« ANDREW W.K.『THE WOLF』(2003) | トップページ | THE BEATLES『LET IT BE』(1970) »

2003/09/20

BON JOVI『BOUNCE』(2002)

ひとりのアーティスト、ひとつのグループが一度頂点に達し、その地位を維持するために奮闘し、時代の流れと共に落ち目になっていく。こんな光景、ロックやポップスを長年聴き続けていれば何度も目撃するもの。そうやって我々の記憶に残り続けるモノもあれば、時代の徒花として瞬時に忘れ去れれる存在もいる。けど、例えばそんな落ち目時代を何年も耐え続け、ひたすら作品を重ねていく中で再び頂点に達したアーティスト/グループって、一体どれくらいいるんだろうね? みんなが好きなアーティストの中にそういった存在っている? 少なくともそんなに数いないと思うんだけど。

今回紹介するBON JOVIはある意味、その「数少ない存在」の中のひとつだと思うんですね。ここ日本では80年代後半から現在に至るまで、常に安定した人気を保っているし、他のアジア諸国やヨーロッパ諸国でもアルバムやシングルは常にヒットチャートの上位に君臨し、ライヴをやれば数万人規模のスタジアムを満員にしてきた。けどそれは「本国以外」での話。ご存じの通りBON JOVIはアメリカのロックバンド。最初にブレイクしたのはここ日本だったかもしれないけど、彼等が80年代に大ブレイクしたのはアメリカでの大ヒットがあったからこそ。2枚連続でアルバムが1位(しかも共に500万枚以上のセールスを記録)、シングルヒットも連発。誰もが「国民的バンド」になったと思ってた矢先‥‥90年代に入ってグランジやヒップホップの台頭があり、それまでメインストリームと呼ばれていたようなバンド達は時代遅れ扱いされ、特にBON JOVIなんかは本国で「空白の10年」と呼ばれるような時代を送るのでした。とはいいながらもアルバムは出せば常にトップ10入りしたし、94年には「Always」という過去最大のヒット曲も誕生してるわけで。そかし、00年代のメガヒットと比べれば明らかに落ち目と言われても仕方ないセールスなのも事実。同じ頃、海外(日本やヨーロッパ)では東京ドームやウェンブリー・スタジアムを連日満員にしていたというのに。

しかし、時は流れ00年。彼等は起死回生の『CRUSH』というアルバムをリリース。日本やヨーロッパは勿論、本国アメリカでも久し振りのヒットを記録します。シングル「It's My Life」はMTVやラジオでも頻繁にかかり、ライヴもアメリカでは久し振りのスタジアムクラスを経験。久し振りに「アメリカにBON JOVIが帰って来た!」的歓迎ムードを体感したわけです。そしてそんな上げ上げムードの中、'01年にはロックトラックを中心に編集されたライヴベスト『ONE WILD NIGHT』を海外でリリース(後に日本でも限定リリース)、その勢いのまま次作の制作に突入したのでした。

そんな感じで、満を持して発表されたのがこの『BOUNCE』。オリジナルアルバムとしては前作から2年3ヶ月という非常に短いインターバルでのリリース。ライヴ盤も含めると00年から毎年アルバムをリリースしてることになります。如何にバンドが「今の上昇気流から外れないように」と気合いを入れて活動してるかが伺えますよね。

アルバムを最初に聴いた時、非常に硬質な印象を受けました。オープニングからダウンチューニングしたヘヴィなリフを持つ「Undivided」で攻めの姿勢を示し、続くシングル曲「Everyday」は従来の持ち味とこれまでに感じたことのなかった新しい要素を上手く融合した実験作になってるし、3曲目「The Distance」も大きいノリを持ったBON JOVIらしいメロディの1曲なのですが、バックトラックは今までとはちょっと違う色合いを感じる。ダウンチューニングしたギターが放つ奇妙なサウンドのリフ、そんな重々しいバンドサウンドに被さる生オーケストレーション。異質なんだけどBON JOVIらしい。前作での成功をそのままに、更にバンドとしてワンステップ上に行こうという意欲が見え隠れします。

しかし、その後は比較的落ち着いた要素が続きます。フォーキーなバラード「Joey」や如何にも彼等らしい埃っぽい「Misunderstood」、名バラード「All About Lovin' You」の3曲で、頭3曲のイメージを完全に覆してしまいます。つまりここでの3曲は従来のBON JOVIらしさを、最も得意とする方法で料理してるわけです。勿論、そこには今のBON JOVIもしっかり感じられるわけですが。

後半6曲はそういったイケイケモードと落ち着いたモードが交互に押したり引いたりします。現代的なノリを持ったヘヴィチューン「Hook Me Up」、大人ならではの落ち着いたバラード「Right Side Of Wrong」、壮大なんだけどどこか落ち着いたイメージを感じさせる「Love Me Back To Life」、如何にもなアコースティックバラード「You Had Me From Hello」、「It's My Life」の流れを組む彼等ならではの「Bounce」、最後を締め括るに相応しいバラード「Open All Night」。こうやってみると全体的にバラードが多いことに気づきますよね。実際最初に通して聴いた時は「あー、バラードばっかりで、ちょっと聴く頻度高くないかも」と思ったのも事実で、買って暫くして聴かなくなってしまったんですよね。自分の彼等に対する興味や好奇心も以前ほどじゃなくなっていたのもあったし。

しかし、バンドはこのアルバムで本格的な復活を果たしてしまったのですよ。アメリカでアルバムチャート初登場2位。『CRUSH』が確か6位くらいだったと記憶してるから、更に上を行ったということになるんでしょうね。丁度アルバムリリース直前に「スーパーボウル」か何かに出演してゲストライヴをやったのも影響したでしょうし。まぁそれだけ多くの人に待たれたアルバムだったってことなんでしょう。来日公演も東京ドーム2公演分が久し振りにソールドアウトで、追加&再追加公演も出た程ですし。アメリカでもこの夏までツアーをやっていたようですから、それだけ人が入ったってことなんでしょう。とにかく完全に復活したと言っていいんでしょうね。

最近、自分の中でこういったアメリカンロックやアメリカンハードロックに対する興味が再び高まっていることもあって、久し振りに聴き返したんですよ、このアルバム。そしたらね‥‥本当に良かったんですわ。いや、確かにバラードは少し多いと思いますが、それは前作(『CRUSH』やロックトラック中心のライヴ盤『ONE WILD NIGHT』)からの反動でこうなったのでしょうし、まぁ彼等も皆40過ぎ、もうちょっとレイドバックした方向に行きたいのかもしれないし。けど同時にロックし続けたいという気持ちもある。バランス的には「柔」の方向に傾いているように感じられるんですが、全体を通して聴いてみると意外と「硬」な印象が強いアルバムだったことに改めて気づくわけで。そういう意味ではバラードが多いながらも硬派なイメージが強い『NEW JERSEY』と共通するものがあったりなかったり。『CRUSH』が『SLIPPERY WHEN WET』的アルバムと呼ばれることからも、この『BOUNCE』もそういった感じで出来ていったアルバムなのかもしれませんね。

BON JOVIは今世紀に入ってから本当に休み知らずな活動を続けています。来月にはアコースティック・アレンジや実験的なアレンジを施した過去の名曲達を集めた新録編集盤『THIS LEFT FEELS RIGHT』もリリースされるし、来年2004年はデビュー20周年記念のボックスセットも発表される予定。恐らくオリジナルアルバムは2005年以降になるんでしょうけど‥‥毎年こうやって何かしら音源をリリースしてくれるなんて、90年代後半では考えられなかったことだから、ファンにとっても嬉しいんじゃないですか?

最後に‥‥BON JOVIは決して「過去の焼き直し」をして再び頂点を手にしたんじゃない。80年代の偉業と比べれば最近の作品は質が下がったと嘆く旧ファンも多いだろうけど、アーティストはそうやってドンドン先へと進んでいくもんだと思ってます。それが我々の望んだ方向でなくても。それはどのアーティストにも当てはまることなんじゃない? ねぇ、心当たり、ない?



▼BON JOVI『BOUNCE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 09 20 12:00 午前 [2002年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク