RUSH『VAPOR TRAILS』(2002)
カナダが誇る史上最強のトライアングル、RUSHが'02年春に発表した約6年振り(!)のオリジナルアルバム「VAPOR TRAILS」。メンバーが皆50代に差し掛かろうという年齢(いや、差し掛かってるのか?)にもかかわらず、ここまでアグレッシヴに、且つ前向きで実験的なアルバムをリリースするとは‥‥6年のブランクがあるにも関わらずですよ!? ホント、頭が下がります。
RUSHについてはこちらでバンドの魅力について記述していますが、未だにここ日本では彼等に対する評価が低いように思います。現在雑誌で取り上げられるとするなら「BURRN!」のみ、という現状。ま、確かに彼等はハードロックを基本スタイルとしたバンドですよ。けど、もっと幅広い層に受け入れられてもいいように思うんですよね。
メディアが彼等のことを「プログレ・ハード」とか呼ぶことで、敬遠する人も少なくないでしょう。確かに複雑な展開を持つ長尺な曲も過去に沢山ありました。けど'80年代以降は比較的コンパクトな楽曲がメインになっていき、今回のアルバムでも6分を超えるような曲って13曲中2曲しかないんですよね。逆に、3~4分台の曲が5曲、残る6曲も5分台とそんなに長いわけじゃないんですよ、実際。歌メロにしても判り易さを重視したポップなものが多いし、ソフト路線の楽曲も結構あるし。何故彼等がアメリカで常にウケているのか(この10数年、出るアルバム全てが米チャートトップ10入りしてますしね)、その辺も非常に大きく関係してると思いますよ。要するにラジオ受けがいいコンパクトでポップな楽曲がシングルとして切られて、実際受け入れられている。ここ日本じゃまず考えられないことですよね(実際、専門番組でもない限り、RUSHの曲なんて聴けないですからね)。
いきなりヘヴィでゴリゴリの"One Little Victory"でスタートするのにはビックリしますが、これがまたRUSHらしい曲で。確かに今風なんだけど、全然無理してる感じがしないし、むしろ「TOOLとかの若手から影響を受けたんじゃなくて、俺達が奴らに影響を与えたんだよ」とでも言いたげな、有無を言わさぬ威圧感をもの凄い勢いで聴き手にぶつけてきます。が、基本的には"Ceiling Unlimited"や"The Stars Look Down"みたいなポップなタイプと、"Vapor Trail"や"Ghost Rider"のようなムーディーで独特な緊張感を持ったロックチューンが大半を占めているので、そういう意味ではここ数作の作風を踏まえた流れになっているといえるでしょう。が、先の"One Little Victory"や"Secret Touch"みたいなハード&ヘヴィでプログレッシヴな展開を持つ実験的なタイプも数曲見受けられ、惰性で6年振りにアルバムを作ったわけじゃないという意気込みが十分感じられます。特に後半に進めば進む程、その要素は更に強くなっていき、各楽曲のイントロでのアンサンブルを聴くだけで、溜息を漏らさずにはいられなくなるバカテク振りを堪能できます。勿論、楽曲そのものの良さは大前提ですから、ご心配なく。
やはり後半最大の山場はラスト前の"Freeze (Part IV of "FEAR")"でしょうか。6分半という長さは、確かに普段DREAM THEATERのようなバンドを聴いてる人にとっては決して長尺とは言い難いですが、逆に言えば「これだけのことを、6分半という短くはない時間の中に詰め込んだ」ことの方が誉められるべきなんじゃないかなぁ、と。何も10分20分やれば偉いというわけじゃないし。勿論、RUSHの場合はそういったタイプの楽曲も経験してきたからこそ、ここまでコンパクトにやれるんでしょうね。
13曲で67分という収録時間は確かに長く感じるし、個人的には10曲程度にして50~60分程度に収めてくれればもっと聴きやすかったのに‥‥なんて思うのですが、ま、6年振りってことでやりたい事・やるべき事が沢山あったのでしょう。そして、それらを全て吐き出す必要があったと。まぁ贅沢なアルバムですよね。
もしあなたがまだRUSHというバンドに触れたことがなくて、何から聴こうか悩んでいる場合。過去の名盤に手を出すのもいいでしょう。けど、ここはひとつ、この「VAPOR TRAILS」から聴いてみては如何でしょうか? 気難しさが伴うバンドですが、いざ聴いてしまうと単純にカッコいいロックバンドだという至極シンプルな答えにたどり着くはずですから。
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