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2003/06/10

BLUR『THINK TANK』(2003)

99年3月にリリースした『13』から4年振り、通算7枚目のオリジナルアルバムとなる『THINK TANK』。その4年の間にblurとしてのベストアルバムをリリースしたり(1曲のみ新曲入り)、各メンバーのソロ活動があったり。その中でも、最も現在のバンドに影響を及ぼしたであろう活動が、デーモンがやっていた覆面ユニットGORILLAZ。ヨーロッパのみならず、アメリカでも成功を手中に収めてしまったこのユニットのお陰で、バンドのレコーディング開始が延びに延びたり、またその後デーモンがいろんな活動に手を伸ばしたりで‥‥痺れを切らしたグレアムはソロアルバムを出したりしてその場を何とか持ち堪えたものの、結局は脱退。バンドにとっては相当大きな打撃だったのではないでしょうか? 事実、俺がこのバンドを愛してきたのは、勿論楽曲の良さ・ひねくれ具合というのもありますが、それ以上にグレアムの弾くギターがそういった楽曲に絡まった時の凄みなんですよね。そういう魅力が薄れてしまうんじゃないか‥‥この新作を聴く前は、そう危惧していたわけです。

が、結果としては‥‥確かにギターに関しては物足りなさも残るものの、これはこれで非常に充実した「ポップアルバム」になったのではないでしょうか。そう、あくまでこれは「ポップアルバム」なのですよ。勿論、それまでロックだったものがポップになった、とかそういった次元の話ではなく。

音楽的には前作の延長線上にあるともいえるし、更に拡散方向へと暴走しているともいえるんだけど、思ってた以上に統一感があるのね。デーモンが歌ってるってのもあるだろうし、各楽曲のトーンが比較的似たようなものだからというのもあるでしょう。一聴して暴走気味なパンクチューン「Crazy Beat」や「We've Got A File On You」でさえも、その他のまったりとした楽曲達と似通ったトーンで表現されているし。唯一、そこから突き抜けてしまってるのは、アルバムラストに収められた「Battery In Your Leg」のみ。これだけグレアムが参加したテイクなんですが‥‥やっぱりギターは一聴しただけでグレアムのそれと判りますよね、ファンなら。そうそう、曲調云々は抜きにして、こういった演奏を聴きたかったわけですよ、俺は。

だからといって、それ以外の曲がダメだというわけではないですよ。ただね‥‥これまでのアルバムのように「1枚のアルバムに、アンセムソングと呼べるような超名曲が1~2曲は収録されている」といったお約束は、今回守れそうにはないようです(詳しくは『13』レビュー参照)。確かにヨーロッパでシングルカットされた「Out Of Time」やアメリカでのシングル「Crazy Beat」等はそれに肉迫する内容ですが、決定打に欠けると言わざるを得ません。その他の楽曲も非常に優れているんですよ。けど、以前の様な絶対的な存在となる1曲がないんですね。「For Tomorrow」だったり「Girls & Boys」だったり「The Universal」だったり「Beetlebum」だったり「Song 2」だったり「Tender」だったり‥‥そういう1曲が残念ながらここには見当たらないのです。勿論、ファンにとっては「そんなことはない!○×だってそれらに匹敵する名曲だぞ!!」って反論もあるとは思いますが、少なくとも俺の中ではそうなんですよ。あと一歩‥‥そういう印象が非常に強い楽曲ばかりなんですよ。

ところが、これらの楽曲をアルバムとして通して聴いてみると、決して悪くないんです。むしろ、トータルでなら前作よりも上をいってるとさえ感じましたし。きっとこれって、先に書いた「トーン」も影響してるんだろうなぁと思うわけで。同じようなトーンで表現されているものの、個々の楽曲が決して似通ってるわけではない。微妙な表現ですが、そこがかなり大きなポイントだと個人的には感じています。

それは楽曲毎にプロデューサーを多数導入したりといった事も大きく影響してるんでしょう。今回はバンドとBEN HILLIERという人が共同プロデュースで殆どの楽曲に名を連ねている他に、前作でも関わったウィリアム・オービット(「Sweet Song」)、FATBOY SLIMことノーマン・クック(「Crazy Beat」と「Gene By Gene」)といった大物がそれぞれ関わっています。殆どが味付け程度といった仕事ぶりなんでしょうけど、見事にそれらしい仕事ぶりを披露してくれてます。

全体的なトーンがダウナーで、決して初期のような高揚感溢れるサウンドはここにはありません。アッパーな曲にしろ、初期とも「Song 2」辺りとも違う次元の狂気を感じさせるし、まったりしながらも実はそういう「迫り来る狂気」みたいなものをジワジワ感じるアルバム。一番最後の「Battery In Your Leg」で、その狂気は静かに爆発する‥‥しかも対外的にではなく、自分の脳や心の奥底で破裂する。これはそういうアルバムなのではないでしょうか。

名盤か否か、と問われると‥‥正直答えに困ります。何故なら‥‥もっと聴き込んで初めて答えが出てくる‥‥いや、その断片が見えてくるアルバムなんじゃないかな、と思うからです。好き嫌いがハッキリする作風ではありますが、俺はこれを評価したいと思います。確かにこれをライヴでどう表現するのか、気になるもんなぁ。



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投稿: 2003 06 10 12:00 午前 [2003年の作品, Blur] | 固定リンク