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2003年3月15日 (土)

ROLLING STONES『FLASHPOINT』(1991)

ROLLING STONES何度目かの来日中ですね。今やアルバムを出せば必ずワールドツアーの一環でここ日本にもやってきてくれるので、もしかしたら既に有り難みがない存在なのかもしれませんが、それでも若いロックファンにとっては「これを見逃したら最後になるかも……」と焦って、高い金払ってドームや武道館や横浜アリーナへ足を運んでいるんでしょうね。

このサイトを4年以上続けて、実は初めて公で告白しますが……ストーンズが死ぬほど好きでした。「でした。」って過去形なのは、単に自分の中で自己完結させてしまってるだけで、別に興味がなくなったとかそういった問題ではなくて……なんつーか……生意気言わせてもらえば、ビル・ワイマンが脱退した時点で俺が知ってるストーンズは終わった、と。だから『VOODOO LOUNGE』の時点で既に数歩引いたところから見てる感じなんですよね。けど、その割りにオリジナルアルバムは全て、編集盤やライヴ盤に至るまで、恐らく公式発売されているものはかなりの数を持ってたりするんですよね。そこに加えて各メンバーのソロやら、終いにはブートまで……ストーンズ関連だけで7~80枚はあるんじゃないか、と。いや、もっとある気が……数えたことないからな。ま、その位好きだったし、今でも嫌いじゃないわけですけど……やっぱりどこか醒めた目で見てる自分がいるという、ねぇ。

何でこんなことを書くかというと、それなりに理由がありまして。どんなアーティストでも、やっぱり一番最初に観た時のインパクトが強いと、やはりそれに勝るステージってなかなかないんですよね。例えばAEROSMITHにしても過去何度と観てますが、どんなに『GET A GRIP』ツアーが素晴らしい内容だったからといっても、やはり一番最初に観た1988年の武道館には勝てないし、GUNS N' ROSESが東京ドームでどんなに素晴らしいショーをやっても、最初に観た初来日の40分で終わった公演、そしてその次に観た武道館のインパクトってのは超えられないわけですよ。内容的にはどんなに優れていても、あの日心に焼き付けられたものは、なかなか消えることはないし、あるいは一生その刻印を引きずって生きていくことだってあるわけですよ。

で、俺の中でもそのスペシャルな部類に入る。俺の心に刻印を刻んだライヴを見せてくれたのが、1990年2月のストーンズ初来日なんですね。2月21日だったかな? チケットの半券が今見当たらないんで記憶違いかもしれないけど、多分その頃。丁度俺、高校3年で受験生だったんですね。で、この頃は正にその真っ直中でして、入試の為に1週間以上東京にいて、試験が終わったらビジネスホテルに戻って勉強、という日々が続いてたわけです。けど、たった1日だけ、俺は試験の合間にストーンズを観に行ってしまったわけです。あの頃、本当にチケット争奪戦でして、電話はなかなか繋がらない。地元にプレイガイドがまだなかった頃だったので、発売日に店頭に並ぶことも出来ず、俺は片田舎からひたすら電話をしまくって、ようやく取れた1枚のチケット……しかもそれがアリーナ席、ステージほぼ真正面の20数列目……嘘みたいな本当の話。最前ブロックのそんな席を、田舎の高校生だった俺が取れたわけです。そりゃもう舞い上がったわけですよ。確か12月だったかな、チケット発売は。周りが受験でピリピリしてる中、ロック仲間の同級生と「俺、ストーンズすっげー前取れたよ!」とか「いや、俺はポール・マッカートニーに行くよ!」って感じで互いに盛り上がって、受験勉強もそっちのけで(当時は共に初来日だったんですね)。嗚呼、今思えば、あそこで俺の人生が大きく変わっちゃったんだよなぁ。


このアルバムは1991年春にリリースされた、ストーンズとしては通算5枚目のライヴ盤。ワールドツアー自体が確か7年とかそれくらい振りだったこともあり、かなり盛り上がったんだよね、当時は。しかも初の来日公演(東京ドームを10回!しかも即日完売!!)まで含まれていたんだから。それまでここ日本ではストーンズって、名前の割りに全然売れてなかったし、盛り上がってなかったんだよね。けど、初来日が大きく影響して、当時リリースされたアルバム『STEEL WHEELS』はここ日本でもバカ売れしたし、ツアースポンサーに「ポカリスエット」がついたことでCMに起用されたり、等々。で、来日直前から空前の盛り上がり。当時はライヴの模様が地上波でテレビ放送までされた程でして(GWに夜9時から2時間半という破格の扱い!未だに俺、そのビデオ持ってるよ)。ここ数年の間にロックファンになった子には判らないかもしれないけど、とにかくそれくらい日本が盛り上がったんですよ。で、このアルバムはその日本公演の音源も一部収録してるってことも、当時のファンにとっては大きな記念になってます(「Ruby Tuesday」がそれ)。

ここで聴けるストーンズってのはある種異色かもしれないね。というのも、かなり当時のテクノロジーを駆使したサウンドになってるし(何せキーボードのチャック・リーヴェルの他に、シンセ/マニピュレーターとしてマット・クリフォードが参加してるんだから)、絵に描いたような80年代的サウンドで、人によっては違和感を感じるかもしれません。その後『VOODOO LOUNGE』でのツアー辺りからどんどん過去のアーシーなサウンドへと回帰していって、今現在行われてるツアーでもより自然体なストーンズを味わえると思うんですが、俺はこういうストーンズもまたストーンズらしいと思うんですね。それにさ、やっぱり自分が観たミック、キース、ロニー、チャーリー、ビルという「5人のストーンズ」が残した最後の音源集だからね。

マット・クリフォードという男が参加したお陰で、演奏はかなりスタジオ音源に近い印象を受けます。シーケンサーを使い出したのもこのツアーからだし(「Sympathy For The Devil」のパーカッションとかね)、今や演奏してないであろう「Paint It Black」や当時の新作からの「Sad Sad Sad」「Rock And A Hard Place」、キースの歌う「Can't Be Seen」等は、やはりあの編成でなければ表現出来なかった楽曲だろうと思うし、かと思うと「Little Red Rooster」(エリック・クラプトンが参加したテイク。恐らくキースのバースデー公演からのものでしょう。ブートで持ってるし)ではちゃんとルーツを垣間見ることができるし、ラストの「Brown Sugar」~「Jumping Jack Flash」、そしてアンコール「Satisfaction」の畳み掛けるような構成は圧巻だし。けど……やっぱりイントロの"Continental Drift"からオープニングの「Start Me Up」に入る瞬間の花火のドカン!という音。これが一番ゾクッとくるね。当日を思い出すもん。

そうそう、このアルバムオンリーのスタジオ録音の新曲が収録されている点もポイントかな。「Highwire」と「Sex Drive」は結局その後何枚かリリースされたベスト盤にも収録されることもなく(共にシングルカットされてるのにね)、ファン以外にはアピールが弱い楽曲かもしれないけど、俺は好きだな。「Highwire」は湾岸戦争に対する彼等なりの皮肉だし(ま、リリースされた頃にはもう終わってたけどね)、「Sex Drive」のドス黒さはやはり彼等にしか表現できない味だし。共にビル最後の参加曲なだけに、やっぱりファンになった人には是非聴いてもらいたい曲だね。ま、その後のライヴでも演奏されたって話は聞いたことないので、ストーンズにとってもどうでもいい楽曲なのかもしれないけど……。


約3時間に及ぶストーンズ公演を観た俺は、興奮状態のままホテルに戻って、結局勉強も手につかないまま、一晩中ウォークマンでストーンズのアルバムを聴きまくって、翌日の試験も散々。結局ストーンズ熱が災いしたのか、その年の受験は全て失敗。晴れて俺は浪人生として上京することになったのでした。そして予備校にもろくすっぽ行かないで、学校のあった高田馬場や新宿へCDやブートを探し求めに行く日々。そう、あのストーンズ初来日がそれまでの俺の全てを変えてしまって、あれやあれやと月日は流れて、こういうサイトをやる羽目になって、何の因果かそのストーンズについてレビューを書いているという……って好き好んで書いてるんですけどね。

結局その後、今回を含めて3回来日公演を行っているわけですが、そのどれにも行ってない俺。さすがに今回の武道館公演には心惹かれたものの、抽選外れちゃったから行かなかったし。まぁきっと、このまま二度と観ることはないんだろうけど。今10代の子達にこれだけは言っておきます。悪いことは言わないから、親の財布からネコババしてでも、1回はストーンズ観ておきなさい! ま、こんなどうしようもない大人になりたくなかったら、絶対に観ないように……。

けどこのアルバムは聴いてみてね。多分、もっとロックが好きになると思うからさ。



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投稿: 2003 03 15 12:59 午後 [1991年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク