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カテゴリー「2002年の作品」の132件の記事

2022年4月12日 (火)

AEROSMITHのベストアルバムを総括する(2022年版)

先日ブライアン・アダムスで試してみた、いちアーティストの公式ベストアルバム/コンピレーションアルバムをひとつのエントリーの中で総括する記事AEROSMITH版です。

AEROSMITHは1973年のデビュー以降、Columbia Records(1973〜1984)→Geffen Records(1985〜1997)→Columbia(1997〜2021)→Universal(2021〜)と移籍を繰り返してきましたが、現在は全カタログの権利をUniversalが取得したことで、今後Columbia/Sony時代の音源もUniversalからフィジカル再発/デジタル配信されることになりそうです。

そういった意味では、ここに記す代表的なコンピレーションアルバムのいくつかは今後、姿を消すことになるかもしれません。それでもこの機会に改めて、ひとつの記録として記事を残しておくのはアリかなと思い、今回の執筆に至りました。

選出したベストアルバムは、レーベル主導によるシリーズ企画(Universalの『THE MILLENNIUM COLLECION』など)を除く、新曲やレア曲などを含む9作品。中には廃盤になっていたりサブスクで聴けないものも含まれていますが、ご了承ください。また、すでに単独エントリーで公開済みの作品もありますが、その場合は該当記事のリンクを貼っておきますのでご参考ください。

 

 

『AEROSMITH'S GREATEST HITS』(1980)

 

1980年11月にリリースされた、バンド初のベストアルバム。

そのタイトルどおり、収録内容はシングル曲を中心にしたもので、アナログ時代ということで全10曲/約38分というコンパクトな内容でまとめられています。また、構成的にもリリース順に並べられているので、いきなり「Dream On」から始まるという曲順はロックバンド的にどうなのかな?という疑問も残ります。

収録曲のうち、「Same Old Song And Dance」「Sweet Emotion」「Kings And Queens」はイントロを短くした“シングル・エディット”バージョンで収録。「Walk This Way」もアルバムバージョンより10秒近く短い形にエディットされています。オリジナルバージョンに勝るものはありませんが、本作リリース当時は70年代の代表的シングル曲をひとまとめに楽しめるアルバムとして、非常に重宝されましたし、80年代後半の本格的復帰以降も『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)とともにこのアルバムを愛聴したファンは少なくなかったはずです(注:Apple Musicなど一部ストリーミング配信版は各シングルエディットがアルバムバージョンに差し替えられているのでご注意を)。

また、映画サントラに提供したビートルズのカバー「Come Together」が収録されている点も注目ポイントかな。『LIVE! BOOTLEG』(1978年)ではライブバージョンを先に聴くことができましたが、スタジオテイクがエアロのアルバムに収録されるのはこれが初めて。そこも本作が長く愛された要因のひとつかなと。

なお、本作がリリースされた頃にはすでにバンドの人気も低迷期に突入しており、チャート的には大きな成功を収めることはありませんでしたが、そこから数年後の再ブレイクも手伝い、セールス的には現在までに1000万枚を超えるメガヒット作となっています。

 


▼AEROSMITH『AEROSMITH'S GREATEST HITS』
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『GEMS』(1988)

 

1988年11月にリリースされたAEROSMITHのコンピレーションアルバム。

『PERMANENT VACATION』(1987年)の大ヒットを受けて、前レーベルのColumbia Recordsが企画したコンピ版で、シングル曲中心でまとめられた前作『AEROSMITH'S GREATEST HITS』と比べるとその内容はかなり地味なもの。ただ、ライブで演奏される機会の多い「Mama Kin」や「Lord Of The Thighs」「Train Kept A-Rollin'」なども含まれていることから、“裏ベスト”的側面の強い1枚かなと。

本作最大の注目ポイントは、『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のみで聴くことができた「Chip Away The Stone」の未発表スタジオテイクが収録されていること。この1曲のために当時本作を購入したというファンも少なくなかったはずです。実際、この曲は本作からシングルカットもされ(既存ライブ映像を使用したMVも制作)、ラジオヒットも記録しています。

今のようにサブクスやYouTubeも存在せず、過去のスタジオアルバムにまで手を出せなかった当時の中高生には本作に収録された「Rats In The Celler」や「Nobody's Fault」「Round And Round」「Jailbait」などはかなりカッコよく響いたものです。ここから『ROCKS』(1976年)『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)にも手を伸ばしていったビギナーは80年代後半、かなりの数存在していたはずですから。

コアなファンの中には、先述の『AEROSMITH'S GREATEST HITS』より本作のほうが好きという方も、意外と多かったりして。かくいう僕も本作、大好物ですからね。

 


▼AEROSMITH『GEMS』
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2022年3月16日 (水)

DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』(2002)

2002年1月29日にリリースされたDREAM THEATERの6thアルバム。日本盤は同年1月23日先行発売。

ジョーダン・ルーデス(Key)を迎えた新編成で制作されたバンド初のコンセプトアルバム『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)がある一定の高評価を獲得したことで、現在の方向性に確信を持てたDREAM THEATER。この自信を糧に、バンドは同じ方向性を保ちつつ、引き続きコンセプチュアルでトータル性の強いアルバム作りに取り組みます。

前作から2年3ヶ月ぶりとなる新作は、キャリア初となるCD2枚組スタジオアルバム。そのテーマはオープニングトラック「The Glass Prison」で歌われているマイク・ポートノイ(Dr)のアルコール依存症の治療を筆頭に、全6曲を通じて人生における苦しみや心の中にある6つの不穏(乱れ、動揺)が表現されています。また、DISC 1では10分超の楽曲3曲を含む前5曲が、従来のテクニカルかつプログレッシヴなテイストで表現。オープニングの「The Glass Prison」がいきなり約14分もの組曲というのも、前作で得た自信が成せる技かな。でも、この敷居の高い1曲を楽しむことができれば、しの後に続くめくるめくDTワールドを心置きなく楽しめるはずです。

そして、DISC 2は8つのパートで構成された42分にもおよぶ一大組曲「Six Degrees Of Inner Turbulence」を収録。クラシカルかつドラマチックな「I. Overture」からスタートするこの組曲では双極性障害やPTSD、統合失調症、産後うつ、自閉症、解離といったさまざまな精神疾患や状態異常を計6ケース取り上げられており、例えば「II. About To Crash」では爽快感の強いAOR寄りのプログロック、「III. War Inside My Head」では変拍子を多用したヘヴィメタル、「VI. Solitary Shell」では穏やかなフォークロックのように、各パートごとにバンドが影響を受けた音楽がストレートに表現されています。

リリース当時はCD2枚に全6曲で、トータル96分とそのボリュームに若干引いてしまいましたが、個人的には『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』よりも聴きやすい印象を受けたのもまた事実。前作ほどストーリー性が強くないこともあってか、1曲1曲が独立した存在として楽しめるのも本作の良いところで(組曲「Six Degrees Of Inner Turbulence」を除く)、かつこれまでのキャリアを総括するようにさまざまなジャンルの楽曲が詰め込まれているのも聴きやすさに直結しているように感じました。

また、「Blind Faith」や「Misunderstood」のように穏やかな楽曲もあれば、「The Great Debate」のようにスリリングな楽曲もあるし、本作中もっとも短尺(6分50秒前後)でラジオやMTVでのヒットを意識したバラード曲「Disappear」もある。闇を抱えたテーマということもあり、DISC 1は華やかさよりも穏やかでディープな側面が目立つのも聴きやすさの要因ではないでしょうか。

そして、組曲としても単曲としても楽しむことができるDISC 2の「Six Degrees Of Inner Turbulence」は、DISC 1とは異なる趣でバンドの多面性を堪能することができる。モダンなプログメタルは苦手だけどクラシカルなプログレッシヴロックは大好きという旧世代のリスナーにも存分にアピールする内容かと思います。

バンドとしてもここでひとつ、これまでの活動を総括するような傑作をまとめ上げることができたのではないでしょうか。『IMAGES AND WORDS』(1992年)から10年という節目に本作へと到達できたことで、DTは続く『TRAIN OF THOUGHT』(2003年)で次のステップに移ることになります。

 


▼DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』
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2022年2月20日 (日)

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002)

2002年7月9日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの8thアルバム。日本盤は同年7月10日発売。

ジョン・フルシアンテ(G)が復帰して制作された前作『CALIFORNICATION』(1999年)が全米3位まで上昇し、アメリカのみの売り上げ700万枚超えと5thアルバム『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)に並ぶメガヒット作となったレッチリ。「Scar Tissue」(全米9位)、「Otherside」(同14位)、「Californication」(同69位)、「Around The World」などのヒットシングルも多数生まれ、第二の黄金期突入をさらに後押しする今作が3年のスパンを経て届けられました。

引き続きリック・ルービン(SLAYERSYSTEM OF A DOWNMETALLICAなど)をプロデューサーに迎えた本作は、メンバーが“Very John”と例えるように、前作以上にジョン・フルシアンテ色濃厚な仕上がり。ファンク色は徐々に抑え気味になり、ポップな色彩やサイケデリック感が強調された、前作以上に聴きやすい/親しみやすい内容に仕上げられています。その結果、チャート的も前作を上回る全米2位まで到達し、イギリスでは初の1位も獲得。「By The Way」(全米34位/全英2位)、「The Zephyr Song」(全米49位/全英11位)、「Can't Stop」(全英57位/22位)、「Universally Speaking」(全英27位)といったスマッシュヒットシングルも多数生まれました。アルバム自体セールス的には前作には及ばず、アメリカでは200万枚止まりでしたが、全世界では1000万枚近い売り上げに到達。『CALIFORNICATION』同様レッチリ入門に適した1枚とも言えるでしょう。

オープニングを飾るタイトルトラック「By The Way」はドライブ感がたまらない1曲で、特にフリー(B)とチャド・スミス(Dr)の織りなすグルーヴィーなリズムと、その上に小気味良いカッティングを響かせるジョンのギター、パーカッシヴさとメロウさが適度に織り交ぜられたアンソニー・キーディス(Vo)が乗ることで絶妙なハーモニーを作り上げています。もうこの1曲で勝ったも同然です。

かと思えば、続く「Universally Speaking」はかつてないほどにポップさが強調された1曲で、レッチリの新たな扉を開いたと言える仕上がり。ダークなサイケロック「This Is The Place」や「Don't Forget Me」、哀愁味の強い「Dosed」は前作までの流れを汲むもので、『CALIFORNICATION』で得た手応えがさらにブラッシュアップされた形で踏襲されています。ヒットシングル「The Zephyr Song」も同様ですね。

ギター初心者がフルシアンテのフレーズをコピーするのに最適なサイケデリックファンクロック「Can't Stop」、穏やかなバラード「I Could Die For You」や「Midnight」、リズム隊の生み出すグルーヴ感がたまらない「Throw Away Your Television」などが並ぶアルバム中盤の流れも非常に味わい深いものがあります。なにせこのアルバム、全16曲/約69分という超大作。前作も全15曲と比較的曲数が多かったものの、トータルランニングは56分と10数分短い。そういった意味では『CALIFORNICATION』以上にプレイヤー/表現者としての側面がより濃厚に遭われたのが『BY THE WAY』という作品かもしれません。メンバーの言う“Very John”という表現には、そういった強い拘りも含まれているんでしょうね。

アコースティック色の強いポップな「Cabron」、ミディアムスローの「Tear」、ラテン色が散りばめられた新境地のアップチューン「On Mercury」、うねるようなグルーウが気持ち良い「Minor Thing」、不思議な浮遊感が味わえる「Warm Tape」と後半も構成的な楽曲が続き、最後は当時のレッチリらしさが凝縮されたドラマチックなマイナーチューン「Venice Queen」で締め括り。ここから2〜3曲間引いたらより聴きやすかったのかな?なんて思いつつも、じゃあどれを削るかと言われると答えが難しい。結局、ジョン・フルシアンテの才能が沸点に達したという点を考慮するとこのセットリスト、構成で正解なのかもしれません。

この才能はさらに爆発をし続け、ここから4年後に届けられる9thアルバム『STADIUM ARCADIUM』(2006年)はCD2枚組/全28曲入りと臨界点に突破。いろいろな意味でピークを迎えることになります。

 


▼RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』
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2022年1月20日 (木)

MY CHEMICAL ROMANCE『I BROUGHT YOU MY BULLETS, YOU BROUGHT ME YOUR LOVE』(2002)

2002年7月23日にリリースされたMY CHEMICAL ROMANCEの1stアルバム。当初はTHURSDAYなどが所属したインディーズのEyeball Recordsからの発表でしたが、のちにバンドがメジャー契約したことで2009年2月にReprise Recordsから再発され、2009年3月25日には日本盤も初リリースとなりました。

2001年、9.11を境に自身の生き方を考えたジェラルド・ウェイ(Vo)が初代ドラマーのマット・ペリシアーとバンドを結成。そこにジェラルドの実弟マット(B)、マット経由でレイ・トロ(G)が加わりデモテープを制作すると、それがEyeball Recordsの目に留まり契約に至ります。そして、同レーベル所属のPENCEY PREPのフランク・アイイアロ(G)が同バンド解散後にジェラルドらの元へと合流し、ようやく初期MY CHEMICAL ROMANCEの5人が集結するわけです。

アルバムはTHURSDAYのフロントマン、ジェフ・リックリー(Vo)のプロデュースにより制作。レコーディング開始時はフランクはまだメンバーではなく、レコーディング終盤に加わったことで実際には「Honey, This Mirror Isn't Big Enough For The Two Of Us」と「Early Sunsets Over Monroeville」の2曲にしかタッチしていません。そういった意味では、バンドの真のデビュー作は続くメジャー第1弾アルバム『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』(2004年)であり、今作はそこへ向けた処女作/習作と言えるかもしれません。

『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』へと続く片鱗はたっぷり見つけることができ、やりたいことをただやり尽くした結果無軌道なまでにはちゃめちゃなポストハードコア/エモ(と呼んだらジェラルドに怒られそうですが)アルバムに仕上がった。そんな初期衝動たっぷりな、デビュー作らしいデビュー作と言える内容は、この時点ですでに光るものが感じられる良曲ばかりです。オープニングの「Romance」(お馴染み「禁じられた遊び」のカバー)に一瞬「?」となるものの、続くアグレッシヴな「Honey, This Mirror Isn't Big Enough For The Two Of Us」で「あ、マイケミだ!」と納得させられるし、「Our Lady Of Sorrows」のキャッチーさはすでに以降の彼らさしさに満ち溢れている。

かと思えば、THE SMITHSあたりを彷彿とさせるUKロック的な「Early Sunsets Over Monroeville」にニヤリとしたり、疾走感溢れる「This Is The Best Day Ever」のカッコさに痺れ、プログレッシヴな展開を持つ6分強の「Demolition Lovers」に以降のコンセプチュアルな作風との共通点を見つけられる。そう、次作以降の作風はここから分岐していったと考えると非常に納得がいくものがあるのです。

こうやって聴くと、すでに処女作の時点で何者にも似ていないオリジナリティを確立していることにも気付かされますし、この1枚でメジャーと契約できたのも合点がいきます。当然ながら、僕が本作に触れたのは『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』でのブレイク以降(おそらく2005年の最初の再発時)でしたが、当時聴いたときよりも今聴くほうが本作の魅力をより深く理解できる気がします。

 


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2022年1月19日 (水)

THE USED『THE USED』(2002)

2002年6月25日にリリースされたTHE USEDの1stアルバム。日本盤は同年12月18日発売。

THE USEDは米・ユタ州オレムで結成された4人組ポストハードコア/スクリーモバンド。正式な結成タイミングは2001年となっていますが、実は90年代半ばから前身バンドとして活動を続けており、結成から1年でメジャーデビューというポッと出の新人というわけではないのでした。

適度なハード&ヘヴィさとメロディアスさ、そしてエモの流れを汲む激情的アンサンブルはパンクとモダンメタル/ニューメタルの中間に位置するもので、同時期にシーンを席巻したLINKIN PARKのようなヒップホップからの延長線上にあるニューメタル勢とは一線を画するものでした。が、FINCHらとともにゼロ年代初頭のラウドシーンを牽引するという意味でも、このデビューアルバムは当時非常に高く評価された記憶があります。

今の耳で聴くとそこまでメタリックというわけでもなく、むしろエモやハードコアパンクの進化系のような印象を受けるサウンド/楽曲群は非常に耳馴染みがよく、そりゃヒットするわなと強く感じさせるものばかり。大半の楽曲が2〜3分台というコンパクトさもパンクロック的で、複雑かつ技巧的な演奏でリスナーを圧倒させるというよりも、強弱のダイナミズムで感情をダイレクトに表現するスタイルも、90年代後半以降のポップパンクの流れを汲むものなのかなと感じました。

とはいえ、20年前はこのスタイルこそが新世代のメタルなんだ、時代はどんどん変化していくんだと感じていた筆者は、旧世代のクラシカルなメタルとこれを同じように受け取ろうと必死だった記憶もあり、今思えば無理していたなあ……なんて懐かしくもなったりします(苦笑)。その後、さらなる進化を遂げるメタル/ラウドシーンですが何周もした結果、無理なくこの時代のバンドと向き合うことができるようになった。そんな今だからこそ、この良質なロックアルバムをしっかり評価できたらと思っています。

ヘヴィでメタリックなアレンジの楽曲よりも、「Poetic Tragedy」や「Buried Myself Alive」のような大らかなノリと親しみやすいメロディを持つ楽曲のほうが強く響くのも、今の耳で聴くからこそなのかな。「The Taste Of Ink」の持つグルーヴィーさも、ピアノをフィーチャーした美しい「Blue And Yellow」やアコギ&ストリングスによるサイケデリックな「On My Own」なども非常に素晴らしく、だからこそ「A Box Full Of Sharp Objects」のようなダイナミックな楽曲がより映える。王道感の強いラウドチューン「Maybe Memories」からシークレットトラックを含むラストナンバー「Pieces Mended」まで、スルスルと聴き進められる良質の1枚です。

本作はデビューアルバムにもかかわらず、全米63位まで上昇。最終的にプラチナディスクに認定されています。チャート的には続く2作目『IN LOVE AND DEATH』(2004年。全米6位)、3作目『LIES FOR THE LIARS』(2007年。全米5位)などには劣りますが、2002年というシーン黎明期を語る上ではFINCHの1stアルバム『WHAT IT IS TO BURN』(2002年)同様に外せない代表作です。

 


▼THE USED『THE USED』
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2022年1月18日 (火)

FINCH『WHAT IT IS TO BURN』(2002)

2002年3月12日にリリースされたFINCHの1stアルバム。日本盤は同年8月7日発売。

FINCHは1999年に結成された、米・カリフォルニア州出身の当時5人組のポストハードコアバンド。2001年にDrive-Tru Recordsから発表したEP『FALLING INTO PLACE』で注目を集め、翌年にこのアルバムでメジャーデビューを果たします。なお、本作にはその1st EP収録の「Letters To You」「Perfection Through Silence」の再録バージョンも含まれています。

ハードコアパンクやポップパンクの要素を織り交ぜつつ、随所からエモやスクリーモ的な香りも漂わせているスタイルは非常に2000年代初頭ならではと言えるもので、オープニングを飾る「New Beginnings」あたりから伝わるグルーヴィかつメタリックな質感は90年代後半のニューメタル的と受け取ることもできる(彼らは前身バンドでDEFTONESのカバーをしていたんですよね。納得)。そういったミクスチャー感が時代の節目っぽくもあり、新世代というよりは90年代からゼロ年代への流れを正しく受け継ぐ正統派バンドのようにも感じられます。

メロディは非常にキャッチーで親しみやすいものが多く、適度にスクリームを織り交ぜたボーカルスタイルも耳障りが悪くなる寸前のギリギリを攻めている。そういった意味ではとてもメジャー感が強く、変にアンダーグラウンド臭が強くないのも好印象。「Ender」のように13分超の実験的なナンバーも含まれているものの、全体的にはメタル系リスナーも親しみやすいコンパクトなラウドチューン中心の、スクリーモ入門編にふさわしい1枚です。

本作のプロデュースを担当したのは、JIMMY EAT WORLDの諸作品やBLINK-182、MINERAL、MIDTOWNなどを手がけてきたマーク・トロンビーノ。ポップパンクやポストハードコア、エモなどを中心にプロデュースしてきた方で、アルバムではエフェクティブなプログラミングも担当しています。また、ゲストシンガーとしてGLASSJAWのダリル・パルンボ(Vo)が「Grey Matter」「Project Mayhem」に参加。こういった人選もバンドの当時の立ち位置を表しており、興味深いものがあります。

チャート的には全米99位止まりでしたが、ド新人のわりには成功したほうではないでしょうか。数字的な成功を果たすのは続く『SAY HELLO TO SUNSHINE』(2005年。全米24位)でのことですが、FINCHというバンドの軸を知る上で欠かせないのはこの1stアルバムではないでしょうか。とはいえ、彼らのフルアルバムは3枚しかないので、どうせならその3枚をリリース順に聴いていただきたいものです。

あと、この『WHAT IT IS TO BURN』を完全再現したライブアルバム『WHAT IT IS TO BURN: X LIVE』(2014年)も製作されているので、あわせてチェックしてみることをオススメします。

 


▼FINCH『WHAT IT IS TO BURN』
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2022年1月10日 (月)

祝ご成人(2001年4月〜2002年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さんおめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画も、今年で8回目。しかし、この春から成年年齢が18歳になることから、今回で最後かなと思っております(さすがに18年前って区切り悪いですしね)。この企画は「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に貴重な機会でもあり、同時に「どれを20枚に含めるか?」というセレクトにおいても非常に頭を悩ます良いタイミングとなっていたので、成人式抜きで続けてもいいんですけど……まあ、そのへんは1年後に考えます(笑)。

改めて趣旨説明を。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2001年4月〜2002年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちら、2019年度の新成人編はこちら、2020年度の新成人編はこちらです)

以下、サブスクを通して名盤20選をお楽しみください。

 

ANDREW W.K.『I GET WET』(2001年11月発売)(Spotify)(レビュー

 

ARCH ENEMY『WAGES OF SIN』(日本:2001年4月発売、海外:2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

ASH『FREE ALL ANGELS』(2001年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

BASEMENT JAXX『ROOTY』(2001年6月発売)(Spotify

 

BJORK『VESPERTINE』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE CHEMICAL BROTHERS『COME WITH US』(2002年1月発売)(Spotify)(レビュー

 

CONVERGE『JANE DOE』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

FINCH『WHAT IT IS TO BURN』(2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

INCUBUS『MORNING VIEW』(2001年10月発売)(Spotify

 

JIMMY EAT WORLD『BLEED AMERICAN』(2001年7月発売)(Spotify

 

KYLIE MINOGUE『FEVER』(2001年10月発売)(Spotify

 

MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』(2001年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

RADIOHEAD『AMNESIAC』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

RYAN ADAMS『GOLD』(2001年9月発売)(Spotify

 

SLIPKNOT『IOWA』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE STROKES『IS THIS IT』(2001年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『ALL KILLER NO FILLER』(2001年5月発売)(Spotify

 

SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

TOOL『LATERALUS』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

WEEZER『WEEZER (GREEN ALBUM)』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

残念ながらセレクトから漏れた作品も多く。以下に主だった作品をピックアップしておきました。

AIR『10000 HZ LEGEND』
ALICIA KEYS『SONGS IN A MINOR』
...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD『SOURCE TAGS & CODES』
AUTECHRE『CONFIELD』
THE BLACK CROWES『LIONS』
BLACK LABEL SOCIETY『1919 ETERNAL』(レビュー
BLIND GUARDIAN『A NIGHT AT THE OPERA』
BLINK-182『TAKE OFF YOUR PANTS AND JACKET』
BRITNEY SPEARS『BRITNEY』
THE CHARLATANS『WONDERLAND』
!!!『!!!』
THE CULT『BEYOND GOOD AND EVIL』(レビュー
DEPECHE MODE『EXCITER』(レビュー
DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』
EMPEROR『PROMETHEUS: THE DISCIPLINE OF FIRE & DEMISE』
FANTOMAS『THE DIRECTOR'S CUT』
FEAR FACTORY『DIGIMORTAL』
FEEDER『ECHO PACK』
GARBAGE『BEAUTIFULGARBAGE』
HATEBREED『PERSEVERANCE』
HOOBASTANK『HOOBASTANK』
THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY『A NEW MORNING, CHANGING WEATHER』(レビュー
JAMIROQUAI『A FUNK ODYSSEY』
JOEY RAMONE『DON'T WORRY ABOUT ME』
KREATOR『VIOLENT REVOLUTION』
LENNY KRAVITZ『LENNY』
MACHINE HEAD『SUPERCHARGER』
MEGADETH『THE WORLD NEEDS A HERO』(レビュー
MERCURY REV『ALL IS DREAM』
MICHAEL JACKSON『INVINCBLE』
MICK JAGGER『GODDESS IN THE DOORWAY』(レビュー
MISSY ELLIOTT『MISS E... SO ADDICTIVE』
MOGWAI『ROCK ACTION』(レビュー
MOUSE ON MARS『IDIOLOGY』
MR. BIG『ACTUAL SIZE』(レビュー
N*E*R*D『IN SEARCH OF...』
NEW ORDER『GET READY』
NICKELBACK『SILVER SIDE UP』
OCEAN COLOUR SCENE『MECHANICAL WONDER』
OZZY OSBOURNE『DOWN TO EARTH』(レビュー
PUDDLE OF MUDD『COME CLEAN』
R.E.M.『REVEAL』
RAMMSTEIN『MUTTER』
ROB ZOMBIE『THE SINISTER URGE』
SLAYER『GOD HATES US ALL』(レビュー
SOILWORK『NATURAL BORN CHAOS』
SPIRITUALIZED『LET IT COME DOWN』
STAIND『BREAK THE CYCLE』
STATIC-X『MACHINE』
STEREOPHONICS『JUST ENOUGH EDUCATION TO PERFORM』
STONE TEMPLE PILOTS『SHANGRI-LA DEE DA』
SUGAR RAY『SUGAR RAY』
SUPER FURRY ANIMALS『RINGS AROUND THE WORLD』
TRAVIS『THE INVISIBLE BAND』
THE WHITE STRIPES『WHITE BLOOD CELLS』
YEAH YEAH YEAHS『YEAH YEAH YEAHS』

……多い(笑)。セレクトしまくったらこうなった。というか、2001〜2002年ってすでにこのサイトの前身「とみぃの宮殿」のアクセスがそこそこ増え始めた時期で(理由:ハロプロ)、更新意欲もかなり強くて新譜にも積極的に触れていたタイミングなんですよね。当然あの頃はサブスクなんてなかったので(海外にはNapsterがありましたけどね)、CDを闇雲に購入しまくっていたのですが(しかも、当時はライターになる前で、東京住まいではなかったこともあり、月に数度、週末にCD漁りったりクラブ遊びしたりライブ行ったりするために上京していたのでした)、今回選んだ20枚は完全に今の自分の趣味と、客観的に見て名盤として通用する作品を意識しています。

2001年というと、9月11日のアメリカ同時多発テロが忘れられない出来事でしたよね。当時は追悼イベントもいくつか開催されましたが、こうした事実が作品に反映されたのは2002年以降の作品だったので、今回ピックアップした作品の中には911について歌った曲は含まれていないんじゃないかな。

あと、ジョーイ・ラモーン(4月15日)やジョン・リー・フッカー(6月21日)、ジョージ・ハリスン(11月29日)が亡くなったのも2001年のことでした。

ちなみに、当時の日本の音楽シーンには以下のような出来事がありました。

■三波春夫、死去(2001年4月)
■中澤裕子がモーニング娘。を卒業(2001年4月)
■Coccoが音楽活動休止(2001年4月)
■野猿、撤収(2001年5月)
■三木道三、「Lifetime Respect」でオリコン1位獲得(2001年7月)
■サザンオールスターズから大森隆志(G)が脱退(2001年8月)
■EE JUMPのユウキ、活動自粛(2001年8月)
■モーニング娘。に5期生加入(2001年8月)
■SPEED、阪神淡路大震災復興イベントで一夜限りの再結成(2001年10月)
■access、7年ぶりに活動再開(2001年12月)
■第43回日本レコード大賞、浜崎あゆみ「Dearest」が大賞受賞。最優秀新人賞はw-inds.が受賞(2001年12月)
■SIAM SHADE解散(2002年3月)
■エイベックスがコピーコントロールCD(CCCD)発売(2002年3月)
■DREAMS COME TRUEから西川隆宏が脱退(2002年3月)

なお、2001年の年間アルバムランキング1位は宇多田ヒカル『Distance』、2位が浜崎あゆみ『A BEST』という時代。懐かしいですね……。

最後に、今回選出した20作品をまとめたプレイリストも用意しましたので、掲載しておきます。

 

2021年10月 5日 (火)

AEROSMITH『O, YEAH! ULTIMATE AEROSMITH HITS』(2002)

2002年7月2日にリリースされたAEROSMITHのコンピレーションアルバム。日本盤は同年7月3日発売。

80年代後半にGeffen Recordsから『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)『GET A GRIP』(1993年)とメガヒット作を連発させ、90年代後半に再びSony Recordsへと移籍したバンドが、初めてレーベルの枠を超えて制作したベストアルバム。シングルヒット、ライブの定番曲を中心にセレクトし、新曲「Girls Of Summer」「Lay It Down」、そしてRUN D.M.Cとのコラボカバー「Walk This Way」をエアロ名義の作品に初収録した初のコンピ作品となっています。

70年代の選曲はまあこんなもんかな?という無難な内容に。一応黄金期のメンバー(ジョー・ペリー&ブラッド・ウィットフォード在籍時)での楽曲に限られているので、70年代は5thアルバム『DRAW THE LINE』(1977年)まで。80年代は再ブレイクを果たす「Dude (Looks Like A Lady)」以降で、『DONE WITH MIRRORS』(1985年)はスルーされています。仕方ない。

Geffen時代のヒットシングルはほぼ網羅かな。「Blind Man」や「Walk On Water」といった、Geffen時代のシングル曲をまとめた『BIG ONES』(1994年)からの楽曲は外されていますが。Sony復帰後のシングルは「Hole In My Soul」「Full Circle」(ともに『NINE LIVES』(1997年)収録)、「Fly Away From Here」「Sunshine」(ともに『JUST PUSH PLAY』(2001年)収録)がカットされています。「Hole In My Soul」はまだしも、それ以外はTOP100入りしていないので仕方ないですが。それに、「Hole In My Soul」を入れちゃうとDISC 2は本当にバラードばかりになっちゃいますしね。

「Pink」はシングル用のリミックスが施されたバージョン、そして初の全米No.1シングル「I Don't Want To Miss A Thing」、ラジオオンエア用に“4 letter words”が変更された「Just Push Play」はエアロ名義のまとまった作品に初収録。特に「I Don't Want To Miss A Thing」に関してはそれまで、映画『アルマゲドン』のサウンドトラックか同曲シングルを購入するしかなかったので、にわかファン ビギナーにはありがたい措置ではないでしょうか。

新曲2曲は、まあおまけ程度の内容かな。サイケポップ調の「Girls Of Summer」は「Pink」以降の流れを狙ったものなのかな。「Lay It Down」はお約束のパワーバラード。これもありきたりっちゃあありきたりかな。相変わらず高品質ですが。

日本盤CDにはここにボーナストラック4曲を追加収録。ライブの定番曲「Train Kept A Rollin'」(スタジオバージョン。できればライブバージョンがよかった)、「Toys In The Attic」、ビートルズのカバー「Come Together」、そして本作と同じ2002年公開の映画『スパイダーマン』サントラに収録された「Theme From Spider-Man」カバーというセレクトで、レア感が強いのは「Theme From Spider-Man」くらいかな。せっかく時代を追って曲が進んでいくのに、最新曲のあとにいきなり「Train Kept A Rollin'」で30年くらい逆戻りするのもねえ。考えものです。

なお、本作は2011年9月に『THE ESSENTIAL AEROSMITH』とタイトルを変え、アートワークも変更され再発に。同年11〜12月の来日公演にあわせて、日本では『マキシマム・ベスト』と題した3枚組仕様で発売されています。

そういえば、最近AEROSMITHはSony時代を含むすべてのカタログをUniversal Recordsに集約させることを発表したばかり(ソース)。これまで各種ストリーミングサービスでは、レーベルの枠を超えたコンピは歯抜け状態のものが多く、本作もApple MusicではGeffen時代の音源が聴けず、Spotifyではフルで聴けるという状況でした。近々こういった不都合も解決することになるのかと思うと、リスナーとしてはありがたいかぎりです。

 


▼AEROSMITH『O, YEAH! ULTIMATE AEROSMITH HITS』
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2021年7月27日 (火)

OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』(2002)

2002年7月1日にリリースされたOASISの5thアルバム。日本盤は同年6月26日に先行発売。

前作『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』(2000年)リアム(Vo)&ノエル(Vo, G)のギャラガー兄弟、アラン・ホワイト(Dr)というイレギュラーな編成で完成させたOASIS。アルバム完成後にはアンディ・ベル(B/ex. RIDE、ex. HURRICANE #1)、ゲム・アーチャー(G/ex. HEAVY STEREO)という“Creation Recordsオールスターズ”が参加して、ツアーを敢行します。

2001年秋から新体制で初のアルバム制作に突入したOASISは、バンドのセルフプロデュースのみならず、リアムやアンディ、ゲムも楽曲提供するなどバンドらしさをさらに強める結果に。アルバムは全英1位を獲得し、セールス的にも前作以上を記録。「The Hindu Times」(同1位)、「Stop Crying Your Heart Out」(同2位)、「Little By Little」(同2位)、「Songbird」(同3位)とヒットシングルも多数生まれました。

新編成で約1年にわたりツアーを重ねた結果、バンドとしてのまとまりの強さを確かなものとし、そこからアルバム作りに入ったことから前作以上にバンドのグルーヴ感が存分に楽しめる1枚と言えるのではないでしょうか。かつ、リアムのソングライターとしての成長がアルバムに広がりを与えており(本作では「Songbird」をはじめ3曲提供)、ゲム(「Hung In A Bad Place」)やアンディ(1分強のインスト「A Quick Peep」)はまだまだバンドへの貢献度は低いものの、ソングライターが4人に増えたことで初期3作とは異なる“OASIS第2章”の序章にふさわしい内容に仕上がったと言えます。

ノエルのソングライターとしての才能は相変わらずですが、多少“第2のデビューアルバム”を意識したのか、大人になったノエルが初期衝動を取り戻そうとしている感も伝わってくる。オープニングを飾るストレートな王道ロック「The Hindu Times」はまさにその象徴的な存在ではないでしょうか。と同時に、前作での実験もなかったことにせず、「Force Of Nature」で昇華させている。さらに、過去と次作以降をつなぐ「(Probably) All In The Mind」や「Better Man」も用意されており、ある意味ではバンド後期へと向けたもうひとつの過渡期的作品と言えなくもないのかな。

とはいえ、ロックバンドとしての躍動感と高揚感は満載だし、ガキンチョだった初期から大人の階段を登り始めたギャラガー兄弟の成長が窺えるという点でも魅力的な1枚ではないでしょうか(余談ですが、「(Probably) All In The Mind」のギターソロ、「Born On A Different Cloud」のスライドギター、「Better Man」のギター&バックボーカルでジョニー・マーがゲスト参加しています。UKロックファンはそこも聴きどころかなと)。

 


▼OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』
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2021年5月 2日 (日)

BLACK LABEL SOCIETY『1919 ETERNAL』(2002)

2002年3月5日にリリースされたBLACK LABEL SOCIETYの3rdアルバム。日本盤は同年2月27日に先行発売。

前作『STRONGER THAN DEATH』(2000年)からちょうど2年ぶりに発表された本作は、新たなドラマーとしてクレイグ・ニューネンマッハー(ex. CROWBAR)、新ベーシストにロバート・トゥルヒーヨ(当時オジー・オズボーンのツアーメンバー。のちにMETALLICAに加入)を迎えて制作(ロブは「Demise Of Sanity」「Life, Birth, Blood, Doom」のみでプレイし、それ以外はザック・ワイルドがベースも兼務)。楽曲自体はザックがオジーのアルバム『DOWN TO EARTH』(2001年)のために用意したものが多く含まれており(「Bleed For Me」「Demise Of Sanity」「Life, Birth, Blood, Doom」「Bridge To Cross」など)、これらがオジーから「Too BLACK LABEL(BLSすぎる)」との理由で却下されたため今作で流用されることとなりました。

基本的には過去2作の延長線上にあるものの、まとまりの良さというか“とっつきやすさ“が過去作以上なのはそういった理由も大きいのでしょう。のちのBLSにも通ずる作風がここでひとつ確立された感が伝わります。ですが、全体を覆う(精神的にくる)ダークさは過去2作以上のものがあり、このアンバランスさは非常にクセになるものがあります。

というのも、本作はザックの父親に捧げられたものであり、ジャケットからもわかるように戦争を題材のひとつとして選んでいること(アートワークはオランダで親衛隊募集をかけた際のナチスのプロパガンダポスターを題材にしたもの)、アルバム発売の半年前に“9.11”が発生していることなど、ネガティブな要素が多分に制作に影響を与えており、音圧で聴く者を圧倒させてきた過去2作とはそこが異なるんですよね。本作は音質的に若干クリアになった感があり、そういった点が聴きやすさに影響を与えていますが、そう思いながらアルバムに触れ続けているといつの間にか心にズッシリした重荷を抱えていることに気づくという。かつ、アルバムを締め括る1曲が「America The Beautiful」(アメリカ合衆国の愛国歌)のインストゥルメンタル・バージョンというのも、非常に考えさせられるものがあります。そういった意味での「(精神的にくる)ダークさ、ヘヴィさ」は唯一無二と言えるのではないでしょうか。

「Bleed For Me」や「Demise Of Sanity」「Bridge To Cross」「Graveyard Disciples」あたりはバンドの代表曲と読んでも差し支えない完成度を誇り、それ意外にも「Battering Ram」「Lost Heaven」「Mass Murder Machine」あたりもザックらしさが存分に味わえるはず。BLSの入門編としてはさらに楽曲/サウンドの整合感が増した次作『THE BLESSED HELLRIDE』(2003年)をオススメしますが、その次に聴くなら今作なんじゃないかなという気がしています。初期2作はいろんな意味において破天荒すぎますからね(笑)。

ニューメタル全盛の2002年という時代に、こんなにもヘヴィ&ダークなアルバムでシーンと向き合ったザック・ワイルド。その頑張りは、BLS初のBillboard 200入り(最高149位)という数字にも表れている気がします。

 


▼BLACK LABEL SOCIETY『1919 ETERNAL』
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