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2003/04/08

APHEX TWIN『RICHARD D. JAMES ALBUM』(1996)

このジャケット、一度見たら絶対に忘れないよね。ある意味、KING CRIMSON『クリムゾン・キングの宮殿』に匹敵するインパクト大の顔ジャケ。いや、あっちは絵なのに対し、こっちはアルバムの主であるリチャードD・ジェイムズことAPHEX TWINの素顔なんだから。この悪意に満ちた笑顔。そして(ある意味)そのジャケット同様の内容。この音にして、このジャケットあり、みたいな。ホント、絵と音がピッタリ一致したアルバムだと思います。

APHEX TWINが1996年秋にリリースしたこのアルバム。APHEX TWINにおける名盤はそれまで(いや、今でもか?)「SELECTED AMBIENT WORKS」シリーズだ、みたいに言われてた(る?)んだけど、確かにそれらのアルバムも今聴いてもホントに素晴らしいし、その後のテクノ・シーンに大きな影響を与えたと思うんだけど‥‥個人的に一番好きなのが、実はこのアルバム前後‥‥つまりこの『RICHARD D. JAMES ALBUM』の前作にあたる『…I CARE BECAUSE YOU DO』(95年)以降のアルバムなんですよね。リスニング系というか音響系的なアンビエントものよりも、単純にこの「知的さとキチガイさとの紙一重」な感じが好きなんですね。もっと言っちゃえば、このアルバムで聴けるドリルンベース・サウンドや、そこに乗る美しいメロディであったり、所々に挿入されるオーケストレーションだったり、そういう「美」的なものと「汚物」的なものとを融合させた独自の音楽性が個人的にツボだったりするわけです。ま、このアルバムが好きって人は大体そういった点が好きだ、と言うと思うんですが。そして何よりも、俺がこのアルバムで初めてAPHEX TWINを知ったってのも大きいのかもしれませんね。しかも第一印象、今とは正反対でかなり悪かったんですけどね‥‥

アルバムがリリースされてから半年以上経った97年初夏。当時俺は仕事もしないでプー生活を送っていて、しかもほぼ引き篭もり気味な毎日。そんな中、ある1通のダイレクトメールが届きます。それが「FUJI ROCK FESTIVAL」初年度の告知。レッチリやレイジといった中にMAD CAPSULE MARKETSやGREEN DAY、WEEZER、FOO FIGHTERS、そして何故か当時LUNA SEAだったSUGIZOの名前もあったりして‥‥気づけば友人と共にチケットを申し込んでたんですね、プーにも関わらず。

で、その出演者の中にAPHEX TWINの名前もあったわけ。俺は名前しか知らなくて、一緒に行く予定だった友人がたまたまテクノ系強くて「これ、絶対に気に入るから聴いてみ」といって貸してくれたのが、この『RICHARD D. JAMES ALBUM』だったんですよ。んで、聴いてみるんですが‥‥何故か受け付けなかったんですね。同じく出演が決まっていたAPHEX TWINの盟友SQUAREPUSHERの方は一発で気に入ったのに‥‥今でも何故あの時受け付けなかったのか、正直判りません。

その後、APHEX TWINとはシングル『COME TO DADDY』や『WINDOWLICKER』といったシングルとの付き合いはあったものの、アルバムに手を出すのはもっと時間が経ってから‥‥多分00年頃だったかな。近所のCD屋のワゴンセールでこの『RICHARD D. JAMES ALBUM』が売られていたわけですね。で、何故か買ってしまったんですよ、聴いた当時は気に入らなかったくせして。300円だったから、ってのもあると思うんですが‥‥急にこのジャケットに惹かれてしまったんですね。そして、その内容すら全く覚えていなかった俺は、再びこのアルバムをプレイヤーに載せる訳ですが‥‥まんまとハマってしまうわけです。その後は上記の通り、一通りのアルバムを揃えるに至るわけです。当然、現時点での新作『DRUKQS』(01年)や、先日リリースされたリミックス・ワーク集『26 MIXES FOR CASH』(03年)も買いましたし、01年のエレクトラグライドや02年の朝霧JAMでもリチャードのDJプレイを生体験し、その訳判らなさに更に惹かれていったわけです。

しかし、俺が一番この人に興味を持った切っ掛けが、実は音そのもの以上に‥‥俺と同い年(1971年生まれ)という点だったということは、ここだけの話にしておいてくださいね?

再びアルバムの話に戻りますが‥‥正直、このアルバムでストレートに踊り狂うことは難しいと思うんですよ。踊り難いリズムパターン、所々分断されるリズム‥‥テクノというと規則的なビートがまずあって、そこにシンセのメロディやら何やらのウワモノが載るというイメージがあると思うんですが、そういう既成概念を覆すのがAPHEX TWINの音楽‥‥というか、既にAPHEX TWINというひとつのジャンルが出来上がってしまってると言っていいと思います。そしてそういったデタラメなリズムの上に載るウワモノ‥‥シンセのメロディだったり児童コーラスだったりオーケストレーションだったり‥‥の美しさ。その対比が常にこの人の中には存在する。「Peek 824545201」のような暴力的なリズムを持った曲の後に「Fingerbib」みたいな美しいメロディを持った曲が登場する、この辺りに惹かれるわけですよ。どっちか一方だけではダメなんですね。いや、そういう両極端なのも好きなんですが(ある意味、リチャードのDJプレイは極端過ぎですからね)‥‥とにかく、このアルバムを聴いて判断してもらうのが一番ですね。テクノのひとつの流れをまたしても作ってしまった重要作品ですからね(そしてその流れは、エレクトロニカと繋がっていくわけで)。

リチャードの曲に合わせてフロアで踊るのも好きなんですが‥‥やっぱりどうしても「ベッドルーム・テクノ」っていうイメージが強いですよね。密室で、ヘッドフォン使って聴く方がこのアルバムには合ってるんじゃないか、と‥‥そういう意味では、実はこの人のやってることって『SELECTED AMBIENT WORKS』シリーズ時代から一貫してるのかな?なんて思ったりして‥‥。



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投稿: 2003 04 08 12:00 午前 [1996年の作品, Aphex Twin] | 固定リンク