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2003/08/11

JEFF BECK『WHO ELSE!』(1999)

'60~'70年代に所謂「三大ギタリスト」と呼ばれた、現在ではもやは大御所といえるエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、そして今回の主役ジェフ・ベック。彼等は'60年代にYARDBIRDSというバンドに在籍していたことから(また、その後の独特な活躍から)そのように呼ばれることになったわけですが‥‥クラプトンはここ日本では今や何も説明は要らない程有名ですし、ジミー・ペイジは最近またまたLED ZEPPELINの蔵出し音源&映像集リリースで話題になったばかり。そのプレイの非凡さとかアイディアとか、確かに有無を言わさぬ説得力がありますよね(ま、現在の技量云々はこの際無視します。じゃないと可哀想過ぎる人が若干名いるんで‥‥)。

ところが‥‥このジェフ・ベックって、今10代のギターキッズ(なんて言葉、今時浜田省吾やB'zくらいしか使わないような死語になったなぁ‥‥)にとってどういう存在なんでしょうかね? というのも数年前、とある高校生のロック好き少年に「三大ギタリストって知ってる?」と尋ねたところ、「クラプトン、ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモア」という、ちょっと悲しくなるような答えをされたもので‥‥いや、リッチーでもいいんですけどね、個人的には(いやよくないか)。

かくいう自分も、中学~高校生の頃にはジェフ・ベックの良さってイマイチ判ってなかったんですよね。丁度自分が高校3年の頃、「GUITAR SHOP」というアルバムを出し、それを聴いてちょっと「あ、いいかも」と思えて、丁度来日公演があったんで観に行ったんですよ‥‥その時のメンツというのがベックの他に、かのテリー・ボジオ(フランク・ザッパ・ファミリーで、後にスティーヴ・ヴァイやかのhideと共に活動したりレコーディングしたり等する程の名ドラマー)と旧友トニー・ハイマス(Key)というトリオ編成だったんですが‥‥本当に凄くて、文字通りカルチャーショックを受けたんですよね。後にクラプトンやペイジ、リッチーのプレイも実際に観ることになるんですが、ベックの時以上の衝撃は受けなかったですからね。

そんなベック、その'89年以降オリジナルアルバムってずっと出してなかったんですよ。ジョン・ボン・ジョヴィの初ソロに参加したりとか、企画モノのカバーアルバムを作ったりとかはあったんですが、自身がメインとなってオリジナル曲をプレイするアルバムというのは、結局その10年後‥‥'99年までお預けになるわけです。

というわけで、今回紹介するのがその'99年リリースのオリジナルアルバム、「WHO ELSE!」。恐らくこのアルバムも、当時通っていたロック系クラブイベント「CLUB K」でアルバム1曲目"What Mama Said"に出会ってなければスルーしてたと思うんですよ。

だってね‥‥俺、クラブ系のダンスミュージックは別にインストでも全然平気なんだけど、フュージョン等のインストものってメッチャ苦手なんですよ。一時期、バイト先でそういった音楽ばかり聴かされてた時期があったんですが、絶対にダメでしたもんね。元来歌モノが好きってのもあるんだけど、あと「踊れるか否か」ってのも結構重要になってくるんですよ。だからテクノOK、P-FUNKみたいな延々インストパートがインプロで続くソウルやファンクもOK、みたいな。

そういった観点からすると、ジェフ・ベックのアルバムってのもギター・インストだしダメなんじゃ‥‥って思われるでしょうけど、これがね、違うんですよ。基本的にベックのアルバムって「踊れる」のよ。いや、例外も勿論ありますよ。けどね‥‥第2期JEFF BECK GROUPとか、滅茶苦茶ファンキーだし、クラブとかで "Got The Feeling" がかかっても、気持ちよく踊れるわけですよ。何ならマッドチェスター辺りの曲と並べても、多分全然違和感ないと思うのね。

そんな「踊る/踊らせる」という感覚が無意識の内に備わっていると思われる彼のプレイ(敢えて『楽曲』ではなく、彼の『ギタープレイ』)が、現代的な表現方法と旧来の表現方法とが見事に融合して1枚の作品として完成されているのが、このアルバム。例えばアルバム1~2曲目("What Mama Said"と"Psycho Sam")や7曲目"THX138"なんて、モロに昨今のテクノ系ダンスミュージックを意識した作風になってるし、しかも単なる「オヤジが若ぶってる」ような代物ではなくてちゃんと「ジェフ・ベックらしさ」を堪能できる楽曲として完成されてるんですよね。かと思うとライヴテイクをそのまま収録してしまったスローブルーズ"Brush With The Blues"なんてのもあれば、変拍子が入ってるんだけど気持ちよく踊れそうな"Blast From The East"や"Hip-Notica"、ちょっとレゲエっぽいリズムを持ったムーディーな"Angel (Footsteps)"、ヘヴィでグルーヴィーなリフがカッコいいロックチューン"Even Odds"、男臭い優しさを存分に味わえるラストのスローナンバー2連発("Declan"と"Another Place")等々‥‥非常に緩急に富んだアルバムになってるんですよ。

ダンス系でもこういった作風のアルバムってあると思うんですよ。俺ね、このアルバムってそういったアルバム達にも引けを取らない、滅茶苦茶優れた1枚だと思うんですね。だってさ、曲の大半を作ってるのとかアレンジのアイディアなんかの殆どは共同プロデューサーや参加した若手ミュージシャンによるものだと思うんですが、それに無理なく対応出来て、しかもそういった楽曲にしっかり自分の『色』を加え、違和感なく聴かせてしまう‥‥リリース当時54才のオッサン(というよりも、下手すりゃおじいちゃんの領域ですよ!?)の作品ですよ、これ!

しかもね、これに続くアルバム(翌'00年リリースの「YOU HAD IT COMING」と、先日リリースされたばかりの新作「JEFF」)でも、更に現代的な音楽にチャレンジしてるんですから‥‥ブルージーな曲を弾かせれば勿論それなりに枯れた「ベックらしい」プレイを聴けるわけですが、敢えてそっちに行かずに時代と対峙していこうという心構え‥‥是非「過去の遺産を食い潰すことしか脳のない」薄らハゲのオッサンにも見習って欲しいものですね♪

最後に‥‥このアルバムとの出会いを与えてくれた、梯一郎氏に最上級の感謝を。



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投稿: 2003 08 11 02:55 午前 [1999年の作品, Jeff Beck] | 固定リンク