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2003年10月31日 (金)

MOTLEY CRUE『MOTLEY CRUE』(1994)

'80年代中盤から'90年代初頭にかけて、HM/HRシーンのみならず一般のロックシーンにおいてもその名を知らしめたMOTLEY CRUE。彼等がいなかったらその後GUNS N'ROSESも、あるいはALICE IN CHAINSすら登場していなかったかもしれない‥‥なんていうのは大袈裟でしょうか? とにかく、'80年代後半から'91年頃の彼等は今考えてみてももの凄い破滅的で、それでいて魅力的なバンドだったなぁと思うわけです。多分、今こんなバンドがいたら間違いなく1ヶ月で解散してるんじゃないか‥‥そう思える程にね。そりゃ'70年代のLED ZEPPELINとかAEROSMITHの方が凄かったのかもしれない。けどリアルタイムで通過した'80年代~'90年代前半において、そのライフスタイルでMOTLEY CRUEとGUNS N'ROSESを超えるようなバンドはそれこそNIRVANAくらいだったんじゃないか‥‥なんて思うわけです。

今回紹介する、自らのバンド名をタイトルにしたアルバムは、'94年春にリリースされた通算6枚目のオリジナルアルバム。前作「DR.FEELGOOD」('89年)が爆発的な大ヒットを記録し(アメリカだけで当時400万枚以上ものセールスを記録)、1年以上に渡る長期ツアーが繰り広げられ、バンドはそのまま長期休暇に入るかと思いきや、'91年にはヨーロッパでの夏フェスに出演、そして同年秋にはデビュー10周年を記念するコンピレーション盤「DECADE OF DECADENCE」を発表。その年の後半から再びバンドはオリジナルアルバムの為の製作期間に突入‥‥と当時報道されていました。

しかし、歴史的事件が起こります。'92年2月。その知らせを俺は滞在先のドイツのホテルでMTVを観てる時に聞かされます。そう、ボーカルのヴィンス・ニール脱退。当時の拙いヒアリング力で頑張ってニュースに耳を傾けると、どうやら解雇されたような感じ‥‥そう、ヴィンスは解雇に近い形で脱退となったのです。

その当時の衝撃といったら‥‥以前、どこかにも書いたと思うけど‥‥俺の10代の頃のヒーローだったわけですよ、MOTLEY CRUEは。そのバンドからシンガーが脱退する‥‥リーダーでありベーシストでもあるニッキー・シックスは以前から「もしこの4人の中の、誰かひとりでも抜けるような事があったら、その時はバンドの解散を意味する」と名言していました。つまり、ヴィンスの脱退、イコール、俺にとっては「MOTLEY CRUEの終焉」を意味するわけですよ。何でよりによって海外でこんな知らせを聞かなきゃならないのさ‥‥その後帰国するまでの道中、俺がどんな気持ちでいたか‥‥想像つくかい?

バンドはその後、SCREAMというバンドのシンガー、ジョン・コラビを迎えてアルバム制作開始、結局ヴィンス解雇からまる2年後、「DR.FEELGOOD」から4年半後にリリースされたのがこのアルバムだったわけです。

以上がこのアルバムをリリースするまでの時代背景。ま、要するにこのアルバムはMOTLEY CRUEであってMOTLEY CRUEではない、ってことですか、ニッキーの言葉を額面通りに受け取るなら。事実、彼は一時期本気でバンド名を変えることを考えていたみたいですしね(それを阻止したのが誰だったのか、レコード会社か、スタッフか、それともニッキー本人か)。

で、ここからが俺の感想‥‥ボーカルが変わると、やってることが以前と同じでも全く違って聞こえちゃうんだよね、不思議と。そりゃまぁバンドの顔であるシンガー‥‥しかも10年以上バンドを支えたオリジナル・シンガーが抜けたわけですから、印象も変わるし、何よりもそれまでバンドを応援してきたファンは馴染めないと思うんですよ。「MOTLEY CRUE=ヴィンスの声」だったわけですから。そしてヴィンスを蔑ろにしていた一部のファンも改めて彼の個性なり偉大さなりをハッキリと認識したわけです。

でもね‥‥言いますよ、ハッキリと。あのね、この「MOTLEY CRUE」ってアルバムが俺は大好きであって、俺内では「MOTLEY CRUEの作品の中でも最高傑作」だと信じて疑わないわけですよ。コアなファンからすれば絶対に否定されるだろうけど、敢えて声を大にして言いたかったわけですよ、ずっと前から。ぶっちゃけ、このサイトが立ち上がった頃からいつ言おうか、いつ取り上げようかと様子を伺ってたんですが、気づいたら取り上げるの忘れちゃっててね。サイト立ち上げ5周年を前にやった言えたわけですよ。

音楽的には前作の延長線上にある作風だと思うんですが、同じオーバープロデュースでも「DR.FEELGOOD」がアニメ的な過剰さだとしたら、こっちはヤクザ映画的な過剰さなんですね。「DR.FEELGOOD」は確実にエンターテイメントの世界の中のヘヴィロックだったんだけど、このアルバムではそういったカラフルさエンターテイメント性が薄れ、もっと現実的且つモノトーンの世界観を構築してるわけですよ。うーんとね、KISSとPINK FLOYDくらい違う、みたいな。そう、違うんだけど、その根本にあるものは実は一緒なんだよね‥‥だってMOTLEY CRUEなんだもん、あくまで(ま、KISSとPINK FLOYDはあんまり繋がらないとは思いますけどね)。

楽曲自体はヴィンス在籍時から制作されていたものが殆どなわけで、そういった意味ではここに収められた楽曲をヴィンスが歌ったとしても絶対に違和感は生じないわけですよ。けど、より似合っているという意味では、ヴィンスよりもジョン・コラビの方が最適だった、と。このアルバムが俺内で名作になれたのは、間違いなくジョン・コラビが歌っていたから。そのポイントは大きいんですよ。

METALLICAのブラック・アルバムを聴いて、同じ製作陣で作ったのに何故にこんなにも違うんだ!?と強烈なジェラシーを感じたというニッキー。このアルバムの過剰さは、そういった彼の想いが見事に形になっているし、尚かつ彼が少年時代に愛したロック‥‥特にPINK FLOYDやLED ZEPPELINの諸作のようにプログレッシヴでヘヴィ、いろんなサウンドを詰め込んだ正しく「Wall of Sound」。出だしの3曲‥‥ "Power To The Music"、"Uncle Jack"、"Hooligan's Holiday" の並びは圧巻。こんなにも重い空気を持ったMOTLEY CRUE、過去初めてでしょうね。

そして明らかにレニー・クラヴィッツ移行の流れにあるサイケな大作 "Misunderstood"、ZEPのトラッドソング的な "Loveshine"、最も過去の流れにあるパーティーチューン "Poison Apples"、SOUNDGARDENみたいなグルーヴ感を持つ "Hammered"、元々このアルバムのタイトル候補だった "'Til Death Do Us Part"、代表曲 "Dr.Feelgood" の流れを組む "Welcome To The Numb"、アルバム中最も速い "Kickstart My Heart" 的な "Smoke The Sky"、ヘヴィなグルーヴィーチューン "Droppin Like Flies"、ラストを飾るMOTLEYらしいバラード "Driftaway" ‥‥全12曲(ボーナストラックは除く)でほぼ60分というトータルランニングは彼等のオリジナルアルバムでは過去最長。それまで「アルバムは40分程度が丁度いい」みたいなことを言ってたバンドがですよ!? そうえいばこのアルバムに対して「アナログだったら2枚組になるような作品集」というコメントをしてたな、ニッキー。PINK FLOYDの「THE WALL」とかZEPの「PHYSICAL GRAFFITI」みたいな作品集にしたかったんだろうな、きっと‥‥

そんなボリューム感があってヘヴィで聴き応えのあるアルバムなんだけど、やはり大ヒットはしなかったのね。ビルボードでは初登場こそトップ10入りしたものの、10週もしない内に100位圏外落ち、50万枚にやっと届く程度のセールス。前作の8分の1‥‥ま、時代がグランジだとかPANTERA的なヘヴィ路線に移行していたってのも大きく影響してるんだろうけど。

そうそう、このアルバムってやっぱりPANTERAやMETALLICAといった「後続」達からの影響が大きいですよね。それまでは自分達が先頭に立って時代をリードしていたのに、気づいたらフォロワーに成り下がってしまった‥‥4年半は本当に大きかったんだなぁと改めて実感しましたね、うん。けど、オリジネーターだろうがフォロワーだろうが、このアルバムが良く出来たヘヴィロックアルバムなのには違いない。今、LINKIN PARKとか聴いてるような若い子達にはちょっと違って聞こえるかもしれないけど、これも紛れもないヘヴィロックですよ。



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投稿: 2003 10 31 05:27 午前 [1994年の作品, Motley Crue] | 固定リンク