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2003/08/19

CHEAP TRICK『SPECIAL ONE』(2003)

正直に申します。最初このアルバムを聴いた時「あちゃーっ、6年待たされてこれかよ。俺‥‥ダメだ‥‥緩すぎる‥‥」……期待が大きかっただけに、凄く大きなショックを受けたのね。こんなの俺が思い描いた、俺が望んだCHEAP TRICKの新作じゃない、って。そりゃね、確かに聴けばそれがチートリのものだって判るのよ。けどね、違うのよ。俺が待ってたのは、「6年分の穴を埋め合わせるどころか、そんな穴無視して猪突猛進してくようなサウンド」だったはずなのよ。

俺、誰が何と言おうが、世間的には駄作呼ばわりされてる前作『CHEAP TRICK』(1997年)が、凄く好きなのね。何故なら、守りに入ってなかったから。恐らく多くの人達が待ち望む「70年代全盛期の、古き良き時代のチートリ・サウンド」を再現するでもなく、あくまで「90年代のバンドとしてのCHEAP TRICK」を体現していて、彼等から影響を受けたであろう若手バンドと対峙してこうという意気込みと、20年以上に渡って活動してきたバンドの貫禄が同居する、非常に印象深いアルバムだと思ったのね。確かに懐メロツアーみたいなのもいいよ。けどさ、今の状況でそれやっちゃダメでしょ。VENTURESと変わらなくなっちゃうでしょ? KISSくらい派手に割り切ってやるならまだしも、今のチートリはそういう環境にないわけだし‥‥

だからこそ、この新作『SPECIAL ONE』を聴いた時、あまりに落ち着き過ぎてて、思いっきり拒否反応を示しちゃったのさ。ハッキリ言って、全部聴かないで、全曲の頭出し数十秒聴いて判断してそれっきり。1回も通しで聴かないまま、1ヶ月以上放置していたのでした。

ところがね。時間が経って気持ちも落ち着き、改めて通しで聴く時間が取れたんですよ。で、じっくりと腰を据えて耳を傾けたわけですよ、ネガな感情を抱えつつ。

これがね、悪くないのよ。いや、むしろアルバムの出来としてはこの10数年の中では一番良いんじゃないか?って断言できる程、トータル的に優れてると思ったのね。最初、全てが全てまったりしたバラード調、あるいは肩の力を抜いた埃っぽいアメリカンロックばかりといった印象だった各楽曲も、実はかなり考えられて作り込まれているな、という風に印象が変わったり、確かに落ち着いているんだけど、その中にもちゃんと「チートリらしい奔放さ」は封じ込まれているのね。そりゃさ、確かに10~20年前の作品と比べればその奔放さのレベルも格段と落ちますよ。正直、前作よりも年取った感は拭えないし。でも、いいんだわ。今なら素直に言えるもん。これいいよ!って。

大体さ、ここ数作(といっても彼等、この10年でオリジナル・アルバムってこの『SPECIAL ONE』を含めて3枚しか発表していないわけですが)必ずトップは勢いのいいのか、あるいはヘヴィでガッツのあるナンバーだったんだけど、今回の「Scent Of A Woman」ってちょっとタイプが違うよね。静かに始まって、一瞬「バラード!?」と思わせるものの、曲が進むにつれてテンションが高くなっていって、最終的にはチートリ以外の何者でもない楽曲になってるわけで。おいおい、BON JOVIじゃないんだから‥‥って思ったものの、確かにこれもチートリ。曲が良いんだもん、これ以上悪く言いようがないし。

そこからミディアム~スロウな曲が続くんだけど、確かに1曲1曲のクオリティは過去数作の中でも一番優れてるんだわ。ま、70年代に拘る方々には少々厳しいのかもしれないけど、80年代から入っていった人達(俺を含む)はむしろこういった方向性、有り難いんじゃない? ま、俺はどちらの路線も好きなんだけど、ちょっと頭からこういった曲調が続くと‥‥ねぇ?

ところがね、このアルバム。中盤から後半にかけて、徐々にテンションが高くなってくのよ。決して初期のアッパーな曲みたいなのがあるわけじゃないんだけど、何ていうか、こう‥‥静かに熱が高まってくような、台風がゆっくりと、徐々に、徐々にと近づいてくるような、そんな雰囲気なのね。特に4曲目「Pop Drone」でチートリ流「LED ZEPPELINの "Kashmir"」を体現し、5曲目「My Obsession」でサイケなポップロック、6曲目「Words」で甘くとろけるようなポップソングで小休止し、7曲目「Sorry Boy」と8曲目「Best Friend」で「ヘヴィ&ダークサイド of CHEAP TRICK」の決定版を至極自然体に表現してみせるという。完全にこの辺がアルバムのハイライトといっていいでしょう。更にアルバム本編のラストとなる2曲(「Low Life In High Heels」「Hummer」)は、同じ曲を違うプロデューサーに預け、それぞれの持ち味を活かした形へと成長した2曲を並べることによって組曲のようになっているという、非常に面白い仕組みになってるんですね。前者をかのスティーヴ・アルビニに、そして後者をGORILLAZ等でお馴染みのDan The Automatorに任せることで、シンプルで地味なこの曲もいろんな意味でカラフルになっています。それでいてチートリらしさは損なわれていないんだから、さすがというか(ま、この場合はチートリの個性がそれだけ強いんだ、と解釈しておきましょう)。

あ、日本盤ボーナストラックの「Special One」日本語バージョンはこの際無視。蛇足だと思ってます、個人的には。こんなの入れるくらいだったら、ボーナストラックなんていらなかったのに‥‥。

と、最初はかなり否定的な感情が付きまとったこのアルバム。最終的には「非常に良いアルバム」という結論に落ち着いています。ただ、それでもこれは俺が思い描いたチートリの姿ではないし、残念ながらそういった姿はもう二度と観られないのかもしれませんね‥‥そこは割り切るべきなのか、それとも諦めずに夢を追い求めるべきなのか悩むところですが。まぁこの6年、散々ベスト盤だのライヴ盤だのでそういった溌剌とした面は散々味わってきたので(実際に観たライヴでもそういった面を堪能できたし)、これはこれで楽しむことにしましょう。だってこれ‥‥決して名盤とは言わないけど、忘れた頃に聴きたくなる、恐らく付き合いが長くなりそうな1枚になると思うからさ。



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投稿: 2003 08 19 11:37 午前 [2003年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク