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2003/11/03

U2『POP』(1997)

'97年初めにリリースされた、U2通算9作目のオリジナルアルバム(ライヴ盤を除く)、「POP」は古いファンの間では酷評されることの多い1枚なのではないでしょうか? その大きな理由として「テクノロジーを前面に打ち出して、初期の頃にあった熱さ(良さ)が薄れた」というのがあると思うのですが‥‥本当にそうなんでしょうかね? テクノロジーを前面に出す、イコール、熱さが薄れるとは個人的に思ってませんし、実はこのアルバムこそが'90年代の作品で最も「初期3部作(「BOY」「OCTOBER」「WAR」)」に近い色合いを持った作品集だと思ってるんですけどね。

けど、やっぱり一聴してその変化に驚かされた、ってのには同意しますよ。特にこのアルバムの場合はファーストシングルにもなった1曲目 "Discotheque" のインパクトが強烈でしたしね。PVを観たら更にビックリでしょうね。サウンドだけ聴いてれば確かにあのU2なんですよ。ドラムサウンドといい、あのキラキラしたギターフレーズといいカッティングといい、ボノのファルセット混じりの歌唱法といい‥‥けど何かが決定的に違う。サウンド・アレンジのせいなのか、妙な軽薄感が漂ってるんですよね。だからでしょうね、初期のディープなU2を愛する方々から敬遠されたのは。

でもね、楽曲としては本当によく出来たものばかりなんですよね。所謂「テクノ」の要素を見事に取り入れたダンサブルな "Do You Feel Loved" であったり "Mofo" であったり。特にこの頭3曲の並びは、過去のU2のどの作品と比べてもインパクトの面では1、2を争う出色の出来ではないでしょうか? 個人的には「THE JOSHUA TREE」に並ぶ出来だと思ってますよ。

その後もトリップホップ的、あるいはエレクトロニカなんかの影響すら感じさせる色合いを持つアレンジ曲が続々登場。勿論、従来のU2的な歌を聴かせる楽曲もある。前半の派手さと比べれば、後半‥‥特に "Miami" 以降の流れってかなり地味ですよね。この辺もこのアルバムが嫌われる要因のひとつかな、という気がしないでもないですが‥‥実は個人的に、この後半こそが「'90年代のU2の集大成・真骨頂」だと信じて疑わないわけです。ビョークだったりRADIOHEADだったりblurだったり‥‥そういった先鋭的なアーティスト達が21世紀に向けて試行錯誤していく中、U2は'97年初頭の時点でひとつの流れ/答えを導き出してるんですよ。テクノ/デジロック/ブレイクビーツ/トリップホップ/エレクトロニカ‥‥そういったダンスミュージックのフォーマットを流用して、尚かつ「そのもの」を模倣するわけではなく、あくまで「一聴してU2と判る楽曲」として完成させている点。初めて仕事をする外部のアーティスト/プロデューサーとの共同作業ながらも、決して「U2らしさ」を損なっていない(と、俺は感じている)。単なる「リミックス・アルバム」にはならずに、あくまで「U2としてのオリジナル・アルバム」として完成されているのは、正直さすがだと思いますね。

ダンスミュージックのフォーマットを流用して、と書きましたが‥‥決して「踊れる」アルバムとは言い難いのも、U2らしいというか。どちらかというとこのアルバム、リスニング向けかなという気がしないでもないですよね。前半にはクラブ仕様のアッパーな曲も幾つか用意されてますが、上にも書いたように "Miami" 以降の流れは確実に「フロア」という「ダンスに必要不可欠」な要素を無視したかのような作り/アレンジになってますし。この辺もまぁその後の「リスニング重視のテクノ」というひとつの流れを酌み取っているようにも思えるし、単に「ディープなU2」を重視したらそうなっただけなのかもしれないし‥‥まぁだからこそ俺は信用できたわけですよ、このアルバムを。特に本編ラスト3曲の並び‥‥ "If You Wear That Velvet dress" ~ "Please" ~ "Wake Up Dead Man" の流れは強烈ですよね。頭3曲の構成といい、ラスト3曲の構成といい、本当にこのアルバムの構成って考えて作られてるよな、と個人的に思うわけです。派手さと地味さ。けどそれらが全部地続きだという事実。「テクノ3部作」と呼ばれる'90年代のアルバム‥‥「ACHTUNG BABY」や「ZOOROPA」から地続きなのは当然として、実はファーストアルバム「BOY」からずっと地続きだという事実。このアルバムの本当の凄みは実は「古くから彼等を知っているファン」にこそ判り得るものなんじゃないか‥‥っていう気がするんですけどね。だからこそ、そういったファンからの評価が低いというのはとても残念でなりません。

U2は結局、続くアルバムではここで試したフォーマットを引き継ぐことはありませんでした。だからこそファンはこのアルバムを重要視してないんですよね‥‥今だからこそ、再評価の季節に来てるんじゃないのかな、と個人的には思うんですけどね‥‥



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投稿: 2003 11 03 05:23 午後 [1997年の作品, U2] | 固定リンク