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2003/04/05

RADIOHEAD『THE BENDS』(1995)

RADIOHEAD正真正銘のセカンドアルバム。1年間通して2回に分けてレコーディングされたことで、とても充実した内容となったこのセカンドアルバムで、RADIOHEADはいよいよ「イギリスを代表するロックバンド」として頭角を現します。既に「MY IRON LUNG」レビューで書いた通り、本来ならこのアルバムはサードアルバムとしてカウントされるべき内容なのですが‥‥ま、「MY IRON LUNG」はこのアルバムの為の習作ということにでもなるのかな(にしては贅沢な)。とにかく、未だに傑作として挙げられることの多いアルバムだと思います。「OK COMPUTER」以降の、ポストロック然とした路線・作風が苦手だという人にとっては、やはりこのアルバムまでが許容範囲ってことになるようで、『「THE BENDS」は好きな曲が多いんだけどなぁ‥‥』って声は実際によく耳にしました。まぁ確かにギターロック然とした曲もあれば、かなりプログレッシヴな作風の曲もあり、尚かつ歌モノもある。根底にあるものはその後の作品でも変わってはいないはずなんですが、タッチの違いなんでしょうね。

「PABLO HONEY」との大きな違いは、既に1曲目"Planet Telex"のイントロからして、強烈に表れています。ストレートなギターロックが多かったファーストと比べ、リズム的にも凝ったものが増えてきたのがセカンドの特徴かも。ミドルテンポで重厚感のあるリズムを持った"Planet Telex"を頭に持ってきたことは、象徴的かもしれませんね。そのまま比較的ファーストの路線に近い"The Bends"へと続くんですが、ここでの歌の力強さは前作の比ではありません。アレンジ的にもかなり凝った作りになっている辺りは、その辺のギターロック/UKロックバンドと一緒にすんじゃねぇよ!的な拘りを感じさせます。勢いに任せるのではなく、完全に作り込まれた‥‥という印象が全体的に感じられますよね(そしてそれはアルバムに限ったことではなく、ライヴにおいても完全再現されるという徹底振り。圧巻ですよね)。

そしてアルバム最初のハイライトとなるバラードナンバー"High And Dry"と"Fake Plastic Trees"の2曲。共にシングルとしてもヒットしたナンバーで、ファーストに足りなかった「何か」がここで完全に表現されたように感じます。それは「弱さは弱さとして認める潔さ」だったり「メランコリックさを堂々と表現することを恥じない心」だったり「歌本来の持つ力強さ」だったり‥‥とにかく "Creep" という楽曲の大成功によってどこか躊躇していた点をここで完全に克服したといっていいのかもしれません。勿論、ああいった「強弱法」を活用した手法ではなく、もっと違った表現方法を用いることによって、バンドとしては更にステップアップすることになったのです(ま、さすがに今現在、そういった "Creep" 的なものを彼等に求めるファンはいないでしょうけどね)。

最初の山場を迎えた後、独特な節回しを持った豪快なロックチューン"Bones"を経て、再びメランコリックな"(Nice Dream)"へと続きます。後半の展開がやはりプログレッシヴなのが、当時の彼等らしいというか‥‥こういったアコースティックを基調とした楽曲が増えたのも、このセカンドの特徴といえるでしょう。その後のアルバムでよりポストロック方面へと移行していくことを考えると、本当に「歌」を大切にした作品集だな、と今更ながらに実感します。

アルバム後半戦となる7曲目にはレコーディング初期に録音された、グランジ的でプログレチックで狂気すら感じさせる"Just (You Do It To Yourself)"が登場。イントロの天にも昇っていくかのようなコード進行が、かのKING CRIMSONの名曲 "Red" を彷彿させることからも、如何にプログレチックかが伺えると思います。とにかくこの曲はジョニー・グリーンウッドのギタープレイの強烈さでしょう。ここで一気に彼の個性が開花したといっていいでしょう。特にライヴではもっと凄いプレイを聴かせてくれるので、是非ライヴビデオやブートレッグで確かめてみてください(ま、夏の来日で確かめてもいいんですが、その際に演奏されなかったら困るので、とりあえず現存する音源でチェックを)。そのまま同じくヘヴィな"My Iron Lung"へと続き、ヘヴィ&プログレッシヴ2連発。RADIOHEADの新しい二面性(ハートウォーム・サイドとヘヴィサイド)が同居するという意味では、本当に優れた作品だと思いますよこのアルバムは。ここがアルバム第二のピークでしょうね。

激しい曲が続いた後を受けて、同じような空気感を持った穏やかなナンバー"Bullet Proof...I Wish I Was"で、後半戦はあるひとつの方向性が見つかります。前半の温かさと比べ、後半は火傷しそうな程の冷たさを感じます。そういう流れが一環しているかのようなこの曲に続いて、若干前半戦的な色合いの"Black Star"は途中豪快なギターが入るものの、やはり「歌」を大切にしたメランコリックナンバー。こういうRADIOHEADが好きって人、意外と多いんじゃないでしょうか? そのまま"Sulk"へ‥‥こういった曲を聴くと、一時期RADIOHEADをR.E.M.と比べたがる人がいましたが、それよりもU2に表現方法が近いんじゃないか‥‥という気がしてくるんですよね。それはトム・ヨークの歌声が所々、ボノと被る瞬間があるからかもしれませんね。演奏自体は全くの別物で、R.E.M.ともU2とも似てないんですけどね。

最後の曲となる"Street Spirit (Fade Out)"はアルバムを締め括るに相応しい、美しいメロディと、悲しくなるくらいにメランコリックな表現、そしてコンクリートのような冷たさを感じさせる演奏‥‥何なんだろう、この絶望感は!?と初めて聴いた時はよく思ったものですが、その後の路線を経た今聴くと、本当にメランコリックなメロディを持った、美しい曲だなぁと素直に思いますね。初めてライヴで聴いた時はマジ泣きしそうになる程胸を打たれた記憶があります。このアルバムがリリースされた'95年というと、それこそイギリスはOASISやBLURといったバンドが大ブレイクし、ブリットポップなる「姿なきブーム」に踊らされていた頃。と同時にアメリカではGREEN DAYやOFFSPRINGといったパンクバンドがチャートを席巻していた時代。そんな中、RADIOHEADはこういった異色作と呼べるアルバムで全英を制覇し、アメリカでもトップ40に入るヒットを飛ばしたのですから、如何に彼等がブリットポップ・ブームから離れた地点にいたかがご理解いただけるかと思います。大体、OASISなんかはその後、有象無象のフォロワーを生み出したのに、ことRADIOHEADに関しては‥‥ねぇ?

「I~」で歌われることの多かったファーストと比べ、二人称(「YOU」)や三人称で表現される楽曲が明らかに増えたのも、この作品の特徴。基本的なテーマは変わっていないけど、その表現方法がより多岐に渡るようになり、トム・ヨークのストーリーテラーとしての表現力が更に向上した結果、より多くの人に歌が届くようになった‥‥そしてその歌詞には、更に多くの人に届くようなメロディが付いた。ポップソングとしても、そしてロックとしても十分に機能し、更にオルタナティブであり、それでいて王道でもある。いろんな要素を飲み込むことによって、より混沌とした空気感を漂わせるようになったRADIOHEAD。「イギリス人はシェイクスピアの頃から狂ってる」なんて言った人もいましたが、本当にそんな気がします、彼等を見てると。

アルバムとして考えると、最も好みな音を出してるのがこの作品。とりあえずRADIOHEADを聴いてみようって人は、まずはこのアルバムから聴いてみるといいかと思います。それによってギターロック的な方向に進むか(「PABLO HONEY」)ポストロック的な方向へ進むか(「OK COMPUTER」や「KID A」)は、これを聴いたあなたの趣味趣向ってことで。個人的には「OK COMPUTER」と並んで、'90年代のロックを代表する作品だと思ってます。UKロック好きにも、昨今のヘヴィロック好きにも、ポストロックやプログレに興味を持っている人にも、そして歌を愛するあなたにも聴いて欲しい1枚。



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投稿: 2003 04 05 05:02 午前 [1995年の作品, Radiohead] | 固定リンク