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2003/01/31

THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』(2002)

一昨年辺りから、「とみ宮」的に言うところの『リフ・ロック』が徐々にブレイクしていき、THE STROKES、THE HIVESといったバンドから、最近ではTHE DATSUNSまでブレイクしつつある状況下、何故かそういったバンドを好む人の中からこのバンドの名前が挙がることが少ないんですよね‥‥そう、それが今回紹介するTHE HELLACOPTERSです。あのね、HELLACOPTERSがいたからHIVESもDATSUNSも生まれたようなもんなのよ、大袈裟ではなくて。特にDATSUNSなんてHELLACOPTERSに対するリスペクトを口にしてるし、実際ツアーも一緒にやってるしね。

ここ日本ではまず最初にTHE WiLDHEARTSのジンジャーがお気に入りのバンドとして「BURRN!」で紹介され、しかもそのTHE WiLDHEARTSのラストツアー(再結成前の)でオープニングアクトとして初来日したことから、意外と『rockin'on』で紹介されるバンドをメインに聴いてる人達からは敬遠されているような感じですが、実はそういった雑誌を普段読んでる人達にこそもっと聴いて欲しいアルバムなんですよね、この「BY THE GRACE OF GOD」ってアルバムは。

先に挙げた『リフ・ロック』系のバンドを称して『爆走ロックンロール』と呼ぶことが多いと思いますが、その呼称は正にHELLACOPTERSの為に作られた言葉であり、実際彼等がここ日本で取り沙汰されるようになってから『爆走ロックンロール』って表現が浸透していったんじゃないかな‥‥と記憶してます。初期はそれこそMOTORHEADとIGGY & THE STOOGESを掛け合わせたかのようなパンキッシュで疾走感のあるガレージサウンドで我々を魅了していたわけですが、セカンド以降、徐々に彼等のルーツであるKISSやRAMONESといったバンドが持っていたメロディセンスやポピュラリティを表出していき、その集大成と呼べるような1枚がメジャーリリース第1弾となった前作「HIGH VISIBILITY」だったことは、ファンならご存じでしょう。

'02年9月に本国スウェーデンで、そして同年12月にようやくここ日本でもリリースされたこのアルバムは、メジャー配給では2枚目、通算5枚目(編集盤「CREAM OF THE CRAP! Vol.1」除く)のオリジナルアルバム。本国では同時期にリリースされたBON JOVIの新作「BOUNCE」を抑えて堂々の2位を記録する程の大人気振り。意外とその辺の情報はファン以外には知られていませんが、それだけ凄いバンドだってことですよ。

音楽的には、前作を更に押し進めたような、正に延長線上にある作品。なのだけど‥‥激渋な1枚となっております。初期の衝動性や激しさは影を潜め、KISSばりのメロディは更に磨きがかかり、前作辺りから表れ始めたソウルからの影響も更に色濃く出ています。

このバンドの強みは、激しいツインギターもさることながら、やはりピアノ/オルガンを取り入れている点でしょう。先に挙げたようなバンドは、ギター・オリエンテッドな、正しく『リフ・バンド』の称号そのままなのですが、HELLACOPTERSにはバックに流れるハモンドオルガンの音色、メロウな曲を更に盛り上げるピアノの音が加わることで、更に「男泣き」の世界を盛り上げています。今作中でも特に名曲との声も高い "Rainy Days Revisited" なんて、もう‥‥速いだけ、ウルサイだけじゃダメなんだよ、爆走ロックってのは。パンクの影響が色濃いバンドばかりがもてはやされる時代なのかどうかは知りませんが、俺的にはTHE MOONEY SUZUKIとかDATSUNS、そしてこのHELLACOPTERSみたいにソウルやR&B、ブルーズの影響を感じさせるバンドの方がより信頼できるんですよね(いや、それ以外のバンドが悪いとか劣るって意味ではなく、個人の感性の問題ですけどね)。

ファーストシングルにもなったタイトルチューン "By The Grace Of God" イントロのピアノリフを聴いた瞬間から鳥肌が立ち、更に哀愁のメロディに泣き、続くタイトな "All New Low"、ZOMBIES辺りを彷彿させる哀メロ具合抜群の "Down On Freestreet"、ただのパンクチューンでは終わってない辺りに個性を感じる疾走チューン "Better Than You"、サザンロック等のアメリカンな香り強い "Carry Me Home"、そして先の名曲 "Rainy Days Revisited"、前作の流れを引き継ぐ哀メロ疾走チューン "It's Good But It Just Ain't Right"、KISSみたいなイントロが異常にカッコイイ "U.Y.F.S."、カントリーウェスタンやソウル等の影響が伺える "On Time"、KISSの "C'mon And Love Me" のHELLACOPTERS版とも呼べるだろう "All I've Got"、HELLACOPTERSの王道タイプといえるだろう "Go Easy Now"、怪しい雰囲気を醸し出す疾走ガレージチューン "The Exorcist"、イントロのギターリフに悶絶しそうになる哀愁ロケンロー "Pride" ‥‥といった本編13曲だけでも捨て曲なしの名曲揃いなのに、そこに加えて日本盤は2曲のボーナストラック(ワイルドな疾走チューン "Big Guns" と初期を彷彿させる爆走チューン "Red Light")もボーナス以上の出来映えなので、これから買うなら迷わず日本盤をお買い求めください。だってEU盤はコピーコントロールCDだしさ。当サイト的には全くオススメ出来ません。

ボーナストラックの2曲が初期の彼等っぽい攻撃的な爆走ナンバーなので、これらが入ることで更にアルバムのバランスが良くなったような気がします(ま、人によっては蛇足と感じるかもしれませんが)。HIVESやDATSUNSのパンキッシュな面が好きな人にも十分アピールすると思うんですけどね。で、そういう面を求めてHELLACOPTERSのアルバムを手にしてみたら、いきなりメロウで哀愁感漂う「男の世界」に魅せられてしまう、という寸法ですよ。だから騙されたと思って買ってみてください。で、気に入ったら‥‥哀メロの世界感が気に入ったなら前作から遡って聴いていけばいいし、もっと攻撃的な面を知りたかったらファーストから順々に追っていくか、昨年春に出た初期のシングルのみに収録されていた曲を集めた編集盤「CREAM OF THE CRAP! Vol.1」を買ってみるか‥‥とにかく、選択の幅が広いバンドなんで、どこかで引っ掛かると思うんですよ。

もうね‥‥「何でもっとブレイクしないかなぁ、ここ日本で」と常々思ってたわけですよ。前作に伴う来日公演の時、もっと盛り上げておけばよかった‥‥とか今更後悔してますが、逆に今みたいな状況の方が多くの人達にアピールするんじゃないでしょうかね? もうね、今まで聴いてこなかった人、恥を知りなさい! 世の中には、まだまだ「すげぇいい音楽やってるのに、全然日本でブレイクできない」ネクストレベルのバンド達は山程いますからね‥‥それを、少しずつでもここで紹介できていけたらいいなぁ、そしてそれに反応してくれる人が少しでも増えてくれればいいなぁ、と願いつつ、来る来日公演(4月頃との噂)に備えて大プッシュしていきたいと思います。



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投稿: 2003 01 31 04:23 午前 [2002年の作品, Hellacopters, The] | 固定リンク