« IRON MAIDEN『DANCE OF DEATH』(2003) | トップページ | ウルフルズ『ええねん』(2003) »

2003/12/21

KENZI & THE TRIPS『青春BABY II』(2003)

  2年前('01年)に「青春BABY」というカバーアルバムをリリースしているKENZI & THE TRIPS。その第2弾として今年5月に発表されたのが、今回紹介する「青春BABY II」というアルバム。前回はKENZIが影響を受けた日本のロックを取り上げた企画盤だったけど、今回はちょっと勝手が違って、所謂「セルフ・カバー」アルバムとして仕上がっています。要するに解散前‥‥'80年代の全盛期と呼ばれた時代の名曲達をKENZIが16曲選出して、現在のメンバーでリアレンジ/再録音したのがこのアルバムというわけ。これ、両刃の剣ですよね‥‥再結成後の、全盛期を知らない若い子達にとっては、名曲達を今の音で聴くことができるわけだから有り難い作品だろうけど、その当時‥‥全盛期をリアルタイムで通過してきた、そう若くはないファン達にとっては「やはりオリジナルが最高」っていう思いが強いだろうから、受け入れ難い作品なのかもしれないし。年を取れば取るほど、新しいモノや新しい試みに対して拒絶したり、過去の思い出に拘るばかりに今を否定しがちになっちゃうんだけど‥‥俺はこれ、本当に有り難く聴かせてもらってるのね。

  やっぱりね、今のケントリをライヴで観たのが一番大きいと思うのね。単なるノスタルジーで今回の企画盤を制作したんじゃないことは、現在の脂の乗ったバンドを見ればよく理解できると思うんだけどね。最近の曲も決して悪くない。むしろ再結成後の曲を重視するばかりに、意識的に解散前の名曲達を封印していた時期があったらしいけど、そういう拘りが馬鹿馬鹿しくなるくらいに、このアルバムでは開き直ってるのね。けどさ、それが功を奏して、その辺の若手青春パンクバンドよりも説得力を持った、KENZIの言葉を借りるなら『REAL PUNKS』へとまた一歩近づいたんじゃないかなぁ‥‥そう感じずにはいられないわけですよ。

  個人的にはこの辺の音、高校生の頃にリアルタイムで通過してるわけで、やっぱり最初に今年のライヴでこれらの曲を聴いた時はノスタルジーに浸ってしまったんだけど、曲が進むにつれて‥‥逆に今の方がリアルに感じられるんじゃないかって気がしてきたのね。最初のリリースから20年近く経ってる曲もある。あの頃十代だったKENZIも俺も、今じゃ30代。KENZIなんて40歳に手が届きそうな年齢に達してるわけでしょ。けど、いい意味で『16 PUNK ROCKER』のままなわけ。ルックスにしろ、精神面にしろ、やってることにしろ。途中、挫折したこともあったけど、最終的にはスタート地点と同じ立ち位置で、同じことをやってる。パートナーはいろいろ変わったし表現力も増したけど、やはり変わってないわけ。それを強く感じることができ、KENZIのルーツをカバー集以上に強く感じさせてくれたのが、今回の「青春BABY II」というアルバムだったように思うんですね。

  ある人にとっては受け入れがたい現実(=セルフカバーなんて以ての外、オリジナルが全て)だろうし、ある人にとっては懐かしい青春の1ページをVHSからDVDに変換したかのような現象だろうし、またある人にとっては新しい音楽との出会いとなったであろうこのアルバム。少なくとも俺にとっては無条件で楽しめるアルバムであり、それ以上でもそれ以下でもない。だってKENZI & THE TRIPSは『過去のバンド』じゃなくて、今を生きるバンドなんだから。今を生きるバンドが、今のメンバーで、今の表現力を持ってリメイクした、自分達の為に作ったアルバム。ファンの為ではなくて、自身のスタート地点の再認識。それがこの「青春BABY」というシリーズなんじゃないかな、と。だとしたら、これは20年近くに渡って活動してきたバンドにとって、どうしても必要な作業だったんですよ。だから周りがとやかく言う権利、ないよ。ここからまた新たに何かが始まって行くんでしょうからね‥‥

  ゲストとして氣志團やロリータ18号のメンバーが参加してるとか、そういった付加要素はこの際どうでもいいです。生ぬるい青春パンクに満足し切っている10代の少年少女達に向けて、胸を張ってオススメしたいのがこのアルバム。何も俺達の世代はブルーハーツやJUN SKY WALKER(S)だけじゃなかったんだよ。もっと素敵なパンクバンドが山程いて、そして未だに現役で活躍してるんだから‥‥。



▼KENZI & THE TRIPS『青春BABY II』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 12 21 12:00 午前 [2003年の作品, KENZI & THE TRIPS] | 固定リンク