ANTHEM『HEAVY METAL ANTHEM』(2000)
メタル離れして久しいけど、そんな俺でもこの数年結構な頻度で聴いてるのがこのアルバム。いや、ベスト盤的内容ってのも大きいんだけど、なによりもその参加メンバーであったり、新しい解釈でプレイされた(特にギターね)楽曲の数々の素晴らしさに心打たれるわけで。今でもこういうタイプの音楽が楽しめるってことは、心底メタルを嫌いになれないってことなのか、それとも単に「楽しかった10代の頃」を懐かしんでるだけなのか‥‥。
日本が世界に誇る(と言い切っても過言ではない)パワーメタルバンドANTHEM。彼等は92年に解散してるわけですが(そのラストライヴとなった日清パワーステーションでの公演には自分も足を運びました)、その後各メンバーはアニメタルでANTHEM時代以上の成功を手中にしてしまったり、あるいは'80年代はライバルだったLOUDNESSに加入してしまったり等、とにかく誰ひとりとして「ANTHEMを引き継」ごうとしなかったわけです。俺ね、80年代の日本のヘヴィメタルバンド(所謂「ジャパメタ」バンド)の中で一番好きだったのが、このANTHEMだったんですよ。特にボーカルが坂本英三だった初期の3枚の頃ね。この頃への思い入れの強さはハンパじゃなかったですよ。その後、森川之雄という素晴らしい才能を迎えてリリースされた名盤の数々も捨てがたいんですが、やはり初期の野暮ったい程のパワーメタルが好きだったんですよ。ジャーマンメタルに通ずる野暮ったさ? ACCEPT辺りを彷彿させるね。ああいうのが格好良かったんですよ。
そんな彼等が00年、奇跡的な復活をするわけですよ。ま、最初はアルバム1枚のプロジェクトとしてですけどね。それがこの『HEAVY METAL ANTHEM』というアルバムでして。所謂企画モノとしてスタートしたんですが、企画モノ故の豪華さがとにかくスゴイわけで。
ベースは勿論この人、柴田直人。当たり前です、この人のバンドですから。IRON MAIDENでいうところのスティーヴ・ハリスですからね、全てにおいて。ドラムも同じく大内 'MAD' 貴雅。最近じゃTHE YELLOW MONKEYのヒーセのバンドでも叩いてますよね。ギターは末期ANTHEMを支えた若き才能(って俺と同い年だっけ?)、清水昭男。解散後はSHY BLUEってバンドやったり、TOKIOとかに曲書いたりして生計を立ててたようです。そしてシンガー‥‥これこそ夢のような組み合わせなわけでして‥‥RAINBOW等で活躍したHM/HR界の大御所、グラハム・ボネットなんですよ。これがどういう意味か判りますか?
勿論「HM/HR界の大御所が、日本の伝説的メタルバンドで歌う」という驚きもあるわけですが、それ以上に‥‥古いファンからすると‥‥ANTHEMの、そして柴田のルーツのひとつであるRAINBOW。その「オリジナルの血」が混入するわけですよ。元々後期ANTHEMの楽曲ってのは、森川という「和製グラハム」の歌を活かす為にワザと憧れのRAINBOW的スタイルを取っていたこともあるんですね。そう、意識的にルーツを表出させていたという。つまりですよ、そういう楽曲を本家本元が歌うわけですよ!? どういうことになるか判りますよね??
選曲はほぼ森川時代のグレイテストヒッツ的なもので、坂本時代が好きな俺としてはたった1曲(「Show Must Go On!」)しか選ばれていないことに不満を覚えたりもしたわけですが、やっぱりこの組み合わせでこの選曲、納得しなきゃなりませんよ、これ聴いちゃったらさ。ちなみにオリジナルの歌詞は殆どが日本語なわけですが、グラハムが歌うに当たって全て英語詞に直されてるので、洋楽メタルしかダメって人にもオススメです。
グラハムは終わったと言われて早10年以上。確かに80年代前半までの輝きや艶やかさは今の彼からは強く感じられません。しかし、このアルバムでのグラハムは最も得意とするジャンルの音楽を、最も得意とする歌い方で表現している。そりゃRAINBOW時代やMSG時代と比べれば劣るかもしれませんが、少なくともこの10数年の中では最も素晴らしい仕事をしてるんじゃないでしょうか? ま、その10数年まともに彼の仕事ぶりを追ってきたわけではないので、コアなファンから「全然ダメじゃんか!」と反論されてしまうと、ちょっと‥‥少なくとも俺はイケてると思うんだけど。
曲の素晴らしさは言うまでもなく。日本人らしいワビサビが感じられる繊細な様式美の世界観を、欧米人が力でねじ伏せるかのような表現をする。大味のパワーメタルのようで、実は奥が深い。坂本や森川が歌うANTHEMとも違う、ちょっとだけ「世界に肩を並べた」と錯覚してしまう1枚に仕上がってます。いや、これをこのまま海外に輸出しても全然大丈夫だと思うけど。言語の問題もないわけだし、音楽的にも需要があるはずだし。これ、このまま向こうでリリースすれば良かったのにね?
ま、結局このメンツではライヴを数回やったのみで終わり、柴田は再びバンドを本格的に再始動させることを考え、結果として柴田と清水に加え、坂本が復帰し、大内の代わりに元E.Z.O.~LOUDNESSの本間大嗣が加わった形でパーマネントな活動を再開するわけです。
海外のメタルは好きなのにジャパメタとか嫌ってる人、X JAPAN以降の日本のハードロックに興味を失ってしまった人、偏見捨てて聴いてみ。そんなの吹っ飛ぶから。「Gypsy Ways (Win, Lose Or Draw)」とか「Cryin' Heart」とか「Hunting Time」の素晴らしさに泣くからさ。けどね‥‥上記3曲に関しては、その後に必ずオリジナル版も聴いて欲しいんだな。森川による日本語版の方も。グラハム以上だからさ、全てにおいて。
▼ANTHEM『HEAVY METAL ANTHEM』
(amazon:国内盤CD)
« TOKYO ZAWINUL BACH『VOGUE AFRICA』(2003) | トップページ | KORN『DID MY TIME EP』(2003) »
「ANTHEM」カテゴリの記事
- 「Ozzfest Japan 2013」Day 2@幕張メッセ(2013年5月12日)(2013.05.19)
- THE MAN『ULTIMATE FORMATION』(2019)(2019.08.08)
- ANTHEM『HUNTING TIME』(1989)(2019.07.26)
- ANTHEM『NUCLEUS』(2019)(2019.04.01)
- LOUDNESS『LOUD 'N' RAW』(1995)(2005.08.16)
「2000年の作品」カテゴリの記事
- THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA II: THE FRIENDS & ENEMIES OF MODERN MUSIC』(2000)(2024.08.08)
- POISON『CRACK A SMILE... AND MORE!』(2000)(2024.05.09)
- MARS ELECTRIC『BEAUTIFUL SOMETHING』(2000)(2024.03.13)
- JEFF BECK『YOU HAD IT COMING』(2000)(2023.01.12)
- V.A.『RANDY RHOADS TRIBUTE』(2000)(2022.11.05)
「Graham Bonnet」カテゴリの記事
- RAINBOW『DOWN TO EARTH』(1979)(2020.08.05)
- ALCATRAZZ『BORN INNOCENT』(2020)(2020.08.04)
- MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)(2019.09.11)
- ALCATRAZZ『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』(1983)(2019.08.06)
- IMPELLITTERI『STAND IN LINE』(1988)(2018.12.25)