THE DARKNESS『PERMISSION TO LAND』(2003)
久々にこういう濃くてバカバカしいバンドがイギリスから登場してくれて、とても嬉しく思ってます。そもそもイギリスは「センス・オブ・ユーモア」の国。時々そのセンスが度を超すこともありますが、個人的にはそういうところも含めてそういったものを気に入っています。
それは例えば「モンティ・パイソン」といったものだけでなく、音楽(ロック)の世界からも存分に感じられるものでした。そう、ビートルズの時代から。しかしここ最近、そういったコテコテなものを見せ聴かせてくれるアーティストが少ないこと少ないこと……特にロックの世界ね。みんなクール過ぎるんだよ。そりゃカッコイイにこしたことはないけどさ、やっぱり「ブリティッシュ・ロック」ならではの、そういった世界観に十分浸りたいじゃない?
そんな中登場したのが、このTHE DARKNESSという4人組。もうね、ルックスからしてバカっぽい。いやいや、これって最高の褒め言葉ですよ? ボーカルのジャスティン・ホーキンスなんてフレディ・マーキュリーも真っ青な全身タイツ着てるし。しかも虎縞だし。胸からへそ下までしっかり開いてるし。他のメンバーに関してもとても2003年のファッション/ルックスじゃないし。明らかにパンク勃発前の、古き良き時代のブリティッシュ・ロックバンドを彷彿させるものだし。普通だったら時代錯誤だ、ハイプだといって切り捨てられてるんだろうね。実際、彼らが登場した頃はそういった声も少なからず聞こえてきたし。
しかし、この春頃からでしょうか、彼らに対する評価がどんどん高まっていったのは。イギリス国内ではIRON MAIDENからロビー・ウィリアムズまで、とにかく幅広いアーティスト達とツアーを重ね、この7月に本国でリリースされたこのアルバム『PERMISSION TO LAND』はチャートで初登場2位を記録、その後も夏フェス出演等の効果もありトップ10圏外に落ちることもなく、リリースから2ヶ月経った9月にはとうとうチャート1位を獲得、しかも4週連続で。再リリースされたシングル「I Believe In A Thing Called Love」もチャート初登場2位。本国での音楽賞でも最優秀新人賞は勿論、最優秀ライヴバンドみたいな賞まで獲得、彼らがその奇抜なルックスではなく「実力(=ライヴ)」で人気を獲得したことを証明することになるのです。
そして本国でのリリースから2ヶ月遅れでこのアルバムはアメリカで、更に1ヶ月遅れてここ日本でも発表されることになったのでした。遅い、遅過ぎだよ! アメリカを見習いなさいよ!(アメリカでは当初、来年初頭にリリース予定だったものの、イギリスでの大ブレイクに煽られ急遽リリースを大幅に繰り上げることになったのです)
もう何も言うことはないでしょう。QUEENでありAC/DCでありTHIN LIZZYであり、SLADEでありSWEETでありゲイリー・グリッターであり……そういった古き良き時代のブリティッシュロック(まぁ厳密にはAC/DCはオージーですが)からの影響バリバリ受けまくりなサウンドで、一歩間違えば本当に時代錯誤で切り捨てられていたはずなのに、上手い具合に最近の「ロックンロール・リバイバル」や「リフ主体の、オールドスタイルなロック」といった流れに便乗できた。これは偶然なんだろうけど、本当にラッキーだったと思います。もう2~3年登場が早かったら、間違いなくハイプとして切り捨てられてたでしょうから。だってさ、歌だけ聴いたらホントにね……ハイトーンボイスとファルセットを織り交ぜた歌唱法なんて、一歩間違えばギャグ以外の何ものでもないしね。若い子達からするとこういうのって笑いのネタなのかな、それとも新鮮に映るのかな?
ギターにしても(ボーカルのジャスティンの実弟、ダン・ホーキンスが担当。ジャスティンも曲によってギター弾いてます。ツインリードとかあるしね)ジミー・ペイジや上記のブリティッシュ・バンド、特にTHIN LIZZYを彷彿させるプレイが所々に見つけられるんですよね。事実、ダンはTHIN LIZZYのスコット・ゴーハムの大ファンらしく、実際ライヴでもTHIN LIZZYのロゴTシャツとか着てますしね(THIN LIZZYのロゴTシャツ着てライヴやる人なんて、'88年頃のW・アクセル・ローズ以来じゃないの?)。
確かに万人に受け入れられるタイプのサウンドではないかもしれません。が、俺は10代の頃からこういうのを聴いて育ったんだよな。そして今でもそういうサウンドに飢えている。それが判っただけでも大収穫。勿論、このバンドと出逢えたこともね。
既に11月の初来日公演はソールドアウトと聞いています。日程が日程だったので(全部平日、しかも東京はZepp Tokyo)俺は断念したんですが……やっぱり観たいですよね! 来年のフェスでの再来日に期待しますか。とにかく観れる環境にある人は絶対に観ておいた方がいいって!
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