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2003/04/25

ZIGGY『NICE & EASY』(1989)

  前作「HOT LIPS」から10ヶ月振りとなる、'89年3月リリースの通算3作目のアルバム。その10ヶ月の間、ZIGGYは何をやっていたかというと‥‥ツアーに次ぐツアー、そして'88年秋には初めてのシングルらしいシングル(それまでのシングルはアルバムからのリカットといった印象が強かった)「SING MY SONG」をリリースし、チャート上でもまずまずの成功を収め、更に翌年2月にリリースされたこのアルバムからの先行シングル"ONE NIGHT STAND"がトップ10に届きそうな勢いでヒットを飛ばしたのです。過去2枚のアルバムが好意的に受け入れられ、更にシングル曲も好調、ツアーもどんどん大規模になっていき、巷ではバンドブームなる胡散臭いムーブメントが‥‥追い風のみで遮るものは何もない状態のZIGGYは、このサードアルバムこそが真の意味での勝負作になることは判っていました。だからなのかどうか判りませんが‥‥彼等は念願の海外レコーディングを決行します。しかもその土地に選んだのが、当時のロックシーンでも主流といえるであろうロサンゼルス。GUNS N'ROSESやMOTLEY CRUEといったバンドを生んだ街でもあり、また'80年代初頭から盛り上がっていたLAメタルの中心地でもあるこの土地で、彼等は作業を行ったのです。

  そのせいもあってか、全体的にかなりカラッとした音像を持つこのアルバム。それまでの楽曲に強く出ていたウェット感が後退し、かなり埃っぽいサウンドになっています。例えば先にシングルでリリースされた"SING MY SONG"ひとつとっても、このアルバムでは再レコーディングされていて、シングルバージョンはHANOI ROCKS直系の、ポップでウェット感のあるロックンロールといったイメージだったものが、このアルバムバージョンではかなり荒々しい、男っぽくてぶっきらぼう、それでいてほんのちょっと優しさを感じるアレンジ‥‥所謂「LAバージョン」になってます。個人的趣味で申し訳ないですが、もう完全にアルバムバージョンの方がカッコイイ。シングルの野暮ったいテイクも捨てがたいんだけど、完全に「当時のバンドの勢い」を真空パックしたかのようなアルバムテイクの方が数段優れてると思うんですね。もしこのアルバムにあのシングルバージョンがそのまま収録されたとしたら、かなり浮いた存在になっていたはずだし、アルバムとしてのトータル性を考えた場合、やはりLAで再録音したのは当然だと思うし、実際シングルバージョンを超えてるんだから問題ないと思いますよ。一粒で二度おいしい程度に思っておけばいいんじゃないでしょうか。

  当然、他の曲もこういったストロングスタイルの楽曲が多く、いきなり「またAEROSMITHのパクリかよ!?」と腰を抜かしそうになる"GYPSY BLOODED"で勢いよくスタートするんですが‥‥これまでと違った印象でスタートするんですよね。ファンキーな曲調ってのも大いに関係してると思うんですが、ギターひとつ取ってもそのプレイがパワーコードによるリフではなくて、カッティングを多用したコードストロークがメインになってたり。明らかにバンドとして一段上に行こうとしてるのが見て取れます。続く2曲目"WHAT CAN I DO? (UNDER CONTROL)"もちょっとこれまでと違った色合いを見せてるし、"STARDUST BLUES"みたいに「アメリカまで来たんで、それっぽいことやってみました」的な懐の深さを見せるかのようなノリの曲まで登場。かと思えば完全にLAメタルしてる"SHOUT IT OUT LOUD"や"TAKE THE CHAIN AWAY FROM MY HEART"みたいな楽曲もあるし。勿論、これまでの彼等らしいスリージーなロックンロール("ONE NIGHT STAND"、"SWEET SURRENDER"、"SWEET SOUND OF R&R")もあるんだけど、どっちかっていうと新境地的な楽曲の方が耳に残るんだよね、それが好きか嫌いかはまた別問題なんだけどさ。バラードタイプの曲にしても、これまでの泣かせるバラードとは違って今回の"CLOSE YOUR EYES"は更に枯れた、正に男のブルーズと呼べるであろうカントリータイプの楽曲だったりするんですよね。丁度当時はLAメタル系のバンド群が皆アコースティックギターを導入したバラードで大ヒットを記録してた時代なんですね。だからってわけじゃないだろうけど、ZIGGYも多少はそういった影響を受けたのかなぁ‥‥なんて穿った見方をしてしまいたくなる程、非常にロスに感化された作風になってるんですよ、このアルバム。前作以上にハードロック色の強い、非常に'89年という時代を反映させた作風になってるなぁと。

  サブタイトルにもある通り、初の海外レコーディングで相当気合い入ってたんだと思うのね。しかもここまでかなりいい感じで地位を上げてるわけだし、ここで一発大きいアタリを当てたいはずだし‥‥しかし、このアルバムはトップ10入りこそするものの、メンバーが期待する程の大ヒットにまでは至らなかったんだわ。けどまぁ、当時もそう思ったけど‥‥過去2作と比べれば明らかに異色作だし、まだまだ練り切れてないポイントも多いのよ。だもん、大ヒットを記録しないで当然といえば当然なんだよね‥‥嫌いじゃないんだけど。どうしても"SING MY SONG"が収録されてるってことで、俺の中では結構高い評価をしてるんだけど‥‥それにしてもさぁ、このアルバムが大ブレイクの切っ掛けにはならず、その数ヶ月後に1年前に出したシングル("GLORIA")がその起爆剤になるとは当の本人達、これっぽっちも思ってなかっただろうね。ま、バンドが頂点へと登り詰める前の、過渡期的作品集とでもいいましょうか。悪いアルバムではないんで、興味を持った方はファースト、セカンド、そして4作目「KOOL KIZ」の後にでも聴いてみてください。そして"SING MY SONG"の素晴らしさに仰け反ってくださいね!



▼ZIGGY『NICE & EASY』
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投稿: 2003 04 25 12:33 午前 [1989年の作品, ZIGGY] | 固定リンク