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2003/04/04

RADIOHEAD『MY IRON LUNG EP』(1994)

RADIOHEADが'94年秋にリリースしたEP‥‥というか、ミニアルバムがこの「MY IRON LUNG」。日本盤は未発売で、ヨーロッパ諸国にていろんな形態(CDシングルや今回紹介するEP形式等)でリリースされたようだけど、今回は現在でも比較的入手しやすくて、尚かつ最も聴いてもらいたい重要作品として、この8曲入りEPを選びました。だってさぁ、ここに入ってる8曲の内、6曲はその後のオリジナルアルバムにも未収録だし、何しろ‥‥ここが一番重要。本来リリースされるはずだったセカンドアルバムに収録予定だった楽曲群がここで聴けるんだから。

RADIOHEADは'93年リリースのファーストアルバム「PABLO HONEY」に続くセカンドアルバムを'94年からレコーディングし始めました。当初は同年5月にシングルを、9月にアルバムという予定だったらしく、プロデューサーにジョン・レッキー(STONE ROSESやKULA SHAKER等、'90年代のUKロックではお馴染み)を迎え、ファーストとはかなり内容の異なった「真の意味でのファーストアルバム」(トム・ヨーク談)を試行錯誤の中、制作しました。実際、5月にリリース予定だったシングルも"Just"と発表され、同時期に日本を含む極東ツアーの開始も発表されていました。が‥‥急遽、シングルは発売中止。ツアーのみが決行されることとなったのでした(この曲は後のセカンド「THE BENDS」に無事収録)。

この時の日本ツアーでは後のセカンドに収録される"My Iron Lung"、"Bones"、"Black Star"、"The Bends"等といった楽曲が既に演奏されていました。ということは、これらの楽曲は既にこの時点でレコーディングが終了していたということになります(実際に当時のインタビューでもメンバーはそう語っていたし)。にも関わらず、シングル発売は中止になった。何故か? その答えがこのEPと、そして後のリリースされた「THE BENDS」に隠されているのです。

このミニアルバムは後の「THE BENDS」にも収録されることになる"My Iron Lung"をリーダートラックとし、レコーディング初期段階に制作された6曲と、既に発表されていた代表曲"Creep"の弾き語りアコースティックバージョンの計8曲から構成されています。"My Iron Lung"はご存じの通り、その後のRADIOHEADを占うかのような、ファーストとは異なって混沌としていて複雑怪奇で、それでいてグランジっぽい暴力性とセンチメンタリズムが同居した、突然変異のような1曲。この初期段階でレコーディングされた曲の中には他にも"Just"という、やはりその後の代表曲と呼べる硬質ナンバーも含まれていることから、レコーディング初期にはかなり実験的で、UKギターロックバンド的な色合いが後退して、ある種プログレチックな方向へと進もうとしていたように感じられます。しかし同時に、ファーストに入っていそうなストレートな曲やメランコリックなギターロックも制作されていました。"The Bends"等はそのままアルバムに収録されましたが、残念ながら選外となってしまったのがこのEPに収録された6曲ということになるようです。つまり、ここの6曲+「THE BENDS」の一部の楽曲こそが、本来セカンドアルバムとしてリリースされる予定だった曲達なのです。

既に我々は「THE BENDS」というアルバムを知っているし、散々聴いてしまっているわけで、あの傑作を前にするとここに収められたアルバム未収録の6曲は印象が薄いと言わざるを得ません。が、ファーストの楽曲群と比べれば確かにクオリティーが高いし、違った次元に進もうとしていることがちゃんと伺えます。既に「THE BENDS」でやろうとしていることの半分はここに表現できているし。けど、何故「THE BENDS」というアルバムが素晴らしかったかというと、そこには"High And Dry"や"Fake Plastic Trees"、"(Nice Dream)"といった「人間らしい温かみ」が存在するからです。勿論、それまでのRADIOHEADにもそういった要素はあったけど、ここまで包み込むような温かさは正直感じなかったと思うんですよ。けど、レコーディングを中断してツアーをして、そして何が足りなかったのかを把握して改めてレコーディングに向かった時、こういった楽曲が生まれたのかもしれませんね。そういう意味ではこれで正解だったと思うし、だからこそRADIOHEADはああも成功できたのでしょう。そして、そういった楽曲がその後の彼等の重要な要素になったことは言うまでもありません。

如何にセカンドアルバムが重要な1枚となるか、彼等はよく知っていました。だから彼等は2枚分ものレコーディングをした。そして実質上3作目となる「THE BENDS」をセカンドアルバムとしてリリースして、ファーストリリース時よりも更に高い地位を得た‥‥そしてよりアーティスティックに、そしてより混沌とした音楽性を追求することとなるのです。

この続きは「THE BENDS」のレビューで語ることにしましょう。



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投稿: 2003 04 04 04:59 午前 [1994年の作品, Radiohead] | 固定リンク