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2003/03/06

ENUFF Z'NUFF『ENUFF Z'NUFF』(1989)

シカゴ出身のハードロック/パワーポップ・バンド、ENUFF Z'NUFFが'89年末にリリースした、記念すべきファーストアルバム。当時のメンバーは現在も在籍するボーカル&ギターのドニー・ヴィとベースのチップ・ズナフの他に、ギターにデレク・フリーゴ、ドラムにヴィッキー・フォックス(脱退後、MOTLEY CRUEのボーカル、ヴィンス・ニールのバンドに加入)の4人。もともと'80年代中盤から活動していたバンドで、'85年には既に地元シカゴのインディーレーベルからレコードを出していたらしいけど、このアルバムにてメジャーデビュー。当時('89年前後)は丁度「メタル・バブル」の末期で、LAメタルから派生した「バッドボーイズ・ロック/スリージー・ロック」が主流で、西のGUNS N'ROSES、東のSKID ROWが人気を集めていた頃。マッチョで男性的でワイルドなサウンドが持てはやされ、第二のガンズみたいな二流バンドが次々とデビューしていた中でのデビューだったわけです。

今でこそズナフは「CHEAP TRICKの後継者」的に解釈される事が多いですが、この当時の彼等は聴いてもらえば判る通り、ちょっとサイケ色の強いハードロックといったサウンドでした。しかもルックスが、初期のPOISONも真っ青な、派手でケバケバのグラムファッション。このアルバムを聴いて「気に入った!是非前座として使いたい」と言ったAEROSMITHのジョー・ペリーも、その後にPVを観て難色を示した、なんて話もあった程、ちょっと時代に逆行してるんじゃないの!?と思われてたようですね。しかし、実際のサウンドの方はかなりミュージシャン受けが良く、確か当時、BON JOVIのジョン・ボン・ジョヴィやMOTLEY CRUEのニッキー・シックスなんかが高く評価してたんじゃないか、と記憶しています。

ファーストシングルでありオープニング曲でもある"New Thing"はサイケなグラムロック調の良い曲なんですが、ギターソロになるともう、時代を感じさせるというか‥‥所謂「速弾き」が登場するわけですよ。また、所々に登場するハーモニクス音やチョーキングが、モロにハードロック系のそれという、如何にもなギターサウンドに、今現在の彼等しかしらないパワーポップ・ファンは引いてしまうかもしれませんが、楽曲単体として評価すると、非常に優れた曲だと思います。リリース当時から既に聴いていたわけですが(逆に俺はその"New Thing"のPVを観て気に入ったんですが)、やっぱりこの曲や、シングルヒットも果たしたサイケなバラード"Fly High Michelle"は今聴いてもいいと思うし、実際名曲と呼んでも差し支えないと思います。アレンジさえ今のズナフ風にすれば、全然2003年の楽曲として通用するはずですし。

もしこのアルバムを聴いたあなたが「パワーポップを求めて聴いたんだけど、俺ハードロックもいける口なんだよね?」って人だったら、他の曲も間違いなく気に入るでしょうね。"She Wants More"や"In The Groove"みたいなスローブルーズロックあり、ちょっとLAメタルに影響された?的脳天気な"Hot Little Summer Girl"あり、ポップはハードロックチューン"For Now"あり、ワイルドなロックンロール"Kiss The Crown"あり、'80年代的なパワーバラード"I Could Never Be Without You"あり、ウエスタン調のイントロが味わい深い"Finger On The Trigger"あり、となかなか佳曲揃いなんです。あの当時、B級のBON JOVI崩れ、ガンズ崩れが山程いた中、やはりそれなりのオリジナリティと光るモノは持っていたようで、だからこそジョー・ペリーやニッキー・シックスみたいなビッグ・ネームが彼等に興味を持ったんでしょう。

BON JOVIやGUNS N'ROSESといったバンドの成功により、時代がよりルーツミュージック/ブルーズ的な方向へ流れていたためか、その後のズナフには見られないようなブルーズ色が強い楽曲が多く収録されている点も興味深いですし、既にCHEAP TRICK的手法を用いている点も特筆すべきポイントでしょう。が、これはまだまだスタート地点にしか過ぎません。今後、いろんな意味でこのバンドは成長や変化を繰り返していくことになります。それはいい意味も、そして悪い意味も含まれているのですが‥‥(ま、その辺は後々のアルバムレビューで述べることにしましょう)

それにしても‥‥"Fly High Michelle"という曲はリリースから13年以上も経った今聴いても、本当に色褪せない、いい曲ですねぇ。たとえその内容がソングライターであるドニーの「ドラッグのオーバードーズで亡くなった恋人」について歌われた曲であっても‥‥だからこその美しさ、儚さなのかもしれませんね。アコースティックアレンジで聴いてみたいな、一度‥‥



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投稿: 2003 03 06 06:35 午後 [1989年の作品, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク