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2003/02/21

ANTHRAX『WE'VE COME FOR YOU ALL』(2003)

80年代前半に登場したスラッシュメタルと呼ばれたジャンルの中で、そのシーンを支えた「四天王」と呼ばれたバンドがいたわけですよ。METALLICAであり、SLAYERであり、昨年春に解散してしまったMEGADETHであり、そして今回紹介するANTHRAXの4バンド。METALLICAはベースのジェイソン・ニューステッドが脱退した後、結局ベーシストが決定する前にスタジオ入りし、未だ新作完成の朗報は飛び込んで来ないし、SLAYERはドラマーのチェンジがあったりしたものの、昨年末に2年連続で来日し、改めてその凄さを我々に知らしめました。しかし、MEGADETHは先に書いた通りだし、ANTHRAXなんて‥‥もっと悲惨ですからね。

ANTHRAXなんて名前を一昨年末からよくニュースで目にしたのを、皆さん憶えているでしょうか? 「9・11」以降、アメリカ全土を襲った「炭疽菌」騒動。その炭疽菌、英語では「Anthrax」というんですね。俺、この件で初めて知ったもん、意味。皆さん知ってましたか? こんなことでもない限り、誰もその意味なんて考えもしなかったんでしょうね(その昔、WOLFSBANEというバンドがいたのですが、その意味なんて「トリカブト」ですからね。バンド名考える方もいろいろ大変なわけですよええ)。

この炭疽菌騒動が尾を引き、ANTHRAXはその活動にストップがかかってしまうんですよ。しかもそれまでメンバー各自がソロ活動を行い、よしこれから再びバンドで暴れるぞって矢先にですから。一時はバンド名変えるんじゃないか!?なんて噂もありましたが、2001年11月末、ニューヨークで行われたテロで犠牲になった消防士の為のベネフィット・コンサートにて、ANTHRAXのメンバーは「WE'RE NOT CHANGING OUR NAME」と書かれた作業服を着て登場(メンバー5人それぞれの服に「WE'RE」「NOT」「CHANGING」「OUR」「NAME」と書かれていたという、ね)、改めて「バンドのANTHRAXは炭疽菌(Anthrax)とは無関係、これからもみんなをハッピーにしてくぜ」という力強い「無言のアピール」をしたのでした。

で、今回のアルバム。実は約5年振りのアルバムなんですよね。そうか、前作『VOLUME 8 : THE THREAT IS REAL!』ってそんな前になるのか。'98年と'03年じゃそりゃ時代も変わるわな。ひと回りどころかふた回りくらいしてそうだもんな、流行が。世間がまだラップメタルだ何だと騒ぐ前だしな。メタルにラップの要素を取り入れた、というか、ラップそのものをかのPUBLIC ENEMYと共にやっていた元祖的存在が、最もそういうジャンルが主流だった時に不在だったわけですよ。これは大きいですよね。

ところが彼等、この5年振り、通算9作目のオリジナルアルバムで、一切そういう要素を用いていないんですよ。つうかANTHRAXが初めてヒップホップをやったのが87年でしたっけ?(「I'm The Manという曲)ヒップホップユニットがハードロック的要素を用いたのと同じ頃(BEASTIE BOYSの「Fight For Your Right」のことね)、同じようにメタルバンドがヒップホップの要素を取り入れてたわけですよ、既に16年も前に。けど、彼等が常に「ヒップホップ要素をメイン」にしたことなんて、一度もなかったわけですよ。それは、彼等がヘヴィメタルバンドだったから。スラッシュとかハードコアとかパンクとかいろんな要素を飲み込んだヘヴィメタルバンド、ANTHRAX。彼等がそういった方向を主要素としてアルバムを作ったことがなかったから、流行に流されることがなかったから、こうやって未だに生き残っているわけですよ。つうかもう20年ですよ、登場して!

今回のアルバムも、基本的には前作の延長線上にある作風。つうか現ボーカルのジョン・ブッシュが加わって以降のアルバム(『SOUND OF WHITE NOISE』(93年)、『STOMP 442』(95年)、そして前作)って、どれも同じ方向性を持った音楽をやってるんですよ。前任ボーカルのジョーイ・ベラドナ在籍時後期から突き進めていったヘヴィな音像を持ったミディアム/スロウでメロディアスなヘヴィメタル。それをよりモダンにさせた『SOUND OF WHITE NOISE』は初の全米チャート・トップ10入りを記録し、続く『STOMP 442』は初期のザクザクしたギターサウンドと生々しいサウンドが融合させ、更に深い方向へ進んでいくんですね。で、ちょっとだけ時流に乗ったかのようなヘヴィロック色を散りばめた前作。新作もこういった方向にある1枚なんですが、個人的には前作以上に好きなアルバムかもしれません。ちょっとセカンドの頃の彼等を思い浮かべつつも、モダンなギターサウンドが2003年らしい「What Doesn't Die」でスタートし、その後はミディアムテンポのヘヴィナンバーが続く前半。特に「Any Place But Here」なんて本来METALLICAが進むべき方向だと思うんですよ、これ。それをANTHRAXが我流でやってしまうという。そういえばジョン・ブッシュって昔、METALLICAもシンガーとして向かい入れたかったという話があったんですよね‥‥そう考えると、非常に面白い曲ですねこれ。そしてこの曲を境に、後半は更にバラエティ豊かな方向に進みます。パンキッシュでグルーヴィーな「Nobody Knows Anything」、PANTERAのダイムバッグ・ダレルが如何にも彼らしいギターソロで参加する、ちょっと風変わりなアルペジオを持った「Strap It On」、超高速ブラスト・ビートがメチャメチャ気持ちいい「Black Dahlia」なんて、サビだけ聴いたらSLAYERみたいですからね! 更に「Taking The Music Back」にはゲストボーカルとしてTHE WHOのロジャー・ダルトリーが参加。とても判りやすいので、すぐ気づくと思いますが‥‥ジョンとの対比も面白いですよね。

普通にメタルをずっと聴いてる人にとっては「取るに足らないアルバム」かもしれないけど、最近のメタルから殆ど離れている俺にとっては、とても興味深い1枚でした。特出した1曲があるとか、超名盤ってわけではないんだけど、安心して聴けるアルバム。ガキの頃から知ってる馴染みのバンドが、今でもあの頃と変わらない「音」と「歌」を聴かせてくれる。それだけで十分じゃない? 今の時代、確かに革新的なサウンドも必要だし、実際そういうアーティストも魅力的で惹かれるんだけど‥‥それだけじゃないんだよね。こういうベテランが「聴き手から求められるものを、的確に表現し、尚かつそこに留まるんじゃなくて前進している」ことを続ける限り、まだロックシーンは大丈夫だと思う。だから、METALLICAも、デイヴ・ムステインも考え過ぎだってば。セールス的に失敗することとかファンが失望するだとか、そういうことを考える前に表舞台に立って音を出し続けるANTHRAXやSLAYERの方が、俺は信用できる。メジャーとかインディーズ落ちとか関係ないよ。

これは暫くの間、ヘヴィローテーションになりそうな予感。つうかここ数年のヘヴィ/ラウド系を中心に聴いてる子達にとって、こういう音ってどうなんでしょうね? METALLICAとかは聴くんだろうけど、ANTHRAXやSLAYERといった「あくまでメタル」なバンドの音がちゃんと届いてるんでしょうか? 現役メタラーでもないくせに、妙に心配してしまうわけですよ。



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投稿: 2003 02 21 12:00 午前 [2003年の作品, Anthrax] | 固定リンク