ZIGGY『HOT LIPS』(1988)
'87年10月にデビューしたZIGGYが約半年後('88年5月)にリリースしたセカンドアルバムが「HOT LIPS」。こんなに短いサイクルでリリースが続いたものの、この時点で既に彼等は結成後4年近く経っているわけで、デビュー時のラインナップになってからも2年近く経過し、オリジナル楽曲もかなりの数ストックしていたはず。なのでファーストもセカンドも基本的にはアマチュア時代から演奏してきた楽曲がメインになっているのではないでしょうか。
にしては、このセカンドの楽曲は‥‥サウンド・プロダクションのせいもあるんでしょうけど、かなり硬質な印象を受けます。ファーストがスカスカなロックンロールサウンドだとしたら、このセカンドはもっと煌びやかで派手なハードロックといったイメージでしょうか。いきなり強烈なシャウトで腰を抜かしそうになる"HOT LIPS"でアルバムはスタート。演奏のテンションもかなり高く、とにかく隙がないといった印象。この曲と双璧を成すハイテンション・ハードロックナンバーが6曲目の"PLAYING ON THE ROCKS"。ゲストプレイヤーとして、今は亡きジョニー・サンダース(元NEW YORK DOLLS)がこの曲でギターソロを弾いてるんですが‥‥未だにどれがジョニーのソロなのか‥‥何か噂では、ワンテイク、10分程適当に弾いて終了したという話なんですが‥‥本当でしょうか。アナログでいうところのA面・B面のそれぞれ1曲目となる楽曲なだけに、かなり強烈な印象を与える2曲ですね。
かと思えば、前作にありそうでないタイプの"WHAT DO YOU WANT?"とか、最近またよく演奏される"BORN TO BE FREE"とか‥‥メロディはかなりポップなんですが、演奏が非常にテンション高め(歌もハイテンションなシャウト多用だし)。ファーストのレコーディング後からの短期間で、如何にバンドとして成長したかが伺えますね。
かと思うと、またまたAEROSMITHに似た曲あるよね!?的ブルージーなブギーナンバー"HIGHWAY DRIVING NIGHT"みたいな曲もあって、ちょっとホッとしたりして。しかし、このアルバム最大の山場、というか‥‥良い意味でも悪い意味でもキーポイントとなる楽曲は、シングルとしてもリリースされた"GLORIA"でしょう。最初はアルバムと同時期にシングルカットされたものの、ヒットとはお世辞にも呼べない程度のセールスしか記録できませんでした。が、それから1年後。'89年7月からスタートしたテレビドラマの主題歌として再リリース後、記録的なヒットとなってしまったのです。確かオリコンで4位くらいまで行ったのかな? 放送終了間際の「ザ・ベストテン」にまで出演する程の「ZIGGY現象」への布石となってしまったのです(そう、良くも悪くもね)。前作収録の "I'M GETTIN' BLUE" 路線の延長線上なのですが、ロックとしても、そしてポップスとしても十分に成立してしまう程のメロディと歌詞。そしてタイミング良く訪れたバンドブーム。更にトレンディドラマ主題歌への起用‥‥偶然に偶然が重なった結果といえば聞こえがいいですが、結局は楽曲の良さが全てだったわけです。だってさ、この曲のPVとか観たことあります? 俺、高校生だった当時、音を切ったテレビを点けっぱなしにして試験勉強してたんだけど、ふと画面に目をやると‥‥一瞬MOTLEY CRUEの新しいPVかと錯覚した程、ケバケバした衣装&メイクの男達がステージ狭しと動き回ってる映像が飛び込んできて、暫くしてからそれがZIGGYだと気づいた程、ちょっと見には海外のハードロックバンドと殆ど同じルックスなわけ。絶対にビジュアルから入っていったら音まで辿り着いてないはず。そういう意味では一般的には殆ど無名だったZIGGYがドラマ主題歌に起用されヒットしたのは、やはり音楽が全てだったわけですよ。
勿論、このアルバムにはその他にもポップなシャッフルナンバー"LAST DANCEはお前に"とか、その後の彼等を考えれば非常に異色作といえるだろう"TOKYO CITY NIGHT"、流れるようなメロディが素晴らしいポップロック"POOR BOY"、哀愁のバラード"STARTIN' AGAIN"等々、素晴らしい楽曲が沢山収録されているわけですが、とりわけその中でも"GLORIA"が主題歌に選ばれたとことで、バンドに成功を運び込んだのと同時に、その後「見えない亡霊」との戦いが延々続くことになったんですから、皮肉なもんです。ま、そのお陰でバンドとしてもひと皮もふた皮も剥けていくわけですから、結果オーライなのかもしれませんね。
基本的な音楽スタイルはファーストアルバムの時点で既に完成していただけに、その後の彼等は如何にその基本スタイルからバンドとしての幅を広げていくか、あるいはそのスタイルを更にビルドアップすることでより深いものにしていくか、といったポイントがこのセカンド以降の課題なわけですが、"GLORIA"1曲で語られてしまうことの多いこのアルバム、逆にそれ以外の曲の方がグラマラスなロック/ハードロックとしては面白い、と言っておきましょう。って、普通のロックファンならバランス良く楽しめる作品ですけどね。
"GLORIA"大ヒットも今は昔。バンドは知らないけど曲は聴いたことがあるって人も未だに多いってことは、既に普遍的名曲の仲間入りを果たしているってことなんでしょうね。その割りに意外とカバーされる機会の少ないこの曲。もっと本家がバシバシと演奏してもいいんじゃないでしょうか!?(って最近のステージでは結構やってくれてるようだけどね)

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