METALLICA『METALLICA』(1991)
METALLICAが1991年8月にリリースした約3年振り、通算5枚目のオリジナルアルバムとなる『METALLICA』。ジャケットが真っ黒なこともあり(実際には左上にロゴマーク、右下には蛇のイラストがありますが、実物じゃないと見にくいんですよね)通称『ブラックアルバム』『ブラックMETALLICA』と呼ばれるこのアルバム。恐らく多くの若いファンにとって「METALLICAといえば、このアルバム」というような代表作なのではないでしょうか。実際、そう言われる理由もよく判ります。このアルバムがリリースされた年(1991年)に、その後の歴史を大きく変えるアルバムが数枚リリースされています。NIRVANAの『NEVERMIND』、PEARL JAMの『TEN』、そしてMETALLICAのこのアルバム。どう重要なのかは『GARAGE INC.』のレビューにちょっと書いているので、ここでは省きます。
前作『...AND JUSTICE FOR ALL』及びシングル「One」で大成功を収めた彼等。レコーディングに長期間を費やし制作されたのがこのアルバム。まずプロデューサーが変わり、新たにボブ・ロックが起用されています。ラーズが「MOTLEY CRUEの『DR.FEELGOOD』のドラムサウンドを聴いてジェラシーを感じた」ことからボブに白羽の矢が立ったようですが、実際にはドラムサウンドのみならず、ボブ自身がミュージシャンだったことも影響し(ギタリストとしての腕前もなかなかのもので、その後自身が率いるバンドROCKHEADとしてアルバムもリリースしています。また新作『St.Anger』では脱退したジェイソンに替わりベーシストとしてレコーディングに参加しています)ギターサウンドにも尋常じゃないものを感じたのではないでしょうか?
とにかく、前作に感じられた不満が嘘のような、非常に低音が効いた重いサウンドを堪能できる1枚となっています(勿論ベースの音もハッキリ聞こえます)。更に楽曲の方にも新たな変化が感じられ、常にアルバムトップは速い曲がお約束だったMETALLICAが変化球を用意します。
アルバムトップにして第1弾シングルとなった「Enter Sandman」は、イントロこそクリーントーンでのアルペジオからスタートしますが(ちょっといつものパターンに近いかも)、その後ドラムやベースが入ってきても……そのままのミドルテンポのまま。そう、METALLICAお約束の転調・変拍子が全くないのです。結局終始同じテンポのまま。しかも非常に馴染みやすいポップなメロディ。これには多くのファンが驚いたのではないでしょうか。実際こうした要因が幸いし、この曲はチャートのトップ20入りし、もうちょっとで10位に手が届くところまでいきます。速くないけど、明らかにMETALLICA。聴けばMETALLICAだって判るもの。ある意味、その後の彼等の運命を決めてしまった1曲といえるでしょう。
アルバム全体を多くミドルヘヴィの嵐。速い曲といっても、それまでの高速スラッシュチューンと比べれば非常に「理性的な速さ」。メタルというよりはハードロックの範疇。そんな速い曲も3曲程度で、大半はミドル~スローの、引きずるようなヘヴィチューン。しかし、そのどれもが判りやすいポップな歌メロを持っているのですから、如何に彼等がこのアルバムに対して本気で取り組んだかが伺えるでしょう。
もうひとつ特筆すべき点は、初のバラードらしいバラードの登場でしょうか。これまでも『RIDE THE LIGHTNING』収録の「Fade To Black」や、比較的バラードに近い作風だった「Welcome Home (Sanitarium)」(『MASTER OF PUPPETS』収録)や「One」がありましたが、ここに収められた2曲(「The Unforgiven」「Nothing Else Matters」)は特にメタルらしい展開もない、純粋なバラードと呼べるでしょう。若干「The Unforgiven」の方がヘヴィメタリックな作風ですが、後者「Nothing Else Matters」に関しては「何もMETALLICAがこんな曲をやらなくても」と思わせるような作風となっています。それに伴ってか、ジェームズのボーカルも非常に味わい深いものになっていて、「これがあのがなるだけだった男の歌声か!?」と思わせる程に感情豊かな歌を聴かせてくれます。
決してポップフィールドで本格的な勝負に出たいと思ったからこうなったのではなく、単純にデビューして8年経った男達の「成長」であり「進化」だったのではないでしょうか。事実、この頃のインタビューでメンバーはよく「最近はメタルよりもシアトル周辺のバンドばかり聴いてるよ。SOUNDGARDENやALICE IN CHAINS、NIRVANAとかね」と発言しています。ちなみにこの頃はまだNIRVANA、『BLEACH』しか出てない頃です。俺もこの発言を目にして『BLEACH』を探し回った程ですから。
シングルをバンバン切っていったのも、この頃の特徴。「Enter Sandman」から始まり「The Unforgiven」「Nothing Else Matters」「Wherever I May Roam」「Sad But True」の順番で5枚ものシングルをリカットしているのです(そのどれもがトップ100入りを果たしています)。当然のようにアルバムは大ヒット。何せ全米チャート初登場1位ですから。100週近くトップ100内に居座って、当時だけでも1,000万枚近いセールスを記録した程。その後も売れ続け、12年経った今現在約1500万枚近いセールスを記録しているとか(しかもアメリカだけで。他の国を入れたらもっとですよね)。このアルバムが代表作と呼ばれる理由がお判りいただけましたか?
今聴くと聴きやすい、非常にポップなアルバムなんですが……リリース当時、20歳になったばかりの俺は、真夏の暑い日、リリースされてすぐのこのアルバムを買って帰り、狭いアパートの一室で大音量で聴いたわけですが‥‥その日は通して1回しか聴けなかったんですよ。もうね、当時の俺には重すぎて。サウンド的にも楽曲的にも、想像以上に重かったんですよ。で、それが60分前後続くわけで……そりゃ1回聴いたら胸焼け起こす程、お腹いっぱいになるわな普通。今じゃ考えられないだろうけど、ホントにそうだったんですよ。それくらいエポックメイキングな作品だったわけ、当時の俺にとって(その後、同じようなインパクトを与えてくれたのはGUNS N' ROSES、PANTERA、そしてNIRVANA『IN UTERO』くらいでしょうか)。
このアルバムに関してはホント語りたいことが山ほどあるんだけど、まずは聴いて欲しい。メタル云々じゃなくて、その後のロックの歴史を作った1枚として接して欲しいなぁ。偏見なしに、もの凄いアルバムの「尋常じゃないもの凄さ」を大音量で体感して欲しいと思います。
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