岡村靖幸と石野卓球『come baby』(2002)
結局、幻のユニットとして我々の前から姿を消した「岡村靖幸と石野卓球」。ユニット名のまんま、それぞれがソロとして独特な活動をしてきた個性的なアーティスト(ま、卓球は休止中ながらも電気グルーヴという「帰るべき家」があるわけですが)、そんなアクの強い二人がどういうコラボレーションを果たすのか。結局はこのシングル「come baby」1枚で事実上の活動停止となってしまったわけですが(本来、今年の前半に2枚目のシングルとアルバムがリリースされる予定だったんですが、どういうわけかリリース直前になって全てが白紙に。音源自体は完成しているようなんですが‥‥全て「あのお方」の気まぐれなんでしょうかね?)
そもそも、2001年の時点で所属していたエピックとの契約も終了したと言われている岡村靖幸が、最後にリリースした "マシュマロ ハネムーン" 以来約1年半振りに公式発表したCD音源(あれっ、その間にも何か他アーティストとのコラボで歌ってたような記憶が。ド忘れしてるだけか?)でもあるわけだし、方や石野卓球の方も2001年秋に電気グルーヴの活動休止を宣言し、さあソロ活動どうなる?って時期に突如発表された音源だったわけですよ。そもそもこの二人って、昔からある程度の付き合いはあったと記憶してるんですが、そんな一緒に活動する程仲良かったんだっけか!?と最初に驚いたものの、けど冷静に考えるとそこまで違和感もないんですよね、岡村ちゃんと卓球って。共に日本の音楽界では異端だろうし、にも関わらず'90年代のメジャーシーンを駆け抜けてきたアーティストでもあり、実際のところ「どんな音出すんだよ!?」とワクワクしてその音を待ったのですが‥‥
収録されているのは、たったの1曲。表題曲である"come baby"のオリジナル・ミックスと、そのPV用エディット・バージョン、そして卓球によるリミックスという計3バージョン。これ1曲でこのユニットの存在意義を語るのは危険だし、結局その他の音源が発表されることもなかったことから未だに謎の多いユニットだったわけですが‥‥あー俺、これ好きだなぁ。岡村ちゃんが歌う「新曲」という意味でも勿論、卓球が電気や自身のソロ以外で「歌モノ」をやろうとした時に、ああ、こういうことやるんだ!っていう驚きもありつつ、それでいて予想出来うる範疇外でもあるという。多少矛盾したこと書いてますが‥‥要するに卓球、自己流表現で「エレクトロクラッシュ」的なものをやってみたかったのかなぁ、と。
ま、エレクトロクラッシュと一言でいってもいろんなタイプがあると思うんですが、要するに'80年代のニューロマンティックやエレクトロポップ的なサウンドの、現代版リバイバルといいますか。岡村ちゃんが歌うことで更にその色合いが濃くなってるように感じられるこの曲、サウンド自体は全然古くさくないわけですが、全体的に漂う「あの当時」の懐かしさ、いかがわしさ、雲散臭さ。そういったエレクトロクラッシュ系DJやアーティストとの付き合いもあるでしょうし、実際興味を持ってるのかもしれませんが、見事に「石野卓球meets岡村靖幸」として成立しているという。互いの個性の潰し合いには終わらず、互いが互いの仕事をちゃんとこなしつつ、それでいてしっかり他方に歩み寄ってるように感じられる‥‥だからこそ、この「続き」をもっと聴きたかったんだよなぁ。つうかそもそも、これってまだ「始まり」でも何でもないですよ。「これから何か始めるよ!」みたいな挨拶状というか、要するに試しにやってみた「テスト版」ですよね? これが上手くいったから、アルバム制作に踏み切ったんだろうけど‥‥嗚呼、勿体ない。
岡村ちゃんの復活ライヴ@RIJFでもライヴの1曲目で歌われていたように、彼にとっては「消し去りたい、忘れたい過去」なんかじゃなくて、しっかり「輝かしき歴史の一片」として我々の前に提示してくれているこの曲。岡村ソロバージョンも良かったけど、やっぱり‥‥岡村&石野でのステージも観てみたかったなぁ‥‥

▼岡村靖幸と石野卓球『come baby』
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