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2003/04/12

MARILYN MANSON『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996)

言わずと知れた、MARILYN MANSONの出世作となった'96年リリースのセカンド・フルアルバム。'95年に「SMELLS LIKE CHILDREN」というCDを出していますが、あれはアルバムではなくてあくまで「EP」扱いらしいですから、フルアルバムという意味ではこの「ANTICHRIST SUPERSTAR」が本来の意味でのセカンドアルバムということになります。プロデュースには過去2作同様、NINE INCH NAILSのトレント・レズナーが当たっていて、NINで養ったノウハウを見事に活かし、またマンソン自体の個性や特異性を見事に表現し切った傑作になっています。実際、このアルバムが切っ掛けで全米でも大ブレイクし(全米アルバムチャート初登場3位を記録)、翌'97年3月には初来日公演も実現させました。今や伝説となっているクラブ・クラスでの公演で、俺も最前列にかぶりつきで堪能した程です(トゥイギーに水かけられたりしましたが)。

このアルバムのリリース当時、俺の友人('70年代の王道ハードロック好き)が別の友人にマンソンを勧められたそうで、その時の例えが「NINがKISSやALICE COOPERをリミックスした感じ」だったそうで、あーなるほど、上手いこと言ったなぁその人と素直に思いましたね。「カバーした」ではなく「リミックスした」感じ。ちょっとしたニュアンスの違いのようで、実は全く違うんですよね。あくまでKISSやALICE COOPERは素材であって、それを独自の方法で料理した‥‥模倣したのではなくて、素材や部品を使って別の新しいものを作り上げる感覚‥‥この違いが判らないと、上の例えを信じて買っても「全然KISSやALICE COOPERっぽくないじゃないかよ!」って怒り心頭なんでしょうね(ってその友人が正しくそうだったんですが)。

このアルバムはそういった'70~'80年代の王道ハードロックと、'80年代末以降のオルタナロックを見事に掛け合わせ、王道とキワモノの狭間を行ったり来たりする、とても個性的な作品といえるでしょう。同じ頃、KORNやTOOLといったバンドのアルバムが軒並み全米トップ3入りをする中、この作品も同様に第3位を記録したんですが、それは決して物珍しさから生まれたヒットではなくて、ちゃんと内容の伴った作品だったからこその結果だったのです。そして、上に挙げた2組との大きな違いは、取っつきにくいビジュアル要素に反して、意外に親しみやすいメロディとサウンドを持っている点でしょうか。上記2組よりもポップ的要素が強調されているというか‥‥おいおい、これのどこがポップなんだよ!?って突っ込む人、絶対にいると思うんですが、いやいやかなりポップじゃないですか! 俺の中ではNIN同様のポップさを感じさせるバンドですよ。そしてそれを計算尽くでやってる点。既にエンターテイメントとして割り切ってやってる辺りには最初に名前を挙げたKISSやALICE COOPERとイメージがダブりますよね。きっとその例えをした人はそういった点からも、KISSやALICE COOPERとイメージが重なったんでしょうね。

例えば今やMARILYN MANSONの代表曲といえる"The Beautiful People"ひとつをとっても、あのリズム感といい、ギターリフといい、メロディらしいメロのない歌といい‥‥全てにおいて非常にポップではないですか? 勿論、ロック特有の躍動感は十分備わっているし、大音量でかかればクラブでもフロアを盛り上げるに十分だし。そりゃ、一緒になって口ずさむというタイプの曲ではないですが‥‥俺にとってはポップ。決してマニアックになりすぎず、それでいて消費される為のポップソングにもなり下がらず、ギリギリのラインでドシンと構える1曲。それが俺にとっての"The Beautiful People"という曲。ハードロックでもヘヴィメタルでもオルタナでもポップソングでもなく、単純に「ポップ」な存在。何かそれって"The Beautiful People"に限らず、このバンドを象徴する例えのような気がしますが、どうでしょうか?

KISSやALICE COOPERにも影響を受けていることは間違いないでしょうけど、それだけではなく'80年代のハードロックやヘヴィメタルの影響を受けていますよね。と同時に、同時期のニューウェーブやゴス、オルタナロックの影響も見え隠れする。俺と同年代のマリリン・マンソンことブライアン・ワーナーは、そういった音楽をリアルタイムで10代の頃に聴いてきてるはずなんです。IRON MAIDENが好きで、以前 "Number Of The Beast" をカバーしたい‥‥みたいな発言をしてたことがあったかと思うんですが、そういった影響をちゃんと出しつつも、'90年代に誕生したバンドとしての同時代性をちゃんと主張している、単なる過去の焼き直しに終わってない辺りはさすがかと。アルバムトップを飾るスラッシーな疾走チューン"Irresponsible Hate Anthem"といい、メロディが印象的なシングル曲"Tourniquet"といい、ライヴでのあのパフォーマンスが強烈に印象に残っているアルバムタイトル曲"Antichrist Superstar"といい、静と動のコントラストが素晴らしい"Angel With The Scabbed Wings"や"The Reflecting God"といい、インダストリアル色の強い"Cryptorchild"といい(この曲なんて次作への序章といったイメージがありますね今となっては)、ニューウェーブっぽい香りを持つ"Wormboy"といい、とにかく全てにおいて強烈な色を放っているし、印象深い曲ばかり。勿論、今挙げなかった曲も素晴らしいですし、所謂コンセプトアルバム的な壮大なテーマを持った作品集としても十分に楽しめるアルバム。そう、このアルバムから続く3枚のアルバムはひとつのコンセプト/テーマの元に作られた作品集で、時間軸はアルバムを追う毎に遡っていくようですが(つまり、このアルバムが所謂最終章的役割)‥‥って、その辺は後々のアルバムレビューで述べるでしょうから、その時まで取っておきましょう。

全体的なポップ度でいえば、後にリリースされる「MECHANICAL ANIMALS」や「HOLY WOOD」の方がより親しみやすいポップさなのですが、それでも「ANTICHRIST SUPERSTAR」はリリース当時、十分にポップな作品でした。そしてアルバムを重ねる毎に更に洗練されポップになっていき、それでいてロック純度も落ちていない点はさすがだと思いますね。このアルバムを聴いてMARILYN MANSONに対し苦手意識を持ってしまった人って多いようですが、そういう人が「MECHANICAL ANIMALS」や「HOLY WOOD」を聴いて、あまりの親しみやすさに驚いたという場面に何度か立ち会っています。自分にとってはこのバンドは常に‥‥そう、ファーストアルバムの時点から既にポップな存在だったわけでですよ(と同時にキワモノ的でもあったりしたんですが)。そんなバンドがこういうアルバムを作った。そりゃブレイクするでしょう普通。聴く人が聴けばちゃんと評価される。新しモノ好きが飛びついてブレイクしたんじゃなく、単純に音楽が評価された。俺はそう信じたいですね。

バンドにとってはこのアルバムこそが「3大コンセプトアルバム」の最終章であり、と同時にビッグネームへの仲間入りを果たした入り口でもある。そして、この先に待ち受けている受難への序章でもあったわけですね‥‥イメージ先行型なだけに、もっと音楽面で評価されてもいいはずなんですが。こんなにカッコいいハードロックアルバム、当時はあまり見かけなかっただけに無条件で飛びついたのが、つい昨日のことのように思い出されます。



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投稿: 2003 04 12 09:22 午後 [1996年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク