« 「Hello! Project 2003 Winter ~楽しんじゃってます~」@横浜アリーナ(2003年1月26日 朝公演) | トップページ | Theピーズ『どこへも帰らない』(1996) »

2003年2月 3日 (月)

Theピーズ『とどめをハデにくれ』(1993)

  '92年4月にサードアルバム「クズんなってGO」をリリースした後、年間50~60本ものライヴを行ったピーズ。翌'93年7月にはる・アビさん・ウガンダによる編成での3枚目、通算4作目(アルバムとしては5枚目)となる「とどめをハデにくれ」をリリースします。が、リリースしてから暫くした後、秋の西日本ツアーを目前にウガンダが脱退するというハプニングに直面します。結果としては黄金期メンバーでの最後のアルバムとなってしまった作品ですが、後の彼等の音楽性を考えると、非常に重要な1枚といえるのではないでしょうか?

  前作までと違った点が幾つか目立ちます。まず、長い曲が幾つも収録されている点。1曲目"映画(ゴム焼き)"が8分台、2曲目"好きなコはできた"が7分半、ラストの"シニタイヤツハシネ ~born to die"に至っては10分という大作となっています。ただ、これらの楽曲が起承転結がハッキリした長編大作かというとそうではなく、必要に応じて演奏したらたまたま8分とか10分になってしまった、といった感じかと思われます。これらの楽曲を聴いてもそれほど長いとは感じられず、むしろ本当に必要だったからこその長さだったんだなぁと思わされます。

  また、前作までの主要素のひとつだった「エロ/バカ」路線が後退し‥‥っていうか、殆ど見当たりません。代わりに自身を見つめる「自己嫌悪的内容」や純粋なラヴソングが大半を占めるようになりました。この辺はバンドとしての方向転換というよりも、はる自身の心境の変化が非常に大きいのではないでしょうか。

  そして、初期からの重要スタイルのひとつである、疾走感を持ち合わせたパンキッシュなロックンロール路線の楽曲が殆ど見当たらない点も、注目に値すると思います。パンク寄りから更に土着的なロックンロール路線へと移行していく流れはセカンド「マスカキザル」から顕著になっていましたが、ここで完全にシフトチェンジしたといってもいいでしょう。バンドブームが廃り、そこから登場したバンド達が如何にオリジナリティをもった音楽性を誇示していくかが'90年代前半のポイントだったと思うのですが、ここでピーズは完全に「ピーズ・スタイル」を作り上げたといっていいでしょう。それだけこのアルバムに収められた楽曲の個性が強いということですし。RCサクセション以降に登場した「ニッポンのロックンロールバンド」の流れを組みつつ、はるにしか書けない詩(「詞」というよりも、もはや「詩」ですねこれは)やメロディ、ピーズにしか表現できない世界観‥‥この時点でピーズはひとつの頂点に達したのかもしれません。

  ここ最近、改めてピーズのオリジナルアルバムをファーストから「リハビリ中断」までぶっ通しで聴く機会が何度かあったんですが、やはりこのアルバムの重要性、そして特異性ってのを改めて感じましたね。前半のハイライトである"好きなコはできた"~"日が暮れても彼女と歩いてた"~"みじかい夏は終わっただよ"といった一連のラヴソング。ひとつの恋が生まれて、それを育み、そして終わっていく様‥‥歌詞だけ読んでいると、本当に切なくて泣けてくる。10代の頃、もしこれらの曲と出逢っていたらまた違った印象を受けただろうし、20代の頃に聴いていたら違った感じ方でググッときただろうし、そして30代の今聴くと‥‥更にマジ泣きしそうになってる俺がいるという。本当に何気ない日常の断片なんだけど、それが日記みたいなリアルさが感じられて余計に心に響くわけです。

  そして‥‥このアルバムのポイントのひとつとなる「自己嫌悪的内容」の楽曲群‥‥"映画(ゴム焼き)"、"手おくれか"、"日本酒を飲んでいる"、"シニタイヤツハシネ ~born to die"‥‥誰もがここに挙げたような曲の歌詞みたいな事、思ったり体験したりしたこと、あるんじゃないでしょうか? 心でそう感じながらも、決して言葉にすることがなかったそれらの思い。それをストレートに表現したはる‥‥恋愛での行き詰まり、そして人生への行き詰まり‥‥だけど、ここからはただの「諦め」だけでなく、だからこその逆説的な「生への執着」も感じられます。というより、活動休止前と違って、まだここにはポジティブさを強く感じるんですよね‥‥じゃなかったら"今度はオレらの番さ"なんて曲は生まれないでしょうし、ここには入れないと思うし。

  まだピーズを聴いたことがないという人、是非"シニタイヤツハシネ ~born to die"と"日が暮れても彼女と歩いてた"だけでも聴いてみてください‥‥というよりも、絶対に聴いて欲しい。勢いだけのピーズじゃない、ホンモノのロックンロールバンドとしてのピーズを全身で感じ取ってください。

  この後、ピーズが次のアルバムを発表するまでに、約3年もの月日を要したのは、何もパーマネントのドラマー不在だったからではなく、ここで多くの事を吐き出してしまったから‥‥なのかもしれませんね。



▼Theピーズ『とどめをハデにくれ』
(amazon:国内盤CD

« 「Hello! Project 2003 Winter ~楽しんじゃってます~」@横浜アリーナ(2003年1月26日 朝公演) | トップページ | Theピーズ『どこへも帰らない』(1996) »

ピーズ, The」カテゴリの記事

1993年の作品」カテゴリの記事

カテゴリー