TEENAGE FANCLUB『A CATHOLIC EDUCATION』(1990)
スコットランドはグラスゴー出身のギターポップ/パワーポップバンド、TEENAGE FANCLUB(以下TFCと略)の記念すべきファーストアルバム。TFCといえばCreation Records出身というイメージがあるけど、このアルバムの頃はまだアラン・マッギーとは出会っておらず、Paperhouse という会社からのリリースとなっています(アメリカではかのMatadorからの発売)。レコーディング時のメンバーはノーマン・ブレイク(Gt & Vo)、レイモンド・マッギンレイ(Gt & Vo)、ジェラルド・ラヴ(Ba & Vo)、フランシス・マクドナルド(Dr)。レコーディング終了後にフランシスが脱退、その後の数作に参加することとなるブレンダン・オハレが加入することになります。
TFCといえばその独特な「ヘロヘロ」具合、それに相反するディストーションギター、そして甘いメロディとハーモニー。ディストーション度はその後どんどん減退していくわけだけど、ヘロヘロ具合は全作品を通して一貫されていて、特にこのアルバムでの彼らは以後の作品と比べてもひと味も二味も違う。インディーズからのリリース、そしてファーストアルバムという事もあってか、若々しく且つ攻撃的だ。攻撃的とはいっても、まぁそこはTFC。爆裂ディストーションの隙間からヘロヘロ声&美メロが聞こえてくるという具合。勿論、そこが最大の魅力なんだけど。
1曲目から「Heavy Metal」なんていうその筋の人達が勘違いしそうなタイトルのインストナンバーから始まり、そのままデビューシングル「Everything Flows」、続くタイトルトラック「Catholic Education」、ちょっとグラムロック入ってる?な「Too Involved」への流れは絶妙。その後に続くミディアムテンポの「Don't Need A Drum」のダラダラ感も捨てがたい。そう、この「ロック→マッチョでスマートでイカしてる音楽」というイメージを完全に覆す、ある種皮肉ったようなサウンドとスタイルが最高なのですよ、ここでは。勿論、そこには楽曲の完成度が高いから成せる技というのが大前提なわけですが。
このアルバムでは特にインスト曲が印象に残りますね(そういえば、続いて限定販売されたインスト比率の高いの2ndアルバム『THE KING』があることから、初期のTFCにとっては「インスト曲」というのはひとつの武器、重要な要素のひとつだったように思いますが如何でしょうか?)。聴くとカッチリしたというよりも、非常にジャム度が高いように感じます。その後リリースされる作品群と比べても、ここまでラフで即興的な楽曲はここでしか聴けないのでは?
特に圧巻なのは中盤に登場する「Heavy Metal II」でしょう。7分近くもあるこのインスト曲、完全に計算というものを度外視していて、同じインストものでも『BANDWAGONESQUE』(1991年)に収録される「Is This Music?」と比べてみるとその違いに気付くはず。勿論、歌の入った曲もインスト曲と同じくらいの密度のギターサウンドを聴くことが出来、文句なしにカッコイイ。
当時、イギリスではRIDE、MY BLOODY VALENTINE等をはじめとする轟音シューゲイザーバンド達で溢れかえり、一方ではTHE STONE ROSES やHAPPY MONDAYS等のマッドチェスター~レイヴというダンスムーブメントが起こりつつある時期でした。その中でTFCの存在は、そういったバンド達と比べると少々異様だったのではないでしょうか。ギターは歪んでいてもシューゲイザー以上に隙間のあるサウンドだし、ダンスビートを導入しているわけでもなく(=踊る/踊らせる要素を重用視してるようにも思えず)、テクノロジーとは無縁な存在(=あくまで「ギターロック/ポップ」に拘っている節がある)。当時もギターポップ・ムーブメントは存在したけど、THE SMITHS以降は衰退傾向にあり、今のように市民権を得たものではなかったように記憶してます。このアルバムはインディーレーベルからのリリースということもあり、彼らは新たなムーブメントを作り出す事は出来ず、結果としては「マニアが知る、隠れたオススメバンド」程度で終わったような期がします。勿論、そういったマニアがいたからこそ、現在の彼等があるわけで、そしてこのアルバムのその後「名盤」として称えられるようになるわけですが。
光るものは既にあるものの、それ以降の作品群と比べれば明らかにレベルが違いすぎる。勿論、そこがいいって人が多いのも確か。そしてその後と比べれば明らかに方向性も違っている。だからこそ、このアルバムは未だに「初期の名盤」として紹介されることが多いのかもしれませんね。完成度こそ低いですが、その後のTFCからは感じられない要素が沢山詰まった、非常にやる気を感じさせない「カッコイイ」アルバムです(最高の誉め言葉ですよ、これ!)。
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