« THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』(2003) | トップページ | MUSE『ABSOLUTION』(2003) »

2003年12月23日 (火)

中澤裕子・保田圭・矢口真里・メロン記念日『FS4 FOLK SONGS 4』(2003)

  フォークソングの名曲をハロー!プロジェクトのメンバーがカバーするという企画盤「FOLK SONGS」シリーズも、今回で4作目。前作「FS3」では、当時モーニング娘。を卒業したばかりの後藤真希と、そして後にモーニング娘。に加入することになる(当時はまだソロだった)藤本美貴、そしてお馴染み中澤裕子の3人による作品集だったけど、今回は‥‥

  とりあえず、以下に収録曲名を記しておきます(カッコ内は原曲歌手名)。


01. ひとりぼっちの部屋(高木麻早)
02. 異邦人(久保田早紀)
03. 真夜中のドア ~Stay With Me(松原みき)
04. 秋桜(山口百恵)
05. 22才の別れ(風)
06. 旅の宿(吉田拓郎)
07. 心の旅(チューリップ)
08. 雨の物語(イルカ)
09. 中央フリーウェイ(荒井由実)
10. 若者たち(ブロード・サイド・フォー)
11. ケメ子の歌(ザ・ダーツ)


で、これを歌うのが‥‥


中澤裕子(M-4、7、10、11:コーラスM-2)
保田圭(M-2、5、8、11:コーラスM-7)
矢口真里(M-1、5、9、11:コーラスM-7)
メロン記念日(M-3、6、10、11:コーラスM-9)


という布陣。中澤はまぁレギュラーなので割愛。メロンは「FOLK SONGS 2」以来2度目の参加。そして重要なポイントとなる、モーニング娘。卒業後初の音源となる保田と、ソロとしては初参加(というか初音源)の矢口の二人。これで市井紗耶香含め、モーニングの第二期メンバーは全員参加したことになります。所謂「コーラス要員」としても実力を持つ彼女達がソロシンガーとして、どこまで実力を発揮できるのか‥‥

  プロデュースは相変わらずたいせーが受け持っていて、正直‥‥な気分なんですが、まぁこの際それは無視します。で、アレンジャーなんですが、前作から参加し始めたCymbalsの矢野博康が4曲で参加しています。他にはお馴染みの高橋諭一、朝井泰生、上野雅和、そしてたいせーといった面々がアレンジャーとして参加しています。

  選曲的にいって、正直今回は「‥‥これってフォークソングなの!?」という厳しさを感じずにはいられないものもありますし、アレンジも出来・不出来がまちまちなんですね。それは正直に書いておきます。が‥‥やはり充実度という意味では同シリーズの中でも一番なんじゃないかな、という気がするんです。それは矢野氏が手掛けた楽曲("ひとりぼっちの部屋"、"真夜中のドア ~Stay With Me"、"秋桜"、"中央フリーウェイ")の完成度によるものが大きい気がします。特に矢口が歌う2曲‥‥"ひとりぼっちの部屋" と "中央フリーウェイ" は凄く良いですよね。タンポポ以降、なかなか味わうことが出来ない『可愛らしい歌声の矢口』を存分に堪能できる前者、そしてアーバンポップスとしての完成度が非常に高い後者。"中央フリーウェイ" が何故そんな完成度の高さを誇るのか、それはきっとサックスによるものも大きいのでしょうね。このサックス、かの菊地成孔(DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENやSPANK HAPPYでお馴染み)によるものなんですよね。矢口好きの菊地さんのこと、さぞかし嬉しかったことでしょう‥‥ってそれは関係ないか。とにかくスパンクスでも実現した矢野&菊地によるコンビネーションが、ここでも違った形で再現されたわけです。正直な話、この1曲だけの為にこのアルバムを買っても損はしないと思いますね!(ちなみに矢野アレンジ曲でギターを弾いているのは、NONA REEVESの奥田だったりします。これも興味深い)

  同様に‥‥メロンが歌う矢野アレンジ曲 "真夜中のドア ~Stay With Me" も非常に素晴らしい。アレンジの良さもありますが、何よりもメロンのボーカルワークが過去最高に素晴らしいんですね。実はこの曲、今年メロンがリリースした作品の中でも1、2を争う完成度なんですね。俺の中でも "赤いフリージア" に匹敵する作品ですね、これ。同じメロンが歌う曲でも、高橋諭一アレンジの "旅の宿" は「FOLK SONGS 2」で彼女達が歌ったフォークソングと同じ路線で、色合い的にも同じなんですね。けど‥‥明らかにボーカル力がアップしてる。場数を踏んだことによる自信なのか、各メンバーの個性を感じられるようにまでなってるのが面白いですね。

  そして‥‥やはり保田ですか。ソロでしっとりと聴かせる "異邦人" や "雨の物語" はアレンジ的には平凡なんですが、保田が歌うことでそれなりに聴けるようにレベルアップしてる‥‥というのは言い過ぎでしょうか。まぁ平均点的内容ですね。彼女がモーニング時代に見せた『個性』がイマイチ伝わってこない。抑え気味で歌う曲ばかりだからなのか、それとも彼女自身に迷いがあるのか。どちらにせよ、この2曲や矢口とのデュエット "22才の別れ" だけで彼女の今後を占うのは少々酷ですね。今後に期待ということで。

  中澤は‥‥相変わらずですね。可もなく不可もなくといった印象。もうちょっと歌い込めば更に良くなると思うんですが‥‥残念ながら "GET ALONG WITH YOU" で聴けたような奇跡はここには感じられません。彼女も平均点的内容ですね。ま、だからといって悪いって言ってるんじゃないですけどね(矢口やメロンの曲と比べれば、って意味ですからね)。

  アルバムは最後、保田のテーマ曲ともいえるような "ケメ子の歌" で終わるんですが‥‥保田、この曲で聴ける歌が一番活き活きしてるじゃんか! 何だよ、結局こういった感じの曲をもっと与えてあげればよかったのに‥‥だから能なしプロデューサーは(ry

  とまぁ苦言も呈しつつ、いろいろと感想を書いてきましたが‥‥やはり一番充実してると思います。例えば「FOLK SONGS 2」では松浦亜弥の "ひこうき雲" や "さとうきび畑" といった突出した作品があったりしたものの、それ以外は平凡だったし、「FS3」も後藤や藤本のソロに幾つか良いモノがあったけど、アレンジ的に‥‥な曲もあったりで、結局は全曲通して何度も聴けるといった感じではなかったんですが、今回は曲数や収録時間の程良さ(11曲で約40分)も影響して、非常に聴きやすく、尚かつリピートしやすい内容なんですよね。平均的にレベルが上がってると思うし、前述の矢口やメロンの曲の良さ、平均点的ながらも中澤や保田の歌もなかなか良いし。まぁまず何よりも先に原曲の良さってのがあるんですけどね。

  来年2月にはシリーズ第5弾がリリースされるようですが、次作は『卒業』というテーマ縛りがあるようです。モーニング娘。を卒業する安倍なつみやカントリー娘。等も初参加するようですので、それはそれで楽しみですね。今後も定期的にこういった完成度の高い企画盤、期待してます。



▼中澤裕子・保田圭・矢口真里・メロン記念日『FS4 FOLK SONGS 4』
(amazon:国内盤CD

« THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』(2003) | トップページ | MUSE『ABSOLUTION』(2003) »

ハロー!プロジェクト」カテゴリの記事

メロン記念日」カテゴリの記事

2003年の作品」カテゴリの記事

中澤裕子」カテゴリの記事

矢口真里」カテゴリの記事

カテゴリー