カテゴリー「2002年の作品」の119件の記事

2020年4月 5日 (日)

NIRVANA『NIRVANA』(2002)

2002年10月下旬にリリースされた、NIRVANAのベストアルバム。日本盤は1週間ほど遅れて、同年11月初旬に発売されました。

1994年4月のカート・コバーン逝去後、『MTV UNPLUGGED IN NEW YORK』(1994年)『FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH』(1996年)という2枚のライブ作品が発表され、ともに全米1位を獲得。特に前者はオリジナル作品と並ぶほどのセールス(全米のみで800万枚)を記録しました。とはいえ、これら2作品はライブアルバム。前者はMTVで放送されたものを音源化したもので、後者はライブ・コンピレーション作品ということで、スタジオ音源の未発表楽曲はこれまで発表されていませんでした。

ところが、2000年代に突入してからカートが亡くなる直前に行われたレコーディング・セッション(1994年1月)の音源の扱いについて、ボックスセットの一部として発表したいデイヴ・グロール&クリス・ノヴォセリック側とシングル・ディスクのベスト盤収録曲として売り出したいコートニー・ラヴ側とで揉め始めます。結局、コートニー側の主張が認められて2002年秋、シンプルに『NIRVANA』と題されたベストアルバムがリリースされ、未発表曲「You Know You're Right」が世に出ることとなるわけです。

そもそもNIRVANAはオリジナルアルバムを3枚しか発表していないし、いわゆるシングルヒットと呼べる楽曲も「Smells Like Teen Spirit」(全米6位)と「Come As You Are」(同32位)ぐらい。『NEVERMIND』(1991年)全曲に『BLEACH』(1989年)『IN UTERO』(1993年)からそれぞれ数曲ずつ追加すればそれでいいんじゃないかと思うのですが、カートの死から8年経ち、NIRVANAやグランジ・ムーブメントを知らない世代も増え始めた時期ということもあって、このベストアルバムは全米3位まで上昇、現在までに200万枚以上もの売り上げを残しています(思ったよりも売れてないのね)。

これまでに正式リリースされたオリジナルアルバム、ライブアルバム、およびコンピ盤『INCESTICIDE』(1992年)を所有している人にとっては、目当ては「You Know You're Right」ぐらい。あとはシングルのみで発表された「Been A Son」スタジオテイク(インディ盤「Blew」収録)と、「Pennyroyal Tea」のシングルミックスぐらいでしょうか。

その「You Know You're Right」は、いかにもNIRVANAらしい強弱のダイナミズムを効果的に用いたミドルナンバー。『IN UTERO』以降の流れを汲む楽曲で、適度なキャッチーさを備えた“らしい”1曲で、一応シングルカットもされ全米45位まで上昇しました。

以前はこれ1曲のためにCDを買うというカロリーの高さが気になりましたが、その後デジタル主流になったことで、この曲のみダウンロード購入したりストリーミングで手軽に聴くことができるようになりました。NIRVANA初心者は普通にオリジナルアルバムから手を出せばいいと思いますが、本作の日本盤にはボーナストラックとして「Something In The Way」と「Where Did You Sleep Last Night」の“MTV UNPLUGGED”バージョンが追加されているので、もしCD購入するなら日本盤をオススメします(ダウンロード&ストリーミング版はUS仕様なので、これら2曲は含まれていないので)。

 


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2020年1月27日 (月)

OZZY OSBOURNE『LIVE AT BUDOKAN』(2002)

2002年6月下旬にリリースされた、オジー・オズボーンのライブアルバム。日本盤は同年7月上旬に発売されました。

オジーのライブアルバムとしては4作目(1990年の6曲入りEP『JUST SAY OZZY』を含むと5作目。そのほかにも3曲程度のライブEPが存在しますが、ほぼシングルなので対象外)にあたる本作は、1991〜2年の最初の引退ツアーの模様を2枚のCDに収めた『LIVE & LOUD』(1993年)以来9年ぶり、BLACK SABBATHの2枚組新録ライブアルバム『REUNION』(1998年)からも約4年ぶり。とはいえ、『LIVE & LOUD』以降はオリジナルアルバムを2枚(1995年の『OZZMOSIS』、2001年の『DOWN TO EARTH』)しか出してないので(しかも、ツアーでは新曲を2、3曲程度しかやらないので)内容的には『LIVE & LOUD』とそこまで代わり映えしないし、なんなら今回はシングルディスクなので曲数も13曲と物足りなさを感じずに入られません。

収録されたのはタイトルからもおわかりのとおり、2002年2月15日に行われた日本武道館公演。『DOWN TO EARTH』を携えたツアーということで、同作から「That I Never Had」「Junkie」「Gets Me Through」が披露されています。

当時のバンド編成はオジーのほか、『DOWN TO EARTH』制作末期にギターソロのみ参加でバンドに復帰したザック・ワイルド(G, Vo)、このツアー終了後にMETALLICAに加入することになるロバート・トゥルージロ(B)、FAITH NO MORE解散後にオジーバンドに加わったマイク・ボーディン(Dr)、そしてオジーワークスではおなじみのジョン・シンクレア(Key)という布陣。この頃にはオジーの高音が出にくくなっていたこともあり、またザックの当時のプレイスタイルも大きく影響してか、Dまでダウンチューニングしての演奏となっています。なので、おなじみの曲もD#より低くなってるから若干の違和感を覚えます。さすがにそれはオリジナルキーで歌えるだろ?って曲までもがダウンチューニングなのですが、さすがに曲ごとにチューニングの異なるギターを持ち替えるのも面倒か。ザックですしね。

オジーのボーカルは決してベストとは言い難いもので(まあいつものことですが)、歌メロが単調な曲が多い中でのダウンチューニングにより、退屈なものになり下がってしまうという悪影響も見受けられます。「That I Never Had」や「Junkie」のような楽曲はまさにそれですよね。とはいえ、前者はザックとの掛け合いボーカルが個人的には聴きどころだと思っていて、散々「オジーの声に似てる」と言われてきたザックのボーカルも、本人と並べるとそこまでそっくりというわけではないことに気づかされます。まあ、BLACK LABEL SOCIETYの活動もあって歌唱力が成長したというのも大きいんでしょうが。

『DOWN TO EARTH』からの3曲を除けば、残りはおなじみのナンバーばかり。『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)から「I Don't Know」「Mr. Crowley」「Crazy Train」、『DIARY OF A MADMAN』(1981年)から「Believer」、『BARK AT THE MOON』(1983年)から「Bark At The Moon」、『NO MORE TEARS』(1991年)から「No More Tears」「I Don't Want To Change The World」「Road To Nowhere」「Mama, I'm Coming Home」、そしてBLACK SABBATH時代の「Paranoid」……無難すぎません?

ちなみに、アルバムには13曲しか収録されていませんが、実際のライブではもう1曲「Suicide Solution」が披露されています。なんだ、CDの容量的に収録可能だったのでは?とお思いでしょうが、この曲のエンディングからザックの長尺ギターソロに突入するので、10分は超えるはず。事実、同ライブの完全版となるDVDバージョンは84分なので……ね?

そうか、2000年代に入ってからのオジーのライブってすでに90分程度だったんですね。そりゃ演奏される楽曲数は限られるし、ひとつ前のアルバム『OZZMOSIS』の曲(ザックは同作のレコーディングにしか参加してなかったので、ライブで聴いてみたいんだけどね)やザックのデビュー作『NO REST FOR THE WICKED』(1988年)、オジーが毛嫌いする『THE ULTIMATE SIN』(1986年)からの楽曲は期待できるわけないか……。

何を差し置いて先に聴くべき、という1枚ではありませんし、これを聴くなら1993年時点でのグレイテスト・ヒッツ的内容の『LIVE & LOUD』や、ランディ・ローズ在籍時のライブアルバム『TRIBUTE』(1987年)などオススメすべきライブ盤はたくさんあります。が、現時点ではこれが最新のライブ作品なので……今はこれをリピートしてオジーの帰還を待ちたいと思います。

 


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2019年10月26日 (土)

DISTURBED『BELIEVE』(2002)

DISTURBEDが2002年9月にリリースした、通算2作目のオリジナルアルバム。日本では1ヶ月遅れの、同年10月に発売されました。

デビューアルバム『THE SICKNESS』(2000年)はチャート的には全米29位という“中ヒットよりちょっと上”くらいの成績でしたが、セールス面では全米のみで現在までに500万枚を超えるメガヒット作に。「Down With The Sickness」や「Stupify」「Voices」といったラジオ/MTVでのヒット曲も生まれました。

そんなデビューヒットを受けて制作された2作目。基本的には前作の延長線上にある作風で、ヘヴィさが際立った1stアルバム以上にグルーヴ感が冴えた1枚に仕上がっています。

KORN以降のラップメタル/グルーヴメタルからヒップホップの音楽的要素を取り除き(あくまで技術・手法としてのヒップホップ感を残しつつ)、よりヘヴィメタル感を強めるとこうなるのかな……という印象を受けたデビューアルバム以上にメタリックで、メロディアスさも際立つ。特にデヴィッド・ドレイマン(Vo)の跳ねるようでカーカッシヴな歌声が、ときどき哀愁を帯びた繊細なボーカルを聴かせるんですね。そこがまた味わい深くて、前作以上の深みを感じさせてくれます。

そういった点においては、派手さの目立った1stアルバムよりも地味に聴こえてしまうかもしれません。が、スルメ度という点においては本作のほうが一歩リードしているのではないでしょうか。そりゃあ、かのオジー・オズボーンが彼らのことを「メタルの未来」なんて言うわけだ。

オープニングを飾る「Prayer」(全米58位)や、哀愁味に満ちたタイトルトラック「Believe」、チェロやピアノをフィーチャーしたバラード「Darkness」など、とにかく聴きどころの多い1枚。大半のこの手のバンドがそうであるように、全体的にミドルテンポ中心でファストチューン皆無なところに、ある一定層は退屈さを感じるかもしれません。事実、僕も初めて聴いたときは似たり寄ったりのテンポ/リズムに「ちょっと厳しいかも」と思った覚えがありますが、やはり曲の良さには勝てないというか、気づけばいつのまにかリピートしまくっていました。ラストのバラード「Darkness」まで到達すると、なぜかホッとするんですよね(笑)。

ちなみに本作、Billboard 200(アルバムチャート)で全米初登場1位を獲得。デビュー作に次いで200万枚以上を売り上げる大ヒット作となりました。昨日取り上げたSTONE SOURといい、こういった歌心を大切にする新世代ヘヴィロック/メタルバンドが2002年にヒットを飛ばしているという事実、非常に興味深いですね(その決定打である、翌2003年のEVENESCENCEへとつながるわけですが)。

 


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2019年10月25日 (金)

STONE SOUR『STONE SOUR』(2002)

2002年8月にリリースされた、STONE SOURのデビューアルバム。

STONE SOURはコリィ・テイラー(Vo)がSLIPKNOT加入前(1992〜1997年)にジェイムズ・ルート(G/現在はSTONE SOUR脱退済み)に在籍していたHR/HMバンドで、コリィとジェイムズのSLIPKNOT加入を機に一度解散。しかし、『IOWA』(2001年)の活動がひと段落する頃に再結成し、SLIPKNOTが所属するRoadrunner Recordsと契約することになります。

デビューアルバムの参加メンバーはコリィとジェイムズのほか、ジョシュ・ランド(G)、ショーン・エコノマキ(B)、ジョエル・エクマン(Dr)という解散前の布陣。バンドとトム・タットマンのプロデュース、トビー・ライト(ALICE IN CHAINSKORNSLAYERなど)のミキシングにより完成した本作は全米46位を記録、売り上げ50万枚を突破する、デビュー作としては上出来な結果を残しました。

また、本作収録曲の「Bother」が映画『スパイダーマン』(2002年)のサウンドトラックにも収録、シングルカットされた結果全米56位のヒットとなりました。この曲は今でもライブで必ず歌われる、彼らにとって代表曲のひとつと言えるでしょう。

そして、本作での活動をもってコリィやジェイムズが素顔を公開。「マスクの下はこうなっていたんだ! コリィ、イケメソじゃん!」と瞳をキラキラさせたお嬢さん方も少なくなかったようです。

内容に関してですが、SLIPKNOTで聴くことができたコリィの歌唱力の高さが存分に発揮された、メロディアスなHR/HMアルバムに仕上がっています。ヘヴィさもしっかり楽しめるのですが、SLIPKNOTのそれとは異なる質感で、あくまでHR/HMの範疇にあるヘヴィさといいますか。要するに、エクストリーム・ミュージックのそれとは相反するヘヴィさなんです(SLIPKNOTが「エクストリーム/ヘヴィの中に、ほんのちょっとのメロウさ」だとしたら、STONE SOURは「メロディアスさの中に、味付けとしてのヘヴィさ」。要するにスタート地点が真逆なのです)。

と同時に、伝統的なHR/HMにこだわったというだけではなく、しっかり彼のルーツ……グランジ以降のオルタナティヴロックのカラーもしっかりと感じられる。王道のメタルとは一線を画するものかもしれませんが、間違いなくこれは“90年代以降のHR/HMのそれ”以外の何ものでもありません。かつ、コリィが歌えばどれもSLIPKNOTとの共通点が自然と感じられています。特に、本作を経て制作されたSLIPKNOTの3rdアルバム『VOL.3 : (THE SUBLIMINAL VERSES)』(2004年)はこのSTONE SOURでの経験がなければ到達できなかった作品だったのではないでしょうか(事実、『IOWA』以降の不和がコリィをSTONE SOURへと突き動かしたわけですし、下手したらそのまま解散しても不思議じゃなかったわけですから)。

今やサイドプロジェクトなんて目で見る人はいないほど、SLIPKNOTと交互で動くコリィのメインバンドのひとつ。その完成度は作品を追うごとに高まっていますが、SLIPKNOTとのつながりという意味では本作の重要性は非常に高いですし、その後の“歌モノ・ヘヴィロック/ニューメタル”を語る上でも重要な1枚ではないでしょうか。

 


▼STONE SOUR『STONE SOUR』
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2019年2月20日 (水)

KORN『UNTOUCHABLES』(2002)

2002年6月に発表された、KORN通算5作目のスタジオアルバム。プロデューサーは前作のブレンダン・オブライエンからマイケル・ベインホーン(SOUNDGARDENRED HOT CHILI PEPPERSMARILYN MANSONなど)に交代。リードシングル「Here To Stay」が初めて全米TOP100入り(72位)したことも手伝い、アルバムは最高2位と3作連続1位こそ逃すものの150万枚程度のヒットを記録しています。セールス的には前作『ISSUES』(1999年)の2分の1程度まで落ち込んでいますが、これは発売前に音源がネット上でリークされてしまったことが悪影響を及ぼしたと言われています。

実はマイケルのプロデューサー起用は一度、3rdアルバム『FOLLOW THE LEADER』(1998年)のときに試みたものの、当時は良い関係を築けずに制作初期に決裂。しかし、バンド側から新たな挑戦としてマイケルとの再タッグが提案され、このコラボレーションが実現しました。

聴いてもらえばわかるように、本作は前作のメロウな路線をさらに進化させ、表現方法的にもさらに幅を広げた相当な実験作。まず驚くのは、ジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱力の向上でしょう。前作まではあくまでアジテーターかつ楽器のひとつとして存在していたボーカルが、ここではしっかり“歌”として独立した表現が確立されているんです。

それにあわせて、バンドアンサンブルも非常に凝ったものとなっており、ラップメタル的な側面は減退。代わりに、その後のサウンドにより色濃く表れることになるニューウェイヴからの影響が見え始めます。この要素はのちの彼らにとって新たな武器になると同時に、のちのジョナサンのソロ作『BLACK LABYRINTH』(2018年)にもつながっていく重要な側面。そういった要素をヘヴィロック/ラップメタルに寄せるのではなく、むしろ新要素側からヘヴィロック側へと接近させる手法を取っているのではないか。そう思わせられる、非常に聴きごたえのある内容に仕上げられています。

聴きようによっては、当時主流だったニューメタルに近いものも感じられますが、もとはそのニューメタルバンドがKORNから影響を受ける側だったはず。でも、ここではKORNがただ流行に乗ったというより、それまで見せてこなかったルーツを露わにすることで格の違いを見せつけた、そう受け取ることはできないでしょうか。

発売当初こそ賛否両論あった本作ですが、今聴くと非常に完成度が高いし、このプログレッシヴかつサイケデリックな要素はのちのラウドロックにも通ずるものがある……いわば、現在のシーンにおける新たなルーツ、教科書的な1枚と言えるのではないか。そういった意味でもKORNの歴史を語る上で、また2000年代のラウドシーンを語る上で欠かせない作品だと断言できます。今こそ再評価されるべき1枚です。



▼KORN『UNTOUCHABLES』
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2019年1月15日 (火)

SPARTA『WIRETAP SCARS』(2002)

2001年のAT THE DRIVE-IN最初の解散後、メンバーのジム・ワード(G)、ポール・ヒジョス(B)、トニー・ハジャー(Dr)の3人を中心に結成されたのがSPARTAというバンド。ジムがボーカル&ギター、ポールがリード・ギターにスイッチし、マット・ミラー(B)を新たに迎えて本格始動。2002年夏にGeffen Records傘下のDream Works Recordsからリリースされたのが、彼らのデビューアルバム『WIRETAP SCARS』です。

プロデュースを手がけたのはパンク、オルタナ系でおなじみのジェリー・フィン(GREEN DAY、SUM 41、BLINK-182など)。「Cut Your Ribbon」「Air」といったシングルヒットが後押しし、アルバム自体も全米71位という好記録を残しています。

セドリック・ビクスラー(Vo)、オマー・ロドリゲス(G)といったAT THE DRIVE-INの“顔”はTHE MARS VOLTAを結成しており、当時は言い方こそ悪いですがSPARTA組は“残りカス”みたいな見られ方をしていました。事実、僕もそういう目で見ていましたし(ごめんなさい)。

しかし、こうやって届けられたデビューアルバムではAT THE DRIVE-INでの試みからハードコアな要素を取り除き、残されたエモーショナルな要素をメジャー流にブラッシュアップした、非常に高品質なオルタナティヴロックを堪能することができます。

ジムのボーカルはセドリックほどのヒステリックこそないものの、当時のパンクロック/オルタナロック/エモの系譜に属する、適度に激しく適度に甘いもの。そこに端正なサウンドプロダクションとキャッチーな楽曲、破綻しないバンドアンサンブルが加わることで、良くも悪くも“メインストリームにいるオルタナバンド”的な立ち位置を示すことに成功しています(まあ、そもそもオルタナがメインストリームにいること自体に矛盾があるわけですが)。

「Sans Cosm」のようなキャッチーさは、それこそAT THE DRIVE-INにも存在した要素のひとつですが、表現方法が少し違うだけでこうもメジャー感が強まるんだなと、改めて驚かされます。ですが、このバンドの持ち味はそういった前身バンドとは別のところにあると思うのです。「Cut Your Ribbon」でのアグレッション、「Air」でのエモーショナルさ、「Light Burns Clear」で表現されるドラマチックなアンサンブルなど、要所要所に聴きどころが満載で、決して最後まで飽きさせることのない仕上がりではないでしょうか。

ですが、ここに少しでもAT THE DRIVE-INの面影を求めようと、途端に“弱く”感じてしまう。すごく損な役回りですが、こればかりは仕方ないかな……とはいえ、この手のバンドの作品としては相当レベルは高いほうなので、聴いて損はないと思います。



▼SPARTA『WIRETAP SCARS』
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2018年8月31日 (金)

FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』(2002)

前作『THERE IS NOTHING LEFT TO LOSE』(1999年)をデイヴ・グロール(Vo, G)、ネイト・メンデル(B)、そして新加入のテイラー・ホーキンス(Dr)の3人で制作し、ツアーを前にクリス・シフレット(G)が加わったことで現在まで続くベースの4人が揃ったFOO FIGHTERS。『THERE IS NOTHING LEFT TO LOSE』を携えたツアーを経て、この4人で初めて制作したのが、2002年10月発売の4thアルバムです。

プロデューサーに前作を手がけたアダム・カスパー(SOUNDGARDENQUEENS OF THE STONE AGEPEARL JAMなど)と、ニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSKORNMASTODONなど)、そしてバンド自身がクレジットされている本作は、FOO FIGHTERS史上もっともヘヴィな1枚と言えるでしょう(もっとも、カスパー・プロデュース曲は「Tired Of You」1曲にとどまり、残りは当初からエンジニアとして携わってきたラスクリネクツとバンドの手によるもの)。

冒頭の「All My Life」から「Low」への流れは、硬派なハードロックをイメージさせるサウンドで、とてもグランジシーンから生まれたバンドとは思えないほど。従来の彼ららしい「Have It All」や「Time Like These」みたいにメロディアスな楽曲もしっかり含まれているものの、全体のトーンは非常にシリアスでヒリヒリした感覚で覆われています。

実は彼ら、このレコーディング中にもメンバー間での衝突があり、一時は解散寸前にまで追い詰められたそう。しかし、そういった困難を乗り越えた末にこのアルバムにたどり着く。大半の楽曲はその後レコーディングし直されたそうで、そういうタフな状況良い意味でバンド内の緊張感が伝わる攻めの作風へと昇華させた。そう考えると、この方向性はしかるべきものなのかもしれません。

もちろん、ここで展開されるスタイルは以降のアルバムにも反映されており、現在のスタジアムロックテイストはここから始まったといっても過言ではないわけです。ここまでくると、もはや「元NIRVANA」の肩書きは必要ないし、むしろあの頃グランジを毛嫌いしていたHR/HMファンにこそ率先して聴いてほしい、強力なアメリカンハードロックアルバムではないでしょうか。

本作はこの時点で過去最高となる全米3位を獲得。過去3作同様にミリオンセールスを記録し、「All My Life」(全米43位)、「Time Like These」(全米65位)というスマッシュヒットシングルも生まれています。さらに、2003年の来日公演では神戸ワールド記念ホール、幕張メッセという大会場でのライブも実現。本作は名実ともにトップバンドの仲間入りを果たす、起死回生の1枚となりました。

ちなみに、本作にはQUEENブライアン・メイが「Tired Of You」にギターで、デイヴとのNIRVANA時代の盟友クリス・ノヴォセリックが「Walking A Line」にコーラスで、デイヴ・リー・ロスのバンドで知られるグレッグ・ビソネットが「Danny Says」にドラムでゲスト参加。次作『IN YOUR HONOR』(2005年)の片鱗を、早くもここで見せています。



▼FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』
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2018年3月23日 (金)

MEGADETH『RUDE AWAKENING』(2002)

2002年3月に発表された、MEGADETHのキャリア初ライブアルバム。当時は前年2001年5月に9枚目のアルバム『THE WORLD NEEDS A HERO』を発表したばかりで、このライブアルバムの音源も同作を携えて行われた2001年11月のアリゾナ州フェニックスでの公演を収めた内容となっています。また、同じタイミングには同公演の映像を収めた同名ライブDVDも発売されています。

当時のメンバーはデイヴ・ムステイン(Vo, G)、デイヴ・エルフソン(B)、アル・ピトレリ(G)、ジミー・デグラッソ(Dr)という布陣。ファン的にはそこまで強い思い入れのない編成かと思います。ニック・メンザ(Dr)が抜け、マーティ・フリードマン(G)が抜けた1999年の時点でMEGADETHに対する人気は(ここ日本以外では)少しずつ落ち始めていた時期であり、2000年には初のベストアルバム『CAPITOL PUNISHMENT: THE MEGADETH YEARS』が発表されたり(同作をもってメジャーのCapitolとの契約終了)、起死回生を狙った『THE WORLD NEEDS A HERO』のあとにこの『RUDE AWAKENING』という2枚組ライブアルバムを発表したのも、バンドの意思云々ではなく各レーベルの「儲けられるうちに儲けておけ」という気持ちの現れだったのかもしれません。

なんてネガティヴなことを書きましたが、それは内容の良し悪しとは関係のないこと。『THE WORLD NEEDS A HERO』発表後のツアーを収めたものではありますが、そのセットリストは“The Greatest Hits of MEGADETH”と呼ぶにふさわしいもの。CD2枚分、全24曲も収録されているので、あの頃までのライブの定番曲、人気曲、MVが制作されたおなじみの曲はほぼ収録されていると思います。唯一、SEX PISTOLSのカバー「Anarchy In The U.K.」が含まれていないことくらいかな、難点をつけるなら。あ、あと『RISK』(1999年)の楽曲も完全スルーか。「Crush 'Em」とまでは言わないものの、せめて「Prince Of Darkness」ぐらいは入れてほしかったかも。でも、それらがないとしても特に不満はない、らしい仕上がりだと思います。

演奏に関しても、アル&ジミーのプレイはそつなくこなす職人肌だけに、原曲にできるだけ忠実に再現しようとする意識が感じられます。が、それじゃダメなんですよね、このバンドの場合。結局、なぜクリス・ポーランドが、マーティ・フリードマンが、グレン・ドローヴァーが、そしてキコ・ルーレイロがすごかったのか……そこに行き着くわけです。MEGADETHには職人はいらないんです。

結局、このアルバムをリリースした翌月の2002年4月、ムステインが腕の橈骨神経麻痺を理由に音楽活動を休止することを発表。そのままバンドも解散することになるわけです。いろんな偶然が重なったとはいえ、この結末には当時本当にガッカリしたというか……ダメになるときはとことんダメになるんだなと悲しくなりました。

まあ、そんな悲しみもそこから2年ちょっとで吹き飛ばされるわけですけどね(笑)。

ちなみに、この印象的なアートワークを手がけたのは有名なアート集団「HIPGNOSIS(ヒプノシス)」の一員だった、ストーム・トーガソン。ラトルヘッド(MEGADETHのマスコットキャラ)が出てこない時点で“ぽくない”ですが、これはこれで良いジャケだと思います。まったくライブ盤ぽくないですけど。



▼MEGADETH『RUDE AWAKENING』
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2017年12月21日 (木)

SYSTEM OF A DOWN『STEAL THIS ALBUM!』(2002)

SYSTEM OF A DOWN(以下、SOAD)が2002年晩秋にリリースした、通算3作目のスタジオアルバム。初の全米No.1を獲得した前作『TOXICITY』(2001年)から1ヶ月ちょっとで発売されるという異例の自体で驚かされましたが、これにはしっかりした理由があるのです。

『TOXICITY』リリースから数ヶ月経った2002年初頭、同作のデモ音源がネット上に出回るというトラブルが生じました。これらは『TOXICITY II』と題し、『TOXICITY』本編に未収録の楽曲も含まれたファンいはヨダレものの内容でした。これにご立腹だったSOADメンバーは未発表の新曲16曲で構成された新作『STEAL THIS ALBUM!』(=本作)を正式リリースしたわけです。

録音時期自体は確かに『TOXICITY』と同時期のものばかりで、ある意味ではアウトテイク集とも受け取れるわけですが、そのクオリティはそんな冗談も言えないくらい高いもの。アルバムとしてのトータリティは若干希薄ですが、1曲1曲の完成度は『TOXICITY』収録曲に勝るとも劣らないものばかりです。

どこかシリアス度が高く感じられるのは、たまたまなんでしょうか。実際、歌詞は前作の流れにあるもので、当時のアメリカ社会や近代文化に対する批判が、彼らならではの皮肉とユーモアを交えて表現されています。サウンド含め、そこに「遊びが少ない」と感じる人もいるかもしれませんが、とはいえ本作はごまんといるSOADフォロワーなんて目じゃないくらいにレベルが高いアルバムなのは間違いありません。

どうしてもアルバムの構成・流れを意識して楽しむアルバムが多いイメージのSOADだけに、本作は肩ひじ張らず、リラックスして楽しめる1枚かもしれません(といって、別に脱力系アルバムという意味ではないですよ。上に書いたように、シリアステイストの楽曲が多いですし)。

本作のアートワーク、CD-Rにマジックでバンド名、アルバムタイトルを殴り書きという荒っぽいもので、実際にはCD盤面にこの文字がプリントされたものだけで、いわゆるブックレットは一切付いておりません(日本盤のみ独自解説&歌詞・対訳が掲載されたブックレット付き)。アルバムタイトル含め、このへんは先のブートレッグに対する彼らならではの皮肉なんでしょうね。

ちなみに、彼らが次のアルバム『MEZMERIZE』(2005年)をリリースするのは、本作の発表から3年半後のこと。『MEZMERIZE』も同時期にもう1枚、『HYPNOTIZE』(2005年)というアルバムを制作しており、『MEZMERIZE』発売から半年後にリリースしています。一回スタジオに入るとものすごい勢いで楽曲を完成させ、一度にアルバム2枚分ものマテリアルを生み出してしまう。彼らは2017年中にリリースされるのではと噂されている通算6枚目のアルバムを現在制作しているようですが(まだ希望を捨ててないですよ、あと10日残ってますし。笑)、もしかしたら次も6枚目、7枚目と間隔を空けずに発表してくれるのかもしれませんね(だと嬉しいな)。



▼SYSTEM OF A DOWN『STEAL THIS ALBUM!』
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2004年12月31日 (金)

28日後...(2002)

あらすじ
たった1滴の血液で感染し、人間の精神を数秒で破壊する新種のウィルスが発生した。感染者の血管は純粋な激しい怒りで溢れ、人間の声を聞いただけで相手を殺そうと襲いかかる……。28日後、ジムは病院の集中治療室で昏睡状態から目覚める。世界から何もかも消滅してしまったような静寂の中、ジムは生き残った4人の非感染者たちと共に1台のタクシーで旅立つ。未来を救えるわずかな可能性を信じて。しかし、死のウィルスより恐ろしい存在に彼らはまだ気づいていなかった……。

 

『トレインスポッティング』でお馴染み、ダニー・ボイル監督による映画『28日後...』。劇場で観ようと思ってたら、結局忘れて行けなかったんだよね。先日、まとまった休みが取れた時に改めてDVDを借りてきて観ました。

観る前から既に周りで「(映画版の)『バイオハザード』みたい」とか「エンディングがイマイチ」なんて囁かれていて、あーそうなんだ、と鵜呑みにしつつ、そんなに期待しないで観たんですよ。

ところがね。これが非常に面白かった。いや、面白いからといって万人にはオススメしませんけどね。これはね、ゾンビ映画とかそんな類の映画じゃないですよ。むしろ第一級のホラー映画ですよ! スプラッター映画でもないし、ゾンビ映画でもない、もっと人間の内面にある狂気を描いたホラー。タイプは違うけど、過去に紹介した『シャイニング』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』にも通ずる狂気を描いた良作ですね。

「細菌に感染→凶暴化、人間に噛みつく」等の設定から、ゾンビものと捉えられがちですが、それは全くの誤解ですよ。ここでその認識のまま鑑賞を進めてしまうと、最後に肩すかしを食らうと思います。実際、俺も最初はそんな考えで映画を観てたんですよ。「あー、ゾンビもどきとはいえ、走っちゃだめでしょ!」とか「強すぎるよ!」とか。結構うんざり気味だったんですよね。「猿が病原菌を保菌」→『アウトブレイク』、そして上記のように『バイオハザード』といった映画がちらついたりしてね。

ところが。ストーリーが進むにつれ、映画に引き込まれていって……ハンナの父親・フランクが感染して射殺、以降のストーリー展開に引き込まれていき……そう、ここを境に主人公・ジムの“狂気”が一気に開花して(それ以前の、給油所でのシーンでその片鱗は伺わせていたし、実際あれがひとつの鍵になってるのも事実)、後は……実際に観てもらって判断してもらいましょう。とにかくこの映画の中では、人類にとって一番の敵は感染者ではなく、非感染者なんじゃないか……それはジムに限らず、あの軍隊の奴ら含めてね。生き残る為に躊躇わず感染者を“排除”していったヒロイン・セリーナにも言えること。人間は生きていく為に、常に残酷な面も持ち合わせている。それを端的に表現したヒューマン・ドラマと捉えることもできるかな。

とはいいながらも、結構至るところにジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』を彷彿させるシーンがちりばめられていて、製作側が如何にあの映画をリスペクトしているかというのが伺えますよね。ま、勝手に俺がそう思いこんでるだけかもしれないけど。

あと、やはりこの映画も『トレインスポッティング』同様、イギリス映画だなぁ、と。勿論良い意味でね。

うん、好きな映画ですよ。期待してなかっただけに収穫も多かったし、複数あるエンディングというのも個人的には面白かったな。まぁ白黒つけなきゃ気が済まない人にとっては駄作なのかもしれないけど。

(*82点)

 


▼『28日後...』
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