THE BEATLES『LET IT BE』(1970)
最初に取り上げるビートルズのアルバムがラストアルバムとなった『LET IT BE』というひねくれ具合が如何にもうちらしいといえばうちらしいのかなぁ、と。まぁ切っ掛けはこの『LET IT BE』がオリジナルバージョンで蘇るというニュースだったりするわけですが。ファンの間では有名なこのエピソード、その「フィル・スペクター」バージョンの方を今回紹介したいと思います。
つうかさ、高校生の頃からポール・マッカートニーの2度目の来日公演(93年秋)まで日本のファンクラブ(当時は「ビートルズ・シネクラブ」)に入ってたような人間からすれば、彼等の作品で嫌いなアルバムなんてないわけですよ。つうか愚問だってば。ま、そりゃ多少「好き」の度合いや思い入れの違いは生じますけど、概ねどれも10代~20代前半に聴き込んだものばかり。だからここ数年は意識してアルバムを聴き返すというようなことはしてなかったんですよ。『1』も未だに買ってないしね。
というわけで、このアルバム。細かい説明は要らないですよね? そういうの、もっと詳しいファンサイトが沢山あるわけだし、俺よりも知識豊富な人は沢山いるだろうから、俺はちょっと違った書き方をするとしますか。
つうかね‥‥改めてビートルズについて語るのって、何か気恥ずかしいというか‥‥難しいんですわ。ROLLING STONESやAEROSMITHについて書く方がどんなに気が楽か(ま、その割りに全然書こうって気にならないわけですが)。ビートルズについて何か書いてる文章って、どこか気難しそうなのが多いじゃないですか(俺の思い込みかもしれないけど)。だからね、ちょっと変なことでも書こうもんなら吊し上げられそうな気がしてね‥‥被害妄想ですかね? だから敢えて書かない、というのと、何か書きたいという意欲が湧かなかったというのが正直なところでして。
で、何で今になって書いてみようかと思ったのか‥‥勢いってのもありますが、まぁ切っ掛けは上に書いた通り。今なら何か書けるかな、と。で、さっきからずっとアルバムを大音量でリピートしてる最中なんですよ。
あれですよね、このアルバムって要するに時代を先取りした「リミックス盤」なわけですよね。けどそのオリジナルバージョンより先に発表されてしまったという。まぁリミックスという言い方が気に入らないなら「再構築盤」とでもいいましょうか。ライヴ録音に近い音源(中にはまんまライヴ録音もあるわけですが)を完全に他人(それまでの作品作りに携わってこなかった赤の他人)任せで仕上げてしまうという。ミュージシャン本人の想定していたモノとは全く別物が出来上がる可能性が非常に高い、いわば博打仕事ですよね。けど、あの時期(末期)の彼等にはそうせざるを得ない事情があった、と。歴史ってやつは本当に面白い。時にミラクルを起こし、時に残酷であったり。
やっぱり俺にとって「Let It Be」や「The Long And Winding Road」っていうと、このバージョンなんですよね(まぁ「Let It Be」はシングルバージョンもあるわけですが)。ポールが気に入ってなかろうが、俺にとっての、ビートルズの「Let It Be」や「The Long And Winding Road」はこの『LET IT BE』というアルバムに収録されたバージョンなわけですよ。
そういった要素もありつつ、非常に生々しくてダウナーなロックンロールを聴かせてくれるのもこのアルバム。これがバンド末期の悪状況が生んだ産物なのだとしたら、個人的にはこの路線でもうちょっと他の音源を聴いてみたいな。これ以前の数作が非常に作り込まれた作品集であったりメンバー個々の色が濃く現れた楽曲だったりしたのに対して、ここでは痛々しいまでに「バンドとしてのビートルズ」に拘ってるんですよ。で、普通のバンドだったらそれが聴くに耐えないような代物になるはずなのに、やっぱりこの人達は普通じゃなかった。ジョン・レノンとポールのコラボレート(とはいいながらも、どの楽曲も殆どがジョン/ポール単独で書かれたものですが)といい、最後の最後までメキメキと成長し続けたジョージ・ハリスンといい。リンゴ・スターの色が薄いのは、「バンドの一員」としてドラムに徹した結果でしょう。脇を固めるキーボードのビリー・プレストン(他にもストーンズ等で有名)の仕事振りも目を見張るものがあるし。何だかんだ言って、やっぱりいいアルバムだと思うんですよね。
そりゃね、俺の中での重要度合いで語ればそんなに高い位置にいるアルバムではないですけど、こうやってたまに引っ張り出して聴くと何かしら新しい発見があるのがビートルズ。何年経っても、何十回、何百回聴いても聴く度にそういった発見があるバンドなんて、他にどれくらいいるよ? 小馬鹿にしてビートルズを避けて通過する人も多いと聞きますが、これを機にベスト盤ではなくてオリジナルアルバムに手を出してみては如何でしょうか?

▼THE BEATLES『LET IT BE』
(amazon:国内盤CD)
« BON JOVI『BOUNCE』(2002) | トップページ | DECKARD『STEREODREAMSCENE』(2000) »
「Beatles, the」カテゴリの記事
- THE BEATLES『THE BEATLES: GET BACK - THE ROOFTOP PERFORMANCE』(2022)(2022.01.31)
- ビートルズの初期作品を振り返る②(1964年編)(2022.01.15)
- ビートルズの初期作品を振り返る①(1963年編)(2021.11.08)
- banned songs of US radio after 9.11(2020.01.02)
- THE BEATLES『ABBEY ROAD』(1969)(2019.01.08)
「1970年の作品」カテゴリの記事
- MOUNTAIN『CLIMBING!』(1970)(2020.12.25)
- PAUL McCARTNEY『McCARTNEY』(1970)(2020.12.22)
- THE STOOGES『FUN HOUSE』(1970)(2019.01.13)
- DAVID BOWIE『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』(1970)(2019.01.10)
- LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN III』(1970)(2018.02.23)