▼AEROSMITH『AEROSMITH'S GREATEST HITS』
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『GEMS』(1988)

 

1988年11月にリリースされたAEROSMITHのコンピレーションアルバム。

『PERMANENT VACATION』(1987年)の大ヒットを受けて、前レーベルのColumbia Recordsが企画したコンピ版で、シングル曲中心でまとめられた前作『AEROSMITH'S GREATEST HITS』と比べるとその内容はかなり地味なもの。ただ、ライブで演奏される機会の多い「Mama Kin」や「Lord Of The Thighs」「Train Kept A-Rollin'」なども含まれていることから、“裏ベスト”的側面の強い1枚かなと。

本作最大の注目ポイントは、『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のみで聴くことができた「Chip Away The Stone」の未発表スタジオテイクが収録されていること。この1曲のために当時本作を購入したというファンも少なくなかったはずです。実際、この曲は本作からシングルカットもされ(既存ライブ映像を使用したMVも制作)、ラジオヒットも記録しています。

今のようにサブクスやYouTubeも存在せず、過去のスタジオアルバムにまで手を出せなかった当時の中高生には本作に収録された「Rats In The Celler」や「Nobody's Fault」「Round And Round」「Jailbait」などはかなりカッコよく響いたものです。ここから『ROCKS』(1976年)『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)にも手を伸ばしていったビギナーは80年代後半、かなりの数存在していたはずですから。

コアなファンの中には、先述の『AEROSMITH'S GREATEST HITS』より本作のほうが好きという方も、意外と多かったりして。かくいう僕も本作、大好物ですからね。

 


▼AEROSMITH『GEMS』
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2022年3月16日 (水)

DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』(2002)

2002年1月29日にリリースされたDREAM THEATERの6thアルバム。日本盤は同年1月23日先行発売。

ジョーダン・ルーデス(Key)を迎えた新編成で制作されたバンド初のコンセプトアルバム『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)がある一定の高評価を獲得したことで、現在の方向性に確信を持てたDREAM THEATER。この自信を糧に、バンドは同じ方向性を保ちつつ、引き続きコンセプチュアルでトータル性の強いアルバム作りに取り組みます。

前作から2年3ヶ月ぶりとなる新作は、キャリア初となるCD2枚組スタジオアルバム。そのテーマはオープニングトラック「The Glass Prison」で歌われているマイク・ポートノイ(Dr)のアルコール依存症の治療を筆頭に、全6曲を通じて人生における苦しみや心の中にある6つの不穏(乱れ、動揺)が表現されています。また、DISC 1では10分超の楽曲3曲を含む前5曲が、従来のテクニカルかつプログレッシヴなテイストで表現。オープニングの「The Glass Prison」がいきなり約14分もの組曲というのも、前作で得た自信が成せる技かな。でも、この敷居の高い1曲を楽しむことができれば、しの後に続くめくるめくDTワールドを心置きなく楽しめるはずです。

そして、DISC 2は8つのパートで構成された42分にもおよぶ一大組曲「Six Degrees Of Inner Turbulence」を収録。クラシカルかつドラマチックな「I. Overture」からスタートするこの組曲では双極性障害やPTSD、統合失調症、産後うつ、自閉症、解離といったさまざまな精神疾患や状態異常を計6ケース取り上げられており、例えば「II. About To Crash」では爽快感の強いAOR寄りのプログロック、「III. War Inside My Head」では変拍子を多用したヘヴィメタル、「VI. Solitary Shell」では穏やかなフォークロックのように、各パートごとにバンドが影響を受けた音楽がストレートに表現されています。

リリース当時はCD2枚に全6曲で、トータル96分とそのボリュームに若干引いてしまいましたが、個人的には『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』よりも聴きやすい印象を受けたのもまた事実。前作ほどストーリー性が強くないこともあってか、1曲1曲が独立した存在として楽しめるのも本作の良いところで(組曲「Six Degrees Of Inner Turbulence」を除く)、かつこれまでのキャリアを総括するようにさまざまなジャンルの楽曲が詰め込まれているのも聴きやすさに直結しているように感じました。

また、「Blind Faith」や「Misunderstood」のように穏やかな楽曲もあれば、「The Great Debate」のようにスリリングな楽曲もあるし、本作中もっとも短尺(6分50秒前後)でラジオやMTVでのヒットを意識したバラード曲「Disappear」もある。闇を抱えたテーマということもあり、DISC 1は華やかさよりも穏やかでディープな側面が目立つのも聴きやすさの要因ではないでしょうか。

そして、組曲としても単曲としても楽しむことができるDISC 2の「Six Degrees Of Inner Turbulence」は、DISC 1とは異なる趣でバンドの多面性を堪能することができる。モダンなプログメタルは苦手だけどクラシカルなプログレッシヴロックは大好きという旧世代のリスナーにも存分にアピールする内容かと思います。

バンドとしてもここでひとつ、これまでの活動を総括するような傑作をまとめ上げることができたのではないでしょうか。『IMAGES AND WORDS』(1992年)から10年という節目に本作へと到達できたことで、DTは続く『TRAIN OF THOUGHT』(2003年)で次のステップに移ることになります。

 


▼DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』
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2022年2月20日 (日)

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002)

2002年7月9日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの8thアルバム。日本盤は同年7月10日発売。

ジョン・フルシアンテ(G)が復帰して制作された前作『CALIFORNICATION』(1999年)が全米3位まで上昇し、アメリカのみの売り上げ700万枚超えと5thアルバム『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)に並ぶメガヒット作となったレッチリ。「Scar Tissue」(全米9位)、「Otherside」(同14位)、「Californication」(同69位)、「Around The World」などのヒットシングルも多数生まれ、第二の黄金期突入をさらに後押しする今作が3年のスパンを経て届けられました。

引き続きリック・ルービン(SLAYERSYSTEM OF A DOWNMETALLICAなど)をプロデューサーに迎えた本作は、メンバーが“Very John”と例えるように、前作以上にジョン・フルシアンテ色濃厚な仕上がり。ファンク色は徐々に抑え気味になり、ポップな色彩やサイケデリック感が強調された、前作以上に聴きやすい/親しみやすい内容に仕上げられています。その結果、チャート的も前作を上回る全米2位まで到達し、イギリスでは初の1位も獲得。「By The Way」(全米34位/全英2位)、「The Zephyr Song」(全米49位/全英11位)、「Can't Stop」(全英57位/22位)、「Universally Speaking」(全英27位)といったスマッシュヒットシングルも多数生まれました。アルバム自体セールス的には前作には及ばず、アメリカでは200万枚止まりでしたが、全世界では1000万枚近い売り上げに到達。『CALIFORNICATION』同様レッチリ入門に適した1枚とも言えるでしょう。

オープニングを飾るタイトルトラック「By The Way」はドライブ感がたまらない1曲で、特にフリー(B)とチャド・スミス(Dr)の織りなすグルーヴィーなリズムと、その上に小気味良いカッティングを響かせるジョンのギター、パーカッシヴさとメロウさが適度に織り交ぜられたアンソニー・キーディス(Vo)が乗ることで絶妙なハーモニーを作り上げています。もうこの1曲で勝ったも同然です。

かと思えば、続く「Universally Speaking」はかつてないほどにポップさが強調された1曲で、レッチリの新たな扉を開いたと言える仕上がり。ダークなサイケロック「This Is The Place」や「Don't Forget Me」、哀愁味の強い「Dosed」は前作までの流れを汲むもので、『CALIFORNICATION』で得た手応えがさらにブラッシュアップされた形で踏襲されています。ヒットシングル「The Zephyr Song」も同様ですね。

ギター初心者がフルシアンテのフレーズをコピーするのに最適なサイケデリックファンクロック「Can't Stop」、穏やかなバラード「I Could Die For You」や「Midnight」、リズム隊の生み出すグルーヴ感がたまらない「Throw Away Your Television」などが並ぶアルバム中盤の流れも非常に味わい深いものがあります。なにせこのアルバム、全16曲/約69分という超大作。前作も全15曲と比較的曲数が多かったものの、トータルランニングは56分と10数分短い。そういった意味では『CALIFORNICATION』以上にプレイヤー/表現者としての側面がより濃厚に遭われたのが『BY THE WAY』という作品かもしれません。メンバーの言う“Very John”という表現には、そういった強い拘りも含まれているんでしょうね。

アコースティック色の強いポップな「Cabron」、ミディアムスローの「Tear」、ラテン色が散りばめられた新境地のアップチューン「On Mercury」、うねるようなグルーウが気持ち良い「Minor Thing」、不思議な浮遊感が味わえる「Warm Tape」と後半も構成的な楽曲が続き、最後は当時のレッチリらしさが凝縮されたドラマチックなマイナーチューン「Venice Queen」で締め括り。ここから2〜3曲間引いたらより聴きやすかったのかな?なんて思いつつも、じゃあどれを削るかと言われると答えが難しい。結局、ジョン・フルシアンテの才能が沸点に達したという点を考慮するとこのセットリスト、構成で正解なのかもしれません。

この才能はさらに爆発をし続け、ここから4年後に届けられる9thアルバム『STADIUM ARCADIUM』(2006年)はCD2枚組/全28曲入りと臨界点に突破。いろいろな意味でピークを迎えることになります。

 


▼RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』
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2022年1月20日 (木)

MY CHEMICAL ROMANCE『I BROUGHT YOU MY BULLETS, YOU BROUGHT ME YOUR LOVE』(2002)

2002年7月23日にリリースされたMY CHEMICAL ROMANCEの1stアルバム。当初はTHURSDAYなどが所属したインディーズのEyeball Recordsからの発表でしたが、のちにバンドがメジャー契約したことで2009年2月にReprise Recordsから再発され、2009年3月25日には日本盤も初リリースとなりました。

2001年、9.11を境に自身の生き方を考えたジェラルド・ウェイ(Vo)が初代ドラマーのマット・ペリシアーとバンドを結成。そこにジェラルドの実弟マット(B)、マット経由でレイ・トロ(G)が加わりデモテープを制作すると、それがEyeball Recordsの目に留まり契約に至ります。そして、同レーベル所属のPENCEY PREPのフランク・アイイアロ(G)が同バンド解散後にジェラルドらの元へと合流し、ようやく初期MY CHEMICAL ROMANCEの5人が集結するわけです。

アルバムはTHURSDAYのフロントマン、ジェフ・リックリー(Vo)のプロデュースにより制作。レコーディング開始時はフランクはまだメンバーではなく、レコーディング終盤に加わったことで実際には「Honey, This Mirror Isn't Big Enough For The Two Of Us」と「Early Sunsets Over Monroeville」の2曲にしかタッチしていません。そういった意味では、バンドの真のデビュー作は続くメジャー第1弾アルバム『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』(2004年)であり、今作はそこへ向けた処女作/習作と言えるかもしれません。

『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』へと続く片鱗はたっぷり見つけることができ、やりたいことをただやり尽くした結果無軌道なまでにはちゃめちゃなポストハードコア/エモ(と呼んだらジェラルドに怒られそうですが)アルバムに仕上がった。そんな初期衝動たっぷりな、デビュー作らしいデビュー作と言える内容は、この時点ですでに光るものが感じられる良曲ばかりです。オープニングの「Romance」(お馴染み「禁じられた遊び」のカバー)に一瞬「?」となるものの、続くアグレッシヴな「Honey, This Mirror Isn't Big Enough For The Two Of Us」で「あ、マイケミだ!」と納得させられるし、「Our Lady Of Sorrows」のキャッチーさはすでに以降の彼らさしさに満ち溢れている。

かと思えば、THE SMITHSあたりを彷彿とさせるUKロック的な「Early Sunsets Over Monroeville」にニヤリとしたり、疾走感溢れる「This Is The Best Day Ever」のカッコさに痺れ、プログレッシヴな展開を持つ6分強の「Demolition Lovers」に以降のコンセプチュアルな作風との共通点を見つけられる。そう、次作以降の作風はここから分岐していったと考えると非常に納得がいくものがあるのです。

こうやって聴くと、すでに処女作の時点で何者にも似ていないオリジナリティを確立していることにも気付かされますし、この1枚でメジャーと契約できたのも合点がいきます。当然ながら、僕が本作に触れたのは『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』でのブレイク以降(おそらく2005年の最初の再発時)でしたが、当時聴いたときよりも今聴くほうが本作の魅力をより深く理解できる気がします。

 


▼MY CHEMICAL ROMANCE『I BROUGHT YOU MY BULLETS, YOU BROUGHT ME YOUR LOVE』
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2022年1月19日 (水)

THE USED『THE USED』(2002)

2002年6月25日にリリースされたTHE USEDの1stアルバム。日本盤は同年12月18日発売。

THE USEDは米・ユタ州オレムで結成された4人組ポストハードコア/スクリーモバンド。正式な結成タイミングは2001年となっていますが、実は90年代半ばから前身バンドとして活動を続けており、結成から1年でメジャーデビューというポッと出の新人というわけではないのでした。

適度なハード&ヘヴィさとメロディアスさ、そしてエモの流れを汲む激情的アンサンブルはパンクとモダンメタル/ニューメタルの中間に位置するもので、同時期にシーンを席巻したLINKIN PARKのようなヒップホップからの延長線上にあるニューメタル勢とは一線を画するものでした。が、FINCHらとともにゼロ年代初頭のラウドシーンを牽引するという意味でも、このデビューアルバムは当時非常に高く評価された記憶があります。

今の耳で聴くとそこまでメタリックというわけでもなく、むしろエモやハードコアパンクの進化系のような印象を受けるサウンド/楽曲群は非常に耳馴染みがよく、そりゃヒットするわなと強く感じさせるものばかり。大半の楽曲が2〜3分台というコンパクトさもパンクロック的で、複雑かつ技巧的な演奏でリスナーを圧倒させるというよりも、強弱のダイナミズムで感情をダイレクトに表現するスタイルも、90年代後半以降のポップパンクの流れを汲むものなのかなと感じました。

とはいえ、20年前はこのスタイルこそが新世代のメタルなんだ、時代はどんどん変化していくんだと感じていた筆者は、旧世代のクラシカルなメタルとこれを同じように受け取ろうと必死だった記憶もあり、今思えば無理していたなあ……なんて懐かしくもなったりします(苦笑)。その後、さらなる進化を遂げるメタル/ラウドシーンですが何周もした結果、無理なくこの時代のバンドと向き合うことができるようになった。そんな今だからこそ、この良質なロックアルバムをしっかり評価できたらと思っています。

ヘヴィでメタリックなアレンジの楽曲よりも、「Poetic Tragedy」や「Buried Myself Alive」のような大らかなノリと親しみやすいメロディを持つ楽曲のほうが強く響くのも、今の耳で聴くからこそなのかな。「The Taste Of Ink」の持つグルーヴィーさも、ピアノをフィーチャーした美しい「Blue And Yellow」やアコギ&ストリングスによるサイケデリックな「On My Own」なども非常に素晴らしく、だからこそ「A Box Full Of Sharp Objects」のようなダイナミックな楽曲がより映える。王道感の強いラウドチューン「Maybe Memories」からシークレットトラックを含むラストナンバー「Pieces Mended」まで、スルスルと聴き進められる良質の1枚です。

本作はデビューアルバムにもかかわらず、全米63位まで上昇。最終的にプラチナディスクに認定されています。チャート的には続く2作目『IN LOVE AND DEATH』(2004年。全米6位)、3作目『LIES FOR THE LIARS』(2007年。全米5位)などには劣りますが、2002年というシーン黎明期を語る上ではFINCHの1stアルバム『WHAT IT IS TO BURN』(2002年)同様に外せない代表作です。

 


▼THE USED『THE USED』
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2022年1月18日 (火)

FINCH『WHAT IT IS TO BURN』(2002)

2002年3月12日にリリースされたFINCHの1stアルバム。日本盤は同年8月7日発売。

FINCHは1999年に結成された、米・カリフォルニア州出身の当時5人組のポストハードコアバンド。2001年にDrive-Tru Recordsから発表したEP『FALLING INTO PLACE』で注目を集め、翌年にこのアルバムでメジャーデビューを果たします。なお、本作にはその1st EP収録の「Letters To You」「Perfection Through Silence」の再録バージョンも含まれています。

ハードコアパンクやポップパンクの要素を織り交ぜつつ、随所からエモやスクリーモ的な香りも漂わせているスタイルは非常に2000年代初頭ならではと言えるもので、オープニングを飾る「New Beginnings」あたりから伝わるグルーヴィかつメタリックな質感は90年代後半のニューメタル的と受け取ることもできる(彼らは前身バンドでDEFTONESのカバーをしていたんですよね。納得)。そういったミクスチャー感が時代の節目っぽくもあり、新世代というよりは90年代からゼロ年代への流れを正しく受け継ぐ正統派バンドのようにも感じられます。

メロディは非常にキャッチーで親しみやすいものが多く、適度にスクリームを織り交ぜたボーカルスタイルも耳障りが悪くなる寸前のギリギリを攻めている。そういった意味ではとてもメジャー感が強く、変にアンダーグラウンド臭が強くないのも好印象。「Ender」のように13分超の実験的なナンバーも含まれているものの、全体的にはメタル系リスナーも親しみやすいコンパクトなラウドチューン中心の、スクリーモ入門編にふさわしい1枚です。

本作のプロデュースを担当したのは、JIMMY EAT WORLDの諸作品やBLINK-182、MINERAL、MIDTOWNなどを手がけてきたマーク・トロンビーノ。ポップパンクやポストハードコア、エモなどを中心にプロデュースしてきた方で、アルバムではエフェクティブなプログラミングも担当しています。また、ゲストシンガーとしてGLASSJAWのダリル・パルンボ(Vo)が「Grey Matter」「Project Mayhem」に参加。こういった人選もバンドの当時の立ち位置を表しており、興味深いものがあります。

チャート的には全米99位止まりでしたが、ド新人のわりには成功したほうではないでしょうか。数字的な成功を果たすのは続く『SAY HELLO TO SUNSHINE』(2005年。全米24位)でのことですが、FINCHというバンドの軸を知る上で欠かせないのはこの1stアルバムではないでしょうか。とはいえ、彼らのフルアルバムは3枚しかないので、どうせならその3枚をリリース順に聴いていただきたいものです。

あと、この『WHAT IT IS TO BURN』を完全再現したライブアルバム『WHAT IT IS TO BURN: X LIVE』(2014年)も製作されているので、あわせてチェックしてみることをオススメします。

 


▼FINCH『WHAT IT IS TO BURN』
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