BUCK-TICK『Mona Lisa OVERDRIVE』(2003)
BUCK-TICKがメジャーデビューして既に15年以上経っているわけですが、その期間特に落ちぶれることもなく常に第一線で活躍し、根底にあるポリシーは守りつつ、装飾を時代時代によって変化させ続け、尚かつメンバーチェンジのない不動の5人で活動をコンスタントに続けている‥‥考えてみると、とても不思議なバンドなんですよね。ファンに怒られるのを承知で書きますが、これほどファン層の見えてこないバンドというのも珍しいのではないでしょうか? 例えば80年代末からのバンドブーム。そして90年代中盤のビジュアル系ブーム。BUCK-TICKはそのどこにも属すことなく、常にマイペースな活動を続けていた(ま、バンドブーム時は多少恩恵を受けたと思いますが)。シングルを出せば常にトップ20入りするし、アルバムもトップ10入り。ツアーは常にソールドアウトだし、武道館をも満杯にする。けど、少なくとも自分の周りには「最近BUCK-TICKを好きになった」という若いファンはあまりいない、いるとすると自分と同年代の、古くから彼等を追っている年季の入ったファン‥‥恐らくこういったファンによって支えられているんだろうけど、果たして本当にそれだけなのかなぁ、と。常々不思議に思ってたんですよねぇ。
自分に関して言えば、BUCK-TICKは90年代中盤まではちゃんと追ってたんですが、ここ数年は完全にスルーしていた存在でして。ところが昨年、急に彼等の旧譜を聴き、自分の中で彼等に対する再評価が高まりつつあったんですね。そして今年に入ってシングル「残骸」がオリコンシングルチャートの6位を記録。おおっ!となったわけですよ。それで是非アルバムを聴いてみよう‥‥ということになりまして、2月にリリースされたこの『Mona Lisa OVERDRIVE』を先日購入。結構な頻度で現在に至るまで聴いています。
まず驚いたのは、基本的には彼等の音楽性ってある時期から一本筋の通ったものなんですよね。初期のゴス+ビートロック的サウンドもまた捨てがたいですが、90年代以降は常に現在のようなスタイルを貫いてきたように思います。アレンジ等の装飾はその時代時代にフィットしたサウンドを取り入れているので、一聴するとまず目新しさを感じますが、メロディのセンスは相変わらずだし、特に「流行モノに身売りした」というような印象は受けないんですよね。そういう意味では、例えばPRIMAL SCREAM辺りに共通するものを感じます。
普通にカッコイイ。もはやこれを「ビジュアルロック」だの「ゴス」だのといった名称で呼ぶ人もいないでしょう。既に「BUCK-TICKブランド」を確立しているし、誰の真似でもないオリジナリティがしっかり感じられます。そういえば、なかなかフォロワーが登場しないのもこのバンドの音楽性の特徴なんですよね。もしかしたらフォロワーはいることはいるのかもしれないけど、そういったバンドが登場した際には既にBUCK-TICK自体更に次の地点に到達してるから、大した才能のないフォロワーはそこまで追いつけずに終わってしまうのかも‥‥ってのは考えすぎ?
あ、久し振りに聴いて驚いたのは、思ってた以上に今井寿がボーカルを取ってる曲が多かったこと。1曲とかならまだしも、数曲入ってるもんなぁ。作詞に関してもボーカルの櫻井敦司とほぼ同数(5曲。櫻井単独は5曲で星野との共作が1曲)というのも、もしかしたらこのアルバムのポイントなのかな? ここ数作の彼等を知らないので何とも言えないけど、この今井の比重の高さが新作のキーポイントなのかもね。
サウンドのカッコ良さは相変わらずで、もしかしたら昔よりも更に判りやすくなってるかも。1曲目「ナカユビ」のATARI TEENAGE RIOTばりの高速デジタルビートをバンドサウンドに取り込んだスタイルはさすがだし、シングル曲「残骸」の迫力は言うまでもなくだし、そのC/W曲だった「GIRL」のメジャー感溢れるポップセンスも脱帽モノ。そして「Sid Vicious ON THE BEACH」はそのタイトルの通り、ちょっとSEX PISTOLSっぽいパンクソングなんだけど、それでいてグラマラスなイメージを与えるのはやはり今井のボーカルのせいでしょうか。星野作曲の「BLACK CHERRY」も同じグラマラスでもまた違ったイメージを与えてくれるし、攻撃的な疾走ナンバー「原罪」や星野作曲のドラムンベース的シーケンス音が印象的な「MONSTER」等、とにかく印象的な曲の多いこと多いこと。「LIMBO」なんてモロにテクノだし、「BUSTER」は近作でのPRIMAL SCREAMと同じ文脈で語ることもできるし。多分、同時期に登場したバンドでここまで多彩な曲を書けるのは、他にいないんじゃないだろうか……とさえ思える程、とにかく聴いてていろんなことを考えさせられるアルバムだったなぁ。デビュー当時を知ってる人達(自分を含む)にとって、このアルバムの内容って本当に興味深いものなんじゃないでしょうか?
80年代後半に登場したバンドで、メンバーチェンジすることなく未だに第一線で活躍しているのって、間違いなくBUCK-TICKだけですよね。しかも解散も再結成もしてないわけだし。そしてフォロワーさえ生み出さない、唯一無二の存在。デビュー時、あの髪型を見て散々バカにしてた奴らは現在のBUCK-TICKを見て、今何を思うのでしょうか? 是非聞いてみたいね。そしてある意味、バンドブームの勝ち組は、奥田民生でもなく寺岡呼人でもなく、このBUCK-TICKなのでは?とさえ思えてくる今日この頃。これを読んでいるあなたは、BUCK-TICKと聞いて何を思い浮かべ、そしてこのアルバムを聴いてどう感じるのでしょうか。

▼BUCK-TICK『Mona Lisa OVERDRIVE』
(amazon:国内盤CD)
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