MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003)
イギリスはブリストル出身のユニットMASSIVE ATTACKによる4作目のアルバム「100TH WINDOW」は、いろんな意味で興味深い作品となっています。まず前作「MEZZANINE」から約5年振り(考えてみれば、デビューした'91年からの12年間に、たった4枚しかアルバム発表してないのね、このグループ)。完璧主義だという噂通り、今回も一旦作ったものをお蔵入りさせて新たに作り直した、なんて話も伝わってきてます。納得いくまで作り込み、結局世に出回った時点で「既に過去のもの」「完全には納得いってない」なんていう具合に、早くも次の作品に目が向いているという程、作品作りに関しては拘りをもっているようですね(ま、それが当たり前なんですけどね)。
第二に。3人組だったはずのユニットからマッシュルームが脱退。で、ふたり(ダディ・Gと3D)で作ったのかというと、ダディ・Gは殆ど作品作りに携わっておらず(クレジットにも名前はありませんしね)、完全に3Dによる独裁体制で作られたのがこのアルバムのようです。更に9曲中4曲にてボーカルまで取っている、完全に「3Dのソロアルバム」と呼べるような内容になってます。
第三に。アメリカを除く日本やヨーロッパではこのアルバム、コピーコントロールCDとしてリリースされたという点。これによって「聴きたいけど聴けてない」という人も多いのではないでしょうか(ま、こうやってここでレビューしているということは、俺も無事アメリカ盤で入手することができたということですが)。今後、こういうアルバムがどんどん増えていくでしょうから、これはかなり大きな問題となるでしょうね。
さてさて、そういったポイントを踏まえつつ(ま、3番目は蛇足ですが)このアルバムを聴いていくと、やはり前作との違いに気づく人が多いんじゃないでしょうか。所謂「トリップホップ」とジャンル付けされることの多かった彼等のサウンドですが、その延長線上にありながらも、もっと昨今のエレクトロニカ的感触が感じられます。また、前作では要所要所で耳にできたギターサウンドも新作では減退し、ニューウェイブ的な暗く重苦しい空気感はそのままに、更に現代的なエレクトロニックサウンドになっているように感じます。比較という意味でいえば、前作よりも全体的に音が太いように感じられるのは、時代性なんでしょうかね?
また、そういったサウンドを更に盛り上げているのが、ゲストボーカルであるシンニード・オコナーでしょう。彼女は3曲("What Your Soul Sings"、"Special Cases"、"A Prayer For England")で共作及びボーカルを務め、彼女にしか出せない独特な雰囲気を楽曲の中に閉じこめています。残念ながら彼女はこの夏で音楽活動から引退するそうですが、そういう意味でもこれらの共演トラックは貴重なものになったのではないでしょうか。出来れば引退する前に、ステージ上で彼等の共演を観てみたいものですが‥‥
基本的には全体的にミディアム~スロウでダークな曲調なのですが、そこに急に登場する比較的アッパーな"Butterfly Caught"や、アジア的というかインド的なストリングスが印象的な"Antistar"がいいアクセントになっています。けど、やはりこのグループはダウナーな曲のイメージが強いですよね。ニューウェーブやダブ、ヒップホップ、エレクトロニカといったいろいろなダンスミュージックから影響を受けた結果生まれたものがトリップホップなのだとすると、もしかしたらここにあるサウンドはその先に進もうと試行錯誤して生まれたものなのかもしれませんね。ハッキリ言ってしまえば、その試みは大成功したとは言い難いですが(明らかに前作の延長線上であり、革新的な変化は見られないしね)、実はこのアルバムは5年間の空白の時間の中で、最後の1年で作られたものらしいんですね。つまり、それまでの4年間に作られたものは全てボツにして、最後の最後にもの凄い勢いで制作されたのがこの「100TH WINDOW」だというのです。実際、ボーカルトラックに関してはほぼ一発録りだそうですし。これだけのことが出来るんだから、それまでの4年間に作ったものって一体どんなことになっていたのか‥‥非常に気になるところです。
多分、本当の意味で「トリップホップ」というジャンルをぶち壊すような、新しいサウンドは次のアルバムまでのお楽しみということになりますが‥‥3Dは年内にもう1枚アルバムを出したい、とか言ってるそうですね。ま、ミュージシャンは基本的に嘘つきですし、基本的にMASSIVE ATTACKとDEF LEPPARDはオリンピックイヤーにアルバムが聴ければいい方くらいの気持ちでいるんで、当てにしないで待つことにしましょう。きっとその頃には「トリップホップ」や「ブリストル・サウンド」なる言葉すら風化してるんでしょうけど(ま、トリップホップ自体はもう使ってる人、殆どいませんよね??)‥‥
« KRAFTWERK『AUTOBAHN』(1974) | トップページ | モーニング娘。コンサートツアー2003春 NON STOP!@さいたまスーパーアリーナ(2003年5月5日 夜公演) »
「2003年の作品」カテゴリの記事
- LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2023)(2024.04.18)
- 2003年4月〜2004年3月発売の洋楽アルバム20選(2024.01.08)
- BLACK LABEL SOCIETY『THE BLESSED HELLRIDE』(2003)(2023.03.22)
- 2002年4月〜2003年3月発売の洋楽アルバム20選(2023.01.09)
- KISS『KISS SYMPHONY: ALIVE IV』(2003)(2022.12.05)
「Massive Attack」カテゴリの記事
- 2002年4月〜2003年3月発売の洋楽アルバム20選(2023.01.09)
- 祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)(2019.01.13)
- MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』(2018)(2018.12.10)
- 「FUJI ROCK FESTIVAL '03」DAY 3@苗場スキー場(2003年7月27日)(2003.07.31)
- MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003)(2003.05.04)
