« ROVO『FLAGE』(2002) | トップページ | MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003) »

2003/05/03

KRAFTWERK『AUTOBAHN』(1974)

ドイツのエレクトロ・ポップ/テクノ・ポップ・ユニット、KRAFTWERKが1974年にリリースした4枚目のアルバムであり、彼等を全世界的に有名な存在へと導いた名作でもあるこの1枚。早くも来年でリリース20周年ですよ。っていうか、リリース当時は当然赤ん坊だった俺、そんなこと知る由もなく‥‥実際に彼等の名前を知ったのは'86年の「ELECTRIC CAFE」から。そしてこのアルバムに出会ったのはそれから約5年も後の話。何故このアルバムに手を伸ばしたかというと、単純にその頃プログレやその流れにある音楽に興味を持ったから。そしてもうひとつ‥‥翌'92年に自分が実際にホンモノの「アウトバーン」を通ることになったから。ま、こっちの方が理由としては大きいわけですが‥‥

話を元に戻しまして‥‥当然'74年なんて時代には「テクノ」なんて呼び名はなく、まだYMOのメンバーもそれぞれ別個でプロミュージシャンの道を歩み始めたか始めないかの頃。そんな時代に遙か遠くドイツの地では4人の若者が時代の最先端を行く技術を使って、全く新しい音楽を作り出した。それがこのアルバム‥‥タイトルからも判る通り、実際にドイツを通っている高速道路「アウトバーン(AUTOBAHN)」をイメージした、所謂コンセプトアルバムのような作品で、タイトルトラックとなる "Autobahn" は22分にも及ぶ大作。アナログ盤ではこれで片面1曲でしたからね。初めて聴いた頃('91年頃)、自分自身の中でも「これはテクノなのか、プログレなのか?」とかなりジャンル分けが難しいなぁと感じたアルバムでした。が、今となってみれば、そんなジャンル分けこそどうでも良くて、本当に時代の先端を行っていた凄いアルバムだなぁと感心するばかり。実際、リリースから約20年経った今聴いても、サウンド的には多少の古さを感じさせる箇所はあるものの、それでも新鮮に接することのできる1枚ではないかと思います。

実際、昨年末に来日した際にこのアルバムからそのタイトルトラックのショートバージョンを演奏したのですが‥‥若干今風のアレンジを加えつつも、基本構成は当時のまま。けど、やはり古さとかは全然感じなかったですよ。逆にね、これまでKRAFTWERKに触れてこなかった音楽ファンがこれを聴いても「面白い!」と純粋に楽しめるんじゃないでしょうかね。

単調な電子音によるリズムに合わせ起伏を持った展開をしていくタイトルトラックの素晴らしさもさることながら、久し振りに聴いて感動したのはアナログでいうB面の方ですよ。組曲となった4曲から構成されていて、重厚なイメージでエレクトロニカ的な匂いさえ漂わせる "Kometenmelodie 1" から、メロディアスでポップなシンセサウンドが耳に残る "Kometenmelodie 2" への流れも気持ちいいし、環境音楽的な電子音による "Mitternacht" から、生音(ピアノやリコーダー)を重視した癒し系サウンドを持つ "Morgenspaziergang" への流れも圧巻。所謂歌モノ的要素はほぼ皆無だし、パートによってはかなり気難しそうな印象を与えるサウンドを発してるんだけど、全体的には非常にポップな作りで、その後彼等が「テクノ・ポップ/エレ・ポップの元祖」と呼ばれるようになった理由がこの1枚からも十分に伺えることでしょう。

現代の耳で聴いてしまえば、全体的に使われているサウンドはひとつひとつを取り出してみれば非常にチープだし、ぶっちゃけ現代のテクノと呼ばれるジャンルの音楽よりもよっぽど無機質で高揚することもないようなものなのに、何故か心地よい。それってやはりその根底にあるメロディ(シンセのメインリフ等)が非常にポップで、尚かつ長尺な楽曲や組曲で構成されていながらも非常にポップ‥‥とにかく全てにおいてポップだからというのが大きいのでしょうね。

このアルバム、当時は母国ドイツのみならず、イギリスやアメリカでもチャートのトップ5入りをする大ヒットを記録しているんですね。恐らくその後ヘヴィメタルバンドのSCORPIONSが大ブレイクするまで、最もアメリカで成功したドイツのバンドだったんじゃないでしょうか?

で、最初の話題に戻りますが‥‥'92年2月、俺は初めてドイツの地に足を踏み入れ、そのアウトバーンを通ったわけですよ。これといった物珍しいものはなく、単なる高速道路なわけですが‥‥何故かひとり興奮していたのを今でも覚えています。当然、日本から持っていったこのアルバムのカセットをウォークマンで聴きながら通過しましたよ。バカバカしいかもしれないけどホントの話。けどさ、やっぱりそういうのって大切じゃない?(って思ってるのは俺だけ??)

よくBEATLESとかROLLING STONESとか、あるいはLED ZEPPELINやDOORSといった'60~'70年代に活躍した歴史的なバンドの作品を、初めて聴いてから何年か、何十年か経ってから聴くと、初めて聴いた時とは違った印象を受けるとか今まで気づかなかったところに気づくなんて声を聞くと思うんですが、それは何もロックバンドに限ったことではなく、このKRAFTWERKにも言えることなんじゃないでしょうか? 事実、俺は初めて聴いてから12年近く経った今聴いても、このアルバムは新鮮だし当時気づかなかったところに気づいたりして、あの頃以上に楽しめますよ。これから聴いてみようって人で、もしこのアルバムが気に入ったなら‥‥数年後、あるいは10年後にまた引っ張り出して聴いてみてください。自分が歳を重ねた結果なのか、単純にいろんな音楽を聴いてきた結果なのかは判りませんが、全く違った楽しみ方が出来るはずですから‥‥



▼KRAFTWERK『AUTOBAHN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 05 03 03:47 午前 [1974年の作品, Kraftwerk] | 固定リンク