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2003/07/07

HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT』(1982)

HANOI ROCKSのセカンドアルバム。'82年1月に本国フィンランドでリリース、初のナンバー1アルバムとなった記念すべき1枚。ここ日本では'83年1月に初来日記念盤として遅れてリリース。ま、その前作(ファースト)の「白夜のバイオレンス」が'82年9月リリースということを考えれば、とても早いリリースペースということになりますが。っていうか、この頃('83年1月頃)には既にシングル&未発表曲集である「SELF DESTRUCTION BLUES」もリリースされちゃってるんだよね、本国では。そう考えると、楽曲生産&発表ペースの活発化と共に人気も上がってるんだよね、彼等。それだけツアー本数も増えるだろうし、メディアでの露出も増えるだろうからね。

この当時のメンバーはファーストのレコーディング時と同じ。日本盤ジャケットにはラズルの姿があるけど、彼が加わったのは'82年夏。つまりフィンランド盤リリース時はジップ・カジノ在籍、日本盤リリース&初来日時はラズル在籍という違いがあるんです。それに日本盤のジャケット、「SELF DESTRUCTION BLUES」フィンランド盤と同じものを使ってたり、といろいろ複雑なことになってます。

このアルバムが切っ掛けになって、イギリスでも人気が出たんですよね。「サウンズ」誌や「ケラング!」誌でのレビューや特集記事で絶賛され、ライヴも行った結果、彼等は英国に移住することになるわけです。その後の彼等の活躍はご存じの通り。そうそう、イギリスでの活動があったから、ラズルとも出会えたんだった(彼だけイギリス人だしね)。そう考えると、非常に運命を感じるアルバムなんですよね。音楽的にも大きな成長が伺えるし。というわけで、簡単に全曲解説をしてみますか。

●M-1. Motorvatin'
  邦題「炎のドライビン」で知られる1曲。ここ日本ではシングルカットまでされてる程の人気曲。確か "Tragedy" と共にPVも作られたんだよね(ってスタジオで演奏してるだけの映像ですが)。ハノイお得意のストレートなポップンロールといったところでしょうか。イントロのベースフレーズを聴いただけで卒倒しそうになるんだよなぁ‥‥中盤のギターソロ合戦、その後に訪れるハープソロといい、ハノイのカッコ良さを集結させた1曲といえるでしょう。

●M-2. Don't Follow Me
  とにかくメロディアス。無軌道なワイルドさという点ではファーストに及ばないかもしれませんが、こういった優れたメロディの楽曲が多いのがこのアルバムの第一印象。途中、リズムが狂う箇所があるのが玉に瑕ですが(特にマイケルね)、それは若さ故ってことでひとつ。ま、ここで叩いていたジップもいろいろプレッシャーを感じていたようですし。アンディによる(?)ファルセットでのコーラスも耳を惹きます。そしてサックスソロ。カッコ良すぎ。

●M-3. Visitor
  前曲との流れで聴くと、本当に考えられてる曲だなぁ、という印象が強いかも。シンセを要所要所に導入してる点も興味深いし。Aメロ~Bメロと盛り上げて、サビメロがいきなり低いキーでタイトルを連呼という、考えてるんだか何も考えてないんだかな曲構成も独特で、まぁ彼等らしいよね。

●M-4. Teenangels Outsiders
  この曲、このアルバムの中で一番好きかも。ってとにかくサビメロですよね、この曲は。勿論、イントロのギターもカッコイイし、高めのキーで叫ぶマイケルの歌い方もいいし、ちょっと泣きの入ったメロディも‥‥ハノイらしいよね、いろんな意味で。

●M-5. Sweet Home Suburbia
  前作でいうと "Village Girl" と同系統の楽曲、かな? イントロのオリエンタルな雰囲気のギターフレーズがいい味出してます。けどハノイって、こういうリズムが好きだよね。中盤のフレーズやメロ&コード進行がちょっとディスコ入ってます。

●M-6. M.C.Baby
  再び疾走チューンの登場。系統的には1曲目"Motorvatin'"と同じ。ただ、こっちはスライドギターが入ったりしてて、ちょっと工夫されてます。こっちの方が全体的にシンプルかもね。

●M-7. No Law Or Order
  ミディアムスロウのバラードチックな1曲。メインリフのメロディーが抜群。ギターのカッティングがレゲエやスカのリズムを取り入れている点に、彼等の「ただのロック馬鹿じゃねぇぜ!」という意気込みが感じられる。って、多分THE CLASH辺りの影響なんだろうけどね(そう考えると、歌い方もちょっとジョー・ストラマーっぽいかも)。途中挿入されるマイケルのセリフも渋くてカッコイイ。

●M-8. Oriental Beat
  アルバムタイトル曲。「東洋のビート」ってことで、歌詞の中にも「Chinese Girls」とか「Geisha Girl」なんて言葉も出てきます。まだ見ぬ東洋の地をイメージだけで語ってるんでしょうけど、この辺の胡散臭さがまた彼らのイメージに合ってるんだよね。とにかくカッコイイ1曲。イントロのギターフレーズを聴いただけでシビれる。サックスソロも短いながらも、カッコ良すぎ。

●M-9. Devil Woman
  ちょっとロカビリー的な雰囲気を持ったロックンロール。メロディやリズム自体は彼等特有のそれなんだけど、ちょっとしたフレーズやコード進行が正にロカビリーといった感じ。THE CLASHでいうところの "Brand New Cadillac" といった感じでしょうか。いろいろ挑戦しようってのが伺えるよね。この曲はハーモニカのカッコ良さに尽きるでしょう。

●M-10. Lightnin' Bar Blues
  このアルバム唯一のカバー曲。ソングライターとして「H. Axton」という名前があるんですが、誰でしょうか‥‥ゴメンナサイ、判りません。むしろ知ってる人がいたら教えて欲しいくらいです(20年近く聴いてるけど、未だに判らないってのも、ねぇ‥‥)。「ダイヤの指輪もキャディラックもいらない、欲しいのは酒だけ」なんていう歌詞も、酒飲みな彼等にピッタリ。ライヴヴァージョンではもっとスローテンポで演奏され、個人的にはそっちの方が好みかも。ま、これはこれで悪くないけど、ちょっと淡泊過ぎかも。

●M-11. Fallen Star
  1曲だけ全然雰囲気が違う、マイナーキーのピアノバラード。ホントにピアノだけをバックに、マイケルが切なそうに歌ってるんだよね‥‥これこそ異色中の異色。多分ライヴでも殆ど歌われたことがないと思うんだけど、こういう風に「アルバム」を意識した曲作りを始めたのも、この作品集の特徴かも。本当に幅が広がってるんだもん、前作リリースからの1年でここまで成長するというのも‥‥ま、殆どの楽曲を手掛けるアンディの成長なんですけどね。

●最後に‥‥
曲解説中に何度か書いたように、このアルバムではファースト「白夜のバイオレンス」に見られなかったようなタイプの楽曲が幾つか見受けられます。そして「ライヴでやってた曲をただレコーディング」といった次元から「アルバムを想定した曲作り・アレンジ」といった成長も見て取れるでしょう。ミュージシャンにとってセカンドアルバムは鬼門、なんて表現をよく耳にしますが、それはそういったことから言われるんでしょうね。とにかく、ここでバンドは1ランクも2ランクも上へ成長するわけです。更にこのアルバムのリリース後、イギリスでの知名度アップや初の日本公演等を経て、更にラズルという新しい仲間も加わり、HANOI ROCKSは更に上のランクへと上り詰めていくわけですよ‥‥そういう意味では、本当に興味深い作品集ではないでしょうか?



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投稿: 2003 07 07 10:40 午後 [1982年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク