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2003/05/07

METALLICA『MASTER OF PUPPETS』(1986)

既にHM/HRの枠を超え、「ロックの名盤」として挙げられることも多い、METALLICAが1986年に発表したサードアルバム。プロデュースにはバンド自身と共に、前作『RIDE THE LIGHTNING』でエンジニアを務めたフレミング・ラスムッセンが選ばれ、ミックスには後に「ヘヴィメタル界のプロデュース/ミックスにこの人あり」と呼ばれるようになるマイケル・ワグナー(DOKKENやSKID ROW等で有名)を迎えている、正しく「1986年という時代を象徴する」アルバムとなっています。

このアルバムの何が凄いって、まず最初に一介のスラッシュメタルバンドだったMETALLICAが、米・ビルボードのアルバムチャートのトップ30入り(29位)を果たしてしまったこと。これはいくら当時ハードロックやメタルがもてはやされていたからといっても、まさかスラッシュメタルがチャート上位に食い込むなんて誰も考えていなかったもんだから、さぁ大変。勿論、それまでの地道な活動が認められた結果というのもあるし、このアルバムがメジャー配給になってから初めて制作された作品ということで、プロモートする側も気合いを入れたというのもあるんでしょう。が、実際のところ彼等の凄みは口コミレベルで広まっていったというのが真相のようです。事実、ここ日本でも「何かMETALLICAが凄いらしい」ということで聴き始めたって人が多かったと記憶してます。

そのプロモーションに関しても、シングルカットやPV制作といった宣伝行為は一切なし。完全にツアーオンリー。1986年というMTV全盛期に逆行するかのようなバンドスタイル。これが逆にファンから支持された要因なのかもしれませんね。例えばLAメタル以降、ハードロック系のバンドがシングルをチャート上位に進出させ、またMTVを観ればメタル系のPVがバンバン流れるようになっていた頃、METALLICAはロックバンドの基本であるツアー生活を選択したわけです。

更にこのアルバムの凄みは、全8曲で54分というトータルランニングにも隠されています。1曲約7分前後。8曲中6分を超える曲が5曲(残り3曲は全て5分台)、更に8分台の曲が3曲も収録されています。それもただ長いだけではなく、緩急に富んだ、非常に計算された曲作り・アレンジが成されているのです。初期の彼等に対して「こんなのメタルじゃねぇよ!」と嫌悪感を露わにした純粋なメタルファンは、勢いだけでむしろパンクに近かった『KILL'EM ALL』を敬遠したわけですが、もはやこのアルバムを前にしたら何も言えなくなるんじゃないでしょうか? これを「様式美」と呼ばず何と呼べばいいの!?

如何にもMETALLICAらしい1曲目「Battery」にしろその曲構成は完全に様式美性を重視したものですし、続く9分近いタイトルトラック「Master Of Puppets」なんて起承転結のハッキリした、まんま様式美メタルですよね。そして前作収録の「For Whom The Bell Tolls」の延長線上にあり、昨今の彼等に比較的近いミドルヘヴィな「The Thing That Should Not To Be」でドンヨリさせ、再び起承転結が素晴らしい様式美ナンバー「Welcome Home (Sanitarium)」では涙さえ溢れそうなギターソロを味わうことができます。ここまでがアナログではA面。

続くB面は再び8分台の疾走スラッシュチューン「Disposable Heroes」からスタートし、鋼鉄リフの嵐が気持ちいい「Leper Messiah」、8分以上に及ぶ様式美性の高いインストチューン「Orion」と続き、最後は勢いで押しまくる高速スラッシュナンバー「Damage, Inc.」で終了。音楽性の高さを重視しながらも初期から続くスラッシュ路線はそのまま維持している辺りはさすがだし、何よりも各メンバーの演奏力・表現力が格段に向上してるのが手に取るように判ると思います。

間違いなくここで彼等はスラッシュメタルバンドとしての「ひとつの未来」を表現したのです。結果、後続達は更に模倣に走ったり、あるいは違った角度から攻めたりして「未来のその先」を見つけ出そうと試行錯誤を繰り返していくのです。しかしこのアルバムの登場が結局スラッシュメタルというジャンルの寿命を早めたのは間違いなく、その後は更に拡散方向へと進んでいくことは誰に目にも明らかでした。

そんな中、スラッシュ四天王と呼ばれた他の3バンド、SLAYERは更にエクストリームな方向へ突き進み、名盤中の名盤『REIGN IN BLACK』を生みだし、MEGADETHは古巣(デイヴ・ムステインはデビュー前のMETALLICAメンバーだった)を横目にジャズやフュージョン等の要素を取り入れた「インテレクチュアル・スラッシュ」なる更に複雑な方向へと足を踏み入れ、ANTHRAXは地元ニューヨークのストリートに根ざしたスケーターズ・ロック的な身軽さで、ヒップホップの要素をいち早く取り入れたり等して、それぞれ独自の道を進んでいくのです。しかし、そのどのバンドにもいえるのは、ヘヴィメタル以外の何ものでもないという事実。これを前提に彼等はそれぞれの道を進んでいくのでした。

そんな中、この名盤を引っ提げて、いよいよMETALLICAは1986年秋に初来日を果たすのですが……この直前に、その後の運命を大きく変える悲劇がバンドを襲います。デビュー前からのベーシストでありソングライティングの一端を担う、ベーシストのクリフ・バートンの事故死。来日する直前の出来事でした。しかし彼等はその悲劇をも乗り越え、即座に新しいベーシストを捜し、その後15年近くに渡りMETALLICAを支えることになるジェイソン・ニューステッドが加入することになるのです。そしてジェイソンを迎えた布陣での来日公演。中野サンプラザで観た彼等は衝撃以外の何ものでもありませんでした。1曲目の「Battery」、たった1曲でこの俺の人生を台無しに、いや、大きく変えてしまったのですから。



▼METALLICA『MASTER OF PUPPETS』
(amazon:国内盤

投稿: 2003 05 07 03:38 午前 [1986年の作品, Metallica] | 固定リンク