« THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『太陽をつかんでしまった』(2002) | トップページ | HANOI ROCKS『BANGKOK SHOCKS, SAIGON SHAKES, HANOI ROCKS』(1981) »

2003/01/11

L'Arc-en-Ciel『REAL』(2000)

  2000年8月にリリースされた、L'Arc-en-Cielの通算8枚目(インディーズ盤「DUNE」含む)のアルバム「REAL」。この前年夏には、かのアルバム2枚同時リリース(「ark」「ray」)があったわけですが、そこから約1年2ヶ月でもうアルバムですから、当時(1997年秋の活動再開以降)の多作振り・活動の順調振りが如何に凄かったかがお判りいただけるかと思います。そんなラルク、このアルバムを最後にオリジナルアルバムを一切リリースしていません。それどころか、この後にシングル1枚(映画「ファイナルファンタジー」主題歌)とベスト盤をリリース後、一切の新曲がリリースされていません。ベスト盤が2001年3月ですから、早くも2年近くもの「不在」となるわけです。

  この2年というのは、かなり大きいと思います。その間に日本の音楽シーンの流れもだいぶ変わり、今やチャート上には彼等のような「ビジュアル系上がり」や「ビジュアル重視のロックバンド」の姿は殆ど見当たりません。時々、そういったバンドがチャート上位に食い込んできたりしますが、個人的には殆ど興味を持てないようなバンドばかり。

  そんな中、昨年辺りからラルクのメンバー達がそれぞれソロ活動を開始しています。ボーカルのhydeはソロシンガーとして2001年後半から活動、現在までにシングル数枚とアルバム1枚をリリース。また海外向けに、同アルバムの英語バージョンも制作されました。ベースのtetsuも「tetsu69」としてソロ活動開始、昨年暮れにはアルバムもリリースしたばかり。ドラムのyukihiroもソロシングルを1枚リリースしています。そして、最後の最後にギターのkenまでもが近々新バンドでデビュー。そのドラムにはラルクの元メンバー・sakuraが迎えられています。こういった事情から、このままラルクが再びhyde・tetsu・ken・yukihiroの4人で揃うことはないのでは‥‥なんて憶測まで流れる程。先日、tetsuもインタビューか何かで「今年の(ラルク)活動再開の予定はまだない」というような発言もしたばかり。このまま静かに幕を閉じてしまうのでしょうか?

  2枚同時アルバム「ark」「ray」辺りから徐々に実験的要素が目立つようになり、確実に音楽性の幅も広がったラルク。当初は'80年代前半イギリスのニューロマンティックや、GASTANKやDEAD ENDといったゴステイストのパンク/メタルから影響を受けた音楽性だったものの、成功と共に更に幅広く親しみやすい要素を身に付けていきました。そして(現時点での)その究極形ともいえる作品が「REAL」だった、と俺は認識しています。例えばここに収録されたシングルナンバー4曲にしても、タイプがてんでバラバラ。"NEO UNIVERSE" にはどことなくピコピコしたテクノポップ色が感じられるし、"LOVE FLIES" はROLLING STONESをダークにしたようなダルなロックンロールだし、"finale" は初期から持っているゴシックテイストを更に押し進めて、ポップで届きやすく工夫されているし、"STAY AWAY" は疾走感あるパンクポップ的ナンバーだし。これだけカラフルな楽曲を短期間に連続してリリースし続けられたというのは、バンドのポテンシャルの高さもあるだろうけど、それぞれの楽曲のソングライター(基本的に4人全員が独立した作曲者としてクレジットされている)の能力も相次ぐリリースを経て、更に磨かれていった結果だったのでしょう。それまで曲調や曲の雰囲気で大体誰が作曲者か想像がついたのに、実際この頃になるとそれすら判らなくなる程でしたし(俺、hyde作曲は大体外れたことないけど、このアルバムの頃初めてkenが "finale" を、tetsuが "NEO UNIVERSE" を作曲したと間違えたし。実際には逆なんですね)。それだけ個々のソングライターの引き出しも増えていったってことでしょうね。

  シングル曲だけでなく、アルバムには更にいろんなタイプの曲が入っていて、如何にもyukihiroな "get out from the shell" はちょっとドラムンベースの要素を感じることができる打ち込みモノ。hydeによる英詞も曲の雰囲気にピッタリ。続く "THE NEPENTHES" は変拍子を用いたヘヴィロック風。当時海外で主流だったラウドロックというよりも、例えばUK勢‥‥MUSEやMANSUNといったバンドに近い印象を受けます。アルバム中、最も「名曲」との声が高かった "bravery" はミディアムテンポのポップチューン。過去の彼等の楽曲と比べれば引っかかりやクセが殆どない、いわば本気で「狙った」楽曲と呼ぶこともできるのでは? "ROUTE 666" は8曲目にしてようやく登場するhyde作の曲。アルバム中、最も過去の彼等に近いタイプだけど、演奏自体は完全に過去の彼等とは別物。ロカビリーっぽいですよね。なんかhydeのイメージにないタイプだなぁ‥‥とか当時思ってたんですが、hyde云々というよりもバンドとしての新境地を狙ったってことなんでしょうか。その後、地味なポップロック "TIME SLIP"、バラード "a silent letter"、再びhyde作の壮大なポップチューン "ALL YEAR AROUND FALLING IN LOVE" でアルバムは幕を閉じます。

  「TRUE」で大成功を手にしたラルクは、続く「HEART」で更にポップ色を強めた作風にシフトチェンジしていき、2枚同時アルバム「ark」「ray」では大衆性とマニアックさという相反するふたつの要素を見事に両立させていました(アルバムとしてのまとまりはイマふたつくらいでしたが)。しかし、この「REAL」というアルバムでは個々の楽曲は光っているものも多いけど、同時に地味な楽曲も数曲含まれています。特にラストにいくに従って、その印象は強まっていきます。前半に魅力的なナンバーやシングルヒット曲を固めたことによって、更に後半4曲の印象が薄いものとなってしまってる気がします。地味ながらも、個々の楽曲の完成度は他のバンドとは比べものにならないのですが‥‥

  そうはいってもこのアルバム、駄作なんかではなくてよく出来たアルバムだと思いますよ。個人的には8曲目まで聴いたら止めてしまう、なんてこともよくありましたが、最近聴き直すと9曲目以降の3曲も決して悪い曲じゃないんですよね。ただ、カッコつけた言い方をさせてもらうと‥‥アルバムタイトル通り「リアル過ぎる」っつうか、生々し過ぎる気がするんですね、いろんな意味で。メンバー個々のエゴ(ソングライターやアーティストとしてのエゴ)、バンドの上手く機能してる面とそうでない面が赤裸々に語られたアルバムだったのかなぁ、と今になって思うわけです。表現はよくないですが‥‥これは当時のラルクの「膿」だったのかなぁ、と。当時の創作サイクルや連続リリース(シングル3枚同時発売とか、2週連続リリースとかアルバム2枚同時発売とか)等から生まれるストレスとかメンバー間のすれ違いとか、そういったものが全部表出してしまったのがこのアルバムだったのかなぁ、と。そういう意味では、本当に「リアルなL'Arc-en-Ciel」を表現したアルバム、それがそのままタイトルになった「REAL」というアルバムでバンドを活動休止させてしまったのは、ある意味正解だったのかもしれないし、だからこそ、あれからかなりの時間が経った今だからこそ、そういう意味での「リアルさ」ではなくて、現在個々のメンバーが見せている「等身大さ」をラルクとして表現してみてもいいのではないか?と俺は思うのです。勿論、そういった面がバンドのコンセプトとはずれるものであろうことは簡単に想像できますし、だからこうやって未だに活動再開に漕ぎ着けられないのかもしれません。

  確かに過去の路線をトレースした「如何にもラルク」な音も魅力的かもしれませんが、バンドを続けるにしろ終わらせるにしろ、ここで更に大きな方向転換をしてみるのもいいのではないでしょうか? 「ラルクとして活動するってことは、沢山の船員(=創作活動やライヴ等、全てに関わる全スタッフ)が乗った巨大船を運転するようなもの」とhydeは言いました。その船が再び出航するためには、途中で遭難したり沈没しないように、細心の注意を払うべきでしょう。しかし、あまりに神経質過ぎて、逆に出航を躊躇ってしまうと、いつまで経っても海に出ることは出来ないでしょう。何となく、今のラルクはそういう状況に陥っているのかなぁ、と感じています。それは「失敗は出来ない」という大きなプレッシャーとなって、個々のメンバーを苦しめているのかもしれないし。

  昨今、ロックにしろヒップホップにしろ、かなり「現実的」で「地に足の着いた」アーティスト達がシーンを席巻しています。そういう時代だからこそ、俺は2003年という今年こそ、L'Arc-en-Cielの活動再開を願っているのです。「浮世離れ」したイメージのあった彼等が、どんどん我々に身近な存在となっていき、現在ではソロアーティストとして更に「地に足の着いた」かのような活動をしている4人。けどね‥‥等身大ながらも、彼等には常に「ロックスター」であって欲しいと、そう思うわけです。アマチュア時代から彼等を見てきた身として、切にそう願うわけです。

  いろいろ矛盾したことを書き綴ってきましたが、それだけ俺はラルクというバンドが今必要だと思っているし、必要としている人達も多いんじゃないか?とも思うわけです。DEAD ENDと重ねるわけじゃないですが、彼等の二の舞にはなって欲しくない‥‥「その先」にあるものを是非彼等なりに表現して、我々に見せて・聴かせて欲しい‥‥そう願って、彼等の復活を静かに待ちたいと思います。



▼L'Arc-en-Ciel『REAL』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 01 11 12:00 午前 [2000年の作品, L'Arc-en-Ciel] | 固定リンク