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2003/04/13

AMERICAN HI-FI『THE ART OF LOSING』(2003)

新世代アメリカン・ハードロック・バンド、AMERICAN HI-FI待望のセカンドアルバム。当初はもっと早くリリースされる予定だったと思うんだけど(2002年7月に出演したFUJI ROCK FESTIVALでは「秋頃にリリース予定」とアナウンスしていたし)、慎重に作業した結果なのか、最終的には前作から約1年半というインターバルになりました。ファーストがここ日本でも、そして本国アメリカでもまずまずの成功を収めただけに、セカンドに対する意気込みは尋常じゃなかったと思うのですが、それに応えるに十分な内容になったのではないでしょうか。

個人的にはこのバンド、ファーストを手にした時もそんなに思い入れというか、最高にカッコイイという印象はなかったんですね。ボブ・ロックがプロデュースというのも関係してか、かなりカッチリ作られてた印象が強いし、楽曲にしてもかなり丁寧に作られた‥‥非常に優等生的な作品だと感じられたんですよ。勿論、それらの楽曲は素晴らしかったし、今でもあのアルバム自体はよく聴きますよ。けど‥‥新人のファーストアルバムにしては、妙に完成度が高すぎて‥‥キャリア5年目くらいのバンドの、サードアルバムっぽい作風に感じられたんですね。ま、中心人物であるステイシー・ジョーンズはこのバンド以前にVERUCA SALTにドラマーとして参加していたので、メジャーの世界での活動は今回が初めてってわけでもないんですよね(そういう経緯もあって、ファーストはボブ・ロックが手掛けたわけだし)。サウンドや楽曲の細かさ/高水準はそういったところから来てるのかもしれません‥‥。

で、そんなAMERICAN HI-FIに対して更に魅力を感じるようになったのは、上にも書いたFUJI ROCK FESTIVALでのライヴを観てからでした。残念ながら代表曲である「Flavor Of The Weak」を見逃すという大失態を犯してしまいましたが、それでも十分に楽しめる内容でした。ファーストの楽曲もライヴで聴くと全く違った印象を受けたし、そしてこのセカンドアルバムに収録される予定の新曲も何曲か演奏され、それらがかなりイイ感じだったこともあって、実は俺、このバンドを誤認してたんじゃないか‥‥とまで思うようになって。だからね、このリリースを本当に心待ちにしてたんですよ。

基本的にはファーストの延長線上にあるサウンドなんだけど、1曲1曲がもっとコンパクトになり(しかも計算されて短く凝縮されたのではなく、勢いで作ったらそうなっただけのような印象を受ける)、音の粒も粗くなったように感じられます。これはプロデューサが変わったことも大きく影響してると思うんですが(今作はLIVING ENDやSEMI-SONICを手掛けてきたニック・ロウネーを起用)‥‥乱暴に言ってしまえば、パンク色が若干強めに出てるかな、と。GREEN DAY辺りに通ずる曲調のファーストシングル「The Art Of Losing」や、ちょっとスカのリズムを取り入れた「The Breakup Song」、FOO FIGHTERS辺りにも共通する色が感じられる「Nothing Left To Lose」といった楽曲は、前作にありそうでなかったタイプの楽曲でしょう。また、アコースティック色を有する「Save Me」「This Is The Sound」からは新しい魅力が感じられますし(王道アメリカンロックですね)、「Beautiful Disaster」ではBACKYARD BABIES辺りの活きのいいバンドと同じような匂いを感じるし、「Built For Speed」なんてCHEAP TRICKの「He's A Whore」に似たリフ&コード進行を持ったパワーポップだし。楽曲の幅は明らかに広がったし、それぞれの曲は以前のような細やかさよりもワイルドさを強調しているんだけど‥‥やはりどこか優等生的なんだよね。無理して「俺達パンクだぜ!」みたいに悪ぶってる印象。それが決して悪いと言ってるんじゃなくて、非常に計算高いなぁ、と。

多分ステイシー・ジョーンズって男はとても頭のいい奴なんだと思うな。じゃなきゃ、あんな優等生的なファーストアルバムの後に「敗者の美学」ってタイトルのアルバム、作らないでしょう普通。GREEN DAY以降のパンクまで行かず、かといってここ数年ヒットチャートを賑わしたNICKELBACKみたいな音までいかず、ストレートなハードロックというわけでもなく、グランジの亡霊を追ってるわけでもなく(少なくとも前作には「グランジ以降」の文脈で語られてる楽曲が幾つか見受けられたけど、今作には皆無だし)‥‥そういう点から、俺の中でBON JOVIのジョン・ボン・ジョヴィと重なるんだよね、「策士」として。「インディー・バンドならMY BLOODY VALENTINE、メインストリームならFOO FIGHTERSが大好き」という発言にしろ、ライヴでCHEAP TRICKの「Surrender」をカバーしてること、そして勝負作となるセカンドでバラエティに富んだアルバムを作ったこと等‥‥VERUCA SALT時代に学んだことを、こうやって役立ててるのかも。だとしたら、この男はまだまだ化けると思いますね。そして、そんな策士を的確にサポートする他のメンバーの技量もさすがですね。まだ各メンバーの個性というのは感じられませんが(多分このアルバムにおけるライヴを観れば、また印象が変わるんでしょうね)、それが今後の課題といったところでしょうか。

やれ計算高いだの策士だのといろいろ書きましたが、そういうの抜きに十分楽しめるアメリカンロックが存分に詰まってるので、とりあえずこれを読む前に無心で一回聴くことをオススメします(そういうことは最初に書けよな俺)。ここ数ヶ月、頭を空っぽにして楽しめるアルバムとして我が家ではヘヴィローテーション中です。



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投稿: 2003 04 13 12:00 午前 [2003年の作品, American Hi-Fi] | 固定リンク