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2003/06/02

METALLICA『LOAD』(1996)

1996年6月に前作『METALLICA』アルバムから約5年振りにリリースされた通算6枚目のオリジナルアルバム『LOAD』。天文学的ヒットを飛ばした後に発表する新作ということで、作る方も聴く方も相当緊張した1枚でしたね、当時は。

前作とほぼ同じような布陣(プロデューサーは同じくボブ・ロック)で、長期間に渡ってレコーディングされた楽曲は当時20数曲と言われていました。実際「2枚組アルバムとしてリリースすることも考えた」という発言があった程、多くの楽曲を制作したわけです。が、結局は1枚のアルバムとして発表。その中身も「CDというフォーマットの限界ギリギリまで収録した」14曲、79分にも及ぶ大作。アナログ時代だったら間違いなく2枚組でしたけどね。

このアルバムのテーマは“ルーズ”ということらしく、それまでの「ジャストのリズムでカッチリと作り込まれたMETALLICAサウンド」を解体することから始まります。それまでのアルバムは、まずラーズのドラムとジェームズのギターを先に録音し、その上にジェイソンのベースとカークのギターソロをダビングしていたそうで、カークに至っては「リズムギターは弾いていなかった」とのこと。これがあのカッチリしたMETALLICAサウンドの秘密だったのです(それはシングルに収録されてきたデモテイクからも伺えた事実でしょう。「One」のデモなんてラーズとジェームズの二人で作ったものですしね)。しかし、前作と同じことをやっても意味がないと感じたボブ・ロックは、メンバーに「バンドとして演奏」することを勧めます。また、同時にジェイソンからもバンドに対してサジェスチョンがあったそうで、それらを切っ掛けに心機一転、レコーディング方法を改めるのです。

このアルバムで聴かれる楽曲の殆どがミドルテンポからスローテンポ。リズムも以前のようにカクカクしたものではなく、どこかラフで肩の力が抜けたような印象を受けます。実際、アルバムトップの「Ain't My Bitch」からして以前の彼等とはかなり違った側面が伺えます。それまでのヘヴィメタル特有の楽曲構成に代わり、どことなくブルーズ/ロックンロール特有のコード進行を取り入れ始めたり、ギターソロではスライドバーを用いたり等、これ1曲だけでも「それまでとは違うんだぞ」という無言の主張が所々に散りばめられています。また、前作にあったようなミドルヘヴィの「2 x 4」もどこかリズムが引きずるような感じで、良く言えばブルージー、悪く言えば怠い印象を受けます。

そう、このアルバムのテーマである“ルーズ”なんですが……個人的にはこれが良い方向に機能しているとは思えないんですよね。確かに楽曲としては優れたものもあるんですが、アルバム全体を覆う空気感が‥‥バンド間の空気感に非常に似通ったものだったのではないでしょうか? そういえば、この当時のメンバー(特にラーズ)が聴いていた音楽が、これまたOASISやらBLACK GRAPEといったブリットポップだったというのも、何となくその空気感に影響してるのでは、と勘ぐりたくなったりします。

で、そういった怠いと感じさせてしまう要因のひとつに、楽曲の完成度の低さもあると思うんですね。いや、悪いとは言い切れないものの……やはり大成功を収めた『METALLICA』収録曲の二番煎じ的楽曲、悪く言えば「二次使用品」「アウトテイク」で大半を構成されたアルバムというイメージ。「The House Jack Built」にしろ「Cure」にしろ、唯一のファストナンバー「Wasting My Hate」にしろ、もっと上手くまとめることが出来たんじゃないか?という気がしますし、「King Nothing」に至っては前作からのシングルヒット「『Enter Sandman』パート2」といった作風ですからね。それが悪いとは言わないけど、やるならもっと徹底して作り込んで欲しかったな、と。更にそれらをラフでルーズに演奏するんだから、ねぇ? アルバムラストの「The Outlaw Torn」なんて10分近くもあるのに、本当にダラダラやってるって印象が強いんですよ。しかも全然耳に残らないし。しかもこの曲、本来はもっと長くて、79分というCDの収録時間に収める為に編集&フェードアウトして無理矢理10分以内に収めたという曰く付き。何だかなぁ。

……と、ここまで書いて悪いことしか書いてないことに気づいたので、良い点も幾つか挙げてみますね。

新境地と呼べるような楽曲も幾つかあるんですよね。まず、このアルバムからのファーストシングルとなった「Until It Sleeps」。これまでのMETALLICAからは考えられないタイプの楽曲ですよね。日本では某自動車のCMソングに起用されていたので、この曲なら知ってるっていう人も多いんじゃないでしょうか。良い意味でオルタナ系からの影響を上手く反映させたポップチューンになっていて、それが幸いしてかこの曲、初のシングルチャート・トップ10入りを果たしています。またこの曲ではジェイソン、フレットレスベースに初挑戦しています。ギターもレズリースピーカーを通したクリーントーン等、非常に工夫されています。

更にセカンドシングルとなった「Hero Of The Day」も新境地と言えるでしょう。メジャーキー進行の軽快なポップソングは、これがMETALLICAか!?と思わせるに十分な内容。初期の彼等を愛したファンはこれらを聴いてどう思ったんでしょうか。ちなみに俺は上記の2曲、非常に気に入っております。やるならここまで徹底してやって欲しかったのに、ねぇ?

そして唯一のバラードにしてサードシングルとなった「Mama Said」も異色作といえるでしょう。カントリーフレーバー&アコースティック色が強く表れていて、ギターもアコースティックギターやペダルスチールを用いたり、またチキンピッキングを多用したり等、とにかく徹底して作り込まれているんですね。何なんでしょう、この落差は!? 日本盤アルバムの帯に「『METALLICA』を超えるのは、メタリカだけだ。」というキャッチコピーがあるんですが、全曲こんな感じで作り込まれていたら、ホントの意味で『METALLICA』を超えたMETALLICAになっていたのにねぇ。

個人的にルーズ系の曲で一番好きなのが、7曲目の「Bleeding Me」。8分以上あるジャムセッション風のスローブルーズなんですが、これはこれで結構緊張感を持続させたプレイと歌を堪能できるんですよねぇ。そういう意味では、ホントに成功してる曲と失敗してる曲の落差が激しいアルバムです。

久し振りに何度か通して聴いてみたんですが、以前よりはポジティブに聴くことが出来たんだけど、やっぱり最高とは言い難いですね。これが当時1位と取ったのにも驚いたけど、それ以上にこのアルバムが日本で最も売れたMETALLICAのアルバムというのもねぇ。先のタイアップが影響してるのは見え見えなんですが……。

アーティストとしてのエゴが非常に強く表れたアルバムと呼べるのかもしれませんね。GUNS N'ROSESが『USE YOUR ILLUSION 1&2』を作ってしまったみたいに。あるいは続くアルバム『RELOAD』と合わせて考えると、METALLICA版『PHYSICAL GRAFFITI』(LED ZEPPELINの2枚組アルバム。新曲とそれまでのアウトテイクをひとまとめにした、ある種エゴの塊のような作品集。アルバムとしてのまとまりはなし)と呼べなくもない作品集というか。ま、これがあったから今があるというか……つうかこのアルバムが何よりも一番好き!って人に未だ会ったことないよなぁ……。



▼METALLICA『LOAD』
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投稿: 2003 06 02 04:15 午前 [1996年の作品, Metallica] | 固定リンク