Theピーズ『マスカキザル』(1990)
'89年11月に「グレイテストヒッツVOL.1」及び「グレイテストヒッツVOL.2」でデビューしたTheピーズですが、翌月にはドラマーのマスヒロが脱退。そのまま活動休止状態に陥ってしまいました。しかし翌'90年春には新ドラマー・ウガンダを迎えライヴ活動を再開するのでした‥‥が、この時点でウガンダのドラム歴は約1ヶ月程度というから驚き。メジャーデビューしたバンドが迎え入れるに相応しいメンバーか!?との疑問の声を挙がりそうですが、如何にピーズというバンド、そしてはるという男が音楽云々よりも人間関係、人との繋がりを大切にする奴かが見え隠れするエピソードなのではないでしょうか?
完全なる初心者をバンドの大黒柱に迎え、その後20本近くに及ぶツアーを決行。そこでバンドとしての結束を深めた後、たった1週間でレコーディングされたセカンドアルバム「マスカキザル」を同年9月に発表。この時点でもまだウガンダのドラム歴は約半年だというのだから、もう驚きを通り越して‥‥笑うしかないって。
全10曲で30分にも満たない内容、インディーズ並みのジャケット等から一見ミニアルバムのような錯覚に陥るものの、純然たるフルアルバムですよこれは(ま、ファーストが破格の2枚同時リリース、しかも1枚にそれぞれ16曲も入ってたことを考えるとスケールダウン感は否めないけど)。1曲の長さ的には前作と何も変わってないんだけど‥‥かなり変わってしまったような印象を受けます。それは荒々しいサウンドプロダクションも影響してるでしょうけど、何よりも一番大きいのはドラムスタイルの違いでしょう。ハードロック的でかなりカッチリしたプレイを聴かせるマスヒロと比べ、ウガンダのそれは完全なる初心者のプレイといった感じで、かなり大雑把な印象を受けます。また、所々に入るフィルイン等ももたったりするし。ガチガチに作り込まれた感がある前作を気に入っていた人からすれば、「出す順番間違えてるんじゃないの?」と錯覚してしまうんじゃないでしょうか?(つまりファーストの方がメジャー盤というイメージが強く、このセカンドが荒々しさや演奏の粗さからインディー盤という印象を受ける)
しかし、その後のバンドの歴史を考えてみると、ファーストのようなサウンドの方が異色だったわけで、その後3年に渡ってプレイし続けたウガンダのプレイスタイルの方がよりピーズ的だと言うことができると思います。元々シンプルなロックンロールが基本形のバンドなので、ウガンダのようなプレイスタイルの方がより本来の形に近いのかもしれませんし(マスヒロのプレイがうるさすぎて、はるがクビを切ったという噂もあながち間違いじゃないと思いますよ)。
タイトというよりは気怠くて引きずるようなリズム、それに合わせてプレイされるギターリフ、そして芯がしっかりしながらもかなり動き回るベースライン。その後のピーズの基本スタイルがここで誕生したといっても過言ではないでしょう。メロディの冴えは相変わらずで、歌詞も基本的には前作の延長線上にある作風。ただ、楽曲的には少しずつ幅が広がってるように感じられます。"いんらんBaby"の中盤なんてまるでジミヘンだし、全体的にパンクというよりはよりピュアなロックンロールというイメージが強まってるし。バンドブーム末期だった当時、既に二束三文なバンドが多くを占める中、ピーズはよりオリジナリティを強めていったわけです。
パワーポップにも通ずるようなアップテンポのナンバーが多かったファーストと比べれば、テンポはミディアムが殆どで、その割りに1曲は2分前後。引きずるようなリズムの割りに演奏のテンションは高い。ただウルサイだけじゃなくて"どっかにいこー"みたいな聴かせる曲もちゃんとある。普通バンドのセカンドアルバムって「勝負作」と称されることが多いんですが(アマチュア時代に演奏し続けた曲が大半を占めるファーストを経て、レコーディングの為の作曲が始まりいよいよバンドの本領が発揮されるだろうってことでそう呼ばれるんでしょうね)、いきなり勝負を捻った通り抜け方をしたピーズ。この辺に彼等の「らしさ」が表れてますよね‥‥シンプルでコンパクトながら、本当にいいアルバムです。まだ後期程の「(歌詞の世界観の)重さ」がないものの、これがホントの意味でのスタート、ファーストアルバムなのかもしれませんね?

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