チャド・ブレイクと初タッグを組んだ前作から一転、今作ではアダム・カスパー(FOO FIGHTERS、QUEENS OF THE STONE AGE、SOUNDGARDENなど)をプロデューサーに迎え制作。ミキシングエンジニアにはこれまで同様、ブレンダン・オブライエンが名を連ねています。
『BINAURAL』発表後に行われたデンマークでのフェス『Roskilde Festival』(2000年6月30日)にて、PEARL JAMのパフォーマンス中に9人の観客が圧死。この事故は彼らに大きな影を落とすことになります。その後、充電期間に突入するのですが、今度は「9.11」(2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ)が発生し、さらに今作完成間近には盟友レイン・ステイリー(ALICE IN CHAINS)の訃報も飛び込んでくる……こうした悲劇を前に、彼らは「死」や「実存主義(Existentialism)」と真正面から向き合い始め、バンドとしても人間としてもひとまわり大きく成長し、新たなステップを踏み出します。
「Get Off My Back」といったブライアンらしいロックンロールも収録されているものの、基本的には映画を劇的に盛り上げるため、各場面に則した楽曲が中心。ということもあってか、ムーディーなミディアムナンバーや穏やかなバラードがずらりと並ぶ大人な内容となっています。90年代に入ってから「(Everything I Do) I Do It For You」の爆発的ヒットも手伝い、バラードシンガー的な見られ方も強いブライアンですが、彼のそういった側面を愛するリスナーにはうってつけの1枚と言えるでしょう。
また、前作『ON A DAY LIKE TODAY』での内向的な作風を考えると、本作へと続いていく流れはあまり意外とは思えず、当時は「ああ、彼も大人になったし、こうやってどんどん穏やかな方向へシフトしていくんだね」と少しだけがっかりしたものです。もちろん、本作は映画のサントラありきで制作されたものなので、これがずっと続くわけではないのですが。
本作のリード曲であり映画の主題歌的な立ち位置にある「Here I Am」、サラ・マクラクランをフィーチャーした「Don't Let Go」、アコギの弾き語りから徐々に盛り上がっていく「Nothing I've Ever Known」など良質な楽曲は当然のように豊富な本作。あくまで“長いアーティスト史における、1方向に特出した表現のひとつ”として受け取れば、これもアリなのでは。もちろん、ここでの経験があったからこそ続く『ROOM SERVICE』(2004年)で、溜め込んだものが一気に爆発するわけですけどね。
▼BRYAN ADAMS『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』 (amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3)
SUM 41『DOES THIS LOOK INFECTED?』(2002年11月発売)(Spotify)
t.A.T.u.『200 KM/H IN THE WRONG LANE』(海外:2002年12月発売、日本:2003年3月発売)(Spotify)(レビュー)
UNDERWORLD『A HUNDRED DAYS OFF』(2002年9月発売)(Spotify)(レビュー)
このほかにも、以下の作品を候補に挙げていました。
ASIAN DUB FOUNDATION『ENEMY OF THE ENEMY』 BEN HARPER『DIAMONDS ON THE INSIDE』 BON JOVI『BOUNCE』(レビュー) BRUCE SPRINGSTEEN『THE RISING』 DAVID BOWIE『HEATHEN』(レビュー) DISTURBED『BELIEVE』(レビュー) EMINEM『THE EMINEM SHOW』 FEEDER『COMFORT IN SOUND』(レビュー) HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(レビュー) THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』(レビュー) IN FLAMES『REROUTE TO REMAIN』 KING CRIMSON『THE POWER TO BELIEVE』 KORN『UNTOUCHABLES』(レビュー) MESHUGGAH『NOTHING』 OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』(レビュー) OK GO『OK GO』 OPETH『DELIVERANCE』 PET SHOP BOYS『RELEASE』 PETER GABRIEL『UP』 PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(レビュー) QUEENS OF THE STONE AGE『SONGS FOR THE DEAF』 ROYKSOPP『MELODY A.M.』 RUSH『VAPOR TRAILS』(レビュー) SPARTA『WIRETAP SCARS』(レビュー) THE USED『THE USED』(レビュー) THE VINES『HIGHLY EVOLVED』
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。
内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。
これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。
オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。
収録曲のうち、「Same Old Song And Dance」「Sweet Emotion」「Kings And Queens」はイントロを短くした“シングル・エディット”バージョンで収録。「Walk This Way」もアルバムバージョンより10秒近く短い形にエディットされています。オリジナルバージョンに勝るものはありませんが、本作リリース当時は70年代の代表的シングル曲をひとまとめに楽しめるアルバムとして、非常に重宝されましたし、80年代後半の本格的復帰以降も『PERMANENT VACATION』(1987年)や『PUMP』(1989年)とともにこのアルバムを愛聴したファンは少なくなかったはずです(注:Apple Musicなど一部ストリーミング配信版は各シングルエディットがアルバムバージョンに差し替えられているのでご注意を)。
『PERMANENT VACATION』(1987年)の大ヒットを受けて、前レーベルのColumbia Recordsが企画したコンピ版で、シングル曲中心でまとめられた前作『AEROSMITH'S GREATEST HITS』と比べるとその内容はかなり地味なもの。ただ、ライブで演奏される機会の多い「Mama Kin」や「Lord Of The Thighs」「Train Kept A-Rollin'」なども含まれていることから、“裏ベスト”的側面の強い1枚かなと。
本作最大の注目ポイントは、『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のみで聴くことができた「Chip Away The Stone」の未発表スタジオテイクが収録されていること。この1曲のために当時本作を購入したというファンも少なくなかったはずです。実際、この曲は本作からシングルカットもされ(既存ライブ映像を使用したMVも制作)、ラジオヒットも記録しています。
今のようにサブクスやYouTubeも存在せず、過去のスタジオアルバムにまで手を出せなかった当時の中高生には本作に収録された「Rats In The Celler」や「Nobody's Fault」「Round And Round」「Jailbait」などはかなりカッコよく響いたものです。ここから『ROCKS』(1976年)や『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)にも手を伸ばしていったビギナーは80年代後半、かなりの数存在していたはずですから。
ジョーダン・ルーデス(Key)を迎えた新編成で制作されたバンド初のコンセプトアルバム『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)がある一定の高評価を獲得したことで、現在の方向性に確信を持てたDREAM THEATER。この自信を糧に、バンドは同じ方向性を保ちつつ、引き続きコンセプチュアルでトータル性の強いアルバム作りに取り組みます。
そして、DISC 2は8つのパートで構成された42分にもおよぶ一大組曲「Six Degrees Of Inner Turbulence」を収録。クラシカルかつドラマチックな「I. Overture」からスタートするこの組曲では双極性障害やPTSD、統合失調症、産後うつ、自閉症、解離といったさまざまな精神疾患や状態異常を計6ケース取り上げられており、例えば「II. About To Crash」では爽快感の強いAOR寄りのプログロック、「III. War Inside My Head」では変拍子を多用したヘヴィメタル、「VI. Solitary Shell」では穏やかなフォークロックのように、各パートごとにバンドが影響を受けた音楽がストレートに表現されています。
リリース当時はCD2枚に全6曲で、トータル96分とそのボリュームに若干引いてしまいましたが、個人的には『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』よりも聴きやすい印象を受けたのもまた事実。前作ほどストーリー性が強くないこともあってか、1曲1曲が独立した存在として楽しめるのも本作の良いところで(組曲「Six Degrees Of Inner Turbulence」を除く)、かつこれまでのキャリアを総括するようにさまざまなジャンルの楽曲が詰め込まれているのも聴きやすさに直結しているように感じました。
また、「Blind Faith」や「Misunderstood」のように穏やかな楽曲もあれば、「The Great Debate」のようにスリリングな楽曲もあるし、本作中もっとも短尺(6分50秒前後)でラジオやMTVでのヒットを意識したバラード曲「Disappear」もある。闇を抱えたテーマということもあり、DISC 1は華やかさよりも穏やかでディープな側面が目立つのも聴きやすさの要因ではないでしょうか。
そして、組曲としても単曲としても楽しむことができるDISC 2の「Six Degrees Of Inner Turbulence」は、DISC 1とは異なる趣でバンドの多面性を堪能することができる。モダンなプログメタルは苦手だけどクラシカルなプログレッシヴロックは大好きという旧世代のリスナーにも存分にアピールする内容かと思います。
ジョン・フルシアンテ(G)が復帰して制作された前作『CALIFORNICATION』(1999年)が全米3位まで上昇し、アメリカのみの売り上げ700万枚超えと5thアルバム『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)に並ぶメガヒット作となったレッチリ。「Scar Tissue」(全米9位)、「Otherside」(同14位)、「Californication」(同69位)、「Around The World」などのヒットシングルも多数生まれ、第二の黄金期突入をさらに後押しする今作が3年のスパンを経て届けられました。
引き続きリック・ルービン(SLAYER、SYSTEM OF A DOWN、METALLICAなど)をプロデューサーに迎えた本作は、メンバーが“Very John”と例えるように、前作以上にジョン・フルシアンテ色濃厚な仕上がり。ファンク色は徐々に抑え気味になり、ポップな色彩やサイケデリック感が強調された、前作以上に聴きやすい/親しみやすい内容に仕上げられています。その結果、チャート的も前作を上回る全米2位まで到達し、イギリスでは初の1位も獲得。「By The Way」(全米34位/全英2位)、「The Zephyr Song」(全米49位/全英11位)、「Can't Stop」(全英57位/22位)、「Universally Speaking」(全英27位)といったスマッシュヒットシングルも多数生まれました。アルバム自体セールス的には前作には及ばず、アメリカでは200万枚止まりでしたが、全世界では1000万枚近い売り上げに到達。『CALIFORNICATION』同様レッチリ入門に適した1枚とも言えるでしょう。
オープニングを飾るタイトルトラック「By The Way」はドライブ感がたまらない1曲で、特にフリー(B)とチャド・スミス(Dr)の織りなすグルーヴィーなリズムと、その上に小気味良いカッティングを響かせるジョンのギター、パーカッシヴさとメロウさが適度に織り交ぜられたアンソニー・キーディス(Vo)が乗ることで絶妙なハーモニーを作り上げています。もうこの1曲で勝ったも同然です。
かと思えば、続く「Universally Speaking」はかつてないほどにポップさが強調された1曲で、レッチリの新たな扉を開いたと言える仕上がり。ダークなサイケロック「This Is The Place」や「Don't Forget Me」、哀愁味の強い「Dosed」は前作までの流れを汲むもので、『CALIFORNICATION』で得た手応えがさらにブラッシュアップされた形で踏襲されています。ヒットシングル「The Zephyr Song」も同様ですね。
ギター初心者がフルシアンテのフレーズをコピーするのに最適なサイケデリックファンクロック「Can't Stop」、穏やかなバラード「I Could Die For You」や「Midnight」、リズム隊の生み出すグルーヴ感がたまらない「Throw Away Your Television」などが並ぶアルバム中盤の流れも非常に味わい深いものがあります。なにせこのアルバム、全16曲/約69分という超大作。前作も全15曲と比較的曲数が多かったものの、トータルランニングは56分と10数分短い。そういった意味では『CALIFORNICATION』以上にプレイヤー/表現者としての側面がより濃厚に遭われたのが『BY THE WAY』という作品かもしれません。メンバーの言う“Very John”という表現には、そういった強い拘りも含まれているんでしょうね。
2002年7月23日にリリースされたMY CHEMICAL ROMANCEの1stアルバム。当初はTHURSDAYなどが所属したインディーズのEyeball Recordsからの発表でしたが、のちにバンドがメジャー契約したことで2009年2月にReprise Recordsから再発され、2009年3月25日には日本盤も初リリースとなりました。
2001年、9.11を境に自身の生き方を考えたジェラルド・ウェイ(Vo)が初代ドラマーのマット・ペリシアーとバンドを結成。そこにジェラルドの実弟マット(B)、マット経由でレイ・トロ(G)が加わりデモテープを制作すると、それがEyeball Recordsの目に留まり契約に至ります。そして、同レーベル所属のPENCEY PREPのフランク・アイイアロ(G)が同バンド解散後にジェラルドらの元へと合流し、ようやく初期MY CHEMICAL ROMANCEの5人が集結するわけです。
アルバムはTHURSDAYのフロントマン、ジェフ・リックリー(Vo)のプロデュースにより制作。レコーディング開始時はフランクはまだメンバーではなく、レコーディング終盤に加わったことで実際には「Honey, This Mirror Isn't Big Enough For The Two Of Us」と「Early Sunsets Over Monroeville」の2曲にしかタッチしていません。そういった意味では、バンドの真のデビュー作は続くメジャー第1弾アルバム『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』(2004年)であり、今作はそこへ向けた処女作/習作と言えるかもしれません。
『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』へと続く片鱗はたっぷり見つけることができ、やりたいことをただやり尽くした結果無軌道なまでにはちゃめちゃなポストハードコア/エモ(と呼んだらジェラルドに怒られそうですが)アルバムに仕上がった。そんな初期衝動たっぷりな、デビュー作らしいデビュー作と言える内容は、この時点ですでに光るものが感じられる良曲ばかりです。オープニングの「Romance」(お馴染み「禁じられた遊び」のカバー)に一瞬「?」となるものの、続くアグレッシヴな「Honey, This Mirror Isn't Big Enough For The Two Of Us」で「あ、マイケミだ!」と納得させられるし、「Our Lady Of Sorrows」のキャッチーさはすでに以降の彼らさしさに満ち溢れている。
かと思えば、THE SMITHSあたりを彷彿とさせるUKロック的な「Early Sunsets Over Monroeville」にニヤリとしたり、疾走感溢れる「This Is The Best Day Ever」のカッコさに痺れ、プログレッシヴな展開を持つ6分強の「Demolition Lovers」に以降のコンセプチュアルな作風との共通点を見つけられる。そう、次作以降の作風はここから分岐していったと考えると非常に納得がいくものがあるのです。
こうやって聴くと、すでに処女作の時点で何者にも似ていないオリジナリティを確立していることにも気付かされますし、この1枚でメジャーと契約できたのも合点がいきます。当然ながら、僕が本作に触れたのは『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』でのブレイク以降(おそらく2005年の最初の再発時)でしたが、当時聴いたときよりも今聴くほうが本作の魅力をより深く理解できる気がします。
▼MY CHEMICAL ROMANCE『I BROUGHT YOU MY BULLETS, YOU BROUGHT ME YOUR LOVE』 (amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)
ヘヴィでメタリックなアレンジの楽曲よりも、「Poetic Tragedy」や「Buried Myself Alive」のような大らかなノリと親しみやすいメロディを持つ楽曲のほうが強く響くのも、今の耳で聴くからこそなのかな。「The Taste Of Ink」の持つグルーヴィーさも、ピアノをフィーチャーした美しい「Blue And Yellow」やアコギ&ストリングスによるサイケデリックな「On My Own」なども非常に素晴らしく、だからこそ「A Box Full Of Sharp Objects」のようなダイナミックな楽曲がより映える。王道感の強いラウドチューン「Maybe Memories」からシークレットトラックを含むラストナンバー「Pieces Mended」まで、スルスルと聴き進められる良質の1枚です。
本作はデビューアルバムにもかかわらず、全米63位まで上昇。最終的にプラチナディスクに認定されています。チャート的には続く2作目『IN LOVE AND DEATH』(2004年。全米6位)、3作目『LIES FOR THE LIARS』(2007年。全米5位)などには劣りますが、2002年というシーン黎明期を語る上ではFINCHの1stアルバム『WHAT IT IS TO BURN』(2002年)同様に外せない代表作です。
FINCHは1999年に結成された、米・カリフォルニア州出身の当時5人組のポストハードコアバンド。2001年にDrive-Tru Recordsから発表したEP『FALLING INTO PLACE』で注目を集め、翌年にこのアルバムでメジャーデビューを果たします。なお、本作にはその1st EP収録の「Letters To You」「Perfection Through Silence」の再録バージョンも含まれています。
チャート的には全米99位止まりでしたが、ド新人のわりには成功したほうではないでしょうか。数字的な成功を果たすのは続く『SAY HELLO TO SUNSHINE』(2005年。全米24位)でのことですが、FINCHというバンドの軸を知る上で欠かせないのはこの1stアルバムではないでしょうか。とはいえ、彼らのフルアルバムは3枚しかないので、どうせならその3枚をリリース順に聴いていただきたいものです。
あと、この『WHAT IT IS TO BURN』を完全再現したライブアルバム『WHAT IT IS TO BURN: X LIVE』(2014年)も製作されているので、あわせてチェックしてみることをオススメします。
▼FINCH『WHAT IT IS TO BURN』 (amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3)