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2003年2月 5日 (水)

Theピーズ『どこへも帰らない』(1996)

  '93年7月に4枚目のアルバム「とどめをハデにくれ」をリリースした後、ドラムのウガンダが脱退というアクシデントにより、その後思うような活動ができなくなってしまったピーズ。とりあえず'93年後半のツアーははるがエレアコ、アビさんがエレキという2人でのピーズで乗り切り、翌'94年にはサポートメンバーとして岩城新を迎え、再びトリオ編成でツアーを再開。この頃から各メンバーが別ユニットでのソロ活動(MTハピネス、SGS、ストリップティーズ等)も始めました。
  '95年には岩城に代わって坂巻聰(ザ・チャイナボウルズ)をサポートに迎えツアー。その合間に坂巻を加えた3人でレコーディング開始。8月には一時的にウガンダが復帰し、新たにベーシストにアキラ(ラフボーイズ)を迎えた4人編成でのピーズでツアー。しかしこのメンツはツアーのみで、その後10月にはthe pillowsのシンイチロウをドラムに迎えてレコーディング再開。しかし彼もレコーディングのみの参加で(その後、シンイチロウは復活に際してかなり重要な役回りを果たすわけですが)、12月になりようやく正式メンバーとして吉田武彦が加入。固定メンバーとなり、またレコード会社もそれまでのビクターからキングに移籍し、'96年3月に移籍第一弾、前作から2年8ヶ月振りとなる5作目「どこへも帰らない」が紆余曲折の後、ようやくリリースされたのでした(やけに長い前説になっちゃったな、これ)。

  アルバムリリース時は何とか固定メンバーになっていたものの、レコーディング時期ははるとアビさんのみ、ドラムに関しては流動的で、実際に坂巻が4曲、シンイチロウが残りの8曲に参加という変則的なレコーディングとなったのですが、これが逆にレコーディングに新鮮な空気を与えたのか、前作とは打って変わってかなりアッパーで攻撃的なサウンドになっています。ここまで直線的且つ攻撃的なナンバーは久し振りでは!?なオープニング"脳ミソ"でいきなりノックアウトされてしまうこと必至。続くシングルナンバー"底なし"もそれまでとは違ったテンションを持ち合わせているし、その後続く"どこへも帰らない"、"ザーメン"、"とどめをハデにくれ"、"負け犬"‥‥前作にあったシリアスさと初期の勢いが上手くミックスされ、尚かつ過去ない程のテンションを持ってこれらの楽曲が表現されています。

  勿論、前作に顕著だった楽曲至上主義も健在で、特にその最高峰といえるだろう"Hey君に何をあげよー"と"やっとハッピー"という名曲中の名曲も収められています。そういう意味ではピーズ史上、非常にバランス感覚に優れたアルバムなのではないでしょうか? 特に"Hey君に何をあげよー"における転調に次ぐ転調はかなり計算されたもので、その辺のB級ガレージバンドには真似できない表現力・技術だと思います。個人的にはこの辺りは、キャロルからソロへと流れる時期の矢沢永吉やRCサクセション全盛期の清志郎に匹敵するものを感じます。

  そして賞賛されるべきなのは作曲に関してだけではなく、その意味深でダブルミーニングを多く含んだ歌詞も同様なのです。前作で顕著になった自分と対峙したり、諦めてしまったりする傾向が更に強まり、それがハイテンションな演奏と上手く融合し、強烈な説得力とインパクトを我々に与えます。一見お約束のエロ路線にも取れる"ザーメン"にしろ、かなり深読みができるし、"底なし"、"とどめをハデにくれ"、"負け犬"の歌詞なんて‥‥曲調のせいでそこまで重く感じませんが、歌詞だけ読めば‥‥既に日記の域を超えてます。それはなかなか軌道に乗らず成功を収められないバンドに対する苛つきや諦めの表れなのかもしれないし、あるいは‥‥

  かと思えば"Hey君に何をあげよー"、"やっとハッピー"、"ハニー"みたいな曲もあるんだから、一筋縄でいかない‥‥この辺がはるらしさというか、ピーズらしさというか。こういう面に惹かれる人が多いってことですよね‥‥納得です(そして俺もそういった面に惹かれた一人ですし)。

  個人的には、このアルバムが一番好きなんですよね。それはサウンド面もそうだし、楽曲のスタイル的にもそうだし、歌詞の面でもそうなんだけど‥‥個人的に一番しっくりくるのがこの「どこへも帰らない」なんですよね。もしこのアルバムを'96年当時聴いていたら‥‥ここまでしっくりきたのかなぁ?なんて考えることもありますが‥‥逆に30歳を超えた今だったからよかったのかな?と最近では思うようになりました。勿論、今の10代、20代の子達が聴いても文句なしに共感できるアルバムだろうけど‥‥10代にしかできない感じ方、20代にしかできない感じ方があるように、30代の今しかできないような感じ方もあると思うんですよ。多分、はるがこのアルバムをリリースした頃って、今の俺と同い年くらいだったと思うんですよ(2002年12月14日で37歳だから‥‥リリース時は30歳か。ほぼ一緒だな)。だからこそ共感できるっていう部分がかなりあるんですよね‥‥これとか「リハビリ中断」って(共感できすぎるからこそ、逆に痛々しくもあるんですが)。

  約3年振りにアルバムをリリース、さてこれから‥‥って時なのに、まだまだバンドには不運が続きます。そしてピーズ、そしてはるは、いよいよ混迷の時へと突入していくのでした‥‥



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